高市早苗氏:有事ではまず「自分の国は自分で守る」、日本の現状「新たな危機の時代に突入した」
高市早苗経済安保相は昨年、岸田首相の防衛費増額のための増税論に果敢に反論を繰返しました。最後には増税の結論を最終的には先に延ばすことにより、矛を収めた形でしたが、彼女の今このタイミングでの増税に反対する姿勢が伝わったと思います。しかも自身の進退もかけて。
その高市早苗氏が夕刊フジのインタビューに応じました。昨日付のzakzakにその記事が掲載されています。タイトルは『経済安保「自分の国は自分で守る」高市早苗氏、単独インタビュー 日本の現状「新たな危機の時代に突入」特定秘密保護法、経済版を作りたい』(1/1公開)で、以下に引用します。
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高市早苗経済安全保障担当相が、夕刊フジの単独インタビューに応じた。日本を取り巻く安全保障環境は極めて厳しい。中国は軍事的覇権拡大を進め、ロシアなどと合同軍事演習を繰り返している。北朝鮮は核・ミサイル開発を強行している。「台湾有事」「日本有事」に備えた防衛力強化は急務で、経済の側面から日本の国益を守り切る経済安保が注目されている。激動の時代を乗り切る、意気込みを力強く語った。(中村昌史、海野慎介)
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――2022年を振り返り、どう感じるか
「とにかく、激動だった。ただただ無念なのが7月8日。安倍晋三元首相が、ああいうかたちでお亡くなりになった。辛さを、ずっと、引きずっている」
――安倍氏は、21年の自民党総裁選で高市氏を推した。外交・安全保障などの理念継承も期待される
「1997年ごろから、教育問題に始まり、さまざまな勉強会でご一緒した。安倍氏の理念は突き詰めると『国力を強くする』ということだったと思う。国力は経済力であり、国防力でもあり、今や情報力、サイバー防御力など、多様な分野に広がった。安倍氏はずっと、『自分の国は自分で守る』という信念を語っていた。日本はまさに、その局面にある。力をつけなければならない」
――自民党政調会長から岸田文雄内閣入りした
「試行錯誤のなか、自分なりの達成感はある。総裁選に名乗りを上げた後、政調会長を務めた。22年8月10日からは、経済安全保障担当相として、新たな挑戦が始まった」
――日本を取り巻く情勢をどう見るか
「拡大する中国の軍事動向、ロシアのウクライナ侵略、北朝鮮の核・ミサイル開発など、国際社会は戦後最大の試練を迎えている。日本も『新たな危機の時代』に突入したといえる」
――「台湾有事=日本有事」の懸念が高まる
「有事では、まず日本が主体的に対応する。これを忘れず、必要な能力をつけなければならない。日米同盟は重要だが、『日米防衛協力のための指針(ガイドライン)』でも、何か事があれば、まずは日本が主体的に対処し、米国はこれを補完、支援する立場だ。有事に米軍が最初から戦ってくれるのではない」
――戦略、政策が問われる
「まさに国防もそうだが、政調会長として短期間で政権公約を作り、全国遊説し、21年の衆院選に勝利できた。22年の参院選の公約もうまくまとまり、結果もよかった。その点での達成感はある」
――経済政策の指針となる「骨太の方針」で、プライマリーバランス(PB=基礎的財政収支)の黒字化にこだわる財務省とのせめぎあいがあったと聞く
「政調会長として、やはり『骨太の方針』が一つの山だった。党全体の会議でさまざまな意見が出たが、最後は一任していただいた。岸田首相と対面で議論し、『ただし、重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない』との一行を加筆していただいた。財政規律を重んじる内閣の中にあっても、非常に影響力のある一行を盛り込めた。食料やエネルギー、経済などの安全保障を徹底し、政策の安定性、継続性を確保するうえで、重要政策は当初予算で措置することなどが盛り込まれたのも成果だろう」
――防衛費増額では、岸田首相の「増税」方針が波紋を呼んでいる
「政調会長としてまとめた自民党公約には、『NATO(北大西洋条約機構)諸国並みの対GDP(国内総生産)比2%以上を念頭に』と書き込んだ。参院選ではさらに踏み込み、『5年以内に抜本的に強化』『NATO諸国並みの対GDP比2%以上』と明記した。中国、ロシア、北朝鮮。日本は、隣国すべてが核保有国だ。3カ国のリーダーへのメッセージでもあることを意識して、公約を打ち出した」
――閣僚として初めて、亡命ウイグル人でつくる「世界ウイグル会議」のドルクン・エイサ総裁と面談した
「中国の人権侵害の実態について、さまざまな話をお聞きした。有意義だった。人権尊重も自民党の公約だ。岸田首相も人権担当補佐官に中谷元氏を置いている。人権外交にしっかりした問題意識をお持ちだと確信している」
――自身の担当にも関連する
「人権問題は経済安全保障にも関わる問題だ。中国の人権状況に対して、欧米では、強制労働で生産された製品の輸入を規制した」
――日本の姿勢が問われる
「中国をめぐっては近年、サイバー攻撃などが主要課題だったが、人権が重視されるようになった。米国は昨年から、エンティティリスト(=米商務省が管轄する貿易取引制限リスト)で、人権侵害に関与する団体・企業を対象に追加した。米国の輸出管理は日本にも適用され、罰則もある。欧州も同様だ。人権は、経済安保にも関わるテーマだ。政界、経済界を含め日本全体が高い意識を持たないと、サプライチェーン(供給網)から弾き出される」
――具体的な課題は
「いま歯を食いしばって頑張っているのは、機密情報の取り扱い資格『セキュリティー・クリアランス』(適格性評価=SC)だ。これを確実に法制化しなければならない。すべてが手探りで、まずはG7(先進7カ国)の情勢を調べた」
――G7は進んでいたか
「詳細は機微に触れ、なかなか教えてもらえなかった。恥を忍び、英国のシンクタンクに個人的に依頼して調べると、G7各国が、相当しっかりしたSCを持っていることが分かった」
――日本の現状は
「日本唯一の法定のSC制度は、安倍氏が政権の命運をかけてつくった『特定秘密保護法』に基づく適性評価の仕組みだけだと思う。ただ、秘密の指定対象は『防衛』『外交』『テロ』『スパイ行為』の4類型で、各大臣が『特定秘密』指定した情報などにアクセスすることにしかならず、対象が非常に限定的だ。その経済版を作りたい」
――具体的には
「特定秘密保護法改正で対応する手もあるが、目的を考えると少し違うと思っている。例えば、最近の社会では、民生と軍事の両方で活用される『デュアルユース』の先端技術があふれている。民間でも活用される技術を、特定秘密に含めて指定するのは現実に即していないだろう。そこで、経済安全保障推進法の改正案で、『産業版SC制度』をつくりたいと私は考えている」
――法制化の課題は
「G7は友好国だ。このチームから弾き出されるのは、国益や経済上、得策ではない。特定秘密保護法では、対象情報の範囲のほか、適性評価で調査できる事項も法律で限定されている。一方、海外のSCでは、国籍をはじめ、家族の渡航歴、思想信条、忠誠心などまでが調査項目だ。隣人や知人へのヒアリングも行われる。日本が受け入れられるかが難しい」
――なぜ導入が必要なのか
「このままでは、日本企業が、海外との共同研究、外国政府の調達、民間企業同士の取引などから排除される恐れがある。これが大きな理由だ。特定秘密保護法では、特定秘密にアクセスしたくない人は、国家公務員でも適性評価を受ける必要はない。強制ではなく拒否できる。一方、SCを有していないと、積極参入を希望する日本企業や個人が大変苦労することになるかもしれない。政府に限らず、海外の民間企業との取引でも、情報通信、量子技術、AI(人工知能)など、多くの分野がデュアルユースだ。SCだけでなく、他国企業からの調査を求められる状況まで出てくる。なお、企業における従業員に対する自主的なバックグラウンドチェックについては、労働法制がネックとなってやりづらいという声があり、ここへの対応も考えなくてはならない」
――新年への意気込みと目標を
「いま申し上げたSCを、いかに法制化できるか。日本政府として、大変な作業に挑むことになる。1年で出来上がるかどうかも分からない、気が遠くなるような作業だが、何とか法律にしたい。もう一つは、G7の科学技術相会合の議長を務める。さまざまな技術の共有をめぐる意識を議論したい。宇宙担当相として『デブリ(ごみ)』の問題にも取り組みたい。宇宙空間を浮遊する中国やロシアの衛星破壊実験で生じた破片など、危険なデブリが問題化している。日本は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と民間企業が協力してデブリ回収技術を開発している。ビジネスの可能性にもつながる話だ。国際ルール策定も含め、壮大な宇宙分野にも挑戦したい」
――多忙な日々だ
「録りためたドラマを見る暇もなくなったが(笑)。国民の期待に応えられるよう、力を尽くしたい」
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高市氏は、自民党総裁選出馬の際に、様々な提言録をまとめ上げていますし、政調会長時代も参議院選の自民党の政策公約をまとめ、現経済安保相就任後もSCはじめ重要政策の法案作りにも汗を流しています。
これほど国家の政策全般にわたって幅広く研究し知見を広めている議員も数少ないでしょう。本当に他の議員も彼女のように国や国民のために重要な政策を考えて欲しいと思いますね。もちろん野党議員にも。今後とも高市氏のご活躍を期待したいと思います。
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