政府や国会の不作為がもたらす大きなリスク、少子化進行で日本は15年後には「死ぬ」
日本の人口は2005年にはじめて前年より2万人減少しました。その後2006、2007年とわずかに増加した後、2008年から本格的に減少が始まりました。2021年には前年より60万人以上が減少、1年で一つの中核都市が消えていく感じとなっています。
このブログでは何度もこの問題に警鐘を鳴らしてきました。先日ツイッター社を買収したイーロン・マスク氏が、このままでは日本は消滅するというような発言をしていましたが、決して妄言ではありません。様々な問題が目の前にぶら下がっているのが現状でしょう。
多くの識者がこの問題を論じていますが、今回は麗澤大学の八木秀次教授が月刊正論に寄稿した記事を取り上げます。タイトルは『少子化進行で、日本は15年後には「死ぬ」』で、以下に引用します。
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「保育園落ちた日本死ね!!!」というネット上の投稿のフレーズが新語・流行語大賞のトップテン入りしたのは2016年(平成28年)のことだ。 子供の数に対して保育園の入園枠が少なく、この投稿者の子供も保育園を落ちて待機児童になった。 それに怒った母親の投稿だった。
この年の出生数は97万6978人で、1899年(明治32)の統計開始以来初め百万人を割ったことが衝撃をもって伝えられた。翌年9月、安倍晋三首相(当時)は、北朝鮮の核兵器の脅威とともに「国難」とし、それを打破するために衆院を解散した。「国難突破解散」だ。
今年1月から6月までの上期の出生数が38万4942人で、昨年同期比で5%減となることが厚生労働省の人口動態統計(速報値)で分かった。 今年通年の出生数は昨年の81万1604人を下回ることは確実で、第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストの推計では76万2千人と見込まれている(日本経済新聞9月9日付)。「国難」からわずか6年間で実に20万人以上減ったことになる。
戦後最大の出生数は1949年(昭和24)の269万6638人だが、その3割弱しか生まれない。このまま毎年5万人ずつ減っていけば、15年後には待機児童どころか、生まれる子供の数がゼロになる。
少子化の原因ははっきりしている。日本では結婚して子供を産むケースが圧倒的多数で婚外子は2%程度だ。子供を産む前提の結婚が減っているのだ。結婚の件数は1970年代前半には百万件超だったが、2009年には70万件強となった。2018年には60万件を割り、昨年は50万件少しで戦後最少を更新した。満50歳時の未婚割合を示す「生涯未婚率」も統計を取り始めた1980年には男性2.60%、女性4.45%だったが、2020年には男性28.25%、女性17.81%となっている。未婚は「普通」となった。
中央大学教授の山田昌弘氏は若者が結婚しない理由を、20歳から35歳の未婚者の7割以上が親と同居しており(「パラサイトシングル」)、彼らは結婚すると生活水準が下がり、親も子供がそうなることを望んでいないことにあると分析している(「欧米モデルの少子化対策から脱却せよ」「Voice」2020年12月号)。
お茶の水女子大学教授の永瀬伸子氏は若年層の次世代育成への意欲が下がり、若い女性が子育ては大変でリスクがあり、子供を持たなくてもいいと思うようになっているとし、パートナーと暮らす良さや、次世代育成の喜びや責任を教える必要性を強調
している。同時に高齢者への社会保障給付に比べて出産育児に対する社会保障が手薄、女性が子育てしながらも一定以上の収入のある労働人生を送れる賃金モデルをつくる、非正規雇用者にも育児休業給付するなど税制・社会保障・雇用慣行の抜本的改革を求めている(昨年一二月の内閣府男女共同参画局の研究会での配布資料)。
背景には、共同体を解体し、そこから「個人」として解放されることを良き価値としてきた近代社会の理念が家族形成の領域にも及んでしまったことがある。過去からの命が繋がって現在の我々があり、その命を後世にも伝えていこうとの無意識の意欲が低下している。価値観の転換も必要だ。
東欧ハンガリーが対GDP(国内総生産)比4.7%の予算を投入して少子化対策に本気で取り組んでいる。0.8%の日本の約6倍だ。4人以上産めば定年まで所得税ゼロ、3年間の有給育児休暇、結婚すると無利子ローンが受けられ、3人生まれると全額返済不要、住宅ローンの大幅減額、高学歴の女性の出産を促すべく大卒女性の出産には学生ローンの返済が減免、体外受精の保険適用で無償化、国営の不妊治療機関の設置など「子供を産めば産むほど家庭の生活が楽になる」制度を導入した。その結果、出生数も結婚件数も増え始めた。移民に頼らずに人口を増やすことが可
能になりつつある (近藤大介 「人口増加に執念、ハンガリーの「すごい」 少子化対
策」 JBプレス2021年1月4日)。
最早猶予はない。直ちに膨大な予算を投入して対策を打たなければ、日本は死ぬ。
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現実には15年後に出生数がゼロになることはないでしょうが、このまま放置すればかなり少なくなってしまうのは間違いないでしょう。そうなっても直ちに日本が死ぬこともないとは思いますが、今より経済は衰退し、高齢者や子供の福祉には赤ランプが点灯していることになります。
我々のような、あと15年持つかどうかという高齢者にはそれほどでなくとも、後に続く人たち、ましてやずっと若い人や子供たちには大変な危機が迫ってきてしまいます。今こそハンガリーのような少子化を食い止める努力を、国を挙げて推進する必要があります。
そのためには、相変わらずの政争に明け暮れる国会を何とかしなくてはなりません。少子化対策特命大臣がいるにはいますが、果たして機能しているのでしょうか。内閣の特命でハンガリーでの成功例を研究するとか、大学に少子化対策科を設け、妙案を提案させるのも一つのアイデアでしょう。待ったなしの対応が求められます。
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