2040年以降の「太陽光パネル」の大量廃棄が問う「不都合な真実」
数日前に見たテレビ番組、「千葉県で中国由来の野生動物「キョン」が急激に増加。今や数万頭になり「人より多い」という声も聞かれる、そのキョンが居住空間に現れ被害が増大している」、という報道がありました。その中で、太陽光パネルが彼等の格好のすみかになっているようです。その下では雨がしのげて、雑草も生い茂っているからです。
今や日本全国の山林や耕作放棄地に設置されている太陽光パネル、電力の供給には大いに役立っていますが、台風や洪水での破壊も多く見られ、環境汚染にもなっている現状もあります。
そして更にもう一つの問題。写真家の半田也寸志氏がJBpressに投稿したコラムにその現状を見ることができます。タイトルは『2040年以降の太陽光パネルの大量廃棄が問う「不都合な真実」 写真家、半田也寸志が語る気候変動のリスクと現実(4)』(12/15)で、以下に引用して掲載します。
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英グラスゴーで開催されたCOP26は閉幕したが、気候変動に対する各国の足並みは揃っていない。その間にも、日々悪化する地球環境──。写真家として極地における地球温暖化の惨状を目の当たりにしてきた半田也寸志氏が、今地球で起きていることを綴った最終話。
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化石燃料からの脱却を最も推進しているはずの欧州でさえ、天候状況によって大きく左右される自然エネルギーだけでは需要を満たせず、いまだバックアップ電源として化石燃料に大きく依存せざるを得ない状況にあります。
現状のまま脱炭素産業の推進に急速に舵を切れば、エネルギー価格のさらなる高騰と、それが招くインフレはますます長期化することは間違いありません。このような状況で、少なくても短中期的には化石燃料より割高となる自然エネルギーの普及に、産業や人々はいったいどれほど耐えられるのでしょうか。
それだけでなく非正規雇用の多いインドの石炭採掘者やアメリカのシェールガスといった化石燃料産業、雇用の裾野が広い日本やドイツの自動車産業からも大量の失業者が出てくるでしょう。まさに、「不都合な真実」です。
また、脱炭素に向けたインフラ整備に伴う工事用車輌や建設資材、脱炭素製品の生産過程で吐き出されるCO2も無視できません。今後、脱炭素に向けた取り組みが加速すれば、排出量は今まで以上に積み上がるしょう。
問題はそれだけではありません。脱炭素産業に不可欠な希少金属鉱物資源の争奪戦は土壌や水質汚染、労働環境の劣悪さの問題もなおざりにされたまま煽られ、仮にその採掘地が海洋にも向かえば、次は海洋破壊にもつながりかねません。寿命が尽きたそれらの製品の廃棄方法についても、まだろくに議論すらされていないという現実もあります。
電極とシリコンを強力に固めたソーラーパネルはリサイクルが難しい上、耐用年数も30年ほどのため、2040年には日本だけでも80万トン超という膨大な量の廃棄パネルが生じる見込みです。それにもかかわらず、廃棄パネルの処理対策は議論すらろくにされておらず、現状では土中に埋めるしか手がないと言われています。
セレンやカドミウム、鉛といった有害物質が多く含まれるパネルは廃棄コストも高く、不法投棄が横行すればそれがもたらす土壌汚染の影響は計りしれません。
安価を売りにソーラーパネル製造世界シェアの大半を握る中国は、内モンゴル自治区のクブチ砂漠に建設した巨大なダラト・ソーラー発電所の稼動を前に、「中国中の砂漠を全てソーラーパネルで覆い尽くす」と、その野心を豪語しました。サウジアラビアなどの中東諸国も、日本などからの出資を得てこれに追随しようとしていますが、その先にある廃棄処理問題については何の言及もしていません。
EVに搭載されるバッテリーも普及に関して解決しなくてはならない問題が山積しています。
中国で大量に不法投棄されているEV車バッテリー
携帯電話やパソコンとは比較にならないほど膨大な量のコバルトやリチウムを必要とするEV車用バッテリーはその採掘地が限られているため、今後はこれまで以上に各国間で激しい争奪戦が始まり、また新たな政治的駆け引きや分断が生じる懸念があります。
それ以上に深刻なのは、採掘地が人権を問題視せず、弱者に圧力をかけて利得を得ようとする統治者が多く存在する最貧国や途上国に集中している点です。
コバルトの採掘地コンゴでは児童の強制労働問題が指摘されています。チリやボリビア、アルゼンチンの乾燥地帯に広がる塩湖での炭酸リチウム採掘場では、リチウム精製のために大量の水を使用して先住民の生活を脅かしています。
こうした人権問題を、サスティナブルやエシカルをまとっているはずの欧米企業がいまだに黙認して採掘を続けているのはなぜでしょうか。これを規制しても、こういうことに一切頓着しない中国企業を利するだけ、という西側のさめた駆け引きがあるからです。
EV車バッテリーの容量が70%を下回るまでの期間は6~10年程度と短く、使用後は蓄電用としてリユースするかリサイクルが必要になってきます。ただ、EV車用バッテリーは発火や爆発がしやすく、その処理には専用の処理工場と専門技術を持つ人材が必要です。
黎明期のEV車はそろそろこの段階に来ており、世界のEVの半数を製造している中国では、2020年だけで20万トンものバッテリーが廃棄されましたが、その半数以上が不法投棄されており、広東省ではその対策に頭を悩ませています。
EVバッテリーには土壌や水質を50年にわたって汚染するコバルトやニッケルといった重金属に加えて、人に深刻な中毒症状を与えるマンガンも含まれており、粉砕過程で大気中に拡散するリスクがあります。その処理には世界で統一された廃棄処理法整備が必要ですが、それについてはいまだ各国任せの状態です。
スウェーデン「ノースボルト」の戦略から見え隠れする各国の思惑
欧州では、既にスウェーデンの「ノースボルト」のように、バッテリーリサイクル処理場を工場内に併設する企業に資金援助を始めています。この処理場は大量の電力を必要とする熱分解ではなく、溶剤でコバルトやニッケル、リチウムといった金属資源を取り出す独自技術を持っており、EVの普及拡大に伴う資源価格の高騰にも備えようというものです。
ライフサイクル・アセスメントの観点からも、同社が水力発電に事欠かないスウェーデン企業であるのは有利で、欧州は域外からのバッテリーに高額な国境炭素税を設け、いまだ石炭火力発電頼みでありながらバッテリー製造の大半を握る東アジアからのシェア奪還を狙う戦略が窺えます。
バッテリーに関連した諸問題が未解決なのにもかかわらず、欧州諸国がハイブリッド車さえ認めずにEV化を急ぐのは、欧州製のハイブリッド車が世界を席巻した日本製ほど技術的に燃費を向上させられなかったこと、あるいはノルウエーのような、自動車産業がなかった欧州域の国を参加させやすくすることが理由だと言う人もいます。
長い経験の積み上げを必要とする先端エンジン製造技術を持たない中国もまた、これを絶好の産業覇権の機会と捉えています。中国政府は強力な資金援助でEV車価格の半分を占めるバッテリーの安価な生産に力を入れると同時に、それほどEV車製造に積極的でない我が国の企業を取り込み、日本電産のような最先端のモーター技術を持つ企業の技術の簒奪を狙っています。
既に、中国はEVの生産台数で世界の首位を走っています。将来的に中国は半導体などと共に自動車の完全内製化を進め、海外製品を締め出して世界的な産業覇権を狙う目論見なのでしょう。
我々はどこに向かうのか
脱炭素産業への変換を急ぐことは必須ですが、そこに仕掛けられた罠が数多く存在することも現実です。それが人々を懐疑的にさせるのも、仕方がないことかもしれません。
しかし考えてみて下さい。地球温暖化で最も被害を受けているのは、炭素の排出がほとんどない貧しい国の人々であるという現実を。そして、大国の思惑や駆け引きはともかく、我々人類は地球という一つの家に住んでいるということを。
今、本当に大切なことは、地球への思いやりと人類一人一人の自覚や教育。そして将来への責任感です。それが座視され、理解されないほど人類が愚かなのであれば、この美しい惑星から、我々人類だけでなく、多種多様な生態系をも犠牲にして絶滅していくだけでしょう。
人間はこれまでも様々な困難にぶち当たり、それを一つ一つ乗り越えてここまで発展して来ました。ゴーガンの「我々はどこへ行くのか」という問いに、我々はどのような答えを出せるのでしょうか。
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脱炭素という壮大な人類の計画には、地球の温暖化を和らげ環境破壊を最小限に食い止めると言う大きな目的があるのですが、半田氏の指摘のように、希少金属やその他の原料の大量消費とその争奪戦、それに伴う人権無視の採掘などがあり、また古くなった太陽パネルやバッテリーの大量廃棄など、再び環境問題を引き起こす要因が隠れているのです。
問題なのは、各国ともその実態と予見を明らかにしていないこと、中国のように様々な影響を無視して、ひたすら世界を席巻することのみに、注力する独裁国家がある事でしょう。「我々はどこへ行くのか」と言う問いに、答えを出せる国や指導者が現れるのか、それとも破局に向かって進んでいくのか、無視できない「不都合な真実」がそこにはあります。
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