中国人口減少の裏で深刻な若者の「結婚・出産」悲観ムード 昨年初めて人口減少に見舞われた中国のその実態
日本で深刻化している少子化問題。それは中国でも同様で、日本より遅れること10年以上経ちますが、昨年初めて人口が減少に転じました。一人っ子政策の後遺症だけでなく、それが解禁されても子供は増えません。何がそうさせているのでしょうか。
日中福祉プランニング代表の王青氏が、時事ドットコムに寄稿した記事から、その詳細を見てみましょう。タイトルは『中国人口減少の裏で深刻な若者の「結婚・出産」悲観ムード【洞察☆中国】』(4/01公開)で、以下に引用します。
◇
中国国家統計局は1月、2022年末時点の中国(台湾、香港、マカオを除く)の総人口が前年比85万人減り、14億1175万人になったと発表した。
減少は61年ぶり。年齢構成では、16~59歳の生産年齢人口が8億7556万人で全国人口の62.0%を占め、60歳以上は2億8004万人で全人口の19.8%、65歳以上は2億978万人で、14.9%となった。
◆衝撃的な数字
政府が発表した最新データの中で、最もインパクトがあったのは新生児の数である。22年の出生数が956万人。この数は「一人っ子政策」が撤廃された16年の1867万人に比べ、約半分に減ったということであり、その減少数は衝撃的だった。
新生児の急激な減少の背景には、中国の結婚件数が年々減少していることがある。昨年、中国民政部が発表した統計から見ると、22年の結婚件数は700万である。これに対して、10年前の12年の結婚件数は1323万だったので、10年間で半分近くに減少した。
急速な経済成長とともに、社会の競争が激しくなった上、不動産価格や教育費などが高騰した。そのため、若者は結婚や出産に対し総じて悲観的なムードになっている。
最大経済都市の上海では、市政府が最近公開した「上海2022年年次人口監視統計」によれば、合計特殊出生率がわずか0.7である。
そして、SNSでは「自分を養うことすら精いっぱいなのに、どうやって家庭を築き子どもを育てていくのか」「子どもを産むことに対して大変不安だ」などのコメントが常にあふれている。
◆農村まで出産意欲低下
しかも、現在、中国の少子化は都会の問題だけではなくなり、農村部まで深刻さを増している。
これまで農村部では「労働力が欲しい、家の後継ぎが必要」という伝統や、「多子多福(子が多ければ幸福)」のような考え方があったため、人々は子どもを多く望み、出生率が高かった。
ところが、武漢大学社会学院が農村部で行った大規模調査によると、農村部の若者のうち、約3割は全く子どもを産むつもりがないという。また、子どもは1人だけが良いと思う人が38%、2人までは32%、3人はわずか1.75%との統計である。
さらに農村部の90後(1990年代生まれ)と00後(2000年代生まれ)の若者は、出産意欲が特に低いと調査報告が付け加えた。
その理由は、社会の進歩や情報通信の発達につれ、農村の若者の居住地がどこであれ、彼らの生活様式が親世代と大きく変わり、考え方が段々と都市化した、というのが調査チームの専門家の分析である。
◆あの手この手の出産奨励策
このような現状を踏まえて、中国政府は何としても出生率を上げようと、さまざまな出産奨励政策を打ち出している。
例えば、3歳以下の乳幼児に掛かる養育費を個人所得税の控除対象にする。各地方政府も、あの手この手で出産数を増やそうと躍起になっている。
中国の自治体の中で最初に育児補助金の支給を始めたのが 四川省の攀枝花市だ。21年に、第2子、第3子を持つ家庭を対象に、子ども1人につき3歳まで毎月500元(約1万円)の育児補助金を支給すると決めた。
その後、多くの地域が似たような政策を相次いで発表した。育児補助金のほか、住宅購入時の優遇や保育園補助金制度、女性の産休期間拡大を含め、子育て、教育、母子の健康など、多方面にわたり、出産支援に力を入れている。
そして先日、四川省は、未婚者にも出産を認め、出産保険や出産休暇を提供するというので、中国で大きく話題となった。この未婚者に対する出産対策は、今後ほかの地域も追随すると予測されている。
「一人っ子政策」が7年前に廃止され、その後、3人までもうけられるよう緩和されたが、少子化は歯止めがかからない状況が変わらないどころか、ますます深刻になっている。
専門家は「一人っ子政策のツケはあまりに大きい。子どもを安心して産める環境がないと、子どもを増やすのは難しい」と指摘している。
◇
殆ど日本と同様な状況と言っていいでしょう。ただ上海の出生率0.7は、東京の1.08に比べてもかなり低いですね。より深刻なのかも知れません。子育て支援策は似たようなものですが、「未婚者にも出産を認め、出産保険や出産休暇を提供する」という点は、日本にはまだ無いようです。フランスではおなじみですが、日本でも参考になる政策です。
ある程度生活が豊かになり、女性の社会進出が進んだ国は、いずれも同様な少子化の波が押し寄せているようです。欧州に続き、日本や韓国をはじめ台湾、中国と言った東アジアの国も、その仲間に入りました。
少子化の食い止めにある程度成功したフランスや、これからその成果が問われるだろうハンガリーのような、出生率改善に取り組む国同様、これら日本をはじめとする東アジアの国々も、少子化を食い止められるか注目されるところです。
(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)
(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)
« 西太平洋の海中に不気味にひそむ潜水艦、いまや「3隻に1隻」は西太平洋に集中、配備する各国の狙いと最新潜水艦事情 | トップページ | 池田信夫氏:ひとり負けした「限界野党」立憲民主党の解党のすすめ モンスタークレーマーが党崩壊の引き金に »
「少子化問題」カテゴリの記事
- 中国人口減少の裏で深刻な若者の「結婚・出産」悲観ムード 昨年初めて人口減少に見舞われた中国のその実態(2023.04.26)
- 「カネがない男は結婚できない」超高額結納金に苛まれる中国結婚絶望事情 風習と経済状況が人口減少を加速する(2023.04.07)
- 「フェミニスト」上野千鶴子氏が入籍していた事実に唖然! 飯山陽氏が語る「おひとりさま」を裏切る偽善者(2023.03.31)
- 櫻井よし子氏:「未婚化対策に叡智を」 少子化要因の一つである未婚問題にメスを入れないと、異次元の対策には決してならない(2023.03.10)
- 少子化問題、30年前からの課題にようやく火が付く、しかし今後数十年は減少が止まらない、どうするその方策(2023.02.09)