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2023年1月 6日 (金)

再生可能エネルギーは「無条件で善」なのか ジャーナリストが暴く再生可能エネルギーの「闇」の正体とは

11_20230105153401  前々回取り上げましたが、東京都が大手ハウスメーカーが新築提供する戸建てハウスに、ソーラーパネルの取り付け義務化の条例が成立しました。こうした再生可能エネルギーが、化石燃料によるエネルギーの代替として脚光を浴びているのはその通りですが、いいことばかりではないようです。

 ジャーナリストの岩瀬達哉氏が、「再生可能エネルギーはまるで「無条件の善」のように言及されることも多いが、それは本当なのか。今日本で本当に起きていることをレポートする」と言うキャッチコピーで、週刊現代に寄稿したコラムから引用しましょう。2部構成で前編は『【衝撃ルポ】再生可能エネルギーは「無条件で善」なのか《消費税10%上げ相当、土砂崩れで12人犠牲》』、そして後編は『再生可能エネルギーの「闇」の正体とは《風が吹かない地に風車》《鉄塔が小さく見えるように写真を加工》』(1/04公開)で、以下に掲載します。

<前編>

「炭素税」で莫大な負担

風力、太陽光、地熱……「再生可能エネルギー」は無条件で「善」だと思われている。だが、本当にそうだろうか。発電所建設の実態や国が示す計画を精査した結果、あまりに杜撰な実態が見えてきた。

地球温暖化を食い止めるために、二酸化炭素排出量を減らさなければならない―。

30年以上前から、世界各国では「環境問題」が議論され、様々な政策が実行されてきた。そして'23年、日本では新たに〈クリーンエネルギー戦略〉なる政策がスタートする。政府の目標は、「2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロ」にすることだ。持続可能な世界を作らなければならない、という理念に異議はない。しかし、この改革が国民にとってどれだけ大きな負担を強いるのか、政府は十分な説明をしてこなかった。

「クリーンエネルギー戦略によって、とんでもない税負担が国民にのしかかってくる」

こう警鐘を鳴らすのは、エネルギー問題に詳しいキヤノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹だ。

「この政策は、温室効果ガスを減らすための脱炭素技術の開発とともに、再生可能エネルギー(再エネ)の安定供給に欠かせない蓄電池工場や半導体工場など、経済安全保障分野に総額150兆円を投資するというものです。すべての技術開発が順調に進んだとしても、20年後、30年後になってようやく社会実装できる技術なので、高コストなうえ、すぐには普及しない。産業競争力の強化には繋がりません」

政策の基本設計は、まず20兆円の新たな国債(環境債)を発行したのち、今後10年間で官民が協力して約130兆円を追加投資するというもの。その償還財源は、二酸化炭素の排出量を金額に換算して企業に拠出させる新たな税金(カーボンプライシング)の導入だ。最も分かりやすいのは「炭素税」で、企業に対し石炭や石油、天然ガスなどの排出量に応じた税金が課せられることになる。

再生可能エネルギーの闇

「新たな国債による投資といえば聞こえはいいものの、間違いなく国民に重い負担を求めるスキームです。民間企業にしても、投資額は製品価格に転嫁する以外にない。仮に約150兆円を10年で回収するとなると、年間約15兆円です。消費税率の7.5%分に相当するため、消費税が実質17.5%に引き上げられるのに等しい」(杉山氏)

では、約150兆円はどこに使われるのか。主軸となるのが、風力、太陽光、地熱などの再エネを最大限導入するための取り組みだ。

再エネは温室効果ガスを出さないうえ燃料費の必要のない理想のエネルギーであるかのように喧伝されてきた。しかし、その事業現場では、住民無視の、強引な開発が行われている実態がある。

筆者は宮城県と福島県の県境に位置する人口1万人ほどの町、丸森町に足を運んだ。周囲が山に囲まれた風光明媚なこの町では、風力発電所の建設を巡って事業者と住民が揉めに揉めている。

住民が風車建設に反対する最大の理由は「安全性」だという。地域一帯は花崗岩が風化してできた真砂土と呼ばれるもろい土壌でおおわれている。'19年の台風19号がもたらした大雨では、町内の複数地区で大規模な土砂崩れを引き起こし、12名が犠牲となった。うち1名はいまも行方不明だ。

その山に、霞が関ビルよりも高い約147~180mの風車を最大12基も建設すれば、大雨による土砂災害が起こることが心配される。また、風車による騒音や低周波音の及ぼす健康被害について心配する声も多い。

'22年11月27日に開かれた住民向け事業者説明会では、怒号が乱れ飛んだ。発電所の開発を行っているのは三菱HCキャピタルと日立パワーソリューションズの100%子会社であるHSE。青井貴裕開発グループ長は、「しっかり取り組んでいきたい」「しっかり考えていきたい」など、「しっかり」という言葉を25回以上繰り返した。

住民たちの怒りの声

しかし、住民の心配事や疑問にはまったくと言っていいほど真摯に答えていない。それどころか、多くの住民が手をあげているにもかかわらず、途中、3度にわたり一方的に説明会を打ち切ろうとしたのである。

それまで静かに説明を聞いていた住民たちも、さすがに激怒した。

 

「おかしいだろ。あんたらが1時間半話して、30分しかやってないんだ、質疑応答。あんたらの意見聞きに来たんじゃないんだよ。われわれの意見を言いに来たんだ」

「みんなちゃんと来てるんだから、ちゃんと質問させなさい」

このあと質疑応答が再開されたものの、相変わらずののらりくらり答弁が続いた。

「そんなこと、わかんねえのか、お前たちは。なんのために来てるんだ。資料も持ってこないで、人を馬鹿にしたような話をするんじゃない」

つるし上げ状態となった青井グループ長は、「(風力事業を)町の未来のためにしっかりやって欲しいというご意見も頂戴しています」と、か細い声で反論するのがやっとだった。

資源エネルギー庁作成の「事業計画策定ガイドライン」では、風力発電事業は「一方的な説明だけでなく、自治体や地域住民の意見を聴き適切なコミュニケーションを図るとともに、地域住民に十分配慮して事業を実施し、誠実に対応する」よう求めている。HSEは、より「しっかり」と「地域住民に十分配慮し」た事業を「誠実」にすすめるべきだろう。

<後編>

風が吹かないのに風車

この日の説明会では、風力発電建設の根拠となる事業の「採算性」についての質問も出ている。

前町長の渡辺政巳氏が、「以前、町で調査したところ平均3mしか風が吹いていないというので、丸森では風力発電は難しいという結論だったんです。どのくらいの風が吹けば発電が可能なのか」と質問すると、青井グループ長は「4m以上は吹いて欲しい」と述べた。

風車のブレード(羽)は、一般的には3~4mの風でようやく回転する構造になっている。また台風などで風速24m以上になると、発電機などが破損する可能性があるため、発電を中止する。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「風力発電導入ガイドブック」によれば、風力発電事業は年間を通じて100%発電できるわけではなく、風車の発電率(設備利用率)は「20%以上であることが望ましい」とある。ようやく回転するくらいの風で、発電能力を20%以上引き出し、採算ベースに乗せられるものなのか。この点を後日、青井氏に問い合わせたところ「4mで採算が合うという意味ではなく、やっぱり4mは吹いて欲しいということで申し上げたということですね」という不可解な回答が返ってきた。

「SDGs(持続可能な開発目標)」のひとつである「クリーンなエネルギー」開発を掲げながら、事業者は安全性や経済性について明確に説明できていない。その裏で進めていることは、住民を無視した利益最優先の企業活動といえよう。

全てに無理のある計画

宮城県は、東日本大震災の復興事業のひとつとして風力発電事業の誘致をはかってきた。県内各地の風速を計測するなど事業適地を選定したうえで、県独自の「ゾーニングマップ(導入可能エリア)」を公表してきた。

その結果、県内では9事業者が最大253基の陸上風力発電所の建設を計画しているが、なかには拙速で杜撰な事業計画も混在している。たとえば関西電力は、宮城県と山形県の県境に風力発電事業を計画していたが、'22年7月、事業撤退を余儀なくされた。

その原因となったのが、「宮城県環境影響評価技術審査会」に提出した資料の「ごまかし」だ。

この資料では景観に与える影響をシミュレーションした「フォト・モンタージュ」を掲載しているのだが、なんと風車や送電線の鉄塔が小さく見えるように加工していたのだ。同審議会の平野勝也会長からは「なめた真似はしないでください」と叱責され、村井嘉浩知事は「明確に反対だ」と表明することになった。

関西電力もまた、再エネによって美しい未来を切り開き、雇用を生み出し地元に貢献するかのように装いながら、やっていたことは「デタラメ」な事業計画だった。

政府は温室効果ガスを「2013年比で46%削減」という目標を掲げる以上、無理な再エネ開発を続けるだろう。この目標値を達成しなければならない期限は2030年、残された時間は短い。

日本が46%という高すぎる目標を掲げてしまったのは、'21年4月に開かれた「気候変動サミット」だった。この会議にオンライン出席した菅義偉首相(当時)は、温室効果ガスの削減目標を2030年までに「2013年比で46%削減」に引き上げ、さらに50%の高みを目指すと発言した。この国際公約を空手形に終わらせないため、〈クリーンエネルギー戦略〉が、急ごしらえで練られていったとされる。

しかしそれまで日本の目標値は、生前の安倍晋三元首相が「パリ協定」で示した「26%減」だった。安倍首相から菅首相に政権が移った途端、目標値を20ポイントも底上げした理由は何か。

アメリカへの「忖度」

唐突ともいえる目標値の引き上げについて、気候温暖化交渉で首席交渉官を務めたこともある東京大学公共政策大学院の有馬純特任教授が、背景事情を含めて解説する。

「野心的な目標を立てて、温室効果ガスを削減していくという方向性は間違ってはいません。しかし46%減という目標を'30年までの残された時間で達成できるかというと、まず実現は難しい。そのことは経産省から菅首相にも説明されていました。にもかかわらわず、目標を大幅に引き上げたのはバイデン大統領が誕生した直後のサミットに向けて対応が必要だったということなのでしょう」

有馬氏は続ける。

「グリーン色の強いバイデン大統領のもと、アメリカは削減目標を〈2005年比で50~52%〉に引き上げた。これに同調してカナダも〈'05年比で40~45%〉という数値目標を出し、EU加盟国にいたっては基準年が違うものの〈'90年比で55%以上〉という非常に高い目標を出してきた。アジアの安全保障が厳しくなる中、日本は最大の同盟国であるアメリカの意向を尊重せざるをえない。こうした力学が働いた結果、目標値を引き上げたのでしょう」

そもそも日本の温室効果ガスの排出量は、世界の排出量の3%でしかない。150兆円をかけて3%をゼロにできたところで、全地球規模での温暖化対策には、ほとんど意味をなさない。そうした事実があるにもかかわらず、日本政府は実現がきわめて困難な目標を国際公約としてきたのだ。

その目標を達成するための〈クリーンエネルギー戦略〉も名前は立派だが、やろうとしていることは旧来と同じ利権主義の公共事業に過ぎない。このやり方を改めない限り、再生可能エネルギーは日本人を不幸にし続けることになる。

 はじめに目標ありき、は必ずしも間違っているとは言いませんが、その目標は「効果」と「実現性」に裏打ちされたものでなければ、必ず無理が出てきます。特に国家目標となれば尚更、国益を考えて出さなければ後々国民への負担が大きくなってきて、首を絞める結果となります。この記事の国家目標はその最たる例かも知れません。

 更には、その目標を達成する数字作りのために、この記事にもあるように、詐欺にも似たごまかしで事業を展開することも出てきてしまいます。まさに「効果」も「実現性」もなきに等しい愚かな計画となります。

 事業者はその計画を進めることで、利益を得ようとしますから、住民説得の段階でごまかしが出てきてしまいます。それでは全く国益から離れた事業と言うことになります。

 国は事業者任せにせず、その「効果」と「実現性」を明確にすべきです。それが出来ないならその事業は取りやめ、かつ全体を見渡して目標が達成できないなら、改めて対外的な忖度を廃して目標の改訂を宣言すべきでしょう。無理な目標をがむしゃらに達成しようとして、国が弱体化しては元も子もないでしょう。それが国の責任というべきものだと思います。

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