海外、経済

2020年6月27日 (土)

中国での未曽有の豪雨が襲う、三峡ダム決壊の恐怖

Img_4b813474aa442e002f77ce29656574b11617  今年も梅雨の季節到来です。ここ数年各地で水害が多発していますが、今年も例にもれず長崎を始め九州各地に大雨が降り、かなりの水害をもたらしています。その中で観測史上最大の雨量を記録したところもありました。新型コロナウイルスの感染状況の中、避難所での3密対策が目下の重要課題となっています。これからも来月一杯目が離せない状況が続きそうです。

 ところで中国でも数十年来の豪雨が発生し、各地に水害が発生しているようです。フリージャーナリストの福島香織氏がJBpressに寄稿したコラム『長江大洪水、流域住民が恐怖におののく三峡ダム決壊 洪水を防ぐダムに「ブラックスワン」が飛来してしまうのか?』(6/25)を引用掲載します。この内容の一部は地上波テレビでも紹介されました。

 6月22日からの週に入って中国・重慶の水害がいよいよひどいことになってきた。中国当局は80年に一度規模の大洪水だと警告を発している。

 心配なのは、重慶を流れる長江の下流にある世界最大の水力発電ダム「三峡(さんきょう)ダム」(湖北省宜昌市三斗坪)の強度だ。中国水利部当局も「ブラックスワン」(起こる可能性は確率的に非常に低いが、起これば極めて大きな衝撃を引き起こす事象)に例えて強い懸念を示すほどだ。

 すでに南部は折からの集中豪雨で水浸しになっている。中国中央気象台が6月24日に発表したところでは、6月に入ってすでに連続23日、暴雨警報を出しているという。24日も広い範囲にわたって「暴雨イエローアラート」が発令された。暴雨は貴州、広西、湖南、江西などで大規模洪水を引き起こし、さらに今後数日、集中豪雨が続くと予報されている。

 今年(2020年)の洪水被害の被災都市はすでに26の省、自治区、直轄市におよび、被災者数は1122万人。長江沿いの湖北省の680のダム湖、安徽省の299のダム湖は制限水位を超えており、目下全力で放水による水位調節を行っているが、もはや洪水防止の役にはたっていない。安徽省の六安市などは村ごと水に沈んでいるところがいくつもある。

 中国応急管理部は6月23日までに657.1万人に緊急避難を指示、21.3万人に対して緊急生活救助を行っている。だがすでに9300以上の家屋が倒壊し、17.1万以上の建物が損壊。農作物の被害は86.1万ヘクタールにおよび、直接的経済損失は241億元に上るという。

重慶の住民「こんな大洪水はみたことがない」

 中国メディアの報道を総合すると、重慶周辺における洪水被害が6月22日以降かなり深刻で、重慶市水文観測総合ステーションは綦江(きこう)区に「洪水レッドアラート」を発令した。これは1940年このステーションができて以来初めてのレッドアラートだ。この日午後、重慶市綦江は基準水位を5メートルほど超えた。

 華僑系通信社中国新聞の記者が綦江区をリポートしていたが、重慶都市部と綦江区をつなぐ橋を警察が守備し、人や車両の交通を止め、両岸には警戒線が張られて、人が近づかないようにされていた。川沿いの土地はほとんど黄土色の濁流にのまれており、川から道路へあふれでた水はさらに居住区の建物内に絶え間なく浸水していているという。

 重慶の多くの道路は冠水し、軌道交通は寸断され、綦江濱江路一帯の建物店舗は浸水被害を受け、一部地域では土石流も発生していた。重慶は断崖に刻まれるように道路や商業ビルや集合住宅がたつ高低差のある都市開発が特徴だが、濁流が高所の道路からあふれて、瀑布のように崖下に流れおちる映像がツイッター上で拡散されている。

 地域住民はこれを見て、「1998年以来、こんな大洪水はみたことがない。私たちは逃げることができたが、間に合わなかったらと思うとぞっとする」と恐怖を語っていた。

 綦江城区の洪水の水位はアパートに2階くらいにまで来ている。空中撮影でみると、水面に信号のてっぺんがかろうじて見えているような報道写真もある。

 重慶に隣接する貴州省の被害も深刻で、通信が不通となり、橋がいたるところで崩壊。水道電気、道路が寸断され、やはり土石流の危険に住民たちがおののいている。

三峡ダムの洪水防止機能に疑問の声

 そして今、地域の人々が非常に不安に思っているのは三峡ダムが、この大量の豪雨増水に耐えきれるのだろうか、ということだ。

 中国湖北省衛星テレビが6月21日に報道したところによると、連日の豪雨の影響で、三峡ダムの水位が上昇、増水期の制限水位をすでに2メートル超えて147メートルに達したという。

 三峡ダムの貯水庫には6月20日に毎秒2万6500立方メートルの水が流れ込んだ。これは前日の19日より毎秒2万500立方メートル多いそうだ。水位は20日の段階で147メートルに接近していた。

 湖北省宜昌市は6月11日に、三峡ダムの水位を145メートルの増水期制限水位まで下げたと発表した。例年より早めに洪水防止のための貯水調節を行い、6月8日に前倒しで221.5億立方メートルの水を下流域に排出して145メートル(正確には144.99メートル)にまでに下げたのだ。この調節放水の量は西湖(杭州にある世界遺産の湖)1550個分という膨大なものである。

 三峡ダムの堤防の高さは185メートルで、蓄水期はおよそ175メートルまで水がためられている。これを長江の増水期前に145メートルまで水位をさげて、増水に備えるのだ。この30メートルの水位差が、長い中国の歴史で繰り返されてきた長江の大洪水を防止する役割を果たすといわれてきた。

 三峡ダムは長江の洪水防止のための大国家プロジェクトとして建設された(1993年着工、2009年完成)。本来5つの機能(発電、南水北調、水運、地域発展、洪水防止)を持たせて造られたが、中でも長江流域の増水期に備えた洪水防止システムの役割への期待が一番大きい。

 だが実のところ、このダムには設計上のさまざまな問題が指摘されている。その1つが、実はそんなに洪水防止機能がないのではないか、ということだ。

1_20200627112301  三峡ダムでは昨年に堤防がゆがんで見えるという写真がネットで話題になった。2009年当時の写真と比較すると確かに、数カ所湾曲しており、三峡ダムが決壊するのではないか、という“噂”が一気に広がった。中国当局は「このゆがみは計算上予測されたもので、堤防の強度に影響はない」とわざわざ発表して噂を打ち消したが、これまで中国当局が三峡ダムのリスクや問題について正しくアナウンスしたことはないので、多くの周辺住民は決して安心できていない。

 そして現在、ダムの水位が147メートル程度とアナウンスしているのに、下流域でも上流域でもひどい洪水が起きている。30メートル分の水をため込めるはずではなかったのか。

三峡ダムが決壊したら何が起きるか

 中国水利部の葉建春副部長は6月11日の全国洪水防止会議で、中国は全面的に河川の増水期に入り、江南、華南、西南東部では6月2日以降、今年最大強度、最大範囲、最長の豪雨に見舞われていると発表。珠江流域の西江、北江、長江流域の湘江、鄱陽湖水系、浙江銭塘江水系の一部など24省148河川ですでに洪水が起きており、一部河川の洪水は歴史的記録を塗り替えるような規模だと警告していた。

 こうした状況から中国水利部は、ダム決壊、山崩れ、洪水の3大リスクに備えて警戒せよとの要請を出した。

 このとき葉建春が言ったセリフが不穏な内容だった。「目下のところ、我々の洪水防止プロジェクトは新中国成立以来最大の洪水を防御できているのだが、洪水がこの防御能力を超えることもあり、“ブラックスワン”的事件が出現しうる」。

 “ブラックスワン”とは本来金融用語だが、しばしば、可能性としては極めて低いが起きたら大変な被害を出す予測不能な事態全般を意味する言葉として使われる。中国水利当局者のこのブラックスワン発言に、多くの人たちは、三峡ダム決壊のことを指しているのだと思ったのは言うまでもない。

 三峡ダムの下流は中国の最も都市と人口が密集している地域。万が一にも、三峡ダムが決壊すれば被災者は少なくとも4億人以上に達し、およそ30億立方メートルの土砂が三峡ダム下流域を襲い、上海までが水浸しになる、と言われている。大規模停電が起き、しばらくは復旧できまい。また、長江流域は中国経済実力の40%が集中する。つまり中国経済も潰滅し、その回復には数年かかるだろう。農業だって潰滅だ。

 また三峡ダム下流域には解放軍のロジスティクス部隊の駐屯地が集中すると指摘されている。たとえば空挺部隊の9割も三峡ダム下流域に集中する。解放軍は大災害のとき最前線で救援作業を行うが、三峡ダム決壊の災害の場合、解放軍のロジスティクスも大打撃を受けて、救援作業に支障が出るのではないか、と言われている。

 確率的には非常に小さく、ほぼあり得ない、と当局も繰り返し否定しているが、起きたら、目も当てられない惨状を引き起こす。そして普通ならあり得ないけれど、絶対にないとは言えない。まさしく「ブラックスワン」。

建設時から問題点を指摘されていた

 実は、三峡ダムはもともと設計自体に欠陥があった、と指摘するのは「三峡工程三十六計」の著者でもあるドイツ在住の国土計画専門家、水利エンジニアの王維洛だ。台湾自由時報の取材を受けて、こう語っている。

「実際、三峡ダムに洪水防止機能などないのだ。すでに専門家の検証によって、そのことははっきりしていた。そもそも三峡プロジェクトは、設計から工程、仕上げの監査まで同じ人間がやっていて、審判とプレイヤーが同一人物みたいなものなのだ」

「ダム下流の湖北、湖南、江西ではすでに洪水が発生している。ダム上流の重慶も洪水警報がでている。ダム上流域の人々はダムを決壊させないために、放水させろといい、下流域はこれ以上放水させるな(すでに洪水がひどいのに)という。そういう矛盾があることは、ダム建設前から分かっていた」

「三峡ダムの設計エンジニアである銭正英、張光斗らは、当時の三峡ダム建設プロジェクト副主任の郭樹言に対して、三峡ダム工事のクオリティ、強度に問題があることを手紙で訴えていた。工事期間があまりにも短期であり、完成を急ぎすぎているから、欠陥があるのだ」

「(昨年、三峡ダムが変形していることが判明し、ネットでも話題になったが)ダムの変形よりも問題なのが、ダムの船閘(ロックゲート)周辺から水漏れがあることだ」

つけを払わせられる長江流域の人々

 長江の大洪水は中国の歴史上何度も繰り返されてきた。この暴れる竜・長江の洪水をコントロールすることこそ、中国の国家指導者に求められる能力であり、孫文の時代から三峡ダムプロジェクトの絵は描かれていた。

 だが毛沢東は「頭の上に水の入った盆を置いては熟睡できない」と感心を示さず、1980年代も建設の賛否をめぐる議論は続いた。天安門事件後、当時の首相の李鵬が反対派を抑え込んで強引に実現にこぎつけたものの、プロジェクトは李鵬らを中心とする水利利権派の汚職の温床となり、当時から様々な問題が存在することは内部で判明していた。

 今は、この巨大プロジェクトを強引に推進した李鵬も亡くなり、その責任を引き受ける人物もいない。つけを払わせられるのは、長江流域に暮らす普通の人々だ。

 しかし、中国にはちょっとブラックスワンが多すぎはしないか。新型コロナのアウトブレークも、香港デモも、蝗害も、本当なら万に一つも起こりそうもないブラックスワンだ。

 この調子だと、年内にあと2、3羽飛来してくるのではないか。

 ブラックスワン「起こる可能性は確率的に非常に低いが、起これば極めて大きな衝撃を引き起こす事象」、この一つが新型コロナウイルスの発生(アウトブレークと福島氏は述べるが)とは言いえて妙ですね。

 中国にとっては新型コロナウイルス以上に、この三峡ダム決壊は「起これば極めて大きな衝撃」になるでしょう(世界への拡散迷惑は経済面のみで、コロナほどは大きくないでしょうが)。しかもそれが指摘されるように、設計上の欠陥や手抜き工事にあったとすれば、共産党政権がひっくり返るほどの大きな衝撃が走るでしょう。

 このダムの目的の一つ「南水北調」は、華北地方(特に北京周辺)の水不足を解消するために、南方地域の水を北方地域に送る国家プロジェクトとして考えられたもので、このダムがなくなれば北京の水不足が再発することになり、その影響は長江流域のみではないことが分かります。

 中国人民自身による共産主義の打倒、民主化への可能性よりも、このブラックスワンの飛来の方が、その実現を可能にするかもしれません。もちろん中国市民にとってみれば、飛来して欲しくないのは当然ですが。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)

にほんブログ村 政治ブログ 保守へ
にほんブログ村

2020年5月 7日 (木)

韓国の日本製品不買運動、「不買疲れ?」で下火に

20200106035696854  日本では緊急事態宣言下で「自粛疲れ」という言葉がそこここで聞かれますが、何に関しても長期化すれば疲れや飽きが出てくるものです。長期にわたる安倍政権にも疲れならぬ「ゆるみ」が出ていると、左側の人はよく言います。逆に今までの短期政権の連続よりは、世界の首脳と渡り合うには長期政権はいいことだと私は思いますが。政治の安定の証拠でもあります。

 話は変わって、日本が昨年夏に実施した、韓国への輸出管理規制強化やホワイト国外しの報復として、日本製品不買運動が巻き起こりましたが、今はそれも下火になって来たようです。「不買疲れ」とでも言えばいいのでしょうか。韓国メディアの「マネーS」の記事を引用して、Record Chinaが5月1日に伝えています。タイトルは『韓国の日本製品不買運動は昔の話?「ユニクロの言葉通り」と韓国メディア』です。

 ◇

2020年5月1日、韓国・マネーSは「日本製品不買運動は昔の話…ユニクロの言葉通り」との見出しで、「今年に入って韓国の日本製品不買運動の熱が冷めつつある」と伝えた。ユニクロは韓国で昨年夏に不買運動が始まった際、本社役員の「不買運動の影響は長く続かないだろう」との趣旨の発言が物議を醸していた。

記事によると、4月初めに再販売された任天堂のゲーム「あつまれ どうぶつの森」は短時間で完売した。人気絶頂の中で供給がストップし、限定版でないにもかかわらず転売価格が高騰しているという。任天堂は追加の供給を予定しているが、需要激増に対する品薄状態は当分の間続くとみられている。

また、日本製品不買運動のメインターゲットとなったビールの輸入額も増加傾向にある。今年1月は12万6000ドル(約1340万円)、2月は26万4000ドル、3月は64万8000ドルと、3カ月連続で増加した。自動車の輸入額も1月は前年同期比69.8%減の2129万8000ドルだったが、2月(8454万9000ドル)、3月(7288万7000ドル)は大幅に増加したという。

これに韓国のネットユーザーからは「不買運動を続けているのは私だけだったの?」「日本のゲーム機に行列を作るのは本当に問題だ」「1年も続かなかったのか」「恥ずかしい」「プライドはないの?」など落胆の声が上がっている。

また「これだから日本は韓国を見下し、過去を否定し、謝罪もしない」「情けない。学校の歴史の授業で子どもたちに日本の過去の蛮行をちゃんと教えるべきだ」などと主張する声も。

一方で「不買しようがしまいが個人の自由」「ゲームは許そうよ。コロナ感染拡大防止で家にこもるために買うのだから」との声も見られた。

 ◇

 韓国が日本製品の不買運動をしようがしまいがどうでもいいのですが、これも長期に亘ると出てくる一種の「疲れ」でしょうか。というより単なる「頭にきた」から行う行動は長続きしないのかもしれません。

 ただまだ「頭にきた」状態が長引いている人たちからは、この現象に落胆の声や非難の声が出てくるのは、やはり反日の感情が多くの韓国人に染みわたっているからでしょうか。それも韓国政府のフェイクに踊らされてではありますが。

 4月22日に「親日称賛禁止法」が近く成立か?という記事をデイリー新潮が報じましたが、そんな法律はいくら何でも成立しないと思いますね。ですがあの韓国の事、血迷って成立させたなら、日本も堂々と「韓国称賛禁止法」を成立させればいいでしょう。多くのマスコミ関係者やリベラル人はたちまち窮地に陥るでしょう。そしてその法律の中には、韓国の捏造した数々の「反日の歴史」について、小中高校で教える条文も加えるのもいいと思います。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)

にほんブログ村 政治ブログ 保守へ
にほんブログ村

 

2019年9月28日 (土)

中国でカリスマ経営者が次々に退いていく理由

 今回は元産経新聞記者でジャーナリストの福島香織氏のコラム「中国でカリスマ経営者が次々に退いていく理由」(JBpress 9/26)を取り上げます。副題は「瀕死の中国経済、“ICU入り”で延命措置」です。米中貿易戦争がその背景にあるのでしょうか。以下に氏の記事を紹介します。

Maxresdefault-3_20190928104301  9月10、アリババ創始者で会長だった馬雲(ジャック・マー)が予告どおり引退し、アリババ経営から完全に離れた。ちょうど55歳の誕生日であり、その前後には、中国メディアが彼の功績や評伝を書き立てた。また浙江省杭州から「功勲杭州人」という栄誉ある称号を送られたなど、ポジティブニュースとしてその引退が報じられている。

 だが、その10日後、杭州政府が100人の官僚を「政務事務代表」として、アリババやAI監視カメラメーカーのハイクビジョン(海康威視)、民族自動車企業の吉利など100の重点民営企業内に駐在させると発表した。口の悪いネット民たちは「地主を追い出して田畑を接収しようとしている」と噂した。

 その後、IT企業、テンセント(騰訊)創始者の馬化騰やレノボ(聯想集団)創始者の柳伝志が、馬雲のあとを追うように次々とビジネスの現場から去ることがあきらかになった。こうした“早期退職”は決して早々とセカンドライフを楽しみたいから、といった理由からではなさそうだ。民営企業からカリスマ創始者たちを追い出し、政府官僚による直接支配が始まりつつある。中国民営企業の大手術が始まっているのだ。

 だが、この大手術、失敗するのではないか。「中国経済のICU(集中治療室)入り」と言う人もいる。ICUに入ったまま脳死する可能性もあるかもしれない中国民営経済の危機的状況について、まとめておきたい。

テンセント、レノボの代表も退く

 テンセントの創始者で董事会主席、CEOの馬化騰は9月19日、テンセントの子会社で個人信用情報などを扱う騰訊征信の法定代表職から外れることになった。経営上の問題ではなく、社内の事情によるという。もちろん全面的な退職ではないが、馬雲引退の直後だけに、中共政治のサインと受け取られた。芝麻信用で知られるアントフィナンシャルの会長・井賢棟もこのタイミングで引退を表明した。

 続いてレノボ会長の柳伝志も聯想ホールディングス(天津)の法定代表、役員の職を辞任した。柳伝志は17企業の法定代表、7企業の株主、8企業の役員を務めていたが、そうした役職も大部分が取り消されたという。聯想側は、子会社については随時業務の進行に合わせて、調整、整理しており、今回の人事などは企業としての正常な業務措置だという。

 柳伝志の後任は、深セン市瑞竜和実業有限公司の法人代表である張欣が務める。聯想ホールディングス(天津)は2011年11月に資本金50億人民元で登記され、聯想ホールディングス株式会社と深セン市瑞竜和実業有限公司が50%ずつ出資していた。

 ちなみにレノボグループの筆頭株主は聯想ホールディングス株式会社で25.81%の株を保有、この会社がグループのコアとして北京に登記されている。この北京の聯想ホールディングスの5大株主は中国科学院独資会社・中国科学院ホールディングス、北京聯持志遠管理コンサルティングセンター、中国泛海ホールディングス集団、北京聯恒永信投資センター、柳伝志個人で、合わせて76.81%の株を保有している。

中国共産党が民営企業の改造に着手

 こういった動きについて、チャイナウォッチャーたちの間では、中国共産党政権がいよいよ民営企業の改造に着手した、という見方が出ている。英国のフィナンシャル・タイムズによれば、アリババ傘下の芝麻信用と騰訊征信は、かつて中国政府に顧客ローンのデータを提供することを拒否しており、馬雲と馬化騰の一線からの撤退と関係あるとみられている。

 米国の政府系ラジオ局、ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、こうした動きは中国共産党政府がクレジットローンに関するすべての情報を独占して管理するためのもので、同時に当局が民営企業と工商界の企業に対する改造を行い、実質的にコントロールするためのものだ、という見方を紹介している。

 昨年(2018年)、中国政府はアリペイ(支付宝)に対して顧客勘定の100%の中銀準備預金を義務付けた。これは顧客保護の観点から必要という建前だが、実際はアリペイ口座の余剰資金運用によるアリババの儲けを政府に差し出せ、という意味でもあった。中国「証券時報」によれば、今年6月、7月に国有資産委員管理委員会書記の郝鵬が馬雲と馬化騰に直接、中央企業と民営企業の融合を命じ、中央企業+ネットの混合改造モデルを強化せよと通達したとか。

 ほぼ同じころ、民営企業が多い浙江省杭州市や山西省太原市、北京市などは、政府官僚や党委員会の民営企業に対する干渉を強化する政策を打ち出した。杭州市は、民営100企業内に市政府官僚駐在事務所を開設、太原市では財務管理部門をテスト的に接収するなどの方法で経営にコミットし始めた。北京では党委員会が民営企業内の「党建設工作」展開状況の調査を開始するという通達を出した。

 こうした動きは、建前上は、民営企業の腐敗や野放図な経営を共産党が厳しく管理し、指導するというものだが、実質は、政治上は民営企業を絞め殺し、経済上は民営企業の私有財産を接収するということに他ならない。

計画経済に立ち戻る習近平政権

Xiguoqi1  習近平政権が経済政策の目玉として打ち出している国有企業改革は、いわゆる「混合企業改革」と言われるもので、汚職や不正経営、経営破たんを理由に民営企業の経営権を国有企業に接収させることで、国有企業を大規模化して市場独占化を進め、国有企業を通じて共産党が市場に対するコントロールを強化するものだ。

 これは改革開放期の「国退民進」(国有企業を民営企業に移行することで市場経済化を進める)とは真逆の方向性だとして「国進民退」政策だと言われた。あるいは50年代の「公私合営」政策への回帰とも言われた。この結果、民営企業家たちが委縮し、今の中国経済の急減速の主要な原因の1つになったというアナリストは少なくない。

 目下、米中貿易戦争の行方は中国にとって楽観的な観測を許さない。確実に中国経済にボディーブローのように効いており、経済統計上にもはっきりと予想以上の中国急減速がみてとれる。

 首相の李克強は9月16日、ロシア訪問前にロシアの国営通信社、イタルタス通信に対して、今年通年の中国経済成長が、全人代の政府活動報告で目標に掲げた6~6.5%を達成できずに6%を切る見通しであることを語っている。党中央内部ではその責任を習近平に求める声も強い。一方、習近平政権としては、この経済危機を“計画経済”に立ち戻ることで乗り越えようとしている。その表れが、今年に入っての民営企業のカリスマ創始者の現場からの排除や、党官僚の進駐や財務の接収などの動きだと見られている。

中国経済はすでに瀕死の状態?

 ラジオ・フリー・アジアのコラムニスト、梁京が書いた「中国経済がICU(集中治療室)に入った」というタイトルのコラムを読み、なるほど、と思った。ちょっと引用して紹介したい。

「中国共産党70周年前夜、当局は大型民営企業の直接支配を急ぎ始めた。しかし、中央宣伝部はこういう重大事態の展開について、なんら発表していない。これは中国共産党が50年代に鳴り物入りで行った『公私合営』とはっきりした対比をなしている。つまり当局もわかっているのだ。国家が民営企業に進駐して干渉することが決してよいことではないということを」

「・・・中国の民営企業の経営者たちは党に搾取されっぱなしでいることに甘んじてはいなかった。(元北京の政商であった)郭文貴は造反して米国タカ派の支持を得るようになったが、以降、大型民営企業の経営者の政治的不忠義は中国共産党の悩みの種となっていた」

「現在、共産党が民営企業のコントロール強化を急いでいる背景には、米中貿易戦争が89年の天安門事件以来最悪の危機を中国経済にもたらしていることが大きい。豚肉価格が高騰し、食糧生産規模も年々縮小している。中国は悪性インフレに陥る可能性が高い。・・・中国経済はすでに瀕死に直面している」

「では、かつてゴードン・チャン(2001年に「やがて中国の崩壊が始まる」を書いたエコノミスト)が予測したように、いよいよ中国経済は崩壊するのか?・・・中国経済が崩壊する可能性は実際に増大しているが、さらに大きな可能性は、中国経済がかつて前例のない実験を行う可能性だ。・・・私はそれを“ICU経済”と呼ぼう。つまり共産党による経済管制による延命だ」

 以前、中国の体制側アナリストと雑談をしたとき「バブル崩壊もミンスキー・モーメントも自由主義市場経済の体制で起こるもので、統制経済では起こりえない。だから習近平政権の党による市場コントロール強化政策は正しい」という見方を説明された。梁京の言う“ICU経済”はまさにこのアナリストの説明と同じで、経済を絶対安静にして、呼吸も心拍も中国共産党によって管理して延命しようということだろう。

 梁京は、この共産党による完全なる経済コントロール、“ICU経済”実験を継続するためには2つの条件が必要だという。ハイテク技術、デジタル貨幣などの技術。そして外部世界の中国経済が崩壊しないでほしいという強い願いである。つまりICUで、たとえ多臓器不全でも延命させるためには、それだけの先端医療技術とそれを強く願う周囲の意志が重要だ、ということである。

 だが、延命と回復は全く違う。国際社会の大勢が「中国経済が破たんすれば大変だ、破綻させてはならない」と思っており、中国はハイテク技術と極権体制を持っている。確かに延命は可能かもしれない。だが回復しない経済をただ維持するためだけに、いったい中国はどれだけの犠牲を払うことになるのか。

 今、中国は、老衰で死期間近い、中国の特色ある社会主義市場経済体に、西側グローバル市場で生き抜いてきた民営企業の臓器を移植して延命を図る大手術を行おうとしている、と例えることができる。本当に救わねばならないのは民営企業の方ではないか?

「もし中国人が、中共が自然死を迎える方策を探せないのなら、中国経済はある種の“ICU病室”で奇跡の“長寿”をかなえるかもしれないが、その“奇跡”はすべての人にとって巨大な厄災を意味する」(梁京)

 この厄災を防ぐためにどうするか。それが今考えるべきことではないか、と思う。

 厄災を防ぐためにどうするか、極めて大きな課題ですが、少なくとも共産党による計画経済体制では間違いなく失敗するでしょう。競争を内包しない経済は、恐らく利権と賄賂の温床にはなっても、持続的成長には程遠い気がします。

 確かに中国経済の崩壊が及ぼすその影響は計り知れません。中国人自身ももちろんそれを望まないでしょうから、中から懸命な人々が出てきて、世界に迷惑をばらまく共産党主導のこの「ICU治療室」内の中国経済を死から救ってほしいと思います。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)

にほんブログ村 政治ブログ 保守へ
にほんブログ村

 

2019年9月11日 (水)

韓国経済に忍び寄る「Dの恐怖」

0369  今回は玉置直司氏によるコラム『韓国経済に忍び寄る「Dの恐怖」』(JBpress 9/10)を取り上げます。消費者物価初のマイナス、高齢化、低成長と最近の韓国経済の実態が綴られています。

「あの頃の日本経済について聞きたい」

 9月に入って急にこんな問い合わせが、韓国の産業界やメディア関係者から増えている。

 ついこの間までは、日本政府による韓国向け輸出規制強化や日韓関係についてが圧倒的な話題に中心だったが、突然、変わってきた。

 その理由は、「Dの恐怖」だ。

「あの頃」というのは、日本が長期経済低迷に見舞われた「失われた20年」当時のことだ。「Dの恐怖」とは、韓国での本格的なデフレが始まったのではないかという懸念だ。

消費者物価上昇率マイナス0.04%

 2019年9月3日、韓国の統計庁は、「8月の消費者物価動向」を発表した。消費者物価上昇率は小数点以下1桁までの「公式発表」では前年同月比0.0%。2桁までみるとマイナス0.04%だった。

 1965年に韓国政府が統計を作成し始めてから、消費者物価が公式発表数字で0.0%になるのも、実際にマイナスになったのも初めてだった。

 統計庁の発表の前後、韓国内では、文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)大統領の側近で9日に法相に任命された曺国(チョ・グク=1965年生)前青瓦台(大統領府)民情首席秘書官の各種の疑惑を巡る問題にメディアの関心が集中していた。

 そんな中でも、企業人や経済記者の間では、この「消費者物価マイナス」を「衝撃的な発表」を受け止めた。「毎日経済新聞」は「Dの恐怖襲来」と大きく報じた。

 韓国の消費者物価上昇率は2019年1月に同0.8%となり、それ以来1%を下回る水準が続いていた。ついにこれがマイナスになったのだ。

生活実感は・・・

 韓国での生活実感はどうか?

 2000年代前半までは、韓国も「インフレを警戒する」雰囲気が強まった。

 モノやサービスの価格は、かなりのペースで上昇した。一方で、タクシーや地下鉄、バスの料金、電気、ガス料金など政府が抑えていた。

 最近は、これが逆になっている。

 大手スーパーに行っても、ネットを見てもモノの価格は下がっている気がする。飲食店の価格も上昇が止まったり、「価格破壊型」の店が登場したりする。

 逆に、タクシー、地下鉄、バス料金などは上昇している。

 全体的に言えば、「どんどん上昇する」という実感はなくなっている。かと言って「本格的なデフレが始まった」という実感はない。

 1990年代後半の日本の方が「デフレ」の実感はずっとあった。

8月だけか、広がる不安心理

 韓国内でも、8月1か月だけの消費者物価上昇率で、「本格的なデフレが始まった」という報道はほとんどない。

 2018年の8月は猛暑で野菜の価格などが上昇しており、2019年の8月の消費者物価にはこの野菜類などの値上がり分なども反映してはいる。

 それでも、「そう言えば・・・」と思い当たるふしも少なくない。

 モノやサービスの値下がりはあちこちで目に付く。ネット小売業者は、販売不振をカバーするために価格の引き下げや、配送量の無料化など実質的な「値下げ策」を打っている。

 韓国紙デスクは「企業業績の悪化や世界経済の先行きに対する不安感、株価下落、不動産価格の先行きに対する不透明感などが消費心理にマイナスの影響を与えている」という。

「朝鮮日報」は「最近の日本製品不買運動も消費市場に悪材だ。産業通商資源部は“日本製品不買運動の影響で衣料品の売り上げが大きく減り、7月の百貨店全体の売り上げが前年同月比4%減少した”と分析した」と報じた。

 韓国内の雰囲気は、「1か月だけの数字」ということではないのだ。

「韓国も日本がかつて経験したような長期経済停滞になるのではないか?」

もうすぐ始まる人口減少

 こんな懸念が強まっている背景には、このところ芳しくない統計発表が続いたこともある。

 消費者物価動向が出た前日の9月2日、統計庁は「世界と韓国の人口の現況および展望」という発表をした。

 韓国の人口は2019年現在で5171万人で2028年には5194万人と、この間はわずかに増加する。しかしその後は減少に転じ、2067年には3919万人になると予想した。1300万人も減る計算だ。

 この間、韓国では急速に少子高齢化が進む。65歳以上の人口構成比は2040年に33.9%から2045年には37%になり世界最高水準になる。

 さらに2067年には、46.5%になる。

 同時に、生産年齢人口構成比は2012年の73.4%をピークに減少に転じているが、2019年72.7%、2040年56.3%、2067年45.4%と急降下するのだ。

 生産年齢人口の減少は急速で、これも「長期経済停滞」への懸念を呼んでいる。

 こうした急速な少子高齢化を緩和できる可能性にも言及している。

「南北統一」だ。

 南北を合わせた場合、生産年齢人口構成比は、2019年72.0%から2067年には51.4%へと減少するがそれでも韓国だけの数字より6ポイント高いという。

経済成長率は1%台に下落か?

 芳しくない統計といえば、8月の消費者物価動向が発表になった9月3日、韓国銀行(中央銀行)は、2019年4~6月期の国民所得(暫定値)を発表した。

 GDP成長率は前期比1.0%で7月に発表した速報値よりも0.1ポイント下方修正した。

 韓国のGDP成長率は、1~3月期に前期比マイナス0.4%となった。このため、4~6月期は1%をかなり超える数字になるとの見方もあったが、1.0%増にとどまった。

 これにより2019年のGDP成長率は2%を下回る水準になるとの見方がさらに強まったきた。

 消費者物価上昇率マイナス転換、少子高齢化、成長率鈍化に加え、輸出低迷、企業業績悪化、株価下落、ウォン安・・・。

「毎日の経済面が暗い内容ばかりで、明るい経済ニュースを探せと記者に指示してもなかなか出てこない」。韓国紙デスクは嘆く。

積極財政で景気てこ入れ

 8月の消費者物価同行が発表になった9月3日、企画財政部と韓国銀行の幹部が「マクロ政策協議会」という緊急会議を開いた。

 この席で、消費者物価がマイナスになったことについて、農水産物や石油価格の下落による一時的な数字だと分析、日本型の長期景気停滞期に入ったとの見方を否定した。

 だが、こうした見方に対して、政府系シンクタンクのKDI(韓国開発研究院)は、9月9日に発表した「経済動向」報告書で、韓国経済全般について「最近、内外需要が萎縮して全般的に不振だ」と述べた。

 政府が、農水産物や石油価格など「供給面」の一時的な事情だと分析するのに対し、「需要減」も原因だとの見方を示した。

 専門家の分析はともかく、政府としては「Dの恐怖」などという物騒な言葉が出ている以上は、何とかこれを打ち消さないといけない。

 といって、妙手があるわけでもなく、結局、「財政頼み」にならざるを得ない。

 政府は、8月末、2020年度の予算規模を2019年比で9.3%増やして513兆5000億ウォン(1円=11ウォン)規模とする方針を決めた。

 予算規模が500兆ウォンを超えるのは初めてだ。雇用対策や少子高齢化に伴う対策費など保健福祉労働関連予算が12.8%増の181兆6000億ウォンに膨れ上がるほか、インフラ整備費用も同12.9%増の22兆3000億ウォンに増える。

 積極財政で、経済を何とか下支えし、2020年4月の総選挙で勝利したいという意欲が強くにじむ予算編成になった。

 日本の事情に詳しいエコノミストはこう話す。

「日本も物価下落と少子高齢化が急速に進み、政府は超積極予算を組んだ。景気回復にはつながらず、財政悪化がどんどん進んでしまった」

「今の韓国も経済が悪化しているのだから、積極財政に乗り出すのは良いが、どこまで効果が上がるのか。日本がたどった道を歩むことだけは避けたいが・・・」

Download-4_20190910110701  もう一つ。韓国で最も懸念が強まっているのが、「不動産」の先行きだ。

 家計負債は1500兆ウォンを超えてしまった。その多くは不動産向けだ。いったいどうやって返済するのか?

 日本型不況を恐れる大きな理由はここにある。

「D(=デフレ)の恐怖」が、韓国を徘徊している。

 30年前、日本もバブルの崩壊とともに一気に低成長に突入しました。生産年齢人口の頭打ちから減少へ、それが一つの原因となり経済政策の失敗も重なって、円高による輸出企業への負荷の増大、株や不動産などの資産価格の暴落を経て、デフレが国内経済を襲い失われた20年の到来へとつながりました。

 韓国も当時の日本によく似ています。しかし少子化のスピードは日本より高く、福祉政策もいまいち、国民は借金にあえいでいる状況は日本より格段に厳しいと言えます。文政権下での経済政策は当時の日本と同様失敗の連続です。

 そして韓国経済は日米の投資や技術協力のおかげという面が大きい。その日本や米国に楯突いて自ら墓穴を掘っている現状では、数年後は地獄に陥るでしょう。まさに自業自得のなせる業です。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)

にほんブログ村 政治ブログ 保守へ
にほんブログ村