大学

2022年10月24日 (月)

勉強しない日本の大学生と、死に物狂いで勉強するアメリカの大学生 企業の賃金構造が大学教育を堕落させる

20_20221024092801  日本が弱くなっている現状があります。昨今騒がれている日本円だけでなく、日本の国力そのものがここ30年あまりの間(相対的に)弱体化しているのです。それが一人あたりのGDPにも企業ランキングにも、生産性ランキングにも、そして大学のランキングにも現れています。

 どうしてそうなったのか、特に大学に焦点を当ててこの問題を論じているのが、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏で、現代ビジネスに寄稿したコラムから引用して紹介します。タイトルは『勉強しない日本の大学生と、死に物狂いで勉強するアメリカの大学生 企業の賃金構造が大学教育を堕落させる』です。

日本の人材は、国際的ランキングで評価が低い。日本人は大学入試までは必死に勉強するが、それ以降は勉強しないからだ。それは、日本企業が専門能力を評価しないからだ。アメリカでは、大学や大学院での成績で所得が決まるため、学生は必死で勉強する。

「高度人材」ランキングでも、日本の順位は低い

スイスのビジネススクールIMDが作成する世界競争力ランキングで、日本の順位が世界最低になる項目がいくつもあると、前回述べた。IMDが作成するもう一つのランキングである「世界タレント(高度人材)ランキングWorld Talent Ranking 2021」にも、日本が世界最低になる項目がある。

最新版の2021年度を見ると、全体では64カ国・地域の中で第39位だが、「経営層の国際経験」は64位で、文字通り世界最低位だ。

これ以外にも、「言語力」の62位は最低位に近いし、「管理職の能力」の58位も低い。

日本人が勉強するのは、大学受験まで

このランキングで私が注目したいのは、日本の評点は、高校までの教育成果を表す「PISA評点」では世界第5位と非常に高い評価であるにもかかわらず、「大学教育」では54位と低い評価になってしまうことだ(PISA調査とは、OECDが、義務教育修了段階の15歳児を対象行なっている学習到達度調査。読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野で実施している)

つまり、日本人は、高校生までは真面目に勉強するので世界トップクラスの評価になるが、大学に入学してからは勉強しないので、世界最低位に近い評価になってしまうのである。

これは、われわれの日常的観察とも一致する。

「ガリ勉」とか「点取り虫」というのは、小中高校生についていう言葉だ。大学に入ってしまえば、勉強しない。「大学に入学してから死に物狂いで勉強した」などと言ったら、よほどの変わり者と思われるだろう。

しかし、専門家としての教育は、大学・大学院で行なわれるのである。その段階で勉強しないのだから、高度人材のランキングが低くなってしまうのは、当然のことだ。

日本では初任給が一律なので、大学生が勉強しない

なぜ日本人は、大学で勉強しないのだろうか? その理由は簡単だ。日本の企業が、大学や大学院での教育成果を賃金面で正当に評価しないからである。

日本の企業は、採用にあたって、大学卒という枠を設けている。ただ、それは、「大学卒の枠で採用した人員は、将来、幹部に昇進しうる」という意味であって、大学で学んだ専門知識を評価しているのではない。

その証拠に、大学卒新入社員の初任給は、一律同額であるのが普通だ。金融機関では、企業間でも1円の違いもないほど一律だ。大学卒といっても、能力は個人によって大きな違いがあるはずなのだが、そうしたことは一切評価されない。

一方、大学は、入学した学生は、よほどのことがない限り、卒業させる。だから、学生は勉強しない。そして、アルバイトとサークル活動に精をだす。

日本人が勉強するのは大学受験までの期間だというのは、日本の賃金制度の下では、合理的な行動なのである。

アメリカでは成績で賃金が違うので学生は死に物狂い

これは、アメリカの場合との大きな違いだ。アメリカの学生は、大学に入学してから、あるいは大学院に入学してから「死に物狂いで」勉強する。なぜなら、そこでの成績で初任給が大きく違うからだ。

とくに、ロースクールやビジネススクールなど「プロフェッショナルスクール」と呼ばれる修士課程相当の大学院で顕著にそうだ(それ以外の専門分野でも、大学生や大学院生は、非常によく勉強する)。

MBAなどの学位をとれば、著しく高額の初任給を期待できる。 しかも、どのビジネススクールの、どの専門で、どれだけの成績だったかによって、初任給が大きく違う。

スタンフォード大学のビジネススクールの場合、基本給(年収)が全体の平均では16.2万ドル(1ドル=144円で2333万円)だが、金融業では18.1万ドル(2606万円)だ。その中の「ベンチャーキャピタル」では、19.1万ドル(2750万円)である(2021年卒の場合)。

このように高給なのは、スタンフォードのMBAだからだ。そして、スタンフォードのビジネススクールに入るには、大学の成績がよくなくてはならない。だから、大学生は死に物狂いで勉強する。

入学できても、自動的に学位が取れるわけではない。成績が悪ければ、途中で容赦なく落とされる。

そして、就職先の分野によって年収がかなり違う。どの分野の企業に入れるかは、成績によって大きく影響される。だから、大学院生も死に物狂いで勉強する。

すべてがうまくいけば2000万円を超える年収だから、高額の授業料を払っても、ごく短期間のうちにそれを取り返せる。つまり、一流大学院で猛勉強することは、もっとも収益率が高い投資なのだ。アメリカは、この意味において学歴社会だ。

それに対して日本の状況は、「みじめ」としか言い様がない。

「賃金構造基本調査」(厚生労働省)によると、25~29歳の平均月収は、大学卒260.7万円に対して、大学院卒 278.8万円である(男女計、2021年)。大学院卒をスタンフォードのMBAと比べると、10倍近い開きがある。

OECDの統計で平均賃金を見ると、アメリカは日本の1.9倍だ。専門職における日米賃金格差は、これより遙かに大きい。

「アメリカは実力社会で学歴は必要ない」は本当か?

「アメリカは実力社会であり、大学卒であることは求められない」という意見がある。その証拠として引き合いに出されるのが、テスラCEOのイーロン・マスクの言葉だ。

彼は、あるカンファレンスでの質疑応答で、「テスラの採用応募に大学の学位は必要ない。そして願わくば中退して何かを成し遂げていてほしい」と述べた。

マスク自身はペンシルベニア大学で学士号を取得しているが、スタンフォード大学の博士課程を中退して最初の会社を立ち上げた。

アメリカには、大学を中退した成功者が、つぎのようにたくさんいる。

・ビル・ゲイツ(マイクロソフトの創業者:ハーバード大学中退)

・マーク・ザッカーバーグ(フェイスブックの創業者、ハーバード大学中退)

・スティーブ・ジョブズ(アップルの創業者、リード大学中退)

・スティーブ・ウォズニアック(アップルの創業者、カリフォルニア大学中退)

・ラリー・エリソン(オラクルの創業者、シカゴ大学中退)

・アラシュ・フェルドーシ (Dropboxの創業者、マサチューセッツ工科大学中退)

このように、世界をリードするIT企業の創業者の多くが、大学を中退している。つまり、大学を卒業していなくとも大成功した人はたくさんいる、それは事実だ。

「大学中退すれば成功する」などということはない

しかし、だからといって、「大学での勉強には意味がない。だから、大学を卒業しなくともよい」と考えるとしたら、間違っている。

上記の成功者に共通しているのは、IT関係の企業の創業者であることだ。そして、中退するときには、すでに成功のきっかけを掴んでいた。何もあてなしに中退したわけではない。

むしろ、「成功がほぼ確実な事業を見つけたから、大学で勉強している暇はない」ということだったのだ(ビル・ゲイツは実際にそうしたことを述べている。なお、彼はその後、ハーバード大学から名誉学位を授与されているので、大学卒業者だ)。

もし彼らが、大学で勉強するのが嫌になったという理由で中退したのであれば、その後の成功がなかっただけではない。学歴社会のアメリカで、大変な苦労を強いられたことだろう。

岸田文雄首相は、所信表明演説で、「構造的な賃上げ」のためにリスキリングが必要だとした。

その必要性を否定するわけではない。しかし、日本企業の賃金構造と大学の教育体制を根本から変えない限り、ここで述べた状況が変わることは期待できない。

 半世紀前の頃の情況と、何ら変わりがない企業の採用情況だと言うことが分かります。野口氏の言うように、このままでは高度人材は育たないし、企業の国際競争力の低落傾向にも歯止めがかからないでしょう。このことはすなわち、放っておけば日本の国力の回復はおぼつかない事を示しているのかも知れません。

 もちろん大学卒業者のレベルだけではなく、企業経営者の戦略的パワーや、一般従業員の質の向上も避けて通れないでしょうが、先ずはこの高度人材の育成・輩出に手をつけなければ、他の先進国にはとても互していけないように思います。政府・企業・大学一体となった改革が必須でしょう。

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2019年1月 3日 (木)

開き直る韓国と寄り添う反日日本人

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 韓国海軍の駆逐艦が、海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題で、日本政府の謝罪と再発防止策の要求に対して、当初韓国は「遭難した北朝鮮籍の船の捜索のためレーダーを作動」と返答、それに対し防衛省は「火器管制レーダーは広範囲の捜索に適するものではない」と反論しました。

 その後あくまでも否定する韓国側に対し防衛省は当該P-1において撮影した動画をウェブサイトで公表しました。それに対する韓国側の反応が全く酷いものです。まず防衛機密上の配慮からレーダー照射時の音声を消していることにより、その点を捉えて韓国は、この映像は証拠能力は無いと断じました。

 その後も謝罪や再発防止に答える姿勢は全く見せず、逆に韓国議員やマスコミを通じて、以下に述べるように異常な反応が続いています。

 昨年暮れには、
「射撃管制レーダーについていたカメラは使用したものの、レーダー照射はしていない」と主張を一転させたり、ネット上では「この事件は安倍政権が支持率を上げるための捏造だ」と言うようなとんでもない意見も配信されています。

 また昨日には韓国国防省が次のような声明を発表しています。産経ニュースから引用します。


 「動画で見られたように、韓国軍が当時、公海上で遭難漁船を救助している人道主義的な状況で、日本の哨戒機が低空威嚇飛行をした行為自体が非常に危険な行為だ」と主張。

 さらに、韓国艦は哨戒機にレーダーを照射していないと強調し「日本はこれ以上、事実を歪曲(わいきょく)する行為を中断し、救助活動中だった韓国艦艇に危険な低空飛行をしたことを謝罪せねばならず、実務協議を進めることを求める」と訴えた。


 全く反省もなく逆に日本に謝罪を求めるなど開き直りも良いところです。日本が今までこう言う軍事や外交案件で、虚実報道したり捏造したことはまずありませんし、韓国は日常的に歴史捏造してきているので、誰が見ても韓国側が事実を隠蔽し開き直っているとしか思えません。

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 更に日本人でありながら、韓国側に寄り添い、トンデモ発言をしている人たちもいます。その内の一人法政大学の山口二郎教授は「以下は私の想像である」と言いつつ、以下のような文を「ナショナリズムの危険」と言う寄稿の中で述べています。(寄稿文の一部を引用)

 北朝鮮漁船を救助する作業で忙殺されていた韓国駆逐艦の現場の兵士は、接近してきた自衛隊機をうるさく思い、レーダーを照射した。自衛隊機はこれに驚き、日本政府はこれを重大事件として公表した。韓国政府はこれに反発して、事実を否定している。元航空幕僚長の田母神俊雄氏や軍事ジャーナリストの田岡俊次氏によれば、レーダー照射自体は、危険な行為ではない。にもかかわらず日本政府が被害者として事態を外交上の大問題にしているのは、現在の日本政府が韓国に対する厳しい世論を作り出そうという政治的意図に基づく

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 本当に田母神氏や田岡氏が「レーダー照射自体は、危険な行為ではない」と言っているのか、甚だ疑問です。常識的に考えれば「火器管制レーダー」と通常の「レーダー」を取り違えているのでは、と思います。

 いずれにせよ、山口氏の見解は韓国側に完全に寄り添う形であり、反日反政権の権化のような姿勢です。この件以外にも何度も反日反政権発言を繰り返す、こう言う教授が日本の大学にいて、しかも科研費を国から受けているのに反日姿勢を示しているのは、何とも解せない状況です。即刻科研費を止め、かつ学生のために教授活動を辞めていただきたいと思います。

 このレーダー照射事件がどういう風に収束するのか、ある意味日本政府の対応が問われていると思います。事は軍事が絡むことですから、決して中途半端な形で終わって欲しくない、そう強く思います。

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2018年9月 8日 (土)

理論と現実の乖離

 企業の人材育成に携わった経験を少し述べてみます。部門のマネージをする傍ら、経営戦略や論理思考の講師も兼ねていました。そこで感じたことは、そう言った理論は様々な研究機関や書籍から、恐らく日本だけで無く世界でも一流のものを導入でき、一応その企業にあったものに編集したにしても、やはり「理論」だということでした。

 と言うのは理論というのは様々な外乱が複雑に絡み合った現実の世界では、適用がかなり難しいということです。もちろん役に立たないことはありませんが、その効果的運用には現実をかなり深く分析し、よく世間で言う「現場、現実、現物」をきちんと認識しなければ、宝の持ち腐れになりやすい、と言うことです。

20180116233222_2  このように、理論と現実とはいささか趣が異なります。そこで最も理論を研究している「大学教授」を見てみたいと思います。大学教授でも一般的に理系と言われる医学や工学、農学や科学といった分野は、対象が自然界の具体的「もの」の世界ですから、所謂「現実」を捉えている関係上、その理論は現実と余り離れてはいないと思われます。しかし文系と言われる経済学や法学、教育学や政治学など、抽象的な対象となると、現実の世界が非常に複雑で、理論と現実がなかなかうまくかみ合わないことも多いと思います。ですから理系のようにこれが正しい解というのが少ない理論の世界になります。

 問題はこのように文系の大学教授は、その理論には絶対な解が無いと言う認識があればいいのですが、一部の教授にはそうでない人もいます。慶応の名誉教授の金子勝氏はマルクス経済学信奉者。法政の山口二郎教授は民主党(保守の対立軸)偏重の政治学者です。この二人は理論先行というより、世間知らずの現実離れした、持論固執型教授です。共通するのは戦後日本を現在の形に導いてきた保守政治の成果を現実視せず、ひたすら持論のみ展開し、反保守の理論に凝り固まっていることです。

 そしてまた共通するのは、安倍政権を口汚く罵ること。金子氏は「愚かな安倍は権力者を誇ろうとしています。バカだからです」と言ってみたり、山口氏は「安倍に言いたい、お前は人間じゃ無い。たたき斬ってやる」と言っています。自分の意見と合わないからと言って、大学教授たるもの、この物言いはまるで子供です。

Yamaguchi1  このように「象牙の塔」に入り込んだ現実を見ない、理解できない、いわば片輪の様な人が大学教授として、まだ考えも固まっていない学生に、持論を押しつけていると思うと恐ろしくなります。ただこの二人だけでは無く、大学、それも旧帝国大学の文系教授は、戦後一貫してマルクス主義を信奉する教授が多数を占め、それによりその教え子となった官僚、弁護士、学者、ジャーナリスト、メディア関係者に多数のサヨク人を生み出してきました。

 もちろん文系教授の中にも現実を直視し、持論に固執せず柔軟な思考をお持ちの方も多くいます。そうした教授が日本の大学にも主流を占め、より現実に立脚したイデオロギーとは無縁な、学者空間を構成されることを切に望むものです。


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