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2023年5月

2023年5月14日 (日)

「美しい日本」ブログ最終投稿に向けて 「強い日本を取り戻す」思いをしたためて筆を置きます

Images-10_20230514090901  2018年8月、『「戦争を語り継ぐ」を考える』でスタートしたこのブログも5年弱を経過しましたが、前回で投稿が1000稿となりました。以前から1000回を数えたら筆を置こうと決めていましたので、ここで最後にしたいと思います。長期間ご覧いただいてありがとうございました。

 さて、このブログの目的は、「強くたくましい日本を取り戻すこと」を願い、記述していくことにありました。そのためにはまず最初に、「なぜ取り戻さなければならなくなったのかを明確にする」ことを考えました。

 様々な書籍や資料を読み続けた結果、日本が精神的支柱を失ったのは、GHQによる、日本は悪かったという「WGIP」政策と、言論統制のための「プレスコード」の押しつけにあると思うようになりました。これらが戦後日本の軍隊への嫌悪と、メディアの左傾化を生んだのでした。そしてその結果、周辺国への過度の卑屈な謝罪対応と、さらにそれを日本のメディアが先導しさらに後押しをするという、戦後レジームを形成したのです。

 もちろん戦後の経済復興は先人の涙ぐましい努力と、朝鮮戦争やベトナム戦争特需や人口ボーナスなどの「運や憑き」によって成し遂げられましたが、日本弱体化を狙った占領政策により、精神的支柱を失った日本人は、自国への愛国心を喪失し、主権国家という衣をずたずたにされた国のごとく、安全保障に疎く、外圧に右往左往する国になってしまったようです。

 近年特に長期的視点に欠けた政治家や官僚が、そしてGHQの遺した自虐史観と軍隊への異常な嫌悪感を併せ持つ反日メディアが、外交力を弱め、安全保障の3つの柱である、軍事力、食料、エネルギーに於いていずれも先進国最低レベルの国にしてしまったのです。

 そして結果として失われた30年、経済停滞とデフレに苦悩する今の日本ができあがりました。国の力を向上させようとする、政治家や官僚、経済人の力が弱く、逆にその足を引っ張ろうとする反日政治家やメディア、それに言論人が、無党派層へ飽くなき洗脳を仕掛けて、日本弱体化の後押しをしています。

 ではなぜGHQによる占領支配を受けてしまったのか。それは日本が大東亜戦争に敗北し、ポツダム宣言を受けざるを得なかったためです。では何故大東亜戦争に突入してしまったのか。この要因はいくつもあるでしょう。小資源国家の日本が資源を求めて満州に侵攻し、傀儡政権を作ったこと。更に蒋介石国民党との日中戦争を起こしたことがその一つでしょう。

 更にはそのことにより欧米、特にアメリカが石油やくず鉄の禁輸等の経済制裁を課したこと。そしてその結果として南アジアに石油を求めて侵攻していったことなどが、その伏線にありました。

 また当時の政治が政争に明け暮れ、統帥権を振り翳す軍の暴走を止めることが出来ず、満州侵攻や日中戦争への戦局拡大を止めることが出来なかった事も、大きな要素です。

 しかしその裏での動きもありました。朝日新聞は戦前、軍に加担し戦争を煽ったと言われていますが、正確には日中戦争を煽ったのです。それは二つの意味があり、ソ連コミンテルンの意を汲む社員(尾崎)とソ連のスパイ(ゾルゲ)が、日本が満州から北進し対ソ戦に向かうのを忌避させるため、南進論に加担し、同時に蒋介石国民党との和解を阻止させようと画策し、結果日中戦争の泥沼化と南進を促進させました。これが米国の対日感情を決定的に悪化させたのは間違いないでしょう。また当時米国大統領だったルーズベルトは、特にその婦人共々親中派だったようです。まさに東洋の黄色いサルめ、と反日の思いを強く募らせたのでしょう。

 一方ルーズベルト政権内でもソ連共産党スパイが暗躍し、日米開戦をそそのかしたことも有名です。「ハルノート」はその象徴だと言われます。日米ともソ連の画策の手の中に陥ったのですが、日本側では、朝日新聞がその画策に便乗したことは注目すべきでしょう。

 こうして日本は勝てない戦争にのめり込んだのです。そして敗戦の結果、GHQの日本弱体化政策を甘んじる結果となったのでした。GHQには当初、共産主義者が多くいたと言われています。そういう意味では日本は戦前、戦中、戦後を通じて一貫して、ソ連共産党による国際組織、コミンテルンの画策の手の中で敗北した言っていいでしょう。

 時を現在に戻して、「強い日本を取り戻す」ことがうまくいかないことに対しては、政治家や政府・行政の要(かなめ)官僚の力が至らないことから来ている様相があります。(戦前最後の政局もそうでした。ただし軍部迎合のメディアが足を引っ張ったのは今と同じですが。)それはまず周辺国の反日の暴走を許している外務省とその閣僚の力不足に見て取れます。そして食料安全保障の面では、補助金に偏った農水政策の貧困さも目立ちます。少子化やエネルギー政策も不作為が続いています。

 更には戦後その周辺国を擁護し、日本の軍事的抑止力向上を阻む、疑似共産主義勢力が、大学内に、メディアの中に、そして文化人の中に、雨後の竹の子のように増殖してきました。彼等が政治家の足を引っ張り、強国日本の再興を阻んでいるのです。それらを牽制する法整備も全く出来ていません。

 従って日本を強くする意志を持つ政治家を育て、また同時に政治力の向上を図らねばなりません。(誠に残念ですがその意思を強く持った政治家、石原慎太郎氏は逝去し、安倍晋三氏は凶弾に倒れてしまいました。)そのためには今の国会を抜本的に改革しなければならないでしょう。

 今の国会審議を見ると、政府閣僚に対し議員側が質問し答弁を求める、そのための時間が圧倒的に多い。そこには質の高い質疑もありますが、多くはスキャンダルや重箱の隅をつつくような些末な質問も多く見られます。そもそも国会は議員同士が議論を重ねる場所。三権分立から言っても今の制度、慣習はおかしいと思います。

 野党議員が質問されることのないこの国会を変革し、国会の本務として議員同士の議論の場にしてもらいたいと思います。そしてその議論の中から日本そして日本国民のための、よりよい政策とそれを施行するための法を捻出する場としなければならないと思います。それら国会審議の結論を執行するのが本来政府・行政の役目のはずです。

 野党議員も反対ならば逆提案を義務とし質問・追求をされる仕組みとすれば、今のような反対のための反対や、クイズ質問などして、遊んでいる場合ではなくなります。真に政策を考えざるを得なくなるでしょう。そして国会の審議の最重要テーマは「いかに日本の国益を守り向上させるか」という点を中心に、侃々諤々の議論をするようにして欲しいと思います。

 こうして議員の質の向上を図り、日本の国益の向上を第一にテーマに据えれば、周辺国への過度の忖度議員や、日本弱体化に加担するバカな議員はいなくなるように思います。そして理想論を振り翳すのではなく、現実を見据えたしっかりとした議論がなされるようになるでしょう。国会が変われば、政治家も官僚も変わり、日本も変わります。

 これは一つの案ですが、これ以外にも放送改革や教育改革な、ど様々な課題や対応があるでしょう。いずれにしても日本の安全保障の要、しっかりした経済力を背景とした軍事的抑止力、食料安全保障、エネルギー安全保障の質的、量的向上を願って、このブログの最後とさせていただきます。ありがとうございました。

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2023年5月13日 (土)

有本香氏:LGBT法案への「外圧」の主・エマニュエル駐日大使の傲慢な暴挙 女性の安全を蔑ろにする賛成議員には選挙で断を

25_20230512162401  以前にも取り上げたLGBT法案の問題。池田信夫氏や片山さつき氏という保守の論壇や政治家に続いて、今回取り上げるのはジャーナリストの有本香氏です。夕刊フジの公式サイトzakzakのコラム「有本香の以読制毒」に、寄稿した記事を紹介します。タイトルは『LGBT法案への「外圧」の主・エマニュエル駐日大使の傲慢な暴挙 女性の安全を蔑ろにする賛成議員には選挙で断を』で、以下に引用して掲載します。

前回の本コラム(4月27日発行)で重要性を書いた入管難民法(出入国管理及び難民認定法)改正案は衆院を通過した。

いまだ不十分なところはあるものの、難民認定申請の悪用を防ぐ一歩が記されたことはひとまず良かった。

2年前、菅義偉政権時に左派野党と一部メディアによって潰された法改正の雪辱を果たしたのは、岸田文雄政権の成果だ。福島みずほ参院議員(社民党党首)を中心とする反対野党勢が「独自の法案を出す」などと息巻いているが、捨て置けばいい。

さて次なる〝難題〟は、現在、自民党内の特命委員会などで検討が続けられている「LGBT」法案である。

この件の問題点は、今年2月、すでに本コラムで警鐘を鳴らしたが、その内容以前に、そもそも世界情勢がかくも緊迫している今、この法案に時間を費やしている場合かと首をかしげたくなる。同じ思いの自民党議員も少なくないのだが、「外圧」もあって、やらざるを得ない状況に陥った。

「外圧」の主とは、ラーム・エマニュエル駐日米国大使だ。昨年来、大使の公式ツイッターには、「日本でのLGBT法制化を求める」という内容の投稿がしつこいほど繰り返されてきた。

昨年、今年と、特定のLGBT団体が主催する「パレード」に大使自身が参加した。さらに、与野党の議員を大使館に招いたり、財界人との会合の場を捉えたりしながら、執拗(しつよう)なまでのアピールが続けられた。

これは露骨な内政干渉に他ならない。

こう言っては何だが、たかが駐日大使の分際で、他国、しかも2000年の歴史を有するわが国の文化にまで手を突っ込もうというのは傲慢な暴挙と言っていい。

軍事同盟を組む日米両国が、安全保障や通商で連携する必要があることは多くの国民が理解する。しかし、私たちの生活文化、特に性的指向という極めてプライベートで、日本と欧米では考え方の土台が異なる事柄について、新たな制度を導入させようという押し付けは、はっきりと誤りだ。

キリスト教やユダヤ教、イスラム教世界では、同性愛や異性装が禁忌事項だったのに対し、古来、そのような指向をも包摂してきたのが私たちの国、日本だ。

にもかかわらず、エマニュエル大使の招きに馳せ参じ、まるで先生に褒められた小学生のごとき無邪気な笑顔で写真に収まる日本の政治家の多いこと。

仮に、時代の変化に合わせて同性カップルに関する制度をつくる必要があったとしても、それこそ日本人自身が、自国の国柄や現状をよく見、じっくりと議論して決めるべきなのだ。

というようなことを、明言する政治家が皆無であることも残念だ。石原慎太郎元都知事あたりが健在だったら、大使を一喝したに違いないが。

ただ、悲観する状況ばかりではない。

自民党内の検討会では、日を追うごとに反対・慎重論が増えてきた。10日午後に開かれた会合の出席者の話を総合すると、報道されていた、「広島でのG7(先進7カ国)サミット前の国会提出」もかなり厳しい状況となったもようだ。もちろん、賛成派が動員をかけて一気呵成に形勢を変える可能性もあり、予断は許さない。

一方で、別の状況が作用しそうだ。

ジョー・バイデン米大統領がG7サミットを欠席する可能性を示唆したのだ。理由は、連邦政府の借入限度額である「債務上限」の引き上げをめぐる協議が難航する見通しなためである。

ボスが来日しないかもしれないとなれば、「サミット前に~」と日本の政治家にネジを巻いたとされる大使閣下のモチベーションも半減するのではないか。

他国の大使に尻尾を振り、女性の安全を蔑ろにするかのような賛成派の議員たちには、次の選挙で断を下すしかあるまい。

 前回の片山さつき氏のコラムでも述べられていたように、日本の人権侵犯罪の中でLGBTに関するものは、0.2%に満たないと言うことでした。テレビにもゲイをカミングアウトしたタレントがわんさか出ている国状で、わざわざ彼等を特別に差別を禁止し、保護する法律が必要なのか。

 有本氏の言うとおり、欧米の押しつけとも思われる、LGBTへの差別撤廃を意図する法律など日本では必要ないでしょう。それより多くの識者が指摘しているように、女性と自認する男性が、女子トイレや女湯、女子更衣室を悪用する方が、普通の女性にとって迷惑であり、危険でもあるというマイナスの面を考えねばならないでしょう。

 そもそも日本は外圧に弱い国民性があります。それに迎合するのではなく、しっかりとした日本固有の文化や生活習慣に立ちかえって、こう言う外国からの不要な流れを断ち切りたいものです。


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2023年5月12日 (金)

中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは

Images-4_20230507103901  人口減少と高齢化の進展、不動産バブルの崩壊、若者の失業率増大、財政赤字の急増、そしてアメリカなどによる半導体など先端技術の封じ込めと、3期目に入った習近平政権の目の前に、暗雲が立ちこめ始めています。

 こうした中、中国当局は躍起となってそうした懸念をもみ消そうとしています。その実態を経済産業研究所のコンサルティングフェローの藤和彦氏が、デイリー新潮に投稿したコラムに見てみましょう。タイトルは『中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは』(5/01公開)で、以下に引用して掲載します。

足元の最大の不安材料はデフレ懸念

 国連経済社会局は4月24日、「インドの人口が4月末までに中国を追い抜き、世界最多となる」との予測を発表した。今後の見通しについても「インドで数十年にわたり人口が増加し続けるのに対し、中国は今世紀末までに10億人を割り込む」としている。

 国連の予測は19日に国連人口基金が公表したデータに基づく客観的なものだ。だが、中国政府は「西側メディアが中国を中傷するため、人口減少による中国衰退論を意図的に喧伝している」と猛反発している。

 中国の今年第1四半期の経済成長率は前年比4.5%増となり、昨年第4四半期の2.9%増から加速した。これを受けて、米国の大手金融機関は中国の経済成長率を相次いで上方修正しており、国際通貨基金(IMF)も「中国はインドともに今年の世界経済を牽引する」と予測している。

「ゼロ・コロナ政策を解除した中国の景気は回復する」との見方が出ているのにもかかわらず、なぜ中国政府は「衰退論」に過剰反応しているのだろうか。

 中国経済にとって足元の最大の不安材料はデフレ懸念だ。成長率が上振れしているのにもかかわらず、物価の下落傾向が強まっている。

 不動産バブルの崩壊により、で生産者物価指数(PPI)は昨年後半以降、マイナスの状態が続いている。消費者物価指数(CPI)も3月、前年比0.7%増にまで低下している。

 中国政府は「デフレは起きていない」と主張しているが、専門家は「中国経済の深い部分にまでデフレ圧力が浸透している」と分析している(4月19日付ロイター)。

若者のキャリア・パスにも「縮み」の現象が

 デフレとは「物価が持続的に下落している現象」であり、日本語では「経済収縮」と訳される。平たく言えば「経済が持続的に縮んでいく」ことだが、中国経済は至るところで「縮み」傾向が目立つようになっている。

 この傾向が最も顕著なのは個人消費だ。日本を始め先進国の国内総生産に占める個人消費の割合は5割を超えるが、中国の比率は4割に満たない。このことは中国経済が抱える構造的な弱点とされてきたが、足元の状況はむしろ悪化している感がある。

Images-6_20230507104301  不動産バブルの崩壊がもたらす資産デフレが悪影響を与えており、中国の家計は将来のリスクに備えて貯蓄を大幅に増やしている。中国の家計貯蓄は昨年、17兆8000億元増と過去最大の伸びを示した。今年第1四半期にさらに9兆9000億元増加し、増加幅は2021年通年の伸びに匹敵する。

 この大きく膨らんだ貯蓄を消費などに振り向けるため、中国政府は銀行に対して預金金利をさらに引き下げるよう指示しているが、成果が上がるとは思えない。3月の失業率は16歳から24歳までが19.6%と記録的な水準に達しており、雇用不安が続く状況で中国人の貯蓄志向が変わるとは思えないからだ。

 中国の若者のキャリア・パスに「縮み」の現象が生じていることも気になるところだ。

 高学歴の若者たちが高給取りの仕事を捨て、低賃金の肉体労働の仕事に転職して慎ましく生きていくという選択を取り始めている(「クーリエ・ジャポン」4月20日配信記事)。若者がキャリア・ダウンを志向するのは「ラットレース(ハードワークをしても豊かになれない状態)は意味がない」との認識が広まっているからだという。

「縮み」傾向の下、中国の海外旅行者の数もピーク時の水準を大きく下回っており(「ロイター」4月19日配信記事)、中国人観光客の増加による日本のインバウンド需要の拡大は期待外れに終わってしまうのかもしれない。

足かせは中国を巡る地政学リスク

 中国経済を牽引していた輸出も「縮み」始めている。

 予想に反し、中国の3月の輸出は増加に転じた。6カ月ぶりのことだが、「コロナ以前の水準にまで回復することは難しい」との予測が一般的だ。

 その要因の1つとして、中国の人件費上昇がある。これを受けて、製造業の生産拠点が東南アジアに多く移転した。

 今年4月、中国最大の貿易見本市である広州交易会が4年ぶりに開催されたが、出展した中国の輸出企業は環境の激変ぶりを痛感しており、今後、輸出部門で大幅なリストラが実施されるのは必至の情勢だ。

 中国経済の成長に貢献してきた海外からの投資マネーも縮んでいる。

 習近平国家主席を筆頭に中国の当局者らが異口同音に中国経済の復活を宣言し、規制強化で招いたダメージの修復に取り組んでいるが、中国ハイテク企業からの投資の引き揚げが止まらない(「Bloomberg」4月14日配信記事)。

 足かせとなっているのは中国を巡る地政学リスクだ。外国勢の資金引き揚げが進み、中国株の下落が続いている。

「Bloomberg」の記事はモルガン・チェースの調査を引用し、投資家が「最も撤退する可能性が高い新興国」として挙げたのは中国だったとしている。中国経済は回復しつつあっても、「投資家の頭に浮かぶのは米中関係や台湾問題」だからだ。

 中国の科学技術分野の論文発表数は米国に次いで世界第2位となり、「科学技術大国」のイメージが強まっているが、実態は違うようだ。

 研究の不正が横行し、中国の研究者たちが「偽造論文」を世界中にまき散らしている実態が明らかになっており(「クーリエ・ジャポン」4月23日配信記事)、「科学技術大国」中国に対する期待も今後、大きく縮むことになるだろう。

 このように、中国経済の縮み(衰退)は深刻だ。中国政府が声高に衰退論を否定するのは、このことを誰よりもよく知っているからではないだろうか。

 独裁国家に共通するのは、自国の弱点を隠し、時として真逆の主張をしたり殊更必要以上に否定をしたりすることです。中国の「衰退の否定」もその流れにあるのでしょう。

 日本は既に30年前に、デフレの渦中に入ってしまいましたが、そのときの状況、つまり労働力人口の減少や不動産バブルの崩壊と言ったところが、今の中国でも全く同じ状態になっていることです。これから中国でもデフレが続くことが十分予想されます。

 何度も言うようですが、チャイナリスク(政治リスク)に加え、デフレに陥った(と思われる)この国から、事業の撤退や投資の回収を急いだ方がいいでしょう。そうした中で、本当に衰退が進めば、覇権の弱体化にもつながり、世界にとってはこの上ない朗報となると思います。


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2023年5月11日 (木)

片山さつき氏:LGBT法案、当事者を無視した拙速な法制化は極めて危険 弱者の「生存権」脅かす「自由権」は本末転倒

24_20230511100601  以前このブログでも取り上げていますが、各党間で様々な見解が出ているLGBT法案。推進派はG7サミットまでの成立を狙っていたようですが、自民党保守派の慎重論や当事者団体の法案反対の声もあり、G7前の国会への法案提出は困難な情勢となっています。

 この法案、何処に問題点があるのか、慎重派である自民党片山さつき氏の見解を、夕刊フジがインタビューしていますので、その記事をzakzakから以下に引用します。タイトルは『片山さつき氏が〝LGBT法案切り〟当事者を無視した拙速な法制化は極めて危険 弱者の「生存権」脅かす「自由権」は本末転倒』(5/10公開)です。

LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案をめぐり、広島で19日開幕するG7(先進7カ国)首脳会議前の成立を求める声に対し、女性団体や性同一性障害者らの団体が法案反対の記者会見を開くなど、行き過ぎた法整備によるリスクへの懸念が強まっている。自民党は8日、合同会議で法案について議論した。幹部側は問題視されている「性自認」「差別は許されない」との表現を、「性同一性」「不当な差別はあってはならない」に修正する案を提示したが、批判は根強く継続審議になった。この問題に取り組んできた、片山さつき元女性活躍担当相(自民党)が、夕刊フジのインタビューに応じ、国民の理解や合意形成が進まないなかでの拙速な法制化に、強い警鐘を鳴らした。

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「LGBTなどをめぐっては、日本の常識や、『最大多数の最大幸福』の原則に基づかず、LGBT当事者らの気持ちに寄り添った議論もなされていなかった。当事者を無視し、一方に偏ったイデオロギーなどに基づく拙速な法制化は極めて危険だ」

片山氏は、こう指摘した。

LGBT理解増進法案は2021年、与野党の実務者間で合意したが、「『性自認』を理由とする差別は許されない」などの文言が加わり賛否が割れた。片山氏は続ける。

「そもそも、客観的基準がない『性自認』や、定義があいまいな『差別』を明文化すれば、訴訟が相次いだり、政府や自治体を混乱に陥らせたりするリスクがある」

どういうことか。片山氏は女性用トイレや女湯、女子更衣室などを、『私は女性』と主張する性自認の男性が利用する状況を想定して解説する。

「女性や、性転換で女性になった人にとって、無防備になるトイレは襲われるリスクがある。そもそも、のぞき見や痴漢行為も女性の尊厳を侵すものだ。安全確保は、いわば『生存権』だ。一方、生物学的な男性で女性を自認する人が、女性トイレを使いたいというのは『自由権』にあたる。これは、個人の尊厳の基準だ。『自由権』よりも、生命や財産に直結するリスクを抱えた弱者の『生存権』が優先されるのは当然だろう」

性別に関係なく、さまざまな設備を利用可能にすべきという〝主張〟は幅広い分野に及ぶ。これに対する女性やLGBT当事者らの懸念は保守派に届けられ、法案の国会提出は見送られてきた。

一方、推進派は「法案の遅れは欧米に恥ずかしい」「G7前に成立させるべきだ」と主張する。

片山氏は「根拠のない主張だ」といい、次のように解説する。

「性自認に関する立法は、G7ではカナダだけにしかない。日本はまったく遅れていない。日本国の最高法規である憲法には、『すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない』(14条)と明記されている。日本だけに性自認の差別を禁じた法律がないという一部の指摘は『明確な誤りである』と衆院法制局も認めた。そもそも、このような各国で決めるべき思想信条の問題と、ウクライナ侵略や台湾海峡などの安全保障問題がテーマとなるG7広島サミットを天秤にかけるのは、まったく間違いだ。極めて内政干渉的で日本にとって侮辱的でもある」

こうしたなか、性同一性障害者らでつくる「性別不合当事者の会」、女性の権利保護を目指す「女性スペースを守る会」など4団体は1日、東京都内の日本記者クラブで法案反対の記者会見を開いた。

「当事者たちが法案に『性自認』の文言を入れることに疑問を呈した。生物学的な男性で女性を自認する人が、女性スペースに入るリスクを指摘した。いわゆるストレートの女性、男性とともに、LGBT当事者から『差別を特出しすべきでない』との声が上がっていることは、無視できない重要な事実といえる」

今後、どのような議論を進めるべきなのか。

「省庁を対象に過去、LGBTへの差別など人権侵犯事件がなかったか調査したが、実害例は少なかった。人権擁護の行政審判でも毎年、7000~8000件の案件のうち、LGBTに関するものは0・2%に満たない。また私が女性活躍担当相のとき、女性活躍推進法を改正したが、その際の附帯決議に加えたのは本人の了解を得ず性的志向を暴露する『アウティング』への対応だけで、他のLGBT問題については野党からも指摘がなかった。本当に困っている事例があるというなら、政府が1年ほどかけて徹底的に問題事案の洗い出しを行い、その救済に法律が必要なら、内閣の法案として政府が出すべきだ。ただ、それをやってもなお、十分な『立法事実』は出てこないだろう」

 そもそも性同一性障害者らの当事者団体から、反対の見解が出ているこの法案を、成立させようという試み自体、大きな問題をはらんでいます。しかもそれをG7開催までに国会提出させようというのは、前回も指摘したように駐日米国大使の一方的見解が背景にあり、ここは日本独自の立場を通すべきでしょう。

 前回も触れましたが、LGBTや人種、ジェンダー問題など、少数者や弱者などへの差別を取り上げ、それを撤廃しようとする大きな動きがアメリカ、特に民主党支持派にはあります。所謂ポリコレ(ポリティカルコレクトネス)運動で、原則異論を挟むことが難しいこの事案への運動が、特に大学や公的組織で猛威を振るって、アメリカ社会を揺るがせているようです。

 そんな社会的な現象を、風土も文化も異なる日本に取り入れる必要はないでしょう。少数者や弱者保護に対し、無批判に飛びつく特定野党や市民活動家は、すぐに日本でもと、色めき立っているようですが、憲法14条の「法の下の平等」「人種、信条、性別などでの差別禁止」で十分対応でき、特別な法を作る必要はないと考えます。

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2023年5月10日 (水)

対中国「半導体戦争」が激化…!米日台韓「CHIP4」がもたらすハイテクデカップリングは世界をどう変えるか

23_20230506165301  軍事にも民生にも欠くことが出来ない先端半導体。中国封じ込めのための米日台韓が共同で、対中デカップリングを模索しているようです。これに対し中国は当然猛反発していますが、ことの行方は、今後の世界の安全保障環境に影響が及ぶことは間違いないでしょう。

 この辺の事情を、現代ビジネス編集次長の近藤大介氏が、同紙に記事を寄稿していますので、以下に引用します。タイトルは『対中国「半導体戦争」が激化…!米日台韓「CHIP4」がもたらすハイテクデカップリングは世界をどう変えるか』(5/02公開)です。

中国半導体産業協会の「厳正な声明」

中国も4月29日から、GW(黄金週間)の5連休に入っている。ただ「労働者の国」を標榜しているので、「労働節暇日」(メーデーの休日)と呼ぶ。

その5連休に沸き立つ前日の4月28日、日中関係に再び、「激震」が走った。中国半導体産業協会が、中国語・英語・日本語による「厳正な声明」を発表したのだ。

中国の公的機関が日本語で声明を出すなど、極めて異例のことだ。一体何が起こっているのか? 少し長くなるが、以下にその全文を掲載する。

〈 2023年3月31日、日本政府は、半導体製造装置の輸出規制対象を6分類23品目に拡大するための外国為替及び外国貿易法の改正案を公表しました。当該装置は、世界の半導体産業のエコシステムにさらに大きな不確実性をもたらします。

中国半導体産業協会は、貿易の自由化を妨げ、需給関係を歪めるこの措置に反対しています。日本政府が自由貿易の原則を遵守し、中国と日本の半導体産業間の協力関係を損なう輸出規制措置を濫用しないことを求めます。

当協会は、この23品目に対する規制措置について、日本の経済産業省に意見を提出しました。主な内容は次のとおりです。

・規制対象が広範囲に及び、国際社会で一般的に認められている品目リストを遥かに明らかに上回り、関係企業は非常に困っています。

・規制アイテムに関する表現が曖昧で、成熟プロセスのサプライチェーンに悪影響を及ぼす可能性があります。規制の拡大化とサプライチェーンの寸断を防ぐために、規制アイテム数を減らすべきです。

・規制措置により、日本の関係企業の利益が大きく損なわれ、研究開発や技術の進化を支える原資となる利益が十分に確保できないため、国際市場における日本企業の競争力が低下します。

中国と日本の半導体産業は相互に依存しあい、促進しあう関係にあります。中国は上流の原材料、コンポーネントやパッケージング領域で一定の強みを有すると同時に、豊富な半導体応用場面と世界最大の半導体市場を持っています。また、日本は半導体装置、材料、特定の半導体製品、およびハードウェアインテグレーションを長所としています。

設備や材料に対する中国企業の需要が増え続け、日本の半導体企業も中国市場を非常に重視しているため、両国の半導体産業には深いつながりがあり、良好な協力信頼関係が築かれています。日本政府がこの良好な協力関係を破壊する動きに固執する場合、当協会は900社の会員企業の正当な権利と利益を守るために、断固たる措置を取るよう中国政府に呼びかけざるを得ません。

日本政府が当協会の意見を真剣に検討し、両国半導体産業の発展を支援し、促進することに取り組むことを願っています。また、半導体業界が市場原理に基づく分業体制を共に擁護し、手を携えて世界の半導体産業チェーンとサプライチェーンの繁栄と安定を維持していくことを期待します。

中国の半導体産業は一貫して対外開放と協力を堅持してきました。ここに、関係する全ての企業、団体、業界関係者に対し、今回の改正案がもたらす両国半導体産業への悪影響を軽減するために、声を上げていくことをお願いします。2023年4月28日 〉

以上である。重ねて言うが、中国から日本へのこのような形での「公開要請」は見たことがない。半導体業界の専門用語が織り込まれたりして、分かりにくい部分もあるが、以下に経緯を振り返ってみたい。

「CHIP4」による「中国包囲網」強化

事の発端は、中国だけでなく、世界中の半導体業界に激震が走った昨年10月7日に遡る。

この日、アメリカ商務省産業安全保障局(BIS)が、中国を念頭に置いた半導体関連製品(物品・技術・ソフトウエア)の輸出管理規則(EAR)の強化を発表した。そこには、こう記載されている。

〈 今回の目的は、アメリカ政府内で、先端集積回路、スーパーコンピュータおよび半導体製造装置が、(中国の)大量破壊兵器(WMD)の開発を含む軍の現代化および人権侵害に寄与する影響を検証した結果である。中国政府は軍民融合戦略の実施を含め、アメリカの安全保障と外交的利益に反する形で、防衛力の現代化に莫大な資源を投入している 〉

つまりアメリカは、中国の軍事的脅威を取り除くには、あらゆる最新兵器の「心臓部」である先端半導体に規制をかけて、中国が最新の半導体を入手・製造できなくすればよいと考えたのだ。先端半導体とは、演算用のロジック半導体の場合、回路線幅が14nm(ナノメートル)以下の半導体を指す。

この時の発表では、具体的な規制品目リストを掲げ、エンティティリスト(制裁リスト)に入れた中国の主な半導体関連企業28社に、アメリカ関連の技術やソフトウエアが行かないようにした。かつアメリカ人がこれら企業に関わることも規制した。

さらにアメリカは、日本、オランダ、台湾、韓国など、先端半導体関連の技術を有する国・地域にも、協力を求めてきた。

経済産業省が2021年6月にまとめた「半導体戦略」によれば、1988年に世界の半導体産業における日本のシェアは50.3%あった。だが1990年代以降、凋落が始まり、2019年には10.0%まで落ち込んだ。世界のシェア5割が1割になったのだから、これは深刻だ。

だが、日本はまったくダメかと言うと、一部においてはいまだ精彩を放っている。例えば、MLCC(積層セラミックコンデンサ)の分野では、村田製作所が世界シェア約4割を維持している。

また、半導体製造装置の分野でも、東京エレクトロンが17.0%のシェアを持っている(2021年)。これはアメリカのアプライドマテリアルズ22.5%、オランダのASML20.5%に次いで世界3位だ。

こうした理由からアメリカとしては、日本、オランダ、台湾、韓国を加えることができれば、「中国包囲網」を構築できると判断したわけだ。いわば「半導体版NATO」のような半導体同盟で、「CHIP4」(アメリカ・日本・台湾・韓国)と呼ばれている。

西村経産相が「日本政府の決断」を発表

昨年12月9日、ジーナ・レモンド米商務長官が西村康稔経済産業大臣と電話会談を行い、プレッシャーをかけた。年が明けた1月5日には、訪米した西村経産相とレモンド長官がワシントンで会談。アメリカから日本へのプレッシャーは、さらに強まった。

こうした水面下における日米政府間の折衝の結果、年度末にあたる3月31日に、西村経産相が定例会見の中で、「日本政府の決断」を発表した。「今日は私から5点、発表があります」と前置きした上で、わざわざおしまいの5点目にさりげなく紛れ込ませる用意周到さだった。

「5点目、半導体製造装置の輸出管理強化についてであります。高性能な先端半導体、これは軍事的な用途に使用された場合、まさに国際的な平和及び安全の維持を妨げるおそれがあるわけであります。

厳しさを増す国際的な安全保障環境を踏まえて、今般、軍事転用の防止を目的として、ワッセナー・アレンジメント(通常兵器の輸出管理に関する主に西側諸国42ヵ国による申し合わせ)を補完するとともに、半導体製造装置に関する関係国の最新の輸出管理動向なども総合的に勘案しまして、これまで対象としてこなかった高性能な半導体製造装置を輸出管理の対象に追加することにいたしました。

具体的には外為法に基づきます貨物等省令を改正し、新たに23の半導体製造装置につきまして、全地域向けの輸出を管理対象に追加する予定であります。(中略)

輸出管理の在り方につきましては、かねてから様々な機会を通じて同盟国、同志国と意見交換を行ってきているところであります。その中で我が国の今般の措置の考え方や内容につきましては一定の理解が得られていると考えております。

また、そうした国々と連携し、今回の措置をワッセナー・アレンジメントに反映させていくことについても同時並行的に取り組んでいきたいと考えております。

我が国は半導体製造装置の分野におきまして極めて高い優れた競争力を有しております。軍事転用の防止を目的とした今回の措置によって、技術保有国としての国際社会における責任を果たしていきたい、そして国際的な平和及び安全の維持に貢献をしていきたいと考えております」

記者からは当然のように、「これは中国を念頭に置いたものですか?」という質問が出た。それに対し西村経産相は、「全地域向けの輸出を管理対象に追加をするということで、特定の国を念頭に置くものではありません」と答えた。さらに別の記者が突っ込みを入れると、こう答えた。

「世界中の国々の大半の160程度の国、地域は包括許可の対象としておりませんので、御指摘の中国もこの160の中に含まれます。含まれますけれども、特定の国を念頭に置いたものではないということで、その上で、まさに軍事転用のおそれがあるかないかという点を見ていくことになります」

どこからどう見ても中国を対象にした措置であるのに、西村経産相はあくまでも、このように主張した。そこで記者は、「日本の半導体製造装置の輸出で中国から約3割と、国別ではですけれども、今後この対中輸出にどのような影響が出るとお考えでしょうか?」と、角度を変えて質問した。この点について西村経産相の回答は、以下の通りだ。

「御指摘の全体への影響、様々企業ともコミュニケーション取っていますけれども、全体としては国内企業への影響は限定的であると認識しております」

中国側の手厳しい批判

このように西村経産相は、最後までふにゃらかした回答に終始したが、「事実上規制対象にされた」中国側は、間髪を入れず猛反発した。同日の中国外交部定例会見で、早くも毛寧報道官が吠えた。

「全世界の半導体の産業チェーンとサプライチェーンの形成と発展は、市場の規律と企業の選択が、ともに作用する結果によるものだ。

経済貿易と科学技術の問題を、政治化、道具化、武器化し、全世界の産業チェーンとサプライチェーンの安定を破壊することは、人々に損害を与え、自己を害するだけだ!」

4月1日に訪中した林芳正外務大臣は、翌2日に秦剛外相、李強首相、王毅中央外交工作委員会弁公室主任と会談したが、ここでも半導体規制について、手厳しい批判を浴びた。特に秦剛外相からは、強烈なセリフが飛び出した。

「日本は『為虎作倀』をしてはならない!」

私は、この成語を聞いて驚いた。若い時分に北京大学に留学していた時、ある授業で教授が「為虎作倀」(ウエイフーズオチャン)を口にした。意味不明だったので、授業後に教授のところへ行ったら、丁寧に教えてくれた。

「古代の中国では、虎は人間を食う動物として恐れられていた。人間は虎に食われると、その魂が虎のもとへ行く。そして今度は虎のために、次の人間の居場所を手引きしてやるのだ。『虎の為に倀(チャン)を作る(行う)』の『倀』とは、そうした人間のあさましい行為を指す。

この成語は品のよいものではないから、決して他人に対して使ってはいけないよ」

そのような成語を、中国の外相が日本の外相に向かって使ったのだ。それだけ中国側は、日米が一体化した「中国包囲網」に焦りを覚えていたとも言える。

北京の日本大使館のホームページによると、4月12日に北京で、垂(たるみ)秀夫大使と王受文中国商務部国際貿易交渉代表兼副部長との意見交換会が行われた。両国5人ずつが厳しい表情で向かい合った写真とともに、こんな文章が記されている。

〈 4月12日、垂秀夫大使は王受文・商務部国際貿易交渉代表兼副部長との間で、日中間の経済関係における関心事項について広く意見交換を行いました。具体的には、邦人拘束事案、投資環境整備、半導体関連の輸出管理、CPTPP、日本産食品に対する輸入規制の早期撤廃等について、率直な意見交換を行いました 〉

ここで最初に記された「邦人拘束事案」というのは、3月25日に第一報が報じられて日本中が震撼したアステラス製薬幹部社員の北京での拘束問題を指すと思われる。だが、その案件は「反スパイ法違反容疑」(中国外交部の3月27日の会見)であり、中国商務部とは無関係だ。そのため、やはり半導体の輸出規制問題が、メインテーマだったと見るべきだろう。

なりふり構わぬプレッシャー

もう一度、冒頭の中国半導体産業協会の「厳正な声明」を見てみたい。

まず、「主な内容」の第一項で、「(中国の)関係企業は非常に困っています」と記している。中国の半導体産業の苦悩を、正直に吐露しているのだ。「泣きの手に出ている」とも言える。

続いて、「規制アイテム数を減らすべきです」と記している。「規制するな!」という、中国外交部お得意の「戦狼(せんろう)外交的手法」ではなく、「少しばかり減らして下さい」と「懇願の手に出ている」のである。

そして第三項が、「国際市場における日本企業の競争力が低下します」。つまり、「そんなことしたらあなたも損しますよ」という「警告の手に出ている」わけだ。

こうした三つの項目を列挙した上で、こう結論付けている。

「日本政府がこの良好な協力関係を破壊する動きに固執する場合、当協会は900社の会員企業の正当な権利と利益を守るために、断固たる措置を取るよう中国政府に呼びかけざるを得ません」

これは、「恫喝(どうかつ)の手に出ている」と受け取れる。

いま一度、「厳正な声明」を整理すると、「苦悩」→「懇願」→「警告」→「恫喝」という流れである。これらは一体、何を意味するのか? 日本政府関係者に聞くと、次のように答えた。

「昨年10月のアメリカの半導体規制は、中国にボディブローのように効いてくるかと思ったら、実際はノックダウン級の必殺パンチだった。アキレス腱を刺された巨竜は、いまのたうち回っているのだ。この先、『CHIP4』が完成したら、巨竜の息の根は止まる。だから日本、台湾、韓国に、なりふり構わぬプレッシャーをかけてきているのだ」

台湾には、先端半導体の受託製造で世界の約6割を握るTSMC(台湾積体電路製造)が存在する。TSMCは2020年以降、「アメリカを取るか中国を取るか」という選択を迫られ、「アメリカを取る」道を選んだ。

昨年12月6日、5nmの先端半導体を製造するTSMC米アリゾナ工場の開設式典に臨んだ創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏が、「グローバリズムも自由貿易も、もうほとんど死んだ」と発言したのは、その象徴的な出来事だった。 

韓国については、先週4月26日にホワイトハウスで開かれた米韓首脳会談で、尹錫悦大統領はジョー・バイデン大統領に「踏み絵」を踏まされた。中国で先端半導体の工場を稼働させているサムスン電子とSKハイニックスは、この先、「抜本的出直し」を迫られることになるだろう。

アメリカの圧力が中国を目覚めさせた

それでは、このまま中国の半導体業界は潰滅することになるのか?

前出の日本政府関係者は、「あくまでも個人的な見解」と断った上で、こう述べた。

「確かに短期的に見ると、中国の半導体業界は、満身創痍とも言える打撃を受けている。だがアメリカからの圧力が、中国を目覚めさせたのも事実だ。これまで安易にアメリカや日本の半導体関連製品を買っていた中国が、政府のふんだんな資金をつぎ込んで、必死に国産化の道を歩み始めた。

逆説的だが、長期的に見た場合、アメリカの圧力が、中国の半導体産業が加速的に発展する最大の原動力となるのではないか。いつか中国の技術が世界最先端になり、ブーメランのようにわれわれを覆っていく。そんな一抹の不安を感じざるを得ない」

いずれにせよ、もはやハイテクを巡るデカップリング(分断)は、不可逆的な流れになってきた。

 中国の半導体国産化を、記事では将来技術的に世界最先端となる事を予想していますが、2nmの半導体は、日本はおろか米国も未だに未達で、製造装置も一から国産化しなければならない中国が、おいそれとそのレベルには到達できないと思いますね。

 いままでパクりで技術フォローしてきた中国と、侮ってはいけませんが、いくら潤沢な資金力を持っていると言っても、経済が低成長領域にはいり、膨大な不動産債務を抱え、人口も減少を開始し、これから高齢者が爆発的に増える中国は、軍事費や治安維持費に加え、技術開発ばかりに資金投入は出来なくなるのではないかと思います。日本に30年前に起きた、失われた○○年が始まることを予想することは、あながち間違っていないのではないでしょうか。

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2023年5月 9日 (火)

なぜ電気料金は値上がりし続けるのか、妥当な制度設計を欠いたFITと電力自由化、「脱原発」と叫ぶだけでは変わらない

Img_d30cdfb8a77c850b31281abf9885dc7b8661  原発再稼働が思うように進まない中、日本の電気料金は世界でもトップクラスの高さを示しています。これまでもその料金は上がり続けてきました。その要因は何なのか。

 電気料金の高騰は、そのまま企業の競争力を低下させ、国民の生活に負担を生じさせます。シード・プランニング社のリサーチ&コンサルティング部、主任研究員の関瑶子氏が、この問題を取り上げJBpressに寄稿していますので紹介します。タイトルは『なぜ電気料金は値上がりし続けるのか、エネルギー敗戦国に残された選択肢 妥当な制度設計を欠いたFITと電力自由化、「脱原発」と叫ぶだけでは変わらない』(5/04公開)で、以下に引用して掲載します。

 電気料金の高騰が止まらない。もちろん、政府も手をこまぬいているわけではなく、2022年10月に「電気・ガス価格激変緩和対策」を閣議決定した。これは電気・都市ガスの小売事業者に対し、2023年1月以降の電気・都市ガスの使用量に応じて、補助金を給付するものだ。それを原資として消費者への値引きが行われるので、一時的には消費者の負担は緩和される。

 しかし、これは本質的な解決策ではない。先進国たる日本でなぜ電気が足りない事態になったのか。電力自由化の効果はあったのか。なぜ原子力発電所を再稼働させる必要があるのか──。『電力崩壊 戦略なき国家のエネルギー敗戦』(日本経済新聞出版)を上梓した竹内純子氏(国際環境経済研究所理事/東北大学特任教授/U3イノベーションズ合同会社共同代表)に聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター・ビデオクリエイター)

──まず、昨今の電気料金高騰の理由について教えてください。

竹内純子氏(以下、竹内):電力料金値上がりの理由は、主に二つあります。一つ目として、原子力発電を停止させているため火力発電への依存度が上昇し、燃料費がかさむようになったことが挙げられます。

 火力発電は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やして発電します。日本はそれらの資源を海外からの輸入に頼っています。化石燃料を安定的かつ安価に調達することは容易なことではありません。これは、今回のロシアによるウクライナ侵攻でもよくわかったと思います。

 そのため、化石燃料を必要としない再生可能エネルギー(以下、再エネ)と原子力の活用を推進していくことが求められてきました。

 原子力発電ではウランという燃料を必要とします。原子力発電では、少量の燃料から莫大なエネルギーを生むことができ、いったん燃料棒を原子炉に入れると2~3年程度の発電が可能です。

 そのため「準国産エネルギー」として自給率にカウントするというのが国際的な考え方です。燃料代がほとんどかからないため、設備を動かせば動かすほど、安い電気を供給できるというわけです。

 しかし、2011年の福島原発事故を受けて、日本ではほとんどの原子力発電所が稼働停止、ないしは廃止措置中という状況に陥り、火力発電への依存度が7割にもなっています。昨今のエネルギー資源の価格高騰の影響から逃れられない状況にあるのです。

 電気料金値上がりのもう一つの要因は、再エネの普及を後押しすることを目的に施行された全量固定買取制度(FIT)です。この制度により、再エネによって発電された電気を、地域の大手電力会社が固定の価格で買い取ることが義務付けられました。

 火力発電や原子力発電と比較し、再エネはコストが高かったので、再エネ事業者に対し金銭的な援助が必要とされました。そこで消費者が、火力や原子力など他の電源と再エネとの価格差を「賦課金」として、通常の電気料金に加えて支払うことになったのです。2022年時点で、賦課金は一般世帯で年間1万円を超える負担になっています。

──再エネは燃料が不要でCO2の排出もないことから、良いイメージを持つ人も多いかと思いますが、再エネに対しては、様々な課題が指摘されています。電気料金高騰以外に、どのような問題や課題があるのでしょうか。

FITが日本列島と日本社会に与えた爪痕

竹内:再エネに限らず、エネルギー関連施設は基本的に迷惑施設です。私は長く電力会社の用地部門にいましたが、電柱1本をわずかに動かすだけでも、地域住民の了解をいただくのは大変なことです。再エネの普及に賛成していても、自宅の裏山に太陽光パネルが敷き詰められたら、多くの人は嫌がるのではないでしょうか。

 本来であれば、再エネ発電事業者にも、地域との協調や自然環境への配慮を求めるような制度設計をするべきでした。しかし、再エネ導入を急ぐあまり、そのような制度的手当てが欠落してしまっていた。土砂流出や濁水の発生、景観悪化などへの懸念から、太陽光発電を規制する条例を導入した自治体は今や208に上ります(2022年時点)。

 また、FITによる補助が余りに手厚かったため、投資目的で参入した事業者も多くいました。将来、再エネの設備が老朽化した時に、彼らが再投資するかどうかは不透明です。

──日本では、2016年4月に電力小売完全自由化(以下、自由化)が開始しました。自由化により電気料金が安くなるとほとんどのメディアが報じていました。自由化は、実際のところ電気料金にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。

竹内:自由化に期待される効果は、主に二つあります。一つ目は、競争によって事業の効率化が進み電気料金が下がること。二つ目は、消費者が好きな小売事業者を選んで電気を買えるようになることです。

 ただ、自由化によって電気料金が引き下げられるか否かは、日本に先立ち自由化を実施した欧米諸国の経験を分析しても定かではありません。むしろ化石燃料価格が上昇局面になると、その上昇を上回るような電気料金上昇がみられます。

 また、日本の小売電気事業者は2022年時点で733に上ります。そのほとんどが、自前の発電所を持っているわけではありません。彼らは、市場で電気を調達して売るだけです。このような状態を「消費者が選択肢を手にした」と言えるのか、疑問に思います。

──欧米諸国の経験の分析から、自由化により電気料金が上昇する可能性は十分に予測できたということですね。それにもかかわらず、なぜ日本は欧米諸国を追いかけるように自由化に踏み切ったのでしょうか。

電力会社に対する懲罰的な意味合いがあった電力自由化

竹内:そこが、自由化について最も反省と検証を要する点だと思います。

 自由化は、福島原発事故と計画停電を起こした電力会社への「懲罰」的な意味を含んでいたと言われています。電力会社にムチをふるうことで、それまでの電力行政への批判を回避する政治的な動きがあった、という話を関係者から聞いたことがあります。

 そんないい加減な動機で、電力という重要なインフラの制度設計を行って、果たして国民を幸せにする制度ができるのでしょうか。

──自由化以前は、大手電気事業者は、値上げの際に経済産業大臣の認可を必要とする「規制料金制度」によって電気料金を決定していました。規制料金制度の下では、総括原価方式によって電力会社の利益が保証されます。そのため、電気事業者が過剰な設備投資を行う可能性がある、という点が規制料金制度のデメリットとして指摘されていました。

竹内:総括原価方式とは、必要な原価に加えて「適正利潤」を上乗せし、それらが回収できるよう料金を決定する方式です。公共性の高いガスや水道料金、NHKの受信料なども総括原価方式によって決められています。

 ここで重要なのは、「適正利潤」とは、ほぼ資金調達コスト(支払利息や配当)だということです。

 設備産業である電気事業において、電気料金を抑制するための重要なポイントの一つが資金調達コストの抑制です。借金の利率を低く抑えるということですね。投資を必ず回収できるという制度により、低利での資金調達を実現し、安定的な設備投資を可能にしたのです。

 社会が成長し、電力需要が伸びている時代は、安定的な設備投資が必要です。ただ、社会の成長が停滞してくると設備投資が過剰になるという危険性もはらんでいます。電力需要の伸びの停滞と共に規制料金制度から自由化に移行することはメリットもあります。しかし、2016年以降の自由化には課題も多く、制度の再設計が必要です。

 特に、自由化したにもかかわらず、大手電気事業者は規制料金での販売や供給義務を残されるといういびつな制度になっています。

──昨今は、電力需給ひっ迫が話題になっています。先進国である日本で「電気が足りない」という事態になった理由について、教えてください。

火力発電所の廃止が急増する当たり前の理由

竹内:電力需給ひっ迫の原因としては、まず、原子力発電所のほとんどが停止していること、そして、電力自由化と同時に再エネの導入を急速に進めたことが挙げられます。

 東日本大震災前には、原子力発電所は日本の電力需要の3割程度をまかなっていました。2023年現在、そのほとんどが稼働していません。サッカーでいえば11人中3~4人がベンチに下がっている状態です。

 加えて、東日本大震災後、再エネが急速に普及しました。太陽光発電の導入量は中国、アメリカに次いで日本は世界第3位です。

 天気が良く太陽光発電が好調で、かつ電力需要が少ない時間帯では、太陽光発電が電力需要の大半をまかなうことは、現在では珍しくありません。

 そうしたタイミングでは、火力発電は控えに回らざるを得ません。稼働率が下がることで利益を出せなくなった火力発電所は、維持管理費用を捻出することすら困難になります。そのような状況に陥った火力発電所の廃止が急増しています。

 天気が悪く太陽光発電では電力供給不足となる場合には、火力発電に働いてもらう必要があります。しかし、稼働率が低い設備は、平時は「無駄な設備」です。事業者にとっては重荷以外の何物でもありません。

 脱原子力に加え、電力自由化と再エネの大量導入を同時に進めれば、供給力不足になることは明らかでした。

──日本では、1961年に原子力損害賠償法が制定されました。この法律によって、原子力災害発生時には、たとえ無過失であっても原子力発電事業者がすべての賠償責任を負うということが定められました。なぜ、日本政府は原子力発電事業者に「無限責任」という義務を負わせるのでしょうか。

原発事故で民間事業者に無限の賠償責任を負わせる異質さ

竹内:原子力災害発生時に、民間事業者に無限の賠償責任を負わせる日本の制度は異質であろうと思います。

 日本が原子力基本法を定め、戦後復興・経済成長のために原子力を使うという覚悟を決めたのは1955年のことです。原子爆弾を投下されてから、わずか10年後。今以上に、原子力技術に対する抵抗は大きかったに違いありません。しかし、戦争に負け、焼け野原となった日本が経済成長をしていくためには、安価で潤沢なエネルギーを確保しなければならなかった。

 発電所の安全に一義的な責任を負うのは発電事業者です。従って、無過失であっても事故発生時の賠償責任を発電事業者が負うのは各国共通の制度です。ただ、公共性の高い電気事業は、国がその必要性を認め、民間事業者にその事業を営むことを認めるのであれば、一定以上の被害については国が責任を負うとするのが一般的です。

 しかし、日本で原子力損害賠償制度が定められた当時、大蔵省(当時)は国が責任を負うことは何としてでも避けたいと考えました。その結果、日本の原子力損害賠償制度は、賠償額に制限のない責任を民間の発電事業者に負わせる制度となったのです。

 原子力は、あらゆる面で国の覚悟を必要とする技術です。

──自由化により、原子力発電は数ある発電手法との競争の渦に放り込まれました。無限の賠償責任という「しんどさ」を背負わせたまま、民間の原子力発電事業者をそのような競争に放り込んでいいのでしょうか。

竹内:政府は、電力の安定供給確保や脱炭素などの観点から原子力発電を再エネと同じく脱炭素電源として活用することを決めました。しかし、もし私が電力会社の社長だったら、国の責任を明確化してもらわない限り、その方針に協力することはできないだろうと思います。

──原子力発電所の運転期間は、原子炉等規制法により原則40年、最長60年とされています。しかし政府は、60年を超える運転を認める方針を明らかにしました。

60年を超える原子力発電所の稼働は無謀か?

竹内:原子力発電所の運転期間を延長するためは、高い安全性が求められます。従って、科学的な知見に基づく議論が必要です。

 一般的に、設備の寿命は当初の導入技術や設置条件、メンテナンスや使用条件によって大きく異なるため、一律に定めることは困難です。車検に合格すればどんなクラシックカーでも走行可能であることが良い例でしょう。

 諸外国でも原子力発電所の運転期間を安全規制によって制限する例はありません。運転が許可される期間(ライセンス期間)を定め、定期的に設備の安全性を確認し、運転継続の是非を判断しています。IAEA(国際原子力機関)のデータでは、高経年化した原子力発電所の稼働率は「低下していない」ことが示されています。

 日本の原子力発電所の運転期間制限は、2012年の与野党共同提案の議員立法による原子炉等規制法改正時に盛り込まれたものです。当時の国会での議論を振り返ると、驚くべきことに40年、60年といった年限に「科学的根拠はない」と明言されています。

 技術の新陳代謝を促進し、安全性や効率性を高めていくことが基本中の基本です。しかし、「まだ使える」原子力発電所を早期に廃止することは、国民や経済にとってはマイナスです。最も安価なCO2削減策は、既存の原子力発電を最大限に活用することであるというのは、国際的な共通認識です。アメリカでは、80年間運転の許可を得る発電所が既に6基存在します。

 日本では、福島原発事故の経験以降、莫大な安全対策投資をしています。議論の経緯を改めて見直し、原子力の利用と安全規制の最適化を進める必要があるでしょう。

──今後の世界のエネルギー政策のあるべき姿について教えてください。

エネルギー政策で重要な「安定供給」「経済性」「環境性」

竹内:エネルギー政策を考える際には「安定供給」「経済性」「環境性」の3つが重要です。

 エネルギーは必要な時に必要な量を確保することが最も重要ですので、「安定供給」は大前提です。また、需要家が許容できる価格にエネルギー価格を収められなければ、特に経済的弱者に打撃を与えるので「経済性」の視点も重要です。「環境性」は気候変動や地域との協和です。

 これらすべてを兼ね揃えた理想のエネルギー源を、人類はまだ手にしていません。従って、3つの要件を最も満足させるためには、複数ある発電手法の中でどの電源をどの割合で利用するか、というバランスを考える必要があります。エネルギー政策は、ゼロか100かの議論では決められないということです。

 また、年間で1兆kWh近い電力を消費している国は、中国、アメリカ、ロシア、インド、そして日本のわずか5カ国です。それにもかかわらず、日本は自国の領土内で、石油も天然ガスも、石炭も得られない。その上、国土が狭く、また、平野部が少ないために再エネを増やしていくにも限界があります。こうした自らの制約条件から目を背けずに向き合うことが重要です。

 その上で、強みである省エネ技術を活かす方策を考えること、そして腰を据えて社会変革に取り組むことです。エネルギー転換は、社会変革そのものです。

 政策提言だけでは社会を変えることはできない。エネルギー・環境分野にベンチャー・スピリットを吹き込みたい。そう考え、私はU3イノベーションズ合同会社を創業しました。

 政策と産業の両面から、エネルギー転換を切り口に、持続可能な社会への変革に携わっていきたい。これが、私の目標です。

 エネルギー政策は「安定供給」「経済性」「環境性」の3つが重要だと竹内氏は言います。太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーは、「安定供給」「経済性」いずれにも難があるではありませんか、そして太陽光発電は「環境性」にも疑問がつきます。

 その自然エネルギーを、福島原発の事故の後、むやみに増やしてしまった政策が、今の電力料金高騰の一因でもあるのです。まさにこのブログでも指摘しているように、農業政策と同様、政治の不作為の結果と言えるでしょう。

 食料・エネルギーという国の安全保障の根幹にも関わる問題を、政治の不作為で今日のような状況に貶めたのは、極めて残念です。電力について言えば、原発再稼働を可能な限り早急に取り進め、無限の賠償責任を国と共同責任というように、変更すべきでしょう。いずれにしろ世界トップクラスの電力料金を早く引き下げてもらいたいものです。


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2023年5月 8日 (月)

池田信夫氏:G7に日本以外皆LGBT差別禁止法があるというのは「嘘」、などの「LGBT法案って何?」と言う問答集公開

22_20230506155701  LGBTに関する議論がメディアによく登場します。政治の世界でもLGBT法を作ろうとする動きがあります。何故そんなことになっているのか、アゴラ主宰の池田信夫氏がアゴラ言論プラットフォームに、「LGBT法案って何?」(5/02公開)という分りやすい問答集を模したコラムを掲載しました。以下に引用します

このところLGBT法案をめぐって議論がにぎやかになってきました。よい子のみなさんには関係ない法律ですが、話が混乱しているので、チャットGPTに相談してみましょう。

Q.
LGBTって何ですか?

LGBTは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシャル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字を取った言葉で、性的指向や性自認の多様性を表す一般的な用語です。

LGBTは、これらの4つのカテゴリーに属する人々を指すことが多いですが、しばしばLGBTQやLGBTQ+とも表記され、クィア(Queer)、インターセックス(Intersex)、アセクシャル(Asexual)などの他の性的指向や性自認を含めることがあります。

Q. LGBT法案って何ですか?

正式には「性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」。2021年に超党派で法案はできていたんですが、自民党が了承しなかったため、成立しませんでした。

法案の第1条には「全ての国民が、その性的指向又は性自認にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される」と書いてあります。要するにLGBTの人々を普通の人と同じに扱うという法律ですが、罰則はありません。

Q. 性自認って何ですか?

男性の好きな男性はいます。これが性的指向ですが、肉体的には男でも「自分は女だ」と思っている人がいます。これが性自認です。

そういう性同一性障害という病気は、2003年にできた「性同一性障害者特例法」ですでに保護の対象になっていますが、今回の法案はあいまいです。法案の第1条では、性自認は「自己の属する性別についての認識に関する性同一性の有無又は程度に係る意識」と定義されています。

日本語として意味不明ですが、「自分は女だ」と認識するだけで女と認められ、男が女湯に入ったり女子トイレに入ったりできます。これはかえって普通の女性の権利をおびやかす可能性がある、ということで慎重論が強まっているわけです。

Q. なぜLGBTを保護するんですか?

キリスト教圏では、同性愛は禁じられていました。聖書には「男が女と寝るように男と寝てはいけない、それは恥ずべき事である」(レビ記22章18節)などと同性愛を禁じる規定があるからです。

このため多くの国では同性愛を法律で禁じていました。コンピュータを発明したアラン・チューリングは1954年、同性愛の罪で逮捕され、自殺しました。そういう法律がなくなっても、同性愛を理由に会社をクビになるなどの事件が絶えないため、LGBTを保護する法律ができたわけです。

Q. 日本では差別してないと思うんですが?

日本には同性愛者を差別する伝統がなく、男色は伝統文化の一部でした。今でもマツコデラックスとかおすぎとピーコとか、ゲイの人が堂々とテレビに出ているので、「LGBTを差別するな」といわれても、ほとんどの人には何のことかわからないでしょう。

こういう性的少数派は人口の5%ぐらいいるといわれていますが、その中でも肉体的な属性と違う行動をとるトランスジェンダーと呼ばれる人は人口のたかだか0.5%です。アメリカではトランスジェンダーが殺される事件も起こっていますが、日本ではそんな事件はありません。

Q. ではなぜLGBT法をつくったんですか?

「LGBTの差別解消」はフェミニズムの活動家のスローガンで、2016年に民進党(当時)がLGBT差別解消法案を国会に提出しましたが、成立しなかった。

2021年に自民党の稲田朋美さんが中心になって超党派の議員連盟が「理解増進法案」をつくりましたが、自民党が了承しなかった。同じ法案が、今度また出てきたのです。

Q. 同じ法案がまた議論されているのはなぜですか?

21_20230506155601 これはアメリカのエマニュエル駐日大使の影響が大きいと思います。彼は日本政府に同性婚の合法化を求めたり、LGBT法の整備を求めたり、G6(日本を除く先進6ヶ国)とEUの大使に日本もLGBT法を整備するよう求める手紙を書かせたり、大使としては異常な内政干渉を続けています。

  1. Q. G7にはみんなLGBT差別禁止法があるというのは本当でしょうか?

嘘です。差別を禁止する法律はどこの国にもありますが、衆議院法制局が国会で答弁したように「G7に性的指向・性自認に特化して差別禁止を定める法律はない」ので、そんな法律をつくるのは日本が初めてです。

経団連の十倉会長の「LGBTを保護してないのはG7で日本だけ」という発言は事実誤認です。G7サミットまでに成立させる緊急性があるわけでもない。

Q. 同性婚とLGBT差別はどういう関係があるんですか?

関係ありません。憲法24条は「婚姻は両性の合意のみに基いて成立する」と定めているので、これを改正しないかぎり同性婚を認める民法改正はできません。これはLGBT差別とは無関係な手続き論です。

憲法14条では「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めているので、今でも性による差別は禁止されています。それに屋上屋を重ねるような法律を、あわててつくる必要はないと思います。

 この問答集で、LGBT法の成立を急ぐ必要もなければ、そもそも成立させること自体も不要だと言うことが分ります。

 LGBT差別撤廃は、アメリカ発のポリティカルコレクトネスの一環で、駐日米大使が後押ししているようですが、宗教も文化も社会習慣も異なる日本が、この法律を導入する必要はないと思います。対米追随もここまで来ると、日本のアイデンティティが失われることにもなり、ますます主権のない国家になってしまうようで危惧するところです。


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2023年5月 7日 (日)

創価学会に激震…新聞は報じない統一地方選で公明党が過去最多の落選者を出した本当の原因

20_20230506135001  統一地方選も終わり、岸田政権による衆議院解散が取り沙汰されていますが、与党の一角、公明党はこうした動きに難色を示しています。なぜなら全勢力を込めた統一地方選で予想以上の落選者を出し、その後遺症がまだ癒えていないからのようです。 

 その公明党の地方選での苦闘の状況を、デイリー新潮が取り上げています。タイトルは『創価学会に激震…新聞は報じない統一地方選で公明党が過去最多の落選者を出した本当の原因』(5/02公開)で、以下に引用して掲載します。

 4月に行われた第20回統一地方選挙で、公明党公認の候補者が12人も落選したことが話題になっている。

 ***

 4月9日に投票が行われた統一地方選の前半で、公明党は41道府県議選に170人、17政令市議選に172人、計342人を擁立。愛知県議選と大阪市議選の2人が落選し、340人が当選した。

 4月23日の後半戦では、287市議選に893人、東京の21区議選に152人、140町村議選に168人、計1213人を擁立。このうち10人が落選し、1203人が当選した。

 締めて1555人の候補者のうち1543人が当選。当選率は実に99・2%!

 ところが、全国紙のタイトルにはこんな言葉が並ぶのだ。

  • 公明党が練馬区議選で異例の4人落選…当選ライン読み誤り、定評の「票の割り振り」失敗か(読売新聞:2023年4月24日)
  • 公明、落選12人 過去最多 統一地方選(朝日新聞:4月25日)
  • 統一選後半戦 苦しんだ公明 東京・練馬など5区議選8人落選 票減傾向止まらず(産経新聞:4月26日)
  • 公明党、崩れた無敗神話 統一地方選挙で最多12人落選 自公の選挙協力にひずみ(日本経済新聞:4月27日)

 わずか0・8%の落選で大事件のように扱われている。

 ご存知のように、公明党の支持母体は創価学会だ。信者たちは“選挙をやれば功徳になる”という理由から、親戚や知り合いに電話をし、公明党候補への投票を呼びかける。その結束力の強さは有名だ。

 しかし新聞各紙は、信者たちの高齢化による結束力の弱体化を指摘する。実際のところはどうなのだろう。公明党の元国会議員に話を聞いた。

敵陣にスパイも

「確かに信者の高齢化は、今回の統一地方選での敗因の一つだと思います。いわゆる2世、3世の信者は、それほど選挙に熱心ではありませんからね。ただ、昨年の安倍晋三元首相の暗殺によって統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の問題が大きく報じられ、そこから政治と宗教の問題に発展。その影響を受けた側面もあると思います」

 以前から公明党は、政教分離の問題に関して「宗教団体が政治活動を行うことは憲法上保されている」とかわしてきた。

「そうはいっても、これまで問題があったのは事実です。お年寄りや障害のある方に付き添う振りをして投票所に連れて行き、公明党候補者に投票させて投票干渉罪に問われたこともありましたしね。公明党の候補者が次点で負けた時のために、学生部の若い信者を対立候補の選挙事務所に潜り込ませることも以前にはありました。次点で負けたのなら、ギリギリで当選した候補者を当選無効にすれば、繰り上げ当選になる。そのための情報収集をさせるのです」

 そんなことが可能なのだろうか。

「実際、成功例があります。とある市議選で、対立候補が選挙区の住民になって3カ月に満たないと指摘した結果、当選無効になり、次点の公明党候補者が繰り上げ当選したことがありました。国政選挙でも、当選議員の秘書が日当の買収容疑で逮捕されたために辞職。次点だった公明党の候補が繰り上げ当選しました。いずれも対立候補の選挙事務所に情報収集係を潜り込ませたことが功を奏したと言われています」

 そのような組織なので、12人の候補者が落選しただけで大ニュースになるのだ。

「実は今回の統一選では、前回よりも候補者を減らしているのです。その上で12人も落選したということが大問題なのです」

実質19議席を失った

 前回の地方統一選は2019年4月に行われた。前半戦で公明党は、41道府県議選に167人、17政令市議選に173人、計340人を擁立。このうち落選したのは2人だった。後半戦では、一般市議選に901人、東京区議選に150人、町村議選に171人を擁立し、計1222人の全員を当選させている。

 前回の立候補者は1562人なのに対し、今回は1555人と7人減っている。

「立候補者を減らして全員当選させ、“完勝”と言いたかったわけですが、実質的に19議席も減らしてしまった。公明党は選挙では“全員当選”を掲げ、1998年の再結成以来、二桁の落選者など出したことがありませんでした。実際、2003年と07年には候補者全員を当選させてきたのですから」

 何が変わったのだろう。

「新聞などが指摘するように、信者の高齢化もそうですが、根底にあるのは池田大作名誉会長の不在でしょう」

2010年以来、表舞台に立たず

 現在95歳の池田氏は、創価学会を創設したわけではない。3代目の会長にして唯一の名誉会長であり、“永遠の指導者”として今も崇められている。

「池田氏こそ公明党の実質的なリーダーであり、かつては総理大臣になろうとした人なのです。ですから、自身が選挙に熱心なのはもちろん、信者たちを支援に駆り立てるのも上手かった。創価学会は信者数を827万世帯と公表していますが、彼が元気な頃は比例区の得票数を合わせると全国で800万票を突破していました。ところが、2010年から彼が表舞台に立つことはなくなりました。すると徐々に得票数を減らしていったのです」

 公明党は09年の衆院選では比例区で805万票を獲得。ところが、10年の参院選では763万票に減った。以降、12年の衆院選では711万票、13年の参院選では756万票、14年の衆院選では731万票、16年の参院選では757万票と、700万票台を推移する。

 そして17年の衆院選では697万票、19年の参院選では653万票まで落とした。

「創価学会はかつて婦人部が選挙を仕切っていました。しかし、600万票台にまで落ちたことで組織再編を図り、21年5月に女性部を新設。おかげでその年の衆院選は711万票にまで戻すことができたのです。それでもかつての得票数にはほど遠い。そこで比例区よりも選挙区に重点を置くようになりました。そんな折、今回の統一地方選で12人もの落選者を出してしまったことが、彼らにとっては大ショックなのです」

 この記事には取り上げられていませんが、公明党は池田会長自ら中国との蜜月状況を作り上げ(実際には中国の日本の政治工作の一つとして公明党が狙われた)、親中の党として今日に至っています。

 しかし昨今の中国のあからさまな覇権主義化に対し、日本は中国と距離を置くようになっていますが、自民党に対し親中政策を維持させようとする公明党に、国民も嫌気を差し始めたのではないでしょうか。特に中国を念頭に置いた安全保障政策では、後ろ向きの対応が多いように思います。

 いずれにしろ、自民党は公明党の支持者の票を頼りに、与党として連携していますが、そろそろケジメをつけるときではないでしょうか。特に安全保障政策で折り合いがつかなければ、連立解消をほのめかすことぐらいは、やるべきだと思います。


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2023年5月 6日 (土)

和田政宗氏:日本は「一国平和主義」を完全に捨てよ! 憲法改正により自衛隊の足枷を取り払う時期だ

Fuotuy6amame_m4  5月3日の憲法記念日を迎えて、日本は地球上の200あまりの国の中でも極めて珍しい、80年近い間一文字たりとも憲法の条文を変えていない国だということを、改めて思いました。しかもそれは、占領下における占領者(GHQ)の手になるものであるにもかかわらず。

 その憲法に縛られて、「専守防衛」「必要最小限の防衛力」のもとに、日本の主権を揺るがす幾多の領土事案や拉致被害にもさらされてきました。更には西側の多くの国が支援している、ウクライナへの軍事支援にも、攻撃兵器の支援が出来ない状況です。

 自民党参議院議員の和田政宗氏は、この憲法のもとでの平和対応を、一国平和主義として、月刊hanadaプラスに『日本よ、「一国平和主義」を完全に捨てよ!』(5/02公開)として、コラムを寄稿しています。以下に引用して掲載します。

日本も独自にウクライナを支援しているが、果たして十分な支援と言えるのだろうか。国民の間において、「人を殺傷するような武器の輸出までするのはどうか」という疑問があるが、「日本だけが守られ、平和であればそれで良い」という考え方はもはや通用しない。

憲法9条によって平和が守られてきたのではない

5月3日は憲法記念日である。日本国は「憲法9条によって平和が守られてきた」という人たちがいるが、実際に我が国を外国の侵略から守ってきたのは自衛隊であり、自衛隊を支え我が国を断固守るという国民の意志であり、同盟国米国の存在である。

一方で、これまで日本は「一国平和主義」的な立ち居振る舞いをしてきた。しかし、国際的に安全保障環境が緊迫し、ロシアによるウクライナ侵略のなか、もう「一国平和主義」的考えは日本は完全に捨てるべきであり、安倍政権が掲げた、世界の平和と安定のために積極的に取り組む「積極的平和主義」をさらに強化していく必要がある。ひいてはそれが我が国の世界的重要性を高め、我が国の平和を守ることにつながるからだ。

我が国はこれまで、「日本だけが守られ、平和であればそれで良い」という考え方でも平和を維持することができた。防衛力の強化と日米同盟の強化でそれが可能だったのだ。しかし、中国や北朝鮮、ロシアといった想定できない軍事行動を取る国が出現し、第三次世界大戦が起こるかもしれないという国際情勢はこうした環境を完全に変えた。

NATOは軍事的に緊密に連携し多国籍部隊をポーランドに派遣して自らを守るとともに、隣接する侵略国ロシアに立ち向かうため、ウクライナに戦車を供与するなどして支援している。日本も独自にウクライナを支援しているが、果たして十分な支援と言えるのかを考えなくてはならない。

日本は防衛装備移転三原則により、共同開発国を除き、殺傷能力のある武器を輸出することは極めて困難である。国民の間において、「人を殺傷するような武器の輸出までするのはどうか」という疑問があることからもそうした状況が続いてきた。

しかし、侵略国に立ち向かう国を支える状況は、「明日は我が身」と言えるものであり、もし日本が外国から侵略を受けた際に、支援国に「我が国はここまでしかできません」と言われたら、それでも感謝をするとは思うが、正直なところ「もう少し力を」と思うはずだ。

ウクライナへの軍事支援は可能か?

日本は現在、ウクライナに対して防弾チョッキ1900着、ヘルメット6900個を支援しているが、例えば自衛隊において順次退役させている多連装ロケットシステム(MLRS)は、ウクライナが各国に供与を希望しているものだ。現状の防衛装備移転三原則では、直接的な輸出は無理である。

しかし、退役した装備は「防衛装備品」ではなくなることから防衛装備移転三原則からは離れ、その後の処分についての方策は取りようがある。さらに、防衛装備移転三原則そのものを見直すことも考えるべきである。

繰り返しになるが、こうしたことはこれまで我が国においては考えられてこなかったし、議論もされてこなかった。一国平和主義の観点で、避けてきたとも言える。しかし、それではもう侵略国に立ち向かえなくなってしまったし、侵略国の横暴を許せば世界各地に波及してしまう。

日本はロシアと国境を接している。日本の弱腰姿勢や一国平和主義的考えは、ロシアが日本に対し侵略を始めるきっかけとなる危険性がある。ロシアは絶対にそんな考えを持たないと考えるのはあまりに楽観的である。事実、ロシアはウクライナを侵略したし、ウクライナで行っている虐殺や暴虐行為は、ソ連が満州侵攻において日本人に対して行ったことと全く同じである。

日本人と同様の苦しみの下に置かれているウクライナを最大限支援することは、我が国の責務である。

積極的平和主義を今こそ全面展開すべき

4月21日、スーダンに在留する邦人を国外に退避させるため、C-130輸送機1機がジブチ共和国に向け出発した。

我が国のウクライナ支援は、軍事的観点のみならず経済的観点も重要である。ウクライナ政府がTPP11への加盟申請を近く決定する方針であるとウクライナの通信社が伝えたが、私にも同様の情報がウクライナ関係者よりもたらされている。

TPP11は日本がリーダーシップを取って実現した経済連携協定であり、日本がその中心にある。もしウクライナより正式に加盟申請があればそれを認め、経済的にウクライナを支えるとともに、自由で適正なルールに基づいた貿易連携による各国の経済の安定と「経済同盟」により世界の平和を守っていく責任が日本にはある。

そして、日本が経済面だけでなく安全保障面で積極的に貢献しリーダーシップを取っている事例は、すでに大きな実績を挙げているものがあり、大いに参考とすべきだ。

それは、アフリカ・中東のアデン湾、ソマリア沖における自衛隊の海賊対処行動である。今回、スーダンからの日本人脱出の支援地となったジブチには、海賊対処行動のための自衛隊初の海外拠点が2011年から設置されている。

2008年の国連安保理決議以降、日本はこの地域に護衛艦と哨戒機を常時展開し、日本の護衛艦は、24時間365日、1日も欠かさずアデン湾で哨戒活動を実施し、哨戒機もほぼ毎日、哨戒飛行を実施している。海賊対処行動は、自衛隊派遣部隊が各国派遣部隊に対し担当海域を割り振るなど、日本が中心となっている。

これにより、年間200件以上あったこの海域での海賊事件は、今では被害なしという状況となった。また、2019年のジブチの豪雨と洪水災害の際には、延べ277人の自衛隊員と車両30両で、ジブチ市内の小・中学校の排水作業や支援物資の輸送を行った。こうした貢献はジブチ国内のみならず、世界各国から感謝をされ、日本の外交的地位を高めている。

日本は積極的平和主義を今こそ全面展開すべきである。アデン湾、ソマリア沖における海賊対処行動のみならず、地域の平和維持活動や侵略国への対峙において、国連の枠組みがなくとも日本は積極的役割を果たすべきである。

現行憲法を押し付けられてから76年。日本は戦後レジームから脱却し、安全保障面でも経済面でも世界のリーダーとなり平和に貢献するよう俯瞰的な行動と政策を打っていくべきだ。

 防衛装備移転三原則に限らず、安保三文書改定の中でも引き続き踏襲されている、「専守防衛」や「反撃能力の必要最小限の保持」など、自衛隊の足枷となる部分は改訂されていません。これは所謂現行憲法の呪縛と言っていいでしょう。

 この平和憲法が、世界に向けて平和日本の発信源となっているという、護憲論者に対して、「日本の外交力を弱め、日本への攻撃を容易にする、日本にとっては危険な憲法」だと、はっきり申し上げたいと思います。

 結果として北方領土を略奪されても、あるいは竹島を不法占拠されても、手も足も出せなかった、そして今も出せない状況を作っています。更には拉致被害者を出し、また奪還できないのもそうでしょう。

 スーダンでは旨くいきましたが、アフガニスタンをはじめ、それ以前の邦人救出がその度に困難を極めたのも、憲法下の自衛隊の足枷がその要因となっています。

 占領初期のGHQが、共産主義者に支配された状況で起草されたこの憲法は、明らかに日本の弱体化を狙ったもので、独立後も一文字も改訂しなかったのは、ひとえに政治家の不作為と言えるでしょう。早期に憲法を改正し、ポジティブリストをネガティブリストに変更し、自衛隊に多くの権限を与え、真の日本および日本国民の防衛組織とすることを願いたいと思います。


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2023年5月 5日 (金)

立憲民主が「野党第一党」の時代は間もなく終わるかも知れない まともに議論せず批判ばかりで中身がない

19_20230504140701  野党第一党の立憲民主は泉新代表誕生の時、「提案型政党」に変わると宣言したはずでした。しかしその後の選挙での敗北と支持率の低迷により、元の「何でも反対」政党に逆戻りしたようです。最近の立民各議員による国会質問での、意味のない政府批判色満載の状況から、はっきりそれが汲み取れます。

 しかしいくら政府与党批判を重ねても、各種世論調査での支持率向上は見られません。それはそうでしょう、国民の多くはこの政党が国のために資する政党とは、どう見ても見られないと判断しているからでしょう。

 そうした中、最近の国政選挙や統一地方選での党勢停滞から、野党第一党の地位が危ぶまれて来ています。その辺の状況をルポ作家の青沼陽一郎氏が、JBpressに寄稿しています。タイトルは『立憲民主が「野党第一党」の時代は間もなく終わるかも知れない 補選で仕掛けられた維新による「立民追い落とし」にまんまとやられる弱体ぶり』(4/29公開)で、以下に引用して掲載します。

 統一地方選挙で躍進した日本維新の会。自民党が4勝1敗だった衆参補欠選挙でも、衆院和歌山1区で自民候補との事実上の一騎打ちを制して、唯一の黒星を付けている。

 自治体の首長や地方議員を600人とすることを目標としていたが、公認した599人が当選し、非改選の175人をあわせると774人になった。奈良県知事選挙では自民候補を下して、大阪以外ではじめて公認知事が誕生したことも大きい。

 この結果を受けて、野党第一党の奪取に本腰を入れはじめた、とする報道も散見するようになった。だが、それは間違いだ。

維新はとっくに野党第一党を視野に入れている

 維新は選挙中から野党第一党を目指してあからさまに立憲民主党を追い落としにかかっていた。それは衆院補欠選挙で和歌山1区と並んで公認候補を立て、立民と競合した千葉5区の選挙から知ることができる。

 千葉5区は、自民党の薗浦健太郎前議員が、政治資金パーティーで得た収入を政治資金収支報告書に過少に記載した政治資金規正法違反で略式起訴され、議員辞職した「政治とカネ」の問題に伴うものだった。自民も公募で独自候補を立て、与野党の7人が立候補する乱立となった。それでも報道各社の事前の情勢分析では、自民と立民の事実上の一騎打ちと見られていた。

 そこへ割って入ろうと、維新が擁立したのが、28歳の岸野智康候補だった。「政治とカネ」の問題や政策で自民党を批判するのは当然としても、街頭演説であからさまに立憲民主党を名指しして批判していたのだ。国会での放送法をめぐる追及、安全保障への取り組み、憲法審査会の「サル発言」などなど。市川市内の巨大ショッピングモールの昼時。幼い子どもを連れた母親も目立つ中で、選挙カーの上に立ち、マイクを通じて、政策より立民の政治姿勢を批難する。演説にも力がこもり、その勢いは罵倒にすら聞こえるほどだ。

「立憲民主党は意識している」

 街頭演説のあとに真意を質すと、はっきりそう答えていた。

「日本維新の会はあと3回の衆議院選挙で与党になることを目標にしている。その前に野党第一党になって立民を超える。そのための選挙だと考えている」

「国会でまともに議論したいのに、立民はイデオロギー対立ばかりで中身がない」

 今年2月の党大会。日本維新の会は、今後3回以内の衆院選で政権奪取することを目標とした2023年の活動方針を決めている。そこでは、統一地方選挙で地方議員を600人増やすことも掲げ、目標に届かなければ、馬場伸幸代表は、代表を辞任する意向も示していた。地方議員を増やすことは「国政選挙の足がかりになる」としていた。それを踏まえてのものだろう。

「自民党対野党といった時の野党とはどこか。野党がまとまらない中で、政権への不満があり、立民もダメとなれば、維新がその選択肢に入る。野党第一党はどこか、それを問うのが統一地方選挙の目的」

 目指すべきは保守中道の2大政党による政権交代にあるとする。

「国会でも中身のある議論に入りたいのに、立民はイデオロギーの対立ばかりしていて中身がない」

「防衛費のGDP比2%の増額にしても、中身の議論をすべきで、それもない立民はずれている。憲法審査会でのサル発言にしても、野党第一党とは言えない」

 そこであえて立民を名指しして批判する。自民の前に立民を追い落としにかかる。

「立憲民主党は与党になるつもりはない」

 それは候補者だけの考えではなかった。選挙戦最終日には藤田文武幹事長も応援に入り、マイクを手にこう語っていた。

「もうね、立憲民主党に自民党に代わり得る勢力になる可能性は0%です、ありませんから。なぜなら、国家の根幹である憲法の話をしようとしたら、議論するだけでサルというバカがいるんですから。それからね、外交安全保障、エネルギー、そういう話を表で議論やりましょうといったら、やらないんですから。党内にまとめる力がない。

 加えて、野党第一党の仕事は与党になることですよ。選択肢を示して、前回の衆議院選挙は彼らは220〜230の候補者を立てました。だから与党になる可能性はあったんです。でも次回衆議院選挙、150以下しか出せないと宣言してるんですよ。

 もうね、与党になる気ありません。だから次回の衆議院選挙で私たちは、その野党第一党という座は代わってもらおうと思っている。まあ、ご勇退いただいて、立憲民主党さんには。

 私たちが自民党と対峙し、そして政策競争、改革競争、そして政治姿勢の覚悟を勝負する、そういう正々堂々の政治を、批判だけじゃない、提案型のガチンコ勝負のそういう政治を実現させていただきたい」

 党執行部の意向がよくわかるこの発言は、YouTubeで今でも確認することができる。

 千葉5区の結果は、自民が5万0578票を集め、立民4万5635票の4943票差で勝利した。そこに国民民主党の2万4842票、維新の2万2952票と続く。共産党も1万2360票を獲得した。立民が勝てると踏んだここ千葉5区と、参院大分選挙区でも自民候補にわずか341票差で敗れて、全敗だった。

 立民の岡田克也幹事長は、千葉5区での敗因を「野党が候補者を調整できなかったこと。その1点につきる。これを1つの教訓にしなければいけない」と語っている。

 だが、維新は今年2月の段階で、立民からの千葉5区の候補一本化に向けての協力要請を断っている。馬場代表は「他党との選挙協力は絶対にしない」とも言い切っている。挙句に、国会では「共闘」しながら、選挙で一方的に立民を批判し、野党第一党の追い落としにかかる。それを立民の執行部はわかっているのだろうか。

野党第一党の立場、必ずしも盤石ではない

 維新にしてみれば、結果は立民の半分にも及ばない得票でも、ある一定の存在感を示し、立民の足を引っ張ったのなら、ひとつの役目を果たしたとも言える。

 今回の補欠選挙は、岸田文雄首相の今後の解散戦略にも影響を与えるとされた。早ければ、来月のG7広島サミットのあとの解散も囁かれる。4勝1敗とはいえ、衆院千葉5区の自民の得票率は30.6%で圧倒的に野党票が多い。参院大分選挙区も341票差の勝利だ。それでも勝ちは勝ちだ。これをどう見るか。維新の躍進も不気味だ。

 ただ、維新はあらゆる選挙区で候補者を立てる方針を急ぐ。千葉5区の補選のように、維新が独自候補を立て、野党が浮動票を食いあって票が分散することになれば、自民の勝利もみえてくる。そうであれば、早い時期の解散もあるのかもしれない。そのあとには立民が野党第一党の座にいられるか、それもひとつの注目となる。

 立民の体たらくに比較すれば、維新はまだマシだという感じはします。しかし自民党に代って政権の座に着けるか、と言う点では、人材や政策の面でまだまだというのが実態でしょう。ただ日本の重要課題に論点を置かず、政府与党批判一点張りの立民よりは、まだましだと言えるでしょう。

 日本の国会はそもそも国の重要課題を審議し、行政に対し国や国民のために最良となる法案を立法し、提供する大切な役割があります。その役割を放棄し、意味のない批判ばかり繰返すような政党ははっきり言って必要ありません。国民の中には「権力批判」をよしとする人たちも一定数はいます。しかし野党の中にもしっかりした政策を提案し、それを実行する意欲のある政党が出現すれば、自ずとそちらへ目は向かうのではないでしょうか。

 野党がしっかりすれば、与党も安閑として入られず、結果として国会議員そのものの質の向上が期待できます。別に維新とは限らないのですが、与党に互してしっかりと、国と国民のための政策論戦が出来る野党の出現を願うものです。


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2023年5月 4日 (木)

高市経済安全保障相:経済安保の加速へ「中国依存」脱却し「4つの柱」で国民の命守る

18_20230503155401  安倍元首相が暗殺テロで不幸な死を遂げた後、日本政界でその遺志を継ぐ第一人者の高市経済安全保障相。立憲民主の小西議員の国会での姑息なでっち上げ質問にも屈せず、政務を全うしようと日夜奮闘しています。

 その高市大臣に、夕刊フジが単独インタビューした記事が、zakzakに公開されていますので以下に引用します。タイトルは『経済安保の加速へ「中国依存」脱却し国民の命守る 高市早苗氏・独占インタビュー「4つの柱」で新たな制度 闘いはSC制度化』(5/03公開)です。

高市早苗経済安全保障担当相が、夕刊フジの単独インタビューに応じた。中国が覇権主義的行動を強めるなか、「日本有事」に備えた国防力強化の重要性は高まっている。経済面から国益の確保を目指す経済安保の加速も待ったなしだが、高市氏は今国会で、放送法の政治的公平に絡み、総務省から流出した「行政文書」の騒動で一部野党の追及を受ける〝試練〟もあった。凶弾に倒れて10カ月となる安倍晋三元首相への思い、日本初の女性宰相への期待も含め、胸中を語った。 (中村昌史 海野慎介)

4つの柱「重要物資の安定供給」「基幹インフラの強化」「先端技術開発」「特許出願の非公開」

――2023年も半分が過ぎようとしている

「昨年5月に成立した経済安全保障推進法が重要局面を迎えている。『重要物資の安定的な供給の確保』『基幹インフラ役務の安定的な提供の確保』『先端的な重要技術の開発支援』『特許出願の非公開』の4つを柱に、新たな制度をつくる。機微な技術情報の取り扱い資格『セキュリティー・クリアランス(SC)』の法制度化も目指している」

――SCは重要だ

「宇宙やサイバー分野でもSCが求められるが、日本人のビジネスマンや技術者にはそれがない。機微情報に触れられず、海外の政府調達にも入れない。安倍総理(=永田町では、首相経験者に敬意を示すため『総理』と呼ぶことが多い)は常日頃、『闘う政治家であれ』と言っていた。経済安保担当相としての闘いはSC制度化だ。日本企業のビジネスチャンスを大きく広げ、同志国との信頼も築く。制度化に向けて説明を尽くし、挑戦する姿勢を貫く」

――経済安保の取り組みは

「サプライチェーンの強靱(きょうじん)化が本格化している。補正予算で1兆358億円、今年度予算でも1兆円の予算をいただいた。国民の生存、国民生活や経済活動に甚大な影響があり、安定的確保が特に必要な物資を、実際に供給途絶したケースも含め洗い出し、昨年12月に、11物資を指定した」

――供給網は大丈夫か

「非常に危うい。まず、現代社会に不可欠な半導体の79%は海外依存だ。EV車や5G基地局などに必要な蓄電池、家電製品や発電機に必要な永久磁石も国内供給割合が低い。共通するのは原料の『レアアース』を供給のほぼ全量を、海外からの輸入に依存していることだ」

――解決策はあるのか

「レアアースでは、東京大学の加藤泰浩教授のチームが、日本最東端・南鳥島のEEZ(排他的経済水域)内の海底で、各産業の数百年分もの埋蔵を発見した。今後、水深6000メートルで採掘可能な機器も投入し、実証事業を進め安定供給を目指す」

「手術などに必要な特定の抗菌性物質製剤は過去に供給途絶して手術が延期されたが、原材料の100%を中国に依存している。肥料原料である塩化カリウムはウクライナに侵略したロシアやベラルーシが供給元だ。国際情勢が供給を直撃する。調達を多様化し、代替物資は国内開発する。原料調達から製造、備蓄まで日本で完結させる」

「産業用ロボットは日本が圧倒的に強い分野だったが、中国の誘致、買収が猛烈な勢いだ。より優秀な製品を開発し、製造能力を強化し、国際市場での日本の強みを伸ばしていく」

――経済安保は、経済面だけでなく、国防や技術保護、資源を埋蔵する領土・領海の保全などの側面も強い

「昨年12月に閣議決定した国家安全保障戦略は、約10年ごとに見直されるが、初めて『経済安全保障』という章立てができた。軍事と民生の境界線はあいまいで、さまざまな技術は『デュアルユース(軍民両用)』となった。日本企業が開発した優秀な耐熱素材が、海外で超極音速兵器に転用されることもある。保護や規制は重要だ」

「官民協力も進める。経済安保推進法で施行された『経済安保重要技術育成プログラム(Kプログラム)』では、重要技術で順次、公募が進んでいる。例えば、『光通信などの衛星コンステレーション』は、情報通信の継続性をあらゆる状況で確保する。国民の命を守り、国際社会への発信を確保するには、情報通信の継続性が必要だ」

――日本の技術はどうか

「衛星コンステレーションは、米起業家イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業『スペースX』が、ウクライナに提供した衛星インターネットサービス『スターリンク』と同じシステムだ。衛星コンステレーションの通信を、より高セキュリティーな『光通信』に進化させたい。国と民間が力を合わせ、より良いものをつくっていく」

「日本には『合成開口レーダー』(SAR)でも優れた技術がある。これを搭載した小型SAR衛星は、火山の噴火や夜間で宇宙から地球が見え辛いような悪条件でも、鮮明な画像が得られる。これで、災害や日本が攻撃されるような有事に必要な情報収集力を強化できる」

――国産化が安全を高める

「Kプログラムにはドローン(小型無人機)技術も盛り込まれている。世界市場では約6割が中国製だが、中国だから悪いのではなく『一から国産でつくるべき』という観点だ。サイバー攻撃が最大の懸念で、操縦を妨害されたり、ドローンで収集した画像情報などが他国に抜き取られる恐れもある。国産化でリスクを抑制する。同時に、日本製ドローンの飛行時間や荷物の積載量を強化する。災害時などに離島や山間部にも医薬品、食糧、水を運ぶ能力を高める」

――5月には広島でG7(先進7カ国)首脳会議が開かれる

「私も科学技術大臣会合の議長を務めるので、準備している。科学技術研究の健全性や公正性を確保する『研究インテグリティー』がカギだ。地球的課題として宇宙のゴミ『スペースデブリ』対策も議題になる見込みだ。G7に加え、G20(20カ国・地域)にも問題意識を広げたい。日本は商用のデブリ回収技術を有しており、経済成長にもつながる分野だ」

 安全保障は、いまや物理的な軍事力のみならず、情報・サイバーセキュリティ能力や、継戦能力に必須となる食料、資源・エネルギーの分野も含めて、経済と密接な関係を持ちます。

 その意味では高市大臣は安全保障の支えとなる非常に重要な役割を担っているわけで、特に中国に過度に依存している資源の分野の代替策の実現は、極めて重大な課題だと言えるでしょう。今後の活躍を期待したいと思います。


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2023年5月 3日 (水)

中国、もう一つの安全保障上のリスク:「世界一の技術力とシェア8割」 日本の国境を脅かすドローン大国化

17_20230501164801  いつの間にか、と言った表現が当たっているかどうかは分りませんが、今やドローンは中国が生産量、技術とも世界一となっています。当初は遊び道具的な存在だったドローンも、いまや兵器にもなる大型化、高性能化が一気に進みました。所謂小型無人機の登場です。

 中国における、このドローンの現状を週刊現代が特集で報じています。タイトルは『「世界一の技術力とシェア8割」もし中国のドローンなら「陸自ヘリ撃墜」は朝メシ前?…日本の国境を脅かす「中国のドローン大国化」がヤバすぎる』(4/26公開)で、以下に引用して掲載します。

SF映画『スター・ウォーズ』に登場する近未来の戦闘が現実のものとなりつつある。中国のドローン兵器は自軍の血を流さず、どこまでも合理的に敵軍を殲滅することができる。その実態に迫る。

中国がドローン大国に

4月6日、沖縄県宮古島沖で陸上自衛隊のヘリコプターが突如、消息を絶ち、19日までに機体の一部と6人の隊員の遺体が海底から引き揚げられた。墜落した原因は今も調査中だ。

近年、沖縄沿岸、そしてその上空に中国の不審船や航空機が侵入を繰り返し、事故当日も中国軍の情報収集艦が沖縄本島と宮古島間を通過していた。そのため、事故発生当初に関与を疑った人は少なからずいるだろう。

防衛省は「攻撃の痕跡はない」とその可能性を否定した。実際、今回の事故に中国軍は関与していないと見られる。

ただ、中国軍にとって、現実に海上を飛行する自衛隊のヘリを撃墜することは赤子の手をひねるようなものだ。それを可能にするのが、当局が急速に開発を進める最新ドローン兵器である。

中国は今や「ドローン大国」として君臨し、その開発力は日に日に進化している。

ドローン兵器が軍の主力に

「現時点で中国が持つドローン兵器の技術は世界一であると考えてもいいでしょう。武器の国際見本市を見ると、中国のドローン技術は『すべて』を持っているからです。同じくドローン大国であるトルコ、イスラエル、そして対立する米国の技術すらもコピーしているのです」(ドローン兵器に精通するフォトジャーナリストの柿谷哲也氏)

中国はDJIなど巨大ドローン企業を有し、世界シェアは'22年時点で、約8割を占める。習近平国家主席は「軍民一体」となり、ドローンの軍事利用を進めてきた。

「中国には米軍に対抗する際、通常の兵器や人員を増強するだけでは太刀打ちできないという認識があった。そこで習近平は'20年に『ドローンを軍の中心戦力に据える』という方針を示し、開発を進めてきました」(安全保障に関する先端技術を専門とする慶應義塾大学総合政策学部教授の古谷知之氏)

習近平の言葉は荒唐無稽な夢想ではなかった。'23年2月、中国航空力学研究開発センターが、AIが操縦する無人機と有人機を実戦形式で戦闘させたところ、前者が勝利した。決着はわずか90秒でついたという。

ドローン兵器はさらに強力に

性能もさることながら、恐ろしいのは生産力だ。ストックホルム国際平和研究所によると、中国は過去10年間で282機の軍用ドローンを輸出。これは米国の約24倍に当たる。主要取引先は紛争が止まないアフリカ、中東などの途上国だ。

ここで、中国が「ただ儲かっているだけ」なら問題ではないだろう。しかし、真の目的は金儲けではない。中国は「実戦データ」を収集しているのだ。つまり、売れば売るほどドローン兵器は進化することになる。

「ドローンは戦場でしか分からないニーズに応じて、装備を変えるなどして改良されていきます。実際、中国製のドローンは中東やアフリカの紛争地帯で導入されています。直近の実戦経験をAIが学習し、機能も改良することで中国のドローン兵器はさらに強力になっています」(元航空自衛隊空将補の杉山政樹氏)

そしてその先に、習近平が見据えるのが台湾制圧だ。中国としては、台湾防衛における最重要拠点・沖縄も同時に無力化する必要がある。

自衛隊はすでに消耗状態

日本政府は防衛費に過去最大の6兆8219億円を計上し、有事に備えている。だが、もう手遅れかもしれない。ドローン兵器による作戦はすでに始まっているからだ。

「TB-001Aという偵察・攻撃型ドローンが配備されているのですが、すでに沖縄本島や宮古島周辺を飛行しています。制圧作戦を行うにあたり、最適な高度、季節風、天気などのデータを収集していると思われます」(情報安全保障研究所首席研究員の山崎文明氏)

こうしたドローンの接近に自衛隊はスクランブル発進で対応している。否、「させられている」のだ。空自は現在、日常化するドローン接近のせいで、燃料が不足。さらに、スクランブル発進は1回で一機あたり最低400万円以上のコストもかかる。中国は安価なドローンを飛ばすだけで、情報収集を行うだけでなく、自衛隊を消耗させ、資金を削っているのだ。

2023042700109403gendaibiz0021view 左の写真は台湾、沖縄制圧作戦に導入される可能性があるドローン兵器の一覧だ。順番に見ていこう。

強力な無人兵器

まず脅威となるのが、'22年11月に発表されたばかりの超大型偵察・攻撃型無人機の翼竜3だ。全長は約12m、翼幅約24mに及ぶ。設計担当者は「最大16個のミサイル、爆弾を装備可能で、搭載量はあらゆる面で既存の無人機を超越する」と中国メディアに語った。

「特筆すべきは大型化でパワーアップし、航続距離1万km、航続時間40時間以上という耐久力です。米軍のグアム、ハワイ基地までもが作戦範囲に入ります」(英誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』東京特派員の高橋浩祐氏)

世界初となる「ドローン母艦」である珠海雲も登場し、'23年1月に就役。自身も全長88・5mの無人艦であり、12時間の単独航行が可能だという。中国当局は「科学調査船」としているが、軍事利用される可能性は高い。搭載された無人観測システムは監視や偵察に活用できるうえに、甲板に小型攻撃ドローンを数十機積むこともできる。

徘徊型ドローン、ZT-180は目標に群れで突っ込む飽和攻撃を行う。同時運用可能機数は最低でも500機だという。

「詳細はまだ不明ですが、自立運航能力を持ち、管制が必要ないとされています。さらに、低空で侵入してくるため、防衛レーダーに引っかからないのが厄介です。爆破力はビルの角が欠ける程度ですが、大量に飛来すれば被害も甚大となります」(前出・山崎氏)

極超音速ドローン、MD-22の最大飛行速度はマッハ7(時速8575km)を超え、最大飛行高度は近宇宙にも及ぶという。具体的な性能は明かされていないが、当局がとくに力を入れて改良を進めているだけあり、大きな脅威となるだろう。

米国からウクライナに700機以上が供与され、大きな戦果を上げた小型攻撃ドローン、スイッチブレードに匹敵する能力を持つのが飛鴻901だ。

「地上からボタン一つで発射でき、戦車の弱点である車体上部を狙う『トップアタック』を敢行できます」(前出・高橋氏)

ロボット犬が敵軍を蹂躙

大型無人偵察・攻撃機、彩虹7はレーダーに探知されにくいステルス性能を持つ。対空ミサイルに加え、レーザー光線と高出力マイクロ波を搭載できるとされる米国の超攻撃的無人ステルス戦闘機X-47Bから技術を盗み、同等の能力を持つとされる。

そして今後、地上戦の主役となり得る無人兵器がM-81である。犬を模した軍用ロボットで、広義のドローン兵器に含まれる。背中に対戦車ミサイルや機関銃を装備し、戦場を駆けるという、まさに近未来の兵器だ。ロシア製だが、中国との間で1兆円を超える商談が成立し、アリババが類似の機体を開発している。

これらの兵器は日本が持つ既存の防衛技術では、迎撃が困難なものばかりだ。前出の山崎氏が語る。

「中国はドローン防衛用の電子妨害システムに対抗するため、電磁シールドを貼った機体も開発済みである可能性が高い。防衛省はマイクロ波兵器の開発を急いでいますが、それは有効範囲が狭い。現状、ドローンによる大規模攻撃に自衛隊ができることがあるとすれば、弾幕を張ることくらいでしょうか」

もし、沖縄制圧作戦に先述したドローン兵器、もしくはそれらを改良した後継機が導入されたら、どうなるのか。

そのシミュレーションは次の通りだ。

ドローン兵器が沖縄を襲うー

202X年、航空自衛隊那覇基地で警報が鳴り響く。沖縄の近海上空に複数の不審な飛行物体が侵入したからだ。自衛隊はF-15戦闘機2機をスクランブル発進させる。現場に急行したパイロットが見つけたのは、5機の翼竜3。機体には中国国旗が描かれている。その後方につけたパイロットは警告無線を飛ばすが、再三の警告に全く応答せず、なおも沖縄本島へ飛んでいく。その機体に対し、自衛隊司令部は「威嚇射撃」を指示する。

しかし、それでも止まらない。ここで自衛隊は「撃墜」を決意する。パイロットは照準を定め、射撃を開始。その瞬間だった。翼竜3の隊列は機体を翻し、一気に散開。統制の取れた動きで、F-15に照準を絞らせない。弾丸から巧みに逃れ、難なく沖縄上空に到達した翼竜3は那覇基地を爆撃する。

沖縄の自衛隊基地、米軍基地は尋常ならざる事態に浮き足立っていた。そんななか、沖縄沿岸に珠海雲が姿を現す。

甲板には数十機ものZT-180。やはり、人の姿は確認できない。それは甲板から飛び立ち、一糸乱れぬ隊形を取る。

現実を見据え対策を

その群れは沖縄上空で一斉に散らばり、那覇、嘉手納、普天間などの米軍基地に突っ込んでいく。レーダー、防空システム、通信設備が破壊され、自衛隊と米軍の指揮系統は崩壊寸前だ。

沖縄各地で炎が上がるなか、基地近くにM-81をぶら下げた夥しい数のパラシュートが次々に落下し、折り畳んであった4本の足を伸ばす。その姿は大型犬のようだが、金属製の胴体には機関銃を装備している。その群れはやがて弾丸を発射しながら前進し、基地内の兵士を倒していく—。

このシミュレーションは今や「空想」ではない。中国はそれを現実にするドローン兵器をすでに持っている。

日本はその脅威にどう備えていくのか。現実を見据えた対応が必要だ。

 もはや宅配に使用するドローンなどのイメージとはかけ離れた、完全な攻撃兵器です。どう備えるかという問いに対し、現時点では有効な答えは出せないでしょう。1周どころか2周も3周も遅れている日本の無人機。基本的にはほぼ同性能の無人機を持たねば、その防衛もなかなか困難だと思われます。

 昨年日本も米国の技術協力の下、戦闘機支援の無人機開発に着手しましたが、先行する中国に質量で追いつくのはなかなか困難でしょう。この困難な課題にどう対応していくか、今後の政府、防衛省の力量が問われるところです。


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2023年5月 2日 (火)

中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 今こそインテリジェンス体制の整備を

14_20230501154701 スパイ天国と言われて久しい日本。他の先進国や中国はスパイ防止法を制定保持し、インテリジェンスにも力を入れているのに、日本は周回遅れの状況です。

更に中国は最近、反スパイ法を強化する決定を行っています。

 そんな中で国際ジャーナリストの山田敏広氏が、驚くべき情報をJBpressに寄稿しました。タイトルは『中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱、今こそインテリジェンス体制の整備を』(4/28公開)で、以下に引用して掲載します。

 実はいま、日本の“スパイ史”に残るような大変な出来事が起きている。

 2022年10月、中国と日本の架け橋として活動していた「日中青年交流協会」の元理事長である鈴木英司氏が、中国でスパイ活動の罪で6年間投獄された後に解放され、帰国した。鈴木氏は2016年に逮捕されるまで、200回以上も中国を訪れて日中の交流のために活動していた人物だ。

 日中のために尽力していた鈴木氏が実刑判決を受けるのは、親中派の人々にとって衝撃的だったという。その鈴木氏が『中国拘束2279日』(毎日新聞出版社)という本を上梓した。中国当局から「日本の公安調査庁のスパイ」と認定されて有罪判決を受けた鈴木氏は、この本の中で明確に自身は「スパイじゃない」として“ぬれ衣による逮捕・拘束”だったと批判している。

 その鈴木氏の帰国とその著書が、いま日本のインテリジェンスに携わる人々の間で大きな波紋を呼んでいるのだ。

 例えば、著書で鈴木氏はある「疑惑」を主張している。その疑惑とは、本の帯にも書かれている「公安調査庁に中国のスパイがいる」というものだ。事実であれば日本の情報機関である公安調査庁にとっては一大事であり、その存続すら揺るがしかねない大スキャンダルとなる。

 そこで、本稿では次の2点について、筆者の取材からの情報も合わせて考察してみたい。

日中友好活動に長年携わってきたのに

Img_76a1264f1f537135f815405badf8202d1696  1つ目は、鈴木氏が、日本のために働いたスパイだったのかどうかだ。もう1つは、先に述べた公安調査庁の内部に中国のために働く「二重スパイ」がいるのかどうか、である。

 まず簡単に、鈴木氏の来歴を見ていきたい。

 著書によれば、鈴木氏は大学卒業後に労働組合職員となる。少年時代から中国に対する関心を持っていたところ、上部団体の日本労働組合総評議会(総評)が中国の労働組合のナショナルセンター・中華全国総工会と交流を開始したことで、その事務局を担当。それを機に度々訪中するようになる。社会党の竹内猛衆議院議員(当時)の秘書を務めた時期もある。また竹内氏の秘書になる前から、社会党の土井たか子衆議院議員(当時)とも親しく、土井事務所が発行した通行証で国会にも通っていたという。

 2016年、日中青年交流協会の理事長として日中交流イベントの打ち合わせのために北京を訪問したところ、帰国直前になって、中国の情報・防諜機関である北京市国家公安局に拘束された。

 そして裁判で有罪となり、6年間刑務所で過ごした。中国と日本のために尽力してきた鈴木氏の失望感は計り知れない。

公安調査庁はスパイ組織か

 本から抜粋すると、有罪になった罪状はこうだ。

(1)中国政府が「スパイ組織」と認定する公安調査庁から、鈴木氏が「任務」を請け負い情報を収集し報酬を得ていた

(2)2013年12月4日、鈴木氏が北京で湯本淵(タン・ベンヤン)さん(在日中国大使館の元公使参事官で、すでに中国に帰国)と会食した際、湯さんから北朝鮮関係の情報を聞き、その内容を公安調査庁に提供した

(3)提供した内容は「情報」であると中華人民共和国国家保密局に認定された

 ここからわかるように、中国当局は鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」と認定している。念のために公安調査庁について説明すれば、法務省の外局で国内外の情報を収集・分析している“スパイ機関”だ。アメリカのCIA(中央情報局)からは、日本側のカウンターパートの一つと認識されている。事実、公安調査庁の職員はCIAで情報収集研修をするなど関係は近い。

 公安調査庁は、基本的には対外情報活動はしていないことになっているが、実際は中国などで情報活動を行ってきた。事実、これまで中国当局に逮捕されてきた邦人の中にも、「公安調査庁のスパイ」だった人物が存在する。

 ところが鈴木氏は、公安調査庁をスパイ組織であるとは思っていなかったようだ(少なくとも、そう主張している)。

 鈴木氏は著書でこう述べている。「『公安調査庁はスパイ組織でもなければ、謀略機関でもない。CIAとはまったく違う』と主張したが、どうやら中国政府は公安調査庁をスパイ機関と認定しているようだった」

 残念ながら、この言い分は世界的には通用しない。他国から見れば公安調査庁は、れっきとした日本の情報機関=スパイ機関である。

 鈴木氏は、その公安調査庁の職員らと情報交換をしていたことは認めている。しかも、中国での取り調べの際に、公安調査庁の職員たちと見られる20人ほどの顔写真を中国当局から見せられて、そのうち4人は知り合いであると答えている(なぜ中国当局が写真を持っていたのかの疑問はまた後に触れる)。

 それだけ公安調査庁の職員と接触があれば、鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」とする中国の認識のほうが世界の常識に近いと言わざるを得ないのではないだろうか。筆者は中国の肩を持つ気はないが、いくら鈴木氏が「公安調査庁が情報機関だとは知らなかった」と抗弁しても、それだけでは中国当局を納得させられないだろう。

長年にわたって監視されていた鈴木氏

 さらに、(2)については、2013年12月に、北京で在日中国大使館にも勤務していた中国人外交官である湯本淵氏と食事をしているときに、鈴木氏は北朝鮮情勢について質問したという。その質問が、スパイ活動の一環で、その情報を公安調査庁に提供したと認定されている。

 実はこの会食の場には、毎日新聞の政治部副部長(当時)も同席していたと、鈴木氏は明らかにしている。そういう縁から、今回の本も毎日新聞出版社から出版されたのかも知れない。

 この食事の席で湯氏から聞いた内容が公安調査庁に伝わったのか否か、あるいは伝わっていたとしたらどう伝わったのかは明らかになっていない。ただ、もし何かしらの形で伝わっていたのなら言い訳は難しいだろう。ちなみに判決文によれば、中国当局は2010年から鈴木氏を公安調査庁のスパイであるとみて捜査を行っていたという。目をつけられていたということだ。

公安調査庁との間で金銭授受は本当になかったのか

 筆者は、鈴木氏が解放され帰国してから、政府関係者や公安関係者、警察などに取材を続けてきた。ある公安関係者は、匿名を条件にこう語っている。

「中国に利することになるのであまり言いたくはないですが、鈴木さんは公安調査庁から金銭を受け取っていました。さらに中国で捕まっている間も、鈴木氏側に(政府から)補償がなされていたと認識している」

 この“証言”だけでは断定はできないだろうが、事実とすれば鈴木氏は公安調査庁のエージェントとして中国で活動していたことが疑われる。

 この点について、鈴木氏はどう答えるのか。筆者はそれを確認すべく、鈴木氏へのインタビュー申請をしたが断られた。

 もっとも鈴木氏は著書の中で、「私は公安調査庁から任務を言い渡されたこともなければ、報酬を受け取ったこともない」「もし公安調査庁がスパイ組織だと知っていたら、そもそも私は同庁の職員とは付き合わない。任務ももちろん帯びていない。任務だとすれば、私の旅費、ホテル代を公安調査庁が支払い、何々について調べろと命じられ、私がそれに応え、さらにレポートにして出すだろう」と否定してはいる。

 ただ別の公安関係者たちからはこんな声も聞かれる。

「日本政府は、海外で情報活動していることを建前上、認めていないので、政府は鈴木氏の(公安調査庁から依頼を受けたことはないとの)発言を否定することはできません」

 もしも公安関係者の金銭提供の話が事実だとすれば、これは情報機関から金銭を受け取っていたことになり、それは「スパイ活動」と指摘されても仕方がない。世界的に見れば、それが普通である。もちろん愛国的に、情報提供に金銭を受け取らない協力者もいるが……。この点についての真偽は、今後も取材していきたい。

中国情報当局は公安調査庁関係者の写真を撮りまくっている

 本稿で考察する2点目は、鈴木氏が主張する「公安調査庁に中国のスパイがいる」という問題だ。本当にいれば、大変な事態で、公安調査庁の内部情報が筒抜けになっている可能性がある。

 ただ鈴木氏がそう主張する根拠は少し弱いと言わざるを得ない。

 鈴木氏は、取り調べで公安調査庁の職員たちと見られる20人ほどの顔写真を中国当局から見せられたとし、そんな写真を持っている中国当局は、公安調査庁に協力者がいるのではないかと指摘している。

 もちろん、その指摘が事実である可能性がある。

 ただこの話を聞いて思い出したのが、筆者が5年ほど前に、公安調査庁職員から聞いた話だ。

 その当時、公安調査庁は、中国の関係者が日本国内の公安調査庁の関係施設に出入りする人たちの顔写真を望遠レンズを使ったりしながら撮影していることを把握していると言っていた。それについては、2020年に出版した拙著『世界のスパイから喰いモノにされる日本』にも書いている。であれば、公安調査庁職員の顔写真を豊富に持っていても不思議はない。

 さらに、鈴木氏は著書の中で、裁判所に向かう護送車に乗り込んで座ると、なんとその向かい側の席にやはり当局に拘束されて手錠をはめられて座っている湯本淵氏とバッタリ再会したと書いている。そして護送車の中で、スパイ容疑の被告である鈴木氏に、中国人容疑者である湯本淵氏がこう語りかけたという。

「日本の公安調査庁の中にはね、大物のスパイがいますよ。ただのスパイじゃない。相当な大物のスパイですよ。私が公安調査庁に話したことが、中国に筒抜けでしたから。大変なことです」

「日本に帰ったら必ず公表してください」

 筆者はこのやり取りにも違和感を抱いている。こんな偶然を、果たして中国当局が許すのだろうか。普通に考えれば、当事者同士で会話をさせれば、口裏を合わせられる可能性もある。結果的に、鈴木氏は湯本淵氏との約束をメディアでの活動や今回の出版で果たしている。

これを機に日本のインテリジェンス体制を見直すべき

 また鈴木氏の出版やメディアでの活動は、日本の情報機関の活動に大きな影響を及ぼしている。公安調査庁では、まず中国国内の情報活動を停止することになったという。「公安調査庁内部に中国のスパイがいる」と大々的にぶち上げられたのだから致し方あるまい。そして、本当に中国人スパイが紛れ込んでいるかどうかは別として、これが日本のインテリジェンスにとっては大打撃であるのも間違いない。

 逆に言えば、鈴木氏が本当に公安調査庁のスパイだったのか否かはともかく、中国当局としては日本の情報活動を強く牽制することができたことになる。

 日本は、世界各国が当たり前のようにやっているサイバー攻撃やハッキングによるサイバースパイ工作も他国に対して仕掛けることができないし、海外でのインテリジェンス活動も“表向き”は行っていないことになっている。その上、今回の件で重要なライバルである中国からの情報もこれまで以上に得られなくなる。少し前には、ロシアのウラジオストクでも日本人領事がスパイ容疑で一時拘束されたこともあり、ロシアにおける情報活動の動きも鈍っている。

 果たしてこのままで日本の安全保障や経済安保は大丈夫なのだろうか。むしろ、いま日本のインテリジェンス分野は重大な岐路に差し掛かっていると認識すべきなのではないだろうか。

 筆者は、日本は最近起きている数々のスパイ関連の問題から目を背けず、正面から日本のインテリジェンス活動をどうしていくのかを協議すべき時に来ていると考えている。今こそ、日本がインテリジェンスの世界でも「普通の国」になるチャンスとも言える。

 たとえばこうだ。日本に対外インテリジェンス機関を設立し、反スパイ法を制定する。そうして日本政府が公式に国外での対外スパイ活動をバックアップし、日本のためのインテリジェンス収集や工作活動までできる諜報員を育てていく。国家予算をつけ、活動の範囲や保護規定もはっきりと決めることで、海外でインテリジェンス活動をする邦人の保護活動にも寄与することになるだろう。

 いま動かなければ、鈴木氏のように中国でスパイとして拘束されてしまう邦人(もちろん日本の情報機関の協力者ではない人も含む)は今後も後を絶たないだろう。

 スパイ防止法がなく、海外での諜報活動をおこなう機関もなし、更にはサイバー攻撃も出来ない日本は、まさにスパイ天国であり、またそう言われても仕方がないでしょう。

 特定秘密保護法でさえ、成立するまでの野党やメディアの徹底的な反対運動があったような国で、スパイ防止法を制定しようとすれば、またもや反対の大合唱が起こるものと思われます。

 しかしそんな反対を押し切ってでも、スパイ防止法を制定し、海外諜報機関を設立し、サイバー防御と攻撃が出来る組織と要員を準備しなければ、普通の国にはなり得ません。中国その他の非友好国からの情報攻撃にさらされている現状を、是非変えていく必要が強く求められます。


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2023年5月 1日 (月)

小西、杉尾、石垣、福山、蓮舫議員の国会質問に見る、立憲民主党という存在の耐えられない軽さ

13_20230501090901  アゴラ主宰の池田信夫氏が、「モンスタークレーマー」と名付けた立憲民主党。日本を取り巻くエネルギー、食料、安全保障環境が激変する中、現在そして未来に向けて、何をどうするかという議論に向かうことなく、ただひたすらスキャンダルの掘り起こしとその追求に明け暮れするその姿は、国民の目にはまさにクレーマーとしか映りません

 産経新聞論説委員兼政治部編集委員の坂井広志氏が、月刊hanadaプラスに寄稿した記事に、関連した記述がありますので取り上げます。タイトルは『小西、杉尾、石垣、福山、蓮舫……立憲民主党という存在の耐えられない軽さ』(4/27公開)で、以下に引用します。

◇    

緊迫する国際情勢を受けて、立憲民主党はさぞかし安全保障をめぐる問題に真摯に向き合うと思いきや、そうではなかった――。自称〝憲法学者〟である小西洋之議員だけではない。立民の質問には、あきれるほど軽く、また本質から外れたものが実に多くみられる。

****************

全国民の代表たる国会議員の質問か

今通常国会における立憲民主党の質問には、あきれるほど軽く、また本質から外れたものが実に多くみられる。それが全国民の代表たる国会議員の質問か、と言いたくなるほどである。

言うまでもなく、憲法第43条は「両議員は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と定めており、衆参両院議員は全国民を代表する存在だ。一部の有権者の意向を踏まえていればよいというわけではない。もっと真剣に国益を考えてもらいたい。

「近代日本にとって、大きな時代の転換点は2回あった。明治維新と、その77年後の大戦の終戦だ。くしくもそれから77年がたった今、われわれは再び歴史の分岐点に立っている」

岸田文雄首相のそんな施政方針演説で始まった通常国会。緊迫する国際情勢を受けて、立民はさぞかし安全保障をめぐる問題に真摯に向き合うと思いきや、そうではなかった。主張していることは、防衛力を強化し、抑止力を高める方向とは真逆だった。これでは国民を守ることは到底できまい。

ロシアによるウクライナ侵略はいまなお続き、中国の習近平国家主席は「偽装仲介」よろしくとばかりに、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状が出されたプーチン大統領に会いにいくなど、悪の枢軸国は結束を強めている。

一方で北朝鮮は弾道ミサイルを相次いで発射し、7回目の核実験実施はもはや時間の問題といえる。

安倍晋三元首相が繰り返し強調していた「台湾有事は日本有事」という認識を立民はもっと強く持たなければ、信頼は得られないことを肝に銘じるべきだ。

西村智奈美「ネガティブ」論争

政権を獲るつもりはもうないのか、と言いたくなるほど、衆院予算委員会での立民の質疑は、現下の国際情勢に対する危機感を疑いたくなるものばかりだった。

まずは西村智奈美代表代行から。

西村氏はかねてジェンダー平等を訴えてきたことで知られ、令和3年の立民代表選では菅直人元首相のグループから担がれる形で出馬し、落選するも、泉健太代表のもとで幹事長の座を射止めた。党内の左派勢力を代表する政治家といっていいだろう。

経験不足ということもあり、党運営を巡る手腕は未熟だった。このため、泉氏が頼った西村氏の後任は、ベテランの岡田克也幹事長だった。

予算委で西村氏がこだわったのは、LGBTを巡る問題だ。

岸田首相が夫婦別姓や同性婚について「制度を改正するということになると、家族観や価値観、そして社会が変わってしまう課題なので、社会全体の雰囲気のありようにしっかり思いをめぐらせたうえで判断することが大事だ」と答弁したことについて、西村氏は「ネガティブな発言だ」として、発言の撤回を求めた。

これに対し岸田首相は「変わってしまうから(同性婚などを)否定したというのではなくて、変わるから議論をしましょうという趣旨で発言した」と理解を求めた。しかし、西村氏は納得せず、こう言い返した。

「ネガティブと読むのが言語的にも日本語的にも正しい。『社会が』という言葉を使ってポジティブな動詞をつけると、おかしな文章になる。社会が豊かになってしまう。おかしいですよね。ネガティブな動詞をつけるとしっくりくる。社会が混乱してしまう。総理、そこまで言うなら『社会が』を主語にして『てしまう』という言葉を使ってポジティブな例文を作っていただけませんか」

一体、何の授業をしているつもりなのだろうか。変わることに対し、議論するのは当たり前ではないか。ネガティブだろうが、ポジティブだろうが、賛否あるなら慎重に議論することが大事であり、それ以上でも、それ以下でもない。

西村氏は「撤回する最後のチャンスを出したが撤回されなかった。残念です」と捨てぜりふを吐いたが、岸田首相にしてみれば、撤回のチャンスがほしいとは全く思っていなかったのではないか。

朝日新聞出身議員からの注文

政治家は言葉が命である。それは間違いない。しかし、国語の授業のようなやりとりをされても困る。揚げ足取りの議論は建設的ではない。

朝日新聞出身で元政治部記者の山岸一生衆院議員の発言も、妙なところで言葉遊びをしている印象は否めなかった。

「私は総理の言葉を分析をして、気がついたことがあります。最近総理、言葉の選び方が変わりました。去年の今頃、『検討』ばっかりおっしゃるので、検討使というあだ名がついていました。ところが、最近『検討』と言わなくなった。何が増えたのかと調べてみたら、増えた言葉は『説明』だった」

新聞のちょっとしたコラムで、その分析結果とやらを披瀝するのは、ありだと思うが、予算員会で言われても、「だからなに?」とツッコミたくなる。

山岸氏はさらに「増えているのは『説明』という単語であって、中身の説明を国会で全然おっしゃっていない。私、25分、時間もらっているのでお願いがあります。せめて25分間だけでも『説明』という単語に逃げないで、中身の説明をしてもらえないか」と注文をつけた。

これに対し岸田首相は「『説明』という言葉を使わないで説明しろということでしょうか」と苦笑いし、「要はより中身を答弁しろということかと思います。最大限、政府としての考え方を聞いていただけるよう努力します」と赤子の手をひねるようにかわした。

25分間を有効に使いたいのなら、このやり取りをした数分間を別の問題に当てたほうがよかったのではないだろうか。

小西洋之「超一級の行政文書」と豪語

政府が反撃能力の保有を含む国家安全保障戦略など安保3文書を閣議決定したのは、昨年12月だ。このため、昨年秋の臨時国会では踏み込んだ安保論議が展開されなかった。立民幹部は昨年末、「臨時国会で議論できなかった分、通常国会で安保政策を戦わせる」と鼻息を荒くしていたが、その意気込みはどこへやら。

参院予算委では放送法を巡る問題に焦点があたった。いや、立民が無理やり焦点をあてたといったほうが正確だろう。その立役者は小西洋之参院議員だ。

小西氏は放送法に関する総務省の行政文書を巡り、高市早苗経済安全保障担当相を執拗に攻撃し、議員辞職を迫ったが、総務省が調べたところ、全48ファイルのうち半数以上の26ファイルは作成者が確認できなかった。

作成者だけでなく配布先が不明なものもあり、内容も不正確。小西氏は「超一級の行政文書」と豪語したが、官僚の備忘録でしかないというのが、筆者が文書を読んだ感想である。これでどうやって高市氏を大臣辞任や議員辞職に追い込もうというのか。行き当たりばったりの戦略なき追及だったといえる。

この問題は安倍氏に国会審議などで徹底的に攻撃され、国政選挙では完敗だった立民の意趣返しという側面が多分にあることを指摘しておきたい。岸田首相がどこかひとごとのように見えるのは、このためだ。

立民は「政治的公平」の解釈が、政治的圧力によって変更され、ゆがめられたと主張したかったようだが、正確性が担保できない文書で、放送行政がゆがめられたかどうかを立証するのは極めて難しい。

そもそも、政治的圧力の有無にかかわらず、解釈変更ととらえることに無理がある。政治的公平を大きく逸脱する番組が、ひとつだけだからという理由で許されるほうがおかしい。つまりは、平成27年5月の高市氏の答弁「ひとつの番組のみでも極端な場合は政治的公平を確保しているとは認められない」は、政府がいうように補充的説明ととらえるべきなのである。

福山哲郎の印象操作

旧民主党時代、「偽メール事件」があったのを覚えておられる読者は多いだろう。

平成18年の通常国会で、民主党所属の衆院議員がホリエモンこと堀江貴文氏と自民党幹事長だった武部勤氏の間に不当な金銭の授受があったと追及した騒動のことだ。証拠として出したメールは偽物だったことから、追及した議員は辞職し、その後、自殺。当時の前原誠司代表ら執行部は総退陣に追い込まれた。実に深刻な「事件」だった。

立民幹部は放送法を巡る問題を「偽メール事件の反省から慎重にやっている」と話していたが、作成者不明という点で、今回の問題と偽メール事件は似ているといわざるを得ない。内部文書が流出しているという意味では、今回のほうが事態は重大と捉えることもできる。

それでも立民は何としてでも放送法の問題で政権にダメージを与えたかった。そこで福山哲郎元幹事長は偽メール事件ではなく、「森友学園」と「加計学園」を巡るいわゆる「モリカケ問題」と結びつけ、印象操作をするのであった。

少々長いが、参院予算委で福山氏が何と言ったか、紹介したい。

「総務大臣が『捏造』と言っている限り、総務省は『これらは全て正確です』と言えなくなっている。森友・加計学園(問題)も同じだったんですよ。安倍総理は『森友学園に関わっていたら辞める』と言ったことで、どれほどの官僚に迷惑が及んだのか。財務省の赤木さんは命まで落とされましたよ。佐川局長は改竄の責任を負わされましたよ。それは、官僚が正確に文章を作成していたからなんですよ。文書を公開したら安倍総理、昭恵夫人の関わりが明確になる。逆に言うと改竄せざるを得なかったんです。それぐらいこの国の公文書は丁寧に正確に作られている」

いつから立民は佐川宣寿元理財局長に同情するようになったのだろうか。この問題を追及しているときは、佐川氏が改竄を指示したとして、佐川氏を徹底的にたたいたのではなかったか。

そもそも、モリカケ問題は改竄が問題になったわけだが、放送法の問題は不正確な文書である点が問題なのである。モリカケ問題とはことの性質が違うとみるべきだ。福山氏はあたかも似たような構図であるかのように語っているが、似て非なるものであり、むしろ旧民主の偽メール事件のほうに似ている。

検察官気取りの杉尾秀哉

話を元に戻す。立民は当初、礒崎陽輔首相補佐官(当時)が総務省側と打ち合わせした内容が、そのまま平成27年5月の高市氏の答弁になっているとして、「礒崎氏が総務省と打ち合わせをしていたことを知らないはずはない」とみていた。

高市氏が礒崎氏が裏で動いていたことを知らないと言い張ると、杉尾秀哉議員は参院予算委でこう声高に語るのだった。

「高市大臣は外されていたんですよ。礒崎さんがシナリオをかいて総務省とやったんですよ。その結果で答弁そして質問があったということなんですよ。違いますか」「なぜ事前のシナリオ通りの質問と答弁だったんですか」と畳みかけた。

高市氏は「そういうことを私に聞かれてもわかりません」と答えるしかなかった。それはそうだろう。知らないのだから、答えようがない。検察官気取りもいい加減にしてもらいたい。

杉尾氏は「問題の本質は放送法の解釈が何の権限もない補佐官の圧力でゆがめられたということなんです。これが問題の本質であって磯崎さんの関与うんぬんではないです」とも語ったが、礒崎氏の関与は、すなわち政治的圧力だとして、問題視していたのではなかったのか。

もはや何を言っているのか、支離滅裂である。

杉尾氏は、総務省が行政文書の正確性について調査したことにも触れ、「総務省の現職の皆さんがどれだけこの調査に時間をかけたのか。膨大な時間をかけている。そうしたことも含めた責任を大臣は感じていないのか。大臣をお辞めください」と無理やり理由をつけて、辞職を求める始末だった。自分たちが作り上げたストーリーが崩れた瞬間だった。

礒崎氏の政治的圧力も、礒崎氏と高市氏との連携も証明できず、たどり着いたロジックは(ロジックといえるほどのものではないが)、官僚に膨大な時間をかけて調査させた責任をとって大臣辞任を、ということだった。白旗を上げたに等しい。

杉尾秀哉の質問はレベルが低い

放送法を巡る問題に限らず、杉尾氏の質問はレベルが低い。野党議員だから政府を批判するのは当たり前と聞き流すわけにはいかない。

国家安全保障戦略など安保3文書に盛り込まれた反撃能力の保有について問われると、岸田首相は「ミサイル攻撃から国民の命を守るためのものだ。ミサイル攻撃から国民の命を守る盾のための能力だ」と答弁した。

杉尾氏の反論はこうだ。

「そういうふうに言うのであれば、ICBM(大陸間弾道ミサイル)だって、空母だって、長距離爆撃機だって、全部国民の命と暮らしを守るためのものじゃないか。今の論理で言えば、全てこうした兵器も含めて、これも盾であって矛ではないということになるんですか」

へ理屈とはこのことである。

首相が「反撃能力というものは、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力として、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができる」と説明すると、「あくまでも今答弁あったように、可能性を低下させるものに過ぎない」とあくまでも否定的にとらえるのである。「過ぎない」といっても、武力攻撃を受ける可能性をいかに低下させるかは極めて大事なことである。

杉尾氏は国会議員として、国民の命を守る責務についてどう考えているのだろうか。結局、立民に政権を任すことができないのは、この議論が象徴しているように、立民にはまともな安保政策を打ち立てることができないと、多くの国民が見抜いているからにほかならない。

自称〝憲法学者〟がサル発言

小西氏はその後、週1回の開催が定着している衆院憲法調査会を念頭に「毎週開催は憲法のことなんか考えないサルがやることだ」「私は憲法学者だ。憲法学者でも毎週議論なんてできない。何にも考えていない人たち蛮族の行為だ。衆院なんて誰かが書いている原稿を読んでいるだけだ」と暴言を吐いて大炎上した。

この発言が報じられると、今度はツイッターに「偏向報道を続けるNHKとフジテレビに対し、放送法などあらゆる手段を講じて、その報道姿勢の改善を求めたい」「元放送政策課課長補佐に喧嘩を売るとはいい度胸だ」と投稿するなど、恫喝まがいの行為に出た。

小西氏が問題視した「政治的圧力」とやらを自らが実行するという、これ以上にない自己矛盾をしてみせたわけだ。

超ド級のブーメランとなって返ってくるあたりが、いかにも立民議員である。

これを受け、泉代表は参院憲法審査会の野党筆頭幹事から更迭すると発表したが、後任は小西氏同様にスタンドプレーが甚だしい杉尾氏だった。案の定、杉尾氏は参院憲法審で緊急時に限り国会議員の任期延長を可能にさせるための改憲について「私たちの会派は明確に反対する」と踏み込んだ発言をし、衆院憲法審査会で立民の奥野総一郎議員は「個人的意見だ」と釈明に追われた。

議論の撹乱要因になることが初めから想定された杉尾氏を後任に送り込むとあっては、党側が小西氏の発言について本当に反省しているのか疑わしい。

石垣のりこのとんだ勘違い

立民で薄っぺらい議論を展開する議員はほかにもいる。石垣のりこ氏である。石垣氏もご多分に漏れず、放送法を巡る問題を取り上げ、高市氏を批判したが、追及がいかにも荒っぽい。

「とある月刊誌のインタビューのなかで高市大臣はこのように答えている。『官僚が政治家を殺すのは簡単なんです』。真逆ですよね。政治家が官僚を壊している。日本の統治機構を破壊しているのは高市大臣自らじゃないのか。答弁は結構です」

さんざんこき下ろした上に、反論させようとしないとは、議会人としていかがなものか。これにはさすがに、ほかの議員から「そこまで言ったら(反論させるべきだ)」との声が上がったが、それでも石垣氏は「いやいや、質問してないんで」と反論封じに躍起となった。

最終的に末松信介委員長が、挙手をしていた高市氏を指名。すると高市氏はこう語った。

「正確におっしゃってない。『官僚が議員を殺すのは簡単なことだ』というのは私の言葉ではなく、そうおっしゃっている議員がいる旨でございます」

委員会室には「訂正しないとだめだ」などと石垣氏へのヤジが飛び交った。

石垣氏は「同僚議員たちからは『官僚が政治家を殺すのは簡単なんですね』というような発言があったということで、これは失礼しました」とばつが悪そうだったが、引くに引けなくなったのか、こう続けて話題を打ち切った。

「でも、(同僚の)みなさんからそのように捉えられてしまうということで、高市大臣の捏造発言によって行政の統治機構は壊される。早い決断をお願いしたい」

一体何の決断ですか? と言いたくなる。これまた支離滅裂である。

しゃもじ論争に蓮舫参戦

その後、話題を切り替えて持ち出したのは、岸田首相がウクライナ訪問の際にゼレンスキー大統領への贈答品として「必勝」の文字が記されたしゃもじを持参したことについてだった。イチャモンの中身はこうだ。

「選挙とかスポーツ競技ではありませんので、日本がやるべきはやはり、いかに和平を行うかであって、『必勝』というのは、あまりにも不適切ではないかと思うのですが、その点いかがでしょうか」

「平和ボケ」もここまでくると重症だ。

ちなみに、蓮舫参院議員もツイッターで「選挙と戦争の区別がつかないとしか思えないのです。誰も止めない、身内が秘書官でいるのに彼も止めない、本人も躊躇しなかったのだろうか」とつぶやいている。

しゃもじは首相の地元・広島の名産である。「敵を召し(飯)取る」との意味がある。売られている商品に書かれている文字は「必勝」のほか「合格」「家内安全」「商売繁盛」などがある。要は縁起物であり、そこに書かれた文字に目くじらを立てる話ではない。なおかつ「必勝」という言葉に筆者は何の違和感もない。

首相は「ウクライナの方々は祖国や自由を守るために戦っている。この努力に敬意を表したいと思いますし、わが国としてウクライナ支援をしっかり行っていきたい」と答弁した。

極めて妥当な認識だ。自由と独立を守り抜くための「必勝」であり、そのために日本はウクライナや西側諸国と連帯しなければならない。その西側諸国はロシア軍を撤退させるため、ウクライナに支援をし続けているのである。

「必勝」を批判する石垣氏は、この現実を、そしてことの深刻さを理解していないのではないか。しゃもじに書かれた文字が「和平」「平和」ならよかったのか。左派系の人たちは憲法9条を唱えていれば平和が保たれると考えているようだが、しゃもじ論争もそれと似たような話だ。

国会でこれほど陳腐でのんきな議論をしているのは、世界広しといえども、日本の立憲民主党だけだろう。

 坂井氏のこの記事を読むにつけ、立憲民主党の議員の体たらくな状況が改めてはっきりしてきます。冒頭述べたような日本の現状を全く顧みず、ひたすら政府を批判するだけ、それも論理矛盾を抱えたまま上から目線で追求する姿は、一般の国民から見てどう映るのでしょうか。 

 政治不信、特に若者の政治離れの大きな要因がここにあると思います。そして権力批判をよしと思う一定数の有権者に支持され、国会議員になったがいいが、ろくに研究・学習もせずタブロイド紙並みに、レベルの低い質問しかしていません。

 このまま行けばおそらく、何度も述べたように、社民党と同じ道を辿ることでしょう。またそうなった方が日本の将来のためにも、よいことだと自信を持って言えるでしょう。


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