長谷川幸洋氏:韓国が「核武装」するかもしれない…!「安全保障オンチ」な岸田政権との決定的な差
日本は新安保3文書を閣議決定し、「反撃能力」を戦後初めて盛り込み、防衛費の大幅増にも舵を切りました。だが今だに「専守防衛」の旗は降ろさず、「非核三原則」も堅持したままです。
そうした中、韓国が核共有に前向きとなる姿勢を示し始め、なおかつ北朝鮮の動向によっては、核開発も検討対象にするという方向性を示し始めました。この日韓の核に対する考え方の違いについて、ジャーナリストの長谷川幸洋氏が、現代ビジネスに寄稿した記事から見てみましょう。タイトルは『韓国が「核武装」するかもしれない…!「安全保障オンチ」な岸田政権との決定的な差 なんと脳天気なことか』(1/20公開)で、以下に引用して掲載します。
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韓国大統領が「核開発」に言及
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が1月11日、独自核開発の可能性に言及した。岸田文雄首相は13日、ワシントンで米国のジョー・バイデン大統領と会談し、日本の防衛力強化を約束したが、核問題については「素通りした」も同然だ。それで日本は大丈夫か。
尹大統領の核武装発言について、なぜか日本のマスコミは、ほとんど報じていない。だが、当の韓国はもちろん、米国でも注目を集めている。尹大統領はいったい、何を語ったのか。
朝鮮日報によれば、尹氏は11日、韓国国防部と外交部の報告を受けた形で「北朝鮮による挑発がさらに激しくなった場合、戦術核兵器を配備し、独自の核武装を検討する」と語った。ただし「米国が各戦力を運用する過程で、韓国がそれに参加するのが現実的な手段」と付け加えた。
1月12日付のニューヨーク・タイムズによれば、尹氏は「核開発は、まだ公式な政策ではない。北朝鮮の核の脅しが高まれば、韓国は独自に核開発するか、あるいは、米国に核の再配備を求める。米国との同盟関係を強化することによって、北朝鮮の核の脅威に対抗できる」と語った。同盟関係強化とは「米国に核共有を求める」という話だろう。
韓国の野党系、ハンギョレ新聞は14日、大統領発言を取り上げ「波紋が大きく広がっている」と報じた。同紙によれば、大統領は「韓国の科学技術で、早期に韓国も(核兵器を)保有できる」と語ったという。
尹大統領が核開発の可能性に言及するのは、これが初めてだ。日本のマスコミが報じないのは半信半疑だったせいかもしれないが、感度が鈍すぎる。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、韓国では核武装の議論が高まっていた。大統領発言は思いつきではない。
沈黙を続ける岸田政権とマスコミ
マスコミの鈍さは、日米首脳会談についての報道にも表れている。左派マスコミは別として、概ね「日米同盟の抑止力を強化」とか「反撃能力の協力で一致」などと前向きに評価したものの、核問題についての解説や報道は皆無に近かった。識者たちのコメントも同様だ。
日米首脳会談の共同声明は「バイデン大統領は、核を含むあらゆる能力を用いた、日米安全保障条約第5条の下での、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメント(関与)を改めて表明した」とほんの一言、核に触れるにとどまった。
この素っ気なさについて、私が見た限りでは、産経新聞が社説で「物足りない点もある。…中国、北朝鮮、ロシアが核戦力を増強する中で、日本を守る核抑止態勢の具体的強化策は示されなかった。今後の課題である」と書いたくらいだ。
いまや「核の脅威」は避けて通れない。なぜなら、日本は中国、ロシア、北朝鮮という核を保有する独裁国家に囲まれている。次に、北朝鮮は繰り返し、日本周辺にミサイルを撃ち込んでいる。そして、ロシアは現実にウクライナを核で脅しているからだ。
にもかかわらず、岸田政権は「核の脅威」など存在しないかのように、核による反撃能力について、まったく沈黙している。昨年12月23日公開コラムで指摘したが、先に閣議決定した国家安全保障戦略など防衛3文書は「非核3原則を維持し、拡大抑止を含む日米同盟が安保政策の基軸」と書いたにすぎない。
1月11日にワシントンで開かれた防衛・外務閣僚による日米安全保障協議委員会(2+2)の共同発表は「米国の核態勢の見直しについて、突っ込んだ議論を行い…実質的な議論を深めていく意図を有していることを改めて表明した」と書いた。これも裏を返せば、実質的な議論はなく「これから議論しようという意志を確認した」だけだ。
これ1つとっても、韓国との違いは鮮明である。
韓国は北朝鮮の脅威に対抗して、独自の核武装さえ選択肢の1つとして検討しようとしている。日本の岸田政権は核武装どころか、米国との核共有も求めていない。それどころか「核を持たず、作らず、持ち込ませず」の非核3原則を唱え、米国の核持ち込みも否定している。バイデン政権の言葉を信じて疑わないかのようだ。
バイデンは高笑いしている
なぜ、こうなってしまうのか、といえば、理由ははっきりしている。岸田政権は「核廃絶」を看板に掲げているからだ。主要7カ国首脳会議(G7サミット)の広島開催が象徴しているように、岸田首相にとって、核廃絶は最重要政策だ。
バイデン大統領も首脳会談で「核兵器のない世界に向けて、ともに取り組んでいく」と同調した。だが、そんな言葉を額面通りに受け止めていいのか。米国が「核なき世界に向けて、日本とともに取り組む」と言うのは、それが「米国にとって都合がいい」からだ。
日本が核廃絶を唱える限り、日本は絶対に核保有を言い出せないし、米国との核共有も要求できない。自分が「核を捨てよう」と言っているのに「オマエの核を使わせてくれ」などというのは、完全に矛盾してしまう。それこそが、米国の望むところなのである。
日本が自前の核を保有せず、米国との核共有も言い出さなければ、日本の運命は米国が握ったも同然の状態が続く。日本の安全保障を約束する代わりに、米国は圧倒的に有利な立場を維持できる。
米国のホンネは、いま核を捨てるつもりなど、まったくない。それは「見果てぬ遠い将来の夢」にすぎない。ウクライナでロシアの現実的な脅威に対峙している米国が「核廃絶に動く」などと考えるほうが、どうかしている。
「その気」はまったくないが、日本の首相が唱える核廃絶に調子を合わせているのは、そうしておけば、日本が自ら手を縛ってくれるからだ。大統領はホワイトハウスの回廊で、岸田首相の肩に手を添え、にこやかに振る舞っていたが、高笑いが止まらなかったのも当然だ。
現実を直視している韓国
韓国の尹政権は、はるかに現実的だ。先のニューヨーク・タイムズは、次のような韓国の専門家の言葉を紹介している。
〈もしも韓国が核を保有すれば、米国は同盟国を守るために核を使うべきか否か、という問題に悩まなくて済むようになる。韓国が核を持てば、米国も実際、より安全になるのだ。自前の核武装の意図を宣言することによって、韓国は北朝鮮に核開発計画の再考を迫ることができる。そして、おそらく平壌に計画撤回を迫る圧力になるはずだ〉
米国を説得するロジックの1つではある。北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に成功しかかっているいま、核をめぐる環境は劇的に変わった。米国がソウルを守るために「ニューヨークやワシントンを犠牲にしたくない」と考える可能性は十分ある。
韓国の国民も核武装に前向きだ。
シカゴ国際問題評議会とカーネギー国際平和財団が昨年2月、韓国で実施した世論調査では、回答者の71%が独自の核開発に賛成し、56%が米国の核兵器の韓国配備に賛成していた。
「独自の核開発」か「米国核の再配備」か、という二択の質問では、圧倒的多数の67%が独自の核開発に賛成し、米国核の再配備に対する賛成は9%しかなかった。逆に、米国核の再配備には40%が反対し、独自の核開発に対する反対は26%にとどまった。
なんと脳天気なことか
尹大統領発言の背景には、こうした核武装に前向きな世論がある。背景にあるのは、ロシアによるウクライナ侵攻だ。
昨年4月6日付のニューヨーク・タイムズは「ウクライナが1990年代に核を放棄したとき、ロシアに対して脆弱になるという論争があった。だが、韓国の多くの国民は『もはや議論の余地はない』と考えている。『北朝鮮の侵攻を防ぐには、核が必要だ』という声がオンライン上にあふれた」と報じた。
岸田政権は、なんと脳天気なことか。
自民党も似たようなものだ。亡くなった安倍晋三元首相が昨年2月、米国との核共有を問題提起したことなど忘れたかのように、岸田政権がお印のような反撃能力の保有を言っただけで、すっかり満足してしまったように見える。
安倍氏は草葉の陰で泣いているだろう。核問題に関する限り、私は「日本は韓国に学べ」と言いたい。
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反日国家「韓国に学べ」とは、正直言いたくないのですが、こと「核」の問題に関しては学ぶ必要があるでしょうね。安部元首相亡き後、誰が核の共有や開発を提唱するのでしょうか。岸田首相に期待できない今、閣僚の中から声を大にする人物が出てくることを願わずにはいられません。
「反撃能力」を保持することでさえ、大きな転換だと騒ぐ日本。しかし今まで政治家もメディア人も学者も含めて、そうでなかったことの方が不思議だと思わない国民が多いことこそ、安全保障に関しては如何に「お花畑」に埋もれてきたかを物語っています。
核の被害国だから反核を主張し絶対に保有しない。これは戦争に負けたから軍事力を持たない、に通じる、非論理の極みだと思います。核の被害国だから二度と核に脅かされないよう、核を保有する。戦争に負けたから、負けないように軍事力をより増強する。この方がよほど論理的だと私は思います。非論理を強制されたのはGHQのWGIPからなのです。今こそ日本人は覚醒せねばなりません。
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