安全保障

2023年4月13日 (木)

有本香氏:あの「中国気球」について衝撃事実 2~3月に多数が日本海に飛来も…当局は政治的影響に鑑み「対処しない」決定していた

Images-10_20230412162801  中国気球の話題も過去の者となりつつある今、実は先月、先々月にも日本海に飛来していたようです。ところがメディアではあまり報道されていなかった。日本当局は「対処しない」という方針を結滞したようですが、何故なのでしょう。

 それまでの経緯についてジャーナリストの有本香氏がzakzakにコラムを掲載しました。タイトルは『「中国気球」について衝撃事実 2~3月に多数が日本海に飛来も…当局は政治的影響に鑑み「対処しない」決定していた』(4/07公開)で、以下に引用して掲載します。

「2023年 中国『偵察気球(スパイ気球)』事件」は、まだ記憶に新しいことだろう。

発端は2月1日、米モンタナ州上空に正体不明の「気球」が飛来、多くの市民の目撃動画が次々にネット上にアップされ始めたことだった。地元空港は万一のリスクに備えて、飛行機を欠航させた。

これを受け2日、米国防総省の報道官が「1月28日、中国の気球が米国の領空に入った」と公表した。

その後、紆余(うよ)曲折あって4日、米南東部サウスカロライナ州沖に達したところで、米軍の最新鋭ステルス戦闘機「F22ラプター」が空対空ミサイルで気球を撃墜した。あの一件である。

発見から撃墜までの数日間、世界に共有された光景はさながら、テレビドラマのようだった。

中国は「平和的な気球だ」「米国は過剰反応だ」と主張。しかし、アンソニー・ブリンケン国務長官は予定していた中国訪問を中止した。

ここまでは外交上の〝ドラマ〟だが、野党・共和党はジョー・バイデン政権の対応を「弱腰」だと非難した。米中関係の緊張とともに、米国内の対立も激化した。

この一件後、筆者はずっとモヤモヤしたものを感じていた。

中国の主張を真に受けるわけでは無論ない。米国の大メディアが報じた「軍事偵察目的」との話も、さもありなんと思った。とはいえ、たかが気球である。

当初、「目的は米軍基地の画像情報取得だ」との報道があったが、200基以上の偵察衛星を保有している中国が、わざわざローテクの気球を使う必要があるのかと思った。

また、たかが気球を撃ち落とすのに、米国が、同盟国の日本にさえも「機密保持」を理由に売らなかった戦闘機F22を用いる必要があったのか。当初、国防総省は撃墜を考えなかったとも報じられていたのに…。などなど、多くの疑問が消えなかった。

3年前、わが国の東北地方に同様の気球が飛来したときのことも思い出した。当時の河野太郎防衛相は、気球の行方や再飛来の可能性を問われて「気球に聞いてください。安全保障に影響はございません」と答えていた。

今般改めて野党の追及を受けた河野氏は「分析の内容を対外的に話すことはできない」と答弁した。

これは大筋として理解できる。しかしそれなら、「お答えを控えます」と真面目に言うべきところを、「気球に聞いて」と茶化すように言うセンスには首をかしげる。

余談だが、河野氏は2021年の自民党総裁選に立候補した際、敵基地攻撃能力について「昭和の時代の概念」などといってケムに巻いた。国防の肝であり、最も言い難い論点をはぐらかす態度からは、「将来の宰相の器」を感じられない。

気球に話を戻そう。

米NBCテレビは3日、気球が「複数の米軍基地の兵器システムが発する信号や兵員間の通信を傍受していた」と報じた。収集した情報はリアルタイムで中国本土に送っていたという。

織田邦男氏「目的はピンポイントで持っていけるようにする」

だとすると、安全保障に影響は大ありだ。当然、わが国に飛来した気球にも同様の疑いを向けるべきだ。さらに、元航空自衛隊空将の織田邦男氏は、筆者のネット番組「百田尚樹・有本香のニュース生放送 あさ8時!」で、震撼(しんかん)する未来予想を解説した。

「中国がもくろんでいるのは、この気球を世界中にピンポイントで持っていけるようにすることです。風の速度と方向は高度によって違いますが、それが全てわかれば、全データをAIに入れ、どの高度に上げて(下げて)どこまで持っていくか操れるようになる。ピンポイントでワシントンに持っていき、生物兵器を落とすことも可能です」

もはや、たかが気球という話ではない。

最後に、筆者があるソースから得た最近のわが国に関わる重大情報を明かそう。

米国での「気球」事件の後、2月中旬から3月にかけ、わが国の日本海側に中国のものとみられる気球が多数飛来していた。当初、空自戦闘機が緊急発進(スクランブル)で監視したが、その後、数があまりにも多いことや、政治的影響に鑑み、日本当局は「対処しない」と決定した。

果たして、この決定は正しいのか。われわれの未来の安全を「気球に聞いて」いる場合ではないはずである。

 日本当局とはどの部署を指すのでしょうか。防衛省判断でしょうか、それとも首相の判断でしょうか。しかも殆どメディアに扱われていないのは、極秘裏に偵察をしていたのでしょうか。

 加えて「政治的影響」とは何でしょうか。中国への配慮でしょうか。それとも対処しないことを国民に知られてはまずかったのでしょうか。「対処しない」のではなく「対処できない」のが本音だったのではないでしょうか。いずれにしろどうも不可解な決定のように思います。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)


にほんブログ村 

 

2023年2月 7日 (火)

撃墜で一気に緊迫、「気象研究用が誤って米国に進入」のわけがない中国気球 日本でも過去に偵察活動

15_20230206142701
 中国の偵察気球がアメリカの上空に飛来し、大陸を横断した後西太平洋上で米軍機によって撃墜されました。中国は民間の飛行体と称し、アメリカ軍の撃墜に対し猛烈に抗議しています。だが中国には純粋な民間企業はなく、すべて共産党の管理下にあります。ましてやこのような飛行体が純粋な民間である可能性は極めて低いでしょう。

 この飛行体は、日本にもかつて上空に飛来した事がありますが、そのときはメディアはまるでUFOでも見るように、興味本位で捉え、自衛隊により偵察用気球だとの指摘もありましたが、その正体を深く掘り下げてはいません。お花畑日本の象徴的出来事でしょう。

 この飛行体の詳細について、元幹部自衛官で軍事評論家の数多久遠氏が、JBpressにコラムを寄稿していますので、今回これを取り上げます。タイトルは『撃墜で一気に緊迫、「気象研究用が誤って米国に進入」のわけがない中国気球 日本でも偵察活動、気球の仕様と性能は?』(2/05公開)で、以下に引用して掲載します。

 アメリカ本土上空で中国の偵察用気球が確認され、反発したアメリカが、1月5日から予定されていたブリンケン米国務長官の訪中をキャンセルするなど問題となっています。

K10013969441_2302051356_0205141051_01_02
 この気球は、日本時間の5日早朝、サウスカロライナ州沖の大西洋上に出たところを、米軍のF-22戦闘機が撃ったミサイルによって撃墜されました。中国側は「過度な反応だ」として強くアメリカ側に抗議しています。

 この気球で思い起こされるのは、2020年6月に仙台市上空で確認された気球騒ぎです。2021年9月にも、同種とみられる気球が八戸市上空で確認されています。

 また、2020年10月に秋田市上空でドーナツ状の光が見えたとの報告がありますが、これも気球だった可能性があります。

 当時も、これが偵察目的の気球ではないかとの推測が多数ありました。確認された位置が、米軍三沢基地に近い八戸やイージス・アショアの建設予定地だった秋田新屋演習場上空だったことも関係しています。

 今回アメリカで確認された形状の酷似した気球は、中国が飛ばした偵察用気球だったことが明らかとなりました。そのため仙台市、八戸市で確認された気球も、中国の偵察気球だったことが確定したと言ってよいでしょう。

 日本上空を領空侵犯した気球が偵察活動を行っていた可能性が高いのですから、これは由々しき事態です。

 今回、撃墜された気球は、回収されて仕様や性能が間を置かずに明らかになると思われますが、本稿では、主に仙台市上空で確認された際の情報を元に、この偵察気球の能力を推定し、今後、自衛隊が採るべき対処とその可能性について考察します。

中国は「気象研究用」と釈明

 今回、アメリカで確認された気球は、写真を見る限り、仙台および八戸上空で確認されたものと酷似しています。

 報道では、今年1月末頃にカナダ上空を経てアメリカ領空に侵入し、モンタナ州にあるICBM(大陸間弾道ミサイル)基地を偵察したようです。

 中国で放球されたのか、カナダ領内で放球されたのかは不明です。可能性としてはどちらもあり得るでしょう。太平洋戦争中、日本が米本土に向けて風船爆弾を放ったことからも明らかなように、中国からアメリカまで飛翔させることも可能です

 アメリカ国防総省の高官が「中国の気球であると確信している」と述べています。過去に確認された同種の気球を撃墜したか、あるいは墜落したものを確認した、さもなくば過去3回、同様の気球がアメリカ上空に侵入していたとの情報があることを考えると、放球からアメリカ領空侵入まで、継続して確認していたことによる確信だと思われます。

 中国は、当初否定していましたが、アメリカで反発が強まったことを受け、気象研究用のものが誤ってアメリカ領空に進入したとして遺憾の意を表明しています。今回、米軍が撃墜したため、残骸の確認で詳細が明らかになるでしょう。

旅客機より高高度を飛行、巨大な機体に偵察機材を搭載

 今回確認された気球については、現段階では情報が多くないため、過去日本で確認されたもの、特に2020年6月に仙台で確認された気球の情報を元に、その仕様と性能を推測してみます。

 宮城県が公表した情報によれば、気球は仙台市南西30キロほどの蔵王町上空で観測され、石巻市の南太平洋上で見失われています。時間としては7時間以上で、おおよその移動距離から速度を計算すると、秒速約3メートルほどとなります。これは、風に乗って移動する気球としてはかなり遅い速度です。また、高度は3000メートル以上とされていました。

 防衛省が確認の上、情報を公開していれば、もっと正確な情報が分かったのですが、仙台、八戸ともに情報は公開されていません。

 この気球に吊るされた構造物の前後には、プロペラが付いていました。動画ではゆっくりと回転する様子が映っており、かなり弱いながらも推進力を持っていたことが確認されています。今回、アメリカで確認されたものも、機動可能だと発表されており、同様の推進装置を備えていた可能性が高いものと思われます。

 しかしながら、仙台で気球が確認された際も、あの非常にゆっくりと回転するプロペラ程度のもので意図したとおりに機動できるのかという疑問が提示されていました。仙台上空に7時間以上にわたって留まるには、相応の機動性が必要になると思われたからです。

 そのカギは、気球の高度にありました。

 航空機が飛行する高度では、「ジェット気流(ジェットストリーム)」や「偏西風」と呼ばれる強い西風が吹いていることが知られています。ジェット気流は、旅客機の飛行速度にも影響を及ぼす強烈な風で、日本からアメリカに往復する際に所要時間が大きく異なるのはこのジェット気流のためです。

 しかしながら、旅客機が飛行する高度10kmをはるかに超える高高度では、風は弱まります。仙台で気球が観測された2020年6月17日の観測データによると、仙台に最も近い観測ポイント秋田では、20km近い高度の風は西風2~3メートルの微風となっていましたし、さらに高い20kmを超える高度では逆向きの東風が吹いてさえいました。

<秋田と舘野(つくば)の高層データを見ると高度19キロ(70hPa)前後で西風でゆっくり東に流されていたと考えるとほぼ辻褄があいます。さらに上(22キロ)では東風で戻ってしまう。下層は20m/秒の西風でとてもあのプロペラでは抗えない(抗ってたら相当姿勢が傾くはず)。

高度19キロとわかれば疑問解決です。 pic.twitter.com/xKBAvWJ6la

— 佐々木徹 (@tsukuba_tsasaki) June 18, 2020>

 宮城県の発表では、この気球の飛行高度は3000m以上とされていましたが、上空を飛行していた航空機よりも高高度を飛んでいたとの情報もありました。実際には、今回アメリカで確認された気球と同様に、高度20km近くの高高度を飛行していたと思われます。アメリカで確認された気球は当初高度18kmを飛行していたと報道されています。

 風速2~3メートルの微風であれば、わずかながらも推進力があれば、風に流されることを計算に入れながら、ほぼ狙った経路を飛行できると思われます。微風しかない高高度では、仙台上空に長時間留まるために大した機動力は必要なかったということです。

 更に、この推定された高度から、気球の大きさが推定可能でした。当日、気球が月の近くで撮影されていたことから、三角関数によって気球のサイズがかなり正確に計算できたのです。それによると気球のサイズは直径30mにも及ぶ巨大なもので、ヘリウムが充填されていると仮定すると、下部に懸架されている物体の重量は5t(トン)もあったと推測されます。

 この推定が正しいと仮定すると、相当の偵察機材が搭載できていたと思われます。

 懸架物の重量には、バッテリーや太陽電池、プロペラを含むモーターなどの推進装置が含まれるため、偵察、通信機材の重量は1tを下回る程度しかないかもしれません。しかし、気球にデジカメを下げた程度とは程遠い、れっきとした偵察機材と言えます。特に、現代の偵察手段はデジタルであるため、かつて銀塩写真に頼っていた頃と比較すると偵察手段は相当軽量化が可能になっています。アメリカの反応も頷けるものと言えます。

気球による偵察は有効なのか

 次に、1t程度(筆者による推測)の偵察機材を使用し、高度約20kmでどの程度の偵察が可能か考えてみたいと思います。

 比較として参考になるのは、1955年に初飛行し、いまだに類似の機体が存在せず、現役として偵察活動に投入されている米軍の高高度偵察機U-2です。

 U-2は、仙台で確認されていた気球が飛行していたと推定される高度20kmを若干超える高度21km以上を飛行し、約1.36tの偵察機材を使用して偵察を行います。つまり、U-2とほぼ同等程度の偵察能力を持つと推測される気球が、アメリカ本土上空を領空侵犯していたということになります。

 ただし、開発当時は撃墜不可能と言われたU-2も、ミサイルの発達により進空からわずか5年後の1960年には撃墜され、キューバ危機の最中である1962年にも撃墜されています。現代では、敵国の領空上空に侵入して偵察することなど基本的に不可能になっているのです。

 また現代では、気球よりは高度が高くなるものの低軌道の衛星が増えています。たとえば2017年にJAXAが打ち上げた衛星「つばめ」(超低高度衛星技術試験機)は、最低高度167.4キロを飛行しています。低軌道衛星の地球周回高度が下がっているため、今回、アメリカの高官が「中国が低軌道の人工衛星で得られるであろう情報よりも大きな付加価値を生むものではない」と発言しています。実際には、この気球による偵察が、衛星による偵察を超えるものではないとみている可能性もあります。

 アメリカが「中国の気球であると確信を持っている」と言っていたことを考えると、過去、極秘に撃墜したか、墜落したものを確認している可能性もあります。

自衛隊は対処できるのか

 仙台、八戸で気球が確認された際、自衛隊は対領空侵犯措置を行っていません。これは、気球の目的や誰が放球したのか不明だったことも影響していると思われますし、政治的な影響を避けるため、黙認した可能性もあります。

 しかし、今回のアメリカの反応を踏まえると、次回同種の事案が発生した際に、これを見逃すことはできません。領空侵犯として対処することになるでしょう。

 その場合、自衛隊が対処できるのか検討してみます。

【発見は可能か?】

 まず、発見できなければ話になりません。天候が良ければ、仙台で確認された通り、目視で発見できる可能性もありますが、夜間や雲があった場合は、レーダーが捉えなければ誰も気づかないまま日本上空を通過するでしょう。

 気球のバルーン部分は定高度気球と思われるため、ポリエチレンなどの樹脂製と思われます。直径30メートルとかなり大型ですが、これはレーダーに映りません。ただし、アメリカで確認された気球は、当初では高度18キロと言われていましたが、撃墜時の高度は20キロとの情報があり、高度を変更可能な気球だった可能性もあります。

 問題は懸架物の方ですが、かなりの重量があると推測されるため、構造材などに金属も使われており、レーダーに映ると思われます。アメリカも気球を追跡していますが、日中は目視の可能性もあるものの夜間はレーダーでしょう。

 自衛隊が、警戒管制レーダーで捉えることができているかについては、守秘義務があるためここでは書けません。しかし、仙台や八戸の事案で防衛省、自衛隊がとくに驚いていないという事実は、推測を行うに十分だろうと思います。

【撃墜は可能か?】

 実際に米軍が撃墜しているのですから、自衛隊でももちろん迎撃は可能です。ですが、手段は限られ、今回の撃墜同様、少々特殊な手法が必要になります。

 U-2の初期の被撃墜は、地対空ミサイルによるものでした。しかし、気球に関しては、パトリオットや中SAMで狙うことは可能ですが、かなりの高高度であることと、懸架物からのレーダー反射が少なく近接信管が作動しない可能性があるため、撃墜確率が十分に高いとは言えないかもしれません。

 有効な手段は、米軍が行った方法と同様に航空機による迎撃です。しかし、気球が飛行している高高度は、F-15などの戦闘機であっても通常の飛行方法では到達できません。巡行可能な高度10キロ程度で高速で飛行した上、速度を生かして急上昇し、ロケットのように斜め下方から接近するズーム機動と呼ばれる飛行方法で接近する必要があります。

 今回の米軍での撃墜では、F-22が高度約17.6km(58000ft)でミサイルを発射し、高度約20km(65000ft)の気球を撃ち落としています。

 更に、宇宙から飛来する弾道ミサイルを確認できる地上レーダーと違い、航空機の機上レーダーは出力が低く、レーダー反射の少ない気球の懸架物をレーダーで捕捉できる可能性は低いため、地上から航空機を誘導してズーム機動(機体本来の上昇率・上昇限度を一時的に超えた上昇動作)で接近させる必要があります。

 ただし、今回米軍が行った攻撃では、天候が良くパイロットが目視で確認できたはずなので、地上からの誘導は必要なかったと思われます。

 また、気球を撃墜するためのミサイルも、地対空ミサイルと同じようにレーダーで誘導するミサイルでは高い迎撃確率は期待できない可能性があります。今回、F-22は空対空ミサイル「AIM-120 AMRAAM」を使用した可能性がありますが、その場合は、気球の動向を監視していた際に、AMRAAMでのロックオンができることを確認していたと思われます。

 また、気球の動力はモーターと考えられるため、赤外線放射も少なく、赤外線誘導のミサイルも不適です。最も効果的に気球を撃墜できるミサイルは、可視光、あるいは赤外線を使った画像誘導ミサイルであると思われます。我が国が保有する空対空ミサイルでは「AAM-5」がこれに該当し、アメリカでは「AIM-9X」が該当します。米軍による撃墜では、このAIM-9Xが使用されたとの情報が有力です。

 上記の方法がベストと考える理由は、高度20キロ近い高高度では、ミサイルの機動性能が低下するためです。ほぼ移動していない気球相手であっても、ミサイルの飛翔途中までの誘導には誤差があるため、高高度に到達した時点でも軌道修正は必須です。機動性能が低下した状態では命中率が低下します。機動性能の低下を最小限にとどめるためには、ミサイルの存速を高くするとともに、可能であればロケットモーターが燃焼を続け、推進力を保持した状態で目標に接近させることが必要です。そのために、戦闘機をズーム機動で接近させ、ミサイルの飛翔距離、上昇高度を少なくすることで、なるべくミサイルが持つエネルギーを高く保つことがベストなのです。

 今回、米軍がF-22を使用した理由は、最新のF-35と比べても、F-22の方が高い高高度飛行性能を持つためです。自衛隊が、同様の気球を撃墜する場合、機体の飛行性能では劣ることになりますが、自衛隊が装備するAAM-5はAIM-9Xよりも高い飛翔性能を有するため、問題はないと思われます。

中国が行った気球迎撃の実験

 なおこの方法で、今回確認されたものと同種と思われる気球を迎撃する実験も実際に行われています。

 実施したのは、気球を放った当の中国で、その情報を公開しています。

 なぜ、迎撃実験の情報をわざわざ公開しているのか理解に苦しみますが、中国は、ロシアと同じように国際法を意にかけていないため、気にしてはいないものと思われます。

 ユーロファイターによく似たデザインのJ-10C戦闘機に、AAM-5やAIM-9Xと同じ画像誘導方式のPL-10を搭載し、地上からの誘導に基づき、ズーム機動で接近し、撃墜しています。こちらのサイトに詳細がありますが、今回の事案を受けて削除されるかもしれません。

 注目すべきなのは、この記事がアップされたのは、仙台で気球が確認されるよりも前となる2019年9月だということです。中国は、気球による偵察活動を行うにあたり、自らは対処できることを確認しているのです。

中国に断固たる処置を

 本記事の主要な内容は、仙台で気球が確認された2020年の段階で筆者が考えたものです。当時日本政府は、あの気球に何らの対処も行いませんでした。そのため、記事化は控えていました。

 しかし今回アメリカが問題視したことで、今後は対処することが必須となるため、記事としてまとめました。

 中国側は、気象観測用の気球が“不可抗力”でアメリカ上空に入ってしまったと発表しています。しかし、説明したように、この気球は、風の弱い高高度を移動用のプロペラによって経路修正ができるものです。不可抗力などということはありません。中国の違法な軍事偵察に対しては、断固たる処置が必要です。

 戦後80年近く、他国からの軍時侵略を受けたことがない日本は、所謂不明な飛行体が現れても、それが偵察を意図したものと捉え、対応していなかったことが分ります。まさにお花畑ではないでしょうか。

 これまでも北朝鮮の工作員を発見できず、拉致被害者を何人も出したことからも、物体だけではなく人に対しても意図的な侵略に対し脇が甘い体質をさらけ出しています。加えて法的な整備も決定的に遅れていることも否めません。

 物理的な侵略に対する抑止力も重要ですが、サイバーや人、今回の偵察飛行体のような、ハイブリッドな攻撃に対しても、抑止力を持たねばなりません。この案件はその必要性を強く発信するいい機会になったと思います。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)


にほんブログ村 

 

2022年12月23日 (金)

米国が構想する「核の3本柱」 中国脅威への対応 対する日本は

2910101800003_1  最近何度となく語られる、独裁国家中国の軍事拡張の現実。今回は核の脅威について取り上げます。

 産経新聞の外信部編集委員兼論説委員で前ワシントン支局長黒瀬悦成氏が、同誌に寄稿したコラムを引用して紹介します。タイトルは『米国を知るキーワード 「核の3本柱」確立 中国脅威への危機感』(12/17公開)です。

米国防総省は11月29日、中国の軍事力に関する年次報告書を公表し、中国の核弾頭保有数が2035年に約1500発に達するとの見通しを初めて明らかにした。運用可能な中国の核弾頭は21年に400発を超えたとされ、急速な核戦力の強化と近代化に米国は危機感を募らせている。米国とロシアに続く「第3の核大国」を目指す中国の脅威への対処は国際社会の急務だ。

「私たちは中国がもたらす、世代間にわたって刻々と深刻化する難題に挑戦しているのです」

オースティン米国防長官は12月3日、西部カリフォルニア州での講演でこのように述べ、中国が米国の安全保障政策を左右する重大な脅威であるとの認識を改めて示した。実は、このpacing challengeという言葉が頻繁に使われるようになったのはここ数年のことで、今のところ定まった日本語訳もない。

もともとはオースティン氏が21年1月19日、上院軍事委員会での、自身の指名承認公聴会に提出した書面で「pacing threat」という文言を使ったのが初めてとされる。

その後も同氏はこの2つの用語に幾度も言及。同年3月に東京都内で開かれた外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)に関する日本外務省の報道発表は、pacing threatに「刻々と深刻化する脅威」との訳語を使用した。

一方、オースティン氏は公聴会で中国に関し「そう遠くない将来に世界の大国になろうとしている。今から彼らの攻撃的行動を確実に阻止すべきだ」と指摘しており、用語には中国の脅威が、米国が軍事戦略や戦備を構築する「ペース(速度)」を規定するほどの最優先課題であるとの意味合いも込められている。

増え続ける核弾頭

実際、国防総省の年次報告書が示した中国軍の実態は米国および日本などの同盟諸国に厳しい現実を突きつけるものだ。

同省は2年前、中国の核弾頭数を「少なくとも200発」と推定していた。今回の報告では「中国が向こう10年間で核戦力を近代化、多様化させ、拡大させようとしている」と指摘。弾頭数は21年の時点で400発を超え、27年に700発、35年に1500発に増えると予測した。

また、1基の弾道ミサイルに複数の核弾頭を積み、それぞれが別個の目標を攻撃できる「複数個別誘導再突入体」(MIRV)能力を備えた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の東風41(射程1万2000キロ)を配備しつつあるとした。

東風41は最大3発の弾頭を搭載し、従来の東風31系列のICBM(同7千~1万1200キロ)に比べ射程や命中精度が向上した。

094型(西側通称・晋級)戦略原潜6隻による外洋での連続航行抑止哨戒も実施している。各原潜は最大で12基の巨浪2(同7200キロ)または巨浪3(同1万2000キロ)潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載可能という。

さらに、中国空軍は核搭載の空中発射型弾道ミサイル(ALBM)を搭載可能な戦略爆撃機H6Nを作戦配備し、ICBMとSLBM、戦略爆撃機で構成される「核の3本柱(トライアッド)」を確立させた。中国国営メディアによればステルス機能を有するH20爆撃機も開発中という。

米国に対抗して、ICBMよりも高度が低い人工衛星の軌道を通って目標を攻撃する、極超音速滑空兵器(HGV)による「部分軌道爆撃」(FOB)システムの開発にも力を入れており、21年7月には実験兵器を約4万キロ飛行させることに成功した。

先制不使用放棄か

加えて報告書が注目するのは、中国が国内3カ所で固体燃料式ICBMの東風31、41向けサイロ(地下格納・発射施設)の建設を進め、その総数が300を超えたとみられることだ。

固体燃料式のミサイルは誘導制御が比較的難しい半面、液体燃料式のように発射直前に燃料を注入する必要がない。このため相手のミサイル発射を察知したのを受けて即時発射が可能な利点がある。

中国は、自衛のために最小限の核戦力を保有し、他国から核攻撃を受けない限り核兵器を使わない「先制不使用」を原則としていると主張する。

だが、中国による固体燃料式ICBMおよびサイロの整備は、中国が米露と同様に、相手の弾道ミサイルが発射されたという警報発令を受け、その着弾前に反撃のミサイルを発射する「警報即発射」(LOW)の態勢構築を進めていることを意味する。

米軍関係者や専門家はこうした動きに関し、中国が先制不使用原則を放棄し、より攻撃的な核態勢への転換を図っている兆候だとして警戒を強めている。

しかも中国は、他の核保有国に対しては「戦略的安定性の強化」のためLOWを放棄するよう唱えつつ、弾道ミサイルの開発や実験、配備の自制などをうたったハーグ行動規範への参加を拒否し、偶発的核戦争のリスク低減を目指す国際的な信頼醸成措置にも背を向け続けている。

米も近代化に本腰

対する米国も核戦力の近代化に本腰を入れた。

核の3本柱のうち、戦略爆撃機をめぐっては現行のB52ストラトフォートレスやB2スピリットの後継となる、無人運用も可能な世界初の第6世代戦略爆撃機、B21レイダーを25年頃に配備する予定だ。

ICBMについては、現在配備されているLGM30Gミニットマン3(射程1万3000キロ)の耐用年数を延長させる一方、後継のLGM35センチネル(射程不明)を29年頃に配備する計画を進めている。

戦略原潜に関しても、1981年に初就役したオハイオ級に代わり、最新のステルス性能などを備えたコロンビア級計12隻を31年から順次就役させることを目指している。

日米同盟の深化を

米露の核戦力は、2011年発効の新戦略兵器削減条約(新START)に基づき戦略核弾頭の配備数を1550発以下、ミサイルや爆撃機などの運搬手段の総数を800以下(うち配備数は700以下)に減らすよう定めている。一方、中国は同条約に縛られず、自由に核戦力を拡大させていくことができる。

将来、中国の核戦力が米国と肩を並べるとどうなるか。米国は日本や韓国に拡大抑止(核の傘)を提供しているが、その実効性に疑問符がつくことも想定される。米国が日本を守るために核使用に踏み切れば、中国がICBMで米本土を報復攻撃するリスクが一層高まる。そこで米国が核使用に慎重になれば、中国が「核の脅し」で勝利を得ることになるからだ。

米国としては核抑止力の充実にこれまで以上に力を入れる必要がある。一方で米国の相対的な軍事力が低下傾向にあるのは否定し得ない事実だ。現時点で自前の核保有という選択肢を持たない日本としても、通常戦力を含めた総合的な対中抑止力の強化に向けて日米の同盟関係を深化させていかなくてはならない。

 恐らく中国に対しては、日本の軍事力は対等には戦えないほど、格差が生じていると思われます。2027年を見据えた防衛力の整備を行ってもまだまだ追いつかないでしょう。核に於いては全く論外と言えます。

 従って米国との同盟関係が死活的に重要となってきます。ですが今までの関係の延長では対応できないと思います。より主体的により戦略的に、核戦略も含めて同盟関係を再構築していかなければ、この巨大化した軍事大国には立ち向かえないでしょう。

よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)


にほんブログ村 

2022年11月 6日 (日)

今やイスラエルに匹敵する周辺の安全保障環境の日本、しかし両国の安全保障観は別世界だ

Images-18  イスラエルでは、今回の選挙でネタニヤフ元首相を支持する野党勢力が過半数を獲得する情勢で、政権復帰の可能性が出てきています。イスラエルは周囲をアラブ世界に囲まれ、イランとも確執が強い国で、その不安定な周辺情勢をにらみ、核保有も併せ持つ強固な軍事国家となっています。

 このイスラエルと今やそれほど大きくは変わらない、周辺の安全保障リスクを抱えた日本、しかし両国の間には大きな安全保障観の違いがあります。その概要を産経新聞論説委員兼政治部編集委員の阿比留瑠比氏が、同紙に掲載したコラムから引用します。タイトルは『日本が位置する厳しい世界』です。

2日付の本紙朝刊国際面は、通算15年にわたりイスラエルの首相を務めたネタニヤフ氏が首相に復帰するかが焦点だと報じていた。記事を読みながら平成26年5月に来日したネタニヤフ氏と会談した安倍晋三首相(当時)が、筆者につぶやいた言葉を思い出した。

「日本の安全保障観は、イスラエルのそれとは別世界だね」

この日、両首脳は安全保障対話、サイバーセキュリティーに関する協力、防衛当局間の交流拡大、宇宙関連機関間の交流促進などを確認する共同声明を発表している。日本から見れば、いずれも抑止力向上につながる成果だったが、会談でネタニヤフ氏が示した危機感、緊張感はさらに強い印象を残したのだろう。

安倍氏は翌27年1月、エルサレムを訪問してネタニヤフ氏との夕食会に臨んだ際のエピソードも語った。安倍氏が「(紛争相手の)パレスチナともう少しうまくやれないものか」と問うと、ネタニヤフ氏はこう答えたという。

「日本とは、住む世界が違うんですよ。地図を見ても、イスラエルの周りにまともな民主主義国は一国もない」

それから7年余がたち、日本をめぐる安全保障環境は悪化の一途をたどった。ウクライナを侵略中のロシアも、つかれたようにミサイルを連射する北朝鮮も、習近平国家主席の独裁体制を完成させた中国も、まともな民主主義国ではない。

特に、尖閣諸島(沖縄県石垣市)を妥協の余地のない国益を意味する「核心的利益」と位置付け、台湾侵攻の意思をあらわにする中国に対しては、備えを急がなければならない。

もはや「中国で絶対的な権力を手に入れたリーダーは何を目指すのか。(中略)どこかで歴史に名を残すことを考えるだろう。台湾有事はあるかないかではなく、いつあるかだ」(細野豪志元環境相の10月22日のツイート)といった見方は、ごく一般的になった。

ところが現在も、中国に対する自民、公明両与党の認識には隔たりがあり、公明党は中国を「脅威」としてとらえることにも反対している。北側一雄副代表は「中国本土にミサイルを反撃能力で発射する想定は、現時点ではしていない」と語っている。

中国を想定しつつ、中国を名指ししないだけなら戦術としてあり得るが、想定自体を否定すれば抑止力にはならない。与党のていたらくをただすべき野党も、宗教の問題で頭がいっぱいだときている。

国会は相変わらず安全保障問題に鈍感なままだが、一方で民間側には危機感が広がりつつあるのか。11月2日付日経新聞朝刊は、「台湾有事、半数が対応策」「進出50社調査、備え広がる」という見出しの記事を掲載していた。

日経が台湾進出企業大手50社の現地トップらに取材したところ、23社で駐在員の退避計画や事業継続計画の策定作業が進んでいることが分かったという。現地トップらの以下のようなコメントが興味深い。

「今回の中国共産党大会で明らかにフェーズが変わった」「台湾~成田便の1年間有効な航空券は既に社員全員分を確保した」「台湾のサーバーに上げていた情報を全て、日本のサーバーに移した」…。

政治家の最も重要な責務は、国民の生命、財産、自由を守ることである。ならば最優先課題は、安全保障にほかならない。現在の日本の地理的条件は、イスラエルとはかけ離れた別世界ではないのである。

 中朝露独裁国家3国の現状は言を俟たず、極めて厳しい安全保障環境の中に置かれている日本。それなのに国民もメディアも北朝鮮のミサイル発射が続く中、Jアラートで生活が脅かされるなどと騒いでいる始末です。まさにイスラエルとは別世界でしょう。

 日本の国会では相変わらず旧統一教会問題で野党が大はしゃぎ。被害者救済に向けた与野党協議会に関し、「立憲民主党の泉健太代表が4日、決裂した場合は岸田文雄内閣に対する不信任決議案提出に値すると言及した」、とあるように、野党第一党の立民は、旧統一教会信者の被害者救済が内閣不信任に匹敵する最重要課題と位置づけているようです。まさに最たる無責任野党でしょう。

 しかしこんな野党に対し、与党や岸田政権は毅然とした対応をしていません。旧態依然の国会対応で、何とかなると思っているのでしょうか。特定野党とメディアが作り上げた旧統一教会問題で支持率を下げ、その下がった支持率を気にして旧統一教会問題から目を離せず、首根っこを押さえられている現状を見るとうんざりしてきます。故石原慎太郎氏のような物言える政治家が出てきて欲しいと、切に願います。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)


にほんブログ村 

 

2022年11月 2日 (水)

日本に戦後最大の安全保障危機、台湾・朝鮮半島「連動有事」11月勃発か

Images-16_20221101164501  先月、中国の習近平政権3期目入りのニュースが世界中を駆け巡りました。一方それ以前から韓国保守系の尹錫悦新大統領の誕生に併せて、北朝鮮のミサイル実験は連日のように行われています。更には2月から始まったロシアのウクライナへの侵略戦争も、いよいよ泥沼化してきて出口のない戦闘が続いています。

 これら独裁の隣国3国に西側を囲まれた日本は、逃げ場のない地政学的リスクを抱えているのが現状です。そうした中ジャーナリストの加賀孝英氏がzakzakにコラムを寄稿しました。タイトルは『台湾・朝鮮半島「連動有事」11月勃発か 米、金正恩氏の〝斬首作戦〟決意 中国「台湾攻撃シフト」完成、日本に戦後最大の安全保障危機』で、以下に引用して掲載します。

中国による軍事的覇権拡大や、北朝鮮の核・ミサイル開発など、わが国を取り巻く安全保障環境が極度に悪化している。岸田文雄政権は、国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定と、防衛力の抜本的強化を加速させている。先週明らかになった米国製の長距離巡航ミサイル「トマホーク」の購入の動きは、その一環といえるが、間に合わない可能性が出てきた。米政府や米軍は「台湾有事」と「朝鮮半島有事」が連動して早期勃発することを厳重警戒している。米韓両軍は31日、軍用機約240機を投入する合同訓練「ビジラント・ストーム」を始めた。ジャーナリストの加賀孝英氏による最新リポート。

*********

「日米韓の情報当局が厳戒態勢に入った。『朝鮮半島有事と、台湾・日本有事が近く勃発する』という緊急情報がある。『Xデーは、11月から来年1月にかけて』。悪夢だ。日本にとって戦後最大の安全保障危機だ」

外事警察関係者はこう語った。

北朝鮮は28日、東部江原道通川(トンチョン)付近から日本海に向け、短距離弾道ミサイル2発を発射した。飛行距離は約230キロ。日本のEEZ(排他的経済水域)外に落下した。北朝鮮による弾道ミサイル発射は今月14日以来で、今年に入って25回目だ。

日本外務省の船越健裕アジア大洋州局長は28日、米国のソン・キム北朝鮮担当特別代表と、韓国外務省の金建(キム・ゴン)朝鮮半島平和交渉本部長とそれぞれ電話で協議した。「地域の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であり、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦だ」という認識を共有した。

外務省関係者は「中朝は連動している。北朝鮮は、中国共産党第20回党大会(10月16~22日)の間は、ミサイル発射などの挑発を止めていた。習近平総書記(国家主席)が『異例の3期目』に入って独裁体制を確立し、党大会閉幕を見届けて暴走を再開した」と語った。

防衛省関係者は「米韓情報当局は、『北朝鮮は7回目の核実験を、米国の中間選挙(11月8日投開票)の前に強行する』という情報を入手している。さらに、『韓国の国境近く島への砲撃、韓国軍艦艇への攻撃など、電撃的な軍事行動に踏み切り、第二次朝鮮戦争危機まで画策している』という情報があり、米韓両軍は臨戦態勢に入っている」と語った。

問題は中国だ。

アントニー・ブリンケン米国務長官は26日、米ブルームバーグのインタビューで、「中国政府は現状を受け入れられなくなった」「中国は台湾統一を加速させると決定した。武力行使もある」と異例の警告を発した。

米海軍のマイケル・ギルディ作戦部長は19日、米シンクタンクのイベントで、「中国の台湾侵略は(これまで想定された)2027年ではなく、22年あるいは23年の可能性がある」と、最新分析を明かした。

元在沖縄米海兵隊政務外交部次長で政治学者のロバート・エルドリッヂ氏も最近、「中国による台湾有事は、早ければ11月から来年1月の間に起きる可能性がある」と警告を発した。その根拠は、1.日米台3カ国が台湾防衛準備を始めた。中国は今のうちなら軍事的有利と判断する2.ジョー・バイデン大統領率いる民主党は中間選挙で大敗しそうだ。米政府は大混乱に陥って動けなくなる…などだ。

こうしたなか、バイデン政権は27日、核戦略指針「核態勢の見直し(NPR)」を公表し、中国とロシア「2つの核大国」に対峙(たいじ)する姿勢を明確にした。ただ、北朝鮮に対しては、「米国や同盟国に核攻撃をすれば北朝鮮政権は崩壊する」「金正恩(キム・ジョンウン)政権が核兵器を使って生き残るシナリオはない」と特記した。なぜか。

以下、日米情報当局関係者から入手した驚愕(きょうがく)情報だ。

「米国は『正恩氏が、戦術核を搭載した短距離弾道ミサイルで、韓国を攻撃する最終プランを持っている』という情報を入手している。米国は、北朝鮮の暴走は絶対許さない。正恩氏が核ボタンを押す前に斬首作戦を行う決意だ。朝鮮半島周辺には、核搭載型の原子力潜水艦が極秘配備された」

中国軍は習一派が実権を独占した。「台湾攻撃シフト」が完成した。

「要注意人物は、軍の最高指導機関『中央軍事委員会』副主席に抜擢(ばってき)された何衛東氏。台湾方面を管轄する東部戦区の前司令官だ。ナンシー・ペロシ米下院議長が8月に訪台した後、中国軍は台湾封鎖のシナリオに沿った大規模軍事演習を展開した。弾道ミサイル11発を発射、うち5発を日本のEEZ(排他的経済水域)内に撃ち込み、日本も恫喝(どうかつ)した。この演習の立案者が何氏だ。『何氏が党大会後、習氏に台湾侵攻決行を進言した』という情報がある。北朝鮮の核実験強行が、中朝暴走の引き金になる」

「朝鮮半島有事」と「台湾有事・日本有事」が連動すれば、ウクライナ侵攻で苦境にあるロシアのウラジーミル・プーチン大統領が生き残りのため、「核テロ」に走る危険がある。

日本にとって、国家存亡のときだ。戦後最大の危機が目の前に迫っている。岸田文雄首相は大丈夫なのか。野党はこの危機的状況が分かっているのか。目を覚ませ。何度でもいう。このままでは、日本が本当に潰れてしまう。

 安部元首相が、「台湾有事は日本有事」と発言してから、1年も経っていませんが、習近平国家主席の3期目が確定した後、彼の悲願である台湾統一が目の前に迫ってきています。だがこの記事のように、本当に今年末から来年にかけて、早まってきているのでしょうか。

 その真偽のほどはともかく、日本有事になったときの日本の防衛については、全くお寒い情況でしょう。5年かけてNATO並のGDP比2%の防衛力を整備するのも、来年からスタートですし、ミサイルの拡充も4~6年先、そうなると抑止力の整備されない中、台湾侵攻が始まる事になります。サイバー防衛もこれからです。中国はその隙を狙うのでしょうか。

 いずれにしろ、まさかと思ったロシアのウクライナ侵略が、現実となったのは記憶に新しいところです。中国の台湾侵攻もないという保証は全くありません。国会も旧統一教会問題に浮かれていないで、真剣に安全保障議論をすべきでしょう。もっとも今の野党にまともに議論できる議員は殆どいないでしょうが。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)


にほんブログ村 

2021年10月29日 (金)

中露艦隊が堂々と通過、国辱の「特定海域」を見直すべき時が来た

Unnamed-1_20211028161601  今月18日、中露の艦隊が津軽海峡と鹿児島の大隅海峡を通過したニュースが報じられました。昨日の民放でも取り上げられましたが、津軽海峡など「特定海域」に指定されている海峡は、たとえその全領域が国際的に認められている12海里の中にあっても、国際運行に使用される国際海峡には基線から3海里とし、一定の幅の公海の部分を特別に作ったもので、そこをこれらの艦船が通行したのです。

 この事案を受けてにわかにこの「特定海域」見直し論が浮上しています。昨日の民放に出演した香田洋二元海将は、全域を領海にすれば、その領海を通航しようとする船舶は、領海外国船舶航行法施行規則に基づき通報の義務が生じます。例えば津軽海峡など韓国が貿易の航路となっているため、毎回この処置を行わなければなりません。

 さらに問題はこの通報の内容を捏造または、最悪の場合通報義務を無視した場合、海上保安庁は、立ち入り検査および退去命令を実施しなければなりませんが、相手が艦船の場合は艦内が治外法権となっていて、実際には検査できず、また退去命令などの場合、紛争に至る場合があるので、現段階では現状維持が望ましいと言っていました。

 しかしこの意見は、従来の日本の基本的対処方針を踏襲しただけであって、今回の事例が示すように、安全保障上問題が深刻なことを考えれば、見直しも必要だと感じます。このあたりの詳細を、軍事社会学者の北村淳氏がJBpressに寄稿したコラムから見てみます。タイトルは『中露艦隊が堂々と通過、国辱の「特定海域」を見直すべき時が来た 世界的にも稀な海峡概念は米国に媚びへつらう姿勢の象徴』(10/28)で、引用して以下に掲載します。

 ◇

 日本海で合同訓練を実施していたロシア海軍と中国海軍の軍艦10隻が、2021年10月18日に津軽海峡を太平洋に抜け、西太平洋での合同艦隊訓練を実施した。

 中国やロシアの軍艦とりわけ今回のような強力な艦隊が津軽海峡を抜けると、日本の一部の政治家や反中・反露勢力から、「特定海域」の設定に対する非難の声があがる。

23_20211028161701  日本政府は津軽海峡などの5つの海峡を「領海及び接続水域に関する法律」(1977年5月2日公布、以下「領海法」)で「特定海域」に設定している。特定海域という制度が存在するがゆえに、中国やロシアの軍艦が大手を振って津軽海峡を通過し軍事的威嚇を加えているのだから、このような制度は廃止してしまえ、と領海法の不備を指摘するわけである。

 それに対して、「特定海域」制度を廃止する必要はないという声もある。日本も参加している「国連海洋法条約」(1994年11月16日発効、日本は1996年に批准し同年7月20日に日本につき発効)には「国際海峡」という規定が存在する。津軽海峡に関しては、特定海域の制度を廃止しても国際海峡に該当することになるため、中国やロシアの軍艦通過に関しては実質的相違は生じない。むしろ潜水艦の潜航通過に関しては現状の制度のほうが日本にとっては都合が良い、といった反論がなされている。

世界的にも稀な海峡概念

 しかし、問題はこのような表面的な法制度の問題に存するのではない。日本政府がそもそも「特定海域」を制定した動機と、この制度をいまだに維持している姿勢が、アメリカに阿(おもね)る卑屈な国家としての象徴的事例の1つに他ならない。要するに特定海域を存続させるかどうかは国家主権の問題として捉えるべきである。

 日本政府は領海法制定の過程においてアメリカ軍・アメリカ政府からの圧力に屈して、日本自身の主権を自ら制限して「特定海域」という世界的にも稀な海峡概念を生み出した。

 当時のアメリカ軍が保持していた対ソ連あるいは対中国先制攻撃作戦計画において、核弾頭装着弾道ミサイルを搭載したアメリカ海軍潜水艦が北太平洋から津軽海峡を抜けて日本海に展開することが想定されていた。

 もし、日本政府が領海法で採択する領海幅12海里を津軽海峡にもそのまま適用した場合、日本にとっては外国軍艦である米海軍潜水艦が津軽海峡を通過する際には海面に浮上して米国旗を掲揚しつつ航行しなければならなくなる。

 もちろんアメリカ海軍はそのような規定は無視することになるのだが、できれば合法的に津軽海峡の海中を潜航したまま通過するに越したことはない。

 また、日本政府が米海軍の核ミサイル搭載原潜の日本領海内通過を認めた場合には、野党や反米勢力などからの激しい突き上げに直面することになる。

 そこで日本政府が考え出したのが特定海域の概念である。つまり、日本の領海幅は12海里とするが、宗谷海峡、津軽海峡、対馬西水道、対馬東水道、大隅海峡に関しては3海里に制限し、海峡の中央部は日本の主権が及ばない公海とする、という規定である。

 これによって、領海法が施行された後にも津軽海峡の中央海域には公海帯が存在することになり、核ミサイルを搭載したアメリカ海軍潜水艦が潜航状態を保って津軽海峡を通過しても、領海法にも非核三原則にも抵触しない状態が確保されたのである。

激変した日本の海峡を巡る海軍情勢

 特定海域の制度が生み出された当時においては、中国海軍はアメリカ海軍から見ればガラクタの寄せ集めのようなレベルであり、海上自衛隊にも全く対抗しうる存在ではなかった。また、当時強力であったソ連海軍も、日本海からオホーツク海や太平洋に進出するのはウラジオストクを本拠地にする水上戦闘艦艇が主戦力であり、米海軍にとって強敵であったソ連潜水艦は主としてカムチャツカ半島を本拠地としていたため、日本の「特定海域」である公海帯をソ連軍艦が航行してもさしたる脅威とはならなかった。

 ところが現在、中国海洋戦力は海上自衛隊を圧倒し、アメリカ海軍にも大いなる脅威を与えるに至っている。また、一時低調になってしまったロシア海軍も復活しつつある。そして、韓国海軍の戦力強化にも目覚ましいものがある。したがって、特定海域が制度化された35年前とは、日本の海峡を巡る海軍情勢は激変しているのである。特定海域の概念は情勢の変化に対応させねばならない。

 領海法の特定海域の規定を廃止した場合、宗谷海峡と対馬西水道の場合、海峡の対岸がそれぞれロシアと韓国であるため、両国との調整が必要となる。そして、対馬西水道と大隅海峡に関してはそれぞれ代替ルートが近接しているため、国際海峡に指定させないことも可能だ。

 再び問題となるのは、津軽海峡である。津軽海峡には、日本海の公海と太平洋の公海を結ぶ代替ルートが近接していないため、特定海域の概念を廃止すると国連海洋法条約によって国際海峡に指定せざるを得なくなる。この場合、あらゆる国のあらゆる船舶に「通過通航権」が与えられるため、アメリカ潜水艦も中国潜水艦も津軽海峡を潜航したまま通航することが可能になる。

 しかしながら国際海峡沿岸国は当該海峡における航路を管制する権利も有している。そのため、日本は潜水艦や軍艦だけでなくあらゆる船舶に対して津軽海峡内での航路を設定することも可能である。

 そしてなによりも冒頭で述べたように、日本政府がアメリカの圧力に屈し、アメリカに媚びへつらうためにいまだに継続している、まさに自主防衛の気概を自ら捨て去っている象徴の1つである特定海域の概念は、アメリカの属国から独立する意志があるのならば、即刻廃止すべきであろう。

 ◇

 米海軍の核ミサイル搭載原潜の日本領海内通過は、日本の非核3原則といういわゆる自主規制に基づいて、認められないのであって、米国の核の傘に守られているといいながら、「核を持ち込ませない」という矛盾に満ちたバカなこの原則は、即刻廃止すべきでしょう。

 更には前出の香田氏も認めているように、現行憲法9条下で、外国艦船の停戦命令や紛争時の処置は困難ですが、そもそも領海を侵犯しようとする外国艦船に対し、何もできないという「国恥状況」は、是非改める必要がありそうです。まともな主権国家になるためにも、憲法9条を破棄し、しっかりした抑止力を持たなければ、今回のようなあからさまな威嚇行為を今後も許すことになります。日本人一人一人にこの国を守り抜く覚悟が試されています。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)

にほんブログ村 政治ブログ 保守へ
にほんブログ村

2021年10月26日 (火)

台湾進攻の「次は沖縄」、日本は果たしてどうする

22_20211025170101  中国習近平政権の台湾統一への実力行使が取り沙汰されている今、バイデン政権は前トランプ政権とは違い、やや融和的な動きを見せていることが気になります。日本も台湾有事の先には沖縄有事が予想されることを念頭に、その対応を準備しておく必要があります。

 しかし各党の安全保障分野の公約を見ると、台湾に言及したのは自民党のみ、それもTPP関連で有事の際の記述はありません。野党は立憲民主、共産党、社民党のいわゆる特定野党は、そろって沖縄の辺野古への移設中止を掲げています。共産党は持論の日米安保の廃棄を未だに謳っています。

 差し迫った中国の脅威に対し、日本のこの有様はあきれてものが言えません。一億総お花畑の現状は、事が起こらない限り目覚めないのでしょうか。中国のお膝元のこの日本を、米国が肩代わりして防衛してくれるなど無理だと気づかなければなりません。台湾防衛ですら米国にとってやっかいな重荷なのです。

 このあたりの実情を、米国のブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)氏がNewsweek誌に寄稿したコラムから引用します。タイトルは『台湾進攻の「次は沖縄」...中国の野心は「ヤマアラシ」作戦で防げ』(10/19)です。

 ◇

<中国の台湾進行を防ぐには、「非対称」戦略を進めることで中国に物理的な高いコストが発生すると意識させることが必要だ>

中国の強引な拡張主義は、これまでになく危険な方向に向かっているのかもしれない。最近は記録的な数の中国軍機が台湾の「防空識別圏(ADIZ)」に進入している。台湾の吸収による「祖国統一」を目指す中国政府の本気を示す明確なメッセージだ。

中国は台湾を一貫して自国領土だったと言っているが、実際には歴史修正主義に基づく疑わしい主張だ。台湾は歴史の大半を通じ、非中国系のマレー・ポリネシア系民族の居住地だった。地理的にも台湾本島は中国大陸よりフィリピンに近い。住民の大半も現状維持を望んでいる。

だが習近平(シー・チンピン)国家主席は1950年代に毛沢東がチベットで行ったように、「祖国統一」の名の下に台湾の併合を狙っているようだ。中国が台湾に侵攻すれば、近年で最大の世界平和への脅威となる。

台湾が占領されれば、死活的に重要な地域における航行の自由が損なわれ、インド太平洋地域のパワーバランスが覆る。中国は日本列島から台湾、フィリピン、ボルネオ島へと続く「第1列島線」を突破し、近海を支配下に置ける。一方、信頼できる同盟国としてのアメリカの評価は決定的に傷つく。台湾の征服を防げない(または防ぐ気がない)のであれば、他の国もアメリカには頼れないと考えるだろう。

台湾に隣接する南端の島々を持つ日本にとって、このリスクは特に深刻だ。麻生太郎副総理兼財務相(当時)が7月に語ったように、「次は沖縄」かもしれない。アメリカに頼れない日本は再軍備から核の保有に向かう公算が大きい。韓国、フィリピン、タイなどは中国の勢力下に入りそうだ。

台湾防衛に米軍を投入すると明言せよ

それでもアメリカは、中国による台湾占領とアジアの安全保障秩序崩壊を本気で防ごうとしているようには見えない。歴代の米政権は南シナ海から香港、新疆ウイグル自治区まで、習の拡張主義的行動を何度も許してきた。バイデン米大統領が最近、中国に融和的姿勢を見せていることも、習の自信を深めているはずだ。

中国の台湾占領を阻止できる手段があるとすれば、国際社会の評価だけでなく、物理的にも高いコストが発生すると中国側に意識させることだ。だからこそ、バイデンは台湾防衛のために米軍を投入すると、習にはっきりと告げなければならない。

トランプ前大統領の退任直前に機密解除された内部文書「インド太平洋におけるアメリカの戦略的枠組み」は、台湾の「非対称」能力構築を支援するよう推奨している。一部の元米政府・軍当局者も、こうした戦略に賛同を表明した。ジェームズ・スタブリディス退役海軍大将が指摘したように、ヤマアラシの針状の毛は消化が困難なため、大型の捕食者から身を守る盾になる。同様に対艦・対空ミサイルのような兵器は、台湾侵攻を高コストで長期にわたる血みどろのゲリラ戦に変えるはずだ。

しかし米台両当局者が非対称戦略について合意したとしても、中国という龍の喉を詰まらせる「ヤマアラシ型台湾」を構築するには数年かかるだろう。侵略者に持続的なゲリラ攻撃を仕掛ける大規模な民間人部隊の育成が必要だ。

それまでの間、侵略を思いとどまらせる方法は1つしかない。戦争も辞さないと脅すことだ。アメリカは冷戦の期間中そうやって、今の台湾よりも政治的に危うい状態だった西ベルリンの自由を守り抜いた。

最悪の対応は台湾を武力で守る意思を明確に示さず、口だけで中国の台湾占領に反対することだ。罰を受けずに行動できることに慣れた習はさらに大胆になり、奇襲侵略作戦を命じかねない。そうなればインド太平洋の秩序は覆され、アメリカの世界的優位に致命的打撃を与えるだろう。

 ◇

 地政学的に中国から遠く離れたアメリカが台湾防衛に躍起となるのは、台湾が中国の軍門に下ったならば、中国の太平洋への展開が一気に可能になると共に、それゆえ超大国の座を脅かされる可能性があるからで、むしろ近隣にあって火の粉が飛んでくることが予想される日本の方が、実害が大きいことを知るべきでしょう。

 ブラマ・チェラニ氏の指摘の通り、台湾が沈めば韓国、フィリピン、タイなどが中国の勢力下に入ると共に、日本も例外とは言えないでしょう。少なくとも沖縄は完全に狙われることになるでしょう。

 それだけ台湾防衛は西側諸国、特に日本にとって死活的重要な案件です。アメリカに防衛を肩代わりしてもらうなど、甘いことを言っている場合ではありません。そのアメリカも番犬とみている日本が何もせず、寝てばかりいるようでは、いい加減愛想を尽かすのではないでしょうか。

 ブラマ・チェラニ氏はアメリカに頼れない日本は再軍備から核の保有に向かう、と述べていますが、それが可能であればもうやっているはずです。憲法9条も変えられない日本にとって、再軍備から核の保有に向かうなど、夢のような話ですが、今確実にその時期が近づいていると言えます。トランプ氏も容認したこの安全保障政策を、日本は本気になって進める必要がありそうです。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)

にほんブログ村 政治ブログ 保守へ
にほんブログ村

2021年10月 4日 (月)

中国軍が日本に仕掛けている心理戦 ー「諦めさせる」こと

Images-8_20211004093601  岸田新政権が今日スタートの予定です。前回取り上げたように甘利幹事長の経済安全保障政策、中国を念頭に置いたものですが、その中国は虎視眈々と日本の領土、尖閣諸島を狙いに来ています。その先は沖縄を狙いに来るのでしょうか。

 その中国の人民解放軍の戦略はどういうものか。ジャーナリストの吉田典史氏が、JBpressに寄稿したコラム『狙いは「諦めさせる」こと、中国軍が日本に仕掛けている心理戦 元海将・伊藤俊幸氏が語る中国海軍の実態と戦略』(9/30)にその概要を見ることができます。以下に引用して掲載します。

 日本のメディアは、尖閣諸島(沖縄県)周辺に出没する中国船の動きを連日報じている。確かに日本の安全保障にとって重大な問題ではあるのだが、尖閣にだけ目を奪われていると中国海軍の実態が把握できない。実は中国海軍の空母や潜水艦は太平洋で活発に動いている。その動向を40年以上にわたり観察してきた元海上自衛隊海将、金沢工業大学虎ノ門大学院教授の伊藤俊幸氏に、中国の狙いと、日本はどのような対応が可能なのかを聞いた。(吉田 典史:ジャーナリスト)

 *******

中国の空母は重大な脅威なのか?

──伊藤さんは「中国海軍が太平洋での動きを活発化させている」と以前からよく指摘されていましたね。

伊藤俊幸氏(以下、敬称略) 私が潜水艦部隊にいた1996年、中国海軍艦艇が初めてアメリカのハワイ沖まで航行しました。中国海軍はこの時期にはすでに活動地域を太平洋に広げ始めていたのです。

 1970年代までの中国海軍は、北は青島から、南は海南東までの自国の沿岸防衛しかできませんでした。その後、中国海軍の父と呼ばれる劉華清元上将は、旧ソ連から、ランドパワー(大陸勢力)における海上防衛について学び、第1列島線(日本の南西諸島から台湾を隔てて南シナ海まで)、第2列島線(日本の小笠原諸島からニューギニアまで)の概念を作り出しました。これはオホーツク海を聖域としていた旧ソ連海軍の考え方を踏襲し、第1列島線内を聖域化するため、第2列島線までの間でアメリカ海軍を阻止するという考え方です。

──太平洋では、中国の空母の動きも顕著です。

伊藤 海軍が空母を保有するのは、それがないと艦隊防空ができないからです。艦隊には、少なくとも2つの弱点があります。1つは、戦闘機などの空からの攻撃。もう1つは、潜水艦からの海中からの攻撃。私も艦長だった1998年、ハワイでのリムパック(RIMPAC)演習(環太平洋合同演習)で米国などの艦艇を15隻沈めましたが、「鉄の棺桶」といえるほど艦隊は脆弱なのです。

 空からの攻撃を防ぐためにイージス艦を配備するのですが、艦隊を守るためにはまだ不十分です。空母艦載機で、より離れたところで敵を排除する必要があります。ですから、現在の中国空母が海自にとって重大な脅威であるとは言えません。原子力推進機関がなく、十数機しか艦載機が搭載できない空母は、航空自衛隊の戦闘機と海自潜水艦で確実に沈めることができるからです。

 ただし、今後10年以内に中国の空母は少なくとも4隻以上になります。これは、日本の真南、つまり、第1列島線と第2列島線の間に、1隻の空母を含む中国艦隊が常駐するようになることを意味します。現在、南シナ海などに常駐し、訓練や他国に寄港などしているのがアメリカ海軍と海自です。その逆バージョンを中国海軍がしてくることになる、と考える必要があります。

 第2次世界大戦末期(1944年)、サイパンが陥落したことで米軍による日本への空襲が本格化しました。中国海軍の空母が常時いることになるであろう海域は、日本からサイパンまでの距離の約半分の場所です。ここで頻繁に訓練をすることになるのです。

 海自と空自は、この動きを警戒・監視する必要があります。長い滑走路のある空自の基地は太平洋側にないため、狭い基地からでも垂直離発着できるF35Bが必要となります。海上での警戒監視中に本土まで戻る余裕がないことも考えられます。そこで必要になるのが、海上基地です。海自護衛艦「いずも型」2隻の空母への改修は、空自戦闘機をどう運用するかとの視点から設計されたものなのです。海自の艦隊防空用の空母を造るのは、おそらく20年ほど後になるでしょう。

──アメリカのような攻撃型の空母を保有しないのですか?

伊藤 イギリスもフランスも中国も、あくまで艦隊防空用の空母なのです。アメリカの空母は80機以上の航空機を搭載していますが、そのようなことができる空母をアメリカ以外の国は持っていません。他の国に対するパワープロジェクション(戦力投射)能力を持っている空母はアメリカだけです。皆さんはアメリカの空母の映像しか見てないから、それしかイメージできないのかもしれませんが、その認識は間違っています。一部の専門家は「海自が攻撃型空母を保有する」「これを機に攻撃できる態勢をつくれ」と語ります。第2次世界大戦の頃の意識のままなのです。

中国が仕掛ける“切り崩し”工作

──尖閣諸島の現状はどう見ていますか?

伊藤 国連憲章では侵略戦争は当然禁じられていますし、加盟国の武力行使が許されるのは、「武力制裁」および武力制裁発動までの自衛権行使の場合だけです。

 中国政府は尖閣諸島を自分たちの領土と主張していますので、例えば「自国内で起きた問題を解決するための治安維持」などとして尖閣に軍隊を送ってくることが考えられます。

 海自や海上保安庁は前々から、その対応を検討してきました。今年(2021年)2月、内閣官房や海保などの担当者が、自民党国防部会・安全保障調査会の合同会議で、「外国公船が尖閣諸島への上陸を強行すれば“凶悪犯罪”と認定して、警察官職務執行法第7条に基づき警察権を行使する」「相手を制圧するために武器を使う『危害射撃』を行う可能性がある」ことを説明しました。

「海自を尖閣に送れ」といった世論がありますが、私は現時点で海自が出ていくことは好ましくないと考えています。海外からみると「世界第2位の実力を持つ海軍」が前面に出ることになり、その姿は世界から見て衝撃的に映るでしょう。

 海保でも手に負えない場合、自衛隊に下される命令は「防衛出動」になります。その際は海保や警察からスイッチし、自衛隊が敵の排除のために行動をとります。中国が海保に手荒なことをしないのは、そばにいる海自や空自を警戒しているからだと思います。海自の哨戒機は尖閣諸島周辺を飛んでいるでしょうし、潜水艦も潜っているかもしれません。

──元自衛官などが、「尖閣諸島で軍事衝突があった場合、沖縄や九州も巻き込まれる戦争になる」と指摘しています。

伊藤 尖閣諸島については前述のように手を出してくる可能性はあり得ますが、そこからさらに日本本土を攻撃をした場合、国連の安保理決議にもとづき、中国に対して武力制裁が行われるでしょう。中国への国際世論は相当に厳しいものになるはずです。日米安保のもと、米軍も自衛隊とともに戦うでしょう。

 自衛隊の出動に関しては、2003年成立の武力攻撃事態等対処法(「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」)により、自衛隊が防衛出動する法的な根拠が明確になっています。皆さんがイメージしている専守防衛とは異なり、憲法の範囲で襲ってくる敵を排除できる国になっているのです。

 中国はこのあたりを心得ていますから、日本と本格的な戦争はしたくない。むしろ、台湾への工作と同じく、日本国内で様々な工作をして切り崩そうとしてくるでしょう。政治家をはじめ多くの日本人が「中国に対抗しても無理だ」と諦めるような心理になることを目標にするのです。そのために尖閣諸島周辺に連日、公船を出没させているのだろうし、太平洋にも進出しているのだと私はみています。日本の内部から崩れるように仕掛けてきていることにこそ、警戒すべきでしょう。

 ◇

 日本の防衛省も中国のこの動きを念頭に、対抗戦略を考えてはいると思いますが、何しろ日本には「憲法9条」があります。防衛省や自衛隊の考える国防戦略に沿った防衛策も、その9条障壁のために自由に実施に移せないでしょう。まずはしっかりした防衛策を打ち立てるためには、「9条改正」を視野に入れる必要があります。

 更に、中国との攻防の最前線「尖閣」は、残念ながら中国側の主張「中国の領土」を、完全には打ち消せていません。いわゆる「棚上げ論」を容認してしまった付けが、今も棘のように刺さってしまっています。ですから政府も尖閣への日本人の上陸を認めていないのでしょう。中国に「領土侵犯」の口実を与えるからです。

 この問題の解決は、「尖閣は日本固有の領土」だと言うことを、国際社会に認めさせるしかありません。しかし南シナ海でのフィリピンとの抗争で、国際司法裁判所の「フィリピン勝訴」の決定を、「紙くず」と強弁した中国です。一筋縄ではいかないでしょう。もし岸田新政権がこの偉業を成し遂げれば、一躍時の人になれるでしょうが、可能性は極めて小さい。残念ながら現状維持が今のところ精一杯のような気がします。

 今できることの第一は「憲法9条」を改正し、普通の国・日本を取り戻すしかないように思います。そこから尖閣や竹島、拉致問題、北方領土解決の道が開けていくのではないでしょうか。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)

にほんブログ村 政治ブログ 保守へ
にほんブログ村

2021年6月12日 (土)

いつまで「弱小国の振り」を続けるのか?

Images-4_20210612104601  私の願いは、日本がその潜在力を発揮して、世界に発信できる・ものが言える国になることです。そして法を疎かにし、人権を蹂躙する国々にはっきりNOといえる国になることです。そのためには経済力のみならず、しっかりした抑止能力を持つ軍事力を備えることが不可欠です。

 あの経済的な弱小国北朝鮮でさえ、核という最大級の兵器を手に入れ、先軍政治を徹底しているからこそ、米国と渡り合えるまで「力」を発揮しているのでしょう。もちろん砂上の楼閣でしょうが、いいにつけ悪しきにつけ発信力はあります。

 核を持てとまではいいませんが、少なくとも自衛隊を言葉の上でも「軍」と呼び、ポジティブリスト方式で行動を縛るような、手枷足枷を取り去ることが必要です。そのためには「戦力保持」を禁じた憲法9条2項を破棄することが必須です。

5_20210612104601  日本は外力に弱いとされています。これも戦後からでしょうが、上記のような訴求は外国人からも指摘されています。ヘンリーストーク氏やケントギルバート氏らは、彼らの著書の中で何度も指摘しています。ここにまた同様な訴求記事が見られます。「WEB Voice」に寄稿された、国際政治学者のグレンコ・アンドリー氏のコラム『いつまで「弱小国の振り」を続けるのか? 日本が“再軍備”できない本当の理由』(5/26)がそれです。以下に引用して紹介します。

 ◇

日本はどうして弱小国家の振りを続けているのだろうか。

国際政治学者のグレンコ・アンドリーは、戦後日本の基本原則である「吉田ドクトリン」があったお陰で、日本の軍事力は高まることがなかったと指摘する。この時代の、日本における真の安全保障とは何だろうか。

吉田ドクトリンの功罪

戦後、日本を国際関係の「弱者」「小国」として固定させたのは、いわゆる「吉田ドクトリン」である。

吉田ドクトリンとは、安全保障をアメリカに依存することで、軽武装を維持しながら経済の復興、発展を最優先させることによって、国際的地位の回復を目指した戦後日本の外交の基本原則である。

アメリカは朝鮮戦争勃発のため、日本に軍事費増加を要求したが、吉田茂首相は日本国憲法第9条を盾に、この要求を拒否した。

吉田首相が退陣した後も、吉田ドクトリンの路線は日本に定着した。安全保障をアメリカに任せたおかげで、日本は復興や発展に集中でき、高度経済成長を成し遂げて世界第2位の経済大国となった。吉田ドクトリンに基づく方針はおおむね現在も続いており、多くの人から評価されている。

それでは、実際に吉田ドクトリンは正解だったのだろうか。日本が高度経済成長を成し遂げたのは紛れもない事実だから、成功だという意見は理解できる。

一方、吉田ドクトリンが日本の足枷になっていることもまた、事実である。主権を回復してから70年近く経っているにもかかわらず、日本は憲法9条を改正できず、自国の防衛、安全保障政策を自主的に制限している。

もしあの時、アメリカの要求通り軍事費を増やしていれば、その後の再軍備も現実的になり、今の日本は自立した軍隊を持つ「普通の国」になっていた可能性が高い。

日本が弱小国の振りを続ける余裕はもうない

吉田ドクトリンが妥当だったかについては、やはり議論の余地がある。百歩譲って、吉田首相の在任当時は経済の復興を一刻も早く実現する手段として合理的な判断だったとしても、その後もずっと日本の安全保障政策の基本になっている状態は明らかにおかしい。

吉田首相自身も、再軍備の拒否と復興、発展の最優先を敗戦直後に置かれた状態を踏まえた上で決断したと思われ、同じ状態が未来永劫、続くことは想定しなかっただろう。

「21世紀の日本は小国として、大国の中国やアメリカ、ロシアとバランスを取りながらうまく付き合う」という方針は、驚くべきことに今でもかなりの支持を集めている。実際自民党から共産党まで程度の差はあれども、国政政党が軒並み小国路線を支持している

しかし、これでいいのだろうか。まず言えることは、人口が1億人以上で、世界第3位のGDPの国は、どう見ても「弱小国」ではない。弱小ではない日本がなぜ「弱小国」の振る舞いをしなければならないのか。

日本は東アジアにある。隣に中国とロシアのような凶暴な軍事大国と、日本人を拉致する犯罪国家の北朝鮮がある。このような地域に位置すれば、弱小国は必ず危険に晒される。仮に直接の軍事侵攻を受けなくても、隣国に振り回される運命を免れない。

実際にいま日本の領土はロシアと韓国に不法占領されており、尖閣諸島も中国に狙われている。中国をはじめ、近隣諸国は日本の外交・内政問題への干渉を繰り返している。

この状態で、日本が弱小国として振る舞うことは決して許されない。今は当たり前の平和な日常が破壊されても構わないなら、そのままでもいいのかもしれない。だが、現在の暮らしを守りたいなら、弱小国の振る舞いを続ける余裕は、日本にはもうない。

いつまで「弱小国の振り」を続けるのか? 日本が“再軍備”できない本当の理由

アメリカに"日本を守る気になってもらう"ために

筆者は、地政学的な思考としては「親米」を選ぶ。そして「日本の安全保障政策の基本は、日米同盟を軸にした親米路線しかあり得ない」とも考えている。

しかし、戦後復興を成し遂げた後もなお吉田ドクトリンを続ける路線は、決して親米ではない。さらに言えば、それは対米従属ですらない。もし日本が本当に対米従属であれば、アメリカの要望通りある程度の再軍備を実行したはずだ。

再軍備を拒否した時点で、日本は対米従属の国ではない。現在でも吉田ドクトリンを支持している論者には、アメリカに対する愛も尊敬も、執着もないといえるだろう。自分で生活を守る努力をせず、ただ楽をしたいためにアメリカを利用しているだけである。

吉田ドクトリンの支持者は、「いざというときにアメリカは日本を守ってくれる」と言う。それを批判する反米左翼は「話し合えば分かり合える」と言う。さらにそれらを批判する反米保守は「アメリカは絶対に日本を守ってくれないから、対米自立しかない」と言う。しかし、全部間違いなのである。

吉田ドクトリンの支持者と反米左翼は「日本が努力しなくても済む」という点で共通している。また、反米左翼と反米保守は「アメリカとの同盟は要らない」という点で共通している。

さらに、いずれの一派も「アメリカが日本を守る気になるように、日本は今まで何か努力をしたのか」「アメリカが日本を守る気になるように、どうすればいいのか」を真剣に考えていない、という点で共通している。

実際の安全保障において、「アメリカは日本を守る」「守らない」という議論は無意味であり、現状に何の影響も与えない。

むしろ「アメリカが日本を守る気になるために、何をすればよいか」を語る議論こそ現状に影響を与え、日本の安全保障に役立つ可能性が十分にある。

日本は、今までアメリカが日本を守る気になるための努力をせずに、日米安保の条文だけに甘えてきた。条約の条文は大事だが、それが全てではない。実際に各時代の政権が条約をどう運用するかが重要である。当然、日米安全保障条約も例外ではない。

日本にとっての"真の安全保障"とは

日本人が日米安保条約の第5条(「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」)の条文に頼るだけの態度を続けるなら、いずれアメリカも条文を守る気にならず、条約が形骸化する恐れがある。

アメリカが日本を守る気になるには、まずは日本が国防のための努力を行い、少なくともアメリカが諸同盟国に要求する防衛費の対GDP比2%の予算を実現し、アメリカの地政学的な戦略に付き合う必要がある。

反米左翼と反米保守は「対米従属」と言うであろうが、これは従属ではない。日本の国家安全保障を確立するために必要な外交政策であり、何よりも日本の国益に適うのだ。

吉田ドクトリンに基づく外交を続け、日米安保条約の条文だけに頼っても、日本の主権と独立を守ることはできない。また、左右の反米主義者の極論を聞いても、日本は危うい道を歩むだけだ。

今の日本に必要なのは、防衛費の倍増と再軍備だ。複雑かつ危険極まる現代の世界において、危機はいつ、どこから迫ってくるか全く予測できない。

不測の事態は必ず起きる。有事にいち早く対応するには、平時のうちに危機に備える必要がある。日本の国民一人ひとりが、国家安全保障が日常生活に直結することに気づき、国防の努力の必要性を理解すべきだろう。

政治家もまた、利権や自分の政治生命ばかりではなく、国家の主権と独立を守ることを第一の目的にしなければならない。

 ◇

 幸か不幸か戦後75年の間日本が直接的な戦闘に巻き込まれることはありませんでした。その間朝鮮戦争、ベトナム戦争、中東戦争やイラク戦争など、多くの戦争や戦闘が繰り返されても、日本は後陣で支援はしても前衛での戦闘に加わってはいません。

 それを9条教の人たちは憲法9条のおかげといいます。しかしそうでしょうか。確かに積極的に戦闘に加わるには、憲法がその抑止に働いたのは事実でしょう。しかし大戦の直後から北方領土や竹島を占拠され、拉致被害者を出し、その奪還は全くできていません。戦闘には加わっていなくても、領土や国民を奪われているのです。これは紛れもなく戦っていなくとも敗戦なのです。この敗戦に9条は何か役立ったのでしょうか。

 アンドリー氏の言うとおり日本は弱小国のふりをしています。そして人口の規模や経済規模に見合った防衛力を持とうとしても、憲法が足かせになります。その憲法を、あえて言いますが、少数の護憲派が手を変え品を変え阻止しようと躍起になります。憲法改正の制度的な困難さも加わります。

 そして日本人自身の安全保障感性の絶対的な弱さ、つまりお花畑思考が追い打ちをかけます。今平和が続いているのになぜ軍備拡張が必要なのか、と。多くのメディア、特に左翼メディアは軍事アレルギーを国民に振りまき、護憲を訴え続けます。島を占拠され続け拉致被害者を放置され続けていても、彼らはそのために何かしようと動きません。中共や南北朝鮮には忖度しても日本の安全保障にはそっぽを向いています。彼らにはそもそも愛国心というものがないのでしょう。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)

にほんブログ村 政治ブログ 保守へ
にほんブログ村

 

 

2020年6月11日 (木)

中国に立ち向かう台湾、果たして日本は?

Img_553bd54ee62df297687bf43bd3e121d23422  中国の国家安全法香港適用による、事実上の一国二制度破棄の余波は、当然台湾にもおよび、台湾国内では野党も含めての中国非難という、前代未聞の状況が発生しています。

 こうした中、中国の海砂採取船を台湾の巡視船が拿捕するという案件が発生しました。日本の巡視船が自ら衝突を企てた中国漁船を拿捕し、船長を逮捕した事件(後の中国における大規模な反日デモのきっかけとなった事件)がありましたが、この海砂採取船は特に衝突を企てたのではないようです。

 以下に軍事社会学者北村淳氏によるコラム「中国の違法な海砂採取船、ついに台湾に拿捕される (副題):中国に立ち向かう台湾、あやふやな安倍政権」(JBpress 6/11)を引用掲載します。

 南シナ海、台湾周辺、そして東シナ海における米中の軍事的緊張が高まっている。アメリカ海軍も、定例業務化してしまった南シナ海でのFONOP(公海航行自由原則維持のための作戦)に加えて、軍艦の台湾海峡通航など中国に対する軍事的牽制姿勢をより強化している。

 天安門事件発生日と同じ6月4日には、先月に引き続いてアメリカ太平洋艦隊所属のミサイル駆逐艦ラッセルが台湾海峡を通航し、香港国家安全法制定に対する抗議、それに「台湾に手を出すな」という意思表示を行った。

 そしてラッセルが台湾海峡を通過している頃、台湾海峡南部の台湾浅堆では、台湾沿岸警備隊巡視船が中国浚渫船を拿捕して乗組員を高雄に連行するという事件が発生した。

Img_0eddf681f65139c4f3cc9dd0a6a939381613 違法な海砂採取、環境破壊も深刻

 トランプ政権による台湾支持の動きの強化にともなって、台湾海峡では台湾、中国、米国の間での軍事的緊張が加速度的に高まっている。さらに、台湾では台湾の排他的経済水域内に位置する台湾浅堆での中国浚渫船による違法な海砂採取も問題となっていた。

 中国本土沿岸域では海砂の採取が禁止されている。そのため大型(27000トン以上)の海砂運搬船を伴った中国浚渫船が、広大な浅海域である台湾浅堆で、海砂採取作業を実施(もちろん違法に)している。

 中国浚渫船が出没している海域は台湾と中国の中間線の台湾側であり、台湾の排他的経済水域内である。したがって、台湾政府の許可がなければ何人といえども海砂採取にかかわらず、いかなる経済活動も実施することはできない。しかし中国船は、これまで数年間にわたって毎日10万トンにものぼる海砂を採取し続けていると言われている。

 海砂を違法に採取しているだけではない。中国海砂採取船団は漁業資源の破壊という問題も引き起こしている。台湾浅堆は古来より澎湖諸島の漁民にとって豊富な漁場となっており、とりわけ澎湖イカとサワラの主要な産卵地そして生息地となっている。そのように台湾漁民にとって貴重な漁業資源が、中国浚渫船による大量の海砂採取作業によって、大きな被害を受けているのだ。このような状況が続くと、漁業資源が枯渇するだけでなく、台湾浅堆の自然環境も壊滅的状態に陥ってしまうと、中華民国自然生態保育協会(SWAN)では危惧している。

 SWANの調査では、台湾浅堆には643種類もの魚に10種類の珊瑚が生息している。ところが、このような生物学的にも貴重な海域で、大規模な海砂採取が続けられれば、貴重な自然環境が失われるのは自明の理である。それに加えてSWANは、台湾浅堆の調査中に、中国トロール漁船が廃棄した巨大な漁網を数多く発見している。

 まさに、台湾浅堆の漁業資源と自然環境は中国によって荒らされ放題なうえ、危機的状況に陥りつつあった。そこで2019年より、台湾沿岸警備隊が中国採取船団に対する本格的な取り締まりを開始した。だが中国側は盗掘の機会を狙って採取船団を送り込み、あるいは船名の隠蔽や改竄を行って海砂採取を続けており、台湾当局による取り締まりは難航している。

反撃に出た台湾

 先週、6月4日、2隻の海軍フリゲートと共に台湾浅堆海域に出動した台湾沿岸警備隊の巡視船「高雄」(3000トン)と巡視艇「澎湖」は、違法操業中の中国大型浚渫船(7539トン)を拿捕し、中国船の船長以下乗組員10名を高雄の興達港に連行した。

 今後も、台湾側による中国海砂採取船団の取り締まりは強化されるものと思われる。自然環境破壊や漁業資源の保護はもちろんのこと、なんといっても自国の排他的経済水域内での中国側の違法行為に目を背け続けることは、台湾の主権を自ら軽んずることを意味するからだ。

 台湾海峡を挟んで2000発以上の各種弾道ミサイルと数千発の各種巡航ミサイルを撃ち込む能力を保持した中国軍と常時対峙している台湾は、アメリカによる軍事的支援を少しは期待できるとはいうものの、可能な限り自らの力で自らの主権を守り抜こうとする努力を続けている。

頼りない日本

 台湾にとって、最悪の事態に際してはアメリカ同様に頼りにしたいと期待を抱いていたのが日本である。何といっても、台湾が中国の手に落ちた場合には、日本の安全保障は危殆に瀕する以上、日本が台湾の安全保障に敏感であるのは当然、と台湾側では考えているからだ。

 台湾が中国に組み込まれると、南シナ海を通過して日本にもたらされる原油や天然ガスは全て台湾沿海を通航せねばならないため、中国は容易に遮断することができてしまう。また、中国軍が台湾を強力な軍事拠点化することにより、先島諸島から沖縄にかけての空域と海域は中国軍の優勢が確定してしまう。そのような軍事状況となった場合、もはや米軍にとって沖縄は安住の地ではなくなり、沖縄の米軍戦力を大増強するか? 沖縄からグアムに後退するか? という選択に迫られることになる。

 いずれにせよ、台湾の安全保障と日本の安全保障が一蓮托生の関係にあることは事実だ。それにもかかわらず、近頃の安倍政権による台湾周辺状況や香港国家安全法に対する無関心的姿勢は、あたかも中国習近平政権に気を遣っているかのごとき印象を国際社会に刷り込む役割を果たしており、台湾はもとより同盟国アメリカの失望を招き信頼を大きく失ってしまっているのである。

 コラム後段の日本の姿勢については言うまでもなく、「尖閣諸島の中国海警局の公船による威嚇航行になすすべもなく遺憾砲しか打てない」、また「不法占拠された竹島への韓国議員の上陸や韓国軍の軍事訓練に対しても、これまた遺憾砲しか打てない」状況から、推して知るべし、でしょう。

 習近平政権への気遣いもあるでしょうし、善隣外交という外務省の姿勢もあるでしょうが、それより根本的には尖閣や竹島の例からもわかるように、軍事力を背景に持てないための「弱腰・腰砕け」外交のなせる業としか言えないと思います。

 あの民間の経済力も技術力も最低レベルの北朝鮮が、アメリカにも中国にも、そしてロシアにも「偉そうに」対応できているのも、ひとえに核を伴う軍事力(真の中身は不明ですが)があるからでしょう。

 軍事力の背景がなくとも、フィリピンのドテルテ大統領のような「強い発言力」をもった人も中にはいますが、とりわけ今の日本には剛腕と言われる人は少ない。またそういう人を「良し」としない国民が多くいます。だが昔からこうだったのではない。戦後の「GHQ憲法」「自虐史観」がそうさせてしまったのでしょう。

 ノーベル賞に代表される科学技術の分野にしても、オリンピックに代表されるスポーツの世界においても、「一番」だとか「強い」ということは国を挙げての称賛に値します。軍事力(軍に抵抗がある人には防衛力)も強いことに越したことはない、なぜそう考えないのでしょうか。やはり「自虐史観」の洗脳効果でしょうね。

 何度も申し上げますが、戦後75年経った今、もう「自虐」は止めて、独裁国家から民主国家を守る砦の役割の一つを担う、そういう日本になってもいい時期だと思います。そのために9条を改正して、強い防衛力を持った国に変えていきたいものです。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)

にほんブログ村 政治ブログ 保守へ
にほんブログ村

 

その他のカテゴリー

ICTと政治 イノベーション インバウンド エネルギー エネルギーと環境 オリンピックとメディア人 オリンピックと人権侵害 オリンピックと政治家 スポーツ スポーツと政治 テロの標的国家 デジタル技術 マナー、道徳 メディア メディアと政治 メディアの偏向報道 中国の政治 中国経済 五輪と反日国、メディア 人種・民族差別 共産主義 共産党と総選挙 共産党の組織と実態 刑法、犯罪 創作と現実 医療 医療と健康 医療と政治 危機管理 原発と核実験 原発・エネルギー 原発再稼働 反日メディア 反日市民団体 反日政治家 反日言論人 司法 国会改革 国連 国際政治 土地の買収 在日、サヨク 地方政治 地方行政 地球環境 外交 多様性 大学 天候 学問・資格 安全保障 安全保障政策 宗教と政治 宗教界 官僚の実態 対テロ作戦 少子化問題 左翼インテリ 情報・インテリジェンス 感染症と政治 憲法 憲法違反 戦争の歴史 技術、戦略 拉致被害者 政権構想 政治 政治、外交 政治、政党 政治、政局 政治、文化 政治、経済 政治とテロ 政治と原発論議 政治とSNS 政治スキャンダル 政治体制 政治家の誹謗中傷 政治理念 政治評論 政策 政策課題 教育 教育、文化、愚民化 教育と政治 教育・歴史 文化 文化、歴史 文化・芸術 新型コロナウイルスの起源 日本の未来 日本の防衛力 核の威嚇 歴史 歴史の捏造 歴史・国際 民主主義の限界 民族弾圧 民族弾圧、ジェノサイド 水際対策 海外、スポーツ 海外、政治 海外、経済 海外の人権侵害 海外・社会 災害、政治 独裁政治 産業政策 研究開発 社会 社会・政治 社会・文化 社会主義運動とテロ 福祉政策 経営 経営戦略 経済・政治・国際 経済対策 緊急事態と憲法 総選挙 自民党総裁選候補 自衛隊 芸能人と思想 行政改革 言葉の定義 軍事 軍事、外交 輸入食材 農産物の流出 選挙公約・バラマキ 離島防衛 韓国の教育 音楽 領土、外交 風評被害・加害 食料安全保障 食糧問題 NHK改革 SNS・インターネット

2023年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
フォト
無料ブログはココログ