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2023年5月 3日 (水)

中国、もう一つの安全保障上のリスク:「世界一の技術力とシェア8割」 日本の国境を脅かすドローン大国化

17_20230501164801  いつの間にか、と言った表現が当たっているかどうかは分りませんが、今やドローンは中国が生産量、技術とも世界一となっています。当初は遊び道具的な存在だったドローンも、いまや兵器にもなる大型化、高性能化が一気に進みました。所謂小型無人機の登場です。

 中国における、このドローンの現状を週刊現代が特集で報じています。タイトルは『「世界一の技術力とシェア8割」もし中国のドローンなら「陸自ヘリ撃墜」は朝メシ前?…日本の国境を脅かす「中国のドローン大国化」がヤバすぎる』(4/26公開)で、以下に引用して掲載します。

SF映画『スター・ウォーズ』に登場する近未来の戦闘が現実のものとなりつつある。中国のドローン兵器は自軍の血を流さず、どこまでも合理的に敵軍を殲滅することができる。その実態に迫る。

中国がドローン大国に

4月6日、沖縄県宮古島沖で陸上自衛隊のヘリコプターが突如、消息を絶ち、19日までに機体の一部と6人の隊員の遺体が海底から引き揚げられた。墜落した原因は今も調査中だ。

近年、沖縄沿岸、そしてその上空に中国の不審船や航空機が侵入を繰り返し、事故当日も中国軍の情報収集艦が沖縄本島と宮古島間を通過していた。そのため、事故発生当初に関与を疑った人は少なからずいるだろう。

防衛省は「攻撃の痕跡はない」とその可能性を否定した。実際、今回の事故に中国軍は関与していないと見られる。

ただ、中国軍にとって、現実に海上を飛行する自衛隊のヘリを撃墜することは赤子の手をひねるようなものだ。それを可能にするのが、当局が急速に開発を進める最新ドローン兵器である。

中国は今や「ドローン大国」として君臨し、その開発力は日に日に進化している。

ドローン兵器が軍の主力に

「現時点で中国が持つドローン兵器の技術は世界一であると考えてもいいでしょう。武器の国際見本市を見ると、中国のドローン技術は『すべて』を持っているからです。同じくドローン大国であるトルコ、イスラエル、そして対立する米国の技術すらもコピーしているのです」(ドローン兵器に精通するフォトジャーナリストの柿谷哲也氏)

中国はDJIなど巨大ドローン企業を有し、世界シェアは'22年時点で、約8割を占める。習近平国家主席は「軍民一体」となり、ドローンの軍事利用を進めてきた。

「中国には米軍に対抗する際、通常の兵器や人員を増強するだけでは太刀打ちできないという認識があった。そこで習近平は'20年に『ドローンを軍の中心戦力に据える』という方針を示し、開発を進めてきました」(安全保障に関する先端技術を専門とする慶應義塾大学総合政策学部教授の古谷知之氏)

習近平の言葉は荒唐無稽な夢想ではなかった。'23年2月、中国航空力学研究開発センターが、AIが操縦する無人機と有人機を実戦形式で戦闘させたところ、前者が勝利した。決着はわずか90秒でついたという。

ドローン兵器はさらに強力に

性能もさることながら、恐ろしいのは生産力だ。ストックホルム国際平和研究所によると、中国は過去10年間で282機の軍用ドローンを輸出。これは米国の約24倍に当たる。主要取引先は紛争が止まないアフリカ、中東などの途上国だ。

ここで、中国が「ただ儲かっているだけ」なら問題ではないだろう。しかし、真の目的は金儲けではない。中国は「実戦データ」を収集しているのだ。つまり、売れば売るほどドローン兵器は進化することになる。

「ドローンは戦場でしか分からないニーズに応じて、装備を変えるなどして改良されていきます。実際、中国製のドローンは中東やアフリカの紛争地帯で導入されています。直近の実戦経験をAIが学習し、機能も改良することで中国のドローン兵器はさらに強力になっています」(元航空自衛隊空将補の杉山政樹氏)

そしてその先に、習近平が見据えるのが台湾制圧だ。中国としては、台湾防衛における最重要拠点・沖縄も同時に無力化する必要がある。

自衛隊はすでに消耗状態

日本政府は防衛費に過去最大の6兆8219億円を計上し、有事に備えている。だが、もう手遅れかもしれない。ドローン兵器による作戦はすでに始まっているからだ。

「TB-001Aという偵察・攻撃型ドローンが配備されているのですが、すでに沖縄本島や宮古島周辺を飛行しています。制圧作戦を行うにあたり、最適な高度、季節風、天気などのデータを収集していると思われます」(情報安全保障研究所首席研究員の山崎文明氏)

こうしたドローンの接近に自衛隊はスクランブル発進で対応している。否、「させられている」のだ。空自は現在、日常化するドローン接近のせいで、燃料が不足。さらに、スクランブル発進は1回で一機あたり最低400万円以上のコストもかかる。中国は安価なドローンを飛ばすだけで、情報収集を行うだけでなく、自衛隊を消耗させ、資金を削っているのだ。

2023042700109403gendaibiz0021view 左の写真は台湾、沖縄制圧作戦に導入される可能性があるドローン兵器の一覧だ。順番に見ていこう。

強力な無人兵器

まず脅威となるのが、'22年11月に発表されたばかりの超大型偵察・攻撃型無人機の翼竜3だ。全長は約12m、翼幅約24mに及ぶ。設計担当者は「最大16個のミサイル、爆弾を装備可能で、搭載量はあらゆる面で既存の無人機を超越する」と中国メディアに語った。

「特筆すべきは大型化でパワーアップし、航続距離1万km、航続時間40時間以上という耐久力です。米軍のグアム、ハワイ基地までもが作戦範囲に入ります」(英誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』東京特派員の高橋浩祐氏)

世界初となる「ドローン母艦」である珠海雲も登場し、'23年1月に就役。自身も全長88・5mの無人艦であり、12時間の単独航行が可能だという。中国当局は「科学調査船」としているが、軍事利用される可能性は高い。搭載された無人観測システムは監視や偵察に活用できるうえに、甲板に小型攻撃ドローンを数十機積むこともできる。

徘徊型ドローン、ZT-180は目標に群れで突っ込む飽和攻撃を行う。同時運用可能機数は最低でも500機だという。

「詳細はまだ不明ですが、自立運航能力を持ち、管制が必要ないとされています。さらに、低空で侵入してくるため、防衛レーダーに引っかからないのが厄介です。爆破力はビルの角が欠ける程度ですが、大量に飛来すれば被害も甚大となります」(前出・山崎氏)

極超音速ドローン、MD-22の最大飛行速度はマッハ7(時速8575km)を超え、最大飛行高度は近宇宙にも及ぶという。具体的な性能は明かされていないが、当局がとくに力を入れて改良を進めているだけあり、大きな脅威となるだろう。

米国からウクライナに700機以上が供与され、大きな戦果を上げた小型攻撃ドローン、スイッチブレードに匹敵する能力を持つのが飛鴻901だ。

「地上からボタン一つで発射でき、戦車の弱点である車体上部を狙う『トップアタック』を敢行できます」(前出・高橋氏)

ロボット犬が敵軍を蹂躙

大型無人偵察・攻撃機、彩虹7はレーダーに探知されにくいステルス性能を持つ。対空ミサイルに加え、レーザー光線と高出力マイクロ波を搭載できるとされる米国の超攻撃的無人ステルス戦闘機X-47Bから技術を盗み、同等の能力を持つとされる。

そして今後、地上戦の主役となり得る無人兵器がM-81である。犬を模した軍用ロボットで、広義のドローン兵器に含まれる。背中に対戦車ミサイルや機関銃を装備し、戦場を駆けるという、まさに近未来の兵器だ。ロシア製だが、中国との間で1兆円を超える商談が成立し、アリババが類似の機体を開発している。

これらの兵器は日本が持つ既存の防衛技術では、迎撃が困難なものばかりだ。前出の山崎氏が語る。

「中国はドローン防衛用の電子妨害システムに対抗するため、電磁シールドを貼った機体も開発済みである可能性が高い。防衛省はマイクロ波兵器の開発を急いでいますが、それは有効範囲が狭い。現状、ドローンによる大規模攻撃に自衛隊ができることがあるとすれば、弾幕を張ることくらいでしょうか」

もし、沖縄制圧作戦に先述したドローン兵器、もしくはそれらを改良した後継機が導入されたら、どうなるのか。

そのシミュレーションは次の通りだ。

ドローン兵器が沖縄を襲うー

202X年、航空自衛隊那覇基地で警報が鳴り響く。沖縄の近海上空に複数の不審な飛行物体が侵入したからだ。自衛隊はF-15戦闘機2機をスクランブル発進させる。現場に急行したパイロットが見つけたのは、5機の翼竜3。機体には中国国旗が描かれている。その後方につけたパイロットは警告無線を飛ばすが、再三の警告に全く応答せず、なおも沖縄本島へ飛んでいく。その機体に対し、自衛隊司令部は「威嚇射撃」を指示する。

しかし、それでも止まらない。ここで自衛隊は「撃墜」を決意する。パイロットは照準を定め、射撃を開始。その瞬間だった。翼竜3の隊列は機体を翻し、一気に散開。統制の取れた動きで、F-15に照準を絞らせない。弾丸から巧みに逃れ、難なく沖縄上空に到達した翼竜3は那覇基地を爆撃する。

沖縄の自衛隊基地、米軍基地は尋常ならざる事態に浮き足立っていた。そんななか、沖縄沿岸に珠海雲が姿を現す。

甲板には数十機ものZT-180。やはり、人の姿は確認できない。それは甲板から飛び立ち、一糸乱れぬ隊形を取る。

現実を見据え対策を

その群れは沖縄上空で一斉に散らばり、那覇、嘉手納、普天間などの米軍基地に突っ込んでいく。レーダー、防空システム、通信設備が破壊され、自衛隊と米軍の指揮系統は崩壊寸前だ。

沖縄各地で炎が上がるなか、基地近くにM-81をぶら下げた夥しい数のパラシュートが次々に落下し、折り畳んであった4本の足を伸ばす。その姿は大型犬のようだが、金属製の胴体には機関銃を装備している。その群れはやがて弾丸を発射しながら前進し、基地内の兵士を倒していく—。

このシミュレーションは今や「空想」ではない。中国はそれを現実にするドローン兵器をすでに持っている。

日本はその脅威にどう備えていくのか。現実を見据えた対応が必要だ。

 もはや宅配に使用するドローンなどのイメージとはかけ離れた、完全な攻撃兵器です。どう備えるかという問いに対し、現時点では有効な答えは出せないでしょう。1周どころか2周も3周も遅れている日本の無人機。基本的にはほぼ同性能の無人機を持たねば、その防衛もなかなか困難だと思われます。

 昨年日本も米国の技術協力の下、戦闘機支援の無人機開発に着手しましたが、先行する中国に質量で追いつくのはなかなか困難でしょう。この困難な課題にどう対応していくか、今後の政府、防衛省の力量が問われるところです。


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