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2023年3月 4日 (土)

林外相、国会優先でG20欠席 だが答弁は「53秒」だった。そもそも審議は中身がないうえに退屈で、「やる意味があるのか?」

Images-1_20230303163201  インドで開かれたG20外相会議では、今月2日実質的な審議の中で、ロシアのウクライナ侵略をめぐり米欧とロシアの対立が改めて鮮明となったようです。ところで日本がこの会議に林外相が欠席した事により、開催国のインドを初め内外から批判が出ています。

 この問題は、日本の「国会運営」と「国益」の両方の視点から、掘り下げる必要があります。ここでは二つのコラムを取り上げて見てみましょう。先ずは産経新聞の社説である「主張」です。タイトルは『林外相のG20欠席 国会優先は国益を損なう』(3/02公開)で、以下に引用します。

林芳正外相がインドで1日から2日間の日程で始まった20カ国・地域(G20)外相会合への出席を見送り、令和5年度予算案の国会審議を優先した。林氏の代わりは山田賢司副大臣である。

政府と国会の見識を疑う。ロシアや中国などの専制国家の振る舞いが国際情勢を極めて緊迫化させている中での国際会議だ。

にもかかわらず、外交を担う閣僚が国会審議を優先し、そうした会議を欠席するとは驚きだ。国益を損ねる判断というほかない。

国会は1日、参院予算委員会で岸田文雄首相と全閣僚の出席が原則の基本的質疑を開いた。政府は、予算審議の優先を求めた参院自民党と立憲民主党の意向を踏まえ、林氏の出席を見送った。

松野博一官房長官は記者会見で「林氏が出席する可能性を追求したが、国会を含む国内での公務の日程、内容などを総合的に勘案した」と釈明した。全く理解に苦しむ。政府は国会に対し、もっと強く説得すべきだった。

G20の枠組みでは先の財務相・中央銀行総裁会議で、ロシアのウクライナ侵略を巡って、中露両国と先進7カ国(G7)各国などとの意見対立が鮮明になったばかりである。日本は今年のG7首脳会議(サミット)議長国としてG20での議論を主導すべき立場だ。

しかもG20は、対露関係で米欧と距離を置くインドネシアや南アフリカなどの「中間国」も構成国である。

ロシアの侵略を即刻中止させるには、中間国が多い「グローバルサウス」(南半球を中心とする途上国)を積極的に取り込み、広範な対露包囲網を形成することが重要だ。

その際には、伝統的にロシアと友好関係にあるインドとの連携も欠かせない。その意味でインドで開催される今回のG20は、日本の立場を主張し、対露包囲網を呼び掛ける絶好の機会だった。それを自ら逸してしまった政府と国会の判断は、世界に対する責任を果たさないものだといえよう。

これまで岸田首相は「5月のG7広島サミットを成功させ、その成果を9月のG20サミットにつなげ、アジアから世界の平和と繁栄の新しい秩序を主導する」と繰り返し語ってきた。だが、林氏の欠席はインドとの連携にも水を差しかねない。首相と林氏の見識も問われる事態である。

 産経新聞はこの件に関する別の記事で、「閣僚の海外出張を巡っては、昨年2月にも鈴木俊一財務相がG20財務相・中央銀行総裁会議への出席を国会日程のため見合わせており、同様の失態を繰り返したことになる」とも述べています。

 次にデイリー新潮の記事を取り上げます。タイトルは『「G20」欠席して国会での仕事は「53秒」だった林外相を足止めした犯人は誰なのか?』(3/03公開)で、以下に引用します。

林氏の無駄遣い

 3月2日の参議院予算委員会は、審議のために林芳正外相のG20(主要20か国の外相会合)への出席が見送られたことが話題となった。岸田文雄首相は国会の場で説明し、自民党の麻生太郎副総裁は苦言を呈するなどし、各報道番組でも報じられた。実際、林外相が国会で席に座っている意味はほとんどなかったようで、国益を逸しているとの指摘もある。開催国インドのメディアからも批判が出ている。欠席となったのは誰のせいなのか?

Images-2_20230303163301  日本維新の会の音喜多駿氏は参院予算委員会での質疑で、林氏が国会を優先した結果、G20に欠席することになった判断に注文を付けた。

 これに対して岸田首相は、「林氏の出席の可能性を追求したが、国会を含む日程などを総合的に勘案した」と説明したのだが……。

「音喜多氏は、1日の審議で林氏への与野党の質問がたった1問で回答時間が53秒だったことを持ち出して、”林氏の無駄遣いだったと言わざるを得ない“と言っていましたね。誰の目にも、”林さんは国会にいる必要がなかったよね“というのは明らかだったと思います」

 と、政治部デスク。

やる意味があるのか?

 一方で自民党の麻生副総裁も自派閥の会合で、「林外務大臣が、G20外相会合に出られなくなったというのはどうかと思う」と苦言を呈した。

「ロシアのウクライナ侵攻から1年が経過し、G20は関連の話をするにはまたとない会合なのに、ほとんど意味のない国会での論議が足を引っ張って欠席に至ったことを嘆いているようでもありました」(同)

 予算委での基本的質疑については、首相と全閣僚の出席が原則となってきた。副大臣や政務官が代理で答弁してもいいことになっているのだが、往々にして「大臣出席が必要」という声が幅を利かせがちだ。

「国会としては基本や慣例に忠実にということで、林氏のG20出席に待ったをかけたようです。しかし、外務省がしつこいくらいに出席を主張していたら、柔軟な対応ができていたのではないかという声は大きいですね。その他、衆院と同じ扱いを求めたとされる自民党の参院側の“責任”を問う声もあります。世耕弘成参院幹事長が何らかの働きかけを行っていれば話は変わったかもしれません」(同)

みんなでスルー

 実のところ、経緯を見ると、立憲民主党だけではなく自民党も林氏の外遊を認めないというスタンスを主張していた。国民民主党の玉木雄一郎代表は「林大臣はG20に出るべきだ」と主張していたが、彼らと自民党が共闘した形跡もない。

 つまり麻生副総裁は今頃になって苦言を呈しているが、何のことはない、自分たちも「国会優先」という側に立っていたことになる。

 政府与党、あるいは外務省が記者クラブらに対して「国会優先はおかしい」と問題提起を事前にしていたら展開は変わったかもしれないが、そもそも当事者もメディアもほとんどこの件をスルーしていたのだ。

 では、岸田首相は今回の判断にどれくらい関与したのか?

「ほぼ関与していないと見られますが、結果として良くなかったと思います。中身がないうえに退屈で、”やる意味があるのか?”とかねて指摘される国会審議の不要論に拍車がかかりそうですね。まぁそれは言い過ぎだとしても、首相は今回の件でもリーダーシップを発揮すべきだったのにできなかったと言えるのではないでしょうか」(同)

ウクライナ訪問は切望

「首相は自身がウクライナに訪問することには相当前のめりになってきたのに、今回の件には後ろ向きというか冷めた姿勢というか……。自分がスポットライトを浴びる場面とそうでない場面とでは熱意に差が出るのは仕方ないのかもしれませんが、対ロ包囲網で各国が一致結束する好適なタイミングだっただけに、残念な印象を受けますね」(同)

 林氏は首相と同じ宏池会所属で、次の首相候補として名があがる。「外交の岸田」からすると、自分以外が外交で目立つのに抵抗でもあったのだろうか。

「首相は林氏を信頼しつつも、どこかでライバル視するところもあり、晴れ舞台に送り込むのを躊躇したのではないかと邪推する人もいましたね」(同)

 要するに、首相も与党も多くの野党も、林氏がG20に出ても出なくてもどうってことない、という認識で一致していたということだろうか。

 何が国益に資するのかといった子供でもわかるような判断や単純な日程調整がなされていないことは嘆かわしい限りである。

 このブログで何回も主張していますが、今の国会運営は全く基礎からなっていないと思います。先ずは会議形式ではない。企業の会議とは異なると言われるかも知れませんが、もし企業の会議であれば、「テーマ」に対し、関係者各人がそのテーマの中の課題を掘り下げ、様々な意見を述べテーマに沿った最善の施策や解決策に収斂させていく、しかも決められた時間内で、と言うことになるでしょう。

 予算審議であれば、予算案に対し、同様に各党が様々な意見を出し合い、最良の予算に収斂させていく、それが会議の姿でしょう。ところが国会では事務方(官僚)が造った予算案を、事務方が造ったシナリオで担当閣僚が説明し、それに対しあらかじめ造っておいた反対シナリオでもって、主として野党が追及する。時にはテーマ(予算案)の趣旨を逸脱し、的を外れた反対シナリオも混ぜる事も多い。しかも意図的に。これが現実ではないでしょうか。これは会議ではありません。所謂「ショー」ですね。

 しかもそのショーは全く面白くもなんともない。時には馬鹿馬鹿しい限りです。更には最適案に収斂する試みもない。ですから記事中の「かねて指摘される国会審議の不要論に拍車がかかりそう」と言うのも、言いすぎではないと思いますね。

 そして慣習か何だか知りませんが、審議に全閣僚出席など全く意味がありません。副大臣や官僚の代役で十分でしょう。閣僚(大臣)は審議中の無駄(?)な時間に本来の仕事をすべきでしょう。今回の林外相について言えば、G20外相会議出席はマストだったでしょう。

 いずれにしろ国会改革は絶対必要です。私は全く面白くない国会中継ショーなど見ませんが、これを見た若い人などは間違いなく政治不信を抱くでしょうね。言い過ぎかも知れませんが、このくだらなさが投票率の低迷の要因の一つになっているかも知れません。政治不信を招かないような国会にしなければ、日本の未来は暗いと思いますね。

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