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2023年3月12日 (日)

小西洋之議員が公表した「放送法文書」は“捏造”なのか 朝香氏:そうした謀略が取られた可能性が極めて高い

Images-9_20230311161301 立憲民主党の小西洋之議員が取り上げた総務省の文書の記述問題。国会でもそのやりとりが行われ、当時総務相だった高市早苗現経済安全担当相の辞職問題にも言及されるようになっています。小西氏はツイッターでも高市氏を攻撃し続けています。

 それに対し高市氏は、一貫してこの文章は「捏造」されたものと、発言し続けていますが、その真偽はどうなのでしょうか。それについて経済評論家の朝香豊氏が現代ビジネスに寄稿したコラムで見解を述べています。タイトルは『小西洋之議員が公表した「放送法文書」は“捏造”なのか…? その信憑性について考えてみる』(3/07公開)で、以下に引用します。

総務省職員から入手したという文書

参議院予算委員会の質疑において、放送法をめぐる問題で、小西洋之議員が総務省職員から入手したという文書に基づいて、高市早苗大臣らに詰め寄る一幕があった。

文書に記載された生々しい会話も、いろいろと出てきた。

「サンデーモーニングは番組の路線と合わないゲストは呼ばない。あんなのが番組として成り立つのがおかしい。とにかくサンデーモーニング。総務省もウォッチしておかないとダメだろう。けしからん番組を取り締まるスタンスを示す必要があるだろう」

磯崎首相補佐官が総務官僚にこのように話したとか、「これから安保法制とかやるのに大丈夫か」「民放と全面戦争になるのではないか」などと高市大臣が語ったとか……。

こういう話を聞くと、政府部内でとんでもない謀略が行われていたのだろうと思ってしまうのが、ごく自然な反応ではないか。

しかも、今回の文書について、「同じものが(総務省の)放送政策課に存在するということの確認を受けている」と小西議員は述べている。

これを否定する答弁は政府側からも出ていないので、総務省内にこの文書があったこと自体は間違ってはいないと見ていいと思う。

そうなると、いよいよもって政府が怪しいということになるわけだが、真相はどこにあるのか、考えてみたい。

「放送法4条」の解釈

今回問題になっているのは、放送法4条の解釈だ。

放送法4条は、放送事業者が放送する番組の編集にあたり、

(1)公安及び善良な風俗を害しないこと

(2)政治的に公平であること

(3)報道は事実をまげないですること

(4)意見が対立する問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること

を求めている。このように、事実に基づき、政治的立場に偏りなく、多くの角度から取り扱い、風紀的な問題を生じさせない報道を心がけよというのが放送法が求めるところだ。

放送法の解釈については、仮に特定の番組が特定の見方に偏っていたとしても、他の番組がそれを補っていることもあるだろうから、番組一つで問題視するのは適切ではないというということが、長年言われてきた。

安倍政権当時の平成28年2月、この解釈に関して、より具体的なものが政府の統一見解として明確化された。

放送局の番組全体を見て判断するとの基本路線はそのとおりだとしつつも、一つの番組のみでも、不偏不党の立場から明らかに逸脱している場合などは、政治的公平を確保しているとは認められないとしたのである。

この政府統一見解を、従来の放送法の解釈を明確化したものだというのが政府側の言い分であるのに対して、放送法の重大な解釈変更だと考えているのが小西議員だということになる。

そしてこの点については、政府見解の方が正しいと言うべきだろう。

昭和39年に示された判断

昭和39年4月28日に、政府側委員の宮川岸雄氏は、こう述べている。

「ある一つの番組が、極端な場合を除きまして、これが直ちに公安及び善良な風俗を害する、あるいは、これが政治的に不公平なんである、こういうことを判断する——一つの事例につきましてこれを判断するということは、相当慎重にやらなければもちろんいけませんし、また、慎重にやりましても、一つのものにつきまして、客観的に正しいという結論を与えることはなかなかむずかしい問題であろうと思うのであります」

宮川氏の発言は長々としてややわかりにくいので、私なりに噛み砕くと、極端な場合を除いて、ある一つの番組が直ちに放送法に違反するか否かを判断するのは、相当慎重にやらなければいけない、という内容だ。

これは逆に読めば、一つの番組の内容であっても、放送法に違反するかどうかの判断は、十分に慎重に行うならば、判断できる余地はないわけではないし、極端な場合には慎重に判断する必要すらない、ということになる。

この昭和39年に示された判断は、その後に問題視されることがなかったことから、この解釈は歴代の政権で引き継がれてきたものだと見ることができる。そしてこの内容は、安倍政権が示した政府統一見解とも矛盾するものではない。

読みようによっては、むしろ昭和39年の答弁より安倍政権の政府統一見解のほうが若干緩い判断になったと解釈できる余地すらある。

以上を踏まえて、今回の文書の内容に信憑性があるかどうかを考えてみよう。

解釈変更がない以上

小西議員の文書は、放送法についての重大な解釈変更があったことを前提とし、この件は一筋縄でいかない大問題だったということが、総務省の役人だけでなく、磯崎首相補佐官、高市大臣、安倍総理までを含めた共通認識になっていたことを前提としている。

冒頭に一部を紹介したが、この文書によれば、高市大臣は放送法の解釈変更について、「本当にやるの?」「これから安保法制とかやるのに大丈夫か」「民放と全面戦争になるのではないか」などと発言したことになっている。

だが、安倍内閣の認識としては、すでに昭和39年の段階で国会で語られ、その後引き継いできた内容について明確化しただけでしかない。解釈変更がない以上、高市大臣が「本当にやるの?」「これから安保法制とかやるのに大丈夫か」「民放と全面戦争になるのではないか」などと口にするということは、どう見ても考えられないのである。

平成27年5月に高市大臣が行った答弁と平成28年2月に安倍総理が行った答弁に食い違いがあるから、その結果として、きちんとした政府の統一見解を文書として出せとの声が野党からあがり、それに基づいて出されたのが政府統一見解だと、高市大臣は発言している。

高市大臣は、仮に高市大臣と安倍総理が、小西議員の文書に書かれているとおりに、放送法の「解釈変更」について事前に打ち合わせをしていたのであれば、こうした見解の食い違いが起こるのはおかしいのではないかと発言している。この議論は非常に説得力がある。

21_20230311161601 また、小西議員の文書によると、高市大臣は平成27年2月に総務省の役人から答弁に関するレク(レクチャー)を受けたことになっている。だが、高市大臣にこの件に関して質問があったのは平成27年5月であって、答弁の3ヵ月前に答弁対策のレクを受けたというのは時系列的に合わない。

高市大臣は答弁に合わせて答弁前夜に行われるレクも受けていないし、答弁当日の朝に行われるレクすら受けていないことも語っていた。高市大臣は公務員の働き方改革を推し進める見地から、レクを受けずに自分で答弁書を用意するようにしていたという。

この高市大臣の答弁に信頼を寄せるならば、高市大臣にレクが行われていると記載している文書は、事実に基づかずに捏造されたものだと推論するのが妥当だろう。

「公文書」として認められるのか

そもそも、今回の総務省の文書については、そもそも公文書として認められるかどうかの段階から争いがある。

小西議員が参院予算委員会でこの文書を質疑資料として配布しようとしたが、与党側は文書の正確性に疑義があるとして配布を認めなかった。

これは文書に登場する人物に内容の確認を行ったところ、多くの人から事実に反するとの回答があり、正規の文書として認めることはできないと与党側から指摘があったためである。

正式文書化に際して、関わった当事者全員の確認を取るというのは、公文書に限らず、民間の文書であっても、当然のプロセスではないか。こうしたプロセスを取らないという実に杜撰なことを行えば、後で「言った」「言わない」問題になる可能性がある。

事実にないことを捏造し、文書に登場する人物に確認しないままに済ますということが可能となる仕組みになっていたとすれば、それは公文書のあり方からして、大問題であるのは言うまでもない。

もっとも、総務省の放送政策課に同じ文書が存在するというのは事実なのだろう。そのこと自体は岸田総理も否定していない。

しかしながら、正規のプロセスを踏まずに謀略的に文書を蓄積し、これを「証拠」として政権を追い詰めるということが行える仕組みは、公文書管理のあり方からして断じて認められるべきではない。

そして今回は、そうした謀略が取られた可能性が極めて高いと言わざるをえない。

日本の公務員の倫理観

当事者として身に覚えのないことが書かれていることから、高市大臣は今回の文書について捏造ではないかと話していたが、これに対して小西議員は、なぜ総務省の幹部が悪意を持ってこういう文書を作るのかと、高市大臣に詰め寄った。

これに対して高市大臣は、NHK改革でNHKに対して非常に厳しい姿勢を取っていて、NHKの理事が菓子折りを持ってきたのを突き返したこともあるとのエピソードも交えながら、こうした高市大臣の態度が総務省の一部の幹部の大きな反発を招いたのではないかと説明している。

NHK改革が進めば、総務官僚の天下りなどの利権にも大きな影響を及ぼすのは避けられない。この流れを総務官僚が強烈に嫌がったことは、決して想像できない話ではない。

このように見た場合、少なくとも今回の文書の一部については、総務省の一部の官僚が政権与党に打撃を与えるために、事実関係のない話を作り上げた可能性が高いと考えるべきではないか。

登場人物に内容の確認をしないで、文書を作り上げることを行い、それが「公文書」として保管される仕組みを作っているとすれば、日本の公務員の倫理観を大きく失墜させるものである。

このような重大な疑惑を持たれていることについて、岸田政権がこの解消のために大ナタを振るうことを躊躇することがあってはならない。さらに言えば、政権からどんな動きがあるかにかかわらず、公務員自身が、自らが疑われることになることへの強い危機感を持って、今回の疑惑の追及を行ってもらいたいものである。

 以前文科省の事務次官だった前川喜平氏が、自身のスタンスについて「面従腹背」と答えたことがありましたが、官僚と言ってもすべて時の政権に従う姿勢を示してはいないのは自明の理でしょう。逆の政治的スタンスを持っている官僚も必ずいるはずです。

 ですからありもしないことを書かれた高市氏が「捏造」と言ったことは、十分にあり得ることでしょう。問題はこうした行為を省庁の職員が仮にやったとすれば、大問題です。そこをうやむやにせずに、しっかりと検証していくことが政府としても強く求められます。そして小西議員に文書が渡った経緯もしっかり検証されなければならないでしょう。

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