櫻井よし子氏:フランスのエマニエル・トッド氏が提唱する、日本核保有の可能性についても議論すべきだ
第二次世界大戦戦勝5カ国が、安全保障理事会常任理事国に居座る国連(その名も戦勝国連合、ただし中華人民共和国は戦勝国ではない)。そしてすべて核保有国で拒否権を持ちます。その一国ロシアが起こした侵略戦争はその拒否権でもって、何ら解決の目処が立っていません。
そのことから言えるのは二つ。拒否権を持つ常任理事国が存在する国連安保理は現状基本的に紛争解決のよりどころにはならない。そして核を持たない国、または核を持つ国の同盟国でなければ、核を持つ国から侵略されても、甘んじるしかないと言うことです。
日本は核を持ちません、アメリカの核の傘に入っていますが、果たしてこの傘は他国による核攻撃を守れるのか、不透明です。非核三原則を守るという岸田首相の言うとおりであれば、国内に核は持ち込めません。核を持たない列島にはたして傘があるのでしょうか。
今や核論議はタブー視すべきではありません。海外の識者も提言をしています。産経新聞のコラム「美しき勁き国へ 櫻井よしこ」に、以下の記事が掲載されました。タイトルは『政治主導 国防費純増を』で、以下に引用、転載します。
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フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は国家基本問題研究所創設15周年の記念講演で助言した。
「戦争が進行中の欧州から来た人間として、おこがましいかもしれませんが言わせてほしい。ウクライナ戦争で明らかになったことの一つは核兵器が安全を保障する武器だったということです。日本は強い軍を持つべきですが、人口的に、(十分な)若者を軍に投入することは難しい。ならば核武装すべきです。核武装こそ平和維持に必要だとの確信を私は深めています」
「敵基地攻撃」という表現さえ忌避するわが国への助言としては大胆だ。だが、ソ連崩壊をその15年前に予言したトッド氏の炯眼(けいがん)を無視するのは歴史の展開に目をつぶるに等しい。
北朝鮮は11月第1週に大陸間弾道ミサイルを含めミサイルを30発以上撃った。ロシアはウクライナが放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」を準備中だと非難するが、その裏にロシア自身が戦術核を使用する危険が見てとれる。中国の習近平国家主席は中国共産党大会で歴史に逆行する姿勢を打ち出した。常務委員会(国会)を側近で固め、中央軍事委員会ではあからさまな台湾侵攻人事を断行した。「台湾侵攻は予想よりずっと早く武力によって行われる」とのブリンケン米国務長官の警告が現実味を帯びる。
いま、米国やアジアが日本に求めているのが、異次元の国防力強化策だ。日本だけでなく台湾を含むアジア諸国を中露北朝鮮の脅威からいかに守るか、明確な指針を示すのが政治の役割だ。強い国防力は強い経済なしには維持できない。日本経済の格段の成長が必要なゆえんだが、政府内で奇妙なことが起きている。
10月26日午後、自民党の萩生田光一政調会長に岸田文雄首相から電話があった。鈴木俊一財務相以下茶谷栄治財務次官らが官邸に来て、「総合経済対策費は25兆円になる。同件は政調会長にも逐一報告済みだ」と説明を受けたが、それは事実かという直々の問い合わせだった。その時間帯、萩生田氏はまさに総合経済対策を議論する党の政調全体会議を開き、必要な予算を議論していた最中で、25兆円の枠組みなど決まってもいなかった。財務省が政治家の裏をかいて、まず首相に25兆円枠をのませ、自民党を押さえこもうとしたのであろう。
萩生田氏は「政策の責任をとるのは官僚ではなく、選挙で選ばれたわれわれ政治家だ」と語る。官僚の優れた能力は政治家の示す方向に沿って政策実現のために生かすのが筋だ。政治家をだまして政策決定に走ることではないだろう。結局、同夜までに政治主導で4兆円以上積み上げ一般会計総額は29兆1000億円となった。財務省の独断専行は日本の命運を分ける国防政策においても際立っている。
国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を重視する財務省の政策でわが国経済は徐々に力を弱め、国際社会の劣位へと後退中だ。わが国はすでに、購買力平価の1人当たりGDP(国内総生産)で韓国に抜かれ、国防費でも同様に抜かれている。
いま、中国の脅威の前で経済力、軍事力を強化して国民と国を守り通さなければならないが、防衛力強化の財源をどこに求めるのか。それを論ずる財務省主導の有識者会議に欠けているのが切迫した事態への認識ではないか。結果として、国防力の真の強化につながる防衛費の純増よりも、防衛予算の水増し策が採用されようとしている。典型例が海上保安庁予算の防衛省予算への編入だ。
海保、すなわちコーストガードの予算は軍事費に組み込むのが北大西洋条約機構(NATO)基準だというが、欧米のコーストガードは有事に軍の指揮下で行動をともにする。海保には海上保安庁法25条があり、「海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むこと」を禁じられている。
自民党の小野寺五典安全保障調査会長が語る。
「昨年の春くらいまでの1年間、25条改正を目指して議論しました。しかし、公明党、自民党の国土交通関係議員、海保が一丸となって反対し、潰れました。いまは、25条改正にこだわって一歩も進まないより、海自と海保の連携を少しでも前に進めようとしています」
その一例が、中国のミサイル動向などを探る無人機の操作を海保の任務とし、情報を海自と共有する案だ。海自、さらに米軍との情報共有が実現する保証は実はまだないのだが、希望的観測に基づいて海保予算2600億円余を防衛省予算に組み込む流れが、財務省主導でできつつある。
こんなことを見逃してよいはずはない。25条改正を葬った昨春と比べて、国際情勢は驚天動地の変化が生まれた。そのことを認識し、25条改正に再挑戦するのが本来の政治の役割だ。
「自衛隊には継戦能力がない」と安倍晋三元首相も岸田文雄首相も認めるのが日本だ。では、いかにしてわが国を守るのか。それを考える一つの材料がある。
米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が台湾をめぐって米中戦争が2026年に勃発するとの前提で、24通りの模擬戦争をした。このうち21例が完了し、今年12月に最終結果が発表される。重要な点は、ほとんどの戦いで米台側が勝利し、中国の台湾占領を防いだ。
しかし、米台の損耗は激しく、米国の国際社会における地位は長きにわたって損なわれるという結果も出た。当然、日本も同様の状況に陥るだろう。
教訓はどれほどの予算をつぎ込むとしても、その方が大戦争を戦うよりは、安全で安くつくということだ。戦争抑止のために強い軍事力を持つのだ。そのためにできることは全てするという文脈で、トッド氏が提唱する日本核保有の可能性についても論ずるべきだ。
財務省のプライマリーバランス重視は歴史の局面がどんでん返しになったいま、修正すべきだろう。どれほど赤字国債を積み上げようと、私たちは強い軍事力を持ち、地球規模の勢力争いを生きのびなければならない。岸田首相の双肩に日本の命運がかかっている。戦後秩序の根幹を変えるために発奮してほしい。
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日本は第2次大戦後の占領軍(GHQ)にすり込まれた、自虐史観と反軍思想が未だに強く残っていて、特に特定野党と左派系メディアの中にこびりついています。そして彼等は軍は「攻撃するもの」という片務的な思考しか持ちません。現代では軍は「守るもの」というのが一般的であるのに。
そういう意味でますます脅威を増す周辺独裁国に対峙するには、軍の装備の拡充は欠かせません。そのためには軍事費を大幅に増強し、せめてNATO並にする必要があります。そして費用対効果の最も大きい核の保有もタブー視しないことは重要です。
櫻井氏は「岸田首相の双肩に日本の命運がかかっている。」、と言いますが、岸田首相が果たして日本の命運を背負えるのか、ます非核三原則の撤廃から、大幅な思考転換が必要なように思えます。
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