中国の若者の「空前の就職難」で日本に留学生が押し寄せる 中にはスパイが潜み日本の「経済安保の危機」を招く
前回「スパイ防止法」の制定を急ぐ必要性を記述しましたが、今回もそれに関連して述べていきます。中国では経済がピークアウトし、今後は右肩下がりの状況に落ち込むことが予想されます。約30年前の日本と同様な「失われた○○年」の始まりです。
その兆候の一つが若者の就職難。日本も「就職氷河期」という呼称がはやりましたが、それと同様の現象が中国でも起こっています。その影響が意外なところに。国際ジャーナリストの山田敏弘氏がJBpressに寄稿した記事が、その詳細を物語っています。タイトルは『中国「空前の就職難」がもうすぐ日本の「経済安保の危機」を招く 日本に中国人留学生が押し寄せるのは必定、それに伴い増加するスパイ』(4/07公開)で、以下に引用します。
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いま中国で、学生の就職難が大きな社会問題になっている。
2023年、中国では1158万人が大学を卒業し、史上最も厳しいと言われる就職難に直面している。大学卒業生は昨年と比べると7.6%も増加しており、就職を求める学生が市場に溢れるのは必至だ。
中国の統計を見れば、2022年の時点ですでに大学卒業生の就職率は極めて低いことがわかる。文系学生の就職率はなんと12.4%と極めて低水準だし、理系でも理学系が29.5%、エンジニア系が17.3%となっている。2023年にはこの数がさらに低くなるとみられているのだ。
中国のSNSでは就職できない学生らの悲痛な声で溢れており、大きな社会問題になりつつある。
締め付けが厳しい米国を避け、中国人留学生の目は日本へ
国内で就職にあぶれると外国に活路を見出そうとする学生も増える。これは中国からの留学生が多い日本にとっても決して無関係ではない。
筆者は中国人の知り合いも少なくないが、日本に留学しているある中国人大学院生に話を聞くと、「中国では景気の低迷による就職難で海外留学したい人が非常に多くなっている」という。しかも、これまで人気が高かったアメリカに留学したい人は激減しているのだそうだ。その理由は、トランプ政権以降、スパイ対策などで中国人留学生への締め付けが厳しくなったからだ。
この大学院生いわく、「今ではアメリカに留学する人は二流だとみられます。優秀な学生は多くが日本への留学を希望している」という。
留学生受け入れに前のめりな岸田政権
それに呼応するかのように、日本政府も海外からの留学生を積極的に受け入れる政策を発表したばかりだ。
岸田文雄首相は3月に行われた「教育未来創造会議」で、新しい資本主義を実現するためには、人への投資を一層進めることが重要だ」と述べ、外国人留学生の受け入れを年間40万人規模にする計画を明らかにした。
こうした流れを見ると、すでに日本への留学生の数でトップである中国からの留学生が増加するのは間違いないだろう。
だがこの「中国人留学生の増加」は、日本にとって経済も含めた安全保障上の脅威となる可能性があるとの指摘もある。
教育関連機関で、学生や研究者への奨学金に関わる業務に従事している知人によれば、「日本政府の奨学金を得ているのは、中国人が少なくない。例えば、ある学生を対象にした関東の国立大学の奨学金制度も10%ほどは中国系が獲得している」という。
また別の教育機関職員は、「中国人留学生はいわゆる『海亀族』となって日本の技術を持ち帰ってしまうと耳にしますが、いまだに日本の大学では警戒感は薄い」と顔をしかめる。
中国人は海外にいても中国政府の情報活動に協力する「義務」が
日本の大学で身に付けた知識や技術を母国に持ち帰るのは致し方ないとしても、これが積極的なスパイ活動に発展すると話は変わってくる。
元外事警察関係者は、「中国共産党や政府機関は、中国人留学生に対して、お小遣い程度の謝礼を払ったり、中国国内に残る家族の社会保障などで優遇すると約束するなどしてスパイ行為をさせる」と言う。
「そうした条件で情報を盗み出すなどのスパイ工作をお願いされて断る学生などはほとんどいない」(元外事警察関係者)。
前出の大学院生にこうした話について聞くと、「実家にいる家族は留学費用を出してくれているので悲しませるわけにはいかないと思う留学生は多い。拒否して中国政府相手に目をつけられたくないから、協力してしまう」と話した。中国共産党という強権的な監視の目が国外にいる中国人にもプレッシャーを与えているということだろう。
さらに留学生の中には日本に残って就職を希望する者も少なくない。そして留学生が社会人になっても、母国から協力要請はやってくる。
「中国共産党中央統一戦線工作部(UFWD)の関連機関や在日中国大使館の関連機関などが留学生や元留学生を把握しており、必要に応じてスパイ工作への協力を持ちかける」(元外事警察関係者)。
例えば、2021年12月に大阪府の私立大学を卒業した元留学生について、人民解放軍のサイバー攻撃部隊である61419部隊の関係者からの要請で日本に対するハッキングによるサイバースパイ工作に協力したとして警視庁が逮捕状を取ったことがニュースになった。
この元留学生は、人民解放軍関係者からスパイ行為をするよう要請され、それに応じていた。といのも、中国には国家情報法という法律があり、中国人や中国企業は情報機関などの協力要請に応じる「義務」があるからだ。
スマート農業の情報を流出させた中国人も中国共産党員で人民解放軍と接点
中国はまだまだ日本の技術を狙っている。共同通信が「国内の電子機器メーカーに勤務していた技術者の中国人男性が昨年、ITを活用したスマート農業の情報を不正に持ち出したとして、警察当局が不正競争防止法違反容疑で捜査していたことが2日、捜査関係者への取材で分かった」と報じている。この中国人男性は元留学生ではないが、人民解放軍とも接点がある中国共産党員だった。
実は先に触れた「教育未来創造会議」が4月4日に行ったワーキンググループでは、外国人留学生の国内就職率を現在の48%から、2033年までに60%を目指すと提言している。外国人留学生はますます日本国内で就職しやすくなる。それとともに、政府機関や国内企業は情報流出やサイバー攻撃のリスクが高まることになるだろう。
他国では中国人留学生に強い警戒心
こうした問題は、何も日本特有のものではない。知人のイスラエル人セキュリティ関係者は以前、「イスラエルにも中国人留学生がいるが、彼らはある意味で中国政府に家族を人質に取られているようなもの。だから、セキュリティ関係者らは中国人留学生を警戒している」と述べていた。
アメリカでは2018年から、FBIを監督する米司法省が、中国人ビジネスマンや留学生のスパイ行為を取り締まる「チャイナ・イニシアティブ」を立ち上げた。2021年になって、「中国を狙い撃ちにしている」という批判を受けて、その対象範囲を広げるようになったが、現在も中国人留学生などに対する警戒心は高い。
そのため、ビザの審査時に、SNS(ソーシャルメディア)のアカウントを申告させたり調査することで、中国政府との関係も炙り出そうとしている。とにかく、アメリカでは徹底して中国人スパイの動向を監視しようとしている。
これから中国人留学生と留学生の就職が増える可能性が高い日本も、ビザの審査は今以上に厳しくする必要があるだろう。さもないと、気がつけばビジネス分野や学術分野で知的財産や研究成果が盗まれてしまう可能性がある。
近年、日本の公安関係機関の間でも中国人や企業に対する警戒は高まっている。今後は、スパイ防止法やセキュリティクリアランス制度など、経済安全保障の流れからの対策強化は不可欠なのである。
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この中国リスクを抑えるためにも、高市経済安全保障担当相が推し進めるSC(セキュリティクリアランス)法の、早期成立が望まれます。ところが「小西文書」問題や、奈良県知事選での平木候補の落選などに、親中派を中心とした高市氏を取り巻く反高市陣営が乗じる動きもあり、順調に進んでいないようです。更にはSC推進と共にスパイ防止法の制定にも言及して、中国に厳しい意見を持つ高市氏です。中国が潰すために裏で動いているのは間違いないでしょう。
何しろ日本は前回述べたように、性善説を信じるお人好し民族ですから、外交においても相手がどうであれ、隣国と仲良くと言う主張が通ったりします。中国にとってはまさに組みやすい「カモネギ」日本です。
だがそれでは駄目に決まっています。中国につけ入れられないように、きちんとガードを固める必要があります。そのために、留学生への規制強化と共に、スパイ防止法やSC法などの成立を急がねばなりません。
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