医療と政治

2020年5月26日 (火)

コロナ感染対策の最中(さなか)での、立憲民主の「不徳」の実態

2020051200000016jct0004view  昨日の新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言の全面解除を受けて、最後に残った5都道県の休業要請、自粛の解除が動き出しました。今後は第2波の発生を抑えつつ経済の回復を目指す、難しいかじ取りが続きます。いずれにしろ政府や自治体の自粛要請に応えてきた業者や国民の、強い協力があったからこそ収束できたことは間違いないでしょう。

 そうした中で政府に対し与党に限らず、野党からも様々な提言がなされました。だが野党第一党の立憲民主党の動きは、必ずしも感染拡大防止に対する、国民へ向けた真摯な動きではなかったようです。本日の産経新聞の記事から引用掲載します。タイトルは『支持低迷の立憲民主 コロナ禍で見えた「3つの不徳」』(千葉倫之氏 5/26)です。

 立憲民主党の支持率が低迷している。産経新聞とFNNの合同世論調査では4月時点で3・7%、5月も5・9%にとどまっている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い安倍晋三政権が国民の厳しい視線にさらされる中、なぜ野党第一党が批判の受け皿になれないのか。いくつも理由は挙げられるだろうが、コロナ禍であらわになった立憲幹部の「3つの不徳」を指摘したい。

 不徳の第1は「傲慢さ」だ。上から目線と言い換えてもいい。端的な一幕は5月11日の参院予算委員会だ。

 「私が言っていることについて答えてください」

 「全く答えていただけませんでした。残念です」

 コロナ問題をめぐり、福山哲郎幹事長が政府諮問委員会の尾身茂会長に恫喝まがいの言葉を浴びせた一件はネット上で大炎上した。

 立民幹部は、一斉休校や布マスク配布に際しては「首相官邸が専門家の意見も聞かずに決めた」と批判していたはず。自分たちが専門家の誠実な答弁に耳を貸さず、怒声を浴びせる姿は傲慢で言行不一致だ。福山氏は謝罪したものの、蓮舫参院幹事長はその後も、福山氏を擁護するツイートを引用して投稿し続けた。

 傲慢で攻撃的な態度が政府・与党側だけに向けられたものであれば、まだ理解できなくもない。しかし、「身内」相手にも、上から目線の態度が目立つ。破談に終わった国民民主党との合併協議で、枝野幸男代表や福山氏は「何か勘違いしているのではないか」「何を言っているのか分からない」など、公の場で国民の玉木雄一郎代表を軽んじるような発言を繰り返していた。

 そんな立民も、コロナ禍に際しては政調を中心に、政府・与党と協調し、家賃補助や学生支援など、苦しむ人々の救済に動いている。国民のための与野党を超えた協調は歓迎すべきことだが、立民幹部の発信には疑義がある。不徳の第2は「手柄の横取り」だ。

 「私たちは2月から緊急事態の宣言を求めてきました」

 枝野氏は政府による緊急事態宣言の発令を受け、4月6日にそうツイッターに投稿した。先見の明を誇ったようだが、枝野氏は3月4日には「現状は緊急事態宣言の要件を満たした状況ではない」「安易な緊急事態宣言は避ける必要がある」と記者団に語っている。

 実は、2月時点から宣言発令を主張していたのは国民民主だ。玉木氏は2月22日の党大会で「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を発し、できることを全てやり切るべきだ」と語っている。

 全国民への一律10万円の現金給付も、国民民主が各党に先駆けて提唱した政策。野党統一会派の提言にも採用されたが、もともと立民は冷淡だった。ところが、政府が10万円支給にかじを切った途端、幹部らは「私たちは一貫して10万円」(枝野氏)、「野党がずっと主張してきた」(福山氏)と誇った。

 「野党」や「私たち」が統一会派を指すとすれば嘘ではない。しかし、さんざん玉木氏らを軽んじながら、成果だけは一緒にいただこうという姿は見ていていい気分がしない。

 「人のふんどしで相撲を取る」やり方は、今に始まったことではない。

 「桜を見る会」問題を掘り起こしたのは共産党だ。検察官の定年延長に関する一連の問題に火がついたのも、立民ではどこか浮いた存在だった山尾志桜里衆院議員の質疑がきっかけだった。その山尾氏は「(党の)風通しが悪い」と言い残して離党している。

 そんな状況では支持率低下も無理はないと思うが、ここに第3の不徳「責任は人に押し付ける」が加わる。高井崇志衆院議員は緊急事態宣言の最中に「セクシーキャバクラ」で遊興し、立民を除籍となった。4月21日の記者会見で、支持率低下の理由を問われた福山氏は「高井議員の不祥事が原因と考えている」と言ってのけた。

 「汗は自分でかきましょう、手柄は人にあげましょう」を政治信条としたのは自民党の竹下登元首相だった。人の心をつかみ、組織を掌握し、ゆくゆくは大仕事を成し遂げるための一つの要諦といえる。

 立民にかかわる人すべてがそうだとは言わないが、「傲慢で、人の手柄を取り、責任は押し付ける」というスタイルでは、人の心は離れていく一方ではないだろうか。

 傲慢なのは立憲民主だけではなく、共産党もその上を行く存在です。中朝という東アジア国家の流れを汲んでいるのでしょうか。いずれにしろ日本国民は「謙虚さ」を好み、この「傲慢」な態度にはとりわけ不快感をもちます。それが分かっていないのでしょうか、それとも地で行っているのでしょうか、枝野氏、福山氏、辻元氏、蓮舫氏、いずれも政府に対しての批判発言は傲慢そのものです。

 確かにコロナ対策に関してはそれまでの批判一辺倒から、提案型へ少し舵を切り替えた感じはしますが、傲慢さとパクリと責任回避があっては支持率は上がるはずはありません。結党時の十数パーセントの支持率は半分以下に落ち込んでいるのもそうしたことが原因だと思います。

 以前からこのブログで取り上げているように、日本がよくなるためには与党とまともに議論できる、与党の穴を埋めるべくしっかりした政策を提案できる、そういった野党が出てくる必要があります。そして数千万の歳費に見合う仕事をしてもらわなければ、全くの税金泥棒と言わざるを得ません。そうなるように国会議員改革をどうしていけばいいか、制度面での議論が急務だと思います。

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2020年5月21日 (木)

コロナ収束間近、羽生善治棋士「強制力なくても外出自粛。すごい国」

12  本日関西3府県の緊急事態宣言が解除されるようです。国の示した直近一週間の10万人当たりの感染者数0.5人以内を3府県とも大幅にクリア―しました。関東4都県と北海道は引き続き継続です。関東の千葉、埼玉は0.5人未満ですが東京、神奈川が上回っていて、その影響下にあるからだそうです。残りの3都道県のうち東京、北海道が今一歩、神奈川は残念ながら院内感染が多く、昨日時点で1・08人ともうしばらく解除の基準まで届きません。

 この指標だけではなく、病院の空きベット数や人工呼吸器の数などが参考にされるようですが、いずれにしろ上記2地区を除いた他の地域は、ほぼ収束に向かっているものと思われます。これからのこの感染症に対する焦点は、第2波を防止するためにどうするか、に移っていくものと思われます。

 4月7日に緊急事態宣言が出されたときは、遅すぎたとの批判が多く出され、私もそう感じていました。その後の感染拡大が4月中続いたことから、その批判通りになりました。更には特措法が強制力も罰則もない、休業要請に対しても補償もないと、かなり批判が出され、このブログでも指摘してきました。

 ただここへ来て、ほぼ収束に近い状態を迎えたのは予想を超えたものでした。特に5月の連休時の国民の自粛が、緊急事態宣言の発令効果と相俟って、今の結果につながったのかもしれません。

 ベルギーの病院から一時帰国して、日本の病院で非常勤医師として勤務していた渋谷泰介医師が、医療現場の緊迫した状況を見て、緊急事態宣言下での自粛要請に頼る日本のやり方に疑問を呈しながらも、「他国のように活動制限を強制させられず、個人の自主性に任せられた状態で100年に一度と言われるパンデミックを乗り切ることができれば、それこそ世界に誇ることができるのではないでしょうか」と述べていましたが、第2波、第3波も抑えることができれば十分誇れるのではないかと思います。

 一方気になるのは海外での感染拡大です。アメリカをはじめ、ロシア、ブラジル、イギリス、スペイン、イタリア、ドイツ、トルコ、フランス、イラン、インドが10万人以上の感染者を出し、アメリカ、ブラジル、イギリス、スペイン、イタリア、フランスは1万人以上の死者を出しています。

 ここで目立つのは、白人国家の感染者に対する死者の割合が大きいことです。それに対してアジア各国は、中国、インドを除きもともと感染者数もそれほど多くはなく、死者数はマレーシア、フィリピン、韓国、日本など千人以下ですし、シンガポール、タイは百人以下、台湾は一桁、ベトナムはゼロなどなど。

 人種による遺伝子の違いなどと言われてもいますが、欧米の感染爆発と死者の多さは何を物語っているのでしょうか。

 話を戻して、日本国民の自粛対応への賛辞を将棋棋士・羽生善治さんが述べておられるので以下に引用します。タイトルは「日本人の規律の良さを実感」(産経新聞 5/20)です。

2013habu 強制力なくても外出自粛。すごい国

歴史的な出来事 リアルタイムで学ぶ 子供には貴重な経験

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、将棋のタイトル戦をはじめ、一部の対局が中止・延期となっています。史上3人目の中学生棋士となり、七大タイトル同時制覇、史上初の永世7冠達成、将棋界初の国民栄誉賞を受賞した羽生善治さん(49)は、苦しいながらも自粛に耐える日本人の規律の良さを実感しています。一方で、休校など勉学に大きな影響を受けている子供たちに向けては「歴史的な出来事をリアルタイムで学んでいる貴重な経験です」と語り、今回のコロナ禍を機に、子供たちが自ら考え、成長していくことを願っています。(聞き手 田中夕介)

 家にいる時間が長くなりました。対局以外で将棋会館に行くことは基本的にはありません。全く外出しないわけではなく、気分転換のため、人に会わないようにして散歩することはあります。過去、このように動きが制限されることはありませんでした。東日本大震災の際は多少の影響がありましたが、行動そのものに制約はなかったです。

 自粛ムードが続いています。日本は多くの自然災害を経験してきました。そのため、気持ちの準備や備えのノウハウは蓄積されています。今回のような初めてのケースでは、適切なことについて見定めをしている状態だと感じています。

 これまでに震災のような日本だけの危機はありましたが、今回は世界的な危機です。対応の仕方やアプローチの仕方に、お国柄がすごく出るものだと思いました。例えば、いきなり強くロックダウン(都市封鎖)してしまうとか、強制的にやってしまうとか。そのあたりは各国の考え方や法律、歴史などがかなり反映されていると思います。

 日本は少しずつ少しずつやっていく感じですね。仮に収束まで長期間かかるとしたら、強めるにしても弱めるにしても、そういったアプローチはいずれ必要になると思います。短期間で収束するならいいですが、長く続くなら強めたり弱めたりしていくことをしないと、現実的に難しいのではないかと思います。

 ただ、強制力がなくても、これだけの人がまじめに対応している日本はすごい国ではないでしょうか。でなければ、もっと多くの人が外出し、もっと多くの人が働いていると思います。日本人の規律の良さを実感しています。

 将棋界ではタイトル戦も延期になっています。東京所属の棋士同士、関西所属の棋士同士の対局は1日の対局数を絞っています。広い部屋でマスクをして、終局後の感想戦も行わず、細々と続けています。もちろん、感染が爆発したら別ですが。必要があれば対局をなくし、大丈夫であれば対局するという、微妙にコントロールしていく感じで良いのではないでしょうか。ただ、緊急事態宣言の延長で、さらなる影響が出てくると思います。

 収束には長期間かかる可能性があり、社会全体が耐える時期です。未知のウイルスとの闘いにおいて、正しい知識・情報を増やしていくことが大事ではないでしょうか。正しい知識を増やし、接していくことで十分な備えができ、パニックになったり、買いだめをしたりすることも回避できます。

 子供たちも頑張っています。子供たちは自分で勉強していかなければなりません。自力で学習するということを知ることです。歴史的な出来事が起きている今は、リアルタイムで歴史を学んでいる貴重な経験であり、良い機会です。

 これまでの生活について、ありがたいと感じています。これを機に、物事に感謝し、振り返ってみるのも良いことではないでしょうか。

 自粛疲れでDVが増えているという話もあります。又「コロナをばらまく」ととんでもないことを言った人も出てきました。休業していない店に「警察に通報するぞ」と言った、脅迫めいた張り紙が出された店もありました。10万円給付を狙った詐欺もあります。休業要請に応じないパチンコ屋と、自治体側の店名公表の争いもありました。また県をまたいで湘南の海に集まるサーフィン集団もいました。騒音をまき散らすバイカーが高速道路に出没しました。

 100%自粛を守る人たちばかりではありません。数パーセントの跳ねっ返りは必ずいます。こういう輩は今の特措法では、というよりどの法律をもってしても一掃はできないでしょう。警察の能力にも限界はあります。

 ただ総じて日本人はルールを守り、他人には迷惑をかけない、自律の心は他国より優れているのは確かでしょう。またマスク装着や手洗いは日頃から習慣化されていることが、感染防止に役立っているのは間違いありません。今後ともこの感染症の重症者や死者をできるだけ出さないよう、第2波、第3波を如何に抑えていくかが問われるところです。


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2020年5月 6日 (水)

こんなにある、PCR検査を巡るフェイクニュース

 新型コロナウィルスのPCR検査に関して、日本ではその数が少ない、もっと検査基準を容易にして数を増やすべきだ、という議論が以前からあり、私自身もそう思ってきました。ここに株式会社政策工房代表取締役社長で政策コンサルタントである原英史が、OnlineサイトJBpressに『こんなにある、PCR検査を巡るフェイクニュース』(5/6)というタイトルのコラムを掲載していますので紹介します。なおサブタイトルは『「PCR検査を増やすと医療崩壊を招く」はなぜウソなのか』です。

PCR検査を巡る混乱が収まらない。

・検査を受けようとしてもなかなか受けられない。

・海外と比較して、日本は検査を極端に抑えていて、検査数が少ない。

・だから、隠れた感染が広がっている可能性も高いのでないか。

 こうした疑念と不安は、フェイクニュースの温床になる。一例が、「東京の陽性率は40%近い」だ。「感染爆発のニューヨークですら陽性率は20%程度。検査数が少ないために、東京は異常な数値に達している。これから感染爆発の恐れもある」といったストーリーで、マスコミやSNSで広まっているが、「40%近い」はフェイクニュースだ。

分母と分子、数字の取り方に大きな違い

 フェイクニュースと呼ぶのは、広めている人たちにやや気の毒かもしれない。この数値は、厚生労働省ホームページで公開されているからだ。だが、ホームページをよく見れば、分母の検査人数は「保険適用分を含まない」との注記がある。

 分子は感染者全体だから、過大な数値が算出されているのは明らかだ。もちろん、注記を見落とした人たち以上に、こんなフェイクデータを公開している厚労省の責任が大きい。さらに遡れば、データを十分公開していない東京都も悪いのだが、ともかく、不安を助長するフェイクニュースは広がりやすい。

 関連して、「陽性率7%以上になると死亡者数が激増」との説も、テレビの情報番組などで盛んに紹介されている。これも、フェイクニュースの可能性がある。この説の元ネタは、各国データを解析した学術論文だが、査読前の段階の論文だ。公開されているpreprints.org 上では「致命的な欠陥」の指摘もあり、まだ広く一般に紹介すべき学説とは考えられない。

 論文の学術的評価は専門家に委ねるが、私がみて論理的に理解できないのは、「PCR検査数と死亡者数には関係がない」、「陽性率と死亡者数には相関関係がある」としつつ、よって「PCR検査の拡充が急務」との結論が導かれる点だ。陽性率は感染者数/PCR検査数だから、「感染者数と死亡者数に相関関係がある」だけならば自明のことでないかと思う。

感染者数が多ければ検査数が多くなるのは当然の帰結

「日本のPCR検査数は突出して少ない」、「人口あたり検査数は欧米の10分の1」といった話は、もはや常識レベルになっている。だが、これもちょっと気をつけておくほうがよい。問題はデータをどう読み取るかだ。

Img_d5a38d2d73da201031dd65920c0910ab1445 【図1】OECD諸国における新型コロナウイルスの診断テスト

 少し考えれば当たり前のことだが、検査すべき人の数は、感染が広がっている国ほど多くなる。欧米諸国の多くは、人口あたりの感染者数や死亡者数が日本とは桁違いに多いので、検査数も多くなるのは実は当然の帰結だ。「欧米は検査数が十倍」と賞賛すべきことかは疑わしく、そこから「日本の検査ポリシーが異常」との結論が導かれるわけでもない。

 下の表では、検査数と感染拡大の度合いを整理した。もちろん感染者数は、検査をどの程度行うかで見かけの数値が変わるので、感染実態を正しくつかむのは難しい。その前提で、「陽性率」に加え「検査数/死亡者数」も見比べると、検査数の多い国々のうち、イタリア、アメリカ、イギリス、フランスは、日本と比べむしろ検査不足ともみえる。

 一方、オーストラリア、韓国は、明らかに日本より徹底した検査を行い、一定の成功を収めている。台湾は、検査数が欧米諸国よりはるかに少ないが、だからといってコロナ対策の「劣等生」でないことは言うまでもない。

 また、日本の場合、PCR検査は少ないがCTスキャンが普及しており、「重症者の見落としは相当程度防げている」との指摘もある。他国の取組に学ぶことは重要だが、単純に検査数だけ国際比較しても意味は乏しい。

Img_9783216cb365c375650621f9de75382d2132 【図2】PCR検査数の国際比較(4月26日時点)

 誤解を受けないように言っておくと、検査拡大は必要だ。現在は、本来なされるべき検査ができていない。

安倍首相の発言も結果的に“フェイク”に

 政府の説明によれば、1)医師が必要と判断した場合、2)感染者の濃厚接触者には、検査が行われることになっている。安倍首相は2月29日会見でこう表明した。

「お医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします」

 ところが、2カ月経っても、これが実現していない。医師が必要と判断しても保健所に断られる、断られないまでも何日も待たされる、といったケースが起き続けている。医療機関のホームページをみれば、「医師の判断だけで検査はできません」とわざわざ明記しているところもある。

 一国の首相がフェイクニュースを発している状態で、ありえない失態だ。政府の専門家会議は5月4日になって、なぜ必要な検査がなされていないのか原因分析と提言を示した。こんな分析は本来、2月の首相会見の前にやっておくべきことだ。ともかく、こんな状態は一日も早く解消しないといけない。

大量のPCR検査をしても医療崩壊しなかったオーストラリアと韓国

「PCR検査をたくさんやると医療崩壊を招く」といった異論が出ることもあるが、これもフェイクだ。たしかにイタリアなどで大量の検査が医療崩壊につながったとの指摘がある。しかし、前掲の表をみても、オーストラリアも韓国も医療崩壊は起きていない。診療・入院体制などを整えないまま無闇に検査を増やせば医療崩壊を招く、というだけのことだ。

 日本でも、2月の感染初期に無闇に検査を増やせば大問題が生じたかもしれないが、今の段階で必要な検査を抑えるべき理由にはならない。

 検査拡大は必要だ。だが、「検査拡大」の意味には注意を要する。a)「医師が必要と判断する検査をすぐできるようにする」のか、b)現在の検査ポリシーの範囲を超えて「希望する人は誰でも検査を受けられるように拡大する」ないし「ともかく検査の数を増やす」のかは、区別して議論しないといけない。

 ところが、メディアなどではしばしば曖昧なままに議論されがちだ。さらに、これを混乱させるのが、本稿前半で紹介した「検査数が異常に少ない」と強調するフェイクニュース。区別が曖昧なまま、いつの間にか後者への誘導がなされやすい。これは危ういことだ。結果として、保健所や医療機関に対し「ともかく検査を受けたい」との問合せや強い要求が数多くなされ、ただでさえ限界状態の現場の機能を低下させかねない。

 フェイクニュースは除去し、事実に基づく議論をしないといけない。これが、より良い政策実行の基盤になる。

 ◇

 原英史の指摘は論理的で的を得ているように思います。要点を整理すると次のようになると思います。

 まず第一に日本でのPCR検査は異常に少ない、とは言い切れない。だがもちろん十分だとは言えない。感染が疑われて検査を受けたくても受けられない状況は改善し、必要と思われる人の検査を拡大すべきだ。

 第2に、PCR検査を多くやれば医療崩壊につながる、というのは医療体制が整っていなければの話で、当然のことながら検査も重要だが治療ができるかどうかのほうが重要だ。

 それに私見を加えれば、検査に関する疑問に対する政府厚労省の説明や数字の公表に、極めてあいまいさが多いことでしょう。何故検査が十分できないのかその理由が検査機器の問題なのか、検査要員の問題なのか、保健所の問題なのか、医療機関の問題なのか、どこがどのようにボトルネックになっているのか、説明が大幅に欠落しているように思います。(実はよくわかっていないのかもしれませんが)

 そのため、マスコミ関係者が憶測で勝手なことを言いやすい環境になっているようです。ぜひその点の改善を望みたいと思います。検査に関することだけではなく。

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2020年5月 2日 (土)

アビガンが「特例承認」されない残念な理由

Img_21af06238bf24c57b7d202dfca04829c9856  今更言うまでもないでしょうが日本は法治国家です。法律を守らねばなりません。ところが法律に書かれていないことが現実に起こった場合は困ります。又その法律の立て付けが悪かった場合、例えば今回の「改正インフルエンザ等特別措置法」のように、本来は新型コロナウィルスの早期の感染拡大収束が目的なのに、その効力が十分発揮できない、というようなことが起こります。

 一方法律に書かれていないことによる不具合の直近のいい例に、「アビガンの特例承認ができない」ということが挙げられます。ことは安倍首相の国会の答弁で明らかになりました。4月28日付の産経新聞の記事から抜粋します。

 安倍晋三首相は28日の衆院予算委員会で、新型コロナウイルス治療薬の有力候補とされる国産の新型インフルエンザ薬「アビガン」に「特例承認」を適用できないことについて、「政府内でも相当議論してきた。『(新型インフル薬として)日本で承認されているのだから(適用できるのではないか)』と私も言ったが、日本の法令上できない」と説明した。公明党の斉藤鉄夫幹事長の質問に答えた。

 米製薬会社がエボラ出血熱の治療目的で開発した「レムデシビル」については特例承認を適用しようとしているのに、なぜ日本の法令上アビガンが使用できないのでしょうか。作家でブロガーの長谷川七重氏の4月30日付けのコラムから抜粋して引用します。

何というか、頭痛がします。日本の国権の最高機関は「国会」であります。内閣に付随する行政府は、国会が作った法律に従って国を統治すると決まっています。

ですから、つまり今「アビガン使える」という現実にならないのは「アビガン使える」という法律がないからです。国会が「アビガン使える」と《法律》をつくれば、厚労省はその法律に従って「アビガン使える」という《現実》をつくるというのが、日本の手順です。

つまり「国会が作った法律を 行政府が現実化している」訳で、行政ができないのは法律がないからになります。

歴史を紐解けばバイアグラは、「特例承認」で超特急で承認されています。今回「レムデシビル」はバイアグラと同様に「特例承認」されるそうです。これは外国で承認された薬だからです。

つまり、日本の「特例承認」というのは外国で承認された薬には適用できるが、国内で承認された薬を別の病気にも使えるようにする時には適用できないようです。

ですから、私は「アビガン使えるようにならない」のは、法律の不備であると思います。つまり今動くべきは国会ですので、安倍首相は厚労省ではなくて国会に要請するのが筋です。安倍首相もパニックになっているのでしょうか?

心配になってきました。

 ここで薬事法の第14条の3「特例承認」の条文を見てみます。

第14条の承認の申請者が製造販売をしようとする物が、次の各号のいずれにも該当する医薬品又は医療機器として政令で定めるものである場合には、厚生労働大臣は、同条第2項、第5項、第6項及び第8項の規定にかかわらず、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、その品目に係る同条の承認を与えることができる。

一     国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品又は医療機器であり、かつ、当該医薬品又は医療機器の使用以外に適当な方法がないこと。

二     その用途に関し、外国(医薬品又は医療機器の品質、有効性及び安全性を確保する上で本邦と同等の水準にあると認められる医薬品又は医療機器の製造販売の承認の制度又はこれに相当する制度を有している国として政令で定めるものに限る。)において、販売し、授与し、並びに販売又は授与の目的で貯蔵し、及び陳列することが認められている医薬品又は医療機器であること。

 法律の条文は何とも読みにくいものですが、第1項の「その疫病の医薬品」と第2項の「外国で承認されたもの」と言うことに引っかかるようです。一方国内の承認はしていないのに海外に無償提供すると言っています。朝日新聞デジタルから引用します。

 菅義偉官房長官は3日、新型コロナウイルス感染症の治療薬の候補の一つに挙がっている新型インフルエンザ薬「アビガン」(一般名ファビピラビル)を、臨床研究を希望する海外の国に無償提供する方針を明らかにした。現時点で、外交ルートを通じて約30カ国から提供要請があるという。

 「臨床研究拡大」の目的だそうです。日本でも臨床研究が主目的で「患者自身が希望し、病院の倫理委員会で認められれば使用できる」と政府は述べて、実際に使用もされて疾病の改善例も報告されているようです。

 確かにもともとは「新型インフルエンザ治療薬」で開発されたという経緯と、「催奇形性」という副作用を引き起こす可能性がある点で、使用は注意を要するとは思いますが、国の認可が下りていなければ医師と患者の自由な判断で使うことはできません。政府が言う「倫理委員会」のハードルがどんなものかわかりませんが、患者の改善例も出て来ていることを考えれば、最終的には病院や医師の判断で使用できるように法律を変えれば済むことではないかと思いますね。

 法律は守らなければなりませんが、法を順守することが特にこういった緊急時には、却ってある種の障害になるようならば、それこそ立法府(国会)の先生方に仕事をしていただかなければなりません。ばかなスキャンダル合戦や些末な議論をするのではなく。

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2020年4月21日 (火)

安倍首相、自分の言葉で訴求力をもって語ろう

Maxresdefault_20200421120501  今回の新型コロナウィルス感染拡大の最中、安倍首相から様々な形で国民にメッセージが送られていますが、国民に語り掛けるように話されるのはいいのですが、どうも今一つ迫力に欠ける、或いは国民の心に響くようにあまり感じられないのは私だけでしょうか。

 確かにおっしゃっていることは、専門家の意見をよく聞いて内容も理解しておられるし、何も間違っているとは思えませんが、かと言って危機意識がずしんと国民に伝わるかと言うと、批判を恐れずに言うと「ノー」だと思います。

 なぜか、それは命令調になってはいけないという語り口の問題もあるでしょうし、批判を浴びたくないということから教科書的な説明にもなってしまうからではないでしょうか。

 以前このブログで、国のトップは強くあれ、と言いましたが、同時に言葉の訴求力も必要です。つまりいい意味での迫力と、言葉の選び方、そして何より自分の言葉で語ることでしょう。「NEWSポストセブン」に関連記事が搭載されていますので、以下に引用します。タイトルは『コロナ危機、世界各国の指導者が発した「心打たれる演説」』です。

 「我々は岸辺で戦う。野原で街で丘で戦う。我々は決して降伏しない」──第2次世界大戦でイギリス国民を鼓舞したチャーチル首相の演説だ。国家の危機に、国民を勇気づけるか、不安にさせるか、すべてはリーダーの言葉次第である。

 いま、世界の人々に求められているのは「ステイ・ホーム(家にいてくれ)」。この一言をいかに表現するか、世界のトップは苦心している。

 「明日、より情愛をもって抱き合うために、今日は(人との)距離を取ったままでいましょう。明日より早く走るために。みんなが一緒にやれば乗り越えられる」

 そんなロマンチックな表現で国民を説得したのは、死者1万人を超える感染大国となっているイタリアのジュゼッペ・コンテ首相だ。そのお国柄からキスやハグの禁止令も出された中で、3月11日に動画で声明を出した。首相の演説には、日本でも「心を打たれた」という声が上がっている。

 「まだワクチンも治療法もなく、ドイツの人口の60~70%が感染する恐れがある」(3月11日)と会見で語るなど冷静な発言が際立つドイツのアンゲル・メルケル首相が、国内感染者数が1万人を超えた3月18日に行なったテレビ演説のスピーチ動画も大反響を呼んだ。コロナ対応の最前線にいる医療関係者に感謝を述べた後、こう付け加えたのだ。

 「普段めったに感謝されることのない人々にも感謝の言葉を送らせてください。スーパーのレジ係や、商品棚を補充してくださる方々。彼らは現在、最も困難な仕事の1つを担ってくれています。仲間である市民のために、日々働いてくれて、私たちの生活を支えてくれてありがとうございます」

 物資不足と感染リスクでパニック状態になっているスーパーで働く人々にも目を向け、励ましの言葉をかけたのだ。

 イギリスのボリス・ジョンソン首相は、3月12日の記者会見でこう語った。

 「私は英国民に対して正直に言わなければならない。より多くの家族が、彼らの愛する人たちを寿命に先立って失うことになる。しかし、過去数週間にわたって言ってきたように、我々は現在実施している明確な計画がある」

 同27日にはツイッターで、自らが新型コロナに感染したことを公表し、国民に衝撃を与えたが、翌28日に全英の約3000万世帯に送付した書簡で、「事態はよくなるより先に、まずは悪くなる。それは分かっています」「私たちは適切な準備をしています。全員がルールに従えば従うほど、亡くなる人は減り、生活は元に戻ります」と、自宅に留まるよう訴えた。

自分の言葉で話しかけている

 コミュニケーション・ストラテジストの岡本純子氏は、こう分析する。

 「コンテ首相の言葉は国民に寄り添う姿勢を示す情緒的表現の典型で、欧米で支持される傾向が強い。ジョンソン首相は熱弁タイプで発言のエネルギーが高く、国民にメッセージが届きやすい。

 メルケル首相は正反対で、その冷静さによって国民に安心感を与えていると考えられます。その上で、落ち着いていて国民を包み込むように一人一人に励ましの言葉を語り掛けた。タイプに違いはあれ、国のリーダーがそれぞれのキャラクターと国民性を踏まえて、自分の言葉で話しかけているのが特徴です」

 岡本氏が秀逸だと感じたのは、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相だという。同首相はニュージーランド史上もっとも若い37歳3ヶ月で首相に就任し、現在39歳。

「相談センターの電話番号を書いたパネルの前で会見し、『公衆衛生に携わる官僚や専門家は世界でもトップクラスで、医療施設も十分に準備できています』と何度も『プリペアード(準備はできている)』と繰り返しました。

 さらに25日に国家非常事態を宣言し、外出制限の方針を示すと、フェイスブック上のライブ動画で、国民からの質問に答えた。緑色の普段着で現われた首相は、『カジュアルな服装ですみません。赤ちゃんを寝かしつけるのが大変で、今は仕事着じゃないんです』と説明。国民に寄り添っている姿勢を示したのです」

シンガポール(ゲッティイメージズ)

 シンガポールのリー・シェンロン首相の発言も学ぶべき部分が多いという。

 2月8日の時点でシェンロン首相は「恐怖はウイルスよりも有害です。恐怖は、インターネットでデマを拡散したり、マスクや食料品を買い占めたり、集団感染を特定の人々のせいにしたり、我々をパニックに陥らせ、状況を悪化させる可能性があります」と呼びかけ、「インスタントラーメンや缶詰、トイレットペーパーを買いだめする必要はありません」と国民に優しく語りかけた。

 シンガポールの迅速な対応は海外でも高く評価されている。

 安倍首相は自宅でくつろぐ映像を、星野源氏のミュージック映像と隣り合わせで公開し、「外出せずに自宅で過ごそう」というメッセージを送ったところ、「何様のつもり」だの「政治利用」だの、意図しないところで批判を浴びています。(もちろん賛同する意見も多かったようですが)。このように何をするにしても反安倍勢力の批判が舞い上がるのは毎度のことで、ロマンチックに語ろうが、苦労している人たちに寄り添う形で語ろうが、一定の批判は出るでしょう。

 何か事があれば手ぐすね引いて誹謗中傷しようと虎視眈々と待ち望んでいる反対勢力の輩は、あのトランプ大統領のように無視する勇気が必要です。

 語り口についても「○○する必要があります」というより「○○するよう、切にお願いします」と言って、「自由に解釈してください」ではなく、「是非こうしてください」、と自分の言葉で訴える迫力が必要なのではないでしょうか。また専門家の意見を代弁するような内容では、あまり訴求力がないように思います。

 これからも感染状況は続くと思います。特に今の日本のやり方ではかなり長く続く可能性が高いと思われます。より強い要請の必要性も高いことから、国民を動かす首相の言葉がより重要になると私は強く思います。

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2020年4月20日 (月)

コロナ対策、日本のやり方は時代遅れと警鐘する東大教授

Ae4f5ce38871c310b5da90ae2d6e1428393aa9c5  今回も新型コロナウィルスの日本の感染症対策に警鐘を鳴らす日経ビジネスの記事を取り上げます。東京大学先端科学技術研究センター名誉教授児玉龍彦氏へのインタビュー記事で、タイトルは『新型コロナ対策「検査、隔離、GPS追跡」の東アジア型を』です。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。クラスター追跡や外出自粛で、日本は感染拡大を防げるのか。東京大学の児玉龍彦名誉教授は「日本は非常に古い対策モデルから抜け出せていない」と言う。「大規模検査、隔離、GPS追跡」という東アジア型の対策の必要性を訴える児玉氏に、解説してもらった。

―クラスター対策や外出自粛要請など、日本のこれまでの対応をどう評価していますか。

 非常に古いモデルの感染対策から抜け出せていない。東アジアは遺伝子工学と情報科学に立脚した新しいモデルで対応しています。日本は中国・武漢の封鎖を1月に見てから抜本的な対策を打てていません。

―武漢や、他の東アジア諸国の対応を参考にできていない、ということですか。

 そうです。

 1月18日、中国の感染症研究の第一人者である鍾南山先生が武漢入りしたとき、3つのことを発見しました。1つは、院内感染が起こっていること、2つ目は医療従事者約10人が感染していること、3つ目は病院でPCR検査が1件も行われていないということでした。それで血相を変えて北京に戻り対策を進言したのです。

 中国は、感染集積地域と非感染集積地域を分けて、感染集積地域に徹底的に医療資源を投下しました。5万4000人もの医師や看護師が武漢に送られたといわれています。それから、医療機関の患者や医療従事者に対してPCR検査を実施して陽性の人をあぶりだして隔離しました。病院を“きれい”にして院内感染を防いだのです。

病院や介護施設で徹底したPCR検査を

―ライブハウスや夜の街よりも病院でクラスターが起きる方がよっぽど深刻なんですね。

 ライブハウスでのクラスターというのはいわゆるインフルエンザ型の感染です。寒冷地の換気の悪いところで起こることが、昔から知られています。春になって換気が良くなればあまり問題にならない。

 今、日本では病院や介護施設ですごく感染が広がっている。若い人がいっぱい外に出ているとか、夜の街で感染が広がっているとか言われますが、亡くなっている人や感染した人の多くは、病院や介護施設にいた方なのです。

 日本がまずすべきことは、そこで働く人や入所者をPCR検査することです。例えば、100床以上あるような大きな病院で、発熱している人、忙しく患者を見ている外来医師などを徹底的に検査します。それで陽性の人は隔離して医療崩壊を防ぐ。

―PCR検査の人材や機器が足りないといわれていますが、検査数を増やすことはできますか。

 足りないなんてことは全くありません。

 東京大学や理化学研究所だけでもPCR検査の機械は数百台あります。1日当たり数万の検査をできるキャパシティーを持っています。今、感染防止対策としてキャンパスを閉鎖している大学がありますが、PCR検査の機器を持っているところは、感染防御の教育をした上で、検査に協力する体制にして動かすべきです。

0h9cxayztpzkxfge6voozg31fycm8d3vco2bxngy ―一律の外出自粛では、あまり効果がないということですか。

 外出自粛は一過性の患者減らしで、時間稼ぎにすぎません。また緩めると患者数が増えます。みんな自粛は2週間程度かなと勘違いしているようですが、最低でも3カ月はかかります。大規模検査をして院内感染を防ぐと同時に、どこが感染集積地なのか把握して手を打たなければなりません。

中国平安保険は3億人分のGPS情報

 中国は感染集積地域である武漢を封鎖しましたが、非感染集積地域ではPCR検査や個人のGPS追跡などで、感染を個別に封じ込めているんです。

 中国はこのウイルスの性質をよく分かっています。そんなに感染しやすいウイルスではないけれど、症状がない人も多いので検査しないと分からない。だから検査を徹底してやる。しかし、都市を全部封鎖すると経済の活力がなくなってしまうから、非感染集積地域では個別にGPS追跡をしながら経済活動を維持する。このようにメリハリをつけています。

 中国には中国平安保険という会社があり、その会社はもともとGPSを利用した3億人分くらいの位置情報を持っているようです。そういうインフラを生かせばGPS追跡は簡単にできるでしょう。

 日本のように一人一人聞き取って紙に書いて、というのは非常に古い調査方法です。今、世界ではGPSによる追跡が当たり前です。誰がどこに行ったのかがつぶさに分かる。

 韓国やマレーシアなどもGPSを使っています。これらの国では感染者は出ていますが、すぐその人の行動範囲を特定して、周りで感染が出ていないか検査しています。

 マレーシアは、最初、都市封鎖に近いことをやりました。ところが封鎖を解こうとすると患者は増えるし、長引くと経済的な打撃が大きい。そこで封鎖を少し緩めてGPS追跡を始めたのです。

マレーシアの「パンデミック番号」

―GPSで個人の行動を特定すると、人権や個人情報保護の問題が出てきませんか。

 マレーシアでは、個人に「パンデミック番号」という番号を振って、保険証などとはひも付けられないようにしています。だから、日本でいえば「マイナンバー」で管理してはいけないわけです。

 それから建物や住宅も別の番号を付けて、匿名化する。もう一つ大事なのは、例えば政府の首脳などもみんなGPS追跡の対象に含めることです。こうすることで情報管理が厳しくなり、個人情報も強く守られるでしょう。

 2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行したとき、日本はアジア各国を指導する立場だったんです。でもそれから十数年たち、遺伝子工学と情報科学が発展することで世界はすっかり変わってしまいました。

―中国の対応には見習うべきものもあると思いますが、初期対応の遅れや情報隠蔽を指摘する声もあります。

 英国の雑誌などに報告された経緯を見る限り、中国の初期対応は早いと思います。また、情報開示に問題点があるとしても、それは中国に限らない。日本も感染者数をしっかり把握しているのでしょうか。

 私の知る限り、中国では、昨年の12月頃に武漢の食品市場の周りで肺炎が増えていると分かった。そして1月7日に研究者が新しいウイルスを見つけ、1月10日にはウイルスのゲノムの配列が分かりました。そこから1週間くらいでスイスの医薬品大手ロシュのPCR検査キットが配られたんです。それくらいのスピード感なんです。

インフラを支える人を重点的に守る

 日本では、感染していない人の移動を見て、全体の動きを減らそうとしています。いわばビッグデータで対応しようとしているわけですが、時代遅れです。これは全然意味がない。渋谷駅周辺の人の移動が何%減ったというのを見たところで、病院や介護施設での感染拡大を追えていなければ意味がありません。

 先ほど話した中国平安保険は、年間8000億円程度を情報取得のための研究開発に投じているそうです。ですから情報インフラがもう全然日本と違う。GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)や中国企業は、そういうところが主戦場になっています。特に中国平安保険はそれを医療に応用しようとしています。こういうのを精密医療といいます。これは今後の鍵になります。

―日本はこれからどうすればいいのでしょうか。

 4つあります。1つ目は先ほど言った病院や介護施設でのPCR検査の徹底。2つ目はドライブスルー型の検査をすること。日本財団は「船の科学館」などで1万床のベッドを用意するようですが、その前でドライブスルー型の検査をして、陽性ならそこに入所してもらえばいい。このように、症状が軽い感染者をどんどんさばく施設が必要です。

 3つ目は、先ほどのGPS追跡です。繰り返しますが、個人情報や倫理を守って実施することが必要です。4つ目は社会インフラを支える人が感染しないような配慮をすることです。ガス、水道、電気、輸送、食品など、社会生活のインフラを支える人を重点的に守る。そういう方たちはPCR検査もすぐできるようにするし、(過去に感染したことがあるかを調べる)抗体検査もすぐできるようにする。

PCR検査と抗体検査の強化を

 今、私たちが一番力を入れているのが抗体検査です。PCR検査では偽陰性(陽性にもかかわらず、陰性の結果が出る)も出ますから、抗体検査と組み合わせます。

 抗体の中には2種類あって、IgMという感染初期に出てくる抗体と、免疫ができてくると出てくるIgGという抗体があります。

 IgMの数値が上がっている人はまだウイルス感染が続いている可能性が高いので隔離する。IgGの数値が上がってくれば感染した後に治っている、というのが分かり、社会復帰もできる。この両方を測れて、しかも大量に処理できる仕組みをつくることが我々の関心事です。

 今、ヨーロッパでは免疫があることを証明する「免疫パスポート」の導入が議論されています。感染して治癒した人には積極的に社会活動に復帰してもらおうという狙いです。PCR検査と抗体検査は一体でやらないとだめです。

 児玉氏の解説には重要な点がいくつかあります。まず一つは特に医療関係者の感染防止に重点を置く。クラスターではライブハウスなどより病院や介護施設が危ない。院内感染を拡大しないため医療従事者へのPCR検査を徹底すること。

 二つ目はGPSを利用しての行動追跡を取り入れること。外出自粛とビッグデータによる集団の解析では感染拡大防止にはあまり意味を持たない。(もちろん個人情報の取り扱いには注意するよう、マレーシアの例も出しています。)

 それ以外にも示唆のとんだ指摘が多くありますが、いずれにしても今の日本のやり方は非常に時代遅れで、感染拡大は抑えられないと、暗に指摘しているようです。インタビュアーの「中国での初期対応の遅れや情報隠蔽」という質問に関しては、それよりその後の対応の早さをむしろ評価していて、同時に「日本も感染者数をしっかり把握しているのでしょうか」と言っているのが印象的です。隠ぺいと把握の精度とは違うように思いますが・・・。

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2020年4月19日 (日)

海外から日本を見た目、マレーシア・台湾

Malaysia_lockdown  日本での新型コロナ感染防止のための緊急事態宣言が、当初の7都府県から全国に拡大されましたが、あくまで根幹は自粛要請に基づくもので、強制性もなくロックダウンも行われない、緩やかなものです。それが日本人の心情に沿ったもののようですが、同じアジアでロックダウンを実施している国の一つ、マレーシアの状況をもとに、エリス・コンサルティング代表で法学博士の立花聡氏が、『マレーシアの「本物ロックダウン」現場から見た日本』(4/13)というタイトルで月刊Wedgeに寄稿しているので、以下に引用します。

 手錠を掛けられ、マレーシア警察に連行された写真付きと実名出しで現地で報道された日本人容疑者(81歳、年金生活者)は4月3日、ノル・イッツァティ・ザカリア判事の前で通訳によって訴状を読み上げられた。クアンタンの公園で野鳥の写真を撮影するために外出した同容疑者は、新型コロナウイルス感染防止の行動制限令(MCO)に違反したとして、裁判所から1000リンギットの罰金(または3カ月の禁固刑)を科せられた(4月3日付、マレーシア英字紙ザ・スター 『MCO: Japanese man fined RM1k for leaving house to photograph birds』)。

 勝手に外出すれば、警察に逮捕され、罰金や刑務所行き(または併科)である。そのほかにも複数の日本人が街でジョギングしたことで逮捕されていた。街だけでなく、今はコンドミニアム敷地内の散歩やジョギングも禁止されている。生活必需品の買い出しは一家に1人だけ外出が許されるが、自動車は運転手1人以外に同乗は許可されない。各地では警察が厳しく検問や取締りを行っている。

 今の日本では考えられないマレーシアのロックダウン(都市封鎖)は本物だ。現地在住の私も不本意ながら自宅隔離の生活を「満喫」している。いや、不本意とはいえない。むしろ個人的にはこのような厳格なロックダウンに賛同している。

 情況が明らかに改善しているからだ。マレーシアのR0(基本再生産数)は3月18日付で発効した行動制限令発令前の3.55から、4月10日現在の0.9に落ちた(4月11日付けマレーシア華字紙南洋商報)。R0<1の場合、感染症は終息していくといわれているが、マレーシア保健省は4月10日、感染を最大限に断ち切るために最低でも6週間のロックダウンが必要とし、ムヒディン首相に2度目の延長を提言し、首相が再延長を決断した。

 現地での民意調査によれば、8割以上の国民がロックダウンの実施や延長に賛成している。日本で騒がれている「私権制限」を持ち出して抗議する声はほとんど聞かれない。ビジネスに熱心な華人でも商売よりはまず命第一、命を落としたら一巻の終わり、生き残りさえすれば、いくらでも後からビジネスができると考えているようだ。

 要するに、疫病退治とビジネス・経済の優先順位をはっきりさせている。このことについては基本的に政治家や国民のコンセンサスが取れている。より早くビジネスを再開し、経済の復興に取り組むためにも、まずは思い切った措置でコロナの拡散を食い止めなければならないと。

 私たち在住外国人も大変厳しい状態に直面している。出入国に関しては、一般のマレーシア人は出国禁止となっているが、外国人は出国できる。ただ、いったん出国すれば、マレーシアへの再入国ができなくなる。

 3月18日行動制限令の発効当日、私はベトナム出張を予定していたが、当然キャンセルになった。さらに行動制限令の延長に伴い、4月以降の出張などの海外渡航は次から次へとキャンセルせざるを得なくなった。現状をみる限り、長期戦の様相が濃厚である。私の場合は、年内の渡航・出張予定をすべてキャンセルする前提で仕事の日程を組み直した。

 職業柄、リモートワークに向いていることもあって、私は昨年からすでに仕事の一部をWebセミナーやWeb会議・相談に切り替え始めた。コロナ危機の到来を予見したわけでもなく、時代のトレンドとして遠隔ビジネスがいずれ主流化することだけは感知していたからだ。とはいえ、やはり人間は会って話すのが便利で、どうもリモートワークの取り組みがそれほど早く進まなかった。今年も相変わらず、月例出張のスケジュールを組んだ。

 年明けてみると、2月初中旬の出張から状況が一変した。まずは武漢の封鎖をみて、急遽上海出張をキャンセルしたが、これに続くベトナム出張はスムーズだったし、日本出張も名古屋で某企業グループの幹部社員500名が集まった講演会で登壇し、問題なくこなした。しかし、2月下旬からは状況が悪化しはじめた。

 3月に入ると、それまで平和だったベトナムやマレーシアも陥落の様相を呈した。続いてWHOのパンデミック宣言。私の仕事の内容も変わった。顧客企業のテレワーク体制の確立に提案しなければならなくなった。

 製造業現場を除いて、普通のオフィスワークなら、「ハンコを押すために出社する」というようなパターンは論外として、従来の業務を従来の目線で見れば、多少なりとも会社に出向く必要が見出されるだろう。「テレワークのできる仕事」から選別し、テレワークを進めていくのではなくて、「どうしても出社しないとできない仕事」とは何か、そこから始める必要がある。

 こんな状況においても、日本のテレワーク普及率がまだ低い。パーソル総合研究所は3月23日、新型コロナウイルスで全国の正規社員の13.2%がテレワークを実施したとする調査結果を発表した。1割強という率は低すぎる。私が住んでいるマレーシアでは、「テレワーク」や「リモートワーク」といった用語すらほとんど聞かれない。多くの会社は当り前のように「在宅勤務」に切り替えていた

 日本ではテレワークがなかなか普及しない。年長従業員、特に幹部の間にIT機器を使いこなせない人が多いという事情があるかもしれないが、根本的な原因ではないと思う。テレワークにおいて、海外と日本の普及率の差、その本質的な原因とは何であろうか。

 企業組織でいえば、海外企業の場合、一般的にヒトと職務の結びつきであるのに対して、日本企業はヒトとヒトの結びつきである。言い換えれば、前者が「職務型組織」であって、後者は「共同体型組織」である。テレワークという遠隔性は職務指向であり、共同体への破壊作用をもっているから、日本企業に敬遠されるのである。

 コロナショックによって、今後「非接触型社会」がより勢力を強めていくだろう組織のなかでも、「努力」という属人的・対人型の評価基準が、職務的・対事型に変わっていかざるを得ない。そうした意味で、テレワークがまさに一種のトリガーになるだろう。

 3月9日のフジテレビ系「直撃!シンソウ坂上」は、緊急生放送で行われ、マレーシアのクアラルンプール在住のシンガーソングライター・GACKTがテレビ電話を通じて、現地の状況や生活をレポートしながら、コロナ危機下の日本について、「言葉を選ばずに言っていいのであれば」と前置きしてから「狂ってますよ、かなり」と語った(『ロックダウン中のマレーシア在住のGACKT、日本は「危機感が足りない」「言葉を選ばずに言えば…」』4月10日付スポーツ報知)。

 日本社会の危機感が不足していることを、GACKTが指摘した。それは事実である。誰かが指示してくれるだろう、誰かが守ってくれるだろうという期待感が持たれるから、危機感に起源する自己防衛本能がなかなか作動しない。私はそう感じている。

Jpcna_cna_20200122_202001220004_1  各国の新型コロナウイルス対応について、台湾前議員の沈富雄氏が日本モデルを取り上げこう酷評した――。

 「何すればいいか分からず、体裁すらなしていない。日本という国はいちばんダメなのは、優柔不断。当初から中国人観光客のインバウンドの利益を貪る一方、リスクにまったく無関心。ダイヤモンド・プリンセスの惨状に束手無策のまま、大国の風格貫録を完全に捨て去った。国土が広いだけに、これからの最善策は区域を画定し、台湾モデルを生かして取り組むことだ。あとは運任せのみ」(2月17日付台湾聯合新聞網)

 的を射た総括ではないだろうか。真の友人だから、本音を吐いてくれた。さらに、台湾人作家欧陽靖氏が日本のコロナ対策をこう分析した―。

 「日本人は、SOP (Standard Operating Procedure=標準業務手順書)民族だ。彼らは臨機応変、突発事件の処理に弱い。地震対応に強いのも、完璧なSOPがあって、職人的に反復練習しているからだ。日本国がここまで強くなって進歩したのも、国民の一人ひとりがSOPを守っているからだ。国家全体が順調に機能する機械であり、国民はみんな歯車になって応分の役割を最大限に果たしているからだ」

 「18年前のSARSはその当時の日本は(中国人観光客に)開放しておらず、幸運にも大きな被害に遭わなかったが、今回の新型コロナウイルスは様子が違った。問題に気付いたにもかかわらず、日本人は議論して有効な解決策を打ち出せなかった。疫病との戦いは時間との戦いだが、日本人はその本質を見失った

 「WHOへの盲信と盲従も問題。WHOの提言に従って中国人観光客の入国を制限しなかったし、検疫官が防護服を装着せずダイヤモンド・プリンセス号に上船した。いずれもマニュアルや上司の指示に忠実に従った行動だったが、結果的にウイルスが拡散した

 「でも、日本はこれで終了することはない。日本人は酷くやられて痛定思痛(痛みが収まってから痛みを思い出して今後の戒めにする)で、もっとも完全な疫病防止システムをもつ国になろう。同時に、このたびの災厄の実体験をもって、日本国民が目覚め、思考停止から脱出し、日本の腐り切った政治環境の徹底的改革に取り組むことを切に願いたい」(2月20日付、三立新聞網)

 耳の痛い批判だ。日本人は体験型学習やルール順守が得意だ。しかし前例なき危機に直面し、SOPたるマニュアルなき判断・行動を求められると、なかなかうまく即応できない。今回のコロナ危機は、多大な犠牲を伴う体験型学習になるかもしれない。

 台湾人識者の指摘は痛烈ですが、当たっているだけに耳が痛い部分が多いと思います。もちろん日本的な部分もいいところは多くあり、すべて悪いわけではありませんが、指摘を受けた部分はこういう危機を乗り切るためにも、十分耳を傾けるべきだと思います。

 またかと言われそうですが、幕末や明治時代から日本がこうだったわけではないと思います。もし戦後、特にこうなったとしたら、そこはその原因をよく分析し、教育や制度を改革していくことが必要のように思います。

 ただしこの新型コロナウイルスの感染拡大が現状の施策で止まれば、「成功した日本型対応例」として、世界に誇れるのかもしれませんし、そう願いたいのですが果たしてどうでしょうか。

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2020年4月18日 (土)

武漢ウィルス、中国の隠蔽疑惑は続く

Img_634fa3aad12f010897cde5b909e130251780 新型コロナウイルスの発生源である中国での、発生初期の隠ぺい工作や感染者や死者の公表数疑惑、また実際に感染しているが症状の出ていない者の感染者数からの除外、又その数が最近でも1000人強で、本当の数字かどうか、という疑惑等、様々な隠ぺいや疑惑の声が上がっています。

 そうした中、17日には中国武漢市の当局が死者数の修正の発表をしています。産経新聞から以下に引用します。タイトルは『新型コロナ 武漢の死者数5割増 1290人追加 当局「報告漏れなど修正」 「過少発表」批判を意識か』です。

 新型コロナウイルスの感染源となった中国湖北省武漢市の当局は17日、同ウイルスによる死者数が、従来の公表値よりも1290人多い3869人だったと発表した。死者数を5割増とする大幅修正の理由については、感染拡大の初期に病床不足で入院できないまま自宅で死亡した患者がいたことや、医療機関の混乱によって報告の漏れや誤りがあったことなどを挙げた。

 国内外で中国当局が武漢市の実際の死者数を隠蔽(いんぺい)し過少に発表しているとの疑念が広がっており、今回の修正はこうした指摘を打ち消す狙いがありそうだ。ただ、唐突に大幅な修正を行ったことで、逆に不信感が高まる可能性もある。

 武漢市当局の説明によると、これまでデータ管理システムに報告されていなかった症例や重複していた症例などを精査した結果、17日午前0時(日本時間同1時)時点の累計死者数は従来の2579人から大幅に増加した。累計感染者数も325人増えて5万333人とした。中国本土全体の死者数は4632人となった。

 米政府系放送「ラジオ・フリー・アジア」は武漢市民の証言などを基に、市内の死者数について4万人以上との推計を伝えている。

Img_0da2d161a718057dc46724d760fdffb62655  この4万人以上の死者というのも本当かどうかは分かりませんが、いずれにしろ修正された数字にもやはり疑惑は残ります。更にその発生源について、以前このブログでも紹介した、武漢のウィルス研究所から流出した疑惑が強まったとして、米国政府が調査を進めているとの記事が、本日の産経新聞に掲載されましたので以下に引用します。タイトルは『武漢研究所ウイルス流出疑惑、米情報機関が調査結果提出へ』です。

 トランプ米大統領は17日の記者会見で、新型コロナウイルスが中国湖北省武漢市の中国科学院武漢ウイルス研究所から流出した疑いが強まっているとされる問題で、米政府として大規模な調査を進めていることを明らかにした。

 FOXニュースは同日、米情報機関が同研究所および感染初期状況に関する情報を徹底的に収集して時系列的に分析し、事態の全容解明を図っていると報道。調査結果は近くホワイトハウスに提出され、トランプ氏らは内容を精査した上で中国にどのように責任を取らせるかについて判断を示すとしている。

 報道によれば、米情報機関はウイルスに関し、生物兵器として人工的に作成された可能性を現時点で排除し、研究所内で取り扱われていた自然界に存在するウイルスが武漢市に流出したとの見方をとっている。

 トランプ氏は、ウイルスが研究所から流出したかどうかについて、断定は避けつつ、一連の説は「理にかなっているように思われる」と述べ、支持する姿勢を示唆した。

 中国政府はCDC(米国疾病予防管理センター)などによる武漢の現地調査を拒んでいるようです。何か疑わしいことでもあるのでしょうか。(多分あるのでしょうが)。こういう隠ぺい体質は今に始まったことではなく、又共産党一党独裁体制においては、体制維持のため国民に知らせてはならない負の部分ですから、隠ぺいするのは当然かもしれません。

 これでは世界の仲間入りはできません。アメリカなどで持ち上がっている損害賠償請求の動きも、この隠蔽疑惑が引き金になっていると思います。何時になったら体制が変わるのでしょうか。少なくとも習近平が国家主席を続けている間は絶対に無理でしょうが。

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2020年4月17日 (金)

コロナ危機でも「プライバシー」と「人権」を振りまく批評家、しかし中国には一切触れず

Images_20200417121901  なかなか新型コロナウイルスの新規感染者が減らない今の日本の現状を見て、複数のテレビのコメンテーターが、自粛要請に限られた今の特措法の限界を指摘し始めました。もともと日本人は全体として、他国の人より比較的規則やルールをよく守り、自律性を持って行動する民族だと言われているし、私もそう思います。

 しかしハロウィン期間での渋谷の騒動や、としまえんでのバカ騒ぎなど、ルールなど全く無視した行動も、若者中心に垣間見られます。オレオレ詐欺や幼児虐待、近親者殺人やDVなど、非情な刑事事件も後を絶ちません。確かに他国より犯罪率は低いかもしれませんが、一定数のはみ出し者は居るものです。

 「芸能人でも自粛モードに入って夜の街から姿を消したと思ったら、たくさん出歩いている。中には報道番組のコメンテーターもいる。(訃報に泣いた人も多い)志村けんさんも自粛せず、コロナの影響で経営が苦しくなった馴染み店をハシゴして回り、わざわざお金を落としに行っていたようだ」(日刊ゲンダイ)という報道もあるようです。

 ですから全くの「自粛要請」だけではなく、一定の強制性を持たせ、罰則も考えようという人も増えてきているのでしょう。欧米を中心とする諸外国は緊急事態宣言発令の際、初めから強制性を持たせ、かつ罰則を徐々に追加していっています。

 ところがこの改正特措法から「私権制限」を取り払い骨抜きにした野党と、その応援団の左側の人たちを代表すると思われる論評を見かけました。自称批評家の東浩紀氏のエッセイ「緊急事態に人間を家畜のように監視する生権力が各国でまかり通っている」(4/16)がAERAに投稿されているので、以下に引用します。

生権力(せいけんりょく)という言葉がある。フランスの哲学者フーコーの概念で、人間を家畜のように捉える権力を意味する。たとえば税制を変えれば出生率も変わるが、そのようにして集団を「管理」するのが生権力である。

生権力の働きは、非人称で政治的に中立なふりをしてくるので抵抗が難しい。だからこそ警戒が必要だというのが常識だったが、コロナ禍でその歯止めは吹き飛んだ。

00 しかも現在台頭しつつある生権力は、感染拡大防止という「絶対善」とGPSのような監視技術に結びついているため、はるかに強力である。韓国や台湾では初期からスマホの位置情報で感染者の行動を監視している。欧州も始めている。

ビッグデータの利用はさらに多くの国で行われている。米国ではスマホ監視により集会が確認され警察が出動したと伝えられる。位置情報は究極のプライバシーだし、集会がなければ政治的自由もない。数カ月前ならいずれも非難の大合唱が起こったはずだが、いま異議を唱える声はほとんどない。世界はコロナの恐怖に駆り立てられ、自由や人権についての議論をかなぐり捨てつつある。

人類は残念ながら、生き残るためには家畜になってもいいと判断したようだ。緊急なのでやむなしとの声もあろうが、問題は二つある。一つはコロナ禍の出口が見えないこと。日本でも緊急事態宣言が発令され、感染拡大のため接触の8割削減が必要だといわれている。しかしウイルスが完全に消えることはない。いつ監視は終わるのか。

そしてもう一つはコロナ禍後の社会のヴィジョンがほとんど語られないことだ。コロナは人類全体を滅ぼすほどのウイルスではない。ほとんどのひとは生き残る。そのときどんな社会を残すかも考えるべきである。いまマスコミでは命か経済かと選択を迫る議論が多い。でも本当の選択は「現在の恐怖」と「未来の社会」のあいだにもある。こんな監視社会の実績を未来に残していいのか。

人間は確かに動物である。だから動物を管理するように管理すれば感染は防げる。でも同時に人間は動物では「ない」。そのことの意味を、絶対忘れてはならない。

 たいそうな論評ですね。しかし私は以下の4つの点で反論したいと思います。

 まず第一に、このような危機的状況においても「プライバシー」を優先する姿勢。そして人と人との接触を回避することが、この危機を乗り越えるための最大の課題なのに、自由と人権を持ち出してその最良の手段である位置情報把握の否定をして、自由に動き回らせよでもいうような議論にしている。その結果感染が抑えられず、死者や重傷者が増えることによって、むしろ人権を無視していることに気が付いていない。

 第二には、生権力による集団管理を批判している矛先が、欧米や台湾、韓国を名指ししている(おそらく日本もその中に入ると言いたいのだろう)が、なぜ最も国民を徹底的に監視している中国を除いているのか。自身が大の中国びいきだからではないだろうか。

 第三には「同時に人間は動物ではない。そのことの意味を、絶対忘れてはならない」と言っているが、犬や猫の動物の方が危険に対して非常に敏感で、人間のように意図的に無視したりはしない。だから人間に対しては危機的状況では、ある程度私権を無視して管理する必要がある。そのことを知っているのだろうか。

 そして最後に「コロナ禍後の社会のヴィジョンがほとんど語られない」と不満を述べているが、元通りの経済や社会にすることがまず必要なのではないか。そしてこの厄災を教訓にして、二度と混乱を繰り返さないことだろう。まさか出来もしないユートピアを考えているのだろうか。いずれにしろこの人自身のヴィジョンを聞いてみたいものだ。

 以上、私なりに反論して見ました。いずれにしろ、これだけのことを言うからには、中国を代表する人権抑圧の国民監視国家にこそ矛先を向けて、堂々と国際発信して欲しいものです。こんな論評を自由に寄稿できるほど、人権に最も優しいと思われる日本でぶつぶつ言うのではなくて。

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2020年4月16日 (木)

日本はイタリアの医療崩壊から学んでいない

P1_20200416140301   今回は3月にベルギーから一時帰国した後に、日本で新型コロナ患者の診察をしている澁谷泰介医師が、日経ビジネスロンドン支局長の大西孝弘氏の質問に答える形で述べた対談記事『欧州から帰国の医師「日本はイタリアの医療崩壊から学んでいない」』(日経ビジネス4/16)を取り上げます。かなり長文になりますが示唆に富んでいますのでご参考になればと思います。

 日本の新型コロナウイルス対策が新しい局面に入っている。従来は感染ルートを特定し、無症状も含め濃厚接触者の隔離を進めてきたものの、最近は感染ルートが分からない感染者が急増し、対策の見直しが迫られている。7日に安倍晋三首相が非常事態宣言を発令したが、一部の医療機関では受け入れ能力を超え、パンク寸前の病院や、院内感染によって患者の受け入れを停止する病院も出てきた。

 一方、欧州各国ではイタリアやスペインの医療崩壊に警戒を強め、急速に医療体制を整備してきた。現時点で日本に比べ感染者数や死亡者数は圧倒的に多いが、1日当たりの増加数はピークを越えつつある。修羅場を覚悟しシフトチェンジした欧州の医療現場と比較し、日本の医療現場は今、どのような状況にあるのだろうか。日本でイタリアのような医療崩壊は起きるのだろうか。日本と欧州の医療現場を知る澁谷泰介医師に話を聞いた。

―澁谷さんは3月にベルギーから一時帰国した後に、日本で新型コロナ患者の診察をしています。どのような経緯なのでしょうか。

澁谷泰介医師(以下、澁谷氏):3月中旬までベルギーのルーベン・カトリック大学で心臓外科医として勤務していました。ルーベン大学はベルギーの新型コロナ対応指定病院なので、欧州を中心に様々な情報が入ってきます。

 3月中旬にベルギーがロックダウンになり、新型コロナ対応から心臓外科の手術も減り、子供たちの学校再開のメドも立たないため、日本に一時帰国しました。

 ルーベン大学に籍があるままなので、日本では神奈川県の中核病院の救急外来など複数の病院で非常勤医師として勤務しています。日々、新型コロナの感染疑いの方からの電話に対応し、感染者の診察も行っています。今は頻繁に「発熱がある、呼吸が苦しい」という患者さんから連絡が入る状況です。現場で様々な問題を感じますので、所属先とは関係なく、日本と欧州の新型コロナ対応の医療現場を知る医師として、個人的な感想や意見を伝えたいと思います。

日本の準備不足に愕然とした

―日本の新型コロナ対応を見て、どのような感想を持っていますか。

澁谷氏 :まず、準備不足に愕然(がくぜん)としました。ベルギーから帰国する際は、日本の新型コロナ対策は既に成熟していると思っていました。欧州に比べて感染者は少ないですし、各国の事例を見ており、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の新型コロナ患者に対応した経験もあるからです。しかし、実際に医療現場に入ると、様々な問題点があることが分かり、感染を抑制してきた期間を有効に使ってきたのか非常に疑問を持っています。

救急患者の搬送先病院が見つからない事態に

 今は新型コロナ患者を受け入れられる病院が限られており、その病院では受け入れ能力を超えてパンクしかねない状況になっています。私は新型コロナ患者に対応できる病院と対応できない病院の両方に勤務しているのでそれぞれの状況が分かるのですが、一般の病院では受け入れ準備ができていないため、感染疑い患者の救急外来を避ける傾向にあります。

 具体的には、救急隊が現場で新型コロナの感染か否かを判断できないため、感染疑い患者の搬送先が見つからず、病院をたらい回しになる事態が発生しています。結果として、私が勤める地域の中核病院や、大きな病院の救命センターに重症者だけでなく軽症者までが集中し、過大な負担がかかっています。首都圏の新型コロナ対応病院は既に厳しい状況だと聞いています。

 本来は病院ごとの役割分担を明確にして、一部の病院に負荷がかかり過ぎないようにすべきなのですが、準備不足のために一部の病院に患者さんが集中し、いわゆる医療崩壊が起きかねない状態になっているのです。

 大病院の救命センターが新型コロナ患者の対応に追われ、治療に迅速な対応を必要とする脳疾患や心臓疾患などの患者さんを適切なタイミングで治療できなくなる恐れがあり、本来救える命も救うことができなくなってしまう状況です。日本救急医学会と日本臨床救急医学会は、新型コロナへの対応で医療崩壊が起きる兆候である「救急医療体制の崩壊」に直面しており、他の救急患者の治療に支障が出ているとの声明を既に発表しています。

マスク不足で院内感染の恐れ

 新型コロナ患者に対応している病院の現場でも、新型コロナに感染しているか否かの判断がつきにくい点が頭痛の種です。この時期は通常の肺炎の患者さんもたくさんいます。現状では病院の受け入れ能力や検査能力に限りがあるので、電話を受けて軽症の方には自宅待機をお願いしています。それでも病院での診察や問い合わせは非常に多く、医療現場に大きな負担がかかっています。

―新型コロナ患者を診察する際には、どのような問題点を感じていますか。

澁谷氏:マスクなど医療防護具の不足が深刻で、正直に言って怖さを感じています。医療用の高性能マスクであるN95が足りず、通常の医療現場で使うサージカルマスクで対応しているところもあります。例えば、救急外来に医師2人、看護師は8人という現場でN95が2個しかなく、非常に困っています。

 新型コロナの重症者の対応に当たっている同僚に話を聞くと、そこでも防護具が不足しているそうです。人工呼吸器を使う前に気管挿管を行いますが、医師や看護師の感染リスクがとても高まるために、その時だけは全身を覆う防護服を着ます。逆に言えば、防護服の不足から普段はN95マスク、ガウン、アイシールドのみで対応し、防護服は利用できないとのことです。感染症に対応するガウンも足りず、本来は患者ごとに交換すべきなのですが、同じ服を使い回さざるを得ないケースもある状況です。

 自分が感染する恐れと同時に、同僚や患者さんにうつしてしまう可能性があるため、緊張感がすごくあります。多いケースだと1日当たり100人ぐらいの患者さんを診察する医師もいるので、感染リスクは非常に高いと思います。これは深刻な問題で、院内感染が広がると医療現場の受け入れ能力がなくなり、一気に医療崩壊が起こりかねません。

どの病院でも院内感染は起こり得る

―日本は新型コロナの感染ルートを特定し、無症状も含め濃厚接触者の隔離を進めてきましたが、最近は感染者が急増し、感染ルートが分からなくなってきています。

澁谷氏:はい。その通りで、対策のフェーズが変わりました。感染ルートが追跡できず無症状の感染者が増えているため、新型コロナ対策ができていない病院に受診に来た患者さんが新型コロナに感染している可能性があります。知らないうちに感染者が病院に紛れ込むリスクが大変高くなっているので、今やどの病院で院内感染が起きてもおかしくない状況ではないでしょうか。

 イタリアやスペイン、ニューヨーク州で医療崩壊が起きたことが連日ニュースになっていますが、これらの地域では医療技術が劣っていたとは全く思っていません。ベルギーの医師たちに聞いてもそういう認識はありません。

 医療従事者や防護具が不足し、一部の病院に新型コロナ患者が集中したために、医療崩壊が起こってしまったのです。日本の準備不足を見ると、イタリアなどの事例から学んでいないと感じざるを得ません。今は日本の医療現場が海外の医療崩壊の二の舞いになるのではないかとの心配があります。既に都内では医療従事者が感染し、院内感染が広がり始め、患者さんの受け入れを停止した病院も出てきました。

ベルギーの大学では精神科病棟を新型コロナ専用に

―澁谷さんが勤務するルーベン大学病院ではどのような新型コロナ対策を取っていますか。

澁谷氏:欧州ではイタリアの医療崩壊の状況を注視しており、ベルギーでも3月くらいから急速に様々な対応を進めてきました。新型コロナ対策で大事な点は、感染者や感染が強く疑われる患者を、感染していない患者から隔離するゾーニングです。イタリアではこれが不十分で、院内感染が広がってしまいました。それを受け、ルーベン大学病院は敷地内にある精神科病棟を重症コロナ患者の専用病棟とし、新型コロナ専用の集中治療室(ICU)も増設しました。

 ちなみに、ベルギーは4月14日時点で感染者が3万人に達していますが、ルーベン大学病院のような新型コロナ対応病院が整備されており、救急でたらい回しになったり、病院がパンクしたりするような状況にはなっていません。ICUの受け入れ能力にもまだ余裕がある状況です。

 日本も新型コロナ対応病院を増やそうとしていますが、ベルギーとは事情が異なります。ルーベン大学病院は2000床のベッドがある大規模病院で敷地に余裕があるのですが、日本で500床を超える大規模病院は全体の5%ほどしかなく、一般的な病院は規模が小さいため、大胆なゾーニングは難しい状況です。特定の階を新型コロナ専用とし、そこに至る通路なども一般患者用と隔離しなければならず、非常にコストと手間がかかります。

 私が現在勤務する病院でも、新型コロナ患者を診察する度に換気し、導線をすべて消毒しており、たいへん手間がかかります。病院側がゾーニングのコストを負担するのは難しいため、政府がこの対策に予算をいち早く投じ、整備を進める優先順位は高かったように思いますが、整備が遅れてしまっている印象です。

ベルギーでは患者や医療従事者の精神的サポートも

 日本とベルギーでは新型コロナ患者への初期対応も大きく異なります。ベルギーではまず、症状がある患者はかかりつけ医に報告し、自宅でできる限りのケアを受けるように努めます。呼吸困難などの症状で病院にかかる必要がある場合は、大学病院の救急部門に相談し、必要な検査を受けます。

 当初、新型コロナ患者はルーベン大学関連の付属病院に送られていましたが、その能力を超えそうになったので、今は大学病院が新型コロナ患者を直接受け入れるようになりました。それまで大学病院は新型コロナの「研究施設」としての役割を担い、すべてのサンプルが大学病院内に送られ、多くの知見を積んできました。状況を見ながら病院の役割を柔軟に変えていったように見えます。

―日本の医療現場で参考になりそうな取り組みはありますか。

澁谷氏:1つは人手不足への対応です。ルーベン大学病院ではビデオや電話相談の専用窓口を開設し、付属大学の看護学生に常駐してもらっています。ここに現場の医師や看護師のリソースを取られることを防ぐためです。

 また、特徴的なのは新型コロナに関する心理的なサポートが充実している点です。今回のウイルスとの戦いにおいて、患者と医療従事者は共に隔離による孤独感や死への恐怖など精神的なストレスを抱えています。

 ICUを含むすべての新型コロナ部門には最低1人の精神科スタッフが任命され、患者やその家族向けに必要に応じて精神面のケアやサポートを行います。さらに、ストレスのかかる医療従事者向けの心理的なサポートも重視しており、そのための専門部署を作りました。

―日本でも新型コロナ対応の病院を整備しようとしています。

澁谷氏:それは喫緊の課題で、できるだけ早く整備してもらいたいと思います。それと同時に、専門知識や技術を持つ人材を新型コロナ対応の病院に集中させるべきだと思います。

 例えば、重症者の対応で人工呼吸器の不足がニュースになっていますが、医師なら誰もが使える訳ではありません。訓練された医師しか扱えないため、人工呼吸器があっても稼働できない事態はあり得るのです。体外式膜型人工肺(ECMO)に至っては、存在を知らなかった医師も多くいると思われます。

 また、医師だけではなくICU治療に精通した看護師や、人工呼吸器などの医療機器を管理する臨床工学技士などの人員確保は急務です。これらは高度な知識と経験を要する専門職のため、付け焼き刃で育成できる人材ではありません。

 そのため、新型コロナ対応病院には限りある専門の医療スタッフを集中させるべきだと思います。私は心臓外科医なので普段から人工呼吸器やECMOを使う機会が多く、今後重症患者が増えていけばそれらの治療をメインで担当する可能性があります。

 ただ、人工呼吸器やECMOによる治療は確固たる治療法ではありません。新型コロナは重症化してからさらに悪化するスピードがとても早いため、海外での報告を見るとあくまで体が回復するまでの時間稼ぎにすぎないといった認識の方が適切なのかもしれません。

 治療を始めても元の健康状態に戻らないこともあります。若い人が感染し重症になり亡くなってしまうケースもあります。確立された治療法がない現在の状況では、とにかく感染しないことが最も大事なのです。何より今の医療体制では、感染者や感染疑いの人が急増し医療崩壊が起こる危険性があるからです。

テレビの情報で不安になり病院での診察を望む人が非常に多い

―新型コロナ関連の診察の中で、気になることはありますか。

澁谷氏:患者さんが持っている情報について気になることがあります。過剰に感染を疑い、病院での診察を希望する方が非常に多く、現場ではその方々の対応に追われています。例えば、通常の風邪でも新型コロナのガイドラインでも発熱の基準は37.5度以上と定義していますが、36度台後半で発熱の症状を訴える方がとても多い状況です。「発熱があったら新型コロナの疑いがあるとテレビで聞いた」と言うのです。

 特に一部の中高年の方に顕著なのですが、情報源がテレビだけの人が多く、テレビの情報番組などの断片的な情報で新型コロナかどうかを判断するケースが散見されます。

 若い人はインターネットで様々な情報を調べられる人が多いのかもしれませんが、中高年の一部の方は自分で情報を調べないため、テレビの情報番組の情報をうのみにしてしまうようです。テレビでは医療の専門家でない方が誤解を招くような情報を伝えるケースがあるので、できるだけご自身で情報を調べた方がいいと思います。テレビ側としても、もう少し専門家が正しい知識や情報を発信する機会を増やした方がいいような気がします。

 日常生活においては、密閉・密集・密接の「3密」がいまだに回避されていないのが気になります。ベルギーでは外出制限の中で、他の家族や子供同士で集まることは禁止されています。日本ではスーパーや飲食店に家族全員で出かけていたり、公園に子供だけでたむろしていたりしています。外出自粛なので強制させることは難しいのかもしれませんが、感染者を増やさないために行動を見直してもらいたいと思います。

 世界各国と比較すると、日本の新型コロナ対策は非常にユニークな方法を取っており、3月ぐらいまでは感染による死亡者を抑えられてきました。初期の政策や医療現場の努力のたまものではないでしょうか。

 ただ、最近は感染者が急増し、感染ルートが分からなくなってきており、医療現場の緊張感は非常に高まっています。無症状の患者さんも増え、医療従事者は感染リスクにさらされながら、全力で目の前の命を救う努力をしています。患者さんと同じように、私たち医療従事者にも家族や大切な人がいることをご理解いただき、皆さんにはどうか、人との接触を避けることを徹底してもらいたいというのが切なる願いです。

 他国のように活動制限を強制させられず、個人の自主性に任せられた状態で100年に一度と言われるパンデミックを乗り切ることができれば、それこそ世界に誇ることができるのではないでしょうか。

澁谷泰介(しぶや・たいすけ)医師

神奈川県出身、私立桐朋高校卒業。2012年横浜市立大学医学部医学科卒業。同大学で初期研修の後、横浜市立大学外科治療学教室に入局し、心臓血管外科医として勤務。2019年よりベルギーのルーベン・カトリック大学心臓外科で臨床・研究フェローとして勤務

 イタリアや米国で働く医師が日本の状況を心配する報道もよく目にしますが、渋谷氏のように、ベルギーと日本の両方で働く機会と経験を持っている医師の話は、おおいに現実味があります。

 医療崩壊の大きな要因が知見を持った医師や医療スタッフの不足であり、他方医療物資の不足も大きく影響しています。又病院の整備やそれに伴う医師やスタッフの配置や集中化など、病院横断的な施策も必要だと訴えます。テレビ報道の影響にも触れ、その情報を一方的に信じ込んだ行動が医療現場に影響を与えていることも指摘しています。

 最後に日本の感染防止対策を「非常にユニークな方法」とみていて、「強制ではなく、自主性に任せられた状態で乗り切れれば、世界に誇れるのではないか」、と結んでいますが、半分は皮肉のように聞こえてしまうのは私だけでしょうか。いずれにしろ医療現場の大変さを実感する談話です。テレビなどでもう少し多くの時間を割いて報道したほうがいいように思います。

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