海外、経済

2023年3月 2日 (木)

中国の不動産バブル崩壊がいよいよ現実に、そして韓国も。経済停滞から下降への序章が始まる?

8_20230228172201  中国の不動産バブルは、いよいよ崩壊の域に入ったと思われます。これまで造るだけ造ったマンションが、「鬼城」と化し、かつ最近では施主が建築費を払えないので工事が途中で止まってしまったマンションやビル(爛尾楼)も多く現れています。

 ただこのバブル崩壊は中国だけではなく、韓国でも起きているようです。日本で30年ほど前に起こった不動産バブル崩壊、今中国、韓国を襲おうとしています。

 その概要を住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、現代ビジネスに寄稿しています。先ずは中国の状況を。タイトルは『怖すぎてマンションが買えない…!中国の不動産バブルが崩壊して起きている、まさかの「ヤバすぎる事態」!』(2/27公開)で、以下に引用します。

30年で100倍以上に達したマンション価格

中国と韓国のマンション市場が、かなり異常な状態となっている。

世界第2位の経済大国にのし上がった中国では、2000年代の高度経済成長期以後、ほぼ一貫してマンション価格が高騰。正確な統計はないが、その値上がり幅はここ30年で数十倍から100倍以上に達するとされる。

北京や上海、深圳などの都心では、日本円にして2億や3億でも買えない物件が多くなっている。これはとんでもないバブルだろう。

一方、お隣の韓国では、2017年5月に誕生した文在寅政権の経済失策で、ソウルの中心エリアではマンション価格が約2倍になった。これも一種のバブルだ。

中国と韓国、我々にとってわりあい身近なこの両国で、不動産市場にバブルが形成されていたのだ。そして今、両国ともにそのバブルが崩壊し始めている。その様子を、少し詳しく見てみたい。

いつ完成するかわからない「爛尾楼」

まず中国。この国では昨年あたりから「爛尾楼」というのが話題になっている。これは、施主が建築費を払えないので工事が途中で止まってしまったマンションやビルのことを指す中国の新語だ。

マンションの場合は、一般消費者が購入契約を結び、住宅ローンの支払いが始まっているのに、住戸が予定通りに引き渡されないばかりか、いつ完成するかも分からない状態。日本ではあり得ない。

日本でもマンションは建物の完成前から販売され、購入契約が結ばれるのが一般的。ただし、日本の場合は「手付金保全措置」が講じられる。デベロッパーなどの倒産でそのマンションが引き渡されない場合、手付金は最終的に保証会社から返還される仕組みだ。

さらに日本の場合、住宅ローンの融資実行はマンションの引渡時点であり、返済開始はその後だ。

中国ではそういった保全措置がないばかりか、ローンの実行は契約時点。返済はそれ以降に始まる。建物の引渡し前から住宅ローンを返し始めるのだ。だから、デベロッパーが建築費を払えなくなって工事が止まると、悲惨なことになる。

中国全土で「爛尾楼」になっているマンションがどれほどあるのか。

「途方もない数字」

やや古いが、2022年7月29日付のダイヤモンドオンラインの記事に、以下のような記述がある。

〈経済メディア「財新網」によると、分かっているだけで「爛尾楼」の総面積は2.31億平方メートル(中略)、「爛尾楼」関連のローン規模は0.9兆元(約18兆円)と、全国の金融機関ローン残高の1.7%に当たるとされる〉

日本円で「18兆円」とは途方もない数字である。1件の住宅ローンが3000万円とすると、60万件ということになる。

日本で2022年に販売された分譲マンションは、全部で7万2967戸(不動産経済研究所)。日本の約8.2年分がそっくり「爛尾楼」になっているのか?

ちなみに、2022年2月1日のAFP記事に出ている中国のマンション価格は「調査対象の35都市における住宅購入の一戸当たり価格は154万1000元(1元=約18円)」。日本円にすると2772万円だ。

「契約したマンションが引き渡されないのに、ローンは支払わなければならない」

そんなことが現実に起こっているのなら、当然消費者側は怖くてマンションを買えなくなる。朝日新聞22年12月1日付の記事では、〈中国国家統計局によると、1~10月の住宅販売額は前年同期比28・2%減。開発も進まず、住宅の開発投資額も同8・3%のマイナスとなった。いずれも今年は1999年以降で最大の下げ幅となる見通し〉とある。

「この程度では済まない」

実際のところ、中国の新築マンション開発はフリーズ状態ではないか。

当然、価格も下がる。以下はロイターの2023年1月13日の記事である。

〈中国国家統計局が16日発表したデータに基づきロイターが算出した2022年12月の新築住宅価格は前月比0.2%下落した。下落は5ヵ月連続。(中略)11月も0.2%下落していた。12月は前年比では1.5%下落し、8ヵ月連続のマイナスとなった。11月は1.6%下落だった〉

実態はこの程度では済まないだろう。物件によっては半値以下に下がっていても不思議はないが、そんな当局に都合の悪い統計数字が出てくるお国柄ではない。

中国の昨年のGDPは3.0%のプラスと発表されている。5.5%が目標であったから、何とか半分をクリアさせたような数字。実際はマイナスであろうと予測している専門家も多い。

おそらく、今年も似たようなものではないか。つまり、中国経済は確実に停滞期に入ったと考えるべきだ。

不動産価格というのは、経済が成長していると上昇し、停滞が続くと下降するのがセオリー。さらに言えば、中国には「マンション在庫が34億戸ある」という報道記事も見かける。話半分にしたところで、過剰在庫になっていることは間違いないだろう。当面このバブルの崩壊現象は続くと思われる。

 以上が中国の状況です。マンション在庫はその多くが売れ残りだとすれば、「鬼城」も膨大な数に上るでしょう。その鬼城は利用客が付いていないでしょうから、それこそ凄まじい不良在庫の山と言えます。今後中国経済に重くのしかかってくるのは間違いないでしょう。

 次に韓国の実情です。タイトルは『一発逆転を狙ったことが裏目に…!韓国の不動産バブルが崩壊して起きている、阿鼻叫喚の「悲惨すぎる現実」!』で、以下に引用します。

人生の「一発逆転」を狙ったことが裏目…

韓国でもマンションバブルが崩壊し、価格が下がり始めたことで様々な悲劇が起こっている。

そういった悲劇の主役たちは、「ヨンクル族」という新造語で呼ばれる人々。その意味は(魂までかき集めて住宅ローンを組んだ人)ということだという。年齢は20~30代。

背景にあるのは、韓国の若年失業率の高さだ。公式統計には表れにくい若年層の「体感失業率」は20%とも25%ともいわれる。

サムスンや現代などの一流企業への採用、もしくは公務員を目指した就職浪人組が多いのが、ヨンクルを生み出した一因とされる。同国の厳しい競争社会の中で、そういった「勝ち組」に入るのはかなり困難なのが現実。

中小企業に就職すると「負け組」と見なされてしまう。「負け組」、あるいはそうなってしまいそうな人々にとって、人生の一発逆転を狙えるのがマンションの購入だった。

相次ぐ経済失政

購入したマンションが値上がりして資産を築けば、彼らは「負け組」から「勝ち組」に変わることができる。韓国人にとって「住宅」は「学歴」や「車の種類」と並ぶ、人生のヒエラルキーを形成する「3大アイテム」と言われている。

ヨンクルたちにとって、時代の巡り合わせも悪かった。

まず、2017年に発足した前大統領・文在寅の政権は、不動産政策で失敗に失敗を重ねる。

文在寅が大統領に就任した頃、世界的な金融緩和を背景に、ソウルでもマンション価格が上がり始めた。それに対して文政権は、マンションの購入に様々な制限を加えることで価格を抑制しようとした。それが逆効果となって、さらにマンション価格が高騰したのだ。

「今買わないと買えなくなる」「買えば必ず価格が上がる」

そんな空気が広がる中、多くの若者は「魂をかき集める」ように様々な借金をして、マンション購入に走った。ところが、まさかの事態が起こる。

9_20230228172301 通貨が弱い「ウォン」の宿命

2022年からアメリカの急速な金融引き締めが始まった。金利の上昇である。

韓国は通貨の弱い国である。自国通貨・ウォンを防衛するため、韓国は金利を上げざるを得ない。

ドル金利が上がったにもかかわらず、漫然と異次元金融緩和を続けて極端な円安を招いた日本とは、対称的である。

韓国銀行は政策金利を2023年1月まで継続して引き上げ、現時点(2月26日)では3.5%となっている。当然、住宅ローンの金利も上がる。主要銀行の住宅担保ローンの変動金利は2022年1月の年3.57~5.07%から、2023年1月には5.27~8.12%まで上昇。

金利が上がれば、不動産価格が下がるのが経済のセオリー。2022年の年央からたちまちマンション価格も下がり始めた。

聯合ニュースの2023年1月16日の記事には、〈昨年12月は全国の住宅価格が前年同月比2.0%、ソウルも2.0%下落し、いずれも単月ベースで03年以降最大の下落幅を記録した〉とある。

これは表面的な数字だ。実際の市場価格は少なくとも10%から20%は下がっていると予想される。

すでにマンションを購入した人にとっても、悲惨な現実を招いている。

「お金がないので昼食を抜く」人も

住宅ローンの返済額が上昇したことで、日常の暮らしを圧迫。

「可処分所得のほとんどがローン返済に消えて、生活ができない」

「お金がないので昼食を抜く」

そんな切ないエピソードが伝えられる。

売却してローンを精算しようにも、値下がりしているので「売るに売れない」状況に追い込まれている人も多い。

さらに恐ろしい話も聞こえてくる。

韓国では現在、日本でいうところの「売れ残り」や「在庫」にあたる「未分譲」と分類されるマンションが約6万8000戸もあると報道されている。

韓国の人口は日本の約4割。日本なら「17万戸」の在庫があるということになる。

2022年に日本で分譲されたマンションは7万2967戸である。そこから考えても、韓国の「6万8000戸」というのは、途方もない数字だ。

韓国のマンションバブルの崩壊は、その傷が癒えるまで何年かかるのだろうか。

中国も韓国も、マンション市場はかなり危機的な様相である。

振り返って日本はどうか?

日本は金利の引き上げ次第

約10年続いた異次元金融緩和は、日本のマンション市場にも地域限定でバブルをもたらした。ただし、その中身は中国や韓国に比べれば、かなり穏やかである。

東京の港区や千代田区あたりで約2倍。23区内の近郊エリアや大阪の都心地区で1.5倍程度。郊外では1.2倍にもなっていないところがほとんどだ。

日本銀行の新総裁が、仮にこの異次元金融緩和を多少修正して金利を引き上げたとしても、マンション価格はひとまず「10年前」水準をめざして緩やかに下落する程度ではなかろうか。

ただし、日本経済に不況感が強まれば「10年前」水準を超えて下落することもあり得る。

 バブル崩壊は必ずやってきます。1991年の日本の株と不動産のバブル崩壊、2008年の米国でのサブプライムローンでのバブル崩壊、そして現在の中国、韓国での不動産バブル崩壊と、続きます。

 不動産や金融商品は上昇が急になれば警戒が必要です。しかしそれに気づいても踊らされてしまうのがバブルです。資本主義下では大なり小なりバブルは発生し、はじけると言います。しかしその程度が大きいと国の経済は危うくなり、長期停滞が続きます。

 韓国はまだしも、中国はその規模からしてかなりリスクが高いでしょう。日本はその点を十分留意して、中国と経済的に交流する必要があるでしょう。間違っても不動産関係のビジネスは避けなければなりません。

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2022年12月 1日 (木)

習近平政権3期目の船出とともに、急速に沈没する中国経済 経世済民には無関心、その先に待つのは

38  中国では最近、3期目に入った習近平政権の元、ゼロコロナ政策による外出制限などの厳しい規制に対し、反発する群衆によるデモが頻発しています。だがここへ来て当局も厳しい対応を取り始めました。この先どうなるか、注目に値するところです。

 一方経済の方も最近発表されたデータから、かなり厳しい状況が映し出されています。そのあたりの詳細を評論家の石平氏が、現代ビジネスに寄稿したコラムから引用して紹介します。タイトルは『逆祝儀相場! 習近平政権3期目の船出とともに、急速に沈没する中国経済 経世済民には無関心、その先に待つのは』です。

10月の輸出急減

今年10月に開かれた中国共産党全国代表大会では、習近平主席は権力闘争において全面的な勝利を収めた。反対勢力の共青団派の面々を党中央から追い出した上で、最高指導部の政治局常務委員会を自らの側近・取り巻きで固めることに成功した。

これで、3期目の習近平政権は政治的にはまさに盤石な独裁体制を固めることとなったが、実は同じその時、政権が成り立つ土台としての経済はむしろ、音を立てて崩れている最中であった。

11月7日、中国海関(税関)総署は10月の輸入輸出関連の数字を公表した。それによると、10月の中国の輸入・輸出総額はドル建てで5115.9億ドル、前年同期比では0.4%減となった。このうち、10月の対外輸出総額はドル建てでは2983.7億ドルで、前年同月比では0.3%減であったという。

つまり10月に、中国の輸入と輸出の両方ともマイナス成長に陥っていることが分かる。輸入のマイナス成長は当然、中国における生産活動と消費活動の低迷を意味する。輸入というのは普通、外国からの生産財と消費財の両方の調達によって構成されているからである。

成長の牽引車

その一方、10月における輸出のマイナス成長は、中国経済にとって実に深刻な問題である。中国では長年、個人消費率が4割未満という慢性的な消費不足が続く状況下で、対外輸出の継続的拡大は中国の経済成長を牽引してきた大きな原動力の1つである。例えば2021年、中国の対外輸出総額(ドル建て)は3兆3640億ドル、前年比では29.9%増であった。そして同じ2021年、中国経済全体の成長率は8.1%である。

つまり、中国の対外輸出が毎年に数十%の急成長を維持しているからこそ、経済がある程度の成長率を維持できた訳である。したがって中国国内でよく使われる表現では、対外輸出の継続的拡大は固定資産投資の拡大と並んで、中国経済を牽引する「2台の馬車」のうちの1台であるという。

しかし今年後半に入ってからは、中国の対外輸出の伸び率は急速に下がってきている。例えば7月の対外輸出は前年同期比で17.9%増であったが、8月のそれは7.1%増となって、9月は5.7増であった。そして10月は0.3%減であることは前述の通りである。

こうしてみると、7月から10月までの中国の対外輸出の伸び率は、17.9%増→7.1%増→5.7増→0.3%減と、まさに連続的な急落の推移を辿ってきていることが分かる。

このままでは、2022年通しての中国の対外輸出の伸び率は10%以下になることがほぼ確実であるが、それは去年の伸び率の3分の1程度。中国経済を牽引してきた輸出という1台の「馬車」はかなり力を失って失速している最中である。

ダブルマイナス成長

だからこそ、世界銀行は9月26日、2022年の中国の実質国内総生産(GDP)成長率が2.8%となり、前年(8.1%)から大幅に減速するとの見通しを示した。だが、実は、中国経済の足を引っ張っているのは何も輸出の失速だけではない。消費の絶望的な低迷もまた、経済の土台を根底から揺るがしているのである。

11月15日に中国国家統計局が発表したところでは、今年10月の全国社会消費財小売総額は4兆271億元で、前年同期比では0.5%減となった。そして1月〜10月の社会消費財小売総額は36兆575億元、前年同期比では0.6%の微増となっている。これでは今年全体の伸び率は確実に1%以下になる見通しである。

それに対して、昨年、2021年の社会消費財小売総額は44兆823億元、前年比では12.5%増であった。それが、今年は1%以下となる。まさに「断崖絶壁からの急落」というべきものであって、消費の伸びはほぼ完全に止まっていることを意味する。

ただでさえ、長年の消費不足が中国経済にとっての大きなネックだったのに、今更のように消費はここまで落ち込んでいるのであれば、中国経済の回復はまったく不可能であると断言して良い。

こうしてみると、今年10月おける、対外輸出の伸び率の0.3%減と、消費の伸び率の0.5%減という「ダブルマイナス成長」は、まるで習近平政権3期目の船出に対する「逆祝儀相場」であったかのようなもので、習政権下の中国経済の暗澹なる未来を予告している。

それでも経済に関心無し

だが、実は今後の中国経済の沈没にさらに拍車をかけていくのはまさに、3期目に入った習政権の示した驚くべきほどの経済軽視の姿勢である。

先般の党大会が終わってから4日後の10月27日、習近平主席は新しい政治局常務委員会のメンバー全員を率いて政権3期目初めての地方視察に出かけた。

その視察先は陝西省延安市、中国共産党が政権奪取の前に長年本拠地にしていた「革命の聖地」である。そこで習主席は最高指導部メンバーに向かって革命精神の代名詞となった「延安精神」を大いに語り、このいかにも時代遅れの「精神」の継承と高揚を国民に呼びかけた。

本来、中国経済が深刻な状況に陥り社会問題も山積する中で、最高指導者の彼に期待されるのはまず、政権3期目の「経世済民」の政策方針を国民に明確に示すことであろう。しかし当の習主席はこのことにまるきり関心がない。

彼にとって最大の関心事はむしろ、古色蒼然の「革命精神」をいかにして継承し高揚するのかという、まさにイデオロギー上の問題である。イデオロギー最優先はやはり、習主席の一貫とした政治的スタンスだ。

イデオロギー最優先・経済軽視

党大会後に習主席が行った一連の重要人事も彼の政治志向を強く反映している。主席側近の李強氏と丁薛祥氏は党の最高指導部である政治局常務委員会に昇進し、来年3月の全人代ではそれぞれ、国務院次期総理(首相)と次期筆頭副総理に就任する予定である。

しかしこの2名は長年共産党の「党務畑」でキャリアを積んできた幹部であって、国の経済運営や民生管理にタッチした実績はなく、中央政府で仕事した経験もない。このような人たちが来年3月からいきなり、中国という大国の経済運営の重責を担うとはいかにも覚束ない。第一、この2人の門外漢コンピでは、沈没中の中国経済の立て直しはもはや絶望的であろう。

もちろん習主席はこんなことをいっこうに気にしない。自らの側近でイエスマンの2人が中央政府を牛耳ることとなると、主席自身肝煎りの「共同富裕」などの社会主義政策は貫徹できればこれで良いわけである。

習主席のイデオロギー最優先・経済軽視路線を端的に示した人事の1つは、広東省共産党委員会書記の新しい任命である。

中国の場合、省の党委員会書記は省長の上に立って全省の政治・経済・民生を統括する立場であるが、中国経済中心地の1つである広東省の場合、党委員会書記を務めるのは普通、経済運営に明るくて実務経験豊富な有力幹部である。

しかし今度、広東省党委員会書記に転任されたのは習主席側近の黄坤明氏、2013年から今年10月の党大会開催までの約9年間、共産党中央宣伝部副部長・部長を歴任した宣伝部の幹部である。宣伝部幹部といえば、硬直なイデオロギーを振りかざしてプロパガンダを行うことを本領とし、共産主義思想の権化そのものである。このような御仁が市場経済最前線の広東省のトップに任命されるとは何かの冗談とも思われるような頓珍漢な人事であるが、一事が万事、習主席のやることはすべてこの調子である。

戦時統制しか考えていないのか

しかしこれでは沈没最中の中国経済はもはや破滅から免れないだろう。だが、おそらく、独裁者としての習主席はこのような結末をそれほど心配していない。なぜならば、彼が自分の政権の3期目おいてやろうとしていることはそもそも経済の立て直しではないからだ。

彼が3期目政権のスタートに当たってまず着手したのは共産党指導部人事による戦時体制づくりであることは10月28日公開の「これは対台湾『戦時体制』だ-習近平3期目政治局の異例人事の意味」で指摘した通りのことであり、彼はこれから全力を挙げて進めていくのはまさに対台湾戦争の準備である。

実際、党大会閉幕約2週間後の11月8日、習近平主席が中央軍事委員会の委員たち全員を率いて解放軍の統合指揮センターを視察し、全軍に対して「全力を上げて戦争の準備を強化せよ」との大号令をかけたことは、日本を含めた世界中のメデイアが大きく注目して報じたところである。

彼はやはりやる気満々である。そして経済が沈没して失業が拡大して国内に社会的不安が広がる中では、習政権はこうした国内危機克服のためにますます対外戦争の発動に傾くのであろうし、対外戦争の発動で国内経済を戦時統制へ持っていけば経済全体の崩壊をある程度食い止めることもできよう。

どうやら習政権にとって、今後の道は戦争の発動以外になさそうである。

 全く物騒な話です。いずれにしろ周囲の状況を考えれば、そう簡単には台湾侵攻はないものと思われますが、なにしろロシアのウクライナ侵略の例もあります。何が起こるか分かりません。日本は粛々と、そして速やかに抑止力拡大のための軍備の充実に向け歩むしかありません。

 ところで経済の衰退、石平氏の言葉通りこの巨艦中国が沈むとなれば、その周辺に影響を及ぼす波は、とてつもなく高く荒れ狂うことになります。このブログで何度も述べていることですが、中国に進出している日本企業は一日も早く撤退することでしょう。たとえそのためのコストが高く付いても、将来のリスクを考えれば早いに越したことはありません。

 経済的な失速と、ゼロコロナによる行動制限が重なれば、民衆の不満は加速するでしょう。そこに治安部隊の圧力が増せば、衝突の末、鎮圧か爆発かいずれかが起こりそうです。天安門事件の時やそれ以前の文化大革命の時に比べれば、国民の情報力は格段に進歩しているので、鎮圧には相当苦労するかも知れません。

 いずれにしろこの一人独裁を崩すのは、民衆の力による中国国内の反体制運動に期待するしかありません。かなり困難で時間が必要でしょうが。

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2022年9月16日 (金)

中国高速鉄道網は経済の時限爆弾か 需要不足で負債120兆円

20220714chinesehighspeedtrain001540x290  以前このブログで、中国の住宅投資について、もう既に34億人分が済む分の住宅ができあがっているという、石平氏の記事を取り上げました。住宅に限らず中国ではGDPの水増しのため、多くのインフラが過剰な投資を余儀なくされているという事情があるようです。

 高速鉄道もその一つで、需要が見込めないにもかかわらず、様々な理由で作り続けている実態があるようです。そのあたりの事情を、産経新聞編集委員で前中国総局長の西見由章氏の記事から引用します。タイトルは『中国高速鉄道網は経済の時限爆弾か 需要不足で負債120兆円』です。

中国の経済発展の勢いを象徴していた〝中国版新幹線〟の高速鉄道網が、中国経済の時限爆弾となるかもしれない。

採算性を無視した路線拡大により、高速鉄道を運営する国有企業、中国国家鉄路集団の負債総額は約120兆円に上る。巨額債務で経営危機に陥った中国不動産大手「中国恒大集団」が抱える負債の3倍近い規模だ。専門家は鉄路集団の巨額負債が重大な金融リスクになるとして、警鐘を鳴らしている。

今年2月に開催された北京冬季五輪では、北京市中心部と同市郊外の延慶区、河北省張家口市崇礼の3会場を結ぶ高速鉄道が整備された。自動運転システムを採用し、最高時速は350キロ。約180キロの距離を50分で結ぶ。総投資額は580億元(約1兆1600億円)を超える。

しかし共同通信が7月中旬に報じたところでは、需要不足のため1日1往復だけの運行となっているという。筆者が高速鉄道の予約サイトで確認したところ、7月下旬から8月上旬にかけては1日5往復が運行されていた。夏の観光シーズンに合わせて増便したのかもしれない。ただそれでも、日本のローカル線より低密度なダイヤだ。しかもほとんどの便でチケットに余裕があった。

すでに五輪開催時に、需要不足の兆しは感じられた。当時は1日十数往復が運行されたが、筆者が利用した際は1両に乗客が数人で、ときには1人ということもあった。コロナ対策のため車両の連結部分を封鎖し、五輪関係者と一般客の接触を厳格に遮断していたが、一般客の姿はほとんど見当たらなかった。

総延長は日本の新幹線の10倍超

中国の高速鉄道は世界トップの総延長4万キロ超を誇る。1999年に河北省と遼寧省を結ぶ路線が着工して以降の20年余りで、日本の新幹線の総延長(約3300キロ)を10倍以上上回るまでに拡大した。

特に2008年のリーマンショック以降は、輸出が低迷し生産過剰となった鉄鋼やセメントを消費するために高速鉄道の路線延伸が加速された。北京と上海・広州を結ぶ〝ドル箱路線〟に刺激され、各地方当局が高速鉄道の誘致合戦を展開。雇用の創出や地方経済の活性化、沿線の不動産開発などを期待したためだが、官僚にとって地域の経済成長は自らの実績となるため、採算度外視の整備計画も少なくなかった。

北京交通大学の趙堅教授は19年、中国のニュースサイト「財新網」に「高速鉄道の『灰色のサイ』を防げ」と題した論評を発表。人々は高速鉄道の、世界に冠たる総延長やスピードばかりに目を向けがちだが、「債務と赤字も世界一」であることに注意を払うべきだと主張した。

灰色のサイとは市場において高い確率で大きな問題を引き起こすと考えられるにも関わらず、軽視されがちな潜在的リスクを指す。巨獣のサイは普段はおとなしいが、暴走を始めると誰も手を付けられない破壊力を持つことから、こうした比喩に使われる。

趙教授は中国の高速鉄道について、一部のドル箱路線以外は輸送能力が大量に遊休状態になっており、深刻な損失を生んでいると指摘する。新疆ウイグル自治区の区都ウルムチと甘粛省の省都蘭州を結ぶ区間(1786キロ)は一日160往復の輸送能力があるにも関わらず、実際は4往復しか運行されておらず「旅客収入だけでは電気代すら賄うことができない」。

趙教授の試算では、高速鉄道のすべての旅客収入を充てても負債の利息支払いが追いつかない状態だという。すでに19年の時点で、借金をして借金を返すという自転車操業になっていた可能性が高い。

稼ぎ頭の路線も低迷

しかも20年1月に新型コロナウイルスが湖北省武漢で感染拡大して以降は、高速鉄道の稼ぎ頭だった路線も収益が低迷。鉄路集団の20年の最終損益は555億元の赤字、21年も498億元の赤字となった。中国メディアによると、21年9月末時点で負債総額は5兆8400億元(約116兆円)に達している。

民間企業の恒大集団とは違い、国策企業である鉄路集団がデフォルト(債務不履行)の危機に陥ることはないだろう。鉄路集団の前身は鉄道行政を担っていた旧鉄道省だ。多くの人々は、最後は政府が巨額債務をなんとかするだろうと考えている。しかし、高速鉄道の建設に投資した地方当局もすでに多額の負債を抱えている。高速鉄道の巨額債務は最終的にインフレなどの「国家的な金融リスクを引き起こすかもしれない」(趙教授)のだ。

さらに高速鉄道の野放図な拡大は、中国の交通システム全体を悪化させる恐れがある。高速鉄道は貨物輸送ができないため、高速鉄道の建設に偏ると貨物輸送の能力低下につながるからだ。しかも鉄路集団は貨物輸送の価格を上げて高速鉄道の赤字を埋めようとしているため、鉄道による貨物輸送のコストが上昇。このため道路輸送を選択する企業が増加して大気汚染が悪化し、社会全体の物流コストも上昇しているという。

それでも延伸は続く

しかし中国当局は、高速鉄道の拡大方針に歯止めをかけるつもりはないようだ。鉄路集団は20年8月に公表した長期計画で、35年までに高速鉄道の総延長を約7万キロまで拡大する方針を示している。

さらに中国政府はコロナ禍で低迷する景気を下支えするため、鉄道建設などのインフラ投資に力を入れる方針だ。国務院(政府)は5月末、鉄路集団が鉄道建設のため新たに3000億元の債権を発行することを認めた。国務院は21年3月、高速鉄道の債務膨張を受けて新路線の建設条件を厳格化する通達を出しているが、これと矛盾した措置だ。債務抑制よりも景気浮揚を優先する姿勢を示したといえる。

中国の急速な高速鉄道網の拡大は、中国経済の勢いを体現していた。インフラ整備のスピード感を著しく欠く日本から見れば学ぶべき点も多いだろう。ただ中国政府が軽視してきた「灰色のサイ」の破壊力は、想像以上のダメージを中国経済にもたらすかもしれない。

 日本でも最近になって、鉄道の地方路線の採算の問題が浮上してきていますが、中国のこの高速鉄道の負債に比べれば微々たるものでしょう。一方の新幹線は黒字経営が続いているようですので、トータルでは問題は現状さほどありません。

 しかし中国の高速鉄道は、住宅投資同様もはや「時限爆弾」そのものです。共産党による一党独裁国家中国のことですから、国全体で取り繕うことで、何とかするでしょうが、将来はまさに悪政インフレの元となるでしょうし、ひいては国全体の弱体化の元凶となり得るでしょう。

 今までの凄まじい経済発展にあぐらをかいてきた付けが、人口減少もスタートし始めるこの先、5年10年の間に出てくる可能性は大きいと思います。日本の経済人もそのこともよく踏まえて、対中ビジネスを考える必要がありそうです。

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2022年8月25日 (木)

石平氏が「地獄の入り口に立つ」と表現する、中国の経済停滞の実態

Images_20220825111801  習近平国家主席の3期目が秒読み段階に入っているようですが、足下では恒大集団の経営危機に象徴されるように、不動産バブル崩壊が現実化し、中国の奇跡の成長の終焉を示す、経済的停滞が始まっているという見方が強くなっています。

 その詳細を、中国に詳しい評論家の石平氏が、現代ビジネスに寄稿した記事から読み解きます。タイトルは『中国よこれで「共産主義国」か!不動産経済崩壊で大失業時代到来とは 地獄の入り口に立つ中国経済・その1』で以下に引用します。

地滑り的沈没

7月中旬から8月中旬にかけて、中国国内の各業界や企業、あるいは政府当局が一連の経済関連数字を公表したが、それらを一目で見れば、中国経済全体は今、地滑り的な沈没が起きている最中であることが分かる。

例えば7月11日、中国汽車(自動車)工業協会が発表したところによれば、今年上半期、中国全国自動車販売台数は1205.7万台、前年同期比では6.6%減となった。

「6.6%減」は数字上では大きなマイナスではないが、裾の広い自動車産業が経済全体に占めるウエートの大きさからすれば、自動車市場の衰退は中国経済にとっての大打撃であることに変わりはない。

7月21日、国内各経済紙が報道したところによると、今年上半期、中国3大航空会社の中国国際航空・東方航空・南方航空は合わせて470億元(約9150億円)の赤字を計上したという。ゼロコロナ政策による人的流動の制限もあって、中国の航空業界は今、未曾有の大不況に見舞われているのである。

IT大手、利益半減

8月10日、中国を代表するIT大手のアリババグループは今年第2四半期の営業成績を発表した。グループ全体の純利益は前年同期比で53%減となったことがこれで判明された。

同じ日に、国内各経済紙が一斉に、アリババに関するもう1つの重大ニュースを伝えた。今年上半期、グループ全体は何と、1万3616人の従業員を解雇したという。言ってみれば利益半減の中で大リストラを断行したわけであるが、アリババが大苦境に陥っていることはこれでよく分かる。

8月12日、今度は中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が上半期決算を発表した。売上高は前年同期比で5.9%減となった一方、純利益は前年同期比ではなんと52%減となった。そして8月17日、アリババと並ぶIT大手テンセントも第2四半期の営業成績を発表したが、純利益は前年同期比で56%減となった。

このようにして、中国を代表する先端企業の超大手のアリババ、ファーウェイ、テンセントが揃いに揃って「利益半減」の憂き目にあったのはまさに前代未聞の深刻事態、中国経済全体の沈没ぶりを表しているのである。

ファーウェイといえば主力製品の1つはスマートフォンであるが、中国のスマートフォン市場も今は縮小中である。8月17日、有力経済紙の毎日経済新聞が報じたところでは、国内調査機関発表によると、今年第2四半期、全国スマートフォン(知能手機)の販売台数は前年同期比で14.2%減となったという。しかもそれは、最盛期の2016年第4四半期の販売台数からの約半減である。

若年失業率20%超

個別の企業や業界の衰退ぶりはさることながら、経済全体の沈没を示すいくつかの重要数字も8月になって公表されている。

8月12日、中国人民銀行が発表したところでは、7月に全国で行われた人民元融資の総額は6790億元、それは前年同期比で約38%減となったという。人民元融資の大幅減は当然企業活動の衰退と投資意欲の低減を意味し、経済全体の沈没を示す格好の数字の1つである。

そして8月15日、中国国家統計局が発表したところによれば、7月においては、16〜24歳若年層の失業率は19.9%に上り、前月より0.6%上昇したという。政府当局が2019年8月にこの統計数字の公表を始めて以来の最高記録である。

もちろんこの「19.9%」という数字にも人為的操作の疑いがあろう。20%を超えないように、ギリギリの線で数字を操作しているかのように見えからである。16〜24歳若年層の実際の失業率はおそらく、20%以上になっているのではないかと思われる。

以上は、7月初旬から8月中旬にかけて中国国内で出回っている一連の経済関連数字を時間列で並べてみたところだが、中国を代表する大企業たちの利益半減にしても、自動車業界や通信機器業界が遭遇している深刻な販売不振にしても、そして金融市場の冷え込みや若年層の失業拡大にしても、諸々の数字が表しているところはすなわち、中国経済全体の深刻な落ち込みぶりである。

中国経済の屋台骨は今、音を立てて崩れている最中である。

「ゼロコロナ政策」が主な原因ではない

問題は、これほど深刻な経済沈没をもたらした要因は一体何だろうか、である。

習近平政権が強行している「ゼロコロナ政策」は当然、要因の1つであろう。今年4月と5月、中国屈指の経済大都会である上海がまる2ヵ月間ロックタウンされて生産・消費活動がほぼ完全に止まった。それが上海だけでなく中国経済全体に与えたダメージの大きさが簡単に想像できよう。

しかしだからと言って、ゼロコロナ政策は中国経済沈没の主因であるとは思えない。今年に入ってから、ロックダウンされたのは上海などの一部の都市であって大半の都市部がロックタウンを経験したことはない。そして上海ロックタウンが解除された6月初頭以後、ゼロコロナ政策は事実上緩和されることとなって重要都市のロックタウンは一度も実行されたことはない。

こうしてみると分かるように、中国経済沈没の主因、特に7月の若年層失業拡大で示されたような沈没の加速化の主因はやはりゼロコロナ政策ではない。

不動産市場と不動産開発業の崩壊

ならば、中国経済をダメにしている主因、つまりその「元凶」は一体何ものなのか。これについては、筆者の持論として1つ申し上げると、不動産市場の急速な冷え込み、それこそは、中国経済全体の沈没をもたらした最大の元凶なのである。

ここではまず、中国政府当局が8月に公表した一連の不動産関連数字を見てみよう。

8月15日、国家統計局はまず、今年に入ってからの不動産市場の大不況を示すいくつかの数字を発表した。今年1〜7月、全国住宅販売面積は前年同期比で27.1%減となって、売上高は前年同期比で31.4%減となった。そして個人による住宅ローンの借り入れ総額は前年同期比では25.2%減となったという。

その一方、今年1〜7月、全国で行われた不動産投資総額は7万9400億元で前年同期比6.4%減。そして住宅竣工面積は前年同期比22.7%減、住宅新着工面積は前年同期比で36.8%減となったわけである。

上述の6つの数字を合わせてみると、今年に入ってからの中国の不動産市場と不動産開発業の惨状は手に取るように分かるのであろう。

不動産市場が急速に冷え込み、住宅を中心に不動産が売れなくなった結果、不動産投資が減り、住宅の新着工面積が激減する。このような現状は、「不動産バブルの崩壊」というよりも、不動産市場と不動産開発業の崩壊の始まりであると言って良い。

不動産投資の上に成り立っている国

そしてこのことこそは、現在の中国経済沈没を作り出した最大の要因ではないかと筆者の私が見ているのである。

例えば2021年、中国全国で行われた不動産投資の総額は14.14兆元(約283兆円)であって、それが同じ21年の中国の国内総生産(GDP)の14%以上を占めている。一国のGDPの14%以上が不動産開発投資によって作り出されているとはまさに世界経済史上前代未聞の話であるが、不動産投資の波及効果を考慮に入れるとその割合はさらに大きい。

実際、「波及効果を計算に入れると不動産投資は中国のGDPの3割程度を作り出している」というのは、中国国内の経済学者たちが公の場でよく口にする台詞の1つであって、いわば常識の部類に入るものである。

だからこそ中国では、不動産開発業が経済を支える「支柱産業」だと普通に呼ばれているが、そうであれば不動産市場と不動産開発業の不況は中国経済全体に与える悪影響は極めて大きい。

前述のように、今年に入ってから不動産は以前のように売れなくなって不動産開発投資と新着工面積が大幅に減少することとなると、経済全体は大きく落ち込む以外にない。「支柱産業」が傾いたら経済全体が沈没していくのは当然のことであろう。

中国の長期停滞が始まった

さらに大きな問題は、中国における不動産市場と不動産開発業の衰退が、今後の長期的傾向となっていくことにある。長年において膨大な不動産投資が行われてきた結果、今の中国では住宅を中心に不動産が作り過ぎで完全に飽和状態となっている。

国内の一部経済学者が「中国全国で既に34億人の住む分の住宅が出来上がっている」と公言していることからしても、「深刻な住宅過剰」は疑う余地のない事実であることが分かる。

このような状況の中で住宅を中心に不動産がいずれか売れなくなるのはもはや時間の問題である。昨年の恒大危機で露呈した開発業者たちの債務問題が表面化して不動産そのものへの信用が落ちてくると、今年になってからはやはり、「不動産が売れなくなる」ことは目の前の事実となっている。

その一方、若年層の失業が拡大し経済全体が落ち込む中では不動産市場のさらなる衰退は避けられない。つまり、不動産市場の繁栄が不動産投資の拡大を生み出し、不動産投資の拡大が経済の成長を支える、という今までの成長モデルそのものがすでに崩壊してしまい、構造上の問題としての不動産市場の止まらない衰退に伴って、経済の落ち込みの継続化は避けられない。

そして不動産市場の衰退はさらに進むと、経済全体において景気はより一層悪化して失業がさらに拡大する、という悪循環が発生してくるから、中国経済は今後より一層の冷え込みに見舞われ、まさに「地獄」へと落ちていく方向に進んでいくのであろう。

 日本のバブル崩壊も、株式等の資産の暴騰の終焉もありますが、その大きな部分は不動産に起因しています。30年遅れで中国にもその波が襲ってきているのでしょう。人口のピークアウトも同時に発生しているのも同様です。

 これからおそらく中国にも、不況の嵐が吹き始める可能性は大きいと思われます。不動産関連で言えば、人口の3倍もの住宅が作られた中国の方がより深刻でしょう。独裁国家ですから、仮に地方の財政を補うため、さらなる住宅やインフラの投資を続けることができても、将来大きな付けとなって経済に跳ね返ってくることは間違いありません。

 輸出で稼いだ資金で国内に過剰な投資をしてきたのですから、この先国内産業の衰退で輸出が停滞していけば、中国の未来は暗澹たるものになるでしょう。今がその過渡期です。日本企業はそのことを念頭に、中国に依存しない体制を敷くようにしていく必要があります。

 ホンダが部品の中国依存から脱する決断をしたのは、その先駆けとして大いに賞賛すべきでしょう。「ホンダに続け」、それが日本企業の合い言葉になるよう期待したいですね。

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2022年1月 9日 (日)

韓国は中国の属国になるか、経済依存度が高くもはや危険領域

M_recordchinarc_887459  今回は中韓の関係の話題を取り上げてみます。経済的な結びつきの大きい両国ですが、韓国の国別貿易額の中国の占める割合が、輸出24.8%、輸入20.5%と、4分の一から5分の一を占めていて、いずれも国別ではトップです。それに対し中国の国別貿易額の韓国の占める割合は、輸出4.5%、輸入9.6%で、順位はそれぞれ4位と1位です。

 韓国にとって中国は貿易の多くを占めているのに対し、中国は韓国とは輸入先としては大きいのですが、輸出先としてはそれほどではありません。しかも輸入先についても日本、台湾、アメリカなどと、金額では大差がないのです。

 つまり韓国にとって中国は経済依存度がかなり大きいと言えますが、中国にとっては多くの国の一つとしての存在でしかない様です。そこでこの2国の関係は主従関係のようになってしまいます。そのあたりの状況をRecordChinaの記事から拾ってみます。タイトルは『中韓国交正常化30年、韓国で中国は”拡大”、中国で韓国は”縮小”=韓国ネット「数十年後には属国?」』(1/3)で、以下に引用します。

 ◇

2022年1月3日、韓国・朝鮮日報は「中韓国交正常化30周年、中国の中の韓国は小さくなり、韓国の中の中国は大きくなった」と題する記事を掲載した。

記事によると、韓国と中国の関係は国交正常化からの30年で貿易量と人的交流において飛躍的に成長した。韓国の対中国輸出は53.8倍、中国の対韓国輸出は29.3倍に増えた。中韓の貿易額は最高を更新している。

しかし最近、中国における韓国の相対的重要性と地位は低下傾向にある。一方で韓国は中国に過度に依存しており、「一歩主義(ユニラテラリズム)」現象が起きているという。

韓国の貿易において中国が占める割合は1992年の4%から2020年は24.6%にまで増えた。一方、中国市場でサムスンスマホの市場シェアは1%未満に下落した。中国の貿易において韓国が占める割合は6.1%だという。

また、中国政府内における韓国の地位は北朝鮮と比べて大きな向上がみられない。中国は駐在大使として韓国に局長級、北朝鮮に次官級を派遣している。王毅(ワン・イー)外相は最近、中国国際問題研究所で2021年の対アジア外交に関して演説し、日本、インド、北朝鮮、韓国、モンゴルの順に言及した。これについて外交界では「中国の官僚の頭の中の優先度順」と分析されている。さらに、韓国で中国大使はVIP待遇を受けており、大企業関係者と自由に面会して重要情報を蓄積しているが、北京の韓国大使が大使館の外で中国社会の高位者と会うことは制限されているという。

韓国において中国はほぼすべての領域で強い存在感を放っている。韓国国税庁によると、2017年から外国人が購入したマンション2万3167世帯のうち中国人が取得した物件は1万3573世帯と集計された。韓国の大学に在学中の中国人留学生は5万9774人に達し、外国人留学生全体の半分を占めている。大学からは「中国人留学生がいないと経営が成り立たない」との声が出るほどだという。

一方、中国における韓国の存在感は徐々に薄くなっている。ある北京在住の韓国人は「数年前までは韓国ブランドの広告をよく見かけたが、今はまったくない」と話した。中国政府は現在も韓国語を公式外国語(英語・日本語・ドイツ語・フランス語・スペイン語・ロシア語・アラビア語)に含めていないという。

韓国産業研究院によると、中国の国内総生産(GDP)において両国貿易が占める割合は2006年に5%に迫っていたが、20年は1.9%に減少した。中国が韓国から輸入する品目は減少傾向にあるが、韓国は相変わらず中国の原材料などに依存している。国交正常化直後に中国は韓国から技術や中間財を調達し、互恵的な関係を築いていた。しかし中国が半導体や素材分野で韓国を追い上げ、その関係が変わりつつあるという。

この記事を受け、韓国のネットユーザーからは「ほぼすべての産業で中国に依存しているから、数十年後には中国の属国になっているのでは?」「韓国は自国民より中国国民が自由に暮らせる国になりつつある」「文大統領はなぜ中国に何も言えないのか。北朝鮮のせい?」「恥ずかしい。なぜこんな国になってしまったのか。日本に強く、中国に弱いだなんて恥ずかしすぎる」「こんな状態なのに外国人にも投票権を与える韓国はどうかしている」「中国とは協力関係を縮小し、米国や欧州と拡大していく政策が必要だ」などの声が寄せられている。(翻訳・編集/堂本)

 ◇

 日本の経済的な中国依存にも警鐘が鳴らされていますが、韓国はもっと酷いようです。もともとその昔両国関係はまさに主従の関係だったのが、今またそういう関係になりつつあるようです。そして日本に対しては悪態の限りをつく韓国ですが、中国にはからっきし弱いのが見て取れます。

 その根底には経済的依存度以外に、日中の軍事力の差がそうさせているのもあるでしょう。日本もこの韓国の反日、侮日を押さえるためにも、しっかりした軍事力を備え、外交的発言力を増大させる必要があるでしょう。もうこの先二度とユスリ、タカリをさせないためにも。

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2021年10月28日 (木)

英エコノミスト誌:中国の成長に急ブレーキをかけたトリプルショック

Img_f77f70c9b1618bc174c9471c5605fbff1699  中国は今、不動産王手の恒大集団の経営危機が取り沙汰されていますが、不動産に限らずいくつかの要因が重なって、成長に急ブレーキがかかろうとしています。共産党一党独裁による特殊な経済運営で、この経済停滞を乗り切れるのか、世界が注目していると言っていいでしょう。

 そのあたりの事情を英国エコノミストが公開した記事を、JBpressが掲載していますので以下に引用します。タイトルは『中国の成長に急ブレーキをかけたトリプルショック 石炭不足、コロナ禍、建設減速がそろい踏み』(10/27 英エコノミスト誌 10月23日号)です。

 ◇

 2006年公開のドキュメンタリー映画「Manufactured Landscapes(邦題:いま ここにある風景)」に、風景写真家のエドワード・バーティンスキー氏が撮影許可を求めるシーンがある。

 中国・北京に近い工業都市の天津で、出荷を待っている中国産の石炭の山々を撮りたいというのだ。

 案内人は怪訝な顔を見せるが、写真家の助手が「カメラのレンズと先生の目を通すと、あの山は美しく見えるんでしょう」と言って納得させる。

 この推測は完全に正しいとは言えないことが分かる。

 写真家のレンズを通してとらえられた石炭の山の連なりは黒ずんでいて、悪魔を連想させる姿をしている。必ずしも美しいわけではないが、その莫大な量には畏敬の念を覚える。

5%を下回る水準まで成長が減速

 これらの写真を眺める限り、中国でこの燃料が不足するようなことは想像しがたい。だが、ここ数カ月間、かの黒いピラミッドはそれほど大きなものではなくなっている。

 中国で発電用燃料のほぼ3分の2を占める石炭が不足していることが、過去10年で最悪の停電を招く一因になった。

 そしてその停電は経済成長に打撃をもたらしている。

 バーティンスキー氏の案内人は、空が薄暗く汚れていることの言い訳として「中国経済は非常に速いペースで発展しているんです」と語る。

 だがそれも、もう完全に正しくはない。

 中国経済は三重のショックに見舞われている。

 上記の停電だけでなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックや、不動産デベロッパーの恒大集団の資金繰り問題によって悪化した不動産業界の減速にも悩まされている。

 10月18日に発表された第3四半期の経済成長率(前年比)は4.9%で、前期より低下した。

 9月の鉱工業生産指数伸び率(前年比)もわずか3.1%にとどまり、世界金融危機の際の最低値をも下回っている。

 COVID-19の登場から1年半あまり経って、パンデミック以前には耳にすることのなかった低い成長率が公表されている格好だ。

複数の要因から生じたエネルギー不足

 エネルギー不足から順番に見ていこう。

 今回の石炭不足の原因は、構造的なものと偶発的なものとに分けられる。不運な出来事には、7月に河南省、今月には山西省でそれぞれ洪水が発生し、いくつかの炭鉱が閉鎖を余儀なくされたことが含まれる。

 加えて、中国の石炭生産のおよそ4分の1を担う内モンゴル自治区では、汚職の調査が行われ、以前であれば採炭の拡大を承認していたかもしれない当局幹部の一部が関与を問われ、身動きを取れなくなっている。

 中国第3位の石炭生産量を誇る陝西省では、習近平国家主席も出席する9月の全国運動会開催に合わせて空をきれいにするために、石炭生産を減らしていた。

 保安検査官も石炭増産に待ったをかけた。中国では昨年100件を超える産業災害が発生したために、976の鉱山に調査が入った。

 石炭不足のさらに深い理由は、中国が石炭への依存度を低下させようとしていることに求められる。石炭は、この国の二酸化炭素排出で大きな割合を占める。

 政府当局はここ数年、新しい炭鉱の開発や既存の炭鉱の拡張の承認に消極的だ。

 エネルギー・コンサルティング会社ランタウ・グループのデビッド・フィッシュマン氏によれば、炭鉱拡張が「間違った方向にバスを走らせているのは明らか」だからだ。

 供給がタイトになると、本来は価格が上昇し、顧客が節約を余儀なくされる。だが、石炭価格が急上昇しても、発電事業者はコストの上昇を顧客に転嫁できなかった。

 電力の大半を購入している送電事業者に請求できる価格は、基準価格より最大10%しか引き上げることができない。しかも、この基準価格は頻繁には変更されない。

 また、最終需要者が支払う電気料金も、同じようにあまり変更されない料金表に基づいて請求された。

 発電事業者のなかには赤字で運営することを拒み、発電をやめたところもあった。

コロナ禍に不動産ショックが追い打ち

 パンデミックも中国経済にショックをもたらした。

 7月に南京で始まったクラスターをはじめとする感染拡大を受け、地域限定の厳しいロックダウン(都市封鎖)が導入され、小売支出(特に食事の出前)と旅行が落ち込んだ。

 旅行予約サイトのフライトマスターによれば、8月の旅客機の稼働率は50%に満たず、9月に入っても3分の2にとどまっている。

 とどめは不動産セクターへのショックだった。

 中国の経済成長、雇用、レバレッジ、そして不安を常にかき立ててきたエンジンに当たるセクターだ。

 規制当局はマンションの投機需要の抑制と住宅建設業者による過大な借入の制限を試みている。金融セクターのリスクを抑えようとするこの取り組みのせいで、以前から存在していた危険の一部が正念場を迎えることになった。

 負債総額が3000億ドルに達する巨大デベロッパーの恒大集団は、9月24日にドル建て社債の利払いを見送った。他社もこれに続いた。

 そのため住宅購入者のなかには、どの不動産開発業者に対しても頭金の支払いをためらう動きが出ている。

 予約販売しているプロジェクトの物件が完成する時まで、開発業者が存続できない恐れがあるからだ。

 こうしたことを背景に、中国の9月の国内新築着工は前年同月に比べて13.5%減っている。床面積で計測される不動産販売も同程度減少した。

 セメントや鉄鋼の生産も急激に落ち込んでおり、前者の9月実績は前年同月比13%減、後者は同14.8%減となっている。

 中国の中央銀行は10月15日、不動産業界は総じて健全であり恒大集団は特異なケースだという見解を示した。

 これを聞いた人は安心するはずだったが、政策立案者は不動産セクターの苦境について相当懸念しなければ救済には動かない。

 規制当局が不安になることが、住宅建設業者とその債権者の不安を緩和するための必要条件の一つなのかもしれない。

 ほとんどの経済学者やエコノミストは、中国の経済成長率(前年比)は第4半期にさらに低下すると見込んでいる。

 バンク・オブ・アメリカは基本ケースとして2.5%の成長を予想している。中国はCOVID-19への警戒を続けるだろうし、不動産セクターの不振はさらに悪化する余地がある。

足元の石が崩れたら跳ぶしかない

 しかし、3つのショックのうち1つは、年末にかけて少なくともパンチ力が若干弱くなるはずだ。

 発電所は不動産デベロッパーとは異なり、遅まきながら当局から支援を得た。炭鉱には増産の指令が下った。

 10月19日には中国で最も重要な計画機関が、石炭価格があまりにも高い水準にとどまるなら介入すると脅しをかけ、石炭の先物価格が急落した。

 川上部門での価格介入の脅しは、川下部門の自由化に向けた大きな一歩に続く動きだった。

 中国政府は今後、発電事業者が送電事業者に原価上昇を販売価格にもっと自由に転嫁できるようにする。

 また、商工業者の顧客には料金表に書かれた料金ではなく、市場での交渉で決まった電力料金の支払いを義務づける(一般世帯や農家は対象外)。

 こうした計画は長い間検討されてきたものだ。だが、急な危機の発生によって実施を強いられた。

 前出のフィッシュマン氏は、政策立案者たちは以前、「市場原理の緩やかな導入」好んだかもしれないが、「国中の工場の明かりが消え始めたことで」状況が変わったと話している。

 中国は、川を渡る時には川底の石の状態を足で探りながら進むのを好む。

 だが、足をかけた石が崩れてしまったら、あとはもう跳ぶしかない。

 ◇

 跳ぶしかないとはどういうことかよく分かりませんが、実際のところ跳べればいいが、跳ぶ前に転ばないでしょうか。いずれにしても共産主義下における中国式自由経済は、今やどんどん計画経済化し、本来の共産主義経済に近づいているようです。そうなれば経済の自然発生的な需給調整による効率化は図れず、ますますいびつな形になっていくでしょう。中国の今はその途上にあると言ってもいいと思います。

 その結果以前にも増して当局による統制が強まり、進出している日本企業にもかなり影響が及ぶことが予測されます。統制が酷くなる前に撤退が可能な企業は、是非その時期を早めるよう望みます。はた迷惑な「中国の夢」を追うこの国の経済が減退し、その覇権の勢いが鈍ることを願ってやみません。

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2021年10月 6日 (水)

韓国経済を直撃する「中国・恒大ショック」の本当の怖さ、日本もしっかり対応を

Img_c7c9df081bf4ad631080232bf6e0f4999199  中国の不動産大手恒大の経営危機がもたらした影響は、米国を初めとする世界の株式市場にショックを与えました。その後同社の当面の借入金利の返済が可能となったことで、現在は小康状態を保っていますが、この問題の根は深く予断は許せません。中国の不動産バブルの崩壊が予測され、景気の先行きに大きな影が差しているからです。

 この問題の影響は、とりわけ中国経済への依存度の高い韓国が大きいようです。そのあたりの事情を法政大学大学院教授の真壁昭夫氏がPRESIDENT Onlineに寄稿していますので、以下に引用します。タイトルは『マンション下落、半導体不足…韓国経済を直撃する「中国・恒大ショック」の本当の怖さ 日本経済も悪影響は避けられない』(10/4)です。

 ◇

中国への依存度が高い韓国にも悪影響が

足許、中国経済の減速が鮮明化している。国家統計局が発表した9月の製造業PMI(購買担当者景況感指数)は、景気の強弱の境目である50を下回った。中国経済減速の主な要因に新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念がある。それに加えて、中国恒大集団(エバーグランデ)の債務問題などの影響も大きい。当面、中国経済の減速はさらに加速する恐れがある。

足許の世界経済を見ると、感染再拡大によって主要国経済の回復ペースが弱まっている。その上に中国経済のさらなる減速が加わるインパクトは大きい。わが国をはじめ欧米諸国にもマイナスの影響が波及することは避けられない。中国への依存度の高い代表例の一つが韓国だ。

今後、中国経済の減速がさらに鮮明となれば、輸出を中心に韓国経済の回復ペースは弱まるだろう。輸出の減少は韓国のGDP成長率の低下要因だ。文在寅政権にとっても、重要な下押し材料になるはずだ。

感染再拡大、アリババへの締め付け、エバーグランデ…

中国経済の減速懸念が、これまでに増して強まっている。

8月の住宅価格、小売り、工業生産、固定資産投資などの主要指標は前月から悪化した。春先以降の景気減速のトレンドが、ここにきて一段と鮮明化した格好だ。その要因の一つとして、新型コロナウイルスの感染再拡大のインパクトは大きい。感染再拡大によって中国では経済活動に欠かせない動線が絞られた。その結果、8月の飲食店売り上げは前年同月の実績を下回った。感染再拡大によって、港湾施設や鉄道などの物流も停滞している。

感染再拡大に加えて、中国共産党政権がアリババなどIT先端企業への締め付けを強化し、株価が下落したことも景気にマイナスだ。中国本土では個人による株式取引の割合が大きい。株価の下落は負の資産効果を高め消費者心理を圧迫するだろう。夏場の豪雨も中国経済を下押しした。

さらには、大手不動産デベロッパーのエバーグランデの債務問題が深刻化したことも、景気減速の鮮明化を加速している要因だ。同社の今後の展開は、共産党政権の意思決定にかかっている。基本的に共産党政権は、エバーグランデが経営破綻に陥り無秩序なデフォルトが発生することは防ごうとするだろう。しかし、今後、同社をめぐる展開には不透明要素も多い。

世界経済に影響を与える2つのパターン

エバーグランデの問題が世界経済に与える影響を考えるとき、まず同社の米ドル建て社債の返済について見ておく必要がある。米ドル建て社債の発行残高は195億ドル(約2兆円)だ。その影響の波及経路は、直接的、間接的に分けられる。

直接的な影響は、米ドル建て社債がデフォルトし、それを保有する投資家が損失を被るパターンだ。この場合、楽観はできないが、主要国の金融機関のリスク管理体制等を考えると損失をそれなりに吸収することは可能だろう。

一方、デフォルトの間接的な経路を通じた影響は、世界経済にかなりの負の影響を与えるはずだ。デフォルトが発生すれば、エバーグランデの取引先や他の不動産業者の業況や、中国経済を支えてきた不動産市況が悪化して景気の減速が加速化するだろう。世界第2位の規模を誇る中国経済の一段の減速は、主要国の輸出の減少などの経路を通って世界経済全体にマイナスになることは間違いない。

8月まで好調だった韓国経済は減速する恐れ

中国経済の減速に大きく影響される国の一つが韓国だ。

韓国経済の成長の源泉に位置付けられる輸出に関して、対中輸出(香港含む)は全体の約32%を占める。基本的に、中国の消費、生産、投資が増加基調で推移する場合、韓国では中国向けを中心に輸出が伸び、景気は回復する。その逆もまた真なりだ。8月まで、韓国の輸出は地域別には中国や米国向けが伸び、品目別には半導体や石油化学製品などが増加した。それが韓国の景気回復を支え8月には利上げも実施された。

ただ、今後、中国経済の減速スピードによって、輸出を中心に韓国の経済にはマイナスの影響が波及し、回復ペースが追加的に鈍化する恐れがある。8月のように中国の消費などの減少基調が強まれば、対中輸出の増加ペースは弱まるだろう。感染の再拡大によって中国から韓国への旅行需要の回復に時間がかかることも経済成長にマイナスだ。

また、足許の中国では石炭不足を背景に電力の不足が深刻化している。電力不足によって中国では生産活動が停止、あるいは制限され始めている。中国での生産活動がさらに鈍化すれば、韓国が中国に輸出してきた石油化学製品や機械などへの需要は落ち込むだろう。

マンション下落、飲食、半導体不足…中国以外のリスクも

それに加えて、もし、エバーグランデのデフォルトが発生すれば、中国経済の減速の勢いは一段と強まるはずだ。その展開が現実のものとなれば、韓国の輸出だけでなく、消費、企業の設備投資にもかなりのマイナスの影響が波及するだろう。中国不動産市況の悪化はソウル周辺のマンション市況を悪化させ、韓国家計の債務リスクが高まる展開も想定される。

9月上旬以降、韓国総合株価指数(KOSPI)の上値は重い。その背景には、エバーグランデのデフォルトリスクの高まりなどによって中国経済の減退が加速し、対中依存度の高い韓国経済に負の影響が及ぶという主要投資家の懸念がある。

韓国は中国以外の景気下振れリスクにも直面している。感染再拡大による動線寸断によって、韓国の飲食、宿泊、交通などの景況感は下押しされやすい。それに半導体不足の影響が加わり、自動車の生産が減少している。

日本経済にとっても他人事ではない

中国経済のさらなる減速リスクは、わが国経済にとって他人事ではない。

昨年5月ごろから、わが国の工作機械受注は、主に中国の需要に支えられて増加した。感染再拡大によって動線が寸断され飲食、宿泊、交通などサービス業の業況が強く下押しされる状況下、それは不安定ながらも緩やかな景気持ち直しを支えた要素の一つだ。見方を変えれば、わが国の経済は自力で回復することが難しい。なぜなら、わが国には世界の需要を獲得できるアップルのiPhoneのような完成品が見当たらない。

そのため、主要投資家は日本株を世界の景気敏感株とみなしている。その意味は、世界経済が良くなれば、それが支えとなってわが国の経済が上向くということだ。今後、中国経済の減速の加速化が鮮明となれば、わが国の自動車、工作機械、半導体部材などへの需要は低下するだろう。

経済と社会の両面で閉塞感が高まってしまう

中国経済以外にも、わが国経済を取り巻く不確定要素は多い。まず、さらなる感染再拡大のリスクがある。例えば韓国ではワクチンの接種が急速に進んでいるにもかかわらず、新規感染者が増加している。ウイルス変異も含め、わが国でも再び感染が再拡大し動線が絞られて経済に下押し圧力がかかる展開は否定できない。

早ければ11月にFRBがテーパリングを開始し、2022年には利上げを実施する可能性も浮上した。目先、米金利には上昇圧力がかかりやすい。それは、中国など新興国からの資金流出圧力を高め、世界経済の成長下振れ懸念は増す可能性がある。世界的な供給制約の深刻化などによりわが国の物価上昇圧力も増すだろう。

今後、政府に求められることは、世界の主要投資家が日本経済の中長期的な成長を期待できる成長戦略を立案し、しっかりと実行することだ。具体的には、企業の生産性向上、および素材や機械分野で米中の双方から必要とされる企業を増やさなければならない。そのためには、労働市場などの規制改革が欠かせない。それが難しければ、中国経済の減速などによってわが国の株価は調整し、経済と社会の両面で閉塞感が高まる恐れがある。

 ◇

 既にこのブログでも中国の電力事情は紹介しました。加えて不動産バブル崩壊懸念やコロナ禍の影響など、中国経済への負の影響が増す中、中国に過度に依存している国の経済的なリスクは大きいでしょう。韓国のみならず日本もその依存度は高く、このブログでも再三指摘しているように、依存脱却へ向けて急ぐ必要があります。

 幸い岸田新政権においては、経済安全保障政策がスタートし甘利幹事長や小林担当大臣に、その手腕をおおいに発揮して、中国への依存度を引き下げていただきたいと思います。高市政調会長の政策手腕にも期待します。

 また真壁氏の指摘通り、日本独自の成長戦略、特に岸田政権が提唱する科学技術に立脚した、新しいイノベーション戦略のもと、世界市場に競争力を持った新製品を開発していく必要があります。それが中国依存から脱却するための大きな柱となるよう、強力に推進することを願います。

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2021年10月 1日 (金)

習近平の「信念」が起こした大停電 経済活動、地域住民の生活が大混乱

12_20211001092201  日本を含めて世界中で今、脱炭素の動きが加速していますが、化石エネルギーに頼らない世界が本当に近い将来やってくるのでしょうか。中国も習近平国家主席が、カーボンニュートラルの宣言していますが、最近の石炭の価格高騰とオーストラリアからの石炭禁輸で、各地で停電が頻発しているようです。

 今朝の民放でも取り上げられたこの問題、ジャーナリストの福島香織氏が、JBpressに寄稿したコラムから、その詳細を見ていきたいと思います。タイトルは『住民にとってはたまらない!習近平の「信念」が起こした大停電 予告のない電力供給停止で経済活動、地域住民の生活が大混乱』(9/30)で、以下に引用して掲載します。

 ◇

 9月下旬、中国の東北3省の多くの都市で相次いで大規模な停電が発生した。23日、瀋陽の公道では信号が消えたため渋滞が起こり、マンション、ビルではエレベータが止まり、断水し、食事が作れなかったりトイレが流せない状況が起きた。停電時間は短くて5時間、長い場合は十数時間に及び、断水は2日に及ぶところもあった。携帯電話が充電できず電子決済ができなかったり、親戚と連絡が取れない状況も起きた。パソコンが使えないから仕事もできない。学校は休校。一部商店ではロウソクで営業するありさまとなった。

 予告なしの突然の電力供給停止であったため、一部工場や家屋では、石炭火力を使った装置や暖房の排気のための換気システムが止まり、一酸化炭素中毒などの事故も発生した。たとえば9月24日、遼寧澎輝鋳業有限公司では、停電で排気システムが止まり、鋳造用の高炉から発生するガスによる一酸化炭素中毒で工員23人が遼陽市内の病院に運び込まれた。

突然の大停電が経済活動、市民生活を直撃

 この停電について地域住民は地方当局から一切説明を受けていなかった。

 9月26日、吉林市新北水務有限公司(水道会社)は微信のオフィシャルアカウントで、次のような公告を出した。

「国家電力網公司(ステート・グリッド)の要請に応じ、東北電力管理局と吉林省エネルギー局は電力使用の優先順位にあわせて、不定期、不定時に非計画、非通知の電力供給停止、電力使用制限を実施します。この措置により2022年3月まで、停電や断水などが常態化します」

 この通知をみて、地元の企業や住民たちが真っ青になって飲料水やロウソクを買い占めに走ったのは言うまでもない。

 さすがに、この公告は地元の不安を引き起こしたとして上層部から厳しい叱責があったようで、新北水務公司は27日に再度SNSを通じて公告を出し、次のように釈明した。

「臨時停電によって供水地域のユーザーに対して臨時断水が引き起こされるとの懸念から、弊社アカウントはユーザーの皆様に適時に水の備蓄を準備してもらうよう(26日のSNSで)注意を促しました。ですが、この通知には不適切な言葉遣いと不正確な内容があり、ユーザーの皆様に誤解を生んでしまいました。深く責任を感じ、厳粛に対応し、会社の規則に厳格に則って関連の責任者を処遇します」

 こうした電気・水道企業の慌てぶり、混乱ぶりが示すように、今回の東北大規模停電は尋常ではない事件だった。

 中国で計画停電、電力使用制限措置は珍しいことではない。雨季の大洪水や冬季の大雪害による送電網の寸断、乾期の水不足によるダム湖枯れの水力発電不足、あるいは国家的大規模イベントの開催に合わせて空気のきれいな青空を演出するために火力発電所の稼働時間を制限したりして電力が逼迫することもあった。だが、今回の大規模な予告なしの電力使用制限、停電の背景は、もっと複雑にいろんな問題が絡み合っている。

 まず、これまでの電力使用制限措置は、主に工業用電力に対して計画的に行われてきた。だが今回の東北停電は計画的でなく、地域住民の生活にも混乱をもたらした。東北はすでに冬が始まっており、この調子で民生用電力にも影響が及び続けるようであれば、これから零下十数度から数十度の極寒地域での人々の生活安全すら脅かされかねない。

 なぜ、このような広範囲にして突然の電力供給制限が今秋、中国で起きたのだろうか。

背景に石炭火力発電の電力不足

 多くの人たちが想像したのは、習近平政権が導入している「エネルギー消費双制御」(総エネルギー消費制御、エネルギー消費強度制御)政策によるものではないか、ということだった。

 実のところ電力供給制限はメディアで騒がれている東北3省(吉林、遼寧、黒竜江)だけでなく全国範囲で散発している。特に9月中旬以降、全国の多くの省で電力使用制限措置を取らざるを得ない状況に陥っていた。中でも、江蘇、雲南、浙江などの省の電力使用制限は、中央の「2030年カーボンピークアウト・2060年カーボンニュートラル」政策における温暖化ガス排出削減目標を達成するために、地方政府が企業に対して電力使用制限を要請したものだった。

 一方、広東省、湖南省、安徽省などの電力使用制限措置は、電力逼迫が主な原因だった。昨年(2020年)から顕著になっている石炭の高騰により、発電企業は赤字削減のために発電量を圧縮した。電気料金は政府により低価格で抑えられているため、原料の石炭が高騰すれば、電力企業は発電所を稼働させるほど赤字になる。しかも、習近平の政策では温暖化ガス削減目標が掲げられているのだ。この結果、電力会社の発電量は、新型コロナ流行から脱して生産量、輸出量が回復してきた企業・工場の電力需要を下回ってしまい、こうした地域は産業の優先順位に従って工場ごとに稼働時間を割り振ったり計画停電を実施する措置がとられた。

 だが、東北地域の大停電は、政府による「エネルギー消費双制御」政策とは関係なく、計画停電でもないという。

 遼寧省でも実のところ7月以降、広東省などと同じように電力逼迫は起きており、9月10日から計画停電措置が導入され、プライオリティの高い産業から優先的に電力が割り振られるようになっていた。だが、そうした逼迫状況に加えて、9月23~25日の気候変化のせいで風力発電量が急落した。この地域の送電網は一般に50ヘルツで稼働している。49.8ヘルツ以上が安全閾値で、これより低くなると電力系統の安定維持のために出力抑制や負荷(需要)遮断が行われる。遼寧では急激な電力不足による周波数低下が起きたため、この安全措置が取られたのだった。同様の停電はたとえば2019年8月9日に英国で発生している。

 遼寧では今年1~8月、社会用電力使用量が前年同期比で9.47%増え、電力負荷が過去最高になっていた。これは新型コロナ禍から社会・経済活動が急激に回復したことにもよるものだ。

 同時に習近平政権の打ち出すカーボンニュートラル目標、温暖化ガス排出制限目標に従って火力発電所の稼働が次々と停止されていった。それを風力など再生可能エネルギーが補う格好になっていたという。2020年末の段階で、東北3省の電力供給バランスは、火力発電が63%、風力発電が18%、太陽光8%、水力7%、原子力4%。だが、中国「財経」誌によれば、遼寧の火力発電出力は設備容量の半分ほどにとどめられていたという。このため、発電量が気候の変化で急減する風力発電に頼る部分が大きくなったことが、周波数低下リレーによる負荷遮断を引き起こした要因といえる。

 直接的な原因は、風力発電量の急落だが、その背景には石炭火力発電の電力不足がある。

 石炭火力発電の電力不足は、カーボンニュートラル政策のための発電所の稼働停止と、全国的な石炭不足、石炭価格の高騰による電力企業の発電量圧縮が原因である。

 石炭が高騰している理由は、カーボンニュートラル政策を掲げたことから石炭採掘への投資が大きく落ち、石炭生産量の伸びが減速中であることに加え、習近平の戦狼外交が招いたオーストラリアとの関係悪化により、オーストラリアからの石炭購入を昨年以来取りやめていることが挙げられる。石炭価格は環渤海石炭価格指数によれば、昨年1月に1トン当たり550元前後だったのが、今年9月には750元前後に高騰。中国の石炭の備蓄量は昨年1月の段階では2億2000万トン近くあったのが、今は1億2000万トンを切りそうな状況となっている。

 業界内の事情通が財経誌に語ったところによれば、東北地域で1990年代以降、こうした大規模な電力使用制限措置が取られたことはなかったという。そもそも東北の電力需要は沿海部ほど高くなく、長らく電力不足とは無縁であった。東北送電網はむしろ、河北や山東へ電力輸出をしていたくらいなのだ。このため、東北地元政府が電力不足による電力使用制限の対応に慣れておらず、また送電網の電力制御の経験も不足していたことが、今回の混乱に一層の拍車をかけたという。

 とりあえず、東北3省からの省外への電力輸出はすでに一時停止している。このため山東、華北地域の電力供給も逼迫してくるとみられている。

習近平の譲れない政治目標

 こうした背景をみると、今回の東北大停電の問題は一時的なものではなく、かなり長引く問題ではないかと思われる。そもそもなぜ電力が逼迫しているかというと、すべて習近平の政策がもたらしたものだ。たぶん、それは最初から分かっていたことである。

 おそらく習近平としては、経済成長を犠牲にしても譲れない政治目標がいくつもあるのだろう。2030年までのカーボンピークアウト、2060年までのカーボンニュートラル実現もその1つだ。不動産バブルの圧縮も、インターネットプラットフォームや教育、文化、エンタメ産業のコントロール強化も、結果的には成長産業の目をつぶし、民営企業家を委縮させ、GDPにはマイナスの影響を及ぼすだろう。だが、自らが考える理想の中国、共同富裕社会への道、そして自らの政治権力集中のためならば、経済や人民の暮しを犠牲にすることに躊躇しないのが、習近平の性格なのだろう。

 目下、程度の差はあれ、電力使用制限措置が取られているのは20省に拡大している。人民にとっても企業にとっても厳しい冬になりそうだ。そんな中で、北京冬季五輪が国威発揚とばかり華々しく豪華に開催される。それが習近平の理想とする共同富裕社会らしい。

 ◇

 こうした中国の最近の動向から、日本もこれを対岸の火事とせず、火力発電所の縮小を再生可能エネルギーだけに頼ることなく、原子力発電を有効に使用していく必要があると思います。幸い新総裁の岸田氏は原発再稼働に前向きなので、できるだけ速やかに再稼働を進めると共に、将来的にも安全性の高い原発の新設を計画して欲しいと思います。

 またこの停電に限らず、習近平氏の政治目標が、その多くは経済を停滞する方向なのは、歓迎すべきでしょう。中国の覇権主義や戦狼外交は、経済発展があってこそ成り立ったわけですから、今後経済力が弱まればその動きにも歯止めがかかってきます。そして日本企業もできるだけ早く中国の束縛から解き放たれるよう、中国からの撤退や縮小を進めて欲しいと思います。

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2021年9月 6日 (月)

1人当たりGDP、日本は韓国に追い越されている?

1_20210906163401  今回は政治を離れて、経済的な話題を取り上げます。1980年、今から40年前の日本のGDPは1.11兆ドル、中国は0.19兆ドル、韓国は0.07兆ドルでした。つまり日本は中国の約6倍、韓国の約16倍という、完全にこの二国を引き離していたのです。

 ところが2019年には日本5.08兆ドル、中国14.28兆ドル、韓国1.65兆ドルと、中国には3倍近くに引き離され、韓国にも1/3のレベルまで追いつかれています。この間中国、韓国とも高度成長し、中国は75倍、韓国も23倍となっているのに、日本はわずか4.6倍にしかなっていません。特に1995年以降はドルベース換算では、全くと言っていいほどGDPは頭打ちです。そうです、失われた20年(あるいは30年)です。

 こうした中、中国はその過大な人口のため、一人あたりのGDPはまだ日本に及びませんが、韓国はかなり肉薄してきているようです。特に購買力平価で換算した一人あたりのGDPは、2018年あたりから既に韓国に抜かれています。そのあたりの事情を金融・経済の専門家の小川博司氏が、JBpressに寄稿したコラム『韓国に1人当たりGDPを追い越されて久しい日本の浮上は可能か 日本経済に依存しているとして無視するか、謙虚に改革を進めるか』(9/4)から引用してみます。

 ◇



  IMF(国際通貨基金)が公表している1人当たりGDP(2017年の物価水準で見た購買力平価<PPP>)で、日本は2018年に韓国に追い抜かれた後、その差は拡大している。

 実は、2017年の段階で欧米中の経済専門家(日本人も韓国人も含まない)は韓国が日本を追い抜くことは難しいと見ていた。その後、2019年にIMFが「2023年に1人当たりGDPで韓国が日本を追い抜く」との予想を出した時も、ワシントンで日本を研究する学者からは「何を馬鹿な」との声が上がった。だが、結果を見れば、もっとひどくなっている。

 2019年時のIMF予想では、2023年の日本の1人当たりGDPが4万1253ドルなのに対して韓国は4万1362ドルだった。この時の予想では、2024年に日本が4万1666ドルで韓国が4万2392ドルと、その差は徐々に開いていくという流れだった。だが、現実を見れば日本の成長力の停滞は続き、韓国の成長力が増して両国の差は拡大した。

 なお、1人当たりGDPを単純計算したドルベースでは、2020年で日本は4万416ドルと韓国の3万1496ドルを大きく上回っている。2021年も、ドルベースでは日本が4万2927ドル、韓国が3万4865ドルと日本の方が高い。日本では、この数値を見て安心している人が多いようだが、世界はPPPベースを見ている。

 この傾向を元に戻すことは可能なのだろうか。また、日本は1人当たりGDPの劣後を気にする必要はあるのだろうか。2つのポイントで見ていく。

多くの部分で日本に依存している韓国

(ポイント1):韓国の経済成長は日本の支援を受けてのものなので気にする必要はない

 この見方のベースにあるのは、「韓国は日本に依存した経済だ」という考え方だ。かつての通貨スワップ(日本円と韓国ウォンの一定額をあらかじめ決められた為替レートで交換する協定。韓国にとっては日本による信用補完というメリットがある)や、2019年に話題になったGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)に基づく日本からのデータ提供など、韓国は見えないところを含め、多くの点で日本に依存している。

 言ってしまえば、韓国は今も日本の都道府県の一つというようなものだが、実際は独立国である。日本はいつまでこの状況を続けるのか、真剣に考える時期が来ていると言える。

 ただ、日本が自分の意思で韓国を救わないという選択を下せるのかどうかは別問題だろう。米国に韓国を助けるよう指示されることも十分にありうる。

(ポイント2):韓国の方が民主的に国家を運営している結果との見方

 法制度および実際に両国で起こっている問題を単純に見ると、「民主主義の浸透」という点において、韓国は日本よりもはるかに劣っている。これは、世界中の誰も反論しないだろう。

 ところが、韓国も民主化を進める努力をしており、また日本のように長年の慣習を気にする必要がないため、大きく変わる可能性を秘めている。日本の場合、戦前からの法制度のシステム、もっと言えば江戸時代からの慣習もあり、ドラスティックな変化は難しい。

 例えば、9月に実施が決まった自民党総裁選や10月末には任期満了を迎える衆院選について、現段階では政策論争のようなものはほとんど行われていない。しかも、自民党総裁選は公職選挙法の対象ではないので、ある意味では何でもありの世界だ。

 一方、韓国は現時点で大統領選(文在寅大統領の任期は来年5月まで)の立候補予定者12人が討論会をしている(討論の様子)。その中では、様々な理由をつけて日本を叩く「ジャパンバッシングを止める」とする意見も出ている。

いい加減、韓国をライバルと認識すべき

 この討論会は、あくまでも米国の大統領予備選討論会のマネであり、韓国人に民主主義の智慧があるという主張に反対する日本人は少なくないだろう。ただ、少なくも1~2カ月の間に決まる新たな国のリーダーがどのような政策を持っているか、メディアもほとんど報じない日本のシステムに比べれば、よほど健全だろう。

 こうした草の根レベルの変化は、時間と共に蓄積されて韓国の力になっていくだろう。継続は力なりだ。

 このように、既に韓国は日本よりもうまく国家を運営しており、その結果が1人当たりGDPに現れている。そして、それは今後さらに拡大していく──。これが2つ目のポイントだ。

 つまり、韓国は日本からの支援を利用する反面、反日感情をうまく使って日本に追いつき、追い越すというベクトルで一致している。この韓国に対して、日本は経済面を含む全体の競争相手として意識すべき時が来ている。

 ◇

 大方この記事のご意見に賛同しますが、次の3つの点を指摘したいと思います。

1.「韓国の方が民主的に国家を運営している」との見方は、あくまで5年交替の大統領制度を元に考えているようですが、その交替時点での政策論争より、任期中の権力を笠に着た豪腕な法改正や金権政治、家族や知人への優遇策が、いつも問題になって、大統領退任後の逮捕につながっていることからも、日本より優れているとは思えないことです。

2.また日本の総裁選も今回については複数の出馬表明者が出て、おそらく政策論争が行われるでしょう。さらには政策をテレビを中心としたメディアが報じないのは、政策を取り上げても視聴率が稼げないといった、メディア側の事情の方が大きいと思われます。メディアは駆け引きやお互いの好き嫌いのような、個人の感情や性格の問題を真っ先に取り上げ、面白おかしく報道する方が視聴率をとれると思っているようですから。

3.「日本は経済面を含む全体の競争相手として意識すべき時が来ている」、それはその通りだと思いますが、更に進めて、戦後一貫して反日・侮日を意図的に繰り返し、子供時代からの嘘で固めた反日教育で作り上げた、国民の反日感情に訴えて人気を取る政策を続けている、こうした敵性国家には、それなりの対応が必要です。つまり非韓三原則(助けない、教えない、関わらない)、一歩進めて五原則(三原則+盗ませない、来させない)を実行していくことが、今後の対応の仕方として肝要だと思います。

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2020年9月28日 (月)

日系企業1700社が中国から移転へ 日本政府の支援策受け

Images-5_20200927203601  米中の対立の狭間で日本の立ち位置、とりわけ対中姿勢の取り方が菅政権の大きな外交課題になっています。もちろん日米同盟下にある強固な米国との関係からは、中国とはつかず離れずという姿勢を取らざるを得ないでしょう。

 ただ香港問題やウイグル・モンゴル問題、それに最近の台湾への中国の強硬な態度など、アメリカが中国に特に関心を寄せている問題に対し、アメリカから何らかのシグナルがあれば、無視できないのも事実です。

 産経新聞など保守的な新聞では、「習近平国家主席の国賓来日を白紙撤回せよ」、というように、中国に強く出ることを望んでいます。民主主義国家としては、度重なる中国の人権無視の政策は無視できないでしょうし、私もそう思います。

 しかし同時に経済に目を向ければ、1万社を超す中国への進出企業や、その他の中国との交易を主としている企業はあり、おいそれと敵対するわけにはいかな事情があります。従って時間はかかるにしても、半ば人質となっているその企業を、可能な限り撤退させるしかありません。

 実は「週刊ポストセブン」が報じる記事で、そのスタートが切られたことが分かりました。タイトルは『日系企業1700社が中国から移転へ 日本政府の支援策受け』(9/27)で以下に引用します。

Images-6_20200927203701  今年7月末現在、中国からの移転を決めた日系企業が約1700社に達していたことが明らかになった。米国政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。

 新型コロナウイルスの大流行によって、中国内の日本企業などでの生産が滞り、日本に物品が届かなくなる“サプライチェーン(流通網)の寸断”が発生。これを受けて、日本政府は今年4月、中国進出日系企業のなかで、中国からの移転を決めた企業に補助金を出すことを決め、移転補助金の申請を受け付けていた。

 申請は2期に分けて行われており、6月末までの第1期期間中に移転補助金を申請した企業は87社で、政府は総額574億円を承認している。

 第2期分の締め切りは7月末で、合計1670社から申請が出され、総額では165億7000万ドル(約1兆8000億円)に達した。日本政府は当初、約2400億円の予算を計上していたが、今後、予算を増額するとみられる。

 中国メディアは日本政府のサプライチェーン強化策について、「日本企業が中国から離れるのは短期的には現実的ではない」と伝えていた。しかし、一方で山東大学金融学部の司令本教授は、「新型コロナウイルスの流行で、日本企業は中国にサプライチェーンを集中するのはデメリットが多いと同時に、中国における人件費の上昇や貿易障壁など多くの不確実性があることに改めて気が付き、その結果、中国離れが加速していったのではないか」と指摘している。

 帝国データバンクによると、中国に進出している日本企業は約1万3600社だが、今回の中国からの移転を決めた企業は1757社で、中国進出企業全体の約13%となる。

 また、日本貿易振興機構(JETRO)が2019年に実施した日本企業の調査では、中国での製造コストは日本を100とすると80だが、ベトナムは74、カンボジア65、ミャンマーは60となっており、中国の製造コスト高は否めない。

 これについて、RFAは専門家の話として、中国ではこの10年間で、人件費が大幅に上昇するなど、日系企業は中国での投資コスト高で苦しんでおり、このような状況下で年初から中国で新型コロナウイルスが大流行し、日本政府が中国からの移転を促進する政策を打ち出したことで、「渡りに船」とばかりに中国からの移転を決めた日系企業が多くなってきたのではないか、と報じている。

 記事によると移転を決めた企業はまだ全体の13%だそうですが、今後ともこの政策は強化してもらって、少なくとも過半の企業が移転することを望みます。第2期分までで、予算をはるかに超える補助金申請となっていることからも、予想以上に移転を望む企業が多いと言うことでしょう。

 コロナ対策で数百兆の予定外の出費をしていることからも、コロナの発生源国から早く撤退することが望まれます。そして人権だけではなく、外国企業への不当な扱いなど、世界でもリスクの最も高い国からは早く退散したほうがいいでしょう

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