海外、政治

2021年12月25日 (土)

泥沼の韓国大統領選、これが韓国政界の実態だ

10_20211225100501  来年3月、韓国は大統領選を迎えますが、与野党候補者の戦いは激しさを増しています。ただし政策論争よりもスキャンダル合戦が続き、これが先進国の仲間入りをした国なのか、およそ信じられないような泥仕合となっているようです。

 韓国在住のライター、田中美蘭氏がJBpressに寄稿したコラムから、その概要を紹介します。タイトルは『相次ぐ身内の醜聞に方向感を失った韓国大統領選のドロ沼 カメラの前で土下座した与党候補と妻の学歴詐称で叩かれる対抗馬』(12/24)で、以下に引用します。

 ◇

「またか」というため息とともに、プロレスの罵り合いを見ているような錯覚に陥りそうだ。2022年3月に控えた韓国大統領選挙が本格化する中、激しさを増している与野党の候補者同士による“口撃”である。

 とりわけ、双方の身内に関するスキャンダルの応酬は見ていて見苦しい。クローズアップされるのは、候補者のスキャンダルばかり。両陣営ともに、スキャンダル以外に勝機を見出せない異常な選挙戦は、もはや迷走状態に陥っている。

 例えば、与党「共に民主党」の候補である李在明氏は、自身はもとより、親族など周辺のスキャンダルや不祥事が次から次へと露見し、話題にこと欠かない。スキャンダルの内容も、眉をひそめたくなるようなものばかりだ。

 これまでに取り沙汰されたものといえば、女優、キム・ブソン氏との不倫関係をはじめ、飲酒運転で検挙された過去や暴力団との親密な関係などが挙げられる。特に強烈な印象を与えたのは、李氏の甥が過去に交際女性との別れ話のもつれから、女性と女性の母親をめった刺しにしたという事件であろう。

 李氏本人や直属の家族の起こした事件ではないものの、李氏は甥の弁護を引き受けた上で、甥への「寛大な処分」を主張していたことも明らかになっている。甥の襲撃から自身は何とか逃れたものの、自宅から転落し重傷を負った交際女性の父親は、李氏がこの事件について釈明をした際に、「デートDV(交際相手間の暴力)」と発言したことに不快感を示し、強い口調で非難した。

 続いて浮上したのは、李氏の長男にまつわるスキャンダルだ。長男が違法賭博に興じ儲けていたこと、それに関連したやりとりと思われるネット上のチャット内容が流出したのだ。

 朝鮮日報など主要メディアの報道によると、李氏の長男は2019~20年にかけて、ネット上のポーカー関連の掲示板に、賭博で儲けたという自慢を分かっているだけで200件余り書き込んでいた。さらに、賭博で儲けた金でたびたび、買春をしていたことを示唆する投稿も明らかになっている。

 投稿の内容は、ソウル近郊に実在するマッサージ店の店舗名が書かれたものや、隠語を使って店や風俗嬢を揶揄するような書き込みだ。別ユーザーに対して、「(賭博で)金を儲けてお前も(女を)買え」と買春を勧めるものまであったという。

 大統領候補の長男の不道徳的な行為に対する批判に加えて、名門・高麗大学への進学や、卒業後にインターンを経て金融系企業に就職した経緯についても忖度を疑う声が上がっている。一連の長男の疑惑に対して、李氏はカメラの前で国民に土下座するなど火消しに躍起だ。

ナッツ・リターン事件で職を辞した父親

 日本でも、身内の不祥事を巡り、著名人が謝罪する光景を目にすることがある。こうした親の立場での謝罪について、「子供が成人しているのであれば、親がそこまで謝る必要はない」「影響力の立場にあるからこそ対応は必要である」という様々な声が上がる。

 政治家や企業人、芸能人が子供の不祥事に対して、親が頭を下げたり、親の責任を追及されたりするのは韓国でもままある。

 例えば、2014年に大韓航空の副社長(当時)だったチョ・ヒョナ氏が、機内で客室乗務員のサービス対応が悪いと激昂し、暴言、暴行を働いたケースが挙げられる。混乱に陥った飛行機は、ニューヨークの空港に引き返すことになった。いわゆる「ナッツ・リターン事件」である。

 経営陣の一角であるチョ氏が自社の社員に対して、公共の面前でパワハラしたということだけでも衝撃だったが、さらに彼女の行状や性格、彼女の弟や妹の過去の傍若無人な行動も明るみに出るなど、非難の矛先は父親である当時の会長、チョ・ヤンホ氏に向けられた。

 最終的にヒョナ氏は副社長をはじめとする役職を辞し、マスコミの前で謝罪をしたが、マスコミと世論の反発は収まらず、世間を騒がせたことに対する謝罪と「子供の教育を誤った」と父のヤンホ氏も頭を下げた。その後、グループ会社の韓進海運が経営危機に陥った上に、ヤンホ氏自身も2018年の平昌冬季オリンピック組織委員会委員長を辞職することになった。こういった心労が祟ったのか、ヤンホ氏は2019年に米国で死去している。

 また、李氏と同じく政治家で、野党「国民の力」に所属する国会議員のチャン・ジェウォン氏も、長男の醜聞に悩まされている。

著名ラッパーの政治家のパパも受難

 彼の長男はNO:EL(ノエル)という芸名で活動するラッパーで、中高生を中心に広く人気を博していたが、ここ数年は飲酒運転や暴行事件など警察沙汰が相次いでいる。

 彼は既に成人だが、問題を起こすたびに、父であるチャン氏にも批判が向けられ、進退を問う声が上がる。2021年3月にはチャン氏の地元、釜山で通行人と喧嘩沙汰を起こした。9月には、2019年に続き2度目となる飲酒運転で検挙されている。

 芸能活動よりも、今や醜聞で名を耳にする機会が多くなったNO:ELに対して、国民からは父であるチャン氏の教育と立場を批判する声が相次ぐ。大統領府の国民請願のホームページには、チャン氏の「議員職剥奪」を求める意見が投稿され、12万人が同意した。

 国民請願は同意数が規定に満たなかったために、政府からの特段の回答はされなかったものの、チャン氏は国民に向け、「(息子の不祥事について)成人として、自分が犯した過ちに対していかなる処罰も甘んじて受けなければならない。国会議員として、息子に関する事件には、いかなる影響力も行使しないことを明確にする」と釈明した。野党の大統領候補、 尹錫悦氏の選挙サポートチームへの参加辞退もすることとなった。

 李氏に対して、同様に「京畿道知事の辞職、ひいては大統領選挙の候補者を辞退すべきだ」という声が出るのも当然の流れだ。むしろ、その声がもっと大きくてもいいのではないかさえ感じる。

 現に、筆者の周辺だけでなく、ネット上でも「自分の子供のこともまともに教育できない人間が政治を行うとは聞いてあきれる」「あなたの口だけの発言とパフォーマンスを見ていると政治家より俳優にでも転身した方がいいのではないか」「このような人物が大統領候補に堂々となっていることが恐ろしい」といった意見が散見される。

 李氏をはじめとする政治家、企業人の子息、子女の不祥事に対して国民の心象が悪くなるのは、自身の家族さえまともにまとめることもできない人間に、リーダーが務まるのかという率直な気持ちの現れだ。

 李氏と与党は土下座謝罪で「問題は解決済み」という印象を与えようとしている。一連のスキャンダルから国民の目をそらせたいのだろう。

究極の選択を強いられる韓国の有権者

 現在、大統領選は「家族リスクによる混迷」を指摘されている。李氏のスキャンダルのインパクトが目立つが、対する野党「国民の力」の尹氏も夫人の学歴や職歴について、虚偽や詐称が指摘されている。

 学歴社会の韓国では、経歴詐称や不正入学には厳しい目が向けられる。尹氏も夫人の疑惑に対して対応を迫られている。両者のスキャンダルについて、李氏が不利とする見方が多数ある反面、尹氏が苦戦を強いられることになるという見方もある。今後、選挙戦にどのように影響していくかは未知数だ。

 従来、韓国の大統領選挙は相手のネガティブキャンペーンで盛り上がるところがある。ただ、今回は李氏に醜聞が多く、尹氏は政治手腕が未知数という点から、どちらも大統領候補者として疑問符が付いている。その中で、国民は「どちらもふさわしいと思わないけど選ばなくてはいけない」という「究極の選択」を迫られている。

 既に大統領選の争点は、あるべき政策論などからかけ離れ、それぞれの自身または家族によるスキャンダルに移っている。

 国民が置き去りにされた感じさえある大統領選挙だが、世論調査では、10代(満18歳以上)、20代の若年層の有権者達が大統領選挙に高い関心を示し、「投票に行く」と回答している結果も出ている。

 前述の学歴等の不正や詐称は言うまでもないが、特に若年層は同世代の政治家や企業人の子息、子女が親を後ろ盾に忖度を受けることを嫌う傾向にある。このため、若年層にとっては、尹氏の夫人のスキャンダルよりも李氏の長男の起こした問題をより厳しく、苦々しく見ている節がある。

 李氏のスキャンダルはまだまだ出てくる可能性もある。一番重要なことは残り2カ月で国民は報道や、与野党の泥仕合なネガティブキャンペーンに流されることなく、候補者の人格や公約を見極めた上での投票を行うことだ。

 ◇

 日本では大統領選はありませんが、国のトップを選ぶのは現状では自民党総裁選でしょう。その中で身内であっても大きな醜聞を受けた人物がいれば、先ず総裁にはなれないでしょう。総裁選にも出られないと思います。

 しかし韓国では筆者が言うように「またか」と言われるほど、毎回のようにスキャンダルが付きまとっているようです。それにしても今回は少し酷いようですが、韓国の政財界の日常が吹き出ている感じがします。

 いずれにしろ与党の李氏は「反日、侮日」の代表ですから、日本としては野党の尹氏の方が当選した方が良さそうです。しかし韓国のことです、政治が世論に流されることの多いのが現実です。子供の頃から反日教育を受けている国民と、その教育を受けさせている国家には、誰がトップになろうと気を許せることはないでしょう。

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2021年12月16日 (木)

習近平が進める「台湾海峡大橋」計画 前のめりのワケは

Xx3wy2deonlj3d6rlo6ueuti6y  中国による台湾統一の野心は、習近平政権になってからより先鋭化しています。「中国の夢」構想の、核心的利益の領土面のトップにもあげられる台湾。台湾有事はより現実的なものになりそうと思われます。「台湾有事は日本の有事」と多くの議員が認識する中、また一つそれを示唆する情報が現れました。

 産経新聞の前中国総局長、西見由章氏が同紙に掲載したコラムから、その内容を引用します。タイトルは『習近平氏が進める「台湾海峡大橋」計画 前のめりのワケは…』(12/8)で以下に掲載します。

 ◇

世紀の大プロジェクトか、こけおどしの大風呂敷か-。中国政府が幅120キロ超の台湾海峡に世界最長の海上大橋と海底トンネルを建設し、中国本土と台湾を結ぶ計画を喧伝(けんでん)している。台湾への武力侵攻を排除せず軍事的な威嚇も強める習近平指導部からの一方的な提案に、台湾側の反応は当然ながら「独りよがりだ」と冷ややかで、軍事利用への警戒感も根強い。

中国と台湾を橋やトンネルで結んで「陸続き」にする計画は、習近平国家主席が台湾対岸の福建省幹部だった1990年代から取り組んでいる自身肝いりの構想だ。2020年までの「第13次5カ年計画」に福州と台湾を鉄道で直接結ぶ構想が盛り込まれるなど、中国側の長期インフラ構想にしばしば登場してきた。

ただ台湾側では、対中傾斜を強めた国民党の馬英九政権(08~16年)ですら、世論の対中警戒感の高まりを背景に大橋計画へのゴーサインを出すことはなかった。計画の本格始動には台湾側の合意が不可欠で、膠着(こうちゃく)状態が長年続いている。

にもかかわらず中国の習指導部は、同計画への前のめりな姿勢を崩していない。想定ルートの一つで中国側の起点となる福建省福州市から、台湾に最も近い中国の島である平潭(へいたん)島までの約90キロ区間は、20年に高速道路と鉄道が開通した。中国側から海上大橋に接続する「取りつけ道路」部分がすでに完成していることになる。

今年2月には、共産党中央と中国政府が発表した35年までの全国的な交通運輸網の整備計画案に「福州から台北」に至るルートを明記。中国で台湾政策を担う国務院(政府)台湾事務弁公室の報道官は11月下旬、この整備計画に言及し、「両岸(中台)同胞のためによりよい交通運輸資源とサービスを提供できる」と早期建設をアピールした。

蔡政権に全方位の圧力

中国共産党系の環球時報(電子版)によると、数十年間に及ぶ事業構想の中で有力な案は、35年までの整備計画案に盛り込まれた北ルート(中国の福建省福州市-同省平潭島-台湾の新竹市-台北市)のほか、南ルート(福建省アモイ市-台湾の金門島-嘉義市)もある。北ルートの海域部分は約120キロ、南はその倍に及ぶが、両ルートを建設して「環状線」にすることも可能だとしている。

具体的な工法については、海上橋を基本とし、海峡の中間部分に海底トンネルを建設する構想が浮上。建設費は北ルートで4000億元(約7兆円)超という。

同紙は、建設に向けた課題について「技術面、資金面、政治」の3つがあり、政治的問題の解決が最も難しいと指摘する。これはうなずける主張だ。中国がこれまで建設した高速道路の総延長は16万キロ、高速鉄道は4万キロ弱に達しており、その経験値は侮れない。18年には香港、マカオと中国本土の珠海を世界最長の海上橋とトンネルで結ぶ「港珠澳(香港・珠海・マカオ)大橋」(全長55キロ)を完成させている。

一方、「政治的問題」は深刻だ。習指導部は昨年以降、台湾の防空識別圏に大量の軍用機を進入させるなど、中国側の統一要求に応じない民主進歩党の蔡英文政権に全方位の圧力を強めている。その傍らで中台間の人や物の往来を爆発的に増加させる大橋計画を早急に進めようとしているのだから、まるで左手に刃物を持ったまま右手で握手を求めるようなものだ。

中台間の交通網の整備を通じて中国が経済的な影響力を強め、軍事侵攻にも利用しようとしているのではないかと台湾側が警戒するのも無理はない。台湾で対中国政策を主管する大陸委員会は「中国共産党の独りよがりな台湾統一に向けた宣伝は、絶対多数の台湾民衆から賛同を得られない」と計画を切り捨てた。

中国側がいま、「大橋建設計画」をアピールする狙いはなにか。東京外国語大の小笠原欣幸(よしゆき)教授は「台湾に対する揺さぶり工作という面もあるが、それ以上に中国国内と国際社会に向けて、習氏による台湾統一が着々と進んでいるという偽の雰囲気をつくりだそうとする〝苦肉の策〟ではないか」と分析する。

中国世論と現実のギャップ

習氏は19年1月の演説で、「一国二制度」による統一を台湾側に呼びかけた。しかし、香港でのデモ拡大に対する当局の弾圧を目の当たりにした台湾人の間には「今日の香港は明日の台湾」との危機感が広がり、20年1月の総統選では中国と距離をとる蔡英文氏が再選した。習氏の統一案に台湾人は明確な「ノー」を示した。

「習氏の台湾政策は全く進んでいないのに、中国国内では『今ほど統一に近づいたときはない』と壮大な宣伝をしてきた。来年秋の共産党大会までに、そのギャップをなんとか埋めようとしているのが現在の中国政府だ」と小笠原教授は指摘する。大橋計画のアピールもその戦略の一環というわけだ。

♪あの列車に乗って台湾に行こう あの35年に あの歌の阿里山を見よう-。

中国では11月以降、動画投稿サイトで「2035年、台湾に行こう」という歌が拡散した。大橋計画をアピールする意図は明らかだ。台湾の国防安全研究院は「中国共産党が話題になることを狙ってつくりだした、(口コミの拡散を利用した)バイラル・マーケティングによる宣伝作戦」と分析している。

中国のネット上では「35年に中台を結ぶ鉄道が完成するということは、遅くとも25年には統一が実現するというシグナルだ」などと一方的な期待感を膨らませる声もある。世論の期待と現実のギャップは広がるばかりで、危険な兆候だ。

「北京五輪が終了した後の来年3、4月ぐらいに、大きい動きがあるのではないか」。小笠原教授は中国による武力侵攻の可能性には否定的だが、軍事的な威嚇や経済的な圧力などの先鋭な動きをみせると予想している。

 ◇

 「台湾海峡大橋」の実現には、中台の統一が前提にあり、それを狙っての宣伝工作と分かっていても、台湾にとっては放置できない案件でしょう。日本にとっても台湾有事が現実のものとなれば、対岸の火事では済まされないことは自明の理です。

 この計画を外から阻止することはできません。武力を使うことが必須となるからですし、そんなことは日米とも不可能です。ですから台湾の抵抗を支援することしかありません。中国が先に武力行使に出れば、日米を主力とする多国籍軍を組織し、その対抗のために台湾防衛に回ることになるでしょうが、双方共に多大な損害が発生するので、そうはならない確率は高いと思われます。

 ただ中国の台湾への、武力以外での攻撃と圧力は続くことは間違いないでしょう。それに台湾が耐えられるか、そのための支援をどうしていくかが、日米および他の支援国の必須の課題です。

 ところで日韓の間にも「日韓トンネル」構想がありますが、巨額の投資資金が必要な割には、日本のためには効果の少ないこの構想は破棄すべきでしょう。特に今や敵性国家となった韓国と、道路でつなぐことは安全保障上の脅威を増すことにもなります。台湾海峡大橋とは違った意味で、構想を破棄すべきでしょう。

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2021年11月22日 (月)

震え上がる中国、米国に代わって過激派組織の標的に

Images-3_20211120130901   昨日と打って変わって、今回は中国の弱みにも当たる記事を紹介します。ウイグル自治区にイスラム教徒の住民を抱える中国ですが、タリバンが制圧したアフガニスタンにも食指を伸ばそうとしています。ところがこのアラビア諸国への介入が、思わぬ火の粉をかぶる恐れもあります。

 経済産業研究所コンサルティング・フェローの藤和彦氏が、JBpressに寄稿したコラムから、そのあたりの事情を見てみましょう。タイトルは『震え上がる中国、米国に代わって過激派組織の標的に 中国がアフガニスタンに侵攻する日は近いのか』(11/12)で以下に引用して掲載します。

タジキスタンとの連携を強化

 米軍が8月下旬にアフガニスタンから撤退して以降、中国は中央アジア諸国と安全保障面での連携強化を急いでいる。アフガニスタンからのテロの輸出を防いでいた米軍が撤退した以上、中国は自力で自国民の命と利権を守らなければならなくなっているからだ。

 アフガニスタンで実権を掌握したイスラム主義勢力「タリバン」と友好関係を築こうとする一方、中央アジア諸国の中で中国がとくに連携強化を図っている国がタジキスタンだ。

 他の中央アジア諸国とは異なり、タリバンとの直接の協議を避けているタジキスタンと中国は、「タリバンが国内の過激派組織を抑えることができない」との懸念を共有している。

 10月下旬、中国政府がタジキスタンのアフガニスタンとの国境近くに警察施設を建設していることが明らかになった(10月29日付AFP)。施設はアフガニスタンから中国へ繋がる回廊(ワクハン回廊)の近くに位置する。建設費用(850万ドル)は全額中国側が負担し、完成後はタジキスタン警察に引き渡されるという。

 また、中国政府は「中央アジアに中国の基地は一切ない」としているが、タジキスタン南東部に中国軍の基地がすでに1カ所存在していることは公然の秘密だ。

 タジキスタンはかつて旧ソ連のアフガニスタン侵略の前線基地だった。今なお条約に基づきロシア軍が駐留している。

 プーチン大統領が10月13日に「過激派の活動家たちがシリアやイラクからアフガニスタンへ移動している」と警告を発したことを受けて、ロシア軍は10月下旬、旧ソビエト6カ国で構成されるCSTO(集団安全保障条約機構)による合同軍事演習をタジキスタンで実施した。「テロリストなど過激派組織が侵入した」という想定で6日間にわたって実施された演習に総勢4000人が参加した。

 ロシアが「裏庭」とみなす中央アジアに中国が過剰に介入すれば、蜜月と言われるほど良好な中ロの関係に亀裂が生じかねない。中国がリスクを冒してまで中央アジアでのプレゼンスを高めるのは、「アフガニスタンが不安定化し、隣接する新疆ウイグル自治区に過激派が流入する」事態を極度に警戒しているからだ。中国政府は、アフガニスタンに潜伏しているとされる分離独立派のウイグル人戦闘員が国境を越えて新疆ウイグル自治区に侵入してこないよう、取り締まりを強化している。

タリバンの不倶戴天の仇敵「IS-K」

 中国政府は9月上旬、タリバンに対して「食糧や新型コロナウイルスワクチンなど2億元(約34億円)相当の支援を提供する」と表明し、10月にはロシアとともにタリバンの代表を国際会議に招くなどアフガニスタン情勢の安定化に腐心してきた。

 だがアフガニスタンで過激派組織のテロ活動が一向に収まる気配を示していない。その代表格はイスラム国(IS)の地方組織「イスラム国家ホラサン州(IS-K)」だ。

 イラン東部、中央アジア、アフガニスタン、パキスタンにまたがる地域の旧名称である「ホラサン」が示すとおり、IS-Kの拠点はパキスタンとの麻薬密輸や密入国ルートに近い東部ナンガルハーレル州だ。

 IS-Kはタリバンと同じスンニ派武装組織だが、“不倶戴天の仇敵”の関係にある。IS-Kは「タリバンは穏健すぎる、過激さが足りない」と不満を持つジハード(聖戦)主義者の格好の受け皿になっている。2015年1月に設立されて以来、アフガニスタン各地でテロを繰り返してきたが、2020年以降、新しい指導者の下、国内での暴力をエスカレートさせている。国連は「兵力は500~1500人だ」と推定する。

中国のウイグル問題を引き合いに出してテロを正当化

 IS-Kは「反米」を掲げ、これまで中国を敵視してこなかったが、10月に入り中国を震撼させるテロ事件を引き起こした。10月8日、アフガニスタン北部にあるイスラム教シーア派のモスクで自爆テロが発生し、礼拝中のシーア派少数民族ハザラ人70人以上が死亡した。IS-Kは「中国の要請に応じてウイグル人をアフガニスタンから追放するシーア派とタリバン政権を標的にした」との声明を出した。IS-Kがタリバンの権力掌握以降、宗教的・民族的少数派を攻撃するのは珍しいことではないが、中国のウイグル問題を引き合いに出してテロを正当化したのは極めて異例だ。

 注目すべきは、IS-Kが初めて攻撃の実行犯にウイグル人を投入したことだ。実行犯のウイグル人が新疆ウイグル自治区出身かどうかは定かではないが、IS-Kが、中国が抱く懸念を煽っていることは間違いない。中国に対して強硬路線に転換した兆しだとも受け止められている。

 IS-Kにとって、タリバン政権が強化されることは、アフガニスタンにおける自分たちの生き残りのために非常に都合が悪い。このため、タリバン支配下のアフガニスタンに関与を深める中国に対して、IS-Kは敵意を燃やすという構図になっている。

 タリバンは中国の意向に配慮して、アフガニスタンからウイグル人を追放する意向を表明した。そのことに不満を抱くウイグル人を、IS-Kが新たな戦力に迎える好機として捉えている節もある。シリアのISのように、IS-Kの下にウイグル人戦闘員が集まる可能性が出てきている。

 中国政府はアフガニスタンの内政には関与せず、ひたすらテロの侵入阻止に注力する姿勢に終始している。だがタリバンの代表と頻繁に接触しても「新疆ウイグル自治区の安全が保たれる」との確信は持てない。タリバンの失政が続けば続くほど、IS-Kの脅威は強まる。「タリバンによる政権奪取は中国にとってリスク以外の何ものでもない」との認識が募るばかりだろう。

アフガンで米国に代わり中国が攻撃対象に

 IS-Kの上部組織にあたるISは2014年7月、中国を「ジハード遂行」の戦場の1つに挙げたが、その後、ISのプロパガンダに中国やウイグルに焦点を当てたメッセージが登場することは少なかった。中国がアフガニスタンやイラク、シリアで対IS軍事作戦に参加していなかったからだ。

 だが米軍がアフガニスタンから撤退し、イラクからも攻撃部隊を撤収しようとしている現在、ISをはじめとする過激派組織が見過ごしてきた中国が、今や米国に代わる攻撃対象になりつつある。権力の空白を利用して利権の拡大を図る中国に、過激派組織が目を向けるのは当然の成り行きだ。新疆ウイグル自治区におけるイスラム教徒弾圧の問題への注目度も過激派組織の間で確実に上がっている。

 アフガニスタンの隣国、パキスタンでは中国人に対するテロが相次いでいる。「一帯一路」構想に基づき巨額の投資を行う中国の存在感は年を追うごとに高まっている。過激派組織にとって「中国」はパキスタン政府にダメージを与えるための格好の標的なのだ。大国化して目立つ存在になった中国のことを、パキスタンの武装勢力は「21世紀の新植民地主義国」と呼んで非難している。

 タリバンが米軍に勝利した今、アフガニスタンでも過激派組織にとって次なる標的は中国だ。タリバン政権が頼りにならないとなれば、中国自身が乗り込んでいくしかなくなる。

 自らの「縄張り」である中央アジアで中国がプレゼンスを高めることを黙認しているロシアは、「自国に代わって中国がテロリストと戦ってくれている」とほくそ笑んでいるようだ。11月1日付露プラウダは「ロシアは中国に死にゆく機会を提供した」と皮肉たっぷりの論説記事を掲載した。

 古代ギリシャのマケドニアを皮切りに、英国、旧ソ連、米国が侵略戦争に失敗したことから、アフガニスタンは「帝国の墓場」と呼ばれている。このことを熟知しているにもかかわらず、習近平率いる中華帝国が新たな墓標を建てることになるのは時間の問題なのかもしれない。

 ◇

 イスラム系のウイグル人に過酷な弾圧を加える中国に、イスラム諸国が介入してこなかったことは、中国の軍事力を恐れてのことだったことかも知れません。また宗主国とも言うべきトルコが、中国と親交を深めていることも背景にあるようです。

 しかし、今やアメリカ以上に中央アジアに介入しつつある中国に対して、イスラム原理主義グループがこの記事のように、標的化していくのは時間の問題と思います。中国にとっては、かつてのやっかいな「北狄西戎」を思い起こすことでしょう。

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2021年9月 9日 (木)

「帝国の墓場」アフガンと中国

Images-3_20210909093601  アフガニスタンでは、タリバンによる政権の準備が進んでいるようですが、要職にタリバンの中心メンバーが連なり、女性の採用や民主化の動きにはほど遠い布陣のようです。予想通りですが。

 そのアフガニスタン、中国と急接近の気配が濃厚ですが、イスラム教民族のウイグル人弾圧の中国と、イスラム教原理主義のタリバンは、その宗教観において全く異なる国同士で、将来は全く不透明です。この二国の関係は今後どうなるのか、文化人類学者で静岡大学教授の楊海英氏が、産経新聞「正論」に寄稿したコラムから、その一端を取り上げます。タイトルは『「帝国の墓場」アフガンと中国』(9/6)で、以下に引用します。 

混迷を極めるアフガニスタン。その首都はどんな所だろうか。

≪諸民族の美しい都の歴史≫

「小さな地方である。細長い地方である。東から西へ向かって細長く延びている。周囲はすべて山である」「城で酒を酌(く)め。やむことなく盃をまわせ。…山であり川であり、町であり砂漠であるが故に」。これは16世紀にインドでムガール朝を創設した中央アジアのティムール帝国の王子、バーブルが、自伝『バーブル・ナーマ』(間野英二訳注、東洋文庫)で描いた往昔の中央アジアの都カブールの美しさである。

バーブルの母語はチャガタイ・テュルク語で、自伝はペルシア文学の美文調と草原の叙事詩の伝統が混ざりあった優雅な文体だ。優れた遊牧の戦士とは言い難いが、天才文人であったバーブルは自身をチンギス・ハーンの血統を引く者と認識してモンゴル帝国を再建した。それがムガールで、「モンゴル」の転訛(てんか)である。

「気候はまことに快適である。…夏でも夜は毛のコートなしでは眠られない。冬は雪がほとんどの場合大量に降るが、極端な寒さはない」。バーブルは生まれ育った中央アジアから他のチンギス裔(えい)の英雄に追われインドに落ちて行った。彼は蒸し暑いデリーが気に入らず理想の都カブールに帰る夢を見続けた。そこはテュルク語とモグール(モンゴル)語、アラビア語とペルシア語など12種の言葉が使われていた民族の坩堝(るつぼ)だった。

≪テロと欲望の巣窟に≫

時代が下って、中央アジアきっての文明の都市、カブールは今やテロと欲望の巣窟に変わり果てようとしている。19世紀から新興の帝国が相次ぎ、この堅牢(けんろう)な要塞都市を掌中に収め自身の植民地を構築しようとした。ムガールのラストエンペラーを追放しインドを征服した大英帝国は更(さら)に北上してアフガンに入ったものの、2度も惨敗した。中央アジアを支配下に置き更に南下する勢いを見せていた帝政ロシアを食い止めようとしたグレートゲームの一環である。

20世紀になると、ユーラシア全体を社会主義一色に染めたソ連は1979年にアフガニスタンに侵攻し、親ソ政権に肩入れしようとしたものの、自身の崩壊の引き金を引いてしまった。10年後にはソ連も解体したからだ。美しいカブールを都とする国はまた「帝国の墓場」と化したのである。

ソ連の侵略に抵抗していた聖戦士ムジャヒディンを誰よりも支援していたのは米国だった。その米国に牙をむいた聖戦士の隊列にウサマ・ビンラーディンがいた。ソ連も米国もその価値観は自分たちのイスラム的理念に合致しない「邪悪な存在」だとして理解したからだろう。

2001年の「9・11テロ」の首謀者とされたビンラーディンをアフガンの神学生からなる武装勢力は匿(かくま)った。タリバンだ。友を敵に引き渡すことは遊牧民の価値観に合わないからだ。そこから米国のアフガン戦争も20年間も続き、ついにバイデン大統領は撤収を命じて混乱を収拾しようとしたが、逆にテロが生じている。戦略的にはあまりにも粗末な作戦だが、これ以上「帝国の墓場」にワシントンは嵌(はま)りたくなかったのだろう。

≪中国の野望を葬る地にも≫

カブールはその魅力ゆえに新しい帝国を次から次へと惹(ひ)きつける。東方から触手を伸ばす中国だ。米軍の作戦が泥沼化しつつあった時から中国軍は既に敵側のタリバンの支配地で活動していた。

幽霊のように動く中国軍の存在をいち早く察知したのはモンゴル軍だ。米軍指揮下で展開する国連PKO部隊にモンゴル軍は以前から参加していた。アフガンは13世紀からモンゴル人と交流を重ねて来たし、バーブルのようなチンギス裔の拠点でもあった。

また、ハザラ人というモンゴルとペルシアが融合して形成された民族も存在している。そのため、モンゴルのアフガンへの関与は米軍より文化的に深層に至っていた。タリバンがアフガニスタンを牛耳れば、中国がやってくる、とモンゴル軍の将校は2019年に私に語っていた。それが今、現実となってきたのである。

中国が狙うのはアフガニスタンの銅鉱と石油である。政権樹立を目指すタリバンが中国に期待しているのは国連安全保障理事会常任理事国としての承認と経済的援助だ。銅鉱が埋蔵されている地に古代の仏教遺跡が人類の遺産として立ち並ぶが、バーミヤン渓谷の大仏も破壊したタリバンはそれに関心がない。その点は現世利益を優先とする中国とタリバンは利害関係が一致する。

タリバンと中国はいずれ衝突する。厳格なイスラム法に基づく建国と統治を理想とするタリバンは超原理主義者であるのに対し、中国は超現実主義者であるからだ。

横柄な対外交渉を進めてきた中国の「戦狼」外交官は儒教のマスクをかぶってカブールに残る。孔子学院をカブールに設置してイスラム世界に進出しようとするが、その活動をタリバンがどこまで許容するのか。「帝国の墓場」は早晩、中国の野望を葬る地となるだろう。

 ◇

 超原理主義者と超現実主義者、混乱の中では手を結ぶでしょうが、タリバンが中国の狙いを知らないわけはありません。資源開発を委ねて経済の基盤にしようともくろむタリバンと、その資源を最終的には自分のものにしようと狙う中国とは、いずれぶつかる時期が来るでしょう。

 ただどちらも独裁的で先軍主義の部分は一致します。そして圧倒的に国力の優れた中国が、アフガンを属国化しようとしたとき、両者はゲリラ戦となるでしょうが、果たして帝国(中国)の墓場となるかどうか。なって欲しいとは思いますが。

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2021年8月30日 (月)

「習政権の権威主義」:中国 強くなるほど嫌われる

Images_20210829105001  覇権主義をひた走る中国の習近平政権。毛沢東の死後に続く、歴代の共産党トップとはその統治形態において、一線を画した習政権。その違いは何なのでしょうか。またなぜなのでしょうか。

 米国の政治学者、デイビッド・シャンボー氏が読売新聞の「あすへの考」に寄稿したコラムを引用します。タイトルは『習政権の権威主義」 : 中国 強くなるほど嫌われる』(8/29)で、以下に掲載します。

(編集委員 鶴原徹也)

 中国共産党創設100年の祝賀式典を今夏開催した 習近平総書記(国家主席)は、世界第2位の経済力をテコに盤石の国内支配体制を敷いているように見える。

 だが習政権の権威主義的行動、特に新疆ウイグル自治区や香港、台湾、東・南シナ海を巡る強圧的振る舞いは国際的批判を招いてきた。

 米中対立の常態化も踏まえた先の先進7か国首脳会議(G7サミット)が、国際秩序を乱す中国に対抗して、民主主義陣営の結束を示す場となったことは記憶に新しい。

 米国の中国政治研究の泰斗デイビッド・シャンボー米ジョージ・ワシントン大学教授は現状をどのように見ているのか。半世紀近い中国観察歴に照らしながら自説を語ってくれた。

*****

20210828oyt1i50155t  私は1974年、英領だった香港を訪れ、対中国境に向かいました。中国は毛沢東(1893~1976年)の文化大革命(66~76年)の末期で、「西側」に門戸を閉ざしていたのです。国境で目撃したのは有刺鉄線と監視塔。中国から人民が香港に脱出するのを阻むためでした。人民が逃れたい中国とは何なのか、興味が膨らみ、帰米後、中国研究を専攻しました。

 私が学んだジョージ・ワシントン大学の教授らは皆「反共」で、毛沢東の独裁のありようと人民の悲劇を子細に論じたものです。

 米中両国は72年のニクソン米大統領(在任69~74年)の訪中で国交正常化に大転換していましたが、国交樹立は79年のことです。

 その79年に私は中国を初訪問し、80年代は大半を留学生として中国で過ごしました。まず天津・南開大学、次に上海・復旦大学、そして北京大学。90~91年は同大客員研究員でした。

 刺激的な時代でした。

 毛の死後、実権を握ったトウ小平(04~97年)が「改革開放」を導入し、推進していた。社会は毛の全体主義という長い悪夢からようやく目覚め始めていた。私はチベットと新疆を含む中国全土を旅して回りました。出会った人々は皆、毛時代の苦難を嘆き、新しく知った自由を喜び、経済的、社会的、あるいは知的な夢を口々に語ったものです。それぞれが自分らしい生き方を希求していました。

改革開放に協力した米国人は落胆。今や全体主義国家です

 今は昔です。改革開放を歓迎し、陰に陽に協力してきた米国人は一様に今の中国に落胆しています。

 改革開放は浮き沈みがありましたが、総じて中国は開放と「一定の自由」の道を歩んでいました。

 逆行の始まりは2010年頃、明確になったのは習近平氏が共産党総書記に就いた12年です。今や中国は現代の全体主義国家です。残念であり、 憂鬱になりますが、危険をはらむ変容です。

 中国は習氏の独裁下にあります。トウ小平が導入し、その後の歴代政権が踏襲してきた党の集団指導体制は葬り去られてしまった。習氏は党の意思決定制度、特に政策調整機関の「指導小組」を牛耳り、全てを最終的に決定している。党の最高指導部・政治局常務委員会はもはや形骸化しています。

 習氏の統治手法の特徴は、政策を巡る異論や他の選択肢を早々と排除し、審議にかけないことです。私の見るところ、習氏以外の有力者らは意思決定に関わる真の情報を十分に得ていない。習氏以外の6人の常務委員の間では 王滬寧氏と 栗戦書氏がイデオロギーと党務の分野で幾ばくかの情報と影響力を持つ程度でしょう。習氏周辺は「ボスに取り入る」ことを最優先する茶坊主ばかりです。

 習氏の独裁に不満を持つ党幹部はいますが今は無力です。意見の相違を嫌い、反証を退ける党中枢の傾向は党宣伝機関を通じて増幅され、社会を覆ってしまっている。

ただ、長期的には弱体の始まり。党の外皮は不満によって破られる

 2人の独裁者、習氏と毛沢東には多くの共通点があります。

 絶対的忠誠を強要し、反論を許さず、不服従は断罪し、政敵を容赦なく排除し、人民を過酷に支配する。権力を独占し、権限を委譲しない。哲人・教養人を自任し、自身の「思想」を皆に押しつけ、自らを崇拝するよう求める。自己陶酔型で、他者に感情移入し共感することができない――。

 加えて、どちらもイデオロギーを好む支配者でマルクス主義者を公言しています。ただ習氏はレーニン主義者の色合いが濃く、支配する制度として強い党に信を置いている。一方、毛は文革に顕著なように、党の支配に不信を抱き、党の破壊を企てさえしました。

 これらは2人の共通点の幾つかです。私は毛を旧来の全体主義者、習氏を現代の全体主義者と呼んでいます。両者の統治には40年近い時間の隔たりがあり、その間、中国は大きく変わりました。21世紀の中国が、圧政で国を害した前世紀の毛によく似た指導者を頂いていることに私は驚いています。

 習氏は党を軍隊同様の上意下達のロボットに変えてしまった。下から上の意見具申も水平的な政治参加も出来なくなっています。

 党は今年創設100年を祝いました。習氏は党を完全に管理下に置いています。短期的には党を強化したと言えるでしょう。

 ただ長期的には弱体の始まりです。多くの党員と社会の様々な構成員は習氏の独裁と党支配の強度に不満を募らせています。ロボットとなった党の硬い外皮は早晩、内部で膨張する不満によって破られるに違いないと私は考えます。

 21世紀の米中対立は20世紀の米ソ冷戦とは違います。

 米ソは軍拡競争が象徴するように、敵の動きに反応し合い、雪だるま式に競争を拡大していった。

 米中関係は相互反応的ではありません。独自に動き、外交・通商・情報技術・研究・価値観などあらゆる分野、世界の至る所で競い合っている。「不定全面競争」と私は命名しています。これが世界秩序の新しい常態なのです。

 互いに優位に立とうと努めながら、相手を打ち負かすことができない。そんな状態が長く続く。対立が近い将来、収まることはありません。むしろ激化の一途です。世界、特にアジアは深く巻き込まれることになります。

 米中対立の震源は今後、東南アジアになると私は考えます。東南アジア諸国連合(ASEAN)10か国をひとくくりにすると2019年時点で人口は6億6000万人を超え、域内総生産(GDP)は約3兆2000億ドルで世界有数の経済力を持っている。東南アジアはそれ自体が重要な地域です。

 従来、東南アジアの大抵の国は米国ではなく中国とより良好な関係を求めてきました。

 バイデン米政権はその傾向を転換したいと思っている。7月のオースティン国防長官、8月のハリス副大統領の東南アジア歴訪はその表れです。同盟国・日本の評判が東南アジアで芳しいことは米国に有利に働きます。日本、韓国、インド、オーストラリアと連携すれば、経済や通商分野で中国に代わる選択肢を東南アジアに提示できるはずです。

 敵失も米国を有利にします。中国は近年の「戦狼外交」、つまり威嚇的な外交姿勢が露骨に示すように、相手の主張に耳を貸さず、高慢、かつ強引に振る舞い、評判をおとしています。世論調査を見ると、世界各地で中国の好感度は最低レベルです。中国は強くなるほど嫌われるのです。

 私見では、世界は三つの陣営に分かれます。第1は自由・民主主義の陣営、第2は反自由・専制主義の陣営、第3は第1、第2両陣営に関わって双方から利益を得ようとする陣営です。政治的にも多様な東南アジアは三つの陣営に分散する可能性があります。

 米国には第1陣営を主導する力がある。中国には第2陣営を束ねる力がない。ただ第1、第2陣営は勢力的に 拮抗きっこう する。世界秩序のキャスチングボートを握るのは第3陣営です。最終的にどう転ぶのか、私には予測できません。

 ◇

 習近平政権に関するシャンボー氏の捉え方は、まさにその通りだと思います。ただそれに対してどうすればいいのか、氏は答えていません。おそらく文末に「最終的にどう転ぶのか、私には予測できません。」と、結んでいるように、今後の情勢次第だと言うことでしょう。

 私見ですが日本は完全に第1陣営に属すると言うよりも、どうも第3陣営にも足を突っ込んでいる可能性があります。そして韓国は文政権の元、第3陣営にどっぷりつかっている感じがします。

 中国が一帯一路や独裁政権支援などの無理な拡張政策やとどまることがない軍拡、そして人口減少を間近に迎えた労働環境の逼迫から、近い将来経済的にゆとりがなくなるのはまず間違いがないでしょう。

 それを加速するために、第1陣営が結束し、今までとは真逆の経済制裁を行って行く必要があります。そのためにも日本は正真正銘の第1陣営で役割を全うする事が肝要だと思います。

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2021年8月29日 (日)

報道されないアフガン「不都合な真実」

P09sy4zx  アフガニスタンではタリバンによる制圧後、邦人の移送を含め、各国とも関係者のアフガンからの脱出を必死に試みています。ところが空港警備のタリバンの検問が厳しく、容易に空港内にたどり着けず、なかなか思うように行っていないのが現状です。

 こうした問題以外にも、イスラム教国家であるアフガニスタン特有の問題もあるようです。そのあたりを産経新聞に寄稿された記事から拾ってみます。イスラム研究者の飯山陽氏のコラム『報道されないアフガン「不都合な真実」』(8/25)がそれで、以下に引用します。

 ◇

イスラム過激派組織タリバンが8月15日、アフガニスタンの首都カブールをほぼ制圧し、アフガン全土を支配下においた。

これについての日本メディア報道には一定の奇妙な傾向が見られた。一斉に「アメリカのせい」だと報じたのである。

日経新聞は8月16日の「米介入20年『力の支配』限界 タリバン、終戦を宣言」という記事で、米国の「力による支配」と「国家建設の試み」が失敗に終わった原因は、「テロとの戦いに明け暮れ、一般のアフガン国民が成長の果実を実感できなかったことにある」と分析した。

しかし、そもそも20年前、米軍がアフガンに侵攻したのはテロとの戦いのためだ。それを「テロとの戦いに明け暮れていたではないか」と批判するのは道理に合わない。またテロを放置したまま、アフガン国民が「成長の果実を実感」できるようになるとは考えられない。実際米軍は、一度はタリバン政権を崩壊に追いこむという成果を挙げた。その後アフガンにタリバンに対抗できる軍が育たず民主主義が根付かなかったのは、必ずしも「アメリカのせい」だけではない。米批判を前面に出すあまり、暴力によって全土を支配したタリバンや、タリバンと戦う気などなく敗走した政府軍、腐敗したアフガン政権、国外逃亡した大統領といったアフガンに内在する問題を省みないのでは、反米イデオロギー喧伝のためにアフガン情勢を利用していると批判されても致し方あるまい。

「米国の責任」…朝日新聞の社説は本当か

朝日新聞は8月17日の朝刊に「アフガンと米国 『最長の戦争』何だった」という社説を掲載し、以下のように米批判を展開した。

「米国の責任は重大」

「テロの根源は、各地に広がる紛争や格差、貧困であり、失敗国家をなくさない限り、安全な世界は築けない。同時テロから学ぶべき教訓を生かさず、軍事偏重の行動に走り続けた結果、疲れ果てたのが今の米国の姿ではないか」

しかしアフガンの責任を担うべきは第一にアフガン人自身であるはずだ。またタリバンの武装攻撃はタリバンにとっては「テロ」ではなく、神の命令に従ったジハードの敢行であり、彼らが目指すのはイスラム法統治だ。彼らが戦うのは格差に憤っているからでも、貧乏だからでもない。「テロの根源は格差・貧困」という主張は、書き手がイスラム過激派の「テロ」の本質について完全に無知であることを露呈させている。

タリバンがほとんど抵抗らしき抵抗を受けることなくカブール制圧にまで至った事実は、今後「タリバンを含む暫定政権の樹立」といった軟着陸が困難であることをうかがわせる。タリバンが単独政権を樹立しイスラム法による統治を強行すれば、この20年間にアフガン女性たちが徐々に獲得してきた権利や自由は一挙に、完全に失われる可能性が高い。

タリバンは今になって急にアフガン全土を制圧したわけではない。これまでも各地を支配下におき、イスラム法統治を行なってきた。国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチの2020年6月の報告によれば、タリバン支配下ではイスラム法的統制により人々の基本的人権が著しく損なわれており、第二次性徴を迎えた女子は通学を禁じられ、女性は男性親族のつきそいなしには家から出ることを認められず、外出時には全身を覆い隠すブルカの着用が義務付けられ、就労も、男性医師の治療を受けることも禁じられている。

今アフガンは、この状況が全土に広がる危機に瀕している。

アフガン復興のため20年間にわたり約68億ドル(約7500億円)を支援してきた日本国民として、我々はこうした暗い見通しを深刻に受け止める必要がある。全てを「アメリカのせい」にする「報道」をいくら続けたところで、それは単にメディアやジャーナリストの自己満足にしかならず、アフガンの現状や先の見通しについて日本の一般国民には一切伝わらない。こんなものは「報道」とは呼べまい。

イスラム法の統治…理解されていない本質

日本メディアのアフガン報道の問題点は他にもある。それは彼らがどうやら、アフガン人の価値観と欧米由来の近代的価値観とは全く異なるという本質的な問題について理解できていないようだという点だ。たとえばタリバン報道官が「イスラム法の認める範囲で女性の人権を認める」と述べた際、ほとんどのメディアはそれが近代的な女性の人権とは全く異なることを指摘しなかった。

アフガン人のほとんどは敬虔なイスラム教徒であり、一般にイスラム教徒として敬虔であることは、彼らが神の言葉と信じる『コーラン』の文言に忠実に生きることに最大の価値を置くことを意味する。

2013年に米拠点の調査機関ピュー・リサーチ・センターが実施した世論調査では、調査対象となったアフガン人の99%が「イスラム法による統治を望むか」という質問に対し「はい」と回答した。『コーラン』第5章44節には「神が下されたもの(啓示、イスラム法)に従って裁きを行わない者は不信仰者である」とあるため、改めて「イスラム法統治を望むか」と質問された場合「いいえ」と回答するのはイスラム教徒にとっては難しい。それを勘案しても、同じくイスラム諸国であるエジプトで「はい」の割合が74%、インドネシアでは72%であることと比較すると、アフガン人のイスラム法統治支持率の高さは特筆すべきものがある。しかも当該調査は、米軍侵攻によるタリバン政権崩壊の後に行われていたのである。

イスラム法統治とはすなわち神の命令を絶対的価値とする統治であり、そこでは人間の発案した近代的価値などとるに足らないものとして打ち捨てられる。この価値観の絶対的差異について認識が不十分だったのは、米当局も同じであろう。しかし、今回のタリバンによるアフガン制圧に際し、まるで鬼の首をとったかのように「アメリカのせい」だと執拗に繰り返すメディアもまた、同じ穴の狢である。

武力でもカネでも、神の命令を絶対とするアフガン人の価値観を強制的に変えさせることなどできない。それができるとすれば、アフガン人の中に、イスラム的価値観と近代的な自由や人権、民主主義といった価値観をすり合わせていく必要があると信じる人が現れた時である。

 ◇

 おそらく飯山氏は朝日新聞に代表される日本のメディアが、いつものように現状を深く考察することなく、知見もないのに初めから結論ありきの、紋切り型の浅薄な意見を寄稿することに、憤りを感じているのでしょう。

 こうしたメディアの姿勢は飯山氏の記事の中の『全てを「アメリカのせい」にする「報道」をいくら続けたところで、それは単にメディアやジャーナリストの自己満足にしかならず、アフガンの現状や先の見通しについて日本の一般国民には一切伝わらない。こんなものは「報道」とは呼べまい。』、という部分によく現れています。

 それはそれとして、もともと人間を救うためのものであった「宗教」が、今ではお互いの闘争の源のようになっているのには、大きな矛盾を感じます。タリバンやアルカイダとイスラム国、イランとサウジアラビアというように、もともと同じイスラム教の国、集団同士が、宗派は異なるとは言え、骨肉の争いをしているのは、人間の浅はかさなのでしょうか。残念ですがこれが現実です。

 そして飯山氏の言う『それができるとすれば、 アフガン人の中に、イスラム的価値観と近代的な自由や人権、民主主義といった価値観をすり合わせていく必要があると信じる人が現れた時である』と言うくだりも、できないとは分かっているけれども、何とかできないかという理想が込められているのでしょうね。

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2021年8月24日 (火)

タリバンとは何者か、なぜ恐れられるのか

Img_3ca41e658fff7df516b5f4538f2c29e16268  アフガニスタン情勢が今世界を賑わせています。日本にとってはやや遠い国ですが、イスラム原理主義を掲げた過激な集団というイメージが強く、日本人の間でも関心が高い国です。

 そのタリバン、一体どういう集団か、その発生から歴史的に見てみようと思います。Newsweekに掲載された記事を紹介します。タイトルは『タリバンとは何者か、なぜ恐れられるのか』スー・キム氏8/20)で、以下に引用します。

<20年ぶりにアフガニスタンの実権を掌握したタリバンとはいったい何者なのか、アフガニスタンはどうなるのか>

アフガニスタンでは、イスラム原理主義組織タリバンが全権を掌握。国の将来を不安視する声が高まり、大勢のアフガニスタン人が、なんとか国外に脱出しようと試みている。

タリバンは1990年代後半、独自の厳格なシャリーア(イスラム法)解釈に沿って、アフガニスタンを支配していた。2001年に米軍がアフガニスタンに侵攻したことで権力の座を追われたが、その米軍の撤退完了が8月末に迫るなか、タリバンは各地で攻勢を強め、8月15日には首都カブールを制圧。再び政権を握ることが、ほぼ確実となった。

タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は8月17日に開いた記者会見の中で、自分たちに反対してきた全てに恩赦を与えると宣言し、タリバンの新たな統治下においては、女性の権利も尊重していくとも述べた(ただしイスラム法の範囲内で)。

タリバンとはいったい何者なのか。なぜこれほど恐れられるのか。その歴史と最新状況について、以下に詳しく説明していく。

タリバンの起源

アフガニスタンの公用語であるパシュトゥー語で「学生たち」を意味するタリバンは、1979~89年によるソ連のアフガニスタン侵攻に抵抗したムジャヒディン(イスラム・ゲリラ組織の戦士)によって形成された。カンダハル州のイマーム(イスラム教導師)だったムハマド・オマルが1994年にタリバンを創設し、米CIAとパキスタンの情報機関である軍情報統合局(ISI)が、同組織を密かに支援していた。

その後、パキスタンのマドラサ(イスラム神学校)で学んだパシュトゥン人の若者たちが、タリバンに参加した。パシュトゥン人は、アフガニスタンの南部と東部で多数派を占める民族であり、パキスタンの北部と西部における主要民族でもある。

タリバンはアフガニスタン南部を拠点とし、同地域で影響力を拡大していった。米シンクタンクの外交問題評議会はタリバンについて、ソ連軍の撤退後、1992年〜96年にかけて対立する複数のムジャヒディン組織が争いを繰り広げていたなかで、アフガニスタンに安定をもたらすという約束を掲げて、国民の支持を獲得していったと説明している。

タリバンは、2001年9月11日の同時テロが起きるまで、長年にわたって国際テロ組織アルカイダをかくまっていた。米国家テロ対策センター(NCTC)によれば、タリバンはアルカイダが「テロリストを自由に補充し、訓練し、ほかの国々に配備できる」ようにするための拠点を提供していた。

2001年10月、アルカイダの撲滅を目指すアメリカ主導の有志連合軍が、アフガニスタンへの攻撃を開始。タリバンを権力の座から追放した。

『アフガニスタン/その文化と政治の歴史』の著者であるトマス・バーフィールドは本誌に対して、「タリバンの究極の目標は、アフガニスタンでイスラム法に基づく統治を行うことだ」と語った。

米ボストン大学の教授(人類学)で、同大学のイスラム社会研究所のディレクターでもあるバーフィールドは、新たなタリバン政権の約束が守られるかどうかについては「全ての人が注目している」と言う。「彼らは以前とは違うし、公に示している姿勢も1990年代とは大きく異なる」と指摘した。

実際、タリバンには単独で行政サービスを提供する能力はなく、政府職員や医療、人道支援などの各種サービスを提供する組織の協力なしには国を統治できないと、バーフィールドは言う。彼らが1990年代に「統治」したカブールは所詮、まともな政府もインフラもない廃墟だった。

それに対して現在のカブールは「500万人の人口を抱える大都市で、政府は安全だけでなく各種サービスも提供しなければならない。タリバンがそれを行うためには、(自分が倒した)かつての敵の協力を仰ぐしかない」と言う。

「世界でも人権弾圧がひどい国」

タリバンは、1992年にソ連の傀儡政権が崩壊した後、1994年までに同国南部で影響力を拡大し、複数の州を制圧。1996年9月までには首都カブールを掌握し、大統領を殺害してアフガニスタン・イスラム首長国を樹立した。

タリバン政権が最初に行ったのが、「コーランの定めに沿った法律の厳格な解釈」で、「女性やあらゆる類の政敵、宗教的少数派の処遇についての無慈悲な方針」が含まれた、とNCTCは指摘する。

米国務省民主主義・人権・労働局が2001年11月に発表した報告書によれば、1990年代後半にタリバンの支配下にあったアフガニスタンは「世界で最も人権状況の悪い国のひとつ」だった。報告書は当時のタリバン政権について、「全ての国民を組織的に抑圧し、個人の最も基本的な権利さえも否定した」と指摘。同政権の「女性に対する戦争はとりわけ恐ろしいものだった」と述べている。

国際的な人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が2020年6月に発表した別の報告書は、当時のタリバン政権による抑圧には「処刑を含む残虐な体罰や、宗教・表現・教育の自由の極端な弾圧」も含まれたと指摘した。

当時のアフガニスタンでは、女性が仕事をしたり、教育や医療を受けたりする権利が大幅に制限された。移動や服装についても制限があり、全身と顔を覆う「ブルカ」を着用しなければならなかった。外出する際は男性の親族が付き添わなければならず、違反すればタリバンから暴力を振るわれるおそれがあった。

2001年の報告書は、「タリバン政権下で女性は尊厳を奪われ、家族を支えることができない立場に置かれた。少女たちは基本的な医療も受けられず、一切の学校教育を受けられなかった。歌や人形、ぬいぐるみも全てタリバンによって禁止され、子ども時代さえも奪われた」と指摘した。「タリバンは女性に対して、レイプや拉致、結婚の強制などのひどい暴力を行った。娘を守るために、パキスタンやイランに送った家族もいた」

手を切断する刑罰は廃止しない?

タリバンの新政権が以前とどう違うのかはまだはっきりしない。AP通信は、新たなタリバン政権の下、女性は働くことを奨励した、と報道した。8月16日にタリバン幹部がアフガニスタンのテレビ番組に出演し、女性キャスターからインタビューを受けた中で語った。また少女たちは学校に戻ることが許され、学校の入り口ではイスラム教のヘッドスカーフが配られた。

またAP通信によれば、タリバンのムジャヒド報道官は17日の記者会見で、「イスラム法の範囲内で」女性の権利を尊重すると約束した。だが90年代後半のタリバン政権下で導入されていた、犯罪者の手を切断する刑罰については、廃止を明言しなかった。

ムジャヒドは会見の中で、タリバンはアフガニスタン軍の元兵士や諸外国の軍に協力した請負業者や通訳に対して恩赦を与えると言明。ロイター通信によれば、タリバンは元兵士や政府関係者に対する報復はしないと述べた。

それでもカブールには、不安が根強い。AP通信は8月18日に、武装した男たちがカブールの民家を一軒一軒まわって、追放された前政府や治安部隊で働いていた者を探しているという住民の声を報じた。だがこの武装した男たちがタリバンなのか、タリバンになりすました犯罪者なのかは分かっていない。

ムジャヒドは、タリバンが首都に侵攻したのは、警察がいなくなった後の法と秩序を回復させるためだったと主張。カブールの治安が崩壊した責任は、前政府にあると非難した。

 ◇

 アメリカでは共和党を始め民主党の一部にも、アフガンからの米軍撤収は拙速だったと、バイデン大統領への批判が高まっているようです。しかしベトナムでもそうであったように、その国の統治を外国の手によって変えることは極めて困難です。

 あくまで米国での9.11テロの犯行集団、アルカイダへの報復を狙った、米国の空爆から始まったアフガンへの米軍投入だったわけで、それが長引くにつれタリバンとの泥沼の闘争となってしまったようです。ビンラディンの殺害が潮時だったのでしょうが、おそらくタリバンを掃討し親米政権を作り勝ったのかも知れません。

 いずれにせよ、これ以上の人命と金をつぎ込むことに、バイデン大統領はノーを下したのでしょう。だが大統領の思いとは裏腹に、アフガンの政府軍はいともあっけなく粉砕されてしまいました。やはり人命をなんとも思わない、宗教に凝り固まった武装軍団には、かなわなかったようです。

 そのようなタリバンが目指す政権がどんな形になるのか、今のところ全く不明なようです。少なくとも彼等は彼等のイスラム原理主義でもって国を統治したいと思っているでしょうし、それが一般のアフガニスタン人の求める国家統治と一致するのは、かなり困難ではないでしょうか。いずれにしろ中東にまた一つ、より不安定な国が現れた感が強い、といえるでしょう。

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2021年8月 4日 (水)

“台湾を中国の一部とする地図を禁止” 米下院が法案可決

Picture_pc_c62d6557ab01ef8694510ea7e4053  米中対立が深刻化する中、アメリカがまた一歩中国への圧力強化に踏み出しました。アメリカの下院で、「台湾を中国の一部とする地図の作成などを米政府に禁じることを盛り込んだ法案」を可決しました。

 zakzakに寄稿されたコラム『“台湾を中国の一部とする地図禁止”米下院が法案可決 親台派議員ら中国へ圧力 識者「米航空会社HPで独立国家と同等表記か」 』(8/3)に、その詳細が記されていますので以下に引用します。

 米ジョー・バイデン政権による中国の習近平政権に対するボディーブローとなるのか。米下院は、台湾を中国の一部とする地図の作成などを米政府に禁じることを盛り込んだ法案を可決した。東京五輪開会式中継で、米テレビ局が台湾が含まれない地図を紹介したとして激怒したばかりの中国に、議会が改めてプレッシャーを与えたことになる。

*****

 2022会計年度の米国務省に関する歳出法案について、下院の親台派議員として知られる共和党のトム・ティファニー議員やスティーヴ・シャボット議員ら5人が、台湾を中国の一部とする地図の作成や調達、展示への資金支出を禁止することを盛り込んだ修正案を提出し、全会一致で可決された。

 修正された法案は7月28日、賛成217、反対212で可決された。今後、上院で可決され、バイデン大統領が署名すれば成立する。

 米国政治に詳しい福井県立大の島田洋一教授は「成立すれば、米航空会社のホームページ地図などで台湾が独立国家と同等に表記される可能性もあるだろう。人権問題に関心が高いことで知られるベテランのシャボット氏ら修正案を提出した議員が、法案成立までにどれだけ問題提起するかが重要になる」と解説する。

 一見地味な修正法案だが、台湾では中央通信社をはじめ、複数のメディアが好意的に報じた。これに対し、中国メディアは敏感に反応している。

 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は、台湾メディアを引用する形で法案の可決を伝え、ネット上に「なんて奇妙な法案だ」「内政干渉だ」「なんの意味があるのか」といった投稿が相次いでいると紹介。中国外務省の趙立堅副報道局長が「台湾は中国領土の不可分な一部」との見解を示したと報じた。

 中国と台湾の地図をめぐっては、同23日に行われた東京五輪の開会式を中継した米NBCテレビが、中国選手団を紹介した際の地図に台湾が含まれていなかった。五輪には中国とは別に台湾が「チャイニーズ・タイペイ」として出場していることもあり、台湾が中国の地図に含まれなくてもおかしくないが、中国の在米ニューヨーク総領事館が「不完全な地図」「中国人の尊厳と感情を傷つけた」などとイチャモンを付けていた。

 日本でも地図における台湾の扱いは変化し始めている。2020年度版の防衛白書では中国の防衛政策などを紹介した際、台湾をピンク色に配色し、「参考」として台湾の戦力も紹介していたが、7月13日に政府が閣議で了承した21年度版では、地図上で台湾はグレーとなり、戦力も紹介しなくなっている。

 一方、中国は五輪期間中、台湾を想定した上陸演習を中国国営の中央テレビを通じて放映し、お構いなしに軍事的覇権拡大を続ける。

 また、台湾の政治家や当局高官ら100人以上の無料通話アプリ「LINE(ライン)」の個人アカウントがハッキングされた。機密情報を狙った可能性があり、一部の台湾メディアは中国の情報機関が関与している可能性もあると報じた。

 なりふり構わぬ中国に対し、日本と米国、台湾の有力議員らは、初の「日米台戦略対話」を開催した。安倍晋三前首相らが出席し、安全保障や経済分野の関係強化など、台湾の蔡英文政権と連携を図る動きが進められている。

 28日に米ミサイル駆逐艦「ベンフォールド」が台湾海峡を通過し、翌29日には英海軍最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が南シナ海に入った。自由主義国が連携して中国への牽制(けんせい)を強めているといえそうだ。

 前出の島田氏は「台湾に関しては多くの国が注目しており、戦艦の航行は最も分かりやすい中国への圧力だ。中国が軍事的拡大をやめない限り、圧力を継続するしかない」と指摘した。

 ◇

 台湾は日本の統治後蒋介石国民党が敗走しましたがその後実権を握り、紆余曲折の末現在は蔡英文総統率いる民主進歩党が実権を握っています。急進的に独立を目指すのではなく、現状維持を政策目標においていますが、中国の一部という議論にはもちろん与しません。

 日本でも東京五輪においては開会式でNHKが「台湾」という呼称で紹介しましたし、昨日の卓球女子の団体戦でも、日本の相手は「台湾」と各紙が伝えています。むしろ「チャイニーズ タイペイ」の方が全くマイナーな呼び方となっています。

 おそらく民族的にも文化的にも独自のものを持つ台湾を、中国の一部と捉える中共は極めて政治的、軍事的な判断でそう言っているだけで、歴史的にもそれを完全に肯定をする証拠はないものと思われます。

 日本も隣国の一つであり、親日で地政学的にも極めて重要な台湾を、国として正式に認める動きを目指すべきだと強く思います。

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2021年7月11日 (日)

「習総書記の、習総書記による、習総書記のための共産党」果たしていつまで続く

C6950451e4fc3dcd35f47594d8d09f0d_1  香港、ウイグル問題へと、中国の強権政治への批判が世界的に高まっていますが、加えて以前このブログでも取り上げた台湾問題も、習近平の建党100年演説でにわかにクローズアップされてきています。この台湾問題は、連日のように公船で接近威嚇を行っている尖閣の問題とともに、日本に直接関わる大問題です。

 そこで、なぜ中国が強権政治を振りかざすようになったのか、もちろん近年の経済発展とそれに伴う軍事力の増強が、その大きな要因ではありますが、それに加えて過去の抑圧されてきた歴史にも、その一端があるのは間違いないでしょう。ただ建党100年演説では、歴史の曲解や捏造も垣間見えます。

 キヤノングローバル戦略研究所、研究主幹の宮家邦彦氏が日経ビジネスに寄稿した、コラム『習近平の建党100年演説、その歴史認識の不備を突く』(7/8)に、その辺りの事情が詳述されていますので以下に引用します。

 7月1日、中国共産党が結党100周年記念式典を開催した。米メディアは「習近平(シー・ジンピン)ただ1人を礼賛するイベント」と報じ、日本の主要紙社説は「誰のための統治なのか」「分断を招く大国では困る」「強国路線拡大には無理がある」などと批判的に論じた。筆者も、「習総書記の、習総書記による、習総書記のための共産党」が続くと直感した。それにしても、「中山装(人民服)」から子供たちの大量動員まで、何とも新味のない、ベタな演出であった。

 要するに、「中国を救えるのは共産党だけであり、党の強固な指導を堅持すべし。中国は決して『教師』のような偉そうな説教を受け入れない。国防と軍隊の近代化は加速するが、中国人民は暴力を恐れず、外部勢力によるいかなるいじめ、圧力、奴隷のごとき酷使も許さない。台湾問題解決は党の歴史的任務であり、中国人民の決心、意志、能力を見くびってはならない」ということだ。従来の立場を変えるつもりなど毛頭ないのだろう。

 習近平体制に対する内外の政治的評価はほぼ固まりつつある。筆者も現時点で追加すべきコメントは少ない。されば、今回は視点を変えよう。中国内政の安定性や対外政策の行方などの議論は他の優れた識者にお任せし、本稿では習近平総書記の「歴史認識」に焦点を当ててみたい。毎度のことながら、以下はあくまで筆者の個人的分析である。

太平天国の乱、義和団事件、辛亥革命はいずれも失敗

 7月1日の結党100周年演説は、近現代中国史に言及した部分が少なくない。ここからは、過去200年の近現代史該当部分を演説の流れに沿ってご紹介の上、それぞれにつき筆者の率直なコメントを付け加えていこう。

 演説冒頭で習総書記は、1840年のアヘン戦争に言及し、それ以降、中国が半植民地、半封建社会となり、中華民族は前代未聞の災禍に見舞われた、と振り返っている。

【筆者コメント】アヘン戦争・南京条約は近代中国に対する西洋列強からの強烈な「文化的挑戦」だった。中国のエリートたちは今もこれらを受け入れたことのトラウマにさいなまれているはずだ。1840年代以降、中国人はこの「西洋文明からの衝撃」に対応すべく、考え得るあらゆる対応策を試みてきたが、こうした努力はことごとく失敗している。

 次に習総書記は、民族存続の危機から国を救うため、中国では太平天国の運動、戊戌(ぼじゅつ)の変法、義和団の運動、辛亥革命が相次ぎ起きたが、いずれも失敗に終わった、と総括している。

【筆者コメント】 確かに、アヘン戦争に対する中国の最初の対応は「太平天国の乱」だった。客家の洪秀全がキリスト教と土着民間信仰を融合して始めた民衆運動である。一種の原始共産社会を目指す過激な改革運動だった。これは結局、外国からの支援を得た清朝により鎮圧されてしまう。

 第2の対応は、1860~70年代の曽国藩・李鴻章らによる「洋務運動」だった。なぜか習近平演説はこれに言及していない。清朝によるこの改革運動も、宮廷改革ゆえに挫折してしまう。

 続く第3の対応が、1898年の光緒帝による「変法自強運動」であった。これも大胆な制度改革など内容が急進的すぎたため、西太后に潰されてしまう。

 第4の対応は1900年の義和団事件、そして第5の対応が1911年の孫文による辛亥革命だった。どちらも民衆の支持や軍事力の裏付けがなく、習近平演説の言うとおり、「いずれも失敗」に終わった。辛亥革命に至るまでの中国現代史に関する限り、筆者の見立てと中国共産党の「歴史認識」がほぼ同一であることは興味深い。

半植民地からの脱却、国民党には触れず

 続いて、習総書記はマルクス主義を取り入れた中国共産党の革命により、「旧中国の半植民地、半封建的社会の歴史」と列強が押しつけた「不平等条約と中国における帝国主義」を徹底的に廃した、などと述べている。

【筆者コメント】ここから、筆者と中国共産党の「歴史認識」はかい離していく。共産党が中華人民共和国を建国したことは疑いないが、人民解放軍が日本軍と直接戦い、激戦に勝利したといった話は寡聞にして知らない。孫文、蒋介石の国民党を語らず、マルクス・レーニン主義の共産党だけが「旧中国の半植民地、半封建的社会の歴史」や「不平等条約と中国における帝国主義」を断ち切ったなどと主張することは、客観的に見て無理がある。

P1_20210711102901 中国の経済成長は、日米との国交正常化あってこそ

 さらに、習総書記は、鄧小平の改革開放こそが「現代中国の前途と運命」を決めたのであり、「中華民族が搾取され、辱めを受けていた時代は過ぎ去った」「中国を救えるのは社会主義だけであり、中国を発展させられるのは中国の特色ある社会主義だけ」だと胸を張った。

【筆者コメント】要するに習総書記は、「改革開放政策で中国は豊かになり、今や大国になりつつある。もう中国人は搾取されないし、辱めも受けない。これからは中国が国際秩序をつくっていく。そのような中国を発展させられるのは中国共産党の社会主義だけだ」と言っている。

 筆者はこれにも異論がある。

 そもそも改革開放政策とは、マルクス・レーニン主義とは正反対の「国家資本主義」政策だった。また、中国が高度経済成長したのは、共産党ではなく、中国庶民の努力のたまものだ。さらに、中国の改革開放にとって理想的な環境が生まれたのは、ソ連との対抗上、米国や日本が対中国交正常化にかじを切ったからではないか。 

 このような理解を欠いた「歴史認識」では、中国を取り巻く現実が見えない。中国はいずれ政治的、経済的、軍事的困難に直面する可能性が高いだろう。そう考えれば、米国が対中経済制裁を発動するなど、改革開放後の理想的発展環境を失いつつある今の「中国の特色ある社会主義」が今後も「中国を救う」とはどうしても思えない。

習近平思想だけが中国を発展させる?

 最後に習総書記は、2012年の第18回党大会以降、中国の特色ある社会主義が「新しい時代」に入り、中国の特色ある社会主義制度を堅持し改善したと述べている。

【筆者コメント】習総書記は、本音を言えば、「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」すなわち「習近平思想」だけが中国を発展させる力を持っている、とでも言いたいのだろう。だが、果たしてそうだろうか。

真の市民社会を築かねば、共産党統治の正統性は確立せず

 7月1日の習近平演説が示す「歴史認識」に筆者は強い違和感を覚える。同総書記は、中国は過去100年間、共産党独裁の下で中国復興の夢に近づきつつあると説明した。だが、実態はその逆ではないのか。アヘン戦争以来の中国の対応は、いまだ完結していない。辛亥革命後も、1949年の共産革命や1978年からの改革開放政策を経ても、強権を用いなければ社会は安定せず、諸外国からの尊敬を勝ち得ることもできない。完結するどころか、この100年間に中国の人々が失ったものも決して小さくなかったはずである。

 国家が豊かになれば、いずれ社会は成熟し、市民社会が生まれるはずだ。ところが、中国の改革開放政策は、成熟した市民社会の芽を育むどころか、貧富の差を拡大させ、都市化と核家族化で中国の伝統的社会を分断・破壊してしまった。その結果、中国は伝統文化を踏まえた政治改革を行うタイミングを逃し、日本のように漸進的な形で社会改革を進めることもできなくなった。こうした政治的、社会的「ツケ」は歴史的に見て、決して小さくはないだろう。

 19世紀以来の「西洋文明からの挑戦」に対する中国の最終的対応が、共産党、特に習近平政権の下での「中国復興の夢」の実現であるとすれば、東アジアの近未来は決して明るくない。真の政治改革、社会改革がない限り、共産党政権の統治の正統性は確立せず、中国社会の脆弱性も続くだろう。されば、アヘン戦争以来の「歴史的トラウマ」は当分克服されない。

 中国に真の意味の市民社会は生まれるのか。それとも、今後もこれまでと変わることなく「中国の特色ある市民社会」とお茶を濁すのか。それまで東アジアの安定は保たれるのか。疑問は尽きない。

 ◇

 宮家氏の言う、「習総書記の、習総書記による、習総書記のための共産党」と言う認識に私も賛同します。そして共産党のための中国であり、それは習近平のための中国なのでしょう。

 過去に欧米から虐げられた歴史は語っても、近年日本も含め欧米から受けた経済的恩恵は語らず、共産党だけの業績にしているところが唯我独尊を著わしています。そしてその恩恵のために経済発展を遂げたその成果は、国民の民主化のために向かうことなく、共産党のための軍事力と治安維持に振り向けていく。まさに自己増殖を繰り返すモンスターのようです。

 この巨大化したモンスターも、生きすぎた治安維持・管理社会への民衆の反発や、日本同様急激に進む少子化の嵐、民主国家からの経済離脱等、内外に矛盾を抱えてきています。果たしてこの体制がいつまで続くのかはしれませんが、外部への様々な意味での暴発的攻撃や戦闘だけは避けたいものです。

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2020年10月15日 (木)

支持低迷の文在寅政権、醜聞を力ずくで封殺、国民の不満も徐々に限界へ

Rectangle_large_type_2_86acba8afbffa419c 反日国家韓国で、その反日を牽引する文在寅大統領の下で、法務長官や外相の家族関連のスキャンダルが相次いでいます。いつも見る光景ですが、今回はあまりにも突出した親北反日外交の背景もあって、政策の裏目が出始め、支持率の低下にも大きくのしかかってきているようです。

 ただ文在寅大統領は、かつての軍事独裁政権をしのぐ独裁体制を、自己と自政権の維持安定のために、着々と進めていて、反文政権派の封じ込めに対して、次々と強権を発動しているようです。

 その辺りの現状を、元韓国大使でジャーナリストの武藤正敏氏が、JBpress に寄稿したコラムから引用します。タイトルは『支持低迷の文在寅政権、無謀な対北融和策に注意せよ 次々飛び出す醜聞を力ずくで封殺、国民の不満も徐々に限界へ』(10/13)です。

 文在寅大統領の支持率が下落している。危険水域にはまだ少し余裕があるが、下落傾向が支持基盤にまで及んでいることが政権内に懸念を呼んでいる。

 昨年曺国(チョ・グク)法務部長官(当時)の不正が広がった時には、大規模な抗議活動がソウル市内で繰り広げられた。今回もまた、閣僚が絡むような大規模不正が発覚しており、政権をレームダックにしかねない状況になっているのだが、この窮地を文政権は強硬手段で乗り切ろうとしている。

 しかし、文政権への支持を取り戻すきっかけは見当たらない。これまでは新型コロナの封じ込めで支持が上昇してきたが、それも限界にきている。

打開策は「日本叩き」か「北朝鮮関係改善」

 支持率引き上げが期待できる事案は2つある。1つは、日韓関係で日本から譲歩を引き出すことだ。日本に打ち勝つことは国民の評価を得やすい。

 その意味では、世界貿易機関(WTO)の事務局長選で、韓国政府が全力で推す兪明希(ユ・ミョンヒ)・産業通商資源部通商交渉本部長が勝利できるかどうかは、大きな分岐点になる。日本が韓国への半導体材料の輸出管理の厳格化を決めた件について、韓国はWTOに提訴している。事務局長が韓国出身の兪氏になれば、韓国側に有利に展開する可能性もある。ただ、それが文政権への支持につながるかどうかは不透明だ。事務局長選で兪氏が勝利すれば、一時的には支持率上昇につながろうが、それとてそう長続きはしないだろう。

 もう1つ、文政権の支持率上昇に最も効果がありそうなのは北朝鮮との関係促進だ。北朝鮮との関係が前進すれば、平和の幻想が広がることであろう。

 しかし、北朝鮮は本気で非核化をする意思はなく、平和はあくまでも幻想である。無謀な対北朝鮮政策は文政権批判にも繋がりかねず、北との関係促進は文政権にとって諸刃の剣でもある。

秋美愛法務部長官の子息の兵役不正事件は大ダメージ

 文在寅政権の支持率は40%台半ばに落ち、不支持率がこれを上回る状態が続いている。文在寅政権を支持する人は、「政権発足後3年たった今も40%半ばの支持があることは尊重しなければならない」と言う。それも一つの真理であるが、同時に韓国の世論調査は、文政権不支持が多い年代の人が電話に出ると回答を求めないなど、信頼性に欠けるとの評価があるのも事実である。

 最近の支持率低下の顕著な原因となっているのは、法務部長官・秋美愛(チュ・ミエ)氏の息子による軍休暇からの未復帰を「休暇」としてゴリ押しした行為に、当時与党代表だった秋美愛氏が介入した事件や、韓国人公務員が北方限界線の北側水域で射殺され焼却された事件だ。後者の事件では、文政権が国民の人命保護を放棄し、北朝鮮の行為を不問に付す態度をとっていることへの反発が強い。これらの事件をきっかけに、従来の支持基盤であった30~40代の女性や20~30代の男性の支持が離れているのだ。

 どちらの事件も、韓国国民の感情を刺激するものだが、現在のところ文政権に対する抗議運動がヒートアップしているといった情報は聞こえてこない。朴槿恵(パク・クネ)前大統領に対しては弾劾の動きなどが起きたのに、なぜ文大統領に対しては韓国の世論はおとなしいのだろうか。

 結論からいえば、文政権に対する抗議運動の芽は実は広がっている。しかし、弾劾運動が起きることはないだろう。仮にそれを言い出す人がいたとしても、文政権はすでに立法府も司法府も抑え込んでおり、弾劾される可能性は極めて少ない。

 さらに文政権は、自分たちに対する抗議運動そのものも強硬手段で封鎖しており、大規模な運動に発展する可能性は低い状況にある。

 しかし、だからといって韓国の世論が文政権に満足しているわけではない。

抗議活動を強引に封じ込める文政権

 ハングルの日である10月9日、光化門広場、鍾閣、徳寿宮などソウル都心で37の集会開催の届け出がなされていた。その大部分は「文在寅政権の不正腐敗糾弾集会」「政治防疫中断要求集会」といった反文在寅集会だった。

 集会の開催自体は裁判所が許可していたが、文政権はその開催を露骨に阻止しようとした。

 ハングルを制定した世宗大王像が置かれている光化門広場の外郭道路周辺には機動隊バスが壁を作り、広場の周辺には鉄製のフェンスが設置された。光化門広場は青瓦台に近く、官庁の建物が集中する韓国政治・行政の中心地。朴槿恵弾劾デモもここで行われた象徴的な場所だ。

 そのため当局の警戒は厳重だった。当日は、広場に入るすべての道路は鉄製のフェンスやビニールテープによる禁止線で車の通行は阻止され、通行する市民は複数回にわたって身分証の提示を要求されるような始末だった。ソウル郊外から都心に向かう車に対しては、57カ所の検問所を設けた。

 これに動員された警察力は実に警察官1万2000人、鉄製のフェンス1万3000個、機動隊バス500台という。

 表向き、警察は「コロナ防疫を妨害し、感染を広げる恐れがある」との理由で集会を禁止したが、狙いはもちろん抗議活動を封じることだ。市民がたくさん集まっていた遊園地などでは何の規制もなかったのが何よりの証拠だろう。

 集会を計画した複数の市民団体は、「これは防疫のためではなく文在寅政権を守るため、批判を封鎖するという意味だ」と反発した。政権批判を封じるためには、そこまでしなければならない状況とも言える。

政権幹部らの不正捜査に圧力?

 強権力を使った文政権守護の動きは、集会禁止にとどまらない。それは検察権力への介入による政権への捜査妨害という形で露骨に行われている。

 韓国では現在、巨大な投資詐欺事件が大きな関心を呼んでいる。被害額が1兆6000億ウォン(約1480億円)と推定されるライム資産運用事件と、同5000億ウォン(約460憶円)とされるオプティマス資産運用事件だ。ところがこの事件を捜査してきた文在寅政権下の検察がずさんな捜査をしていたのではないかとの疑念が持たれているのだ。

 実は両事件とも、青瓦台や与党の中心人物たちの関与を巡る疑惑を裏付ける陳述、資料が早々に確保されていた。

 ライム資産事件では、問題を起こしたファンドの会長が裁判所に出廷し、「姜ギ正(カン・ギジョン)元青瓦台首席秘書官に渡すようにと会社役員に5000万ウォン入りのショッピングバッグを手渡した」と証言している。

 オプティマス資産運用事件でも「政府および与党関係者がプロジェクトの収益者として一部参加」したという。ところが、こうした数々の疑惑が、検察の指揮系統に配置された文政権に近い幹部たちによって、それぞれ数カ月の間に握りつぶされていた状況が次々に明らかになっているのだ。

 秋法務部長官は今年初めに長官に就任して以降、合計4回の人事異動を実施し、ソウル中央地検と東部地検・南部地検・北部地検・西部地検の主な事件指揮ラインに「親文」の検察幹部を配置してきた。これが結果的に捜査の広がりを抑えたと言われている。

 秋人事は、秋長官の息子による軍休暇未復帰に関する不正事件も不起訴にする決定をもたらしている。韓国の司法は、今や政権幹部の意のままになる存在でしかないのだ。

総選挙の公正さまで疑われる始末

 そんな文政権も、一時は支持率低下に悩んでいた。そこに降って湧いたのが新型コロナの蔓延だった。韓国でも急速に感染が広がった時期があったが、その後は大規模なPCR検査の実施などにより抑え込みに成功。そこが世論から評価され、今年4月の総選挙で圧勝し、支持基盤を強化した。

 しかし最近になり、この選挙は果たして公正に行われたのかと疑問を呈される事態となっている。

 4月の総選挙で初当選した元KBSアナウンサーで青瓦台の報道官だった高ミンジョン議員(共に民主党)議員は、違法な選挙運動をしていたとして、未来党統合(現国民の力)から告発されていた。裁判所の判断によっては議員職をはく奪されかねない重大容疑だったが、今月に入り、ソウル東部地検は「嫌疑なし」とし、その理由も明かさなかった。

 選挙期間中に高氏は、自身の選挙公報物に、住民自治委員が高候補を支持するとの虚偽の支持発言を載せ、8万1834世帯に配布したとして告発されていた。現行法では住民自治委員は特定候補を支持できないことになっており、当該委員も「そのような発言を行ったことはない」と証言している。

 物証や証言から判断すれば、「完全にアウト」とされておかしくない状況なのに、秋長官の下の検察が政権与党に有利な決定を行い、その理由も明かさないのだから、納得がいかない韓国国民も多い。

 また、現政権は選挙管理委員会の人事にこだわり続けているという。これまで文政権は親文派を主要ポストにつけることで、支配力を強化してきた。政権側が選管を支配されていて公正な選挙が実施できるのだろうか。

 しかし、韓国においてこのような事実を報じるのは筆者が知る限り、「朝鮮日報」くらいである。「朝鮮日報」を購読しているのは文在寅政権に批判的な保守層の人々である。それ以外の言論機関はひたすら政権寄りの報道に終始している現実を見れば、文政権の「支持率40%台半ば」という数字は、恣意的に作られた数字と言えよう。

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「対北政策で突破口」は無謀

 文政権の支持率をこれまで支えてきたのは新型コロナに対する取り組みであった。しかし、それ以外の部分では文政権の政策は失敗の連続だった。そうした中、文政権が支持率浮揚の頼みの綱とするのは、対北朝鮮で関係改善の突破口を開いていくことしかないだろう。

 周知のことと思うが、もともと文在寅氏は北朝鮮との関係を改善するため、北朝鮮に対しては極度に融和的な姿勢に終始してきた。

 最近では、米国との調整もなしに、国連総会の一般討論演説で突如「終戦宣言」を口にした。しかも、この時の文在寅氏の提案では、北朝鮮の非核化が前提とはなっていない。北朝鮮との幻の平和を実現することで国民に淡い期待を与えようとしているだけなのだ。

 もちろん、これに対する米国の反応は厳しい。かつてホワイトハウス安全保障会議で補佐官を務めた、戦略問題研究所上席副所長のマイケル・グリーン氏は、「韓国大統領が国連で米国議会や政府の立場とこれほど一致しない演説をするのをほぼ見たことがない」「平和を宣布することで、そのように(朝鮮半島の平和実現)できるわけではない」と強い口調で批判している。

北朝鮮の軍事パレードより、金正恩委員長の甘言に着目

 文大統領が恋焦がれる北朝鮮は、10月10日の朝鮮労働党創建75周年の閲兵式(軍事パレード)で、米国本土を射程に収める新型の大陸間弾道弾(ICBM)を公開した。これは片側11輪の輸送起立発射機(TEL)に載せられたもので、従来の「火星15」の片側9輪より、全長が長い。弾頭部分の直径も大きくなって、複数の弾頭を搭載できる多弾頭型かと注目されている。さらに、「北極星4」と書かれた新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)も公開した。

 北朝鮮は前回2年前の軍事パレード時から着々とミサイル開発を継続してきたものであり、今回は米国を標的にしたものである。

 北朝鮮の核ミサイル開発はこれまでも公然の秘密であった。そうした中で文大統領は、非核化を前提としない「終戦宣言」を提案したのである。はっきり言うが、北朝鮮は決して平和を望んでいない。つまり、韓国の言う「朝鮮半島の平和」は幻の平和に過ぎないのだ。

 文在寅政権の北への片思いは変わらない。こうしたミサイル技術の進化を見せつけられても、文政権の終戦宣言に対する姿勢は変化しないだろう。

 9月22日に、韓国人の公務員が、海上で北朝鮮により射殺され、遺体を焼却された時も、北朝鮮の蛮行よりも、その後に金正恩委員長が述べた「南北の間の関係に面白くない作用がある事件が我々の水域で発生したことに対し貴側に申し訳なく思う」と述べたことに注目していたほどだ。さらに10月8日には、文大統領は再び「終戦宣言こそが朝鮮半島平和の開始」と繰り返したのである。

 ここまでいくと、文在寅政権に北朝鮮を批判的に見ることなど、到底期待できないのが分かる。

金委員長に取り込まれる文政権

 金正恩委員長は、軍事パレードの演説で「われわれに対して軍事力を行使しようとする勢力には、『最も強い攻撃的力で懲らしめる』」と強調した。その一方で韓国に対しては「愛する南の同胞が(新型コロナウイルスの)保健危機を克服し、固く手を握り合うことを願う」と融和的なメッセージを送った。

 同じ演説の中で、金委員長は北朝鮮が制裁、新型コロナ、洪水で困難な状況にあることを認め、国民の忍耐と努力への感謝を述べている。本音では韓国に救いを求めているのだ。文在寅政権のことだから、この言葉から、北朝鮮に手を差し伸べる可能性を改めて模索しはじめているかもしれない。

 筆者は、北朝鮮の市民が本当に困っている時に人道援助をすることを否定するものではない。しかし、金正恩氏が保有する資金を核ミサイル開発に回す状況を放置したまま、北朝鮮を救援することには断固反対である。それは朝鮮半島に平和をもたらすことには決してならない。

 現在の文政権が求めているのは、「朝鮮半島が平和になった」と国民に思わせることであり、それは瞬間的には文政権支持の向上につながるだろう。

 しかし、文政権の北朝鮮融和政策に対する疑念は国民の間にすでに浸透しており、政権批判の要因にもなっている。というのも北への融和政策の将来的な帰結は、北朝鮮から要求の一層の高まりになることが容易に予想できるからだ。さらに北の核ミサイル開発が完成すれば、韓国はこれまでの経済成長の成果を北朝鮮に搾り取られることになるのが目に見えている。だから韓国国民は、文政権のむやみな北朝鮮融和策に懐疑的な目を向けているのだ。

 支持率が低下し、強権的な政治も行き詰まりを見せるようになれば、文政権は一縷の望みをかけて、思い切った北朝鮮融和策に乗り出す可能性がある。そうなれば、韓国の将来に重大な禍根を残すものになるのではないだろうか。同時にそれは、東アジアの安全保障環境も危機に晒すことにもなる。日本としても静観してはいられなくなる。

 朴槿恵前大統領が、友人で実業家の崔順実氏の事件を発端として、大規模な反政権デモを引き起こし、弾劾裁判に持ち込まれ敗訴したのは、今思えば朴槿恵氏が大統領選で戦った相手、文在寅氏の裏工作ではなかったかと思い当たるふしもありますね。

 その時は朴槿恵政権は保守政権だったので、デモに規制などしなかった。ところが文在寅政権になって、あらゆるところで政権保持のための強権化が進み、特に法務や検察と司法を完全に抑えることで、自己保身を保つ、まさに独裁政権そのものの形作りをしているようです。ロシアやベネズエラと同じ政体と言っていいでしょう。

 ですから朴槿恵前大統領の時のような弾劾はないでしょう。そして怖いのは文在寅の後の大統領選で、再び文在寅子飼いの親北政権が続くことです。それも実現性は高い。

 日本としては親北、親共産主義の文政権、或いはその後継政権とはいつでも縁切りできるようにしておく必要があると思います。最も大事なことは経済的つながりを可能な限り極小にして行くことでしょう。中国とは格段にその囚われ方は低いですが、念を入れることは必要です。小中華ですから。

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