内部レポート入手!公式発表とは正反対、中国のコロナ感染大爆発 一方当局は責任逃れのためか数字の公表中止
一つの政策転換で、これほど国内の状況が一変するのでしょうか。連日テレビの報道を賑わしている、中国のコロナ感染爆発。少し前まではゼロコロナ政策で完全に封じ込めていたはずのこの感染症が、規制を解いた途端に、信じられないほどのスピードで拡大しているようです。
その要因は何でしょう、そしてその影響はどうなるのでしょうか。前回に続き今回は、約1週間後の中国のコロナの現状を取り上げます。ジャーナリストの近藤大介氏がJBpressに寄稿した記事から、その詳細を見てみましょう。タイトルは『内部レポート入手!公式発表とは正反対、中国のコロナ感染こんなにヤバかった 東アジア「深層取材ノート」』(12/25公開)で、以下に引用します。
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日本はクリスマスで浮かれているというのに、中国がこの世の地獄のような事態に陥っている。全土に凄まじい勢いでコロナウイルスが蔓延し、数億人の発熱者と、大量の死者を出しているもようだ。
中国で日本の厚生労働省にあたる国家衛生健康委員会の12月24日の発表によれば、23日の中国全土の新規感染者数は4128人で、死亡者はゼロである。また前日の22日の新規感染者数は3761人で、死亡者数はゼロ。まったく問題のない状況だ。
だがこれこそ、「大本営発表」というものだ。実は、国家衛生健康委員会は12月21日午後4時から、極秘の緊急テレビ電話会議を開いていた。この会議の正式名称は、「新型コロナウイルス患者の医療救急活動を強化することに関するテレビ電話会議」。主催したのは、同委員会の李斌副主任で、全国の衛生健康委員会や主要病院などと回線をつないで行った。
当局によってSNS上から削除された「極秘会議」の概要
この極秘会議の概要を、おそらく参加者の一人が、あまりにいたたまれなくなって、SNS上にアップした。それはほどなく、当局によって削除されたが、その前にかなり拡散しており、私もその内容を入手した。
私はその概要を読んで、2019年の大晦日に、湖北省の省都・武漢で、李文亮医師が世界に先駆けて、新型コロナウイルスの感染爆発を告発したことを思い出した。李医師は公安(警察)に出頭命令を受けて、「デマを流した」ことにされた。
そしてそれから1カ月余り後に、新型コロナウイルスの治療に当たっていて自らも感染し、34歳の若さでこの世を去った。今回、内部告発した中国人も、おそらく李文亮医師と同じ気持ちから行ったのだろう。以下に、その内容を訳す。
12月20日の新規感染者数、3699万6400人!
<国家衛生健康委員会の馬暁偉主任は、次のような見解を示した。全国の防疫措置をさらに一歩、調整するにつれ、春節(2023年1月22日)の大移動と春節期間中、人々が大規模に流動するようになる。
おそらくさらに多くの地域で、ウイルスの蔓延は増加していくだろう。都市部と農村部の感染率が、ともに伸びていくことが見込まれる。
かつ農村部の医療体制は底が薄い。慢性病にかかった老人が多い。いったん感染が加速的に蔓延していけば、局面はさらに厳しいものとなるだろう。
全国31の省級行政地域の中で、北京市と四川省の感染状況が最も深刻で、それぞれ1位と2位だ。どちらも累計の感染率は、すでに50%を超えている。続いて、感染率が20%から50%の間が、深刻な順に、天津市、湖北省、河南省、湖南省、安徽省、甘粛省、河北省となっている。
12月20日の新規感染者数は、おそらく3699万6400人に上る。これは総人口の2.62%にあたる。18日よりも19日の方が、そして19日よりも20日の方が感染者数が増えている。
省別に言えば、20日の感染率が高かったベスト5は、四川省、安徽省、湖北省、上海市、湖南省の順だ。都市別で言うなら、トップ4都市は、成都市、蘭州市、合肥市、上海市の順だ。
累計の感染者数で言えば、2000万人を超えたのが、多い順に四川省、河南省、湖北省だ。1000万人から2000万人の間が、多い順に湖南省、河北省、広東省、北京市、安徽省、山東省だ。都市別に言えば、累計の感染者数が500万人を超えたのが、多い順に北京市、成都市、武漢市、天津市、鄭州市、重慶市だ。
一部の都市ではピークアウトの兆しも見られるものの…
このように現在、各地域のウイルスの蔓延状況は、比較的大きな差異がある。そしてウイルスが多発している地域は、「密集空間」という特徴がある。
中でも、北京市・天津市・河北省、四川省と重慶市、湖北省と湖南省、華中地域のウイルスの拡散が比較的早い。一方、長江三角州、珠江三角州、西北と東北地方のウイルスの流行は、相対的に緩慢だ。
北京市・天津市・河北省地域のウイルス状況は現在、「高止まりの流行」の段階だ。ただ北京市はすでにピークを過ぎ、ここ数日は「緩やかに下降」の態勢だ。
それでも日々、大量の新規感染者が出ている。加えて現在、重症者のピークを迎えている。そのため、医療救急治療サービスは大きなプレッシャーに直面している。
天津市は、いままさに流行のピークを迎えている。おそらくあと2日か3日で、山を越えるだろう。河北省は全体的に「ウイルスの拡散スピードが速く、感染者が急増」している。おそらくあと3日から5日で、ウイルスのピークを迎えるだろう。
医療逼迫
四川省と重慶市地域、湖北省と湖南省地域のウイルスの拡散は迅速だ。特に四川省全域でウイルスは急速に増えており、北京に次いで2番目に感染率が50%を超えた地域となった。成都市を含む多くの都市が同時に流行のピークを迎えており、全省の救急医療の圧力は大きい。
重慶市に至っては、市内の主要地域から遠く郊外へと、急速に広がりつつある。おそらくこれから一週間前後でウイルスのピークを迎えるだろう。
湖北省全省はまさに、ウイルス流行のピークを迎えている。直近の二日間は、感染の波が下向きの傾向を示した。
12月1日以降、中国の19省で累計1100例の感染者のウイルスのゲノムから、12種類の配列のオミクロン変異株が発見されている。主要な流行株は「BA.5.2」「BF.7」「BM.7」だ。
その中で、北京市、黒竜江省、貴州省、新疆ウイグル自治区では「BF.7」の比重が高い。その他の省ではすべて、「BA.5.2」の比重が高い。いまのところ拡散力、感染力、免疫逃避で具体的に明らかにこれまでとは異なる新たな変異株は発見されていない。
猛烈な感染拡大で新たな変異株発生のリスクも増大
昨今、全国のウイルスは全体的に、加速的に広がっている段階にある。一日の新規感染者数も増え続けている。12月になってから、人々の累計の感染率は(全人口の)17%を超えた。おそらく12月下旬が、全国の多くの省で、引き続き感染のピークを迎えるだろう。
加えて、現在ウイルスが広がっている省では、現在もしくはこれから「省の中心都市から中小の都市や農村地域への広がり」が進んでいく状況にある。そしてウイルス流行のピークの1週間前後に、重症及び非重症患者のピークを迎える。
全国の各地域では確実に、流行のピークに対する応対準備の活動を強化し、ウイルスの流行の進み具合に応じて、全面的な医療救急治療など各種の準備活動を行っていかねばならない。
馬暁偉主任はこう総括した。各地域の病院は、大量の病人の面倒を看るにあたって、「病人が病院の前にいまにもやって来るのに、(一部の病院は)まだ粗暴な対処しかできていなかったり、逃避しようとしている」。どの病院もそれぞれの地域に置かれた病院として、「あれこれ考えずに、これはやらねばならない任務なのだ」として、早めに準備し、チャレンジに立ち向かうのだ>
以上である。「大本営発表」の感染者数とはゼロが4つも違う「阿鼻叫喚の世界」が広がっているのだ。大半の若者たちは、数日の高熱の後、回復に向かっているようだが、少なからぬ高齢者が犠牲になっているもようだ。ちなみに中国国家衛生健康委員会は、12月25日より、感染者数の「大本営発表」すらやめてしまった。
それにしても、一日に約3700万人もが感染したと衛生健康委員会が推定した12月21日、習近平主席はロシアからドーミトリー・メドベージェフ前大統領(統一ロシア党党首)を北京に招いて、会見した。その時の「満面の笑顔」が、CCTV(中国中央広播電視総台)のトップニュースで流されたが、「恐るべき鈍感力」の持ち主だと畏れ入ってしまった。
今後、何より恐ろしいのが、概要でも指摘されていた「新たな突然変異」である。これだけ同時期にウイルスが拡散すれば、当然ながら「新たな突然変異」が起こる確率も高まってくる。
私たちはコロナウイルスを、「もはやカゼのようなもの」と認識し始めているが、とてつもなく深刻なウイルスに変異するかもしれないということだ。その意味で、いま中国で起きている惨事は、日本人にとっても他人事ではない。
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感染爆発については、ワクチン摂取率の低さ、そのワクチンの感染力低下性能の低さ、更にはゼロコロナ政策で感染履歴者数が少なく、抗体ができていない人が殆ど、などという要因が報じられています。実は上海在住の私の中国の知人も、ワクチンを接種していながら、最近感染したという報告がありました。
記事にもあるように、当局は責任回避のためか、感染者数や重症者数の公表を取りやめています。死者数は殆ど基礎疾患の方の理由の死亡にしています。つまり実態は全く分からない、闇へ葬り去ったのです。そして感染者が増えることによる、集団免疫化を狙っているとの報道もあります。まさにこれが権威主義国家のやり方なのです。
我々も他国のこととして無関心ではいられません。その一番のリスクは感染力の更に強い変異株の発生です。日本でも次々に生まれてくる変異株によって、第8波まで感染拡大が続いています。もうこれで終わりにしたいところに、新たな変異株を持ってこられたら、たまったものではありません。水際対策をしっかりして、なんとかそれだけはお断りしたいものです。
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