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2023年4月20日 (木)

中国経済も停滞の入り口に立ったか 第Ⅰ四半期GDP4.5%成長も忍び寄る「不動産不況」と「高失業率」

Images-15_20230419104601  中国の国家統計局が18日、今年第1四半期のGDPが前年比4.5%成長した、と発表しました。通年目標の5%に近い成長達成と、安堵しているようです。ただ以前から囁かれているように、真実の数値かどうかはわかりませんが。

 このほぼ目標通りのGDP成長率の影で、懸念されているのが不動産市況と若者の失業率の問題です。その概要をジャーナリストの近藤大介氏が、JBpressに寄稿した記事から見てみましょう。タイトルは『4.5%成長、堅調ぶり示す中国経済に忍び寄る「不動産不況」と「高失業率」 東アジア「深層取材ノート」(第184回)』で、以下に引用して掲載します。

 4月18日午前10時、中国国家統計局の3カ月に一度の記者発表が、北京で行われた。檀上中央に座ったのは、国家統計局の報道官を兼任する付凌睴・国民経済総合統計司(局)長である。

 この日の付局長は、昨年までと違って自信に満ちた表情で、今年第1四半期の経済統計について語り始めた。

「第1四半期は、峻厳で複雑な国際環境と巨大で煩雑な国内改革の発展を安定させるという任務に直面しながら、習近平同志を核心とする党中央の堅強な指導のもとで、穏やかな成長と穏やかな就業、穏やかな物価をうまく執り行い、疫病防止を比較的早く平穏にソフトランディングさせ、生産の需要を穏やかに上昇させ、就業と物価を総体的に平穏にし、住民の収入を持続的に増加させ、市場の見通しを目に見えて改善し、経済の運行の始まりをうまく行った。

 初歩的な概算によれば、第1四半期のGDPは28兆4997億元で、価格変動を計算しない形で、前年同期比で4.5%成長した」

「4.5」というデータが飛び出すと、会見場に「フー」というため息が漏れた。これは、記者たちの予想よりも高かったからだ。

通年の目標「5.0%成長」に手が届く結果

 先月5日の全国人民代表大会初日の政府活動報告で、当時の李克強首相は、「今年の経済成長目標は5.0%前後」と述べた。昨年までの悪名高かった「ゼロコロナ政策」から脱却し、今年は経済成長していくという自負が読み取れる目標値だった。

 年間を通して5%成長するには、第1四半期は4%程度あれば、V字回復の見通しが見えてくる。「肌感覚」としてもその程度と思っていた記者たちが多かったため、4.5%という高数値は、「小さな驚き」だったのだ。実際、付司長は、上述のように強気な発言に終始したのだった。

 だが、3年のコロナ禍を経て、中国経済の回復は、本当に順風満帆なのだろうか? この日発表された統計から見えてきた「5つの陰」について、以下述べていきたい。

出遅れる製造業の回復

(1)第二次産業の成長率3.3%

 いまや中国のGDPの過半数を占めるのは第三次産業(サービス業)だが、「世界の工場」と呼ばれる中国の屋台骨が第二次産業(製造業)であることに変わりはない。それが今回の発表では、第一次が3.7%、第二次が3.3%、第三次が5.4%。第二次産業がへこんだ格好になっているのだ。

 これは、ウクライナ戦争やアメリカとの摩擦といった理由もあるにはある。だが基本的に、工場の復興が順調に進んでいないと見るべきだろう。今回の統計でも、地方の復興が順調に進んでいないことはデータで示されている。

 現在、北京や上海などの大都会では、「爆食」(レストランでの派手な会食)、「爆遊」(国内旅行ブーム)と呼ばれる現象が起こっている。3年にわたってコロナで蟄居生活を余儀なくされていた人々が、ようやく外出して羽を伸ばせるようになったのだ。

 だが、こうした大都会の「浮かれた状態」に、製造業がついていっていない。いや、大都会においても、オフィスビルはガラ空きだったりするのだ。

拭いきれないデフレ懸念

(2)CPI 1.3%

 改革開放以降の中国の歴代政権は、CPI(全国住民消費価格)が3%を超えないよう注意を払ってきた。1989年の天安門事件も急速なインフレから起こっており、インフレこそは最も警戒すべき現象なのだ。

 だが、ウクライナ戦争の影響などで、日本を含めた世界中がインフレ懸念を抱えている現在、1.3%という数値は、逆に「あまりに低い」のである。そのため記者発表では、「これはデフレではないか?」との質問も飛び出した。本当は「デフレスパイラルでは?」と質問したかったのかもしれない。

 この質問にカチンときた付司長は、激しく反論した。

「デフレではない! その証拠に、GDPは4.5%も成長しており、M2(通貨供給量)は12.8%も伸びている」

(3)輸入の伸び0.2%

 中国は世界最大の貿易立国で、毎年11月には習近平主席の肝いりで中国国際輸入博覧会を上海で開催している。中国は「世界の工場」として世界中に製品を輸出するだけでなく、世界中から製品を買うということを示しているのだ。

 だがそれも、旺盛な消費があってこそである。不景気で消費が滞れば、当然ながら輸入も減る。第1四半期の輸出が8.4%増で輸入が0.2%増というのは、いかにも不釣り合いである。

名門大学の学生も「卒業即失業」状態

(4)家屋工事開始面積-19.2%

 付司長は「万事穏健に成長」と胸を張ったが、マイナスのオンパレードだったのが、不動産関連のデータである。住宅工事開始面積-17.8%、不動産開発企業到達資金-9.0%、不動産国内借入金-9.6%、外資利用額-22.7%、自己資金-17.9%……。

 不動産関連産業はかつて、GDPの約3割を占め、中国経済の牽引役と言われた。いまは15%以下となっているが、特に地方経済にとって牽引役であることに変わりはない。

 それがこの3年ほど、沈滞した状態が続いている。これまではコロナのせいにできたが、コロナから回復した現在でも、一向に回復していない。それどころか、悪化の一途を辿っている。これは「不穏」である。

(5)16歳~24歳の失業率19.6%

 付司長は、心なしかこのデータの部分だけ小声で述べた。それも当然である。若年層の5人に一人が失業中であることを示しているからだ。

 付司長はこのデータに関連して、二つの事実を暴露した。第一に、今夏の大学卒業生は、昨年の1076万人よりもはるかに多い史上最多の1158万人が見込まれること。もう一つは、すでに大学院生の数の方が大学生の数よりも多いというのだ。これは大学院生の定員数を大幅に増やし、就業できない大学卒業生を吸収してきたからに他ならない。

「卒業即失業」「全民失業」……巷では様々な流行語が生まれている。北京では名門大学を卒業した若者が、コンビニバイトや宅配便の配達員をやって糊口を凌いでいるとも聞く。

 以上、「5つの陰」を見てきたが、全体的に中国経済の回復は、いまだ道半ばと言えるだろう。

 日本では失われた30年と言われ、バブル崩壊以降経済停滞が続いています(前回のブログで取り上げました)。その要因には不動産不況と生産年齢人口減が大きな要素を占めています。

 今回の中国の発表で、不動産は不況入りしたのがはっきりしています。特に最大の不動産会社恒大集団は、すでに2021年にフォルトを経験しています。そして生産年齢人口のピークは2013年で、これも過ぎています。(日本は1995年)

 中国が今でも持ちこたえているのは、一党独裁の政策運営で、国を挙げて投資促進をしているからでしょう。だが財政事情の悪化は進んでいて、もうこれ以上大型の投資は難しくなってきているはずで、いよいよ中国においても経済減速の入り口に立ったと言っていいでしょう。長期のデフレもあり得るシナリオです。

 そうなれば中国の経済的魅力も薄れてきます。これを機会に中国で事業を続けている日本企業は、早晩国内に回帰し、日本の経済回復に寄与して欲しいと思います。独裁政治によるチャイナリスクを避ける意味でも、賢明な選択だと思います。

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