「安倍回顧録」で詳述、「財務省」との確執。官僚の本分を超え政治の領域を侵犯、安倍氏が強い危機感
安部元首相はデフレ脱却を旗印に「アベノミクス」を展開しましたが、景気上昇の鍵となる財政出動や、景気を押し下げる増税に関して、財務省の攻勢とかなり戦ってきた経緯があるようです。
その一端が「安倍晋三回顧録」に記述されています。上武大学教授の田中秀臣氏がzakzakに寄稿したコラムを紹介しましょう。タイトルは『「安倍回顧録」で詳述〝ザイム真理教〟の恐ろしさ 「私を引きずり下ろそうと…」官僚の本分を超え政治の領域を侵犯、安倍氏が強い危機感』(2/14公開)で、以下に引用します。
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『安倍晋三回顧録』が話題だ。トランプ前米大統領、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領らへの評価が面白い。個人的に注目しているのが、財務省への評価だ。消費増税の先送りを決めたときに、財務省が安倍降ろしを画策したと安倍元首相は同書で発言している。
「安倍政権批判を展開し、私を引きずり下ろそうと画策した。彼らは省益のためなら政権を倒すことも辞さない」。穏やかではない。この点を国会の質疑で問われた岸田文雄首相は、財務省の安倍降ろしを「感じたことがない」と否定した。〝財務省ムラ〟の住人である岸田首相らしい答弁である。
この財務省の政治介入とでもいうべき動きは、安倍政権下でもマスコミで話題になっていた。2014年12月の衆院選の時だ。私も当時、ネット媒体で「安倍首相、消費増税めぐる財務省の政界工作を示唆 省益優先で不況下に緊縮財政の罪」と題する論説まで書いている。回顧録でも明言されているが、この衆院選は消費税10%への引き上げを先送りするために、国民の真意を問い、それによって財務省の政治介入を防ぐ狙いがあった。
当時、安倍氏自らが「財務省が『善意』ではあるが、すごい勢いで(消費再増税に向けて)対処しているから党内全体がその雰囲気だった」として、この増税ありきの雰囲気を転換するためだったと報道番組で明言している。
財務省の攻勢が、官僚の本分を超えて、政治の領域を侵犯していることに、安倍氏が強い危機感を抱いていたことがわかる。回顧録では、その点をより明白に語っている。財務省の「善意」の増税攻勢を受けていたはずの、岸田首相が気付かないはずはない。もし気が付かないのであれば、それは財務省が増税を説得するまでもなく、陣営(財務省ムラ)の一員だったからだろう。
安倍氏は選挙に勝利して消費税を延期し、さらにもう一度再延期を成し遂げた。だが、財務省には議員たちを説得する以上の工作も可能だ。予算編成の権力を利用して、安倍政権では最初の13年度以外はすべて緊縮財政を押し付けた。このため金融緩和だけに頼る形になり、それでも雇用や経済成長は大きく改善したが、デフレ脱却はできなかった。
消費税10%を最後は防ぐことができなかったが、むしろ安倍政権だからこそ2回も延長できたのだろう。回顧録は、「ザイム真理教」の恐ろしさを伝えてもいる。
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かつて家庭の財布を妻に握られている夫が、大きな買い物をする時、「大蔵省(財務省の前身)」、つまり妻の了解がいる、と自嘲気味につぶやくことが多かったようですが、これこそ「金」を操るものの強さの代弁でしょう。
政界でも同様の状況があり、財務省の権力がさすがの長期政権を誇った安部元首相でも、思いのままには出来なかった事が語られているようです。失われた30年の責任の一端は、財務省にあるのでしょうか。
岸田首相が増税という言葉をよく口にするのは、田中氏指摘のように財務省の陣営にいるのでしょうか。「新しい資本主義」という意味不明な政策も、財務省の後ろ盾だという人もいます。
いずれにしろ予期せぬ物価高騰でデフレから脱却しつつある現在、財政出動と規制改革で経済を強くしてもらわなければ、日本の未来は暗いものとなります。プライマリーバランス重視の緊縮財政だけは、やめて欲しいと心から願いますね。
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