政治

2023年5月14日 (日)

「美しい日本」ブログ最終投稿に向けて 「強い日本を取り戻す」思いをしたためて筆を置きます

Images-10_20230514090901  2018年8月、『「戦争を語り継ぐ」を考える』でスタートしたこのブログも5年弱を経過しましたが、前回で投稿が1000稿となりました。以前から1000回を数えたら筆を置こうと決めていましたので、ここで最後にしたいと思います。長期間ご覧いただいてありがとうございました。

 さて、このブログの目的は、「強くたくましい日本を取り戻すこと」を願い、記述していくことにありました。そのためにはまず最初に、「なぜ取り戻さなければならなくなったのかを明確にする」ことを考えました。

 様々な書籍や資料を読み続けた結果、日本が精神的支柱を失ったのは、GHQによる、日本は悪かったという「WGIP」政策と、言論統制のための「プレスコード」の押しつけにあると思うようになりました。これらが戦後日本の軍隊への嫌悪と、メディアの左傾化を生んだのでした。そしてその結果、周辺国への過度の卑屈な謝罪対応と、さらにそれを日本のメディアが先導しさらに後押しをするという、戦後レジームを形成したのです。

 もちろん戦後の経済復興は先人の涙ぐましい努力と、朝鮮戦争やベトナム戦争特需や人口ボーナスなどの「運や憑き」によって成し遂げられましたが、日本弱体化を狙った占領政策により、精神的支柱を失った日本人は、自国への愛国心を喪失し、主権国家という衣をずたずたにされた国のごとく、安全保障に疎く、外圧に右往左往する国になってしまったようです。

 近年特に長期的視点に欠けた政治家や官僚が、そしてGHQの遺した自虐史観と軍隊への異常な嫌悪感を併せ持つ反日メディアが、外交力を弱め、安全保障の3つの柱である、軍事力、食料、エネルギーに於いていずれも先進国最低レベルの国にしてしまったのです。

 そして結果として失われた30年、経済停滞とデフレに苦悩する今の日本ができあがりました。国の力を向上させようとする、政治家や官僚、経済人の力が弱く、逆にその足を引っ張ろうとする反日政治家やメディア、それに言論人が、無党派層へ飽くなき洗脳を仕掛けて、日本弱体化の後押しをしています。

 ではなぜGHQによる占領支配を受けてしまったのか。それは日本が大東亜戦争に敗北し、ポツダム宣言を受けざるを得なかったためです。では何故大東亜戦争に突入してしまったのか。この要因はいくつもあるでしょう。小資源国家の日本が資源を求めて満州に侵攻し、傀儡政権を作ったこと。更に蒋介石国民党との日中戦争を起こしたことがその一つでしょう。

 更にはそのことにより欧米、特にアメリカが石油やくず鉄の禁輸等の経済制裁を課したこと。そしてその結果として南アジアに石油を求めて侵攻していったことなどが、その伏線にありました。

 また当時の政治が政争に明け暮れ、統帥権を振り翳す軍の暴走を止めることが出来ず、満州侵攻や日中戦争への戦局拡大を止めることが出来なかった事も、大きな要素です。

 しかしその裏での動きもありました。朝日新聞は戦前、軍に加担し戦争を煽ったと言われていますが、正確には日中戦争を煽ったのです。それは二つの意味があり、ソ連コミンテルンの意を汲む社員(尾崎)とソ連のスパイ(ゾルゲ)が、日本が満州から北進し対ソ戦に向かうのを忌避させるため、南進論に加担し、同時に蒋介石国民党との和解を阻止させようと画策し、結果日中戦争の泥沼化と南進を促進させました。これが米国の対日感情を決定的に悪化させたのは間違いないでしょう。また当時米国大統領だったルーズベルトは、特にその婦人共々親中派だったようです。まさに東洋の黄色いサルめ、と反日の思いを強く募らせたのでしょう。

 一方ルーズベルト政権内でもソ連共産党スパイが暗躍し、日米開戦をそそのかしたことも有名です。「ハルノート」はその象徴だと言われます。日米ともソ連の画策の手の中に陥ったのですが、日本側では、朝日新聞がその画策に便乗したことは注目すべきでしょう。

 こうして日本は勝てない戦争にのめり込んだのです。そして敗戦の結果、GHQの日本弱体化政策を甘んじる結果となったのでした。GHQには当初、共産主義者が多くいたと言われています。そういう意味では日本は戦前、戦中、戦後を通じて一貫して、ソ連共産党による国際組織、コミンテルンの画策の手の中で敗北した言っていいでしょう。

 時を現在に戻して、「強い日本を取り戻す」ことがうまくいかないことに対しては、政治家や政府・行政の要(かなめ)官僚の力が至らないことから来ている様相があります。(戦前最後の政局もそうでした。ただし軍部迎合のメディアが足を引っ張ったのは今と同じですが。)それはまず周辺国の反日の暴走を許している外務省とその閣僚の力不足に見て取れます。そして食料安全保障の面では、補助金に偏った農水政策の貧困さも目立ちます。少子化やエネルギー政策も不作為が続いています。

 更には戦後その周辺国を擁護し、日本の軍事的抑止力向上を阻む、疑似共産主義勢力が、大学内に、メディアの中に、そして文化人の中に、雨後の竹の子のように増殖してきました。彼等が政治家の足を引っ張り、強国日本の再興を阻んでいるのです。それらを牽制する法整備も全く出来ていません。

 従って日本を強くする意志を持つ政治家を育て、また同時に政治力の向上を図らねばなりません。(誠に残念ですがその意思を強く持った政治家、石原慎太郎氏は逝去し、安倍晋三氏は凶弾に倒れてしまいました。)そのためには今の国会を抜本的に改革しなければならないでしょう。

 今の国会審議を見ると、政府閣僚に対し議員側が質問し答弁を求める、そのための時間が圧倒的に多い。そこには質の高い質疑もありますが、多くはスキャンダルや重箱の隅をつつくような些末な質問も多く見られます。そもそも国会は議員同士が議論を重ねる場所。三権分立から言っても今の制度、慣習はおかしいと思います。

 野党議員が質問されることのないこの国会を変革し、国会の本務として議員同士の議論の場にしてもらいたいと思います。そしてその議論の中から日本そして日本国民のための、よりよい政策とそれを施行するための法を捻出する場としなければならないと思います。それら国会審議の結論を執行するのが本来政府・行政の役目のはずです。

 野党議員も反対ならば逆提案を義務とし質問・追求をされる仕組みとすれば、今のような反対のための反対や、クイズ質問などして、遊んでいる場合ではなくなります。真に政策を考えざるを得なくなるでしょう。そして国会の審議の最重要テーマは「いかに日本の国益を守り向上させるか」という点を中心に、侃々諤々の議論をするようにして欲しいと思います。

 こうして議員の質の向上を図り、日本の国益の向上を第一にテーマに据えれば、周辺国への過度の忖度議員や、日本弱体化に加担するバカな議員はいなくなるように思います。そして理想論を振り翳すのではなく、現実を見据えたしっかりとした議論がなされるようになるでしょう。国会が変われば、政治家も官僚も変わり、日本も変わります。

 これは一つの案ですが、これ以外にも放送改革や教育改革な、ど様々な課題や対応があるでしょう。いずれにしても日本の安全保障の要、しっかりした経済力を背景とした軍事的抑止力、食料安全保障、エネルギー安全保障の質的、量的向上を願って、このブログの最後とさせていただきます。ありがとうございました。

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2022年11月18日 (金)

甘い日本の政治、低迷する日本をこの呪縛から解放するには「甘さ」から脱却する必要あり

33  岸田政権はメディアと結託した旧統一教会問題で支持率を落とし、その結果野党の追求する「議員と教会との関係」に右往左往し、また教会の過去の信者への献金強要の事実から、教会への同問題質問権の対応と、信者救済の立法化へ追い込まれています。

 確かに放っておけない問題でしょうが、他に安全保障問題やエネルギー・経済問題など、日本の未来を揺るがす大問題には本格的に取り組めない、本質離脱の嘆かわしい状態と言ってもいいでしょう。何故こんなことになるのか。それはひとえに「ユルさが目立つ日本政治」だからでしょう。

 戦後外交においてはユルさが継続してきましたが、少なくとも安部元首相の時代までは、何とか引き締めも効いてきたように思います。今日の情況はどうでしょうか。国際政治学者の島田洋一氏が月刊WILL誌に寄稿したコラムから紐解きます。タイトルは『ユルさが目立つ日本政治』で、以下に引用して掲載します。

中国共産党大会の開幕を3日後に控えた10月13日、北京市内の高架橋に「独裁の国賊、習近平を罷免せよ」などと大書した横断幕が掲げられた。

当局が慌てて撤去したものの、SNSなどで画像が拡散し、国際的なニュースとなった(中国内ではまもなく閲覧不能の措置が取られた)。

決死の行為に出た勇士は、その場で当局に拘束され、車で連れ去られた。

日本をはじめ自由主義国なら、せいぜい道路交通法違反で注意処分程度の話である。しかし、習近平神格化を進める中国では、「仲間の名前を全て言え」等々の拷問を経たうえで、重罪に問われるだろう。

米国に亡命した中共中央党校の元教授、蔡霞氏によると、実行者(男性)は「彭載舟」のハンドルネームを持つ彭発氏だという。何とか生き永らえ、解放の時を迎えられるよう、支援していかねばならない。 国際社会が声を上げなければ、獄中で虐待死に追い込まれるだろう。

「国賊」といえば、日本でも、自民党議員でありながら左翼に迎合し、国葬儀をボイコットした村上誠一郎氏が、安倍元首相を「国賊」とまで呼び、さすがに党規違反に問われた。

相当な覚悟があっての発言かと思いきや、党紀委員会が迫った段階で、お座なりな「謝罪文」を提出するなど党籍に未練を見せた。卑小というほかない。

厳正に臨むはずだった党紀委の方も、「党員資格停止や除名といった厳しい処分を求める意見が大半だった」にもかかわらず、結局「一年間の役職停止」という大甘な措置でお茶を濁した。

「国賊」発言から処分に至る全過程を通じて、何の本気度も感じさせないサル芝居に終始したと言わざるを得ない。当然、中露・北朝鮮などは、ますます自民党を舐めて掛かってくるだろう。

現在、日本国内の反安倍勢力中、世代的に最も大きな塊を成すのは、1960年代末に「全共闘運動」にいそしんだ「高齢者アベガー」たちだが、こちらも精神的ユルさが目立つ。

当時はアメリカでも学園紛争が盛んだったが、ベトナム戦争への徴兵に対する命懸けの抵抗という面があった(今ロシアがそうなりつつある)。ベトナムでは、最終的に米兵5万8千人が死亡、28万8千人が重傷を負っている。

安全地帯でのサル真似に過ぎない全共闘の革命遊びとは違った。彼ら日本の左翼学生は「安保粉砕」を叫んだが、その実、自衛隊と米軍に守られて平和に暮らし、相対的に恵まれた年金生活を送りつつ「安倍国葬粉砕」デモなどで余剰エネルギーを発散している。高齢者アベガーには日教組の元教員などが多いというが、よく分かる話だ。

彼らの反軍・反米左翼教育を、何の批判精神もなく受け入れた「優等生」の典型が、「安倍は人間じゃない。叩っ斬ってやる」と叫んだ法政大教員の山口二郎氏だろう。

この種のアベガーの執拗な演説妨害に対し、普通なら「こんな連中」と突き放すところを「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と抑えた表現を用いた安倍首相は、忍耐力において秀でていた。

朝日新聞は、「異論に不寛容で、批判を敵視する姿勢は安倍政権の特徴の一つだった」と総括するが、汚い野次を放置しては、民主制の基本である議論が成り立たない。 あくどい妨害に対しては、戦う姿勢も必要となる。

自民党議員は政権を追及したくとも「党の政調でやるのはいいが、国会ではやめてくれ。 予算の通過に支障が出る」と言われ、深追いが難しい。

その分野党の役割が重要になるが、ワイドショー追随以上の質問はほとんどない。野党が愚かだと議院内閣制は機能しない。

立憲民主党にも野田佳彦元首相を筆頭に自称保守派がいる。しかし辻元清美氏、蓮舫氏ら「はしたなさ」(三浦瑠麗氏の評)を売り物にする左派に圧倒され、常に縮こまっている。 そこそこ数があっても、戦闘力を欠けば政治勢力たり得ない。

9月17日、創立百周年を記念した講演で共産党の志位和夫委員長は、安保条約廃棄の旗を掲げ続けると宣言した。一方、侵略を受けた場合は「憲法違反の自衛隊」に「頑張っていただく」とも述べている。

米軍との関係を断ち切って自衛隊単独で戦い、自分たち共産党員の命も守れというわけだ。 無責任かつ身勝手、「志位滅裂」そのものだろう。耳を傾けろと言うなら、もう少し理性的な「異論」を唱えねばならない。

 野党の「体たらくさ」の要因も、政府・与党のユルさ、つまり「信念を持って毅然と対応する姿勢」の欠落が、その一つとなっているのだと思います。例えば野党の政府質問にはテーマ以外の質問は一切受け付けない、また政府側からの逆質問を許可すると言った国会の改革、あるいは「民放」の報道番組の偏向さには、堂々と放送法第4条を適用し、その適用を妨げるBPOであれば解散、再編成すると言った、思い切った施策を信念を持ってやるべきでしょう。その結果として、野党やメディアの質も向上するのではないかと思います。

 故石原慎太郎氏は、記者会見で記者の愚問にははっきり「愚問」と言い切り、また逆質問をして記者を黙らせた、そのような態度が今の首相や閣僚にも必要でしょう。トランプ氏とまでは行かなくとも、それに近い強さが必要だと思います。そのためには確固たる信念と政策に対する知見が必要なのは、言うまでもありませんが。いずれにしろ今日本が求められているのは、「甘さ」「ユルさ」からの脱却でしょう。

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2022年11月11日 (金)

最優先すべきは経済対策や安全保障政策 旧統一教会問題に〝前のめり〟過ぎる岸田首相に何よりも重要な大局観

Images-23  最近の岸田首相の政権運営には疑問符が付きます。今回はそれを端的に表した政治評論家の伊藤達美氏の、zakzakに寄稿したコラムから引用して紹介します。タイトルは『最優先すべきは経済対策や安全保障政策 旧統一教会問題に〝前のめり〟過ぎる岸田首相に何よりも重要な大局観』です。

これまでの岸田文雄首相の政権運営は丁寧で慎重であった。党内各派や国民世論の動向など、八方に目配りを欠かさなかった。時にはメンツにこだわらず、方針転換もいとわない。「我慢」と「辛抱」の政権運営だったといえる。

ところが、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題が表面化した後、当初の丁寧で慎重な政権運営が見られない。最近の岸田首相を見ていると、「えっ、それはないだろう」と言いたくなる言動が目立つ。

典型的な例が、経済再生相を辞任したばかりの山際大志郎氏を、自民党のコロナ対策本部長に起用したことである。山際氏は、旧統一教会問題に関連して国会答弁や記者会見で虚偽発言を繰り返し、内閣支持率を急落させた元凶と言っても過言ではない。

国民は、山際氏のウソが次々と発覚して辞職に追い込まれた事実を知っている。その山際氏をなぜ、わざわざ党のコロナ対策の責任者に起用しなければならないのか。

また、岸田首相は10月24日の衆院予算委員会で、旧統一教会の被害者、被害者弁護団弁護士と面会する意向を示した。首相は8日、被害者とひそかに面会していた事実を明かした。

岸田首相が言うように、「被害者、弁護士の方々をはじめとする関係団体の意見を聞くことは大事」であることは否定しない。ただ、急いで面会する必要があったのか。教団や被害の実態が明らかになってからでも遅くなかった。

私には、旧統一教会問題に対する岸田首相の姿勢が「前のめり」過ぎるように思えてならない。この問題は、憲法の「信教の自由」「結社の自由」との兼ね合いや、「宗教法人と行政の関係」など、専門的な議論を深める必要がある。

そのためには、例えば、憲法、刑法・民法、宗教の学者、弁護士など、専門家による諮問委員会などを設置するのも一つの方法ではないか。少なくとも、一時の国民感情を背景にして、政治判断で押し切っていく筋合いのものでないことだけははっきりしている。

岸田首相が最優先で取り組むべきは、経済対策や安全保障政策である。

政府は先に決定した総合経済対策を実施するための2022年度第2次補正予算案を国会に提出するが、一日も早く審議入りし、速やかに成立させることが大事だ。

さらに、北朝鮮のミサイル発射は常軌を逸している。中国の台湾海峡やわが国の沖縄県・尖閣諸島周辺における行動も目が離せない。安全保障上、これほどの緊張感が高まった状況はこれまでなかったのではないか。

何よりも重要なのは大局観だ。そのためには、政府部内や与党との意思疎通、情報共有が欠かせない。そのうえで、担当者や専門家の議論に任せる部分と、政治判断すべきところをしっかり仕分けることも必要ではないか。

 昨今の安全保障環境や経済問題に重点を移し、憲法問題をはじめ、国家国民のために何が大事かを見据えた上で、政策の舵取りを正常に戻すことが、岸田政権の最重要課題でしょう。それができなければ早々に次の有能な政治家にバトンを渡すことを願います。

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2022年2月 8日 (火)

ヒットラー発言の菅元総理、かつて「イラ菅」又の名を「暴走老人」

Images-5_20220207203401  ヒトラー発言で物議を醸している立憲民主党の最高顧問、菅直人元首相。彼は市民運動家として活動後、政界に進出したわけですが、政界進出前の逸話が有吉佐和子氏から語られています。

 作家でジャーナリストの青沼洋一郎氏が、JBpressに寄港した記事に、その状況が記載されています。タイトルは『「暴走老人」菅直人の危険性を48年前に見抜いていた有吉佐和子 「この若者にはどうしても嫌われたい」と言わしめた傍若無人ぶり』(2/7)で、以下に引用して掲載します。

 ◇

 立憲民主党の菅直人元首相の言動が物議を醸している。

 まずは、日本維新の会に関する「ヒトラー」発言だ。1月21日に自身のツイッターにこう書き込んでいる。

〈橋下氏をはじめ弁舌は極めて歯切れが良く、直接話を聞くと非常に魅力的。しかし、「維新」という政党が新自由主義的政党なのか、それとも福祉国家的政党なのか、基本的政治スタンスは曖昧。主張は別として弁舌の巧みさでは第一次大戦後の混乱するドイツで政権を取った当時のヒットラーを思い起こす〉

 これに維新は猛反発。菅氏は立憲民主党の最高顧問であることから、1月26日に維新の藤田文武幹事長が、同党の泉健太代表あてに撤回と謝罪を求める抗議文を提出。しかし、泉代表が「菅氏の個人的発言」とつっぱねると、こんどは維新の馬場伸幸共同代表が、2月1日に衆院議員会館で隣の菅氏の事務所にメディアを引き連れて乗り込んで、抗議文を手渡している。その模様はネット上でも公開されているが、ここまでくるともはや抗議を利用した互いの宣伝活動だ。

「新たな暴走老人」の声も

 菅氏の言動は、政府、自民党も反発している。

 欧州連合(EU)欧州委員会が、二酸化炭素を出さない原発を地球温暖化対策に資する“グリーン”な投資先として認定する方針を示したことに、首相経験者として小泉純一郎、細川護煕、鳩山由紀夫、村山富市の4氏と連名で、方針撤回を求める原発反対の書簡を1月29日までに送っていた。

 この中に、東京電力福島第1原発事故で「多くの子どもたちが甲状腺がんに苦しんでいる」との記載があったことに、岸田文雄首相は2月2日の衆院予算委員会で「誤った情報を広め、いわれのない差別や偏見を助長することが懸念される。適切でない」と発言。名を連ねた元首相5人に宛て、山口壯環境大臣が注意を求める書簡を送ったことを明らかにした。自民党の高市早苗政調会長も同日の会見で、強く抗議している。

 こうした菅氏の言動に立憲民主党内から「新たな暴走老人」と呼ぶ声があることを伝えるメディアまで出てきた。

48年前に有吉佐和子が見抜いた人間性

 しかし、菅氏の「暴走」については、いまにはじまったことではない。いまから48年前に、当時の菅直人青年の「暴走」ぶりを指摘し、命を奪われる危険性すら懸念していた著名な作家がいる。

“才女”とも称された有吉佐和子だ。彼女が著して話題となった『複合汚染』の中に、若かりし日の菅直人の描写がある。

『複合汚染』は、1974年10月14日から8カ月半にわたって、「朝日新聞」朝刊の小説欄に連載され、単行本化されるとベストセラーとなった。

 小説というよりはノンフィクションで、もともとは米国の生物学者レイチェル・カーソンが1960年代に、農薬汚染など現代に通じる環境問題をはじめて指摘して世界中に衝撃を与えた『沈黙の春』が基調となっている。

 当時の日本でも、農薬や化学肥料による土壌汚染にはじまり、食品添加物を交えた食品汚染、化学洗剤による河川、海洋汚染の実態、さらには自動車排気ガスによる大気汚染などが、相乗的に絡み合い、環境を破壊し、健康被害をもたらす実情を、総合的に描いたものだった。

 この作品の冒頭は、1974年夏の参院選に立候補する市川房枝の選挙活動の裏話からはじまる。著者は市川の選挙応援演説のため、数寄屋橋を訪れたところで、石原慎太郎とすれ違う。――そう、この2月1日に亡くなった作家で元東京都知事の石原慎太郎だ。そこで著者は石原に当時、噂されていた都知事選の出馬の意向について話を向けるのだが、煙に巻かれて終わる。実際に、石原は翌年の都知事選に立候補するのだが、現職の美濃部亮吉に敗れている。都知事になるのはそれから25年後のことだ。

「殺す気か」

 そして、石原慎太郎と別れ、数寄屋橋で市川房枝と合流したところで、青年グループのリーダーが演説をしている。それが菅直人だった。以下に本文を引用する。

【市川房枝を無理矢理ひっぱり出した青年グループというのは当時マスコミに喧伝されていた。数寄屋橋の袂に仮設した演壇の上で、彼らのリーダーが演説している。

「僕らがですね、再三再四、市川さんの出馬を要望しても、市川さんは紀平悌子という後つぎもできたことであるし、自分も歳だからといって頑として辞退し続けたんです。ところが今年の正月に僕たち市民運動の会で餅つきをしたんです。市川さんも杵を振り上げてペッタンコペッタンコと餅つきをしたんです。それで僕たちは先生があんまり上手に餅をついたんで驚いて、こんなに元気なら引退することはないじゃないかって考えたんです。そして僕たちは市川房枝を勝手に推薦する会というのを作りました。ハンコは僕たちで勝手に作って届けようって相談していました」】

 これが1974年の菅直人青年だった。一言一句が克明に記録されていて、いまの菅氏にも通じる口調の特徴がよく捉えられている。

 

 ところが、著者はこの演説を聞いている最中に、支持者のひとりから、こう打ち明けられる。

【「いま喋ってる男の子は菅さんっていうんだけど、市川房枝がどうしても駄目だったら有吉佐和子を勝手に立候補させようって言ってたのよ」】

 それを聞いた有吉は、作中でこう語る。

【私は背筋がぞうっとした。それが本当なら危ないところだった。それまで私は新聞で青年グループの存在を知り、親愛の情を寄せていたが、これは気をつけなくてはいけない。彼らに好かれたら私の作家生命が危なくなる。(中略)私は彼らから嫌われる存在にならなければいけない。そう思い決めた。】

 時代を代表するベストセラー作家による貴重な菅直人評だった。

 また、当時81歳だった市川房枝を担ぎ、九州、沖縄、名古屋、大阪、東京、そして長野・・・と、日替わりで日本各地を遊説して回らせる青年グループのスケジューリングを知って、

【殺す気かという言葉が喉まで出て来たのを私は呑み下した。青年グループ。彼らは若さにまかせて、市川房枝の年齢を忘れ、候補者の健康保持を忘れて、暴走している。】

 そう酷評している。はっきり「暴走」と書いている。だが、「暴走」していたのは、若さだけが理由だったのだろうか。

【この若者にはどうしても嫌われたいのだ、私は。】

 再三に亘って、有吉佐和子からそう毛嫌いされていた青年は、それから30余年が経ち、日本の首相になった。

暴走による候補者担ぎ出しを「政治活動の原点」と胸張る元首相

 その首相在任中に東日本大震災の発生と、福島第1原子力発電所の事故を招く「複合被災」の対応に迫られた。その発生直後の混乱の最中に、官邸を離れて制御不能になった原発に向かったことは、現場の首相対応に労力を割かれて事故処理への支障となったこととあわせて、のちに批判の的となっている。

 菅氏が首相の座について最初に行った2020年6月11日の所信表明演説の冒頭で、自らの政治家としての出所をこう語っている。

「私の政治活動は、今を遡ること三十年余り、参議院議員選挙に立候補した市川房枝先生の応援から始まりました。市民運動を母体とした選挙活動で、私は事務局長を務めました。ボランティアの青年が、ジープで全国を横断するキャラバンを組むなど、まさに草の根の選挙を展開しました」

 その時にはすでに、自己満足が優先して他者の事情や健康、さらには自身の置かれた立場や責任に思いが至らない稚拙な青年の姿に、「殺す気か」と心の中で叫ぶ慧眼の大人が、すぐ脇に立っていた。そのことを、当人が知らないとしたら、これほど不幸なことはない。

 

 「暴走老人」はかつて石原慎太郎氏でしたが、元祖は菅氏だったようです。一方この菅元総理、もともと「イラ菅」と言われ、人に当たることも多かったようです。立場や状況をわきまえぬ言動は、福島原発事故直後の現場の混乱など無視して、視察を無理強いするなど、多くの事例があります。

 「イラ菅」に関する特集記事も組まれました。政治評論家の小林吉弥氏がexiteニュースに寄稿したコラムがそれです。タイトルは『歴代総理の胆力「菅直人」 「イラ菅」の異名が付いた理由』(2020/8/31)で、以下に引用します。

 ◇

 菅直人という元総理大臣の一端を物語る、こんなエピソードがある。

 昭和56(1981)年秋の臨時国会。時の衆院の行政特別委員会で、社会運動家として鳴らした市川房枝女史とともに立ち上げた少数野党「社民連」の1年生代議士だった菅が、質問に立った。

 国家予算の歳出項目に、国が都道府県にどれだけの補助金を出したかを示す「補助事業費」というのがある。国による、公共投資の目安となるものである。その配分上位は、東京、北海道、大阪、愛知といった大都市。当時14支庁が集まり、北海道開発庁まで置いていた北海道が、順位ともども大方ベスト5の常連であった。

 ところが、昭和57年度に“異変”が起きたのだった。日本海側の一雪国であるハズの新潟が、一気に愛知の次の5位に躍進、その後は愛知を抜いて4位、ついには東京、北海道に次いで3位まで躍進するのである。新潟が5位に入ったのは、田中角栄の蔵相時、4位が自民党幹事長、3位が幹事長、通産相時、そして総理大臣のときだったのである。

 ここでは、田中が実力者の階段を駆け上り、予算獲得に腕力を示したことが分かるのだが、菅が行政特別委員会の質問で、これにクレームをつけたということだった。

「田中角栄氏の出身地である新潟県は、他県と比べて補助金が断然多い。これは、どう見てもおかしいのではないか」

 ところが、この委員会所属議員には田中派議員が多くおり、菅に猛烈なヤジを浴びせたのである。

「新潟は広いんだ。もっと勉強して来いッ」

「雪をどうする! それが政治というものだ」

 このあとの質問はズタズタ、菅はくちびるを噛むようにして質問席をあとにしたものである。

 あえて、若き日の菅のこうした例を引いたのは、菅という政治家のリーダーシップの根幹を見るためである。

 すなわち、市民運動上がりらしく国民の不満が奈辺にあるかの直感力はなかなかだが、一方で大局観に欠け、独断専行に走るきらいがあるということだった。また、権力欲もなかなかのものがあるようであった。

 さらには、前任総理の鳩山由紀夫は東大工学部卒だったが、こちら菅は東工大応用物理学科卒でともに「理系脳」、すなわち物事の進め方は「情より知」が先行するタイプで、菅の場合はこれに自分の意に沿わぬ相手にはすぐイラつき、情け容赦なく怒鳴りつけるというヘキが加わり、「イラ菅」の異名が付いていた。ために、人の集まりが悪く、民主党内の求心力は脆弱で、政権運営はことごとく躓いたのだった。結果、前任の鳩山同様、一年で退陣を余儀なくされた。しかも、政策的な実績はほぼゼロと言ってよかったのである。

 その政権を振り返ってみると、政権に就いて早や1カ月後の7月には参院選が待っていたが、財務省からの消費税10%の増税案を口にしたことで、参院選は敗北した。しかし、その直後となる9月の代表選は対抗馬に強力候補が出ずで、からくも「再選」を果たすことはできたのだった。

 しかし、その後も、政権運営は迷走の連続だった。折から、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉が政局の焦点に浮上してきたが先送り、鳩山前総理が口火を切った沖縄の普天間飛行場移設の代替案を、自ら模索せずであった。

 一方で、政権基盤の強化を模索して、自民・公明両党との「大連立構想」を打診したが、時の自民党総裁・谷垣禎一から「1党独裁に通じる巨大政党の誕生は好ましくない」と一蹴されている。

 そのほかにも、安易に日本の国債格下げ問題に言及して大恥をかき、引き上げるべき法人税を「引き下げる」と答えたり、TPP交渉を「IPP」交渉と読み違うなど、経済・財政の弱点も見せつけた。

 ◇

 前の元総理鳩山由紀夫氏から続く菅総理の民主党2年間は、まさに悪夢の時代だったと言えるでしょう。続く野田元総理はこの二人の失政の尻拭いと共に、タイミング悪く尖閣の国有化を進め、中国胡錦濤主席を激高させた問題も残ります。

 欧州委員会への書簡送付問題で、物議を醸した5人の元首相の中で、唯一現職の国会議員である菅氏は、「暴走老人」ならぬ「悪夢時代の老人」と言うことを自覚して、職を辞することをお勧めしたいですね。

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2021年10月19日 (火)

党内で嫌われる小泉進次郎氏、要因はその「物言い」

20_20211019101801  「親の七光り」という言葉があります。会社経営や芸能の世界に多く見られますが、政治の世界もまた然りです。小泉進次郎氏、親にかの有名な小泉純一郎元総理大臣を持ち、同じ地盤を受け継いで衆議院で当選を重ね、今や自民党の若手のホープと言われるようになりました。環境大臣など閣僚も経験しています。

 ただこの小泉氏、党内で抜群の信頼を得るには至っていません。むしろ眉をひそめる議員もいるようです。そのあたりの概要を、NEWSポストセブンの記事から引用します。タイトルは『小泉進次郎氏の「万歳三唱批判」に自民党関係者は「またか」の声』(10/18)です。

 衆議院が解散し、事実上選挙戦に突入した最初の週末である10月16日、応援のため兵庫県入りした小泉進次郎氏が永田町の風習に異を唱えた。衆院議長が解散を宣言した後に、本会議場で万歳三唱をする慣例を批判したのだ。

「みなさん、万歳三唱をみましたか。解散のときにみんな、万歳を言うんです。なんで言うんですか? 国民のみなさんに大声を出すのをやめましょうと言っているじゃないですか。本会議場でなぜ、大声でばんざーいって言っているんですか」(日刊スポーツ10月16日付)

 10月17日付日経新聞朝刊のコラムでは、コロナ以前から進次郎氏が「なんで万歳するんですか、わかりませんよね。だからしないんです」と疑問を呈していたことから、「惰性や前例主義の壁をどうぶち破るか」が課題だと紹介された。しかし、自民党関係者は、「いかにも進次郎氏らしい発言」だと呆れながら首を傾げた。

「進次郎氏の発言はいつもそうです。レジ袋を有料化する際にも『辞退するのが当たり前の社会にしたい』と言ってレジ袋を欲しがる人=悪のイメージを植えつけました。自分の改革に賛同する人は未来志向、反対する人は守旧派だと見せたいのでしょう。たしかに万歳三唱は合理的でないかもしれませんが、この言い方では万歳している人たちにとって、『自分らがバカみたいと言いたいのか』と不満が出てしまう。正直『またか』という感じですね」

 進次郎氏のこうした物言いが、党内での立場を悪くしているのは間違いない。河野太郎氏を担いで負けた9月の総裁選では、安倍晋三氏が実質オーナーを務める細田派を念頭に「最大派閥の方から高市(早苗)さんと岸田(文雄)さんを支持すると発言があったと聞き及んでいる。これは言い換えれば河野太郎は絶対だめだということ。そのこと1点をもってしても誰が自民党、日本を変えられる新しいリーダーかは明らかだ」と発言して党内の不興を買った。前出の自民党関係者が続ける。

「この進次郎氏の発言には、自らの考えで高市氏や岸田氏を支持していた若手議員からも『我々がすべて派閥の論理で動いていると決めつけないでほしい』と不満の声が上がりました。総裁選後、進次郎氏は冷や飯を食わされることになりましたが、党内ではあまり同情の声は聞こえません。

 対照的に、進次郞氏の盟友だった福田達夫氏は、今回の総裁選で若手議員を束ね、派閥に囚われない投票行動を呼びかける『党風一新の会』を率いました。最後は岸田氏支持を表明したものの決してその考えをメンバーに押しつけることはなかった。その言動は若手議員の信頼を得て、今や若手のリーダーは完全に進次郎氏から福田氏にシフトした印象です」

 そうした進次郎氏の言動には、父・純一郎氏からの影響が見て取れる。しかし、それは純一郎氏の過去を知らないからではないかと、ベテラン政治ジャーナリストは言う。

「たしかに純一郎氏は、『古い自民党をぶっ壊す』『郵政改革に反対するのは抵抗勢力だ』と次々に敵をつくることで支持を得ました。しかし、それは首相になって以降の話で、それ以前の純一郎氏は、異端児ではありましたが厚生大臣、郵政大臣などを歴任してしっかり実績を積み重ねていた。それだけのキャリアを重ねたからこそ、強いメッセージに説得力が生まれた。今の進次郎氏は、その下積みがないままにお父さんのイメージをうわべだけなぞっているようにしか見えません」

 冷や飯生活の今こそ、地道に実績を積み重ねる好機かもしれない。

 ◇

 確かに解散時の「万歳三唱」には多少の違和感はあります。どちらかというとやめた方がいいでしょう。ただ問題はそうではなく、進次郎氏の他の発言と併せて考えた場合のことのようです。記事中にもあるように自分の発言に賛同する人は「未来志向」、反対の橘人は「守旧派」と、決めつけたような言い方をすることに、違和感を持つ人が多いのでしょう。

 私も以前から彼の発言は「軽い」と思っていましたが、この「決めつけ」の部分が加わると、さすがに一段低い評価とならざるを得ません。もう少し自分を磨いて出直した方がいいでしょう。対照的に同じ「親の七光り」の恩恵を受けている、福田達夫氏はいわゆる「おとな」の対応をして、総務会長に抜擢されました。

 一方進次郎氏の父、小泉純一郎氏は首相時代一貫して「靖国参拝」を繰り返し、中韓の非難にも毅然と対応した実績は高く評価したいと思いますが、近年の「脱原発」の主張には、頭がおかしくなったのかと正直落胆しました。もうかなり前に政界を引退したのですから、静かな老後を過ごしてもらいたいものです。

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2021年10月16日 (土)

歩く風評被害 山本太郎の「放射脳」

3b428554f19241cea8cf6aeebf984cfc いよいよ実質的な選挙戦に突入しました。各党それぞれ候補者擁立の準備に余念がないでしょう。立憲民主党と共産党の理念なき野党共闘の話も進んでいるようです。社民党とれいわ新選組も共闘に加わるとか。

 そのれいわ新選組、小選挙区、比例併せて23人擁立するようです(読売新聞)が、滋賀3区の選挙区では、共産党統一候補に自党の候補をぶつけて、物議を醸しています。

 実はれいわ新選組の代表山本太郎氏は、過去原発問題を中心に、様々な問題発言をしています。立憲民主党や共産党の枝野代表や志位委員長の発言もひどいですが、山本太郎氏は最悪です。その内容を月刊hanadaプラスの坂井広志氏のコラム『歩く風評被害 山本太郎の「放射脳」』(10/8公開)に見ることができます。以下に引用して掲載します。

 ◇

「水に流す」という言葉があるが、「水に流せない」こともある。2011年、「高濃度汚染地域・東京から山本太郎です。超高濃度汚染地域、福島・東北にお住まいの皆さん、こんにちは」「避難してください。未来はないです。子供たちを無理心中に引き込まないでください。大人として、子供のためにも疎開してください」と発言した山本太郎を再び、国会議員にしてもいいのか。

******

給食を食べたら被曝する

「左派ポピュリスト」と呼ばれているれいわ新選組代表の山本太郎の主張ははたしてどの程度正しいのか、あるいは理に適っているのかどうか。「山本太郎ファクトチェック」ではそのことを問い、彼の経済政策や思い描く理想的な社会は「ファンタジー」にしか見えないという結論で締めくくりました。

今回はその第2弾ということで、山本太郎が政治の道を志すきっかけとなった原発問題について「ファクトチェック」したいと思います。

山本が平成23年5月に「YouTube」(ユーチューブ)で動画配信したこのメッセージを覚えている方は、どれくらいいらっしゃいますか。

山本は平成23年3月11日の東京電力福島第一原発事故の際、散々風評をまき散らしましたが、その原形はここにあると言ってよいでしょう。

冒頭から、「高濃度汚染地域・東京から山本太郎です。超高濃度汚染地域、福島・東北にお住まいの皆さん、こんにちは」と、福島県民や東北の人たちの気持ちを逆撫でするような言い方をしています。これを聞いただけで不快になった方は多いでしょう。

そのうえでこう呼びかけています。

「避難してください。世界中に例を見ない最悪な事故です。進行中です。毎日、とんでもない濃度の汚染物質、空から降ってきています。海に垂れ流してます。この状況で生活するのはあり得ないです。がんになっているのを待っているだけです。避難してください。未来はないです。子供たちを無理心中に引き込まないでください。大人として、子供のためにも疎開してください」

実に無責任かつデリカシーのかけらもない発言です。「無理心中」という刺激的な言葉を使うあたりも、その無神経さは許し難いです。

自身のブログ「山本太郎の小中高生に読んでもらいたいコト」でも言いたい放題でした。平成25年5月8日付にはこんな記述があります。

「君が食べた朝ご飯、安全だった? 君が学校でほぼ毎日食べる給食、安全かな? 残念ながら、かなり食べ物に対して気を使わなければあなたの身体は被曝し続ける」

「東電原発からの『距離』で安心しちゃいけない。毎日の生活に大変で現状に気づけていない大人たちに教えてあげて。まずは、あなたの学校の給食や食堂にフォーカスしてみない? 君からの問題提起で、周りの友だち、大人たち、先生を本気にさせて。自分や友だち、大切に想うひとを守る為に。事故から二年。急がなきゃ。これには皆の命がかかってる。皆で病気になってどうする? 長生きしよ! そして長く人生楽しもうぜ!」

給食を食べたら被曝すると小中高生に囁くという、それは実に悪質なものでした。

歩く風評被害と呼ばれて

彼は、自らの過去の発言や発信について反省しているのでしょうか。

これは、原発ゼロの社会を目指している市民団体「たんぽぽ舎」が2019年1月に東京都内で開催した講演会での発言です。

「マスコミには関連企業からお金が落ちている。みなさんの怒りが捻じ曲げられてしまう。私なんか『歩く風評被害』という名前になってますから。『狼と踊る男』みたいな。『ダンス・ウィズ・ウルブズ』みたいな名前をいただいて、光栄なんですけれども……」

マスコミは自分たちの怒りをちゃんと伝えてくれないばかりか、自分のことを「歩く風評被害」と批判する、と言いたかったのでしょう。「狼」が風評で、「踊る男」が自分ということなのでしょうか。いずれにしても、自虐ギャグのつもりなんでしょう。

『ダンス・ウィズ・ウルブズ』とは、ケビン・コスナーが監督、主演などを務め、日本で平成2年に公開された米国映画です。

19世紀の米国を舞台に、インディアンと交流を深め、「狼と踊る男」と呼ばれるようになる南北戦争の英雄の姿を描いた作品。山本太郎は「狼と踊る男」というよりは「狼少年」ならぬ「狼中年」といったほうがお似合いのような気はしますが……。

この発言で会場には笑いが起きましたが、笑いを誘っている場合ではありません。思想的に、政策的に近い団体が開催した講演会とあって、会場を盛り上げるためのリップサービスだったのかもしれませんが、反省は微塵も感じられません。

2019年11月の福島県郡山市での街頭演説では、「福島県内にも『山本太郎、死ねばいいのに』と思われている方が大勢いることを知っています。『歩く風評被害』と呼ばれたこともあります。『あいつはデマをまき散らして』ということも言われました」と語っています。

「歩く風評被害」というキャッチフレーズがよほどお気に入りなのでしょうか。使用頻度は高いです。

自身をこれほど客観視できるわけですし、2021年3月で事故から丸10年を迎えるのですから、そろそろ謝罪してもいいのではないでしょうか、と言いたいところです。もっとも、「謝罪」そのものはしています。

では、何に対して謝罪しているのでしょうか。郡山市内でも語っていますが、2019年7月の福島市内での街頭演説ではより詳細に謝罪しているので、そちらの演説を見ていきましょう。事故当時のことをこう振り返っています。

「私は『逃げてくれ』と言った。『逃げてくれ』と言っても、どこに逃げるんだよって話です。新しい環境用意してくれるの? 簡単に『逃げろ』と言うけど、家族が移動する交通費しかないんだってことを、福島のある家族の方から言われた。その時に、自分がぶん殴られたような思いになった。原発問題以外に、地盤沈下した人々の生活もあることに初めて気づいた。とんでもない、世間知らずだったんですよね」

そして、こう続けます。

「そんな大きな声出してもこの現実を変えられないということに関して、責任も持たずに発言してきたことに関して深く深くおわび申し上げたいです」

そうです。無責任に「逃げろ」と呼びかけたことをわびているのです。これは、風評被害をまき散らしたことへの謝罪ではありません。

街頭演説は原発問題に続けて、消費税や社会保障、貧困などの問題に突入していくわけですが、「地盤沈下した人々の生活」という言葉を持ち出して話を転換していくその話術は、なかなか巧みです。

「逃げろ発言」への反省は、本題に入る前の所詮イントロですか、と突っ込みたくなります。

風評被害に対する謝罪はなし!

話術が巧みとはいえ、思うようにいかないこともあるようです。街頭演説は聴衆から質問を受け付けて答えるスタイルをとっているのですが、ある男性からこんな言葉を浴びせられました。

「ようこそ福島へ。山本太郎さん、いま、ここにいるの、怖いですか。県民は真面目に物を作って、真面目に米を作って、でも米売れないんですよ。それはなぜか。風評被害があるからです。山本さんのツイッターを見れば『怖い、危ない』と危険を煽って……。だから福島は危ないところなんだ、と全国民は思ってしまうんですよ。それが政治家の役目なんですか」

これに対し、語気を強めてこう言ってのけたのです。

「たしかにそれが風評被害ならば、私は煽るべきではないと思っています。ただ、原発事故によって起こったこの福島の状況は風評ではなく、実害なんですよ。もう国会のなかでは、ほとんど原発のことも被曝のことも語られなくなってきているんですよ。私は泣き寝入りさせたくないんです。だって、これは皆さんが起こした事故じゃないんですよ」

再び、「精いっぱいのなかで『逃げてください』という話をしちゃった」と話を振り出しに戻し、持論を展開させます。

「2011(平成23)年の空間線量、特別高かったですよね。私が政府だったら、いっときであろうと全国に分散して避難をしていただいて、いったん放射線量が下がった段階でもう一度、情報を提示しますから、戻られる方、戻られない方、いろいろですよ、それぞれで。それぞれ個人で具体的に決められるような情報を提示しますって。それをやってほしかった」

ダメ押しのように、「言葉をもっと選べばよかった。もっと違うアプローチがあったんじゃないかって。いまだから思える。未熟でしたよ。いまも未熟です。粗削りです。でも私がいま、発言している国会の内容は、申し訳ないですけど風評被害ではない。実害のほうに対して逃さない。それをどうするのかってことをやっているのです」云々。

「風評ではなく実害」。この言葉もよく聞かれます。そう言われるとそんな気になってしまうかもしれませんが、よくよく考えると訳の分からないロジックです。「自分は風評をまき散らしたわけではなく、国や東電が実害を起こした」と言いたいのでしょうが、正しくは「彼がまき散らした風評が福島県民にとって実害となった」ですね。

福島市内での街頭演説では「謝らなければならないのはそれだけじゃない」と語り、「逃げてくれ」発言以外についても言及しています。それはこれです。

「これまで電力を使い続けてきた。どこから電気が来ているかなんて知らなかった。地方を踏みつけてでも大都会に電気を送るというシステムが原発だった。金で黙らせてきた。札束で黙らせてきた。不健全な形で使い続けていかなきゃならないような状況を作り出してきた」

「そんなことも知らずに、何のありがたみも感じずに電気を使い続けてきた。東京のために大変な思いをされた福島の方々に、東京都民の一人としておわびしたいです」

「原発立地地域の住民を札束で黙らせてきた」と言わんばかりです。極めて失礼な発言です。福島県民のなかには、深くプライドを傷つけられた人がいたのではないでしょうか。

結局、終わってみれば、風評被害に対する謝罪はなし。自分の言いたいことばかりを声高に叫び、誠意を見せているようでいて、その実、福島県民の自尊心をズタズタにしている。それが実態ではないでしょうか。

「原発ゼロ」も空理空論

エネルギー政策についても見ていきましょう。れいわ新選組のホームページを見ると、「エネルギーの主力は火力」と書いてあります。2019年11月の福島県郡山市での街頭演説では、もう少し詳細に語っています。

「原発で安全でいるというのはあり得ない。原発に頼らないエネルギーといえば、現実をみつめれば、火力でしばらくつなげていくしかない。当然のことです。自然エネルギーのインフラですべてを賄うのは無理だと思っています。蓄電の技術などを考えれば。しかし、火力のなかでも環境への負荷が少ない液化天然ガスとかを使う」

液化天然ガス(LNG)を使うことに異論はありません。石油に比べて中東への依存度は低いですし、燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量が少ないのも大きなメリットです。

しかし資源エネルギー庁などによると、LNGの買い手は、LNGの調達量や調達期間を柔軟に調整できないという問題があるようです。LNGを輸出するためには天然ガスを液化する施設が必要で、これに非常に多額な初期投資が必要なのです。液化施設の事業主は15年や20年などの長期契約を買い手に求めることで、多額な投資を可能にしてきたわけです。

日本のLNGの買い手である電力・ガス事業者は、平成28年4月以降の「電力・ガス市場の小売り全面自由化」で競争が激化し、調達量について柔軟に対応したいと考える傾向があります。しかし、短期間での売買は容易ではない。課題は少なくありません。

技術的な話になってしまいましたが、要は「言うは易く行うは難し」の世界なのです。自然エネルギーですべてを賄うのは、たしかに現実的ではありません。結局は、原発を含めエネルギー源を多様化させるのが現状では現実的な選択と言えます。LNGは伝家の宝刀ではないのです。

平成25年7月22日に放送された報道情報番組「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ系)で、司会の宮根誠司は参院選初当選直後の山本に「じゃあ原発を止めよう、その代わり、極端な話、江戸時代の暮らしに戻しましょう、なのか。その辺の話をちょっとしてもらわんとね」と振りました。

これに対し、「やっぱりその刷り込みが一番怖いんですよ。宮根さんが言われている言葉が」と正面から答えず、論点をずらしました。

脱原発後のエネルギー政策は、山本にとって弱点となっています。もちろん、これはれいわ新選組に限らず、「原発ゼロ」を訴えている立憲民主党も同じです。原発をゼロにしたうえでの現実的なエネルギー政策は、なかなか見当たりません。

アホでマヌケな国会質問

国会質問でも、危険を煽る姿勢は変わりません。むしろ拍車がかかっているくらいです。平成27年7月29日の参院平和安全法制特別委員会で、こんなことを質問しました。

「川内原発の稼働中の原子炉が弾道ミサイル等の直撃を受けた場合、最大でどの程度、放射性物質の放出を想定していらっしゃいますか、総理」

「弾道ミサイルが飛んできた場合、原子炉、その近くに着弾した場合、もしそれが破損した場合に、一体どのような状況になるか。漏れ出すというものに対して、計算されていないということですよね?」

煽る、煽る。そして、たどり着いた結論がこれです。

「原発にもしもの事故があったとしても、東電福島原発のような事故があったとしても、そしてそのほかにいま一番危険とされている、安倍総理、安倍内閣が声高に叫び続ける中国、北朝鮮からのミサイルの着弾が原子力施設にあったとして、被害があったとしても、要は一度被曝していただくという話ですよ。こんないい加減な話あるかよって」

いやいやいや、こんないい加減な質問あるかよっていう話です。

こうした攻撃やテロの類の話をめぐっては、ほかにも危険な想定をすることができ、その想定への政府の対応をすべてあからさまにするのは、手の内を明かすようなものです。

かくかくしかじかのリスクがあるからこそ、日米安保の強化や外交力、防衛力の強化が必要という議論を展開するならいざ知らず、極めて危険な事態を叫ぶことに終始するのは、国民を恐怖に陥らせるだけです。

「百害あって一利なし」とは、このことです。

どのレベルまで国民に公開し、理解を得るのか。基準はあるでしょうが、時の政府の判断という部分もありましょう。だからこそ、政府への「信頼」というのは極めて重要であることを付け加えておきたいと思います。

ミスリード命の山本太郎

山本は原発事故が起きた約1カ月後に、東京・高円寺で行われたデモに参加しています。このときは仕事への影響も考え、顔を隠していました。もちろん、ばれてしまうわけですが……。

それがあるとき、吹っ切れたそうです。著書『僕にもできた! 国会議員』(筑摩書房)のなかで、こう説明しています。

「全部吹っ切れたのが、年間積算線量が1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げられた時ですね。放射線従事者の規則が書いてある電離放射線障害防止規則で定められた『放射線管理区域』でも1年間で5ミリシーベルトを超えて被曝してはいけないことになっている。(中略)20ミリシーベルトと言ったら、放射線管理区域の4倍です。大人よりも放射線への感受性が高いと言われる子どもに対しても、国は20ミリに引き上げたのです」

これの是非は散々議論されました。20ミリシーベルトに緩和したことを非難する人もいれば、被曝リスクは小さいと主張する人もいました。

このあたりの評価は専門家に譲りますが、独裁国家でも共産国家でもないこの国の政府の誰が「国民は被曝してよい」と思うでしょうか。

「放射線管理区域の4倍」という、一時よく使われた「東京ドーム何個分」といったような分かりやすい表現でリスクを単純化するのは、国民をミスリードするだけです。

山本は自身の発信力を自覚していることでしょう。確信犯的な言い回しは、そろそろ戒めてもらいたいです。

消費税ゼロは客寄せパンダ

最後に、れいわ新選組とは何なのかということを考察しておこうと思います。「山本太郎ファクトチェック」で触れたとおり、山本は『ニューズウィーク日本版』(2019年11月5日号)のインタビューで、「私のなかで一丁目一番地から原発・被曝問題が外れたわけではありません」 「原発問題に関心を持ってもらうためにも、最初は入り口を広げておくんです。扉を最大限に広げておくためには、経済政策が大事ですよ」と語っています。

これは確固たる信念のようで、数々のインタビューなどで同様の趣旨のことを語っています。朝日新聞の2019年9月28日付朝刊のインタビューでは、「私自身重要な問題と思っているので、政権奪取できれば、安保法制はなくします。でも、原発でさえ争点にならなかったのが日本社会です。一方で、消費税は誰しもが毎日払っている。自分ごととして引き寄せやすい」と話しています。

月刊誌『文藝春秋』2020年2月号で、「『政界の風雲児』本気の政策論文 『消費税ゼロ』で日本は甦る」と題した論文を発表しましたが、そこに原発問題に関する言及はありません。「原発隠し論文」といえます。

彼にとって「本気」なのは「原発即時禁止」であり、経済政策がそのためのツールであるのは明らかです。そういう意味では、れいわ新選組がシングルイシュー政党に近い存在であることは間違いありません。

就職氷河期世代に焦点を合わせ、貧困問題をクローズアップさせるあたりは、他の野党に比べ、問題意識は時宜に適ったものといえますが、消費税廃止などの経済政策を一皮むけば、原発即時禁止という非現実的な政策が頭をもたげていることを忘れてはいけません。

シングルイシューを実現するために、平気な顔で「だまし討ち」を仕掛けようとするこの人物に政治家の資格があるのかどうか、甚だ疑問です。

 ◇

 政治家の資格など全くありません。なぜなら原発即廃止や消費税ゼロを実施した場合の代替エネルギーの補填や他の財源の見通しなど、きちんとした計算に基づく政策は全く持ち合わせてないからです。そうした「スローガン」だけで、国民を騙す人物は政治家の資格はありません。

 日本の国会の制度で徹底的に欠けているのは、政党間の相互質問という制度がないことです。野党は殆どが質問側。それも相手は政府であって純粋には与党ではない。ですから例えば消費税ゼロや原発ゼロと言った場合、それに反対する党、主として与党がその根拠や実現性を鋭くつくことができないわけです。結果としてそうしたことを真剣に考えない政治家が、野党に多く存在するようになるわけです。

 野党も政策の提案(消費税やエネルギーなど)をした場合、その根拠および効果と実現性を、与党が突っ込んで質問できるよう、国会質疑の制度を是非変えて欲しいと思いますね。

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2021年10月11日 (月)

桂春蝶氏:高市早苗氏が政調会長ではつまらない、岸田氏の人事

Images-10_20211010205701  岸田政権が発足し、所信表明演説も終わって、世の中は一気に総選挙モードになりました。相変わらず野党は政権批判のオンパレードですが、かといって彼等の政策は何なのか殆ど見えてきません。こんな状況ですから政権交代はまずないでしょう。

 ところで岸田政権の目玉は、内閣よりも党にあり、甘利幹事長と高市総務会長がその両翼を担っていると考えて間違いないでしょう。

 その高市氏、早速政調会長の立場として、『矢野財務次官が、新型コロナウイルス禍を受けた経済対策論争を「バラマキ合戦のような政策論」などと表現したことに対し、「大変失礼な言い方だ」と不快感を示したとNHKの番組で述べ、「基礎的な財政収支にこだわって本当に困っている方を助けない。これほどばかげた話は無い」と強調しました。』(読売新聞)。

 この高市氏の政調会長への登用に対し、落語家の桂春蝶氏がzakzakに、次のようなタイトルで記事を寄せています。『岸田氏の落ち着いた人事、高市氏が政調会長ではつまらない 阪神の野村・星野監督に相当』(10/5)で、以下に引用して掲載します。

 自民党総裁選は岸田文雄氏が勝利し、4日、第100代首相に選出されます。ただ、人事にしろ何か落ち着いていて面白みがない。高市早苗氏を政調会長というのもつまらない。官房長官や外相、防衛相にしたら良かったのに。

 自民党はなぜ、岸田総裁を含めて、このような布陣で次期衆院選に臨もうとしたのか? それは野党が情けなさすぎて、弱すぎて、「これでも十分に勝てる」と考えているからでしょう。

 例えば、プロ野球セ・リーグ。私は阪神タイガースのファンですが、最近の阪神はホームで広島に3連敗するなど調子がよくありません。でも、まだ優勝の可能性があるのは、ヤクルトと巨人がよく負けるからです。阪神が負けても、ヤクルトがDeNAに連敗してホッとしている。そんな状況と、いまの自民党は似ていませんか?

 「まあ周りも壊滅的やしな。現状維持で何となーく行こう。そのうち選手の調子も上がるやろ…」

 これと同じ状況で時間が稼げるのは、自民、公明与党以外が弱すぎるからだと思います。

 でも、本当にこのままでいいのか? 私はそうは思いません。阪神で例え話を続けますが、自民党の「岸田総裁」という決定は、1980年代後半から90年代暗黒期の阪神に似ていて、なあなあ感覚で生え抜きの監督を続けていたころと同じ臭いがします。

 阪神が今日、毎年でもAクラス入りできるようになったのは間違いなく、外様の野村克也さんと星野仙一さんを監督に招聘(しょうへい)したからです。あの人事は、虎のすべてを変えたと言っていいでしょう。選手やフロント、オーナー、親会社の価値観を激変させました。あれがなかったら、いまだに万年最下位だったと思います。

 さて、自民党内でいま、その勢いがある政治家は高市氏しかいません。この人の「毅然(きぜん)とした態度、話し方」は、どこから来るのだろうと思います。

 実は、関西の大学出身の首相は過去2人(=京都大学卒業の池田勇人氏と、神戸大学中退の宇野宗佑氏)しかいないそうです。それ以外は、東京系だとか。奈良出身で神戸大学卒業の高市氏は、初めから「群れられない環境」のなか、強くたくましく育ってきたのではないでしょうか?

 岸田氏は「私の特技は、人の話をしっかり聞くこと」という。では、中国や韓国の言うことも、しっかり聞くのでしょうか?

 高市氏は、中韓に厳しく対峙(たいじ)する姿勢です。靖国神社参拝も「どの国でも、国策に殉じられた方に敬意を表し、感謝の気持ちを捧げている。これを外交問題にしてはならない」と語ります。ここを強く主張できるのは素晴らしいことです。

 阪神における「野村監督」「星野監督」という存在の再来、自民党に置き換えると、それは高市早苗氏だと思うのです。

 ◇

 岸田総裁選出の自民党は、80年代から90年代のなあなあ感覚で生え抜きの監督を続けていた阪神と同じ臭いがする、というたとえは、岸田首相には少し耳が痛いでしょうが、その後、野村監督や星野監督を据えて強くなった、その存在と同じように、自民党を安定した強い政党に維持する役割が高市早苗氏にある、と桂春蝶氏は言っているのです。

 私も同感で、腰の引けた、あるいは優等生然とした自民党役員、閣僚の多い中で、持論を曲げず国益最優先で政策や行動を進める高市氏に、おおいに期待を寄せています。また省益ファーストの省庁にもどんどんもの申していただきたい。そして次の総理に向けて頑張っていただきたいと強く思いますね。

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2021年10月 2日 (土)

シンパからも見放される、共産党頼りの無策の枝野立民 

13_20211002102401  岸田政権誕生が間近に迫る中、野党第一党の立憲民主党の「批判だけの政党の性格」は変わらないようです。自身が変わらないのを棚に上げておいて、岸田新総裁の選出後、報道陣に枝野代表は「自民党は変わらない。変われないということを示した新総裁の選出だった」と指摘。岸田氏には「安倍晋三、菅義偉両政権と何がどう違うのかを説明いただくことがまず最初だ」と語り、10月4日召集の臨時国会で予算委員会を開くよう求めたようです。

 さらに続けて「国民生活を疲弊させ、結果的に経済を低迷させてきた『アベノミクス』を否定するのか、肯定するのかを明確に示すことが必要だ」とも強調したとメディアは報じています。『アベノミクス』が「国民生活を疲弊させ、結果的に経済を低迷させてきた」と決めつけたその理由も、またその数字も示していません。もちろん示せないのでしょう。要するに批判のための批判と言うだけですから。

 今朝の産経新聞の「産経抄」に「言い得て妙」の記事が掲載されていますので、以下に引用します。

 ◇

「賽(さい)は投げられた」。共和制の古代ローマの将軍、カエサルはこう言ってルビコン川を渡り、イタリア半島制圧を目指す。さいころの目が吉凶どちらと出ようが、もう後戻りはできない行動に出た際に使う有名な言葉である。立憲民主党の枝野幸男代表は今、カエサルの心境だろうか。

▼とうとう立憲民主党は、次期衆院選で政権交代を実現した場合に、共産党から限定的な閣外協力を受けることで合意した。政府は共産党について「破壊活動防止法に規定する暴力主義的破壊活動を行った疑いがあり、暴力革命の方針に変更はない」との公式見解を示しており、タブーに踏み込んだ形である。

▼カエサルはローマを落とし、やがて終身独裁官に就く。賭けに勝ったといえるが、その死後、ローマは帝政へ移行していく。そういえば共産党の志位和夫委員長は平成12年の委員長就任以来、21年間も選挙を経ずにトップの座を維持している。

▼枝野氏は自身の立場を「保守でありリベラル」と定義しているが、共産主義にも抵抗がないらしい。あるいは本気で政権を獲(と)りにいく気はないので、共産党の選挙支援で一定議席が確保できさえすれば、政権交代後どうなるかは真剣に考えなくていいということか。

▼「立憲民主党。残念ながら私の中では終了です」。民主党政権で官房副長官、総括副幹事長などを務めた松井孝治慶大教授は自身のツイッターで、こんな「決別宣言」をつづっていた。枝野氏の決断は、立憲民主党にいちるの望みを託していたシンパの失望も招いた・

▼「賽を投げる」に似た響きの慣用句に、「さじを投げる」がある。「医者が病人を見放す」「見込みがなく手を引く」という意味だが、有権者の気分はカエサルよりも後者の方か。

 ◇

 政府批判を続けても、国民には何も伝わらないでしょう。今までも立党時のご祝儀支持率10%超えは達成できず、5-6%を行ったり来たり、それはしっかりした国家観を示す政策がないからにつきます。ですから共産党にすがり、それだけが議席を伸ばすチャンスだと、タブーに手を突っ込んでしまうのでしょう。

 次の首相になる予定の岸田新総裁に、せめてお祝いの言葉を贈り、「ともに日本をよくするために力を合わせて、国政を進めましょう」、と言う大人の対応は、太陽が西から昇るように、絶対無理なのでしょう。子供の喧嘩のような批判しかできないのですから。

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2021年9月30日 (木)

自民党総裁に岸田氏、新政権の主導権は「3A」へ

10_20210930101201  昨日の自民党総裁選、大方の予想通り岸田文雄氏が勝利し、第27代総裁に選出されました。河野太郎氏は一回目の投票でも1票差ながら岸田氏に敗れ、決選投票では大差で敗れました。高市早苗氏は一回目議員票で河野氏を凌いで2位につけました。本人も多くの支持を得たことに喜びを隠せませんでした。

 岸田政権の今後の見通しについて、日経ビジネス編集委員の安藤毅氏が、日経ビジネス電子版にコメントを寄せていますので、引用して掲載します。タイトルは『自民党総裁に岸田氏、新政権の主導権は「3A」へ』(9/29)です。

 ◇

 自民党総裁選は9月29日、投開票が行われ、岸田文雄氏が決選投票で河野太郎氏を破り、第27代総裁に選出された。岸田氏は10月4日召集の臨時国会で第100代首相に指名され、同日中に新内閣を発足させる見通しだ。票固めに貢献した安倍晋三前首相、麻生太郎副総理・財務相、甘利明党税制調査会長の「3A」などが影響力を増す見通しの新政権は、程なく衆院選で国民の審判を仰ぐことになる。

 今回の総裁選は中堅・若手議員の要望を受け、多くの派閥が支持候補の一本化を見送った。議員票382票と同数の党員・党友票の計764票を巡って争われた1回目の投票では議員票でトップだった岸田文雄氏が1位となったが、過半数に届かなかった。河野太郎氏が2位に入り、高市早苗氏が3位、野田聖子氏が4位だった。

 過半数の票を獲得した候補がいなかったため、岸田氏と河野氏による決選投票に持ち込まれた。議員票と都道府県連47票の合計で争われ、1回目で高市氏に投票した議員からの支持も積み上げた岸田氏が河野氏を抑えて新総裁に選出された。

 新総裁選出後、岸田氏は「生まれ変わった自民党を国民に示し、支持を訴えていかなければならない。総裁選は終わった。ノーサイド、全員野球で自民党が一丸となって衆院選、参院選に臨んでいこう」と訴えた。

昨年の反省から「攻めの姿勢」へ

 岸田氏は外相や党政調会長などの要職を歴任し、党内第5派閥の宏池会(岸田派)を率いる。2020年9月の自民党総裁選に初めて出馬して菅義偉首相に敗れたが、石破茂元幹事長を上回り2位だった。

 昨年の総裁選では岸田氏の決断や準備作業が遅れる間に、二階俊博幹事長が当時官房長官だった菅氏への支持をいち早く表明。党内7派閥のうち5派閥が菅氏への支持を打ち出し、菅氏優勢の流れが早々と固まった経緯がある。

 党内では岸田氏について「誠実」との評がある一方、「決断力に欠ける」「おとなしい」といった見方が広がっていた。

 これまでの反省も踏まえ、岸田氏は「ラストチャンスとなりかねない」とみた今回の総裁選でいち早く出馬を表明。党の中堅・若手議員らの菅首相や二階氏への不満を吸い上げ、党役員任期を1期1年で連続3期までに制限するなど党改革案を前面に打ち出し、「政治生命をかけて新たな政治の選択肢を示す」と攻めの姿勢をアピールした。

 経済政策では「小泉改革以降の新自由主義的政策の転換」を掲げ、成長と分配による「新しい日本型の資本主義」を目指すと訴えた。

 一方で、当面の経済政策では安倍晋三政権時から続く大胆な金融緩和、機動的な財政支出、成長戦略の3本柱を維持する意向を表明。原子力発電所の再稼働や核燃料サイクル継続に前向きな姿勢を示し、敵基地攻撃能力の保有を選択肢の一つと位置づけた。

 さらに、憲法改正に積極的に取り組む姿勢を強調するなど、安倍氏を中心とする党内の保守系議員や保守層の関心が強いテーマへの配慮を示し、決選投票での幅広い議員票獲得につなげた。宏池会トップの首相就任は宮沢喜一氏以来となる。

ベテラン、参院議員は「安定重視」

 これに対し、1回目の投票で勝ち切るシナリオを描いていた河野氏は総裁選の終盤にかけて伸び悩んだ。陣営には知名度が高い石破氏や小泉進次郎環境相が参加。目前に迫る衆院選の「選挙の顔」としての役割や党改革への期待などを追い風に、党員・党友票で圧倒的な支持を集める狙いだったが、安倍氏の全面的支援を受けた高市氏が支持を広げ、その影響も受けた形だ。

 議員への支持拡大も思惑通りに進まなかった。石破氏は党内で影響力を持つ安倍氏や麻生太郎副総理・財務相との確執がある。小泉氏が安倍氏や安倍氏の出身派閥である細田派への批判的な言動を強めたことで、「決選投票になる場合、河野総裁だけは何としても阻止しようと派内が引き締まった」と安倍氏は漏らす。

 さらに、ベテラン議員、参院議員の間で、河野氏の唱えるエネルギー政策や年金制度改革、政権担当能力などを不安視する空気が広がったことも河野陣営には誤算だった。来年夏の参院選を見据える参院議員からは「来夏まで安定的な政権運営を続けることが何より大事だ」として、岸田氏の安定感に期待する流れが強まった。

 また、菅首相の退陣表明と総裁選効果で自民党の政党支持率が上昇し、「とにかく衆院選の顔として人気が高い河野氏を選ぶしかない、との切迫感が薄れたことも議員心理に影響した」と細田派の中堅議員は指摘する。ただ、党員票でトップだった河野氏が敗れたことには「世論との乖離(かいり)」といった批判が広がる可能性がある。

 一方、無派閥ながらかつて所属した細田派や保守系議員、保守層から一定の支持を集めて善戦した高市氏は今後の活動への足場を固めた。安倍氏は高市氏について、「保守派のクイーンになるね」と評しており、岸田政権でも人事で優遇される可能性がある。

 低支持率にあえいでいた菅首相の退陣表明で構図が一変した今回の総裁選。4氏が立候補したことで討論会やテレビ出演の機会が増え、自民党の認知度や新総裁への期待が高まり、自民党の政党支持率の持ち直しにつながったことは間違いない。日本大学の岩井奉信講師は「政権維持に向けた自民党の生存本能が発揮された」と評する。

 総裁選の実態は「総裁選という名を借りた権力闘争」(麻生氏)だ。2度目の挑戦で勝利をたぐり寄せた岸田氏が最大の勝者だが、今回の総裁選で鮮明になったのが安倍氏の衰えぬ政治的影響力だ。

11_20210930101801 高市氏支援で示した安倍氏の政治力

 安倍氏は当初、菅首相の再選を支持していた。だが、首相の総裁選不出馬表明を受け、自らの長期政権で進めた保守路線を維持し、河野氏や石破氏の勝利を阻止する狙いから、細田派に隠然たる影響力を持つ森喜朗元首相との間で高市氏を支援することで一致。

 推薦人集めに始まり、細田派の大半の議員や他派閥の議員にも自ら対面や電話で高市氏への支援を要請するなど、全面的に高市氏の支持拡大を後押しした。

 28日には安倍氏の意向を踏まえ、岸田、高市両陣営の間で、どちらが2位になっても決選投票で協力することで合意していた。高市氏を支援した安倍氏に近い議員が語る。

 「高市さんの得票は事実上、安倍さんの政治力の反映。高市さんの善戦で総裁選が盛り上がり、自民党が活性化した。議員票で岸田さんに大いに恩を売ることにも成功した。岸田政権でも改憲への注力など安倍路線の基本は維持される。細田派で主要ポストも取ることができれば、万々歳だ」

 岸田氏は早急に党運営の要となる幹事長などの党役員人事を固め、主要閣僚の人選を進める。総裁選での貢献度合いに加え、政権基盤の安定を考慮し、最大派閥の細田派を実質的に差配する安倍氏、第2派閥の麻生派を率いる麻生氏への配慮を重視する見通しだ。

 また、岸田氏は半導体や医療品などの戦略物資を確保し、重要技術の海外流出を防ぐ経済安全保障にも注力する構え。麻生派に所属し、今回の総裁選で岸田氏を支持した甘利明党税制調査会長が熱心に取り組む分野だけに、党内では安倍氏、麻生氏、甘利氏のいわゆる「3A」の影響力が高まるとの見方が広がっている。

 総裁選で「国民の声に耳を澄まし、納得感のある丁寧な説明が重要だ」と繰り返した岸田氏。新型コロナウイルスの感染防止と経済社会活動の両立へ対策を加速させ、菅政権の課題とされた発信力や説明力を高めるのが喫緊の課題だ。看板に掲げた党改革や経済対策、「新しい日本型資本主義」の絵姿を迅速に示すことも求められる。間近に迫る衆院選、来夏の参院選という2大ハードルを控え、新政権はすぐに実行力を試されることになる。

 ◇

 いずれにしても、皇室やエネルギー、対中外交、年金政策に不安要素の大きかった河野氏が敗れたことは何よりでした。高市氏の善戦も期待通りでした。このコラムにあるように、3Aが今後の自民党への影響力を維持していくでしょうが、岸田新総裁が強い日本、物言う日本に政策を導いていくことを期待します。

 河野氏も石破氏のような反主流派にするのではなく、しかるべき待遇を処することも必要かも知れません。そして何より高市氏を主要なポストで厚遇していただければと思います。あすの日本のために。

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2021年9月28日 (火)

自民党総裁選、菅・安倍両氏の戦略眼の凄み

8_20210928095101  自民党総裁選も、投開票日がいよいよあすに迫ってきました。4候補とも最後の追い込みに奮闘されていると思いますが、言うまでもなくこの選挙の勝者は日本国の総理大臣になります。そして近づく総選挙の自民党の顔になるわけです。

 誰がなるかも重要ですが、この総裁選で戦う候補者の顔ぶれ、そしてその論戦が、自民党員や与党支持者へのメッセージとして、総選挙への取り組みに影響を与えるかも知れません。

 そのあたりの背景を青山社中リーダー塾筆頭代表の朝比奈一郎氏が、JBpressに寄稿したコラム『衆院選を見据え総裁選の熱狂演出する菅・安倍両氏の戦略眼の凄み 大局を見て決断する力、「新総裁」には備わっているのか』(9/27)から見てみましょう。以下に引用して掲載します。

 ◇

 自民党総裁選が大詰めを迎えています。29日には国会議員による投票と開票作業が行われ、その日のうちに新しい総裁が決定することになります。

 実は、4人の候補のうち、野田聖子さん以外の3人の方には、過去、青山社中フォーラムにご登壇いただきました。お三方とは、その際に対談させていただいたり、また政策づくりの支援をさせていただいたり、あるいは経産省在職中に立ち上げた「プロジェクトK」(新しい霞ヶ関を創る若手の会)の代表をやっていた際からの繋がりがあったりと、これまでそれなりのご縁をいただいています。そこで、直接にやり取りさせていただいた際の私なりのお三方の印象を、以下のようにまとめてみました。

*アイウエオ順。①は全体の印象、②はフォーラム登壇時などのエピソード的印象、③は総理になった場合のイメージ

紳士的で丁寧、安定性なら随一の岸田氏

【岸田文雄さん】

①オールラウンドに政策の細部も良く勉強しておられていて、説明が正確で広汎。人柄的にはとにかく紳士。ただ、よほどその分野に興味を持っていない限り、普通の人にとっては、講演や演説はやや退屈か。話の中にウィットや優れた話術的なものは感じない。基本的に丁寧な話しぶりだが、「サービス精神にあふれる」という点では微妙か。

②青山社中フォーラム時に寄せられた「外務大臣当時に被爆時の広島選出議員でありながら、なぜに核兵器禁止条約に反対しているのか」という質問については、割と分かりやすく苦渋の表情を浮かべながら、丁寧に経緯や想いを説明されていた。とても正直な方なのだと思う。また政調会長室(当時)で会わせていただいた際も、良くも悪くも凄いオーラみたいなものはなく、丁寧な、しかし淡々とした対応だった。

③コロナ対応など、急場に強い印象はないが、岸田派の若手(木原誠二さん、小林史明さんら)がしっかり支えていくイメージはあり、よほどの難題が降りかかってこない限りは、手堅く政権運営をしていくのではないか。めちゃくちゃ人気が上がる、ということはないと思うが、極端に下がることもないイメージ(ただ、コミュニケーション力が高いわけではなく、また「大胆な決断が出来る方」という印象はないので、危機時は別)。

説明能力は抜群、しかし安定性の面では少々心配な河野氏

【河野太郎さん】

①いわゆるクリティカル・シンキングがしっかり出来る方で、自分の頭で納得できないことについては、しっかりと詰めて行って解を出す。そういう意味では、行革大臣・規制改革担当大臣などは天職と言って良いのではないか。ただ、岸田さんや後述する高市早苗さんに比べると得意分野以外の政策には粗も感じ、ムラがある印象(そこをブレーンや周囲がどう補うか)。

 また世間で良く言われるように(私も自民党の部会等で目撃したことがままある)、怒りに任せて官僚などをすぐ怒鳴ってしまうところがあるので、ここをどう改善できるか。

②青山社中フォーラム時には、私や視聴者からの質問意見への回答ぶりが素晴らしかった。普段、お話している時以上に、聴衆の前だとさらにスイッチが入る。抽象的説明と具体的事例のバランスが絶妙。説明能力高し。

③少なくとも当初の内閣支持率はかなり高いものになるはず。国民一般とのコミュニケーション力も高く、滑り出しは上々か。小泉進次郎環境相の要職での起用が想定されるが、これも人気上昇要因になると思われる。ただ、正論を率直に言われるところは魅力だが、裏を返すと、目測力があってのことではないケースも多く、総理になってからの安定感はやや心配。

 外務大臣就任前のODAや在外公館に対するスタンスが、大臣就任後にコロッと変わられたことなどが記憶に新しいところで、立場が総理となると、「やっぱり認識が変わりました」で済まないところもある。また、「核燃料サイクル中止」が典型だが、河野氏の主張の中には、すぐには皆が折り合いを何とか付けられる解を出すのが難しい問題もあり、総理としては「(沖縄の普天間基地の移転先を)最低でも県外」と言い切って苦労した鳩山氏同様に行き詰まらないかが心配。人気取りに止まらない真に支える閣僚・ブレーンの配置が死活的に重要になりそう。

「保守の代表」という立ち位置が左派からの攻撃対象になる可能性もある高市さん

【高市早苗さん】

①かなりの政策通で勉強家。細部をきっちりと理解してから自説を出されるので政策的安定感がある。今回の出馬もそうだが、「決断する時はする」という思い切りの良さも。ただ仲間の不在が心配。今回は安倍晋三前総理の大応援が際立つが、仲間だからというよりは、後述する安倍さんなりの戦略に基づくものと思われ、元夫で自民党衆議院議員の山本拓さんが援護射撃をしているものの、一般論としては、近しい友達・仲間・子分のイメージが見えない。保守層が思想面から応援するのだろうが、真剣に支える人がどれだけいるか。

②青山社中フォーラムでの講演時には、当時重要とされていたかなり幅広い分野について深い造詣を示しておられ、私としても感銘を受けた。また高市さんが政調会長時に、政策づくりの支援をしたことがあるが、私のような者にも「朝比奈先生」と丁寧な対応で、また普通のお礼以上に労をねぎらう態度を示してくださるなど、いい意味で政治家としての幅も感じた。今回、高市さんの著書(『美しく、強く、成長する国へ。』WAC BUNKO)も拝読したが、テクノロジーへのこだわり・理解の示し方が全体バランスから見るとかなり極端な印象はあるが、そのことも含め上記の重要分野について勉強する政策通という見立てを裏切らない内容。ウィットに代表されるコミュニケーションの幅はこれからの課題か。

③保守の代表、という立ち位置なので、安倍政権同様、最初は、左派メディアや、もしかするとその背後にチラチラ見える外国勢力などから、色々と足を引っ張られる恐れも(既に、ヒトラー翼賛のようなレッテルを貼られつつある)。仮に総理になれば、安倍さんがかなり支える感じになるか。

 ただ、若い世代からすると、LGBTQや選択的夫婦別姓への見方については付いていけないところがあり、メディア等で、意図的にそこがかなり強調される展開になると、やや苦しいか(もちろん大事な点だが、安保や経済など、より喫緊の課題ではないところでネガティブイメージを貼られるのは辛い展開か)。

 お三方の評価については、以上です。以下、全体の総裁選の帰趨についての考えや、タイトルにある菅さん・安倍さんの動きについての感想を述べたいと思います。

河野vs岸田の構図に高市氏が割り込んでくるか

 総裁選の帰趨については、世上色々と言われてはいますが、今後大きな波乱が起こらずこのまま進めば、〈決選投票となって最終的には岸田さん〉という流れになる公算が高いと思います。

 というのも、世論調査で頭一つ抜け出している河野さんですが、党員・党友票では圧倒的になる感じがこれまでのところありませんし、これ以上の盛り上げは難しそうに見えるからです。そうなると、議員票は、特に決選投票ではより安定的に岸田さんに流れていくのではないでしょうか。

 河野さんの強みは世論調査での支持率の高さですが、それが、イコール党員・党友票、議員票とはなりません。

 特に、総裁選後にすぐに選挙がある衆議院議員は、現在の世論を相当に気にしつつ選挙戦に突入することになるのですが、選挙が約1年後の参議院議員(しかも、全員ではない)などは、今回の菅政権しかり、最初の安倍政権しかり、発足当初に高い支持率を出しながら、1年で劇的に下がってしまうパターンを気にしています。そんなこともあり議員票の多くは、安定性(支持率の上下が少ない状態)が期待できる岸田さんに流れている印象です。

 ただ総裁選中盤以降、高市さんへの支持が予想以上に伸びている印象もあります。岸田政権を警戒している二階派が(安倍政権下から色々あり、先日の岸田さんの「二階外し」の動きが決定的でしたが、互いに「憎し」との感じもあり)、集団で高市さんへの応援に回るようなことになると、高市さんが決選投票に上がってくる可能性もゼロとは言えません。対中スタンスの面では、高市さんを支持する保守派と二階俊博幹事長とでは真逆ですが、いざとなればそのくらいの差異を乗り越えて行動するのが二階さんの強みでもあります。

 しかしつくづく残念に思うのは、4候補の、大局的な外交戦略や、中長期的な経済戦略など、国を大きくどう引っ張って行くかというところについての考え、見識がほぼ見えてきていないことです。これはメディアのレベル、国民のレベルに負うところが大きい点ですが。

 自民党の総裁選は事実上、総理大臣を決める戦いですので、本来なら大局的な時代認識・改革プランを主軸に論戦を戦わせるべきだと思います。ところが、これまでの討論会などを見ていても、どうも個別政策論に話が寄り過ぎな印象があります。「コロナ対応をどうするか」的な話は分かりやすくはありますが、正直、誰がやってもあまり変わりません。ワクチン接種を進め、病床を確保し、必要に応じて自粛を要請するというものです。そこを論じ合っても、あまり意味はありません。

菅総理、「総裁選不出馬」表明の絶妙なタイミング

 その点、話は少しそれますが、戦略眼と動きという点だけでいえば、菅義偉総理、安倍前総理の大局観に基づいた「動き」は、流石だと思います。

 まず菅さんですが、追い込まれたという面があるのは確かですが、9月3日に突如、総裁選不出馬を表明しましたが、あの時点でパッと身を引いたのは、もちろん自らの「余力残し」的な発想もあるでしょうが、党全体のことを考えると最高のタイミングでした。それまで菅批判一色だった世論は、今度は自民党の総裁選の行方に釘付けになりました。その結果、野党に対する注目度は劇的に減りましたし、自民党にも「人心一新」のイメージが付き、衆院選はかなり戦いやすくなったはずです。

 菅さんは総理としてやるべき仕事ことは着実にやってきました。

 総理就任直後の昨年10月には、2050年までにカーボンニュートラルを実現すると宣言し、気候変動に関する政策の舵を大きく切りました。米国で環境問題に冷淡だったトランプ政権から民主党のバイデン政権に切り替わる前にうまくやり切ったと思います。日本だけ世界から置いてきぼりになるところでした。さらに今年9月にはデジタル庁を発足させましたし、不妊治療の保険適用や携帯料金引き下げという実績もあります。それに、なんといってもコロナ下の難局のなかでオリンピックとパラリンピックをやりきった。いずれも実行力のない総理の下では実現できなかった問題です。残念だったのは、国民に対するコミュニケーション能力に少々欠けていた点です。そこで支持率を大きく下げてしまいました。

 しかし極端なスキャンダルがあったわけではないのに身を引いてくれたことに、実は感謝している自民党議員は少なくないはずです。二階さんレベルまで行くかは分かりませんが、おそらく菅さんは今後も党内で隠然たる影響力を持つ政治家として活躍していくことでしょう。

安倍前総理、「高市推し」の真意

 そして、さらに秀逸だと唸らされたのは、安倍前総理の「高市さん推し」の決断です。もしも安倍さんが短絡的に「キングメーカー」になることを目指すなら、元々後継に考えていた(はずの)岸田さんを推して、勝ち馬に乗れば良い。ところが、敢えて、かなり負ける可能性の高い高市さんを推すのです。これは凄い決断です。「森友や加計の問題を蒸し返されたくないから高市さんを支持している」的な解説もありますが、そもそも高市さんが勝つ可能性が極めて低いわけですから(特に決断時には)、そこに賭けても仕方がありません。

 そう考えると、安倍さんの「高市さん推し」の真意は、「総裁選後の衆院選で野党を伸張させたくない」という一点にあるはずです。衆院選で自民党支持層の3~4割を占めるとされる保守層を動かすために、総裁選では敢えてその層と親和性の高い高市さんを推す決断をしたのだと思うのです。

 もしも総裁選が最初から最後まで「河野さんvs岸田さん」の構図になってしまうと、保守層はシラケてしまい、その後の衆院選でも十分に動かなかった可能性が高い。ならば、仮に今回、高市さんには負けてもらってもいいので出馬をしてもらったほうがいい――そう判断されたはずです。

 党員の中の保守層が応援したくなる人物が総裁選に出てくれれば、その層も選挙戦で大いに盛り上がります。実際に高市さん支持はかなりの盛り上がりを見せています。その上で負けたとしても、その後の衆院選に際しては保守層は「総裁選で負けはしたけど、自分たちも主体的に参加した選挙で選ばれた候補が岸田さんなのだから、今度はその新総裁の下で頑張ろう」となるわけです。この盛り上がりで、党員でなくても、そういう気分は出てくる(党員でない保守層も自民党候補に入れるべく衆院選の投票に行く)気がします。

 こうした菅さん、安倍さんの党勢全体を見たうえでの戦略眼と動きは、次の総理総裁にも是非とも求めたいところです。「株式会社自民党」の経営者としてライバル企業に負けないための最善の決断をしている感じを受けます。つまり、思想とか考え方以前の経営・運営力の卓越性ということになりますが、これは実際に経営とか組織運営をしてみないと出てこない「凄み」だと思います。派閥の長たる岸田さんは多少の経験はあるでしょうが、正直、この点が、4名に共通して心配な点ではあります。

 ◇

 菅さんや安倍さんが本当にこういう思惑で行動したかは、本人でなければ分かりませんが、全くの絵空事ではないと思います。特に朝比奈氏が述べているように、『安倍さんの「高市さん推し」の真意は、「総裁選後の衆院選で野党を伸張させたくない」という一点にあるはずです。衆院選で自民党支持層の3~4割を占めるとされる保守層を動かすために、総裁選では敢えてその層と親和性の高い高市さんを推す決断をしたのだと思うのです。』という部分、そして『党員の中の保守層が応援したくなる人物が総裁選に出てくれれば、その層も選挙戦で大いに盛り上がります。』というもくろみで高市氏を推したという見方は、選挙戦の中で保守層の盛り上がり(SNSでの高市氏賞賛の声は最大限盛り上がっています)を見ればうなずけるところです。

 もちろんこのまま高市氏が勝利し、総理になれば喜ばしいことですが、大方の見立て通り、岸田氏が最後には勝利する公算が高いでしょう。ただその場合でも『その後の衆院選に際しては保守層は「総裁選で負けはしたけど、自分たちも主体的に参加した選挙で選ばれた候補が岸田さんなのだから、今度はその新総裁の下で頑張ろう」となるわけです。』、となれば、安倍さんの高市氏推しの戦術が功を奏したことになります。ただその場合、岸田氏が高市氏を党の要職に就けるか、内閣の重要位置につけることが必須だ、ということは大前提ですが。

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