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2023年4月24日 (月)

国際ジャーナリストが語る『日本にも拠点、国会議員とも“接点”もつ中国の「秘密警察」の知られざる実態』

5_20230423112501  中国の「秘密警察」。このブログでも何回か取り上げていますが、日本にも存在する「秘密警察」の最新状況を見てみましょう。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が、JBpressに寄稿した記事がそれです。タイトルは『日本にも拠点、国会議員とも“接点”もつ中国の「秘密警察」の知られざる実態 他国の主権などお構いなし、世界中に張り巡らされた国民監視のネットワーク』(4/21公開)で、以下に引用します。

 中国の国外に設置された「秘密警察」がまた問題になっている。というのも、アメリカのニューヨークで4月17日、秘密の警察拠点を運営していたとして、中国人2人が米FBI(連邦捜査局)に逮捕されたからだ。

 2人は盧建旺容疑者(61)と陳金平容疑者(59)で、どちらもアメリカの市民権を持っていた。2人は中国の福建省出身者向けのイベントを開催する団体を運営していた。

 アメリカでは外国の政府のためにアメリカ国内で仕事をする場合は司法省に「外国エージェント」として登録することが決められているが、それをしないで、中国政府のために暗躍していたとされる。

少なくとも53カ国に102カ所の拠点

 中国が世界各地に設置しているこうした警察拠点については、スペインの非営利組織「セーフガード・ディフェンダーズ」が2022年9月に公開した「海外110」という報告書によって広く知られることになった。その報告書には、日本を含む世界53カ国に、少なくとも102カ所もそうした拠点があると記されている。

 これは明らかな主権侵害で、各国の政府が非難する事態になった。中国政府はこうした警察拠点を各地に設置して何をしているのか。そして日本にもある拠点の実態はどういうものなのか。

1年半足らずのうちに国外にいる中国人23万人が「自発的に」帰国

 実は筆者は数年前から、アメリカの元情報機関の関係者らからこんな話を聞いていた。

「FBIやCIA(米中央情報局)など米情報機関は、アメリカで中国人が忽然と姿を消すケースがかなり増えているのを把握しており、これまでにかなり捜査を進めている。この問題について近く世界で問題提起をしていくことになる」

「海外110」の報告書によれば、中国公安部の副部長である杜航伟は、2021年4月から2022年7月までの間に23万人の在外中国人を「自発的に」帰国させたと述べているという。それ以外の期間を入れるとさらに帰国者は増えると考えられるが、言うまでもなく、他国で法執行のような活動をするのは主権侵害にも当たる。

 そして先の元米情報機関の関係者によれば、中国側の言う「自発的」というのは事実とは違うと指摘する。

「外国で中国人が中国当局によって『誘拐』されているケースもある。また中国人がこうした作戦の中でスパイとして協力させられることもある」

 中国のこうした活動の背景にあるのは、習近平国家主席が2014年に始めた汚職を一掃する「キツネ狩り」と呼ばれる作戦だ。汚職撲滅という名目で、習近平は150万人とも言われる公務員らをパージ(粛清)しており、それによって政敵を排除して自身の権力基盤を固めてきたとも言われている。

 無党派の非営利団体である米フリーダムハウスによれば、この「キツネ狩り」作戦には、国家公安部を筆頭に、国家安全部や人民解放軍が深く関与している。それが国外でも広く行われ、汚職に関与していると見られる中国人を他国で捕まえて「自発的に」帰国させ、罪を償わせてきた。同時に、国外にいる反体制派の中国人に対して監視や脅迫を行い、時にはその対象者が忽然と姿を消すケースも起きてきた。

反体制派に監視の目

 海外でそうした活動を担っていたのが、中国が勝手に設置した警察の出先機関だ。それが今回、アメリカで中国人2人が逮捕される結果となった。ただニューヨークでは、同様の罪で中国人が逮捕されたのは今回が初めてではない。2020年から2022年の間で、少なくとも20人以上の中国人が起訴されている。

 例えば、2022年10月に中国共産党中央規律検査委員会の支部から指示を受けた中国人がニューヨークのホテルを拠点に在米中国人を監視し、強制帰国させようとした疑いで逮捕されている。また別のケースでは、在日中国人の情報を集めたり、中国工作員に対する調査の証拠品を破壊したりするよう、米国国土安全保障省の職員らに対し多額の謝礼を支払っていた事件も摘発されている。

 2022年5月には、中国のスパイ組織である国家安全部(MSS)の工作員4人がニューヨークで逮捕されたのだが、逮捕の理由は、中国からの亡命者や不満分子、反体制派らの世話役として有名だった在米中国人活動家を協力者にして、反体制派の中国人の情報を受け取っていたからだった。とんでもない話である。

 加えて、大学関係者や元捜査官、中国人留学生なども協力者にして情報収集などを行なっていたケースもあった。こうした例は枚挙にいとまがない。

 FBIのクリストファー・レイ長官は2020年に、中国政府による国外での活動は、反汚職のためなどではなく、反体制派を取り締まる目的であると断言している。その上で、「例えば、キツネ狩りでターゲットとされた中国人の所在がつかめない時は、中国政府はアメリカに暮らす家族に使者を送り、『すぐに中国に帰国するか、自殺するか、どちらかを選べ』という選択肢を伝えている」と主張する。

 確かに、彼らの手口はマフィアさながらだ。中国国内にいる家族や身内を「人質」にして、在米中国人を脅迫したり、嫌がらせを行ったりして、強制帰国させる。中国に残る身内には、要職などからの追放や住居の破壊、子どもが学校に通えないようにしたり、公的機関の利用や社会保障を無効にしたりする。パスポートを使用できなくする、ホテルの予約をできなくする場合もあるという。

3_20230423112501 都内にある「秘密警察」拠点と国会議員

 そしてこの中国の警察拠点は、日本にも存在している。セーフガード・ディフェンダーズの報告書で確認できるのは2カ所で、一つはホテルになっている東京都千代田区にある十邑会館と、もう一つは江蘇省南通市に関連する「出先機関」だ(報告書では場所はわからないと見られているが、福岡県にあると見られている)。

 さらに問題なのは、千代田区の十邑会館を拠点としている日本福州十邑社団聯合総会は、日本の現役国会議員である松下新平参議院議員を高級顧問に就任させているこことだ。

 十邑会館が紹介している2020年7月8日に行われた就任の「授与式」のリポートには、「7月8日下午,日本福州十邑社团联合总会高级顾问授聘仪式在东京十邑会馆顺利举行,现任日本自由民主党财务金融部会长、参議院議員松下新平先生受聘为我会高级顾问」とある。

 翻訳すると、「7月8日午後、日本福州十邑社団聯合総会の高級顧問任命式が東京の十邑会館で滞りなく行われ、現自民党財務金融部長で参議院議員の松下新平氏が、高級顧問に任命されました」ということらしい。

 参議院のHPに掲載されているプロフィールによれば、宮崎県選出の松下議員は、「自民党人事局長、自民党外交部会長、自民党財務金融部会長、参議院政府開発援助等に関する特別委員長、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員長。参議院政治倫理審査会会長」と要職にある。そんな影響力のある議員が、日本にある中国の警察拠点に深く関係しているとなれば国民を不安に陥れるので、きちんと説明を行うべきではないだろうか。

 イギリスやアメリカでも、現役の国会議員が中国のスパイ工作の餌食になっている。そうした工作には、国家安全部(MSS)や中国共産党の情報機関である統一戦線工作部(UFWD)が関与している。公安や検察などに加えて、こうしたスパイ機関が海外で行われている一連の工作に関与しており、その規模がかなり大きいことがわかる。

 さらに日本では、すでにわかっている2カ所以外にも複数か所、中国の警察拠点があると指摘されており、公安警察なども警戒を強めている。

 最後になるが、今回のニューヨークでの摘発で、特筆すべき問題がある。こうした活動の中で、警察やスパイのように暗躍している中国当局者が、日本でも広く使われているあるアプリを悪用していることだ。それは、オンライン会議サービスの「Zoom」(ズーム)である。

言論封殺に使われたZoom

 米情報機関関係者が言う。

「テレビ会議ができるアプリを提供しているZoomの幹部で、中国政府との窓口役をになっていた人物が、中国政府の指示を受けて天安門事件がらみのZoomのミーティングを遮断していたことが判明、22年12月にアメリカで逮捕されている」

 Zoomを提供しているZoomビデオコミュニケーションズ社は、中国出身で、現在はアメリカ国籍を取得している袁征(エリック・ヤン)が創業した企業だ。

 Zoomは世界中で利用されるようになっているが、中国政府による干渉を懸念する声は以前から上がっていた。実際、習近平政権は、Zoomに触手を伸ばし、中国共産党に反発する中国人を抑え込もうとしている。そこまでしてでも党と政府に対する批判を封じ込め、民衆が行動を起こそうという“芽”の段階で摘み取ってしまおうという強権的思想の表れだ。

 Zoomによる情報漏洩のリスクを回避するため、台湾政府や米情報機関、オーストラリア軍、ドイツ外務省などではZoomの使用が禁止されている。さらに、財閥系企業など、日本でもZoomの使用を禁止にしているところも少なくない。

 ここまでいろいろバレてしまうと、もはや言い訳のしようもないのだが、中国政府は悪びれるそぶりも見せず、事実を否定している。国外における「秘密警察」の活動を停止するつもりなどさらさらないのだろう。

 中国の治安に対する予算の額は、軍事予算に引けを取らないと言われています。現習近平体制を死守するため、反体制派の監視・摘発に膨大な予算を投じている実態が、この「秘密警察」の存在と活動からも汲み取れます。

 裏を返せば、そこまでしなければ体制の安定を損なう事への恐れが払拭できないのだと思います。旧ソ連のスターリンも同様でしたが、独裁の頂点にいる者の避けがたい不安の表れなのでしょう。

 ただ、経済の停滞と高齢化の進展により、中国の財政赤字は急増し、今年は74兆円に上ると予想されています。更には25年には2.3倍の170兆円を突破するとの見通しもあります。そうなれば治安維持関係にこれ以上の金を投入できなくなるでしょう。それが中国の体制に影響が出てくることを期待したいと思いますね。

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