エネルギー

2023年1月10日 (火)

エネルギー安全保障の中核を担えるか、危機に瀕する原子力がGX「グリーントランスフォーメーション」の主役になる道

15_20230109153301  前回の食料の安全保障に続いて、今回はエネルギーの安全保障を取り上げます。日本はエネルギーの大半を海外に頼っていて、その自給率は2019年度で12.1%。東日本大震災の直後の2012年に6.7%と底を打ち、その後徐々に回復してきていますが、その多くは再生エネルギーの増加が寄与してきています(全エネルギーに占める割合2010年度4.4%から2019年度8.8%へ)。

 ただそれと同時に、福島原発事故の影響で、多くの原子力発電所が稼働中止となったため、原子力の割合が減っています(同2010年度11.2%から2019年度2.8%)。その減少分を補うため、毎年数兆円に上るLNGや燃料炭の輸入を追加輸入しています。

 それが電力コストを押し上げる要因にもなっています。2010年から2019年までの推移は下図の通りです(2019年度は産業向けは17.0円/kwh、家庭向けは24.8円/kwh)。

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 ただ2022年に入って、ロシアのウクライナ侵略が始まり、その影響で8月には産業向けは21.1円/kwh、家庭向けは27.9円/kwhと一気に高騰しています。これは化石燃料依存度80%半ばと非常に高いため、世界のエネルギー価格の高騰の影響をまともに受けているためでもあり、またもともと単価の高い再生エネルギーの比率アップも影響しています。これでは日本の産業競争力に大きなマイナス要因になり、また生活負担の増大にもつながっています。

 そこで当然浮上してくるのが原子力の再利用です。稼働停止の原発の再稼働だけでなく、次世代の革新的原子炉の開発や核燃料サイクルの大幅な見直しも含まれます。その点の詳細を経済学者でアゴラ研究所代表取締役所長の池田信夫氏がJBpressに寄稿した記事から引用して紹介します。タイトルは『危機に瀕する原子力が「グリーントランスフォーメーション」の主役になる道 宙に浮いた核燃料サイクルを転換するとき』(1/06公開)です。

 日本原燃は2022年12月26日、青森県六ヶ所村の使用済み核燃料の再処理工場の完成目標時期を2年先送りして「2024年度上期のできるだけ早期」に延期すると青森県に報告した。当初は1997年に完成する予定だったが、これで26回延期されたことになる。

 直接の原因は、原子力規制委員会の審査に合格する見通しが立たなかったことだが、本質はそこではない。核燃料サイクルは日本の原子力開発の根幹だったが、その目的がわからなくなり、宙に浮いてしまったのだ。

原子力政策の「静かな大転換」

 原子力に消極的だった安倍政権に対して、岸田政権は原発の再稼働や運転延長を認めている。GX(グリーントランスフォーメーション)という脱炭素化政策でも、最大の力点が置かれているのは原子力である。

 その基本文書である「GX実現に向けた基本方針(案)」には「次世代革新炉」という言葉がたくさん出てくるが、その中身は今と同じ軽水炉である。かつて次世代の原子炉とされた高速炉はなく、核燃料サイクルという言葉は1回しか出てこない。

 これはあまり注目されていないが、原子力政策の大転換の第一歩である。1956年に始まった日本の原子力開発長期計画では、軽水炉は過渡的な技術であり、最終的にはウランを軽水炉で燃やしてできるプルトニウムを再処理して高速増殖炉で燃やし、消費した以上のプルトニウムを生産する核燃料サイクルが目的とされた。

 これによってエネルギーを自給できない日本が、無限のエネルギーを得ることが最終目標だった。1973年、石油危機で資源の枯渇リスクに直面した通産省は、原子力開発を国策として核燃料サイクルを建設した。

 しかしサイクルの中核となる高速増殖炉(FBR)は各国で挫折し、日本でも2016年に原型炉「もんじゅ」が廃炉になった。それでも経産省は高速炉開発の道を探ったが、2019年に提携先のフランスが開発を断念した。高速炉を「次世代原子炉」とする路線は成り立たなくなったのだが、日本はその路線を変えられなかった。それはなぜだろうか。

核燃料サイクルで核兵器が製造できる

 核燃料サイクルには、もう1つの目的があった。プルトニウムは核兵器の材料になるのだ。中国でもロシアでも、高速炉はプルトニウムの生産装置である。1968年に核拡散防止条約(NPT)ができたのは1964年の中国の核実験がきっかけだが、そのとき米ソの隠れた目的は、日本と西ドイツの核武装を封じ込めることだった。

 日本はNPTのそういう不平等性を知っていたので、これに抵抗した。条約に署名したのは発効直前の1970年2月、批准は1976年6月だった。「非核三原則」を唱えた佐藤栄作も、最初はNPTに反対だった。こういう日本政府の迷走がアメリカに「日本は核武装するのではないか」という疑惑を抱かせた。

 1977年にカーター政権が核拡散を防止するという理由で再処理を放棄し、日本にも再処理をやめるよう求めたが、日本は拒否した。原子力施設はIAEA(国際原子力機関)が査察していたが、日本は事前に一括して再処理に同意する「包括的事前同意」を求め、1988年に日米原子力協定を結んだ。この協定では、使用目的のないプルトニウムは保有してはいけない。

 今の核燃料サイクルの目的は再処理して高レベル核廃棄物の体積を減らすことだが、危険なプルトニウムは増えてしまう。それをプルサーマル(MOX燃料を燃やす軽水炉)で消費する計画だが、MOX燃料の使える原子炉は全国で3基しかなく、日本が47トン保有するプルトニウムを毎年1トン消費するのがせいぜいだ。

 かつてFBRはエネルギーを無限に増殖する「夢の原子炉」とされたが、今では非在来型ウランの埋蔵量は300~700年分、海水ウランはほぼ無尽蔵にあるので、経済的には意味がない。プルサーマルはウランを再処理して、わざわざ10倍近いコストのMOX燃料にして燃やす非生産的な技術である。

原発は「トイレなきマンション」ではない

 プルトニウムを増やさないためには、再処理しなければいい。使用済み核燃料を燃料棒のままキャスクに入れて、乾式貯蔵すればいいのだ。原発が「トイレなきマンション」だというのは誤りで、乾式貯蔵のスペースは発電所の敷地内に数十年分ある。六ヶ所村には300年分以上の核廃棄物を置くことができる。

 問題はそういう技術的な制約ではなく、「六ヶ所村はゴミ捨て場ではなく工場だ」という建て前で使用済み核燃料を受け入れた青森県との安全協定である。これは単なる念書で、法律で決まっているわけではないが、青森県知事が「六ヶ所村に置いてある使用済み核燃料はすべて電力会社に返す」というと、たちまち原発は運転できなくなる。

 もう1つの問題は、全量再処理をやめると核燃料がゴミになることだ。いま日本にある使用済み核燃料1万7000トンの資産価値は約15兆円(2012年原油換算)だが、これがすべてゴミになると(使用済み核燃料を保有する)電力会社は大幅な減損処理が必要になり、弱小の会社は債務超過に陥る。

 これは会計処理を変えれば解決できる。使用済み核燃料を引き続き資産として計上し、毎年少しずつ分割償却する制度を導入すればいいのだ。これは廃炉の処理で導入されたのと同じで、固定資産税は軽減され、法人税の支払いも減る。これによって電力会社の(将来にわたる)税負担は数兆円単位で軽減される。

 最大の問題は、1970年代から続けてきた核燃料サイクルを中心にした原子力開発が、根底から変わることだ。これまで次世代炉とはプルトニウムを燃やす高速炉であり、軽水炉はそれまでのつなぎという位置づけだったが、サイクルで回るはずの核エネルギーが袋小路に入ってしまった。

 余剰プルトニウムを減らせないと、日本は日米原子力協定違反になる。だから「余剰プルを減らす努力をしている」と言い訳することが、今ではほとんど唯一の核燃料サイクルの目的だが、日本が核武装するには日米同盟を破棄する必要があり、現実には不可能だ。原子力協定は見直してもいいのではないか。

このままでは日本の原子力産業は終わる

 日本の原子力産業は、いま絶滅の危機に瀕している。民主党政権が2011年の福島第一原発事故の後、全国で54基動いていた原発をすべて止め、今も9基しか運転していない。この12年間に失われたのは、電力や燃料だけではない。発電所に勤務していた作業員や開発に携わる技術者など、多くの人材が失われた。

 政府の掲げるGXも「2050年カーボンニュートラル」も、原子力なしでは不可能だが、日本では原子力は民間企業でリスクの負い切れない事業になった。電力自由化で火力や原子力への過少投資が発生して電力危機の原因になっているが、原子力は特に深刻である。

 日本原子力発電を受け皿会社にして、BWR(沸騰水型原子炉)の東京電力・中部電力・東北電力・北陸電力・北海道電力の原子力部門を原子力公社に統合し、核燃料サイクルを含めて国有化する構想も経産省で検討されているという。

 国有化には巨額の国費が必要になるが、原子力損害賠償・廃炉等支援機構にはすでに国が出資し、交付国債という形で東電に約8兆円の融資が行われている。廃炉・賠償・除染にかかる21.5兆円を東電が今後40年かけてすべて負担する、という政府の計画を信じる人はいない。最終的には、数兆円規模の国費投入が行われるだろう。

 つまりこれは国の原子力救済を間接的にやるか直接的にやるかだけの違いである。政府が原子力を救済することは、GXを進める上でも重要だ。今の「生かさず殺さず」の状態では、原子力産業に未来はない。

 技術者の士気は下がり、大学の原子力工学科はなくなり、若い人材は集まらない。再処理や高速炉に投入されてきた人的・物的資源を、政府が次世代革新炉に再配分し、世界でもトップレベルの原子力技術を残すべきだ。残された時間は少ない。

 高速増殖炉「もんじゅ」の挫折、再処理工場の相次ぐ完成延期、そしてその中で起きた福島第一原発の炉心溶融事故で、日本の原子力政策は頓挫しました。そしてその結果生じた、再生エネルギーと化石燃料への転換で、日本の電力料金は世界でも最も高いレベルになるという、最悪の状態になっています。

 更には原発の再稼働や新しい発電所の建設が、近隣住民の反対や司法の判断によって思うように進まず、計画停電など電力危機が間近に迫ってきているのが現状です。従って先ずは使える設備から利用可能にすることが喫緊の課題で、そこから将来へ向けて新たな展開を考えるべきでしょう。

 化石燃料の利用をこれ以上増やすのは、GXへの逆行や外貨の垂れ流しにつながるため、得策ではありません。再生エネルギーもコストや供給安定性の問題があります。従って当面は原子力利用がやはり避けて通れない道でしょう。海水ウランの利用可能研究や次世代革新炉の開発と同時に、核のゴミの処理の方向付けも早急に進める必要があると思います。ここは国が主導でエネルギー安全保障政策として進めるべきでしょう。

 ある識者が指摘していたのですが、国の安全保障に関わる問題について、例えば軍事基地問題や、原発関連の施設などは、国が指定した場所に設置できるようにすべきだ、と。もちろんその地域住民の意見は最大限に考慮するにしても、最終的な決定権は国に置くべきだと言うことです。そうしなければ新しい自衛隊の基地や核のゴミ処分場のような案件は、いつまで経っても決まりません。賛同したいと思いますね。

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2022年10月23日 (日)

国富流出「10年で約50兆円」エネルギー輸入で大打撃 原発再稼働を強力に進めよ

Images-15_20221022153501  東日本大震災で不幸にも発生した福島原発事故。その後の民主党政権での原発に対する過剰なまでの規制と停止で、電力代替のための化石燃料の輸入が一気に増加し、年間数兆円の支払いが増えたまま今日に至っています。

 さらに今年に入って、ロシアのウクライナ侵略に伴うエネルギー価格の上昇と、円安が更にその負担を押し上げています。その詳細を日経ビジネスの中山玲子氏が、同士に記事を寄稿しているので以下に掲載します。タイトルは『国富流出「10年で約50兆円」エネルギー輸入で大打撃 薄氷踏む日本のエネルギー』です。

 エネルギー価格の高騰で膨らみ続けているのが日本の貿易赤字額。経済制裁など「対ロシア」対応では先進国と足並みをそろえるが、米国などとは置かれている状況が異なる。資源の産出国である米国や中東、それら地域に権益をもつ欧米メジャーは収益を伸ばしているからだ。エネルギー輸入国の立場から脱却せねば、日本の国富は流出し続ける。

 「どの時期と申し上げられる段階ではない」。9月30日、東京電力ホールディングスが開いた会見で、小早川智明社長は、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の再稼働の目標についてこう答えた。同原発は2021年、テロ対策工事で不備が発覚。現在、複数の改革に取り組んでいるが、原子力規制委員会や地元の了承をまだ得られていない。電力の最大需要地である東電管内での原発再稼働が待たれるが、「今冬の稼働は現実的に難しい」と東電関係者は話す。

過去2番目の貿易赤字

 9月末に発表された今冬の電力需給見通しによると、東電、東北電力管内の供給余力を示す予備率は23年1月に4.1%、同2月に4.9%。最低限必要とされる3%は超えるが「この予備率に、ロシアの天然ガス事業『サハリン2』からの途絶は盛り込まれていない」(電力大手)。途絶が現実となり予期せぬ気候の悪化があれば計画停電もちらつきかねない。電力関係者らの警戒感は例年以上に強い。

 燃料価格の高騰がもたらすのはエネルギー安定調達への懸念だけでない。過去最悪レベルの勢いで膨らみ続けているのが貿易赤字だ。

 統計開始の1996年以来、基本的に黒字だった貿易収支が赤字基調に転じたのが、東電福島第1原子力発電所の事故があった2011年から。国内の全原発が停止していた14年上期に過去最大の赤字を記録したが、22年上期はそれに迫る5兆6688億円の赤字で過去2番目となった。

 貿易赤字が膨らんでいる最大の要因はエネルギー。原発稼働が停滞するなかで今、日本の電力を支えるのが、全体の約7割を占める火力発電所だ。その燃料である石炭や液化天然ガス(LNG)の高騰が止まらないのだから、日本の貿易赤字額はさらに拡大する可能性が高い。

 エネルギー危機は世界に波及しているが、国や企業によって明暗が分かれている。利益を伸ばしている「勝ち組」が世界の石油、天然ガス産出国に権益を持つ欧米メジャーだ。

 事実上のロシア「撤退」を決めた英シェルは22年4~6月期の最終利益が前期比5.3倍の180億ドル(約2兆5000億円)と過去最高となった。サハリン1の撤退を表明した米エクソンモービルも178億ドル(約2兆4000億円)と最高益を更新。産出国のサウジアラビアなど中東の国営エネルギー企業も利益を伸ばしている。

 資源を100%近く海外に依存する日本は燃料を輸入せざるを得ない。一方、米国や中東など産出国やメジャーは日本などに燃料を輸出して収益を上げる。エネルギーを火力に頼る限り、弱者である輸入者と強者である輸出者という構図は揺るがない。

ロシアに「急所」を握られる異常事態

 みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「54基の原発が稼働していた東日本大震災以前と比べると増えたコストは年間数兆円。10年で50兆円程度になる。これだけの国富が流出し続けている」と話す。野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミストも「燃料価格の高騰は日本にとって100%マイナス要因にしかならない」と指摘する。

 岸田文雄首相は8月、再稼働済みの10基の原発に加え、追加の7基を来夏以降に稼働させると表明。地元同意などで「国が前面に立つ」と明言した。日本にある原発33基のうち、新規制基準の下で稼働したのは10基。これまで原発再稼働で国の後押しは十分だったと言い難い。従来は電力会社に任せてきた再稼働について、国は今、自らが対応せねばならない局面であると判断したのだろう。

 「ロシアがサハリン2を止めてこないか。それが一番心配だ」。今冬を控え、多くのエネルギー会社が抱く懸念だ。日本のエネルギー安全保障の「急所」をロシアに握られる異常事態。原発再稼働が停滞し、国の対策が遅れるほど日本の国富も流出し続ける。日本は取るべき対策がないわけではない。少なくとも動かすことができる原発がある。これ以上傷口を広げないため、国はもっと真剣に可能性を探るべきだろう。

 今朝の読売新聞の朝刊によれば、9月の物価前年比3%アップの中、電気代は21.5%、都市ガス代は25.5%と突出して高騰しています(食用油37.6%もありますが)。

国の貿易赤字だけでなく、家計にも大きな負担をかけているエネルギーの高騰。原発をフルに動かすことによって、少なくとも電気代はかなり低下するでしょう。

 かつて日本の強さは、企業の国際競争力の強さが生み出す貿易黒字に伴って、経常収支の恒常的大幅黒字に支えられていました。それが今その前提が崩れつつあります。

 国家的なプロジェクトとして各種イノベーションを活発化し、企業競争力を強化すると共に、不要な化石燃料の購入を減らす努力は不可欠です。そうしなければ今後の日本の弱体化は止められず、やがて大幅な円安が日本の格付けを落とし、結果国債金利の上昇を招き、財政の破綻が近づいてきます。何とかしなければなりません。先ずはエネルギー危機からの脱却です。原発の再稼働推進を強く望みます。

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2021年9月29日 (水)

脱炭素の答えは原発活用だ

9_20210929121301  本日は自民党総裁選の投開票日。このブログの執筆時点では、結果はまだ分かっていませんが、4候補とも最終的には原発再稼働に賛成しています。ただ総裁選に入る前、河野候補は脱原発を掲げていましたので、総裁になるための封印ともとれます。いつ本音が出るかも知れません。

 管総理が掲げた脱炭素宣言、そのためにはどう見ても再生可能エネルギーだけでは、必要量も満たせないし、また非稼働時間の穴埋めのための他の発電設備が必要です。それを火力発電でまかなうとなれば、脱炭素は到底無理でしょう。

 今回は、公益財団法人国家基本問題研究所のエネルギー問題研究会が4月 12 日に発表した政策提言『脱炭素の答えは原発活用だ』を取り上げ、以下に引用して掲載します。

菅義偉首相は 2050 年温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を表明した。しかし、我が国はすでに再生可能エネルギーの活用において世界トップクラスである。いっそうの脱炭素を進めるには原発の活用が不可欠である。脱炭素を表明した国々のほとんどが安全性を高めた原発を強力に推進している。

中東から我が国へのエネルギー輸送は、中東の不安定化に加え、中国の海洋進出によって危うくなりつつある。国益を重視し、我が国経済を疲弊させることのないよう、経済安全保障の観点から以下の緊急提言を行う。

1.エネルギー政策の基本は国益と現実主義だ

資源に恵まれず、国際的な送電網のない日本のエネルギーコストは主要国中最も高い。この結果、日本の製造業は疲弊し、雇用流出を招き、技術開発も困難になりつつある。にもかかわらず、再エネ導入目標を大幅に積み上げて、電力供給を 100%再エネで賄うべきだとする極論もある。再エネの問題点を無視し、再エネ導入を自己目的化した原理主義にほかならない。

日本の強みを活かし、使えるオプションを全て使うという現実主義的なアプローチが不可欠である。安い石炭火力で物づくりを続け、海外に再エネ、石炭火力、原発を輸出する中国を利することがあってはならない。エネルギー安全保障を堅持し、原子力政策をめぐる閉塞状況を打破せよ。

2.再エネは不安定で高コストだ

メディアは、我が国は再エネ後進国のように報じるが、我が国はすでに再エネの活用において世界トップだ。しかし、その結果、景観破壊や土砂崩れなどの生活被害が生じている。このまま再エネの比率を上げ続けると、以下のように、いくつもの制約が生じる。

(1)大停電のリスクは避けられない

再エネの中核である太陽光や風力は、変動再エネと呼ばれ、時間と共に大きく変動したり、急激に出力が低下する欠点がある。今年 1 月上旬の電力逼迫や 2 月の米国テキサス州の大停電が典型である。

再エネは性質上、変動を調整するバックアップ電源が必須である。再エネの急激な出力低下には俊敏な火力発電の出力増加で対応しているが、追従できないと大停電が起こり得る。

(2)国民負担が非常に大きい

我が国は固定価格買取制度 FIT を通じて再エネを推進してきた。これまで買取費用に13 兆円、2030 年までの買取総額は 94 兆円に達するとみられる。これらはすべて再エネ賦課金として電力料金に上乗せされ国民負担となっている。

日本は風が弱く洋上風力に適しておらず、さらなる導入は電力コストを引き上げる。2050年に電力の 50%を再エネで賄おうとすれば、太陽光だけで現在の 4 倍の設備となり 100兆円以上の投資が必要である。

(3) 電力の再エネ 100%充当は技術的に不可能だ

太陽光と風力で化石燃料や原子燃料と同等のエネルギー量を得るためには膨大なスペースが必要だ。国土面積が狭く、周辺海域が深く、他国との送電網が無い日本は欧米に比して著しく不利である。我が国のエネルギー消費量を太陽光・風力で賄うとなれば、本州面積の 1/3 を太陽光パネルが占め、日本海排他的経済水域(EEZ)のほとんどを風車が占めることになる。再エネ 100%はこうした物理的限界を無視した幻想である。

3.国産技術である原子力を活用すべきだ

2050 年カーボンニュートラルの目標に取り組むに当たり、原子力を排除することは合理的ではない。世界一厳しい新規制基準に従った安全対策工事によって、原子力発電所の安全性は飛躍的に高まった。今こそ国産技術である原子力を正当に評価する時だ。

(1)世界の潮流は原子力活用である

米国バイデン政権は 2050 年カーボンニュートラルを目指す中で原子力を活用する方針だ。脱原発のドイツやスイスを除き、欧州も全体として原子力を活用する。中国政府も独自開発の原発開発を決めた。日本はこの世界潮流から取り残されてはならない。

(2)原子力は経済性に優れた国産技術だ

最新の国際エネルギー機関(IEA)の報告書では、日本で最も安価で安定した電源は

原子力であるとされている。再エネ機器のほとんどは海外からの輸入であるのに対し、原子力の技術自給率は 100%だ。国内産業への貢献度も大きい。原発再稼働が必要だ。

(3)福島第一原発事故の反省から安全対策は飛躍的に強化されている

福島原発事故以降の安全対策の強化は他国に例を見ない。その結果、事故の発生確率は 1 億分の1に低下した。日本の原発こそ自然災害に対して最も強靭かつ安全な電源である。この原子力発電所の強靭性を正当に評価すべきである。自然災害に弱い再エネの欠点を補うには、原子力発電の活用が重要である。

4.政策提言

(1)原発の長期運転、新増設の道を開け

第5次エネルギー基本計画の 「原子力の依存度の可能な限りの低減」を見直せ。この文言のために日本の原子力産業は壊滅状態にある。既存の原子力発電所はリニューアル工事を常に実施している。これを長期に活用することはエネルギー安全保障上も温暖化対策上も最も費用対効果が高い。米国で実施されている 80 年までの運転を可能とすべきだ。

2050 年までに電気自動車などの普及で日本の電力需要は少なくとも現在の 1.5 倍になるといわれている。その電力の少なくとも3分の1を供給するには 2050 年までに計 24 基の原発の建設が必要だ。コストは建設および再稼働と廃炉合わせて 34 兆円と推定されている。再エネに比べ費用対効果ははるかに大きい。実現性もより確実だ。我が国は過去 40年間で 56 基建設した実績を持つ。その実力は現在ならかろうじて保持している。

(2)我が国の原子力技術、人材、サプライチェーンを守れ

原子力発電所の建設には、ネジ一本までの厳格な品質管理が必要であるが、長期間の原発発注の中断により、原子力産業を支えてきたサプライチェーンの基盤である中小企業群やメーカーの衰退が著しい。技術がかろうじて残っている今、新増設に着手すべきだ。輸出用小型モジュール炉や点検ロボットの開発が急がれる。裾野が広い原子力関連産業の維持・継承は安全保障上も重要だ。

優秀な学生を集め、産業界も活気を取り戻し、人材育成を行い、政府は海外への原発技術の輸出を支援し、技術の維持発展を図るべきだ。一方、福島原発事故以降、国民の原子力に対する信頼は大きく低下した。信頼回復のために関係者は襟を正して、緊張感を持って安全点検に取り組まねばならない。

(3)核燃料サイクルと高速炉を守れ

原子力発電所の使用済み燃料を再処理してプルサーマルや高速炉の燃料を確保する核燃料サイクルは、原子力政策の根幹である。日本は核拡散防止条約(NPT)体制の下の「模範生」である。日本が保有するプルトニウムは将来的に我が国の重要かつ不可欠な準国産エネルギーとなる。

高速炉でいわゆる核のゴミを燃焼すれば放射能の有害期間を大幅に短縮できる。高速炉運転の副次的産物として放射性同位体の製造が可能となり数兆円の市場が見込まれる。したがって、もんじゅの廃炉を凍結し、常陽の運転を再開すべきだ。我が国の保有するプルトニウムは核兵器に転用できない軽水炉由来であり、日本の宝として大いに活用すべきだ。

(4)高レベル廃棄物の地層処分は、国が中心となり進めよ

北海道寿都町および神恵内村で、最終処分法に定める処分地選定の文献調査が着手された。廃棄物問題解決への大きな一歩であり、両自治体の決断に国民の立場から感謝する。国は、使用済み燃料対策と最終処分政策を強力に進めるため、両自治体への支援体制を積極的に打ち出し、事業主体を明確にする最終処分法の改正など多くの自治体の参加を促す施策を進めよ。

(5)原子力規制を合理化せよ

福島第一原子力発電所の事故から10年が過ぎ、規制委員会の審査に合格した原発は 16 基にのぼるが、未だ 11 基が審査中で実際に稼働しているのはわずか 4 基にとどまる。ここに規制委員会の不合理さがある。

これは安全性を確保しつつ、原子力を運転させるという原子力安全規制の本来の姿を大きく逸脱したものだ。我が国が原子力オプションを活用していくためには、原子力規制の正常化・合理化が不可欠だ。

すでに国基研において提言した 2019 年 12 月 4 日付「日本に原子力発電を取り戻せ」の要旨を改めて強調したい。

1) 行政手続き法に則った処理期間とし、超過分を運転暦年から削除せよ

2) 事業者との対等な立場に立ち、規制の悪代官を排除せよ

3) 特重施設の工事遅延を理由とした運転停止は規制委員会の責任だ

4) 怒りでレッドカードを出す横暴規制をしてはならない。責任の半分は規制にある

(6)カーボンニュートラルは国益重視で柔軟に対処せよ

カーボンニュートラルに向かう中で、日本と諸外国の温暖化対策コスト、エネルギーコストを比較し、日本のコスト負担が高くならないように、弾力的に見直すメカニズムが必要だ。「カーボンニュートラル栄え、国滅ぶ」といった事態を招いてはならない。電気自動車(EV)路線に安易に乗ってもならない。水素や合成燃料(メタンやジメチルエーテル)をハイブリッドカーのエンジンの燃料に使えば、日本の強みを発揮できる。水素やアンモニアは厳重な安全対策が必要だ。

(7)国際的な排出削減に貢献せよ

我が国の温室効果ガス排出量は世界全体の3%強に過ぎない。日本がなすべき貢献は、革新的技術の普及である。わが国には石炭ガス複合化サイクル発電があり、その輸出により、世界中の CO2 削減に大きく貢献できる。二酸化炭素回収貯留(CCS)技術は経済的に成りたちにくく、アジア諸国やオーストラリアなどの資源国への技術支援や資源外交の手段になり得る。

 ◇

 日本は原子力と聞くとにわかに構える傾向があります。原爆を投下された過去の記憶に、福島第一原発の事故が追い打ちをかけています。原子力潜水艦や原子力発電のような、論理的に考えれば日本の安全保障やエネルギー政策に欠かせない原子力の利用に、野党の政治家やメディア、リベラル陣営が、代替案なき情緒的な論拠で、こぞって反対している現状は、完全に日本弱体化の片棒を担いでいるようなものです。

 次期総理にはしっかりした論陣の元に、国家の大きな損失である眠っている原発の再稼働を、精力的に進めていただきたいと思います。

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2021年8月 2日 (月)

エネルギー議論 脱炭素で語られぬ「リスク」

Img_8e3bf2c56965917af3d063567eb29a0b8774  今回は東京オリンピックや新型コロナウイルスを離れて、日本のエネルギーの未来への課題に目を向けてみます。世界的に脱炭素の動きが加速していますが、そこに生じる「リスク」についてはあまり語られていません。

そこでその点に視点を当てた記事を読売新聞に見つけました。国際環境経済研究所理事の竹内純子氏のコラムで、タイトルは『脱炭素 語られぬ「リスク」』(8/1)がそれで、以下に引用します。

 ◇

 暑い日が続く。エアコンなしではとても過ごせない。そのエアコンを動かす電気の不足が心配される。古い火力発電所を止めたためらしい。

 火力は、脱炭素社会に向けて「悪玉」扱いされる。政府は太陽光など再生可能エネルギーを増やして穴を埋める算段だが、天候次第で発電量が大きく変動する再生エネに、どこまで頼れるのか。

 東京電力を退社し、独立した立場でエネルギー政策を説く竹内純子さんに聞くと、日本の環境・エネルギー政策の様々な課題が見えてきた。

(調査研究本部 林田晃雄)

原子力の技術を手放すのか。議論できない現状は健全ではない

 エネルギーは、「生活の血液」です。特に電気が止まると、交通も通信も止まります。まさにインフラの中のインフラなのです。

 私は、その電気の供給を担う東京電力で働き、エネルギーの現場で得難い経験をしました。停電がどれほど社会にダメージを与えるのか、電気代の上昇がいかに生活弱者に厳しいことなのか、身をもって感じました。電気は究極の生活必需品なので、停電すると電力会社に電話が殺到します。電気代が月500円上がったのがとてもつらいと言われる方もいました。

 エアコンの利いた快適な会議室で、しかも口座から引き落とされる自宅の電気代がいくらなのか意識していないような人たちだけでエネルギー政策を議論していては、見落とすことがあるのではないでしょうか。地球温暖化もそうです。気候変動問題の国際交渉では、みな口角泡を飛ばして、二酸化炭素(CO2)削減を議論します。でも、会議場の一歩外では、すごく貧しい暮らしをする人たちがいたりする。中と外の状況の 乖離かいり があまりに大きいようでは、政策の方向性は正しくても、続かないのではないか。こうした視点を与えてくれたのは、エネルギーの現場での経験でした。

 福島第一原子力発電所の事故では、原子力を使うリスクを思い知らされました。その後、原子力については否定的なことしか言えなくなり、まともな議論すらできなくなりました。でも、この技術を手放す場合のリスクもあります。太陽光や風力にもデメリットはある。新たなエネルギーシステムへの移行には長い時間がかかりますから、その間に日本人が直面するリスクをどうやって最小化するか考えるべきです。現実的で具体的な議論ができない現状は、健全ではないと思います。

 退職から約10年たちますが、東電出身だからいわゆる「原子力ムラ」の人だと言われることもあります。福島で事故を起こす前から、東電では原子力に関するトラブルについて、違う部門の社員がおわびに回ることを繰り返してきました。エネルギー政策上の必要性は理解していても、感情的には反発もあり、電力会社の社員すべてが、「原子力ムラ」かと言われれば違うと思います。

 とはいえ、原子力に対して持っていたわだかまりは、福島の事故によって吹き飛ばされました。東京電力では10年以上尾瀬の自然保護活動を担当しました。福島にも友人・知人が大勢いて、今でもどうしようもなく申し訳ない気持ちを抱えています。

 ただ、退職したのは、そのつらさのせいだけではなく、独立した立場でエネルギー政策を考えてみたかったからです。日本がエネルギー政策を誤れば、取り返しがつきません。太平洋戦争もエネルギー確保の途(みち)を絶たれたことが大きな発端でした。

 今後、原子力発電を利用するかどうかにかかわらず、今ある原発を安全に廃炉するにも技術と人材が必要です。設備を動かし続けて日々の小さなトラブルや予兆を検知し、適切に対処していくことで技術は向上していきます。福島の事故の後、政治が原子力から距離を取り、10年間も放置してしまった弊害は大きいと思います。

 リスクは、議論の多様性をなくしたところに生じるものです。だからこそ、独立した立場から考えたかったのです。「無給」というゼロからのスタートでした。

 研究を続けるうち、自ら新たなエネルギー産業の創出に関わりたい気持ちが強まり、2018年に会社を起こしました。私たちの会社「U3イノベーションズ」は、エネルギー産業と他の産業を融合させ、より良い社会システムを創造することを目指しています。

 我が社の幹部らがスタートアップ(新興企業)の一員となり、資金調達や事業戦略の策定、顧客開拓などを支援しています。対象は、再生エネの弱点を克服して国民にメリットのあるエネルギー源にするという志を持つスタートアップなどです。エネルギー転換にとどまらず、社会インフラ全体で新たな価値を創出したいと思います。

技術革新と産業構造の転換。「食べていける日本」も重要です

 日本は2050年までに温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にする目標を掲げました。脱炭素社会への転換を政策の柱に据え、そのビジョンを世界と共有したことには大きな意義があります。ただ、30年後というのは一般的には遠い未来ですが、エネルギーインフラを転換するための十分な時間とは言えません。まして30年までにできることは相当限られます。

 日本人は一度掲げた目標は必達だと考えがちですが、欧米の人は、「ターゲット」と「ゴール」を使い分けます。ターゲットはピンポイントで狙う的のイメージです。一方、サッカーでもそうですが、ゴールには相当な幅があります。今回は、30年度に温室効果ガスを「46%削減」する目標も、50年の「実質ゼロ」もゴールと捉えた方がいい。達成に向けて、挑戦と修正を繰り返す必要があります。

 菅首相は昨年の所信表明演説で温暖化対策について「産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です」と述べました。確かにその通りですが、発想を変えたら実現するほど単純ではありません。技術革新と産業構造の転換が必要です。産業構造の転換で創出される雇用もありますが、失われる雇用もあります。エネルギーコストの上昇を含め、痛みや負担を国民と共有してこそ、政策は持続的に支持されるでしょう。

 政府は、脱炭素に向けて技術開発に力を入れるとしています。日本は再生エネ関連の特許も多く、技術開発では世界をリードしてきました。ただし、技術の普及に貢献できなければ、日本の成長にはつながりません。

 例えば、日本は石油危機後、太陽電池の開発に巨費を投じましたが、日本メーカーが太陽電池でトップシェア(占有率)だったのは2000年代だけです。いまは世界シェアの大半を中国メーカーが占めています。

 50年の「実質ゼロ」はとても重要です。同様に「食べていける日本」を遺(のこ)すことも重要です。

 「技術で世界をリードする」という言葉の響きはいいのですが、先端技術開発で特許数を伸ばすのと、技術を活用して製品シェアを高めるのは戦略が全く違います。政治家や官僚の語る戦略の解像度は、きわめて粗いと感じます。

 脱炭素社会への第一歩は、再生エネのコスト低減です。いま国民が負担する再生エネ応援のためのコストは年間約2・4兆円です。手厚い補助金を目当てに、建設に向かない急傾斜地を安く買って太陽光パネルを並べたような案件も多く見られました。これまでの再生エネ拡大政策は、健全な産業の育成という点では失敗だったと思います。立派な政策論を語っても、産業が健全に育たなければ「絵に描いた餅」に過ぎません。

 ◇

 竹内氏の仰っていることは重要だと思います。確かにCO2などの温室効果ガスの増大の影響で、地球温暖化が顕著になっていることを、最近の世界各地の豪雨などの状況を見て強く感じます。ですから化石燃料に頼らない産業・社会作りは重要でしょう。

 一方太陽光や風力発電のような再生エネルギーは安定性に欠け、高性能な蓄電器が大量に必要になることなどから、基幹エネルギーとしては課題が大きい。そこで原子力発電が一方の旗頭として考えられますが、野党や左派の学者や市民団体から、利用の議論そのものを押さえつけるような、イデオロギー的否定論が横行しています。これは国家の損失と言えるでしょう。

 最近私も停電の経験をしましたが、その不便さは語るに及びません。使用できるのはスマホやラジオだけ、夜ともなるとろうそくや懐中電灯を頼りに、ベッドに入って寝るだけです。もし数日にわたる停電だと、冷蔵庫の食品の腐敗や洗濯不可の問題、夏は冷房、冬は暖房が利用できず、料理もできませんし風呂も沸かせません。原始生活に戻ってしまいます。

 これだけ重要な電気エネルギーの議論が、再生エネルギーの議論一色になっているのは、今現在電力会社の努力で、何とか停電がおさえられているからであって、原子力発電を止め、化石燃料を減らしていけば、早晩停電地獄がやってくるでしょう。そうならないためにもより安全性を高めて、原子力を利用していくための議論を進める必要があると思います。プルサーマルの推進も含めて。

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2021年6月26日 (土)

原発は資源小国日本の切り札、原発の再稼働、新設で中国に対抗せよ

73f0acf5d0ee0672772310278f2119ad_1624414  東日本大震災の発生前、日本には54基の原発があり、日本で使う電力の30%前後を原子力で賄っていました。しかし、東京電力の福島第1原子力発電所の事故により、原発に対する不信感や不安感が強まり、原発の位置づけは大きく変わりました。

 事故から10年が経過した2021年3月時点で地元の同意を得て再稼働した原発は大飯(関西電力)、高浜(関西電力)、玄海(九州電力)、川内(九州電力)、伊方(四国電力)の5発電所の9基のみ。それについ最近40年超の美浜原発3号機が再稼働して10基となりました。西日本エリアに集中しており、いずれも事故を起こした「沸騰水型」の福島第1原発とはタイプが異なる「加圧水型」だそうです。一方、東日本大震災以降に廃炉が決定した原発は21基に上るようです。

 資源エネルギーの殆どを海外に頼る日本、原発の稼働停止で追加の化石エネルギーの輸入額は毎年数兆円、これを減税や追加の福祉予算に回せれば、と思うのは私だけでしょうか。

 再稼働も困難な日本、しかし隣国中国では事故の疑いがある中でも新設の動きは活発で、1930年にも最大のアメリカを追い越す見通しです。ロシア、インドも追随します。こうした世界の情勢の中で日本だけが原発の設計や安全技術に資する原発の新設を躊躇していてもいいのでしょうか。プルサーマルを完成させ、資源小国日本を救う道を探るのは必然だと考えます。

 そうした中、福井県立大学教授の島田洋一氏が「正論」で以下のコラムを寄稿していますので引用します。タイトルは『原発の新設で中国に対抗せよ』(6/25)です。

 ◇

国会で珍しく、自民党議員同士の激しいやり取りがあった。5月27日の参院環境委員会のことである。滝波宏文氏(福井選挙区)が小泉進次郎環境相に対し、「原子力を脱炭素電源として利用するか」と基本認識を質(ただ)した。小泉氏は「最優先は再エネです」とたった一言、木で鼻をくくったような答弁で応じた。

空虚な「脱炭素ファースト」

その前に滝波氏が、「原発を使わなくて済むならその方がいい。ただし移行期というのも必要」という小泉氏のネット番組での発言を読み上げ、「大臣もエネルギーや原子力への理解が多少進んだようだ」と揶揄(やゆ)したことへの反発もあったのだろう。それにしても、国民注視の場であることを忘れた子供っぽい無責任な答弁だった。

本人もまずいと思ったのか、滝波氏の別の質問で、自分は原発を「どのように残せるかではなく、どのようにしたらなくせるかという立場だ。自分たちの推進したい方向に発言を曲解するのはやめてもらいたい」と「補足説明」を行った。しかし「曲解するな」と凄(すご)んだ割に中身は空虚である。小泉氏の答弁を通じて明らかなのは「原子力を脱炭素電源として利用するか」という肝心の論点から逃げたいという姿勢だけだった。

筆者は脱炭素に関して、日本も米共和党的な立場を取るべきだと思っている。すなわち、(1)テクノロジー開発を通じたエネルギーの効率利用を進める(その結果、米国のCO2排出量は年々減っている)(2)国内企業の競争力を弱め家計の負担を増すような無理なCO2規制は行わない(3)省エネテクノロジーの普及を図ることこそ先進国型の国際貢献と捉える(4)安全保障の観点からエネルギー自立を進める。

これらの原則を外れ、内向きの「脱炭素ファースト」に走ると、国力を弱めると同時に中国共産党政権を利することになる。環境規制の緩い中国の企業が国際競争に勝ち、活動量を増やせば、その分、有害物質の排出量も増える。太陽光パネルで最大シェアを誇る中国が、製造過程でどれだけ環境に負荷を掛けているか。そこに目を向けないなら、環境原理主義者としても失格だろう。

二重に安全保障の基盤崩す

輸出で得た外貨を用いて、中国は軍拡に邁進(まいしん)している。一方、環境原理主義に叩頭(こうとう)するバイデン政権は、非効率な「脱炭素化投資」に空前の財政支出を行う一方、軍事費は実質減となる予算案を出した。化石燃料を敵視することで、トランプ時代に大きく進んだ米国のエネルギー自立も損なわれつつある。二重に安全保障の基盤を掘り崩しているわけだ。

もっとも米国には、強力な牽制(けんせい)役として共和党が存在する。現在、下院はわずか8議席差で与党民主党が多数、上院は与野党同数だが、民主党でも、地元に化石燃料産業を持つ議員は急進的な脱炭素政策に同意しない。要のポジション、エネルギー委員長を務めるジョー・マンチン上院議員はその代表格である。バイデン政権がいかに「野心的な脱炭素目標」を掲げても、関連予算の相当部分は議会を通らない。

過去には漫画的な光景もあった。2019年に最左派がまとめた過激な「グリーン・ニューディール」決議案にカマラ・ハリス上院議員(当時)はじめ民主党議員の多くが賛意を表したが、共和党側が個々の議員の賛否を明らかにすべく投票に持ち込んだところ、民主党上院議員47人中43人が棄権した(共和党は全員反対)。

ハリス氏らは、「グリーン・ニューディール」という美しい響きの案に寄り添ったというイメージが欲しかっただけで、10年以内の火力発電所廃止、脱航空機といった無謀な案に賛成したという記録を残したくなかったのである。

日本は自滅の道たどるな

米国は、トランプ時代に石油と天然ガスの生産量で世界一となった事実が示すように、共和党政権に代わればもちろん、中国との対立が激化した場合など、いつでも脱炭素路線を「一時停止」して、エネルギー自立優先に立場を変えうる化石燃料大国である。

日本はそうはいかない。エネルギーの自立度を高めようと思えば、自前の技術で建設し運用できる原発を充実させる方向しかない。それは、国力を損なわずに脱炭素を進める道でもある。

国際情勢を冷徹に見据えずに「脱炭素バスに乗り遅れるな」と自虐的政策を取り、同時に脱原発に突き進むのは明らかに自滅の道である。炭素税に代表される懲罰的政策で一般家庭や企業を絞り上げ、無理やりCO2を減らしても、その程度は、桜島が一度噴火すれば一瞬にして水泡に帰す。愚かというほかない。

しかし冒頭の滝波氏のように原発の新設を公開の場で明確に主張する国会議員はごくわずかである。原発立地地域・福井の町議会、県議会、知事の方がはるかに「国のエネルギー政策推進に寄与する」と堂々と口にした上での政策決定を行っている。国会は一体何のためにあるのか。(しまだ よういち)

 ◇

 確かに原発は一度大事故を起こせば他の発電所より被害が大きい。それはその通りですがそれを理由に原発反対を唱える大国は日本とドイツくらいでしょう。なぜか両国とも第2次敗戦国ですが、それは関係ないにしても、100年いや1000年に一度の大津波に見舞われただけではなく、自衛隊嫌いで補助電源装置の搬送を怠った時の政府の過失もその原因の一つです。つまり電源が喪失してもしっかり補助電源さえ働かせれば炉心溶融は防げたようです。

 ですから、そうした対策をしっかりして稼働を続ければ安全は保てますし、なおかつ日本だけ原発を廃止しても世界を見渡せばますます原発は増えるでしょう。私は原発アレルギーはイデオロギーを帯びていると思います。安全を御旗に不安を煽る人がいますが、アメリカのスリーマイル島原発の事故では直接の死者はぜろ、福島でもゼロでした。

 北海道胆振東部地震で苫東厚真火力発電所の停止による病院への電源供給ストップで、かなりの死者が出たとの報告もあるようです。ですから地震や津波による電源喪失は何も原発のみではないことを知っておく必要があるでしょう。

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2018年11月28日 (水)

原子力エネルギーの活用を考える

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 エネルギー政策は国の重要な政策の一つです。エネルギーを生む資源、現在でもその主役は石油でしょう。原油およびその精製品、天然ガス併せて世界の一次エネルギーの半分以上を占めています。これに石炭を加えれば85%は化石エネルギー源に依存しているのです。日本もほぼ90%をこの化石エネルギー源に頼っています。



 この化石エネルギー源は2つの問題をはらんでいます。一つは有限であること、もう一つは利用時に大量のCO2を排出することです。

Download_15 温室効果ガスはCO2がその大部分を占め、排出量は世界全体で2017年、CO2換算で535億トンに上っています。このままだと2030年までに地球全体の平均温度の上昇を、2度未満に抑えるのが難しいようです。


 またメタンハイドレードトなどの未来燃料の話もありますが、まだ未知の段階です。それにCO2排出の問題は残ります。この問題を解決するエネルギー源は水力や風力、太陽光などを源とした、所謂再生エネルギーと原子力エネルギーです。

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 再生エネルギーの内、水力はかなりのウエイトを占めますが、今後増加の余力が少なく、風力や太陽光は安定性に欠けます。しかも量的には限界があります。そこで数十年前から各国で原子力エネルギーが、とりわけ発電に利用されてきました。日本でも2005~6年には総発電量の3割を占めていました。

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ところが2011年3月の、東日本大震災での福島原子力発電所の事故で、一気に縮小、その後の安全基準の大幅規制強化により、再稼働の審査が非常に厳しくなり、現在再稼働中の原発は9基しかありません。最大59基を数えた原発も廃炉や安全審査未申請の原発が30基以上あり、その結果現在稼働中の原発に加えて審査合格後稼働予定の原発を含め、総計25基と半分以下となりました。

 ところで安全審査で合格となった原発でも、地元の承認が必要で、すぐには稼働できません。そこへ反原発団体や弁護士グループの横やりで、運転差し止めを求めた仮処分申請も行なわれ、数ヶ月遅れたりする例も出ています。

 しかし冷静に考えれば、エネルギー資源の殆どない日本にとって、安全さえ担保できれば、クリーンで資源も再利用できる原子力を活用しない手はないと思います。ただ感情的に反対するのではなく、どうしたら安全を継続できるのか研究を重ね、それがまた原子力利用の技術の向上に繋がります。また福島原発事故の復旧過程で得た経験も重ね合わせて、原子力技術の先進国になっていく方向に進むのが最良の策だと考えます。


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