中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」
中国は春節を終え、国内の大移動は終了しましたが、ゼロコロナの解除後の感染爆発は下火となったとは言え、各地の火葬場は未だにごった返していて、火葬できていない人の列が延々と続いているという報道もあります。
そうした中、経済再建に躍起となっている習政権ですが、李克強氏に代る首相李強氏は経済には素人と言います。経済音痴の習近平氏と並ぶ二人は、果たして中国経済の舵取りが出来るのでしょうか。
その詳細を経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏が、マネー現代に寄稿した記事から、引用しましょう。タイトルは『中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」』(2/06公開)で、以下に掲載します。
◇
絶対君主の習近平
ゼロコロナ政策の解除を機に、中国経済への期待が高まっているが、果たして本当だろうか。
中国は本格的な人口減少の時代に突入するなど構造的な問題を抱えており、中長期の見通しについて悲観的な見方を示す専門家もまた、増えているからだ。
中国は、肝心かなめの「統治のあり方」に疑問が呈されるようになっている。
このポリティカルリスクのネガティブインパクトは、想像以上に大きいようだ。
中国の習近平国家主席は昨年10月の第20回共産党大会で最高指導部の政治局常務委員に側近を引き上げた。常務委員会の総意による意志決定をやめ、毛沢東以来でもっとも強力な指導者になったと言われている。
習氏の経済分野への介入強化はかねてから懸念されていた。
習近平で限界を迎えた中国型「全体主義」
「国内の情報の流れを把握するなど影響力を持ちすぎる」との警戒から民間IT企業を厳しく取り締まったことで、世界の投資家の中国に対する信頼が揺らいだ。
その結果、民間部門で最も効率的なセクターの時価総額が数兆ドル規模で消失した。
不動産市場の低迷など経済が悪化していることから、短期的には締め付けが緩和されるだろうが、抜本的な方針転換が図られるとの期待は薄い。
むしろ、習氏への権力集中に伴い、専門家の意見を聞かずに密室で決定される政策が増加し、経済への悪影響がさらに拡大すると危惧されている。
そもそも中国の統治制度はどのような特色を有しているのだろうか。
米スタンフォード大学の許成鋼客員研究員は、中国の統治制度を「地方分権的全体主義」と定義している(1月27日付日本経済新聞)。
中国共産党は1950年代初期、政治・経済を含むあらゆる分野の支配権を中央に集中させる全体主義の制度をソ連(当時)から導入したが、50年代半ば以降、「郡県制」という伝統的な統治手法を加え、その制度を改めた。
個人崇拝などで最高指導者の絶対的権威を確立する一方、行政の立案・運営の権限のほとんどを最高指導者が任命する地方の指導者に与えるものだ。
これにより、中国共産党はソ連より強固な一極集中の体制をつくり上げたことに成功した。
この制度の下に、地方の指導者は最高指導者の意向に沿った取り組みを競い、切磋琢磨してその実現に邁進したのだが、最高の成功事例は改革開放だったことは言うまでもない。
経済成長を巡る地方間の激しい競争が民間セクターの発展を可能にし、政治改革を伴わずに中国は高度成長を長年にわたり享受することができた。
しかし、こうした競争は環境破壊や所得格差の拡大、不動産バブルといった問題をもたらし、改革開放は今や負の側面の方が大きくなっている。
絶対権力者の「落とし穴」
現在、習近平体制が敷こうとしている統治制度の根本的な問題は、最高指導者と地方の間の意思疎通が迅速かつ正確に行われず、カリスマ化した最高指導者に対するチェック機能が働かないことだ。
広大な国土と世界最大級の人口を擁する中国では「鶴の一声」が往々にして極端な結果を招いた。
カリスマ化した前例である毛沢東統治下で起きた「大躍進」や「文化大革命」の悲劇はあまりに有名だ。1979年から実施された「1人っ子政策」でも極端な人口減少を生じさせる結果となった。
習近平のやり方は伝統的な統治制度を復活させた感が強いが、「ゼロコロナ政策の突然の解除によってもう一つの悲劇が生まれるのではないか」との不安が脳裏をよぎる。
習近平の歓心を得るため、これまでゼロコロナ政策を墨守してきた地方政府だが、不動産市場の低迷で土地売却収入が激減し、ゼロコロナ政策を維持するのに必要な巨額の資金を捻出することができなくなってしまった。
台所が「火の車」になった地方政府からの突然の悲鳴に驚いた習近平が、なんら対策を講じることなくゼロコロナ政策を解除してしまったのが内情だろう。
国民は「政府発信」の情報が信じられない
中国政府は「新型コロナの感染は収束しつつある」と喧伝しているが、専門家の間では「中国の感染爆発は長期にわたって続く」との見方が有力だ。
農村部の高齢者の犠牲を防ぐことがゼロコロナ政策を正当化する根拠だったことから、中国では今後、農村部を中心に100万人以上の死者が出るかもしれない。
中国政府が「不都合な真実」を隠蔽する可能性が高いが、このような姿勢は「人民の安全を守る」という政府の最も重要な責任を放棄したとのそしりを免れないだろう。
ゼロコロナ政策の解除により、政府の存在感が急速に薄れているのが気になるところだ。
新型コロナの感染が急拡大する中、政府から支援を得られない都市部の住民は医薬品などを融通し、助け合いで生き抜こうとしている(1月19日付ブルームバーグ)。
新型コロナの治療についても、保健当局者の発言よりもソーシャルメデイアのインフルエンサーの意見に頼るようになっている(1月24日付ブルームバーグ)
ゼロコロナ下で非常に大きな存在感を示していた政府は「今は昔」だ。人々は政府抜きの生活を実感していると言っても過言ではない。
富裕層が逃げだした
政府がゼロコロナ政策に伴う渡航制限を解除したことで富裕層の海外移住の動きも加速している(1月26日付ブルームバーグ)。
共産党に楯を突かない限り、富を増やし続けられることができた富裕層は、習近平の経済活動への締め付けや「共同富裕」の動きに辟易としているからだ。
「政府による一党支配を受け入れる代わりに、国民の安全を維持し生活を向上させる」という、これまでの社会契約が無効になりつつある。
慣れ親しんできた統治制度を抜本的に見直すことは困難だ。
だが、そうしない限り、体制の危機が進んでしまうのではないだろうか。
◇
習近平政権の3期目が始まった途端、白紙デモが起き人口減少が始まりました。民衆が政権からの距離を置き始め、人口減少と経済政策の司令塔の経済音痴が重なれば、経済失速は早められ経済に支えられてきた共産党の基盤も揺らぎます。富裕層が逃げ出すのも頷けます。
この周辺諸国には極めて迷惑なモンスターが弱体化すれば、それはそれで歓迎すべき事かも知れませんが、国内問題を外への覇権行動により覆い隠そうとする政策も十分考えられます。つまり国内が混乱する前に、台湾統一を画策しようとする動きが顕在化するかも知れません。日本はここ数年が対中問題に関して、正念場を迎えるでしょう。「お花畑は」一掃しなければなりません。
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