« 伊東博敏氏:熱海土石流、リニア、太陽光……静岡・川勝平太知事への反発はなぜ強まり続けるのか | トップページ | 中国の若者の「空前の就職難」で日本に留学生が押し寄せる 中にはスパイが潜み日本の「経済安保の危機」を招く  »

2023年4月10日 (月)

長谷川幸洋氏:中国で拘束の邦人奪還へ「スパイ防止法」急げ お願い外交ではダメ「人質交換」が世界の現実

Images-8_20230409144801  今月初めに、日中外相会談の状況を取り上げましたが、拘束された日本人の解放には何も進展がありませんでした。多くの国では他国に拘束された国民を救出する手段として、自国にも同様に拘束した人間との交換をする例がありますが、日本ではスパイ防止法がなく、そうした行為をした外国人を法的に取り締まるのが困難なため、その手段は使えません。

 何故スパイ防止法が日本では立法化されないのか、以前にも記述しましたが、「憲法」盾に猛反対勢力がいるからです。それはさておき、中国当局が日本人(アステラス製薬幹部社員)を拘束した事件に関して、ジャーナリストの長谷川幸洋氏がzakzakに寄稿した記事を紹介します。タイトルは『今回も中国で拘束の邦人奪還へ「スパイ防止法」急げ 親中派・林外相の訪中に西村経産相の英断 お願い外交ではダメ「人質交換」が世界の現実』(4/08公開)で、以下に引用します。

林外相(左)は笑顔を見せて、中国の李強首相と会談した。邦人奪還のために乗り込んだのではないのか。

***********

中国当局に、大手製薬会社「アステラス製薬」の中国現地法人幹部が「スパイ容疑」で拘束されたことを受け、日本の「外交」や「危機管理」の課題が浮上している。日中は国交回復以降、経済・友好関係を拡大させてきたが、中国が専制主義的色彩を強めるなかで齟齬(そご)が目立ち始めている。むき出しの利害が衝突する外交の現場では、交渉の武器となる軍事力や対外情報機関の裏付けも不可欠なのだ。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、拘束された邦人を奪還するためにも、「スパイ防止法の制定」を訴えた。

中国が拘束した日本人を取り戻すのに、日本の外務省はどれほど頼りになるのか。ご家族には誠に気の毒だが、私はまったく期待していない。そもそも、彼らには戦う武器も取引材料もないからだ。

日本は「スパイ防止法の制定」を急ぐ必要がある。いざというときの「人質交換」に備えるためだ。

私は当初から、「今回の事件は仕組まれていた」とみている。中国は、日本が下手に出ざるを得なくなるように拘束した。例えば、「日本が対中半導体規制で手加減する」といった手土産を期待していたのだ。

先週のコラムにそう書いたら、経産省は林芳正外相訪中の前日(3月31日)になって、「先端半導体装置の輸出を許可制にする」と発表した。これには、驚いた。林訪中の先手を打って、経産省が既成事実をつくったかたちになったからだ。

米国は昨年11月以来、半導体規制で対中包囲網をつくるために、日本とオランダに同調を求めてきた。ところが、日蘭はなかなか動かず、一部では、「同調しても発表しない」といった観測記事も流れていた。

ところが、オランダは3月8日に規制強化を発表した。日本は沈黙を守っていたが、外相訪中の直前に突然、動いた。タイミングからみて、訪中する林氏と中国を牽制(けんせい)したとみて間違いない。「林外相が中国に甘い顔を見せたりしたら、大変だ」とみたのだろう。

オランダには後れをとったが、毅然(きぜん)と筋を通した西村康稔経産相には、拍手を送りたい。「親中派」の外相にフリーハンドを与えていたら、どれほど中国に追い込まれていたことか。林氏は結局、手ぶらで帰国せざるを得なかった。

■「人質交換」が世界の現実だ

中国はあきらめず、追撃してきた。

4月5日付の読売新聞によれば、中国は圧倒的な強みを持つ「磁石技術を禁輸する方向で検討」という。「半導体の仇(かたき)を磁石で討つ」という話である。一連の展開をみれば、中国がいかに半導体規制を恐れていたか、が分かる。

ロシアは最近、米紙ウォールストリート・ジャーナルの米国人記者を拘束した。中国やロシアのような独裁・専制主義国家はいまや、なりふり構わず、外国人を拘束している。こうした動きは今後、加速はしても、止まることはない。

では、どうするか。

米国は昨年、ロシアに拘束された元海兵隊員と女子プロバスケットボール選手を取り戻すために、密輸などの罪で収監していたロシア人2人を解放した。カナダも2021年、拘束していた中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を、米国と同意のうえで解放する代わりに、拘束されていたカナダ人2人を奪還した。事実上の「人質交換」だ。これが世界の現実である。

残念ながら、日本は人質交換しようにも、拘束している大物がいない。スパイ防止法がなく、当局が摘発に非常な苦労を強いられているからだ。ようやく事情聴取しても、直後に帰国されてしまう例もある。

誤解のないよう書いておくが、「人質が必要だから法律をつくれ」というのではない。法律があれば、日本で勝手に不法な警察活動をしているような中国人を取り締まれる。そうなれば、いざというとき、役に立つかもしれないだろう。

徒手空拳のお願い外交だけでは、ナメられるだけだ。

 日本人はお人好しであり、性善説に基づいて物事を考える傾向があります。これは日本人同士には、良好なコミュニケーションを図るためにも、非常に有効です。「和を以て貴しとなす」民族です。

 しかし国益を争う多国間の交渉の場では、冷徹な論理や正確な数字に裏付けされた「交渉力」と、経済力や軍事力などを背景とした「力」が無ければなりません。日本外交には、それが決定的に欠けています。

 そして法体系にもその日本人的発想が影響されています。日本人が作った憲法ではありませんが、その憲法の「人権」や「権利」がことさら強調され、「スパイ防止法」のような法律制定に対しては、それが反対勢力の錦の御旗となっていて、成立が困難になっています。

 日本人も「個人間の付き合い」と「外交」とを、明確に切り分けて考える必要があります。「何でも外交で解決」など出来ないし、権威主義国家には「友好」など通用しないことなど、いい加減に認識すべきでしょう。尖閣周辺海域や北方領土周辺を相手国から威嚇されても、抑止力向上を退け、「外交」至上主義を訴える人は、一度中国、ロシアのような国と交渉してみたらいいでしょう。

 先進国の殆どが施行している「スパイ防止法」は、邦人拘束のような異常事態の「外交」には不可欠と思われます。それでなくてもスパイ天国と言われて、先端技術をはじめ情報をかすめ取られている日本。その状況の打破を真剣に考えなくてはなりません。 岸田政権も対中、対露姿勢を明確にしている今、「スパイ防止法」の制定に向け、是非力を入れるべきでしょう。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)


にほんブログ村 

 

« 伊東博敏氏:熱海土石流、リニア、太陽光……静岡・川勝平太知事への反発はなぜ強まり続けるのか | トップページ | 中国の若者の「空前の就職難」で日本に留学生が押し寄せる 中にはスパイが潜み日本の「経済安保の危機」を招く  »

政治、外交」カテゴリの記事

2023年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
フォト
無料ブログはココログ