コロナ交付金で病院黒字化「幽霊病床」も 知られざる税金の無駄遣いが会計検査院調査で暴かれる
コロナ感染の第8波の収束が見えない中、国のコロナ関連の支出が増大し続けています。ワクチンや検査費に加え、病院に対し病床確保のための交付金も、増え続けているようです。
昨日の読売新聞に、この病院への給付金の詳細記事が掲載されていたので、今回はこれを取り上げます。タイトルは『コロナ交付金で病院黒字化、「幽霊病床」も…検査院調査』(1/14公開)で、以下に引用します。
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「患者拒否でも支給」見直し要求
会計検査院は13日、新型コロナウイルス患者向けの病床を確保する国の交付金事業について検査報告書を公表した。赤字だった病院が多額の交付金によって黒字に転換している実態や、交付金の対象なのに患者を受け入れられない「幽霊病床」の存在が指摘された。(社会部 山下真範、成田沙季)
3兆円
交付金は、コロナ患者を受け入れる空き病床と、コロナ診療のために稼働を停止した病床が対象で、都道府県を通じて支給される。当初は1床あたり1日最大9万7000円だったが、2度の引き上げで43万6000円に拡充。今月11日現在、確保数は全国で4万8808床に上る。
2020~21年度の受給額は全国3477医療機関で計3兆1029億円に上った。検査院がこのうち国立病院や労災病院など269病院の収支を調べたところ、コロナ禍前の19年度は平均約3・8億円の赤字だったのに、21年度は約7億円の黒字に転換。医業収支は約7億円の赤字だったが、病床確保交付金など補助金の受給額が平均約14億円に上っていた。
検査院の聞き取りに対し、延べ208病院が「確保病床への患者の受け入れを断ったことがある」と回答した。理由について、60病院(29%)が「看護師不足」を挙げた。離職者の増加やクラスター(感染集団)の発生などやむを得ない事情もあったとみられるが、検査院は「患者を受け入れられない病床に交付金を支給するのは適切ではない」とし、使用可能な病床に交付対象を絞るなどの見直しを厚生労働省に求めた。
看護師不足
「結果的に幽霊病床になったが、医療現場の過酷な状況も理解してほしい」。検査を受けた病院運営法人の職員はそう話す。
医療現場では、離職中の「潜在看護師」の復職支援などが行われてきたが、看護師不足の解消は容易ではなかった。職員の勤務先は全国で病院を運営しており、コロナ患者が増えた場合は病院間で看護師を融通し合うとして交付金を申請した。
だが、21年夏がピークの「第5波」で感染が全国に広がると、都心部の運営病院で看護師が不足。患者の入院要請を断らざるを得なくなったという。
感染拡大に歯止めがかからない中、自治体は病床確保に躍起になっていた。埼玉県の幹部は「とにかく病床数の確保が最優先で、実際にどれくらい稼働できるかは考える余裕がなかった」と振り返る。
政府の財政制度等審議会の分科会でも21年10月、約15億円を受給しながら受け入れ患者が年間わずか25人だった例などが報告されていた。厚労省は22年以降、病床使用率が地域平均の7割に満たない医療機関への支給を30%減額するなどしているが、検査院は、事実上稼働できない病床に交付金が出ているケースは現在もあるとみている。
逆転現象
検査院は、コロナ診療のために稼働を停止した休止病床についても、問題点を指摘した。
休止病床への交付は、コロナ診療に人員を集中させるために閉鎖した病床や、院内感染を防ぐために一部を使えなくした病床について、休止しなければ収入になっていた分を 補填する趣旨がある。
ところが、コロナ禍前の病床使用率にかかわらず、全床分を交付する仕組みになっていた。このため、元の病床使用率が著しく低かったケースでは、休止病床にすれば収入が増える「逆転現象」が起きていた。
検査院が382病院の休止病床を調べたところ、コロナ禍前の病床使用率が5割に満たない病院が17(4・4%)あった。検査院は、元の病床使用率を踏まえて交付金額を定める仕組みにするべきだとしている。
対策費 76兆円執行…巨額予算 国債頼み
国のコロナ対策費については、会計検査院が昨年11月、2019~21年度の予算額が94兆円に上り、うち76・4兆円が執行されたとの検査報告書を公表した。22年度も含めれば100兆円を超えるが、多くは国の借金である国債に頼っており、将来にツケを回している形になる。
検査院の報告書によれば、94兆円の内訳は「経済・雇用対策」が60・2兆円で最も多く、病床確保の交付金を含む「感染症防止策」は18・6兆円。スルメイカのモニュメントなど使途の是非が議論を呼んだ「地方創生臨時交付金」は15・1兆円だった。
病床確保交付金については、看護師数などが基準に満たないのに一般病床より単価の高い高度治療室(HCU)として申請するなど、過大支給が32病院で計約55億円あったことも指摘されていた。
今後、新型コロナの位置づけが感染症法上の「2類相当」から「5類」に引き下げられれば、患者への入院勧告などの根拠はなくなる。だが、厚労省の助言機関は11日、「医療 逼迫ひっぱく 時の調整機能を維持する必要がある」などとして、引き続き病床確保のための財政措置を行うよう政府に求めた。来年度以降も、巨費が投じられる可能性は高い。
真野俊樹・中央大教授(医療経営学)は「感染収束が見通せない中では当面、国が病床確保などを支援すべきだ」とした上で、「巨額の公費投入について国民の理解を得るため、検査院の指摘も踏まえた適切な制度設計を進めていく必要がある」と話した。
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安倍政権、菅政権そして現在の岸田政権と、三代に渡って感染の波が継続する新型コロナウイルス感染症。国民を疫病から守るという号令の元、ワクチンや検査からダメージを受けた業界への交付金、そして治療まで一貫して国費でまかなってきました。
その額が100兆円を超えていると聞いて驚きますが、その中でも雇用対策交付金と同様かそれ以上の、病床確保の交付金に大きな無駄が生じている実態が浮き彫りになっています。
以前から使用していない病床への交付金の噂は聞いていましたが、作為を巡らせ、意図的に多くの交付金を受けようとする病院の実態も明らかになっています。それまでの赤字経営から一転黒字になったと言うことは、明らかに過剰な交付を行っていると言うことでしょう。
確かにコロナ病棟は大きな負荷がかかり、日夜患者への対応で大変なのは分りますが、一方でこう言う実態を目にすると、その抜け穴を塞ぐよう行政に注文をつけなければなりません。国債で補填しているとは言え、将来への負担を少しでも減らす努力は行政の責任でしょう。
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