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2023年1月10日 (火)

エネルギー安全保障の中核を担えるか、危機に瀕する原子力がGX「グリーントランスフォーメーション」の主役になる道

15_20230109153301  前回の食料の安全保障に続いて、今回はエネルギーの安全保障を取り上げます。日本はエネルギーの大半を海外に頼っていて、その自給率は2019年度で12.1%。東日本大震災の直後の2012年に6.7%と底を打ち、その後徐々に回復してきていますが、その多くは再生エネルギーの増加が寄与してきています(全エネルギーに占める割合2010年度4.4%から2019年度8.8%へ)。

 ただそれと同時に、福島原発事故の影響で、多くの原子力発電所が稼働中止となったため、原子力の割合が減っています(同2010年度11.2%から2019年度2.8%)。その減少分を補うため、毎年数兆円に上るLNGや燃料炭の輸入を追加輸入しています。

 それが電力コストを押し上げる要因にもなっています。2010年から2019年までの推移は下図の通りです(2019年度は産業向けは17.0円/kwh、家庭向けは24.8円/kwh)。

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 ただ2022年に入って、ロシアのウクライナ侵略が始まり、その影響で8月には産業向けは21.1円/kwh、家庭向けは27.9円/kwhと一気に高騰しています。これは化石燃料依存度80%半ばと非常に高いため、世界のエネルギー価格の高騰の影響をまともに受けているためでもあり、またもともと単価の高い再生エネルギーの比率アップも影響しています。これでは日本の産業競争力に大きなマイナス要因になり、また生活負担の増大にもつながっています。

 そこで当然浮上してくるのが原子力の再利用です。稼働停止の原発の再稼働だけでなく、次世代の革新的原子炉の開発や核燃料サイクルの大幅な見直しも含まれます。その点の詳細を経済学者でアゴラ研究所代表取締役所長の池田信夫氏がJBpressに寄稿した記事から引用して紹介します。タイトルは『危機に瀕する原子力が「グリーントランスフォーメーション」の主役になる道 宙に浮いた核燃料サイクルを転換するとき』(1/06公開)です。

 日本原燃は2022年12月26日、青森県六ヶ所村の使用済み核燃料の再処理工場の完成目標時期を2年先送りして「2024年度上期のできるだけ早期」に延期すると青森県に報告した。当初は1997年に完成する予定だったが、これで26回延期されたことになる。

 直接の原因は、原子力規制委員会の審査に合格する見通しが立たなかったことだが、本質はそこではない。核燃料サイクルは日本の原子力開発の根幹だったが、その目的がわからなくなり、宙に浮いてしまったのだ。

原子力政策の「静かな大転換」

 原子力に消極的だった安倍政権に対して、岸田政権は原発の再稼働や運転延長を認めている。GX(グリーントランスフォーメーション)という脱炭素化政策でも、最大の力点が置かれているのは原子力である。

 その基本文書である「GX実現に向けた基本方針(案)」には「次世代革新炉」という言葉がたくさん出てくるが、その中身は今と同じ軽水炉である。かつて次世代の原子炉とされた高速炉はなく、核燃料サイクルという言葉は1回しか出てこない。

 これはあまり注目されていないが、原子力政策の大転換の第一歩である。1956年に始まった日本の原子力開発長期計画では、軽水炉は過渡的な技術であり、最終的にはウランを軽水炉で燃やしてできるプルトニウムを再処理して高速増殖炉で燃やし、消費した以上のプルトニウムを生産する核燃料サイクルが目的とされた。

 これによってエネルギーを自給できない日本が、無限のエネルギーを得ることが最終目標だった。1973年、石油危機で資源の枯渇リスクに直面した通産省は、原子力開発を国策として核燃料サイクルを建設した。

 しかしサイクルの中核となる高速増殖炉(FBR)は各国で挫折し、日本でも2016年に原型炉「もんじゅ」が廃炉になった。それでも経産省は高速炉開発の道を探ったが、2019年に提携先のフランスが開発を断念した。高速炉を「次世代原子炉」とする路線は成り立たなくなったのだが、日本はその路線を変えられなかった。それはなぜだろうか。

核燃料サイクルで核兵器が製造できる

 核燃料サイクルには、もう1つの目的があった。プルトニウムは核兵器の材料になるのだ。中国でもロシアでも、高速炉はプルトニウムの生産装置である。1968年に核拡散防止条約(NPT)ができたのは1964年の中国の核実験がきっかけだが、そのとき米ソの隠れた目的は、日本と西ドイツの核武装を封じ込めることだった。

 日本はNPTのそういう不平等性を知っていたので、これに抵抗した。条約に署名したのは発効直前の1970年2月、批准は1976年6月だった。「非核三原則」を唱えた佐藤栄作も、最初はNPTに反対だった。こういう日本政府の迷走がアメリカに「日本は核武装するのではないか」という疑惑を抱かせた。

 1977年にカーター政権が核拡散を防止するという理由で再処理を放棄し、日本にも再処理をやめるよう求めたが、日本は拒否した。原子力施設はIAEA(国際原子力機関)が査察していたが、日本は事前に一括して再処理に同意する「包括的事前同意」を求め、1988年に日米原子力協定を結んだ。この協定では、使用目的のないプルトニウムは保有してはいけない。

 今の核燃料サイクルの目的は再処理して高レベル核廃棄物の体積を減らすことだが、危険なプルトニウムは増えてしまう。それをプルサーマル(MOX燃料を燃やす軽水炉)で消費する計画だが、MOX燃料の使える原子炉は全国で3基しかなく、日本が47トン保有するプルトニウムを毎年1トン消費するのがせいぜいだ。

 かつてFBRはエネルギーを無限に増殖する「夢の原子炉」とされたが、今では非在来型ウランの埋蔵量は300~700年分、海水ウランはほぼ無尽蔵にあるので、経済的には意味がない。プルサーマルはウランを再処理して、わざわざ10倍近いコストのMOX燃料にして燃やす非生産的な技術である。

原発は「トイレなきマンション」ではない

 プルトニウムを増やさないためには、再処理しなければいい。使用済み核燃料を燃料棒のままキャスクに入れて、乾式貯蔵すればいいのだ。原発が「トイレなきマンション」だというのは誤りで、乾式貯蔵のスペースは発電所の敷地内に数十年分ある。六ヶ所村には300年分以上の核廃棄物を置くことができる。

 問題はそういう技術的な制約ではなく、「六ヶ所村はゴミ捨て場ではなく工場だ」という建て前で使用済み核燃料を受け入れた青森県との安全協定である。これは単なる念書で、法律で決まっているわけではないが、青森県知事が「六ヶ所村に置いてある使用済み核燃料はすべて電力会社に返す」というと、たちまち原発は運転できなくなる。

 もう1つの問題は、全量再処理をやめると核燃料がゴミになることだ。いま日本にある使用済み核燃料1万7000トンの資産価値は約15兆円(2012年原油換算)だが、これがすべてゴミになると(使用済み核燃料を保有する)電力会社は大幅な減損処理が必要になり、弱小の会社は債務超過に陥る。

 これは会計処理を変えれば解決できる。使用済み核燃料を引き続き資産として計上し、毎年少しずつ分割償却する制度を導入すればいいのだ。これは廃炉の処理で導入されたのと同じで、固定資産税は軽減され、法人税の支払いも減る。これによって電力会社の(将来にわたる)税負担は数兆円単位で軽減される。

 最大の問題は、1970年代から続けてきた核燃料サイクルを中心にした原子力開発が、根底から変わることだ。これまで次世代炉とはプルトニウムを燃やす高速炉であり、軽水炉はそれまでのつなぎという位置づけだったが、サイクルで回るはずの核エネルギーが袋小路に入ってしまった。

 余剰プルトニウムを減らせないと、日本は日米原子力協定違反になる。だから「余剰プルを減らす努力をしている」と言い訳することが、今ではほとんど唯一の核燃料サイクルの目的だが、日本が核武装するには日米同盟を破棄する必要があり、現実には不可能だ。原子力協定は見直してもいいのではないか。

このままでは日本の原子力産業は終わる

 日本の原子力産業は、いま絶滅の危機に瀕している。民主党政権が2011年の福島第一原発事故の後、全国で54基動いていた原発をすべて止め、今も9基しか運転していない。この12年間に失われたのは、電力や燃料だけではない。発電所に勤務していた作業員や開発に携わる技術者など、多くの人材が失われた。

 政府の掲げるGXも「2050年カーボンニュートラル」も、原子力なしでは不可能だが、日本では原子力は民間企業でリスクの負い切れない事業になった。電力自由化で火力や原子力への過少投資が発生して電力危機の原因になっているが、原子力は特に深刻である。

 日本原子力発電を受け皿会社にして、BWR(沸騰水型原子炉)の東京電力・中部電力・東北電力・北陸電力・北海道電力の原子力部門を原子力公社に統合し、核燃料サイクルを含めて国有化する構想も経産省で検討されているという。

 国有化には巨額の国費が必要になるが、原子力損害賠償・廃炉等支援機構にはすでに国が出資し、交付国債という形で東電に約8兆円の融資が行われている。廃炉・賠償・除染にかかる21.5兆円を東電が今後40年かけてすべて負担する、という政府の計画を信じる人はいない。最終的には、数兆円規模の国費投入が行われるだろう。

 つまりこれは国の原子力救済を間接的にやるか直接的にやるかだけの違いである。政府が原子力を救済することは、GXを進める上でも重要だ。今の「生かさず殺さず」の状態では、原子力産業に未来はない。

 技術者の士気は下がり、大学の原子力工学科はなくなり、若い人材は集まらない。再処理や高速炉に投入されてきた人的・物的資源を、政府が次世代革新炉に再配分し、世界でもトップレベルの原子力技術を残すべきだ。残された時間は少ない。

 高速増殖炉「もんじゅ」の挫折、再処理工場の相次ぐ完成延期、そしてその中で起きた福島第一原発の炉心溶融事故で、日本の原子力政策は頓挫しました。そしてその結果生じた、再生エネルギーと化石燃料への転換で、日本の電力料金は世界でも最も高いレベルになるという、最悪の状態になっています。

 更には原発の再稼働や新しい発電所の建設が、近隣住民の反対や司法の判断によって思うように進まず、計画停電など電力危機が間近に迫ってきているのが現状です。従って先ずは使える設備から利用可能にすることが喫緊の課題で、そこから将来へ向けて新たな展開を考えるべきでしょう。

 化石燃料の利用をこれ以上増やすのは、GXへの逆行や外貨の垂れ流しにつながるため、得策ではありません。再生エネルギーもコストや供給安定性の問題があります。従って当面は原子力利用がやはり避けて通れない道でしょう。海水ウランの利用可能研究や次世代革新炉の開発と同時に、核のゴミの処理の方向付けも早急に進める必要があると思います。ここは国が主導でエネルギー安全保障政策として進めるべきでしょう。

 ある識者が指摘していたのですが、国の安全保障に関わる問題について、例えば軍事基地問題や、原発関連の施設などは、国が指定した場所に設置できるようにすべきだ、と。もちろんその地域住民の意見は最大限に考慮するにしても、最終的な決定権は国に置くべきだと言うことです。そうしなければ新しい自衛隊の基地や核のゴミ処分場のような案件は、いつまで経っても決まりません。賛同したいと思いますね。

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