米NYで摘発された中国「秘密警察」 その存在を否定する中国側の反論は「明らかなウソ」 世界53カ国に存在、日本にも
他国の中に秘密の警察をつくり、治外法権のように在留中国人を監視する、中国の「秘密警察」。明らかな主権侵害行為ですが、平然とやってのけるその様は、まさに「権威国家」の象徴です。
アメリカで摘発されたこの「秘密警察」、中国はいつものようにその存在を否定しています。日本にも以前取り上げたように、複数箇所設置されているようです。デイリー新潮がその実態に迫ります。タイトルは『米NYで摘発された中国「秘密警察」 ねつ造と言い張る中国側の反論は「明らかなウソ」』(4/20公開)で、以下に引用して掲載します。
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米司法当局は17日、ニューヨーク市で中国の秘密警察署を運営したとして、中国系米国人の男2人を逮捕した。彼らは2022年2月ごろ、同市のチャイナタウンに福建省出身者向けの懇親会などを行う非営利団体の事務所を開設したが、実態は同省福州市の「警察署」だったという。
「昨年10月、FBIがこの“警察署”を捜索しました。男2人は、中国の体制に批判的な人物の言動を監視し、問題のある人物には嫌がらせを行うだけでなく、強制的に帰国させることまで行っていました。さらに2人は中国公安当局からの電信記録を破棄するなど、捜査妨害を行っていたことも発覚。アメリカ政府の許可なく中国政府の代理人として警察活動をしていたわけで、NY州の連邦検事は『中国公安部はNYのど真ん中に警察署を開設し、アメリカの主権を侵害している』と主張しています」(外信部記者)
中国外務省は18日の会見で「中国は他国への不干渉政策を維持しており、このような警察署は存在しない」と全面否定したが、秘密警察署は少なくとも53か国、102か所にのぼることがスペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」によって昨年、報告されている。日本も例外ではない。東京都内に2か所あり、そのうち秋葉原のビルにある拠点は、やはり福建省福州市の名前が入った一般社団法人となっている。
「こうした中国による監視体制構築のルーツは、習近平体制が発足した2012年以降から始まった『キツネ狩り作戦』にあります」
というのは、元産経新聞中国総局特派員で、中国問題を研究する一般社団法人「新外交フォーラム」代表理事の野口東秀氏。
「キツネ狩り作戦」とは、海外に逃亡した汚職官僚を追跡し、中国に連れ戻すというもの。相手国への通告はおろか、法律も守らず、勝手に捜査することが問題視されており、2021年7月には男性汚職官僚の摘発を勝手に米国内で行ったとして、NY連邦大陪審がストーカー行為などの罪で中国人捜査員9人を起訴している。彼らは汚職官僚を強引に帰国させようと自宅におしかけ、
「中国に戻って10年服役すれば、家族は無事だ」
と書いた置き手紙を残したほか、中国にいた官僚の父親を渡米させ、帰国しなければ家族に危害を加えると脅迫した。一連の作戦には、武漢市公安局の捜査員も一緒に渡米していた。
日本でもやりたい放題
「秘密警察はこうした活動を汚職官僚だけでなく、各国に住む中国人にまで広げるための拠点です。福建省をかたるのは華僑が多いこと、海外進出する企業が多いことが挙げられます。チャイナタウンや中華料理屋の入っているビルの1室を借りて拠点として活動しますが、総司令塔はもちろん、北京の安全系統の部門ではないかと思われます。今回逮捕された2人だけで担当区域を担うのは大変ですから、その下に情報係となる協力者が多数います。中国人が多いでしょうが、アメリカ人もいるでしょう」
習体制を批判しており、しかもそれをSNSなどで発信している――こうした人物情報を徹底的に集め、悪質と思われる人物には「故郷にいる家族に危害が加わる」などと脅して帰国を促すのだという。
中国人民解放軍による日本へのサイバー攻撃に関与したとして、中国籍の留学生に逮捕状が出た事件(2022年)など、留学生や研究者が本来の身分を隠して技術情報を盗んだり流出させたりするケースも日本では懸念されている。
「日本はスパイ天国です。天安門事件以来、中国へ帰っていない人。飲み屋や食事の席で習近平の悪口を言っている人など、反政府系の人まで、協力者たちの提報によって炙り出されていくのです。今回のように、運営している人間を捕まえても、その下にいる多くの協力者まで摘発しないと、意味はないように思いますが法的には難しい話。いずれにしろ、日本にはスパイ防止法が必要でしょう」
ちなみに、中国当局は自身のやっていることについて「免許証の更新手続きやコロナ禍で帰国が難しくなった同国民のサポートなどを行っている」と主張している。
「中国だって、免許更新手続きは警察の事務です。それを勝手に代行していいのでしょうか。さらにいえば、例えば免許更新なら、ネット申し込みで9割はできます。残り1割は帰国した際に、健康検査を受ければそれで完了する地域もあります。コロナ禍で困っている中国人を支援するのは、大使館の仕事でしょう。ウソは明白です」
外国、とりわけ民主主義国にいる中国人の影響力(デモ、記事掲載、SNS発信など)は無視できないということなのだろうが、徹底的に監視網を敷く習体制の在外中国人への締め付けは当面、続くことになりそうだ。
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蟻の子一匹も逃さない、と言うことでしょうが、世界に散らばる中国人を完全監視など不可能なことでしょう。それでもこうした監視の目を崩さないのは、よほど「体制をひっくり返されるのが怖い」という事への裏返しにもなります。
体制批判の中国人が、その中国人の手によって摘発されるのは、日本にとってはある意味どうでもいいのでしょうが、問題は日本に入り込んで勝手にそういう監視行為をされることでしょう。その逆の状況、つまり日本の警察機構が、中国に勝手に分室をつくって、日本人の監視をしたら、中国当局はどうするでしょうか。当然主権違反行為で逮捕されるでしょう。
日本にも中華街は多くの都市にあり、そこにこう言う組織が出来れば、実態確認が難しく大きな問題です。更には中国人工作員を呼び込み、スパイ行為をする基地になるかも知れません。それを防止するためにも「スパイ防止法」を早く立法化しなければなりません。多くの人から必要性が指摘されているこの法律を、未だに国会に上程しない政府や国会議員は、その成立を躊躇する理由を明確にしてほしいものです。
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