和田政宗氏:日本は「一国平和主義」を完全に捨てよ! 憲法改正により自衛隊の足枷を取り払う時期だ
5月3日の憲法記念日を迎えて、日本は地球上の200あまりの国の中でも極めて珍しい、80年近い間一文字たりとも憲法の条文を変えていない国だということを、改めて思いました。しかもそれは、占領下における占領者(GHQ)の手になるものであるにもかかわらず。
その憲法に縛られて、「専守防衛」「必要最小限の防衛力」のもとに、日本の主権を揺るがす幾多の領土事案や拉致被害にもさらされてきました。更には西側の多くの国が支援している、ウクライナへの軍事支援にも、攻撃兵器の支援が出来ない状況です。
自民党参議院議員の和田政宗氏は、この憲法のもとでの平和対応を、一国平和主義として、月刊hanadaプラスに『日本よ、「一国平和主義」を完全に捨てよ!』(5/02公開)として、コラムを寄稿しています。以下に引用して掲載します。
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日本も独自にウクライナを支援しているが、果たして十分な支援と言えるのだろうか。国民の間において、「人を殺傷するような武器の輸出までするのはどうか」という疑問があるが、「日本だけが守られ、平和であればそれで良い」という考え方はもはや通用しない。
憲法9条によって平和が守られてきたのではない
5月3日は憲法記念日である。日本国は「憲法9条によって平和が守られてきた」という人たちがいるが、実際に我が国を外国の侵略から守ってきたのは自衛隊であり、自衛隊を支え我が国を断固守るという国民の意志であり、同盟国米国の存在である。
一方で、これまで日本は「一国平和主義」的な立ち居振る舞いをしてきた。しかし、国際的に安全保障環境が緊迫し、ロシアによるウクライナ侵略のなか、もう「一国平和主義」的考えは日本は完全に捨てるべきであり、安倍政権が掲げた、世界の平和と安定のために積極的に取り組む「積極的平和主義」をさらに強化していく必要がある。ひいてはそれが我が国の世界的重要性を高め、我が国の平和を守ることにつながるからだ。
我が国はこれまで、「日本だけが守られ、平和であればそれで良い」という考え方でも平和を維持することができた。防衛力の強化と日米同盟の強化でそれが可能だったのだ。しかし、中国や北朝鮮、ロシアといった想定できない軍事行動を取る国が出現し、第三次世界大戦が起こるかもしれないという国際情勢はこうした環境を完全に変えた。
NATOは軍事的に緊密に連携し多国籍部隊をポーランドに派遣して自らを守るとともに、隣接する侵略国ロシアに立ち向かうため、ウクライナに戦車を供与するなどして支援している。日本も独自にウクライナを支援しているが、果たして十分な支援と言えるのかを考えなくてはならない。
日本は防衛装備移転三原則により、共同開発国を除き、殺傷能力のある武器を輸出することは極めて困難である。国民の間において、「人を殺傷するような武器の輸出までするのはどうか」という疑問があることからもそうした状況が続いてきた。
しかし、侵略国に立ち向かう国を支える状況は、「明日は我が身」と言えるものであり、もし日本が外国から侵略を受けた際に、支援国に「我が国はここまでしかできません」と言われたら、それでも感謝をするとは思うが、正直なところ「もう少し力を」と思うはずだ。
ウクライナへの軍事支援は可能か?
日本は現在、ウクライナに対して防弾チョッキ1900着、ヘルメット6900個を支援しているが、例えば自衛隊において順次退役させている多連装ロケットシステム(MLRS)は、ウクライナが各国に供与を希望しているものだ。現状の防衛装備移転三原則では、直接的な輸出は無理である。
しかし、退役した装備は「防衛装備品」ではなくなることから防衛装備移転三原則からは離れ、その後の処分についての方策は取りようがある。さらに、防衛装備移転三原則そのものを見直すことも考えるべきである。
繰り返しになるが、こうしたことはこれまで我が国においては考えられてこなかったし、議論もされてこなかった。一国平和主義の観点で、避けてきたとも言える。しかし、それではもう侵略国に立ち向かえなくなってしまったし、侵略国の横暴を許せば世界各地に波及してしまう。
日本はロシアと国境を接している。日本の弱腰姿勢や一国平和主義的考えは、ロシアが日本に対し侵略を始めるきっかけとなる危険性がある。ロシアは絶対にそんな考えを持たないと考えるのはあまりに楽観的である。事実、ロシアはウクライナを侵略したし、ウクライナで行っている虐殺や暴虐行為は、ソ連が満州侵攻において日本人に対して行ったことと全く同じである。
日本人と同様の苦しみの下に置かれているウクライナを最大限支援することは、我が国の責務である。
積極的平和主義を今こそ全面展開すべき
4月21日、スーダンに在留する邦人を国外に退避させるため、C-130輸送機1機がジブチ共和国に向け出発した。
我が国のウクライナ支援は、軍事的観点のみならず経済的観点も重要である。ウクライナ政府がTPP11への加盟申請を近く決定する方針であるとウクライナの通信社が伝えたが、私にも同様の情報がウクライナ関係者よりもたらされている。
TPP11は日本がリーダーシップを取って実現した経済連携協定であり、日本がその中心にある。もしウクライナより正式に加盟申請があればそれを認め、経済的にウクライナを支えるとともに、自由で適正なルールに基づいた貿易連携による各国の経済の安定と「経済同盟」により世界の平和を守っていく責任が日本にはある。
そして、日本が経済面だけでなく安全保障面で積極的に貢献しリーダーシップを取っている事例は、すでに大きな実績を挙げているものがあり、大いに参考とすべきだ。
それは、アフリカ・中東のアデン湾、ソマリア沖における自衛隊の海賊対処行動である。今回、スーダンからの日本人脱出の支援地となったジブチには、海賊対処行動のための自衛隊初の海外拠点が2011年から設置されている。
2008年の国連安保理決議以降、日本はこの地域に護衛艦と哨戒機を常時展開し、日本の護衛艦は、24時間365日、1日も欠かさずアデン湾で哨戒活動を実施し、哨戒機もほぼ毎日、哨戒飛行を実施している。海賊対処行動は、自衛隊派遣部隊が各国派遣部隊に対し担当海域を割り振るなど、日本が中心となっている。
これにより、年間200件以上あったこの海域での海賊事件は、今では被害なしという状況となった。また、2019年のジブチの豪雨と洪水災害の際には、延べ277人の自衛隊員と車両30両で、ジブチ市内の小・中学校の排水作業や支援物資の輸送を行った。こうした貢献はジブチ国内のみならず、世界各国から感謝をされ、日本の外交的地位を高めている。
日本は積極的平和主義を今こそ全面展開すべきである。アデン湾、ソマリア沖における海賊対処行動のみならず、地域の平和維持活動や侵略国への対峙において、国連の枠組みがなくとも日本は積極的役割を果たすべきである。
現行憲法を押し付けられてから76年。日本は戦後レジームから脱却し、安全保障面でも経済面でも世界のリーダーとなり平和に貢献するよう俯瞰的な行動と政策を打っていくべきだ。
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防衛装備移転三原則に限らず、安保三文書改定の中でも引き続き踏襲されている、「専守防衛」や「反撃能力の必要最小限の保持」など、自衛隊の足枷となる部分は改訂されていません。これは所謂現行憲法の呪縛と言っていいでしょう。
この平和憲法が、世界に向けて平和日本の発信源となっているという、護憲論者に対して、「日本の外交力を弱め、日本への攻撃を容易にする、日本にとっては危険な憲法」だと、はっきり申し上げたいと思います。
結果として北方領土を略奪されても、あるいは竹島を不法占拠されても、手も足も出せなかった、そして今も出せない状況を作っています。更には拉致被害者を出し、また奪還できないのもそうでしょう。
スーダンでは旨くいきましたが、アフガニスタンをはじめ、それ以前の邦人救出がその度に困難を極めたのも、憲法下の自衛隊の足枷がその要因となっています。
占領初期のGHQが、共産主義者に支配された状況で起草されたこの憲法は、明らかに日本の弱体化を狙ったもので、独立後も一文字も改訂しなかったのは、ひとえに政治家の不作為と言えるでしょう。早期に憲法を改正し、ポジティブリストをネガティブリストに変更し、自衛隊に多くの権限を与え、真の日本および日本国民の防衛組織とすることを願いたいと思います。
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