ゼロコロナ止めた途端に感染爆発の中国、中央経済工作会議で自画自賛の不思議
中国では白紙デモの後、習近平政権がゼロコロナ政策を緩和、多くの規制を一気に撤廃したため、各地で混乱が発生し、感染者の急増と医療体制の逼迫が生じ始めています。
最近では全国の感染者数は、2億5千万人にも及ぶとの情報もあります。ジャーナリストの近藤大介氏が、JBpressに寄稿した記事にその実態を見てみましょう。タイトルは『ゼロコロナ止めた途端に感染爆発の中国、中央経済工作会議で自画自賛の不思議』(12/19公開)です。
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世界最先端の5Gスマートシティを建設中のはずの中国の大都市が、ゴーストタウンになり果てている――。
習近平指導部は12月7日、若者たちのデモ「白紙運動」などを受けて、ついにガチガチの「ゼロコロナ政策」(動態清零)を解除した。そうしたら起こったのは、経済の「V字回復」ではなくて、新たなコロナパニックだった。
ネット通販の商品も感染拡大で配達不能に
いまや中国の各都市で、外出しているのは、発熱外来や薬局に行く人ばかり。かつ院内感染によって医療崩壊が起こり、薬不足も蔓延している。
倉庫には、配達が放棄されたネット通販の商品が、うずたかく積まれている。もはや配達員も見当たらなくなってしまった。海外メディアは、夥しい数の感染者と、少なからぬ重傷者、果ては死者数を報じ始めている。
これは人類が、未知なる細菌に対して「新型」コロナウイルスと呼んでいた2020年初頭のことではない。あれから3年近くも経った2022年末の中国の状況だ。しかも、「ゴーストタウン現象」は、一部の都市だけでなく、中国全土に広がっている……。
そんな中、首都・北京では、人々が集結している場所があった。そこでは、12月15日と16日、毎年年末の恒例行事である「中央経済工作会議」が開かれたのだ。2022年の中国経済を総括し、2023年の中国経済の指針を決める重要会議だ。
主催するのは、経済運営の責任者である国務院総理、すなわち李克強首相のはずだが、2015年の年末の会議から、習近平主席が主導権を奪い取ってしまった。参加者は、205人の中国共産党中央委員を始め、各省庁や地方幹部などである。今年は、壇上の李克強首相の隣に、来年3月からの新首相に内定している李強党常務委員(共産党序列2位)の姿もあった。
「重要講話」でコロナの感染拡大問題をスルーする習近平
壇上中央に鎮座する習主席は、例によって周囲を睥睨するように、厳(おごそ)かかつ長々と「重要講話」を述べた。
「今年は共産党と国家にとって歴史的に極めて重要な一年だった。われわれは勝利のうちに第20回共産党大会を開催し、全面的な社会主義現代化国家のグランドデザインを描いた。
就業や物価は基本的に平穏で、食糧とエネルギーは安定し、人民の生活は効果的に保障され、経済社会の大局の安定が保たれた。
私が見るに、中国経済は強靭で、潜在力が大きく、活力は足り、各種政策の効果は引き続き顕著である。来年の経済運行は、総じて上昇することが期待できる。
(習近平)新時代の10年は、わが国の経済社会の発展が歴史的な成果を上げ、歴史的な変革を起こし、ハイレベルの発展に転換した10年だった。われわれは歴史的な絶対貧困問題を解決し、予定通り『小康社会』(ややゆとりのある社会)を建設した。わが国の発展は、新たな高みの歴史的起点に立ったのだ……」
どうだろう、この開き直りとも言える習主席の楽観的な見解は。中国の現実を見ていないのか、それとも「見せられていない」のか。習主席はさらに、来年の経済運営についても、饒舌に述べた。
SNSに溢れるヒツジマークの意味
「経済活動をうまく執り行うため、必ずや党の全面的な指導、特に党中央の集中統一指導を堅持しなければならない。社会主義の基本的な経済制度を堅持、保全し、社会主義市場経済の改革の方向を堅持し、『二つのいささかも動揺してはならない』(公有制経済の確固と発展、及び非公有制経済発展の奨励、支持、リードをいささかも動揺させない=国有企業と民営企業の共存政策)を堅持する。
来年の経済活動をうまく執り行うため、(習近平)新時代の中国の特色ある社会主義思想の指導を仰ぎ、第20回共産党大会の精神を全面的に貫徹実行し、中国式の現代化をしっかりと推進していく。
来年は『穏』の字を念頭に置くことを堅持し、穏当な中にも進歩を求める。
科学技術政策は、自立自強に焦点を当てる。社会政策は、民生のボトムラインを守り抜く。就業優先政策を細かく実行し、青年たち特に大卒の就業活動を、さらに突出した位置に置く。人口の老齢化、少子化にも積極的に対応していく。
第一に、国内の需要拡大に着手する。第二に、現代化した産業システムを、早急に建設する。第三に、『二つのいささかも動揺しない』をしっかり実行する。第四に、さらに尽力して外資を吸引、利用していく。第五に、重大な経済金融リスクを有効的に防止、溶解させていく」
あくまでも、習近平総書記を中心に、習総書記の指導を仰ぎながら、経済運営を行っていくということだ。美しい言葉が並んでいるが、問題は実行力だ。ちなみに注目のコロナ対策については、こう述べた。
「コロナ対策と経済社会の発展を、さらに一層うまく統合し、臨機応変に優れたコロナ対策を実施していく。新たなステージのコロナ防止の各種措置を真摯に実行していく。人々の病院の利用や医薬品の使用をきちんと保障し、老人や基礎的疾患を抱えた人々のコロナ対策を重点的に掌握し、健康保護と重症防止に着手する」
以上である。全体的に、習近平指導部と国民との「乖離」が、開く一方に思えてならない。いまや中国のSNS上には、「ヒツジ」の絵文字が溢れている。
来年は羊年でもないのになぜ?
「羊」は中国語で「yáng」。同音の「陽」に掛けているのだ。「陽」は太陽ではなく、PCR検査の「陽性」、つまりコロナ感染者を意味する。加えて、「羊のようにおとなしく黙らされている」という庶民の状況(秘めた怒り?)をも表している。
庶民の間では、こんな戯(ざ)れ歌が拡散している。
無症感染喜羊羊(無症状ならニコニコ羊)
渾身酸痛懶羊羊(全身痛いとボンヤリ羊)
持続低燒暖羊羊(微熱が続けばポカポカ羊)
高燒不退沸羊羊(高熱が引かないのはアツアツ羊)
一直不陰慢羊羊(一向に陰性にならないのはモタモタ羊)
一直不羊美羊羊(一向に羊にならないのはバッチリ羊)
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中国のゼロコロナ政策の転換は、予想以上に落ち込んだ経済の建て直しを狙ったものとも言えそうです。ただ感染者の急増が医療崩壊に繋がり、再度規制強化が繰り返されるかもしれません。2兎を追えない難しい状況となっていると言えます。
中国製のワクチンの性能の問題や、接種率の低さ、高齢者の増大など感染の拡大の条件は揃っています。無症状感染者をカウントから外したり、基礎疾患のある患者の死亡はコロナでの死亡から外すなど、統計数字を欺瞞で隠そうとしていますが、国民は気づいているようです。今後どうなっていくか目が離せません。
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