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2022年12月30日 (金)

ベルリン「水槽破裂」事故が象徴する、ドイツ全体の“老朽化”と“機能不全” 政治家は「中国依存」を憚らず

7_20221229152601   約2週間前の出来事でした。ドイツのベルリンでアクアリウムが突然崩落し、中にいた魚たちが殆ど全滅しました。幸い人身事故はなかった模様です。

 ドイツと言えば機械や車、化学製品など、技術を売り物にした国家というイメージがあります。EUの中心国家、そのドイツで起こったこの事故、一体どうなっているのでしょうか。

 作家でドイツ在住の川口・マーン・惠美氏が、現代ビジネスに寄稿した記事にその詳細を見てみましょう。タイトルは『ベルリン「水槽破裂」事故が象徴する、ドイツ全体の“老朽化”と“機能不全” 政治家は「中国依存」を憚らず』(12/23公開)で、以下に引用します。

6_20221229152601 約1500匹の魚もろとも…

12月16日早朝5時43分、ベルリンのど真ん中でアクアリウムが崩落した。ドーナツのように丸く建てられたラディソンホテルの、ドーナツの穴の部分の真ん中に聳え立つ円筒形のアクアリウムだ。

地上より5mほどのところから始まる円筒形の水槽は、高さ14m(16mという報道も)で、直径11.5m。そして、最大のアトラクションが、その水槽のど真ん中に組み込まれたやはり円形のエレベータ。エレベータの壁は透明である。

つまり、何が凄いかと言うと、エレベータに乗って水槽内を上下する間に、その透明の壁を通して、さまざまな魚が泳いでいるのが触れそうなほど間近に見えること。水槽はいくつかに区切ってあり、本物の珊瑚の間に熱帯魚が泳いでいたり、サメが横切ったり……。

一方、水槽を囲む形のドーナツ型のホテルでは、外側の部屋からはベルリンの素晴らしい景色が堪能でき、内側の部屋からは、アクアリウムの幻想的な風景が楽しめる。贅沢なアイデアだ。

また、ホテルに泊まらず、このアクアリウムのエレベータだけ楽しみたければ、世界50ヵ所以上でスペクタクルな水族館を展開している「シーライフ」(スコットランド発祥)に19ユーロを払って申し込めばよかった。

ところが前述のように、その巨大な水槽が17日早朝、突然破裂し、100万リットルの塩水が溢れ出た。辺り一帯が地獄絵のような大混乱に陥ったことは想像に難くない。約1500匹の魚も、ほぼ全尾がご臨終。

不幸中の幸いは、早朝だったため、水槽の下にも、その付近にも誰もいなかったこと。ホテルの部屋にも直接の影響はなかったが、地下には浸水したという。

2003年の12月に完成したこのアクアリウム、周りを壁などに支えられない独立型の水槽としては世界最大という触れ込みだった。

水深が14mと言われていたので、水槽の底には1平米あたり14トンの圧力がかかることは、中学生でもわかる。だからこそ、それを支えている技術の凄さに、私など数字に弱い人間でさえ感心したのである。

しかも、当時、設計をした建築家が、使われているアクリルグラスは、“たとえピストルで打っても穴が開くだけで絶対安全”と太鼓判を押していたので、余計に感心した。20年には大点検も行われたというが、結局、ピストルで打たなくても、水槽は勝手に崩壊した。

原因に関してはこれから調査が始まるが、今のところ、素材疲労が疑われているという。おそらく今後、アクリルグラスのメーカーやら、建築家やら、施工した建設会社やら、運営会社やらの間で、熾烈な責任のなすりつけ合いが始まるのだろう。

シーライフは早速、「19ユーロはエレベータの使用料で、我が社は水槽には関知していない」という声明を出した。それにしても、水族館の水槽が破裂するなど、何だか発展途上国のようである。

鉄道も郵便も、質の低下が甚だしい

ドイツはこの頃、何だかおかしい。

私がドイツに渡った80年代の初めごろ、ドイツ鉄道は遅れず、日独間の郵便事情はこれ以上は望めないほど正確で、人々はおおらかだった。

しかし、現在のドイツ鉄道は民営化されたものの、その公共性を重視し、株主は国となっている。ところがが、肝心のその国が儲けることに熱心らしく、投資を怠り、設備は老朽。人員削減に励みすぎた帰結として、定時に着く電車が珍しいほどの惨状となった。

病欠が重なるとルーティーンが回せなくなり、客がすでにホームで待っているとき、突然、遠距離の特急電車の運休が知らされることさえ珍しくない。乗っている客はそこで降ろされ、後のケアもない。おそらく多くの日本人は、私が嘘を書いていると思うだろうが、これは実体験だ。

その上、暑くなるとクーラーは故障するし(これも複数回の実体験)、寒くなるとポイントが動かなくなる。それどころか脱線(これは家族の実体験)や、単線の場所での正面衝突まで起こる。さらにいうなら、私は列車を利用することは非常に稀である。それでも乗るたびに何かしら、日本では想像できないような不思議なことが起こるのである。

一方の郵便も、民営化後の質の低下は甚だしく、普通郵便が遅れたり、着かなかったりは毎度のことで、最近は、家族が書留で送った手紙までなくなった。こうなると、大切なものは一切郵便では送れなくなる。

ベルリンで2020年に開港したベルリンの新空港は、着工が06年で、当初の完成予定は11年だったが、期日は7回も延期され、ようやく開港したのが20年。当初17億ユーロだった工費は最終的に65億ユーロとなった。

また、17年に柿落としとなったハンブルクのコンサートホール、「エルプフィルハーモニー」も、最終的に7年の遅延だった。

こちらも7700万ユーロの予定が十倍以上の7億8900万ユーロに膨張。途中で取りやめることも検討されたが、やりかけの高層ビルを取り壊すには、経費はやはり同じぐらい掛かるため、やるしかない!という決死隊のようなプロジェクトだった。

なお、完成後のエルプフィルハーモニーは、過去の不都合は全て忘れるほど素晴らしいホールであることも付け加えておきたい。

首都ベルリンのカオス

ちなみに、ドイツの都市の中で、カオスで一番有名なのが首都ベルリン。01年以来、社民党が政権を持ち、しかも16年からは緑の党、左派党との3党連立が続く。左派党というのは、旧東独の独裁党の流れを引くいわば共産主義者の党なので、ベルリンはドイツでも稀な真っ赤な都市となっている。

真っ赤であることと関係しているかどうかは定かではないが、ベルリン市は財政が破綻しているばかりか、市の行政もまともに機能しない。役所は事務処理が追いつかなくなると、あっさりと窓口を閉めてしまうため、出向いてもダメ、電話も繋がらないのは日常茶飯事。運が悪いと、紛失した免許証の再発行に数ヵ月もかかったりするという。

ただ、何と言ってもベルリン・カオスの極め付きの事件は、21年9月26日に行われた選挙だった。ベルリンは特別市で、独自の政府と議会を持ち、州と同じ権限を有するが、この日は、4年に一度の国政総選挙と、ベルリン市議会議員の選挙、区の選挙、おまけに国民投票が同時に実施された。

ところが、これが破綻した。投票所前が長蛇の列で待ち時間が2時間になったのは序の口で、まもなく投票用紙が足りなくなったり、18歳からしか投票できない国政選挙の投票用紙が、州選挙の投票に来た16歳の人間に配られたり、さらには、配られた投票用紙が違う区のものだったりと、信じ難い事態が続出。

結局、投票用紙切れで閉鎖された投票所が73ヵ所。投票用紙をコピーして使ったというケースもあったというから噴飯物だ。また、慌てて車で投票用紙を取りに走り、中断していた投票を始めたら、18時を過ぎても行列が縮まらず、時間を勝手に延長した投票所もあったというから想像を絶する。

では、そのために何が起こったかというと、何も起こらず、不適格なやり方で選ばれた議員たちが、当然のように区議会に、市議会に、国会に、今も座っている。

そこで、これはおかしいと声を上げたごく少数のジャーナリストらが地道な調査を続けた結果、投票結果の数字の多くが赤ペンで修正されていたことまでが明るみに出た。

結局、彼らの訴えが功を奏し、先月11月の半ば、ベルリン市の憲法裁判所が、市議会と区議会の選挙結果を無効とし、90日以内のやり直しを命じた。これもどこかの発展途上国のようだが、正真正銘、ドイツの首都での話だ。

政治家は堂々と中国依存を主張し

選挙は言うまでもなく、民主主義の要。本来なら、地方選よりも重要である国政選挙の方もやり直さなければならないはずだが、こちらはベルリン市の裁判所の管轄ではないため、時間が掛かりそうだ。

ただ、どんなに時間が掛かっても、正当性の欠ける議員が政治をしている事態は修正されなければならない。そうでなければ、ドイツの議会自体の正当性に疑問符がつくことになる。ただ、これが最終的にどう解決されるのかは闇の中だ。

ドイツはそうでなくても今、混乱している。やはりかなり赤い現在のドイツ政府(社民党、緑の党、自民党の三党連立)は、電気が足りないというのに、原発も石炭火力も止めるという方針を変えず、暖房の温度を低くしろとか、手は冷たい水で洗えというのが解決策だ。

このままいけば、電気とガスの逼迫と高騰、および将来の価格の高止まりは確実で、ドイツは産業国を離脱する方向に進むしかない。中小企業ではすでに倒産が始まっており、体力のある企業は、安価で安定した電気の保証される外国への逃避を考えている。

現在、その最も有力な候補地が中国である。ドイツの繁栄は中国なしにはあり得ないと、すでに堂々と主張する政治家もいる。

中国依存と機能不全。大丈夫だろうか、ドイツは……?

日本はまだ電車もちゃんと走るし、郵便も届く。選挙も、水族館の水槽も大丈夫だと信じたい。しかし、肝心のところは、日本もやはりドイツと同じく中国依存になりそうな予感もする。かなり憂鬱である。

 日本も中国依存になりそうな、ではなくて、経済面ではかなり中国に依存しているところがあります。これから我々が何とか、その依存を脱却しなければならない時期に来ていると思いますが、ドイツ同様、親中派の議員も多いのが気になります。そして原発停止に石炭火力縮小、何だか似ているような気がします。

 冒頭述べたようにドイツのイメージは、技術立国というものでした。川口氏によれば、ベルリンに限ってかも知れませんが、そのイメージが完全に崩れ去る記述です。それが政治の混乱と言うより、政治の左傾化が招いていることが、大きな要因のように思います。

 日本も十数年前、民主党政権時代に混乱を来しましたが、その後の安倍元政権が立ち直しました。ただメディアや学界は相変わらず左に染まっていますので、安心はできません。加えて高度成長期に建設したインフラが寿命を迎えつつあり、かつ少子化のため人材の枯渇も心配されます。

 従って、ドイツが対岸の火事だとは思えないところもあり、しっかりと政策を練り上げて対処しなければ、日本も危うくなる恐れは十分ありそうです。加えて安全保障面の課題もあり、これからの10年は日本にとってまさしく正念場となるでしょう。

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