菅政権の任命拒否をめぐって世論を2分している日本学術会議問題。「学問の自由の毀損」を錦の御旗に問題として追及する、サヨク論壇と野党勢力、「法の範囲の適切な判断」と突っぱねる政権側。そういう構図です。
しかし自民党議員団が動き始めたように、この学術会議がそもそも日本のためになっているのか。政府関連組織として機能しているのか、そちらの検証が先だという気がします。
今回はその3弾で、東京大学大学院情報学環准教授の伊東乾氏がJBpressに寄稿したコラムを引用します。伊東准教授の、実体験に基づくご苦労が記述されていて興味深いコラムです。タイトルは『日本学術会議を40歳定年にせよ! 空疎な「権威の直列つなぎ」から使える政策は出てこない』(10/12)です。
前回、学術会議の原稿(「日本学術会議、いっそ改組されたら?」には多くの反響をいただきました。
マスコミからの取材要請もありましたが、すべてお断りさせていただきました。秋のシーズン、大学は研究も教育も本来は佳境で大変忙しく、割ける時間もないのが一点。
また、興味本位のマスコミの煽るような取り上げ方は、落ち着いた大学の日常からは迷惑でしかないので、シャットダウンしたというのが正直なところでもあります。
しかし、ネットを含め様々なお声を寄せていただきましたので、いくつか補足でお答えとともにお送りしたいと思います。
大学内で実際に起きていること
まず最初に、私は慣れっこになってしまっていて感覚が半ば麻痺していたのですが、19年来大学の中で固有面積が一平米もない、という状況に「ご苦労されたのですね」と予想を超えて多数の激励をお寄せいただきました。
私一人の時は、捨象して仕事に精励するのみなのですが、学生たちを含めたアカデミック・ハラスメントになっているので、話が違います。
これは公式に救済要請を出しているので、ここにはミニマムを記します。
2001年、小宮山工学部長の時期に東京大学本郷キャンパス、工学部2号館の大規模な改修工事が始まり、その建物にアサインされていた私の研究室の面積は、耐震補強工事などの折に一時的に避難する全学共有面積に移動。
それ以降19年間、正規面積に戻ることができていません。現在研究室があるのもそういう「一時避難所」で、地下と1階には「保健センター」もあります。
そういう場所に「発熱外来」が設けられました。
うちの学生たちは、自分たちの研究室に行くために必ず通らねばならないエントランスで、こういう看板に直面します。
学生たちにアンケートを取りました。
「発熱外来棟での実験や研究でも構わないか?」
全員が「絶対にいやだ」と言いましたので、本来面積の返還を正規に求めることにしました。
しかし、すぐに面積は回せないのも分かっています。とはいえ今年度後半、きちんと実験ができなかったら、修士2年の学生は学位研究を仕上げることができません。
せっかく博士に合格しているのに、すべて無に帰してしまいます。
仕方ないので、研究予算を使って、学内の他面積のレンタルを申し込んでいますが、よく考えてみてください。ものすごくおかしなことになっています。
私は共同研究者たちと提案をまとめて外部の競争的資金に応募し、審査を通過して交付を受けるわけですが、本来学内にあるはずの面積がなく、その分を無駄に「場所代」で失い、できるはずの研究にしわ寄せがくる・・・。
これが本当の日常なのです。それまでは、仕方なく、毎回「一般教室」を借りて、学生は学位の実験をしています。
こういうことは初めてですが、ラボの実際もご紹介しましょう。
左の写真は、ある目的のためにある物質を高電圧下で、ある物質に吹き付ける「エレクトリック・スプレー」のセットアップで、写真には50ボルトの乾電池電源が映っていますが、実際に印加するのは映っていない数千ボルトの直流定電圧電源です。
昨日もゼロから組んでまたばらした、今現在私のラボで進めている実験の準備、試料作製の装置です。
5000ボルトほどの高電圧を掛けていますが、もう少し高いと仕事が楽そうなので、より高圧の定常電源の導入を検討しています。
こういうことを20年来、私はほとんど一切メディアに記しません。当たり前のことで、特許など知財管理がありますから、表に出さないものには一言も言及しません。
さて、これを組むのに大体1時間半から2時間の時間がかかります。
実験そのものを5時間できたとしても、すべてばらして梱包し直す撤収に1時間、キャンパス内での移動に何十分かを要しますので、8時間キャンパスにいるとして、実に3時間、半分弱は移動その他に費やさざるを得ません。
ちなみに装置は大きなコンテナで2杯と、ほかに定電圧電源やら真空ポンプやら、独立した機械が何個か、これを学生(女子2人)と私自身が、毎回移動し、設営し、実験し、ばらし、撤収させられています。
SNSで私が午前3時頃「やっといま実験が終わった」というのは、そういう片づけの最後は私一人になりますので(学生たちをそんな遅くまで大学にいさせられません)終電で戻った後は、私が力仕事もします。
大学における「アカデミック・ハラスメント」というのが、どういうものか、あまり世の中に出ないと思いますが、学術会議とよく似た構造ですので、今現在私が被っている状況を、問題のない範囲で記しました。
空疎な権威主義の直列つなぎ
ご存じのように、私の研究室は音楽実技のラボラトリーです。
事実、今月になってからも、ベートーベン生誕250年のプロジェクトで最新の音声動画などもリリースしています。
「音楽の研究室にどうして高圧電源が必要なんだ。関係ないじゃないか」などと言われるかもしれないし、サイエンスの仕事しか知らない人は、私が内外で一分野を牽引する、伝統を担う責任を負う音楽家、演奏家であり作曲家であることを全く知りません。
世間はそういうものであって、もう諦めました。
しかし、私は22年前、理学系最先端の知見を駆使して芸術音楽喫緊の課題に挑戦する、世界で一つしかない研究室を創設してもらい、鳴り物入りで東京大学に着任以来、一貫してこういう仕事を続けています。
ノーベル賞の解説原稿をリリースしていますが、私はノーベル賞評論家ではない。共同研究者にはノーベル賞を受けられた先生もある、芸術のラボラトリーを率いて現場の仕事をしています。
社会にこういうことが知られないのは、ある時期以降、極力知られないようにしたからです。
というのも、情報を出せば、ポスターは破られるわ、ネガティブキャンペーンは張られるわ、車には大きなひっかき傷はつけられるわ、もうそれはそれは、あまりにも程度の低い嫌がらせの連続で、ばかばかしいので、「沈黙は金」と悟ったからです。
研究室の部局固有面積が1平米もない、といういろいろな法に明らかに抵触する状況はどうして生まれたのでしょう?
2、3人が談合して「あいつは問題だ~」と、ない所でも煙を上げればよいのです。どうやら新左翼の手法として古典的なものらしいですが、世代的に私には実感がありません。
「問題だ~」。「なぜ?」と問われたら「問題だから問題だ~」とやる。
私が被害に遭った実例を記しましょう。
!「伊東はアカデミック・ハラスメントがある。学生の証言もある」
?「いったいどの学生が、いつどんなアカデミック・ハラスメントがあったのですか?」
!「それは学生保護のため言えない」
?「本当に伊東先生にハラスメントがあったのですか?」
第三者委員会なるもの「歴代部局長にヒアリングした。信用できると思われる」
(歴代部局長の隠蔽しているセクハラ実行犯も混ざっているわけですが)
?「それで事実認定???」
こんなことをずっと続けて、約20年間、特定の教官の研究室を固有面積ゼロとか、学生採用させないとか、やって来た学生は排除とか、ありとあらゆる、きちんと申し立てれば法にも抵触するトンデモない仕儀も「学問の自由」その他を逆手にとることを、ゲーム的に覚えた連中が、節度も限度も知らず、子供のように調子に乗ってやっている。
そんな状態が、ごく普通にある、爪の先ほどの片鱗のみ、ご紹介します。
つまり、本当の実態はこんなものでは凡そ済まないのですが、公に出来るタイミングがあるまでは、伏せておくことになるかと思います。
こんな具合で「会議」を押し通す。
そして、会議で「先生方、ご異議はありませんか?」と議長が尋ね、気まずい雰囲気の沈黙が支配した後、「では、そのようにご承認いただいたものといたします」として、議事が先に進む。
そういう会議の「直列つなぎ」が出来上がっていて、小委員会でこうした「決定」がなされると、上委員会がそれを覆さない限り、そのまま承認のハンコだけが、マトリョーシカのようにつき続けられ、にっちもさっちも動かなくなる。
そういう構造になっています。
5年ほど前だったでしょうか、部屋の問題で、これから学生が来るようになるから(私はその前14年間、学生が取れないようにするハラスメントで研究室を解体されていました)スペースをと求めたときでした。
「小委員会」の座長を務めていた人(女性で「日本学術会議会員」でもあったような記憶ですが)は、「皆で決めたことだから」として、あらゆる理不尽な状況をそのまま存置しました。
そういう「手続き権威主義」とでもいうようなものが、動かない実態をなしている。
私が日本学術会議を、いい加減やめるとか根本的に改組しないと、単に老人の虚栄心を満足する無駄な権威組織以上のものは期待できないですよ、と本当のことを記すのは、全く同じ構造があるからにほかなりません。
学術会議は「定年40歳」に
日本学術会議は、今期を最後に徹底改組して、数学のフィールズ賞と同様、定年を40歳に設定したらよいと思います。
70歳だから、お達者クラブになる。
私が「第三期科学技術基本計画」のアンカーをやったのが39~40歳でしたので、経験に基づいて、ちょうどいい年配と思います。
いま、学術会議の会合がどんなふうになっているか、スケッチしてみます。ただしコロナ以前の実例に即しますので、現状ではZOOMで遠隔、とかに置き換えていただく必要があるでしょう。
普通、学術会議生会員の大先生は、何も準備してきません。手ぶらでやって来ます。
準備してくるのは、各省庁の課長補佐とか、呼ばれてくる外部の先生、そして若手の、報酬ゼロで頼まれて仕事させられている助教さんとか講師、准教授の先生たちです。「連携会員」という使い勝手のよいコマの制度もあります。
今回ハネられた6人の人たちは、間断なく「連携会員」その他、学術会議の一存でも選べる方法がありますから、それで議事に参加させれば、何の支障も現実にはありません。
あるとしたら「政府が認めた権威ある正会員で、安いけれど給料が出る身分ではない」というだけで、仕事の実質と無関係です。
2年でも3年でも、6人とも、そういう身分で働いてから、またアプリケーションしたらどうですか?
ずっと、名を消されたままタダ働きしてきた立場から、率直に思いますので記します。
そんなに内閣総理大臣の承認が欲しいのか?
学究としては、あまり褒められた態度とは私は思いません。手取りゼロでガス抜き会議を支えてきた、幾万という「万骨枯る」に、申し訳ないと思ってもらいたい。
こんなの、憲法を持ち出すほどの大したイシューではありません。
大先生の発表も時折ありますが、ご自分の定番で、「ああまたあれか」というもの以外を見たことがありません。
発表の後、「コメント」が出ますが、ここで上の年齢層から、感心するコメントを聞いたことがほとんどありません。
鋭い指摘や建設的な意見が出てくるのは若い世代、理工系の40代教授などの「小委員会委員」や、30代、場合によっては20代の助教さんなどが、実に良い発言をし、ロートルから出てくるのは、大半が机に肘をついたような文句、難癖が圧倒的に多く、また座長も羅列的、事なかれ的で、何もまとまりません。
そんなことで1期3年、2期6年、何のアクティビティもない小委員会の一つから、「先生、何とかしてください」と依頼を受けました。
私はプロジェクト提案や政策提言のアンカーが長いので、知っている人は知っており、15年前、20年前に概算要求を書いてやったり、人事を通したりした方面から、そういう頼みごとが来ることがある。
20年前なら30代の助教授ですから、はいはい、やってみましょう、と気軽に受けますが、いまは私自身、一族郎党に責任を持つ立場です。おいそれとボランティア活動に勤しむわけにもゆきません。
それでも、ない時間を工面し、またこれもご存じの方はご存じのように、私は徹底してデュープロセスを踏みますから、一度受けた後は、小委員会メンバー全員の意見を幾度もメールでアンケートし、アンカーはすべての文字を自分一人で打つのみならず図なども全部自作します。
もちろん、すべてタダ働き。
内閣府に出せる提言を1本書くのに、だいたい3週間から1か月程度、私自身の時間をつぶさねばなりません。その間、大学の本務は止まります。
提言作りは、もちろん1人だけではできません。若くやる気のある人を「編集幹事」に頼んで、少数の助教などの先生たちにチェック、校閲、お金の計算があれば検算とか、リファレンスを調べてもらったりとか、助けてもらうのも、すべてタダ働き。
日本学術会議の「会員」で、こういう実務に役立つ人を、ほとんど知りません。
「よろしくお願いします」と一任する人から、「こんな提言やめてしまえー」と机を叩いて床に書類を投げつけた人まで、いろいろな実例を思い出しますが、戦力にならないことだけは共通しています。
そして、それにだけ、報酬が支払われている。周りは巻き込まれるだけ。
さて、そうやって「提言」がまとまり「かけた」としましょう。この仕事は「小委員会」が行い、「小委員」は学術会議メンバーなどではなく、交通費まで自腹で出してやって来るその他大勢扱いの人々、私もまたその一人として、無償貢献、いや、自分の財布から所得を叩いて、手弁当自腹で「黒子」をやらさせられてきました。
それを正当化させる、不健康な権威主義が、現状の日本学術会議にはあります。
海外の友人、例えば私はフェイスブックのAI倫理研究所と仕事していますが、そういう仲間にあるがままを話すと、「どうして日本では、奴隷労働を受け入れるのか? ビジネスではなく趣味なのか?」と真顔で問われます。
・・・そう、大学人が研究教育を「ビジネス」として行う、という欧米の普通の感覚がない。大学の先生は「聖職者」で、企業との人的な行き来が極めて少ない。
博士を取ってから、A社のCTOを務め、米スタンフォード大学やNYUの教授をやってから、グーグルのリサーチヘッドにハンティングされる、といった縦横無尽がない。
私はもうすぐ、NYUの、コロナ対策AI倫理のビデオプログラムに登壇しますが、もちろんビジネスとして依頼されるもので、大学に届けを出し、適切な報酬も受けます。
そういうのが、ないんですね、日本という島国には。
お金を払えばよい、とか、そういうことをいっているのではない。仕事としてのケジメが抜け落ちていて、どこか「茶道」「柔道」みたいな、お師匠さんのもとで滅私奉公、原稿も先生の名前でご提供、みたいな、饐えた犯罪的なものが蔓延している。
それを指摘しているのです。誰でもいい、ネットでも幾らでもつかまるでしょうから、周りの大学人に尋ねてみたらよろしい。オカシなことだらけですから。
やってきた連中は「自分も我慢してきたから」ということで、正当化している様子です。
つまり、かつて嫁として姑にいびられて我慢したから、今度は姑として、たっぷり嫁をいじめてやろう、という「渡る世間は学術ばかり」という情況ですね。
悪循環はどこかで断つ必要があると思うのは、私だけでしょうか?
私たちがタダ働きした結果が「親委員会」に送られると「会員」の皆様からのリアクションが返ってきます。
まともに読んでくるものも中にはあります。しかし、およそ何も読めていないのに、枝葉末節でおかしな主張をする者、自分の業績が反映されていないと駄々をこねる者、その他、いろいろな人たちをいろいろな局面で見てきました。
そこで唯一共通することは「この手の査読・コメントで役に立ったためしは、ほとんどない」という現実です。
なかには丁寧な先生もあり、誤変換の指摘など丁寧にしてくださる方もあるので、すべてを無意味とは申しません。
しかし、政策提言の根幹に大きくプラスとなる、新たな柱をもらったと思うことは、いまだかつて、一度もありません。
全部、下で考えて上にあげる。上から帰ってくるのは受け身のダメ出しが99%と言ってよい。
それが「日本学術会議」の「正会員」というものだという諦念が、私の率直なところですし、もう生涯やりませんからハッキリ書きますが、そうやって返ってきたオカシな指摘の通りに改悪してやらないと、また突き返されるのがオチですから、大半はそれに調子を合わせることになります。
ただ、あまりにも酷いという場合には、直さずにそのままにすることもあります。すると、それを気づかないんですね。2度目はスルーだったりする。
要するに、系統だってちゃんと見ていない。まともな仕事として取り組んでいるとは、率直に言って思えない。
私は、日本学術会議の推薦する会員の任命プロセスについて、何一つコメントするつもりがありません。学問の自由が損なわれているとも思わないかわりに、政府の対応がすべて適切かどうかも、私の関知する範囲外です。
ただ一つ言えることは、現状の日本学術会議が無用の長物で、単なる権威の上塗り、先ほど私が19年間、1平米の部局固有面積もないという現実の被害でご説明したのと同じ、「手続きの直列つなぎ」だけで大半ができている。
政策提言組織としては極めて非効率な寄合いであることは、安全に指摘できると思います。
無理もありません。新人が62歳ですよ、政治家で考えてみてください。1年生議員が62歳なら、15年20年経験を積んで、いざ閣僚という時期には80を超えてしまいます。
ジェネレーションだけで考えても、無理なんです。
ローマは一日にしてならず、10年スパンで「政策が打てる若手研究者育成」機関に
代々の学術会議は、当然この問題を自覚していて、60代の男ばかりという情況を改善すべく、若い女性研究者を入れるなど、小手先の対策は取っているのですが、その実例の一つについては上でコメントしました。
大学の仕事だけで手一杯の若手が、勝手の違う「政策提言組織」にいきなり呼ばれて、何ができるか?
できません。政策というのは、新卒20代で役所に入った公務員が、3年5年と正規の業務としてそれに取り組み、幾度もダメ出しされて覚えていくものです。
私がなぜ「第三期科学技術基本計画」のアンカーが書けたか、種明かしを最後に描いておくと、1995年に初めて公開された第一期の「科学技術基本計画」を、大学で寮の同室者だった親友が(通産省分だけですが)書いていたからなんですね。
現在は某社のCEOを務めるT君が、20代から手掛けてきた通産省の仕事、リアルタイムで話だけは聞いていました。しかし、それだけでは何もできません。
1996年、31歳のとき私は体を壊し(労作性のめまいを病み)、指揮台に立つことができなくなってしまいました。
このときアルバイトの救いの手を伸ばしてくれたのがT君で、隣の課の、これは名を挙げてよいでしょう、野球の桑田真澄投手の大学院指導教官として知られる。現在は早稲田大学教授の平田竹男さんが課長補佐を務めていた「通商産業省サービス産業課」の案件として、「我が国のクラシック音楽に関する研究」という公益事業の主任研究員バイトを振ってもらい、T君にも親身に相談に乗ってもらって、実態調査と課題抽出、望ましい政策の在り方などをまとめました。
31歳、単にフリーランスの音楽家でしかなく(病気でヒマになったので2度目の大学院博士課程に籍を置いた年でした)、ここで「あるべきメディアの活用法」なども実態調査に基づいてまとめた翌年、可愛がってもらっていた黛敏郎さんが急逝されて、私はテレビ朝日系列「新・題名のない音楽会」の責任を持つようになりましたので、マーケティングに基づいて、信念をもって、番組作りに取り組みました。
音楽の良心を最高度に保ちつつ、マーケット的に成立するようベストを尽くしましたが。局プロデューサは柳に風、電通とプロダクションはタイアップなど出来試合の案件ばかり持ってきて、結局大半はつぶされました。
しかし、これを生活の足しにしながら、私はニューヨーク・マースカニングハム舞踊団とのジョン・ケージ「OCEAN」没後初演などの仕事もし、寸暇を惜しんで学位の仕事も完成しました。
ちなみに食べるために作曲・演奏しながら音楽の基礎研究で物理のシステムを組み、自分自身で実験し・・・というのはこの生活で確立したもので、その後20年間、ずっとこれでやっているわけです。
そうやって2度目の大学院で博士を取った翌月から慶應義塾で教え始め、4か月後に東大から声が掛かり、それなりの鳴り物で呼ばれたものが、おかしな経緯で、一度落とし穴に落とされると、10年経っても20年経っても、固有面積が1平米もない異常な状態でも、ずっと続いてしまう。
学術会議も同様で、自浄作用など期待するのは無理だと思います。年齢だけで考えても・・・。
法律を改正し、おかしなロートルを全員レイオフするのが早道と思います。前世紀の遺物で、老化のためすでに十分機能喪失してしまった組織は全面改革し、定年は40歳、採用資格は学位を持っていることにするだけでも大きく変わるはずです。
文系に多いのですが、いまだに「博士」の学位をもたないまま大学院博士課程で指導する「無免許教授」ミスター・プロフェッサーが残存し、日本は世界から呆れられています。
その一因も「日本学術会議」にあります。会員の博士号取得率を出してみるとよく分かることがあるでしょう。
20代後半から30代の、あらゆる分野の若手研究者が、関係所轄官庁の若手から次官級まで様々な官僚と議論し、また議席をもつ人たちとも、腹芸ではなく、きちんと学術政策の議論をするようになれば、まともな政策が何たるものか、30代の若い時期に覚えることもできるでしょう。
私は、旧通産省に在籍した同世代の仲間、先ほどのT君や平田竹男さん、また参議院議員・文部科学副大臣を務めた鈴木寛氏など、多くのプロパーに、値引きのない指摘や夜を徹してのディスカッションなど、莫大な知恵をつけてもらって、何ほどか、政策のドラフトのごときものを書けるようになりました。
今から16年前、39歳で日本学術会議担当分の「第三期科学技術基本計画」アンカーに着手する以前に、断続的に9年間、もまれる場があって、初めて学術会議でも使い物になりました。
62歳の新人では、使い物になる前に70歳定年で終わります。
制度設計に問題があると言うべきでしょう。
学術会議は20代30代の、未来を担う人々が、産官学の壁を越えて、例えば今であれば、ウイズコロナを克服し、アフターコロナに本当に役立つ、文理の枠を超えた政策を議論する場にして、同じ10億円なら10億円を生きたお金にすべきと思います。
JBpressの編集部からはまた「先生の恨み節言原稿」などと言われないよう、注意したつもりですが、すべてあるがままの事実を記しています。
現状はどぶに捨てているのと大差ない、そのどぶ以下のタダ働きの現場から、ごくごく穏当な範囲だけ、記しました。
想像を絶しますね。このコラムの中で「ただ一つ言えることは、現状の日本学術会議が無用の長物で、単なる権威の上塗り、先ほど私が19年間、1平米の部局固有面積もないという現実の被害でご説明したのと同じ、「手続きの直列つなぎ」だけで大半ができている。」と言う、伊東氏の主張に尽きると思います。
そしてほぼ全員が62歳以上の、明らかに働き盛りを過ぎたご隠居同様の人たちが、自身での提言作成もおろか、下から上がる提言のまともな査定もできない委員で構成されている現状は、完全な税金無駄遣い組織の典型となっている、それが実態でしょう。
こんな組織は即刻解体し、伊東氏の言うバリバリの若手主体の組織に変える必要があります。そこから日本の現状の課題への提言を、積極的に出してもらえば、官僚が考える政策立案の補完と充実に資すると思いますね。
それと同時に大学内における旧態依然とした組織運営と人事についても、第三者機関を設け、実態解明と改革提案をしてもらい、メスを入れる必要もありそうです。「学問の自由」を錦の御旗にした既得権益保持の連中を、それこそ「真の学問の自由」ができる組織に変えていく必要があります。日本の未来のために。
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