「韓国人窃盗団」による対馬の仏像盗難、韓国高裁の逆転判決を評価してはいけない 「元は倭寇の略奪」を排除していない
今月初め、韓国で対馬の仏像を盗んだ窃盗団に対する裁判が大田高裁で行われ、所有権が対馬の観音寺にある事を認めた判決が出されました。単純に言えば1審の判決が覆され、日本側の主張が認められたことで、朗報と捉えられますが、事はそれほど喜んでもいられないようです。
その判決の詳細を著作業を営む宇山卓栄氏が、JBpressに寄稿した記事から見てみましょう。タイトルは『韓国人窃盗団による対馬の仏像盗難、韓国高裁の逆転判決を評価してはいけない 倭寇の関与認め、「もともとは日本人が盗んだ」は変わっていない』(2/06公開)で、以下に引用します。
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本当に「一歩前進」「正当な判決」なのか?
2月1日、韓国の大田(テジョン)高裁は、韓国人窃盗団によって長崎県対馬市の観音寺から盗まれた文化財「観世音菩薩坐像」の所有権が同寺にあることを認めました。
韓国側の所有権を認めた一審とは反対となった今回の判決について、日本では「一歩前進」「正当な判決」などと、有識者を含めて、好意的に評価する声が聞かれます。
しかし、そんな前向きな評価をしていいのでしょうか?
高裁判決文には、仏像について「倭寇による略奪をうかがわせる相当の状況がある」とあります。その上で、対馬の観音寺が長年占有したことにより、「取得時効」が成立し、現在の所有権は観音寺側にあるというのです。
「倭寇による略奪」を示す明確な証拠も史料もないのに、いったいどうして、そのような認定を韓国高裁がすることができるのか、疑問です。
一般に、判決は結論を示す主文だけでなく、認定・判断の経緯を示す事実及び理由の陳述が重要です。高裁はあくまで、もともとは倭寇が盗んだとして、日本側の不法行為を一方的に認定しています。
徴用工判決でも同じですが、乏しい根拠で日本側の非を認める韓国司法のやり方は変わっていません。これが「正当な判決」と言えるでしょうか。
様々な解釈があり実態不明の倭寇
朝鮮半島や中国沿岸に出没していた海賊集団とされる倭寇については、歴史家による様々な解釈があり、実態がどうだったのか、不明な部分が多く残っています。「倭寇には朝鮮人の賤民も多く含まれていた」「ほとんど中国人によって構成されていた」「日本人、朝鮮人、中国人が均等に混ざり合っていた部隊だった」など、様々な解釈があります。
このように、倭寇の存在自体、わかっていないことが多いにも関わらず、韓国高裁が「倭寇による略奪をうかがわせる」などと判定したのです。
仏像について、忠清南道瑞山市にある浮石寺(プソクサ)がもともと、「数百年前に倭寇により略奪された」として、所有権を主張していました。
浮石寺は仏像を保管している韓国政府に対して、仏像を寺へ引き渡すように求めて訴訟を起こし、2017年1月の一審判決では、同寺の所有権が認められました。今回の控訴審で、大田高裁は一審判決を取り消し、原告の請求を棄却しました。
ただ、最高裁判決では、再逆転する可能性もあります。
ちなみに、この一審判決で、「仏像の中から見つかった記録」などを根拠に、「倭寇によって盗まれた」ということが認定されていますが、その「記録」の内容も充分には明かされていません。今回の判決で、「倭寇による略奪をうかがわせる相当の状況がある」としたのは、この一審の経緯を踏襲したからです。
14世紀に誰が所有していたか、根拠は曖昧
仏像は14世紀に製作されたものと見られています。韓国の大学教授の中には、16世紀末の豊臣秀吉による文禄・慶長の役で、日本兵に略奪されたという主張をしている人もいます。一方、浮石寺は製作されてから間もない同世紀に略奪されたとしており、見解が分かれています。
李氏朝鮮時代の仏教弾圧から、仏像を守るために対馬に持ち込まれたとする日本側の見解もあります。
そもそも、浮石寺がこの仏像を14世紀に所有していたということを、どのように証明できるのでしょうか?
これについて一審で問われた際、浮石寺は「根拠を示す鑑定書は仏像を失ったときに、思い出すのが悲しいので捨てた」と述べています。
14世紀に、そのような鑑定書があったのか、また、あったとしても、「鑑定書を捨てた」という史料は残っていないでしょう。それにも関わらず、なぜ、「鑑定書を捨てた」と言い切れるのか、疑問です。
このような曖昧な根拠で、一審では、浮石寺の仏像の所有権が認められ、その上で、「観音寺側が仏像を正当に取得したということを訴訟で確認するまで、日本に仏像を返還してはならない」という判決を下し、日本に立証責任を求めました。
どのような経緯で、仏像が日本に渡ったのか、数百年前の出来事ということもあり、誰にもわからないというのが実情でしょう。
明白なのは韓国人窃盗団による犯罪のみ
はっきりとしているのは、この仏像が韓国人窃盗団によって盗まれたということだけなのです。韓国政府が仏像を管理していますが、このような不法行為が前提としてある以上、即刻、日本に盗品を返還すべきです。それは裁判で争う以前の問題です。
韓国では、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の保守政権が誕生し、日本との関係改善が模索されています。今回、一審判決が覆されたのも、政権交代の影響があるのではないかと観測されています。
いわゆる徴用被害者のための賠償の問題でも、尹錫悦政権は歩み寄りを見せているように見えます。
韓国政府が先に、徴用被害者への賠償金を支払い、後に、韓国政府がその立て替えた賠償金を日本企業に請求するという「代位弁済方式」を採用するように日本に呼び掛けています。または、韓国政府が設置する元徴用工らのための基金に、日本企業が自発的に協力するように要請する案などが出ています。いずれも結局は、補償金請求と変わりません。
韓国は「日本人が韓国人を強制徴用し、不法行為を働いた」という主張をまったく変えていません。その上で、日本側の実害を軽減するために、妥協的「解決策」を提起しているのだと恩着せがましく主張しているのです。
今回の仏像を巡る裁判も「日本人の不法行為」を色濃く浮かび上がらせる判決内容になっています。所有権が認められて良かったと片付けられる話ではありません。
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韓国の歴史捏造は多くの場合全く根拠のない上に作り上げられていますが、それを指摘しても「それが事実だ」との一点張りです。証拠がなくてもそう言い張ります。
かつて金大中元大統領が韓国人の手で拉致されたときも、これは証拠があったのですが証拠を完全無視して、拉致の事実を否定しています。このように証拠のないものを事実だとし、逆に証拠があるのに完全無視するのが韓国のやり方です。
そういう韓国の手の内が分っていながら、日本の外務省は徹底的に反論したり追求したりせずに、戦後一貫して腰砕け外交をしてきました。そのツケが竹島の不法占拠や、慰安婦や徴用工問題の今につながっているのです。
この仏像問題も小さな問題とは言え、やはり韓国側の倭寇に関する一方的解釈が、その元となっています。外務省は対馬の観音寺任せにせず、ねじ曲げられた倭寇解釈に対し徹底した反論を、ぶつけるべきだと思います。
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