医療費の増大が財政危機を招く
日本の財務状況については、GDPの2倍の借金を抱え、危機的状況だという意見もあれば、それは財務省の立場からの意見で、負債のみを問題にして、資産を隠している。しかも借金は国民からの借金で、ギリシャや他の財政危機国家とは違う。そう言う意見もあり、財政素人の筆者はどちらが正論かはよくわかりません。
だが財政支出の中で、この10年の間突出して増えているのが、福祉関係の支出。他の支出が漸増なのに、2倍にも膨れ上がっています。明らかに高齢者の増加がその大きな要因でしょう。年金、介護、医療いずれも大幅に増加しています。それぞれ保険なので、元来保険制度の中でやりくりすべきなのでしょうが、支出の増大を保険収入ではまかないきれず、税金の補填が必要とされるからです。今後ますますこの福祉関係の支出は増大するものと思われます。

この中でも、医療費は特に問題をはらんでいます。近年医学の進歩が進み、高度のや医薬が開発されています。それはガンや難病に苦しむ患者にとって非常にいいことには違いありませんが、医薬品メーカーの多額の開発費を回収するため、その価格は跳ね上がる一方。先端医療に詳しい里見清一氏によると、少し前2014年に出た肺がん治療薬は1錠6,615円。一日4錠必要で1年で966万円。他の先進治療薬は1回投与当たり134万円、2週に一度の投与で1年で3,500万円ほどになるといいます。
更にこれらの医薬は必ずしも全員に効くわけでは無く、効かない患者もいて、効かないのに投与している例もあるそうです。効くか効かないか、投与するまでわからないと言うことも実際多く、無駄に終わるのを覚悟で投与することに、医者も患者も躊躇しません。こうして完治しないまでも、少しでも延命することにより、満足するのもよくあることのようです。もちろん「あなたに効くかどうかはわかりませんから、投与は止めます」などと言うことは絶対言えないでしょう。
こうして多額の治療費が発生した場合、患者の支払い能力の問題が発生することが予想されます。しかし前出の里見清一氏によると、日本には国民皆保険の保険制度が有り、高額療養費制度もあります。この制度をフルに使えば、実際の医療費3,500万円の自己負担額は一般の収入の人の場合、年間70万円程度で済むようです。高齢者だともっと安く、生活保護所帯はタダになります。この差額はすべて保険、そして保険でまかなえなければ税金(実際保険収入はそんなに増えないでしょうから、増加分は殆ど税金)の投入となるわけです。
こうして医療が進歩すればするほど、医療費は増大し、その分財政支出も増大します。健康寿命が増えるのは結構なことですが、半病人的なまま寿命が延びれば、治療のためにますます医療費がかさむ。長寿社会は一見素晴らしいことのようですが、その分コストがかかります。少なくとも脳死状態の人や意識の回復が難しい人の、延命治療は止めるべきではないでしょうか。末期癌やその他の回復不能な患者で、自分で食べる意思のない人に、胃瘻までして食べ物を投与し、生かしながら高額薬品で治療継続することは、是非止めたいですね。そうでもしないと保険と税の国民の負担はますます増大し、医療コストで財政破綻を起こさないとも限りません。
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