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2023年4月25日 (火)

西太平洋の海中に不気味にひそむ潜水艦、いまや「3隻に1隻」は西太平洋に集中、配備する各国の狙いと最新潜水艦事情

Img_2a064cc176d4a089b008e435ac70b04b5459  今世界中で潜水艦の航行ラッシュが起こっているようです。特に日本近海を含む西太平洋上では、海水浴場での「芋の子を洗うような」と言う表現が当たるような状況だと言います。

 その詳細を、ビジネス雑誌記者の深川孝行氏が、JBpressに寄稿した記事から見てみましょう。タイトルは『西太平洋の海中に不気味にひそむ潜水艦、“イモ洗い”状態で正面衝突の危険も いまや「3隻に1隻」は西太平洋に集中、配備する各国の狙いと最新潜水艦事情』(4/21公開)で、以下に引用します。

米ロ除き10カ国・地域が西太平洋で潜水艦を保有

 2023年4月8日から3日間にわたり中国は台湾の包囲軍事訓練を行い、蔡英文・台湾総統の訪米に対して“恫喝”した。

 その際、中国海軍の2番目の空母「山東」の包囲訓練初参加に耳目が集まったが、むしろ専門家は空母の下にひそむ中国潜水艦の存在に興味を示していた。4~6隻が水深数百メートル辺りで「山東」の“露払い”を務めていると見られ、虎の子の空母を海の中からもガードできるという自信の表われとも分析されている。

 太平洋の中でも、特にアジア・豪州の両大陸に面する辺りの西太平洋地域の海の中は、中国の海軍力増強を機に20年ほど前から「潜水艦軍拡競争」が勃発し、全世界に600隻弱ある潜水艦の実に3隻に1隻、200隻ほどがここに集まっていると見られるからだ。

 英シンクタンク・国際戦略研究所(IISS)の最新報告書『ミリタリー・バランス(2023年版)』を中心に、激動する潜水艦事情に迫ってみると、米ロを除いて10カ国・地域(以下)が西太平洋で潜水艦を保有する。

・中国59隻

・日本22隻

・韓国19隻

・北朝鮮約20隻(小型潜水艇は除く)

・台湾4隻

・ベトナム6隻

・マレーシア2隻

・シンガポール4隻

・インドネシア4隻

・豪州6隻

 この数字を見ると、中国が最大で日本の実に2倍以上を保有しており、そのほかタイやフィリピンも導入に触手を伸ばしていると見られる。

「地球最後の日」に備える原子力潜水艦の驚愕の“任務”

 潜水艦と言ってもピンからキリまであり、まず「体格」だが、特に正式な区別はないものの、仮に水を満杯にした大きな湯船で完全に沈めた時に溢れる水の重量、「水中排水量(単位/トン、以下同)」で比べると、次のような目安で区別できる。

・およそ500トン以下:小型潜水艇

・700~2000トン未満:小型潜水艦

・2000~3000トン未満:中型

・3000トン以上:大型

 基本的に大きいほうが外洋で長期間作戦が続けられるため有利だ。また小型潜水艇は主に北朝鮮が多数装備し、これも含めて「北朝鮮の潜水艦の数はアジア最大」とするメディアもあるが、性能は限定的で外洋での作戦も困難なため、一般的な潜水艦と同列に扱うには無理があるだろう。

 また、潜水艦は搭載するエンジン(機関)でも「原子力潜水艦(原潜)」と「通常(動力)型潜水艦」に大別され、「原潜」は空気(酸素)が無用な核分裂で莫大なパワーを発揮する原子炉がエンジンで、核燃料を一度積めば10年以上無補給で航行できるのが最大の特長だ。乗組員の食糧と精神力が持つ限り何カ月でも潜航でき、乗組員の酸素・飲料水も豊富な電力で海水から大量に製造できる。

「通常型」は普通のディーゼル・エンジンを載せた在来型の潜水艦で、浮上時はエンジンで航行し、この時バッテリー充電も行う。潜る時は空気が得られないのでエンジンは使えず(浅い潜航ならシュノーケルで大気を取り込める)、バッテリーの電気を頼りに潜航するが、数日が限界だ。

 近年は通常型の潜航時間を数週間に伸ばせるAIP(非大気依存推進)という先端技術の採用例も増えている。液体酸素と燃料・化学剤を反応させてエネルギーを得る方式や燃料電池が主流だ。

 原潜はさらに、「弾道ミサイル原潜(戦略ミサイル原潜)/SSBN)」と「攻撃型原潜/SSN」に分けられ、前者は巨大な(核)弾道ミサイル(SLBM/潜水艦発射型弾道ミサイル)を何発も垂直に並べて搭載し、何カ月も海中に隠れて“地球最後の日”に備える核抑止が任務だ。核弾道ミサイルを使えば人類滅亡が確実なので「使えない兵器」と皮肉られ、じっと隠れているのが鉄則で、敵潜水艦への追跡・攻撃はまず行わない。

 これに対し後者は、まさに敵潜水艦・艦船を魚雷やミサイルで攻撃するのが主任務で、SSBNの護衛も務める。通常型のほぼすべてが攻撃型と考えていい。

南シナ海を「聖域」にしたい中国の思惑

 ここからは各国の潜水艦事情について見ていこう。まず中国だが、急激に質・量を増しているのが特筆すべき点だ。国産のSSBN6隻が同国の核戦力の要(かなめ)の1つで、搭載するSLBMの照準を“仮想敵”であるアメリカに合わせる。

 SSBNは海中に潜り続けて発見されにくいので、核報復の切り札として核保有国は重視する。そのため敵潜水艦などが近づけない“聖域”の確保も重要で、中国は南シナ海をこれに充てようと考える。近年、南沙諸島で占拠や軍事基地化を強引に進めるのもこのためだと指摘する専門家も多い。

 また性能アップにも熱心で、近く配備の「唐(タン)」型SSBNの弾道ミサイル搭載数は現行の2倍、24発になる模様で、SSBNの総数も2030年までに2隻増の8隻体制にするらしい。

 このほかSSN6隻、通常型47隻を揃えるが、20世紀末までは“骨董品”とも言うべき「第2次大戦型」の改良型が大半で、「太鼓を叩いて潜航している」と揶揄されるほどうるさく、探知も容易だった。

 だが2000年代以降はロシアの技術支援などで急速に近代化を図り、いまや大半が現代戦で通用するレベルで潜航時もかなり静かになったという。

 SSNや通常型の相当数には地上攻撃が可能な巡航ミサイルが装備され、また通常型のほぼ半数はAIP搭載の国産「元(ユアン)」型で揃える。

世界初「リチウムイオン電池型」を開発した日本

Img_a4fdf1e69eb1ebbc0f1a61b241a4ba992522  中国に対抗する日本は、10年ほど前までの「潜水艦16隻体制」を改め「22隻体制」とし、さらに何隻かの上積みも模索する。

 保有する潜水艦はすべて国産で、最新鋭の「たいげい」型(4000トン超)は通常型では世界最大クラス。同艦とその前の「そうりゅう」型12隻のうちの2隻(残り10隻はAIP搭載艦)は、世界初の「リチウムイオン電池潜水艦」で、総合的な能力はAIPよりも上だという。

「反撃能力の保持」を決めた岸田政権は2023年4月11日、潜水艦の魚雷発射管から発射する対地攻撃用の長距離巡航ミサイル(射程1000km超)の開発にゴーサインを出した。2027年度までに配備予定で、さらに艦内にミサイルを垂直に何発も並べたタイプの潜水艦の開発も並行して進めるらしい。

国産を決意した台湾と弾道ミサイル発射タイプを配備した韓国

 台湾は武力統一の野望を捨てない中国・習近平政権に対抗するため、2020年に潜水艦の初の国産に踏み切った。2030年までに8隻を完成させると言うが、最大3000トンに達するヘビー級のため、「初心者にはハードルが高すぎる」と不安視する向きもある。一説には英仏、スウェーデンの技術支援も噂される。

 現用の通常型4隻のうち2隻は第2次大戦で活躍した米潜水艦の改良型で、現代戦で使える代物ではなく、残る2隻も1980年代のオランダ製で老朽化が目立つ。

 アメリカが通常型を台湾に供与してもよさそうだが、残念ながらアメリカは半世紀以上前に原潜1本に絞って通常型の建造は行なっておらず、在庫も技術もないのが実情だ。

 韓国は1990年代から潜水艦の保有に舵を切り(小型潜水艇はそれ以前から)、すべてドイツ製で大半を国内ライセンス生産で賄う。注目は「弾道ミサイル通常型潜水艦(SSB)」の開発に熱心な点で、3000トン以上の船体に垂直発射管を組み込み複数のSLBMを搭載し、北朝鮮の核・ミサイル開発に対抗する。

 2021年8月には初のSSBがミサイル試射に成功した後に実戦配備され、さらに3600トン、垂直発射管数10本にアップしたSSBの建造も2023年3月から始めた。これは2027年ごろの配備予定で、燃料電池式のAIPとリチウムイオン電池も載せる予定だという。

 将来は4500トン台も配備し、最終的にSSBを計9隻備えるらしい。一部では「原潜や核兵器開発に発展する可能性もある。ウクライナ戦争で万が一アメリカがウクライナ側を見捨てれば、いよいよ米韓同盟への不信感が高まり『北朝鮮の攻撃からアメリカは本当に守ってくれるか疑わしい』との国民の声が高まりかねないからだ」との見方もある。

 対する北朝鮮は、前述したように小型潜水艇のほか、60年以上前に開発の旧ソ連製の通常型を約20隻使い続ける。ただし「8・24英雄艦」と呼ばれる2010年代に国産した中型艦のSSB1隻が不気味な存在で、SLBMを積み発射実験を繰り返している。

東南アジアは21世紀に入り近代化・新規保有が活発化

 東南アジア諸国の中で最強の潜水艦戦力を持つのはベトナムで、通常型6隻すべてが4000トンを誇るロシアの“巨艦”「キロ」級である(艦の名前で重さの単位ではない)。

 南シナ海の島嶼の領有権で中国との対立が激しくなり始めた2010年代より配備しているが、中国側も同じ潜水艦を持ち、「兄弟艦同士の睨み合い」がすでに展開されているとの声もある。

 このほか、シンガポールは次期通常型に中型のAIP搭載艦を4隻発注しており、既存の旧式艦と順次交代する計画だ。また、マレーシアも仏西共同開発の中型の通常型を2000年代末に就役させているほか、インドネシアもドイツ製4隻を持ちうち3隻は2010年代の配備で比較的新しい。

原潜保有に舵切った豪州と後押しする米英

 ここ最近で最も衝撃的だったのが豪州の原潜保有宣言で、特に中国は相当危機感を持っているようだ。同国は旧式化したスウェーデン製で大型の通常型6隻の後継艦として、当初フランスが原潜をベースに開発する大型の通常型12隻と決めていた。

 だが増強する中国の脅威に対抗するため、豪米英の3カ国は2021年に軍事同盟「AUKUS(オーカス)」を結成。これに合わせ豪州はフランスとの潜水艦契約を白紙にし、米英との原潜共同開発へと舵を切るという“ちゃぶ台返し”を行った。

 開発される原潜「オーカス」級は、計画ではまず2030年代に既存の潜水艦と交代する形でアメリカから7000トン台のSSNを3隻購入。オーカス級完成までのギャップを埋め、この間に同艦を豪州で建造し2040年代初頭に完成させるというシナリオだ。

 米英の技術を注入して8隻造る見込みだが、豪州は今後30年間に32兆円をつぎ込むというから驚きだ。

 西太平洋の覇権を握るアメリカの状況はというと、原潜を67隻(全部7000トン以上の超大型。「SSBN14隻、「攻撃型」53隻)保有し、うち十数隻~20隻をここに展開していると見られるが詳細は不明である。

 一方、ロシアは51隻(SSBN11隻、攻撃型原潜19隻、通常型21隻)を持ち、15隻前後を太平洋に展開している模様だが、稼働率が低く、実際に稼働できるのは5隻程度ではとの指摘もある。

 さらにAUKUSの関係でイギリスが攻撃型原潜1隻を豪州に常駐させる可能性が高く、同様にフランスやインドも存在感を示すため、同海域に潜水艦を派遣するかもしれない。

2021年に乗組員多数が負傷する米原潜の衝突事故も

 人工衛星やドローン、各種センサー類が急激に進歩する現在、地上や水上、空中で姿をさらす兵器は非常に見つかりやすい。このため海中に身を隠して発見が極めて難しい潜水艦の存在価値は、かつてないほど高まっているのである。

 現在では長距離巡航ミサイル用の「海中発射台」や、特殊部隊を乗せた小型特殊潜航艇を海中から発進させて、敵地の偵察や重要施設の破壊のための母艦に活用されるなど引っ張りだこだ。

 経済力をつけた「グローバル・サウス」の国々が、見栄の張り合いで買い求めるケースもあり、潜水艦の需要は今後世界規模でますます増える可能性が高い。

 このように潜水艦の“イモ洗い”状態になりつつある西太平洋だが、実際2021年には問題の南シナ海で潜航中の米原潜が正体不明の物体と衝突、乗組員多数が負傷する事故も起きている。一説には警戒に当たる中国潜水艦と衝突したのでは、との見方もあるが、仮に事実でも、潜水艦の動きすべてが軍事機密で、中国が公表するとは思えない。

 今後、潜水艦同士の偶発的な“正面衝突”が本当の軍事衝突に発展しなければいいのだが・・・。

 第2次大戦前は日本も海軍王国で潜水艦も多数保有していましたが、今では戦艦も潜水艦も中国の後塵を拝しています。艦船数だけでなくあらゆる面で、残念ながら米国の力がなければ、日本は中国に対抗できないことがよく分ります。

 潜水艦に関して言えば、レーダーなどで捕捉されず守りに強い上に、攻撃力もミサイル搭載などにより、より強力になっています。近い将来、四方を海に囲まれている日本も、より性能に勝る原子力潜水艦を保有したいところです。

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