櫻井よし子氏:「未婚化対策に叡智を」 少子化要因の一つである未婚問題にメスを入れないと、異次元の対策には決してならない
昨年の出生者数が80万人を切って、少子化について俄に国民的課題となってきました。ただこの課題は今に始まったことではなく30年前、バブルがはじけた頃からの課題だったのです。それを政府やその他の不作為によって、部分対応に終始してきた結果が、この数字に表れたと言っていいでしょう。
岸田首相は「異次元の少子化対策」を打たねばならないと、打ち上げましたが、その論点の中心は子ども手当に代表される、子育て家庭向けの対策です。確かにそれも重要でしょうが、今もっと深刻な問題があります。それは未婚の男女が激増していることです。
日本は私生児(婚外子)に偏見を持つ風潮もあり、結婚した夫婦から子供が生まれるのを通常視します。ですから結婚しない男女が増えれば、当然生まれる子供は減っていきます。ですからこの未婚の男女に対する対策も、大きな課題なのです。
この課題に対して、ジャーナリストの櫻井よし子氏が、産経新聞に寄稿したコラムで、一部「Colabo問題」にも触れて述べていますので、以下に引用します。タイトルは『未婚化対策に叡智を』(3/06公開)です。
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昨年、日本に生まれた赤ちゃんが80万人を下回った。政府の見通しより11年早い。法政大学経済学部教授の小黒一正氏はわが国の少子化はもっと加速し、2031年の新生児は70万人、40年には60万人、52年には50万人を下回ると政府よりもずっと厳しく予測する。人口減少は憲法改正を必要とする国防と並ぶ最も深刻な日本国の課題であり、少子化対策が急がれる。
岸田文雄首相は異次元の少子化対策のたたき台を3月末までにまとめるとし、その柱は①児童手当を中心とする経済支援強化②子育てサービスの拡充③働き方改革の推進―だと語った。
実績で見れば年来の子育て支援策は少子化問題解決に貢献していない。少子化の真の原因を間違えているからだ。このままではせっかくの大計画は従来の施策同様、少子化対策にはつながらない。
わが国では婚外子が全体の2%にとどまることに見られるように結婚と子供を持つことに強い相関関係がある。であれば少子化解決の第一は結婚する人を増やす、つまり未婚化問題の解決こそが鍵だ。
正しい対策は正しい認識からしか生まれない。若い世代の結婚観について日本社会には大いなる誤解があると指摘するのが、中京大学現代社会学部教授の松田茂樹氏だ。子育て期で見ると、「夫は仕事、妻は家庭という役割分担を行う夫婦」が全体の80%で圧倒的多数を占めているという。女性が職場から離れて子育てをする夫婦への支援強化策が必要だということだ。
彼らへの支援は一組の夫婦が産み育てる子供の数を増やすことにもつながる。結婚した夫婦が望む子供の数は2人が52%、3人が23%、4人以上も入れると約8割の夫婦が2人以上の子供を持つことを望んでいる。しかし、希望する数まで増やせないなどとする夫婦が約67%。理由の第一が「お金がかかりすぎる」である。ここに異次元の援助を入れるべきだろう。シングルマザーや働くお母さんへの援助と同様、典型的家族への支援充実が大切だ。
若い世代の結婚観は急速に変化している。出産後も女性が継続して働くのが望ましいと考える割合が女性で34%、男性で39%と増えている。一生結婚せず、子供も持ちたくないという人も増加し、結婚しないという男性は6年前より5ポイント増の17・3%、女性は6ポイント増の14・6%だ(国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査)。
未婚化対策がいかに大事かということだ。若者が結婚しない最大の理由に種々の調査は収入の不安を掲げている。未婚化と貧しさには強い相関関係がある。シワ寄せは非正規雇用の男性に集中し、彼らは結婚願望も低い。企業の協力で非正規雇用を減らすか、彼らの賃金を高める施策に日本の叡智(えいち)を結集するときだ。
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結婚観が大きく変化するいま、厚生労働省、文部科学省、法務省などには、日本人の生き方を一定方向に誘引する制度を定める委員会や有識者会議が設置されている。各種委員会の決定は往々、リベラルな方向に傾いてきた。それらが日本国政府の基本方針となり、法制化され、予算が投入され、確実にわが国社会の形を創っていく。
特定の民間団体と密接に関係する人物が専門委員などに就き、自身の所属する団体の利益になるよう政策を誘導することが、至る所で頻繁かつ公然と行われてきた。
本当に大事にすべきなのは特定の人々だけではなく、全員なのだ。シングルマザーもLGBT(性的少数者)もきちんと受けとめたうえで、多数を占める典型的な家族を大事にしなければならない。その多数派を置き去りにするかのような政策を決めてきた委員会や専門家会議の在り方を、今こそ見直すべきだろう。
これでよいのかと検証すべき一例が「Colabo(コラボ)」であろう。性暴力や虐待などの被害を受けた若い女性らへの支援事業を東京都から委託されている一般社団法人だ。Colaboに対しては会計報告に不正があったとして住民監査請求がなされたが、問題の根は深い。代表の仁藤夢乃氏は厚労省の「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」のメンバーで、政府の公職にある。
仁藤氏は厚労省の会議で「女性支援法」に基づく国の政策形成に関して、「法律が実効性のあるものになるように、予算をつけてほしい。(中略)強制力を持って実行できるようなものが要る。やらせる、そういう法律や計画にしてほしい」と述べている。
離婚夫婦の片方による子供連れ去り事件や、その法的問題点について詳しいジャーナリストの池田良子氏が語った。
「自治体から巨額の補助金を受けている団体の代表が、自治体に自分の事業に対する予算措置を強制的に行うよう法律で義務付けてほしいという要望に聞こえます。公職にある立場の人には許されない発言です」
仁藤氏を支える議員に社民党の福島瑞穂党首、立憲民主党の蓮舫、打越さく良両参院議員らがいる。Colaboは家出少女に食事や宿泊場所を提供する活動を行ってきたが、そうした活動の一環として若い女性たちの合宿を沖縄で行い、「辺野古基地反対座り込み」などの政治活動も行っている。その活動を支える「女性支援法」は、実は衆参両院での議論が全くなされない中で成立した。
Colaboの事例が示すのは、国民の監視の目が全く届かない中で、女性支援法など多くの人が疑問を抱くことも反対することもない、美しい名前の法律に守られて多額の公金が特定の団体に支給されているケースがあるという事実だ。公金が本来の目的とは異なる目的、たとえば左翼的政治活動に使われ、リベラル勢力の活動資金となっている例は実は少なくない。
異次元の少子化対策は、家族のあり方の見直しを起点とし、政府内の種々の有識者会議の構成員の見直しも含め、「異次元の体制」で取り組まなければならない課題である。シングルマザーをはじめ少数の人々の生き方をきちんと受け入れるという大前提を踏んだうえで、伝統的家族の長所に目を向け、若い人々が結婚できる社会の構築に最大限の支援が急がれる。
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リベラル勢力は前回のこのブログで指摘したように、「多様性」の美名の元にマイノリティや弱者と言われる人を重要視し、大多数のマジョリティへの視線が決定的に欠けています。Colabo問題の本質もそこにあるのではないかと思われます。
それと櫻井氏の指摘のように、少子化問題にしてもその本質をきちんと把握した上で、有効な手を打たねばなりません。そこには結婚しない男女の問題が取り残されていて、そこにメスを入れる必要があることはこのブログでも指摘してきました。
野党、立憲民主党は、今総務省の文書問題で沸き立っているようですが、優先順位が全く見通せない情けない党です。弱体化した国の力を取り戻す為に、今何が重要かを考えて政策論議をしなければ、やがて社民党と同じ運命を辿ることでしょう。
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