小池都知事が打ち上げた少子化対策「月5000円支給」の意義と効果、対して岸田首相の「異次元の少子化対策」の評価は?
岸田首相が年頭の記者会見で、「異次元の少子化対策に挑戦する」と語りましたが、具体的中身は未だ見えて来ていません。これから詰めるのでしょうが取りあえず掲げたのは、〈1〉児童手当を中心とした経済的支援の強化〈2〉学童保育や病児保育、産後ケアなどすべての子育て家庭への支援拡充〈3〉育児休業の強化を含めた働き方改革の推進――の3本柱です。だが、いずれも既存政策であり、専門家の間からは「異次元」とはほど遠いという意見も出てきています。
ただ、昨年には新生児が80万人を切ろうとしている現在、アドバルーンを上げるだけでもまだいいのかも知れません。このまま不作為を続ければ、日本の将来は本当に暗澹たるものになるでしょうから。
そうした中、東京都の小池知事が、子育て家庭に所得制限なしの「一人月5000円支給」の少子化対策を発表しました。これについてデイリー新潮が、次のようなコラムを公開していますので以下に引用します。タイトルは『“パラサイト・シングル”の名付け親が語る、「小池都知事」少子化対策の希望と絶望』(1/09公開)です。
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小池百合子・東京都知事がブチ上げた「月5000円支給」の少子化対策が大いに注目を集めている。「バラマキ」と批判の声がある一方で、都内の子育て世帯からは「歓迎」の声も聞こえてくる。果たして少子化に歯止めをかけることはできるのか? 専門家に聞くと、国や地方自治体が目を背けてきた「少子化」問題の真因が見えてくるのだった。
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1月4日、小池都知事は年頭あいさつで「もはや一刻の猶予も許されない。“育ち”を切れ目なくサポートする給付を行う」と述べ、都内の0~18歳を対象に1人当たり月5000円程度の給付を行う考えを明らかにした。
都内の0~18歳人口は約193万人(2022年1月時点)。所得制限は設けない方針のため、給付額は単純計算で年約1200億円にのぼることになる。都の22年度の一般会計当初予算(約7兆8000億円)の約1.5%に相当するが、小池氏は「行政改革で生じた財源を充てる」意向を表明している。
「小池知事は現在編成中の23年度予算案に関連費用を盛り込み、新年度からの給付開始を目指しています。5000円の根拠としては、家計に占める子供1人あたり教育費の全国平均(約7000円)と東京平均(約1万2000円)の差額から算出したと説明しています」(全国紙都庁詰め記者)
“バラマキ”批判に対し、小池都知事は「未来への投資」だと反論。実際、「少子化」が年々加速しているのは事実で、昨年の全国の年間出生数は1899年の統計開始以来、初めて80万人を割り込む見通しだ。また1人の女性が生涯に産む推計人数をあらわす合計特殊出生率は東京都で1.08(21年)と、全国平均の1.3(同)を大きく下回り、5年連続で低下した。
心配は“いま”より「将来の学費」
岸田文雄首相の「異次元の少子化対策」という意味不明なスローガンに比べ、具体策を打ち出した点を評価する声は多いが、その実効性については賛否が割れている。
『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』や『パラサイト・シングルの時代』など多数の著作がある、家族社会学の第一人者で中央大学教授の山田昌弘氏は、小池氏の“挑戦”をこう評する。
「問題の解決に向けた“一歩前進の動き”と評価していますが、少子化対策はそもそも国全体で取り組むべき課題であり、東京都でできることには限界があります。それでも今回の給付が開始されると、2人目や3人目を産むのを迷っていた中間所得層の世帯などに対し、“産んでみようか”と背中を押す効果はあると考えます」
一方で、
「少子化対策は、お金を配るだけでなく、子育てに費やす時間を確保できるよう労働時間の短縮や、特に男性の育休取得の環境整備などとセットで行うことでより効果が発揮されますが、これらは地方自治体の裁量を超えてしまう。また少子化が加速している背景には、“いま、お金が足りない”から子供を産めないというより、将来の子供にかかるお金のほうが心配だからと“産まない”ほうを選択する若者が増えている実態があります。つまり将来の学費の心配をなくしてあげたほうが、少子化対策としての効果は大きい。1980年代は年間40~50万円だった私立大学の授業料は現在90万円を超えるまでになっています。少子化対策で考えるべき第1の条件は高校以降、大学や専門学校までの高等教育にかかる費用を少なくすることですが、地方自治体だけで完結する話ではありません」(山田氏)
重要なのは、今回の東京都の対策に続く形で、国や他の地方自治体が少子化対策に乗り出すことだという。
ハンガリーは「25兆円」支出で出生率上昇
非正規雇用に就く男女が年々増え、正社員であってもかつてのように将来の賃金上昇は望めなくなるなど、若者を取り巻く経済状況が不透明さを増している点も少子化問題に大きな影を落としている。
「少子化の根本原因を考えた時、“若者の将来の経済不安”という要因は外せません。しかし、その不安を払拭するためには相当の財政支出が必要になる。ハンガリーのオルバン政権は少子化対策にGDPの5%弱を使って、出生率を上げたことで知られます。日本に当てはめると年約25兆円になる。結婚した若者に住宅を安く供給する、大学や専門学校の学費を無料にする、奨学金返済を半減させる……などの思い切った支出をしなければ、実際、子供は増えないと考えています」(山田氏)
それが無理ならば、少子化を受け入れるしかないが、山田氏によれば、それは日本人の生活が「徐々に貧しくなることを受け入れることと同じ」だという。このままでは小池都知事の取り組みも“焼け石に水”となりかねない。国も巻き込んだ、さらなる対策の強化が求められている。
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このブログでも少子化問題は何度も取り上げていますが、少なくとも首相自ら会見で、少子化問題を取り上げたことの意味は大きいと思っています。問題は具体策とその実施時期、更には財源をどうするか、と言うことでしょう。
記事の中に出てくる山田氏も言うように、今子供を持っている親への支援だけでなく、これから子供を産む対象の人への支援、更には結婚しない人が増えていますが、そういう人への対応など、相当な深みを持った政策検討が必要とされます。日本でもハンガリーのような思い切った策が打てるかどうかは分りませんが、いずれにしろ相当思い切った政策を打たねば、少子化の解消は困難だと思われます。
子ども家庭庁の発足など、環境を整える必要もありますが、以上述べたような取り組みを大胆かつ早急にとり進める必要があります。小池都知事の政策はその呼び水になれば、一定の効果をもたらしたと評価できるかも知れません。
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