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2023年1月18日 (水)

再生可能エネルギーが持つ問題点、原発の代替となり得ない現実。特にコストと環境問題は無視できない

Fukakingraf_v6akhh  福島原発事故の結果、時の民主党政権が主体となって、再生可能エネルギーの開発が叫ばれました。その後各地に太陽光発電や風力発電設備が設置され、地熱発電も一部稼働して来ました。ただいずれも環境問題やコスト問題、安定供給の問題を抱え、停止した原発の代替になるような状況とはなっていません。

 今回は太陽光や地熱が抱える問題を中心に、その詳細を週刊現代が報じた記事から取り上げてみます。タイトルは『【太陽光と地熱の限界】原発はやはり必要か「各家庭の負担月1035円」再エネ促進賦課金のデタラメ』(1/15公開)で、以下に引用して掲載します。

取材の結果見えてきたのは、太陽光や地熱の「限界」だった―。「脱原発のための再エネ」という政策は、もはや成り立たない。日本人は現実を直視し、「原発」について議論するべき時に来ている。

1万円超を電気代に上乗せ

毎月送られてくる電気料金の領収書―細かな数字が並んだ「内訳欄」を確認したことはあるだろうか。「基本料金」「燃料費調整」などと書かれた並びに、「再エネ促進賦課金」という項目がある。  

これは風力や太陽光、地熱といった再生可能エネルギー(再エネ)の導入促進のために、すべての電気契約者から徴収されている負担金だ。経済産業省が毎年決定する「賦課金単価表」で試算すると、'22年度は平均的な家庭で月額1035円、年間1万2420円が再エネ促進のために電気料金に上乗せされていることがわかる(1ヵ月の電気使用量300kWh)。  

ほとんど意識しないうちに、われわれは再エネの負担を背負わされているのだ。環境を守るためなら仕方ない、と思うかもしれない。だが、再エネをとりまく「デタラメ」な実態を目の当たりにすれば、およそ納得いかなくなるはずだ。  

そもそも「再エネ促進賦課金」という制度がなぜ始まったのか。大きなきっかけとなったのは、'11年に起きた福島第一原子力発電所の事故だった。菅直人首相(当時)は「原子力エネルギーに依存してきた日本の電源構成を白紙に戻し、再生可能な自然エネルギーで再構築する」と表明、「固定価格買取制度」に関する法案を成立させた。

'12年7月に開始したこの制度によって、大手電力会社は再エネ事業者が発電した電気を政府が決めた固定価格で20年間にわたって買い取ることになった。そして再エネ事業者は固定買取価格の恩恵を受けることで、施設の造成費や建設費などの投資コストも回収できる。いわばノーリスクで事業展開できる制度となっていたのである。  

原子力の代わりにはなれない

その分、国民負担は増えることになる。経産省は「調達価格等算定委員会」を設置し、5人の有識者に妥当な金額を検討させ、業界団体や再エネ事業者へのヒアリングも行っていた。  

負担増を避けたい日本商工会議所や経団連は「過度に高い買取制度の設定は厳に避けて」欲しいと要望。一方で、再エネ普及のために固定価格を高くするべきだ、と主張したのがソフトバンクの孫正義社長(当時)だった。孫氏は当時、太陽光発電事業への進出を予定しており、1kWhあたり「40円」でなければ「採算があわない」「それ以上はたくさんあればあるほどいい」と要求。さらにメディアを通じて、この先10年間で、月額「コーヒー一杯分(200円)」の国民負担が増えるだけだと訴えた。

しかし、先にも述べたように、いまや標準家庭の年間負担額は約1万2000円を超えている。また再エネ全体の買取費用は、'22年度の総額で約4兆2000億円にのぼっているのである。当時の経緯をよく知る経産省の元局長が言う。

「あの頃、エネルギー専門家の多くは、〈1kWhあたり30円程度〉が妥当という意見だった。ところが、なぜか算定委員会は、孫さんの言いなりになって〈40円〉とした。当時の5%の消費税を入れると〈42円〉ですから、専門家のはじいた金額より12円も高い。まさに、濡れ手で粟のぼったくり買取価格としたのです」  

この買取価格に群がるように、太陽光発電に乗り出す事業者は急増し、わずか3年で世界第3位の累積導入量まで伸びた。  

だが、太陽光発電には致命的な弱点があった。夜間や雨の日は発電しないため、設備利用率がわずか13%しかないのだ。太陽光発電を増やしても、その供給量は必要とされる電力の1割にも満たない。天候に関わらず発電できる原子力の代わりには、なりようがない。

地熱「世界第3位」の嘘

 原子力や火力など、安定的に発電できる電源は「ベースロード電源」と呼ばれる。「脱原発」と「脱炭素」を実現するには、新たなベースロード電源が必要になる。  

そんななか、注目を集めるようになったのが「地熱」である。  

'21年、河野太郎規制改革担当大臣(当時)は、「再生可能エネルギー規制総点検タスクフォース」に「新たな再エネ」を検討させている。同タスクフォースは「世界有数の火山国である日本には、豊富な地熱資源が存在し、その潜在的な地熱資源量(ポテンシャル)は世界第3位」と報告、地熱発電の大きな可能性について提言した。

'22年12月4日には、日本有数の温泉地、熊本県小国町で「地域と温泉と地熱開発の共生を図るシンポジウム」が開催され、二階俊博元幹事長が共同代表を務める「超党派地熱発電普及推進議員連盟」の有力メンバーである、秋葉賢也復興大臣(当時)が出席した。

「原子力をこれからフル稼働しても、日本のエネルギー自給率は20%にしかならないわけです。これを確実に引き上げていくには、地熱と温泉の共生を進め、地熱の普及拡大はかる。そして再エネ全体の比率を高めていくしかないんです」

地熱が原発の代わりに

秋葉氏は、地熱の可能性を熱く語った。シンポジウムの途中、筆者が秋葉氏に質問した際も「地熱はCO²を出さないすばらしいエネルギーであり、まさにベースロード電源になりうるエネルギーです」と滔々と述べた。  

現在、日本の電源構成に占める地熱発電の比率はわずか0・3%でしかない。政府目標ではこれを、'30年までに「1%」へと引き上げるとしている。とはいえ、菅義偉首相(当時)が国際公約とした「'30年までに温室効果ガス46%削減」には、まったくと言っていいほど貢献できない数値だ。「世界第3位のポテンシャル」を謳っているのに、なぜ発電量の目標がここまで低いのか。地熱開発や金属資源等の開発援助をおこなっているエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の関係者が答える。

「そもそも地熱のポテンシャルは、商業化できる地熱資源量を表したものではないのです。『容積法』という手法で全国を1km四方のメッシュに分け、把握されているデータを基に地下の温度勾配を想定し、一定以上の温度のあるところを換算し集計しただけ。  

ですから、地下にどの程度の蒸気があるのかは調べていないうえに、開発が禁止されている国立公園の特別保護地区も含まれている。ポテンシャルの3割以上は実は開発できない地域なんです」  

しかもエネ庁が使用している地熱の発電率(設備利用率)の80%にしても、発電規模の大きいものを採用したもので、実際には60~70%程度しかない。

詳しくは後述するが、地熱発電は地下から蒸気や熱水を汲み上げているため、各種パイプがこれらの成分で詰まることがある。さらに地中の蒸気や熱水量そのものが減衰するなどの原因もあり、性能通りの設備利用率を出せないのだ。それを誤魔化し、地熱開発が効率的で生産性が高いと装うために、数字を作っていたことになる。

そもそもこのポテンシャル調査は、民主党政権下の環境省が実施したものだ。当時、環境大臣だった細野豪志衆議院議員は、このポテンシャル調査を「錦の御旗」に見立て、地熱開発を「国家プロジェクトで進めるべき」と国会で力説し、大臣として特別保護区以外の「国立公園内についても採掘を認めるという判断」を下したと自負していた。

しかし自民党に鞍替えしたのち、'22年8月12日の『現代ビジネス』のインタビューで細野氏は「地熱発電に期待していた」ものの、「限定的なもの」でしかなかったと判断の誤りを認めている。 地熱発電の開発が可能な地域でも、様々な問題に阻まれて安定的な発電には至っていない所が多い。

温泉にヒ素が混入

地熱開発は、ほとんどが温泉地の周辺で行われているため、温泉が枯渇するといった悪影響が出ることがある。温泉事業者の反発もあり、地熱開発はなかなか進まない。 しかも地熱発電が周囲の温泉地に与える悪影響はこれだけではない。地熱発電は150℃を超える高温の熱水や蒸気が貯まった「地熱貯留層」から井戸(蒸気井)で汲み上げた熱水と蒸気を使い、発電機のタービンを回す。そして別の井戸(還元井)で、発電後の排水を地下にふたたび戻している。

その際、排水の中に大量の濃硫酸を混入する。温泉成分にはカルシウム、マグネシウム、鉄、ヒ素などが溶けこんでいるため、濃硫酸でそれらを溶かしながら戻さなければ、すぐに還元井のパイプが詰まってしまうからだ。

この濃硫酸による環境汚染が心配されるとして、九州電力が阿蘇くじゅう国立公園内で開発した「八丁原地熱発電所」が、国会でやり玉に挙がったことがある。'16年5月19日、共産党の市田忠義議員は「八丁原発電所の事業によって、周辺の温泉地の湯量が大幅に減った温泉旅館への補償として、九州電力は発電後の排水を配湯している」と指摘し、こう質した。

自然を守る

「八丁原発電所は、周辺の温泉地に被害をもたらしているうえ、排水を地下に戻す際、大量の濃硫酸を混入させている。これは温泉資源だけでなく、自然環境に影響を生じさせるものである。このような問題のある地熱発電をベースロード電源と位置づけ、規制を緩和し、開発推進すべきではないのではないか」

これに対し丸川珠代環境大臣(当時)は、「温泉資源としてはもちろん、自然を守るという意味でも御指摘をいただいたものと」受け止めると述べ、環境行政の不備を認めた。

市田議員は、これ以上の追及をしていないが、九州電力の配湯には、温泉資源や自然環境への影響以上に「重大な法令違反」が隠されていた可能性もある。

九州電力からの配湯は、'91年12月に九重町長が要請したことにはじまる。以後、一部の温泉旅館に「温泉の水質に似た熱水」がパイプを通し運ばれていく。

ところが、この排水の中には、環境基準の36倍を超えるヒ素が混入していたのだ。九州電力は、'05年頃に「脱ヒ素処理システム」を導入したため、現在はヒ素を除去した温水を配湯するようになったが、少なくとも15年近く水質汚濁防止法に違反した配湯をおこなっていたことになる。公益企業として、これらの事実にどう釈明するのか。九州電力に問い合わせたものの、回答はなかった。

「脱原発」を旗印に、国民が払う電気代に再エネ賦課金を上乗せすることで、地熱発電が推し進められてきたのだが、この「環境にいい電力」は、人知れず環境を汚染していたのである。

再エネ栄えて国が亡ぶ

経済の血液ともいうべき電力を安定的に供給していくには、もはや「原発」から目を逸らせなくなっているということか。

東京大学公共政策大学院の有馬純特任教授が語る。

「原子力なしで、エネルギー安全保障を確保し、かつ温暖化対策をやっていくとなると、コストがとてもかかる。国民が負担できなくなるだけでなく、製造業にしても、こんな高い電力料金は払えないと海外に出ていくしかない。日本の国力を弱めることにしかならないわけで『再エネ栄えて国が亡ぶ』ということになりかねない」

有馬氏が続ける。

「再エネというのは、ひとつの手段であって目的ではない。電力をつくる手段というのは、たくさん持っていたほうがいいわけで、原子力もそのひとつです。これを活用しないで排除しようとしてきたことのほうがおかしいと思います」

「原発から再エネへ」の転換

'22年後半になって、岸田文雄首相は従来の政権がとってきた「原発から再エネへ」という政策を大転換させた。原発の寿命を延長し、次世代型原発の開発も進めている。

福島原発事故から約12年が経つものの、原発への国民のアレルギーは一向に薄らいではいない。この国民世論とどう折り合いをつけていくのか。 大手電力会社の元役員は、原発問題の最終決着点についてこう語る。

「国民の大多数は原発に反対しているわけで、原子力規制委員会で管理を厳しくするといっても信用しないでしょう。また、国にしても、もう一度、福島第一原発のような過酷事故を起こせば原子力は二度と使えなくなる。

結局は、政府管理のもと原発を稼働させていく以外にないと私は考えています。原子力で利益を出したい大手電力会社は当然反対するでしょう。しかし日本が再び原発を推進するには、この方法しかない」

再エネに限界がある以上、電力の安定供給のためには、これまで目を逸らしてきた原発について検討せざるをえない。'11年の原発事故の反省を踏まえたうえで、安全で有効な原発の活用が可能なのか、議論すべき時がきているのかもしれない。

 以前このブログで取り上げた『再生可能エネルギーは「無条件で善」なのか』の中で、風力発電の問題点が指摘されていました。そして今回の記事では更に太陽光、地熱発電の問題が語られています。もちろん再生可能エネルギーを利用した発電は、それ自体が否定されるものではなく、一定の重要な要素となり得るものですが、限界もあると言うことでしょう。

 一方原子力発電も、その安全性は絶対的なものでもないのは、福島第一原発事故で実証済みです。ただそれをあまりにも過大に取り上げ、原発はすべて悪のような風評を時の民主党政権が作り出し、今に至っているのは日本の国益として如何なものかと、反省の時期に来ているのも事実だと思います。

 更には原発事故の副作用として、民主党政権時代の再生可能エネルギーへの過度の傾斜が、コスト無視、環境無視に走ってしまった反省もされてしかるべきでしょう。そして「再エネ促進賦課金」と言う形で、国民へステルスのような形で負担させている現状を、もっと公表すべきです。そうした実態の比較の中で原発の問題が議論されなければならないと思います。国の管理への移行という議論も含めて。

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