感染症と政治

2023年1月19日 (木)

中国の春節間近、だが不透明な中国でのコロナ感染実態 世界が恐れる「変異株」と中国人観光客による拡散

Photo_20230119092201  中国の春節が迫ってきました。タイなどの中国人観光客歓迎ムードの国は少数派で、欧米や日韓など民主主義先進国は、軒並み水際対策を強化しています。そんな中、入国時検査を実施する日韓には、ビザ発給一時停止の処置をするという暴挙に出ているのはご承知の通りです。

 日本でも感染拡大が続いていましたが、つい最近はピークアウトしたのかな、と言うような動きも見せています。そこへ中国人がどっとやってくることはかなりのリスクがあります。なぜなら中国はゲノム解析をやめたとされ、変異株の状況が分らないからです。

 そうした現在の中国の状況を、女性セブンの記事をNEWSポストセブンが公開していますので、以下に引用します。タイトルは『不透明な中国でのコロナ感染実態 世界が恐れる「変異株」と中国人観光客による拡散』(1/17公開)です。

 いつになったら新型コロナとの闘いに終止符が打たれるのか──。多くの人がそう感じながら、押し寄せる流行の第8波に不安を覚えている。だが、国内の感染拡大とは比べものにならないほどの大波が、春節の“観光気分”とともに届こうとしている。

 火葬場では遺体を乗せた車が1km近い行列をなし、病院では廊下やロビーにまでベッドが並べられている──。

 およそ3年前に世界が体験した光景が2023年年初の中国で繰り広げられている。現在、中国全土で新型コロナが猛威を振るい、感染者や死者が爆発的に増加しているのだ。

 だがそうした悲惨な状況にもかかわらず、中国当局が打ち出したのはまさかの「コロナ規制撤廃」だった。1月8日、中国はコロナ対策で超厳格にしていた出入国・出入境規制を緩和。およそ3年ぶりに中国人は「移動の自由」を手に入れた。

 中国在住の日本人が語る。

「これまでは空港に入場する際に陰性証明書が必要でしたが、いまはいらなくなりました。外国から中国に戻ってきたときの隔離措置やPCR検査も撤廃され、事実上の“海外旅行解禁”となりました」

 そして迎えるのが、中国人が大移動する春節の連休(1月21~27日)だ。延べ21億人の移動が見込まれるなか、日本にも多くの中国人がやって来る。そのとき、いったい何が起きるのだろうか。

 コロナ発生後、中国は徹底してウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策を断行し、全国民にPCR検査を繰り返し、感染者や濃厚接触者が出たら即座に隔離して一帯を封鎖した。

 しかし昨年12月、当局は方針を大転換。オミクロン株は軽症、無症状が9割以上で、重症率は1%前後にとどまるなどのデータをもとに従来の検査や隔離、各種規制を次々と撤廃し、「ウィズコロナ」に踏み切った。

 結果はどうか。1月上旬の段階で、中国当局が公表した昨年12月上旬〜1月上旬までの死者は中国全土でわずか数十人にとどまった。

 だが「この数字は実態とは大きく異なる」と、国際未病ケア医学研究センター長の一石英一郎さんが指摘する。

「ワクチン接種が進んでいないのに一挙に規制を撤廃したことから、中国全土で感染が急拡大しました。ところが当局は大規模なPCR検査を取りやめ、基礎疾患の悪化で死亡してもコロナの死者には含まない方針を打ち出したため、感染者数や死者数の実態が把握できなくなった。世界保健機関(WHO)も『中国政府はコロナの本当の影響を過少報告している』と批判しています」

 医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広さんも中国当局の姿勢を批判する。

「中国の公式発表には信憑性がありません。現実には中国の感染状況は相当にひどく、病院では充分な医療を受けられず、ドラッグストアの薬はどこも売り切れだそうです。知人の中国人の親族がコロナで亡くなりましたが、診察の順番を待って病院に2時間いるうちに20人が運び込まれて、うち2人がその場で亡くなったと聞きました」

 冒頭で紹介したように、中国・北京の病院は患者があふれかえり、葬儀場で人々が行列をなす映像がSNSで拡散された。火葬場がパンクして、30〜40体の遺体が地面に放置されているとも報じられた。

 感染の規模もすさまじく、中国疾病予防センターの担当者は、人口2000万人以上の首都・北京について、12月末の時点で「感染率は80%を超えた可能性がある」との見方を示した。また、中国全土に目を移しても、全人口14億人の半数近い6億人がすでに感染している可能性があるとも報じられた。

 イギリスの医療関連調査会社は、今後ピーク時に中国で1日あたり最大2万5000人が死亡すると試算する。

 不透明なのは、感染実態だけでない。世界が恐れるのは「中国発変異株」の出現だ。

「6億人が感染したとされる中国では新たな変異株が出現している可能性があります。しかし中国では民間のゲノム解析が禁じられているとされ、変異株の対策が不鮮明です。春節で日本国内に変異株が持ち込まれたら、大変な騒ぎになるでしょう」(一石さん・以下同)

 オミクロン株から変異したウイルスは強毒化の恐れがある上、従来のワクチンが効かないかもしれない。この先、得体の知れないウイルスが日本に上陸する恐れがあるのだ。

「陰性」ばかりの検査キット

 中国のコロナ対策への不信感が募るなか、中国人観光客を通じた感染拡大を恐れる各国は水際対策を強化した。日本政府も中国本土から直行便で来日する渡航者に対し、出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明の提出や、入国時に抗原検査より精度の高いPCR検査などを課し、陽性の場合は7日間の隔離となる。

「それでも感染者の上陸をゼロにするのは難しい」

 一石さんはそう指摘する。

「コロナ規制の緩和前も、ビジネス往来する中国人や、外国人は出入国が可能でした。昨年12月30日から1月5日までに中国本土から日本に入国した4895人のうち、408人が空港検査で陽性となりました。韓国では中国からの入国者に『入国前陰性確認書』の提出が義務付けられた初日の1月5日、ある旅客機の乗客278人のうち35人が陽性でした。

 日韓の事例から見て、中国から来る入国者のうち8~12%程度がコロナに感染している可能性があります」

 昨年末、中国からイタリア・ミラノに到着した航空2便に至っては、乗客の半数近くが陽性だった。

 陰性確認書があってもすり抜けが起こるのはなぜか。ひとつの要因は、中国の医療用品にある。

「コロナ初期から中国産の検査キットや医療用マスクは欠陥品だと欧州各国が批判していました。実際に京都府警が中国から不正に輸入された中国製の検査キットを調べると、日本の承認品に比べて264分の1の精度しかなく、結果もほぼ陰性しか出ませんでした。日本や欧米諸国は入国時に72時間以内の陰性証明書の提出を求めていますが、中国で流通する精度の低い検査キットを用いた検査結果の信憑性は高くありません」

 最後の砦となるのが日本の空港におけるPCR検査だが、こちらも盤石とは言い難い。

 カギを握るのは「潜伏期間」だ。オミクロン株は2~3日程度の潜伏期間を経て発症するケースが多い。仮に中国で発行される72時間以内の陰性証明が科学的に正しいものだとしても、中国での検査後に現地で感染して潜伏期間に突入したら、日本の空港でのPCR検査では感知できず、コロナが“密輸”されてしまうのだ。

「中国と日本は渡航距離が短く、渡航中に潜伏していたウイルスが“陽転化”する可能性が低い。日本の空港でのPCR検査を潜伏してすり抜けた中国人観光客が入国後に陽性化し、観光地で感染が拡大する恐れがあります」

 コロナ規制の撤廃を受けて中国では海外旅行への関心が高まり、旅行サイトによると、春節の連休は海外旅行の予約が前年比540%増となった。中でも日本は行きたい国トップ3に入る人気国で、大観光団の来日が予想される。

 過去に日本では、家庭内感染から学校や職場などにウイルスが広まった。この先は、“中国版・家庭内感染”からの感染拡大が懸念される。

「潜伏期間で空港検疫をすり抜けた中国人観光客が滞在中に発症する場合、まずは旅行中に行動を共にする家族や団体に感染させて、そこから日本人に感染が波及する可能性があります。すでに日本は“世界一コロナに感染している国”なのに、今後さらに拍車がかかって厳しい状況に陥り、医療体制が逼迫することが心配されます」

 中国当局は日本の水際対策強化に猛抗議して、日本人渡航者へのビザ発給を停止する対抗措置を講じた。

 日本はこうした中国の強面に屈せず“コロナ密輸”の防御態勢を固める必要がある。

 中国はゼロコロナ政策を一転して、集団免疫を狙っているという情報もあります。ある都市では80%以上感染したとか、こんなことは中国でしか起こりえないでしょう。しかも死者が大量に出ているのに、最近の公式発表では先月8日から今月12日までの死者は6万人だそうです。

 中国人ですら信用しない当局の数字。もう殆どの中国人が政府の公表数字は信用していないと思います。それでもそれをやってのけるのが独裁国家です。中国国内ではそれでいいかもしれませんが、周辺国はたまったものではありません。記事にあるように「“コロナ密輸”の防御態勢」をしっかり固めなければなりません。

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2023年1月15日 (日)

コロナ交付金で病院黒字化「幽霊病床」も 知られざる税金の無駄遣いが会計検査院調査で暴かれる

Images-10_20230114135201  コロナ感染の第8波の収束が見えない中、国のコロナ関連の支出が増大し続けています。ワクチンや検査費に加え、病院に対し病床確保のための交付金も、増え続けているようです。

 昨日の読売新聞に、この病院への給付金の詳細記事が掲載されていたので、今回はこれを取り上げます。タイトルは『コロナ交付金で病院黒字化、「幽霊病床」も…検査院調査』(1/14公開)で、以下に引用します。

「患者拒否でも支給」見直し要求

 会計検査院は13日、新型コロナウイルス患者向けの病床を確保する国の交付金事業について検査報告書を公表した。赤字だった病院が多額の交付金によって黒字に転換している実態や、交付金の対象なのに患者を受け入れられない「幽霊病床」の存在が指摘された。(社会部 山下真範、成田沙季)

3兆円

 交付金は、コロナ患者を受け入れる空き病床と、コロナ診療のために稼働を停止した病床が対象で、都道府県を通じて支給される。当初は1床あたり1日最大9万7000円だったが、2度の引き上げで43万6000円に拡充。今月11日現在、確保数は全国で4万8808床に上る。

 2020~21年度の受給額は全国3477医療機関で計3兆1029億円に上った。検査院がこのうち国立病院や労災病院など269病院の収支を調べたところ、コロナ禍前の19年度は平均約3・8億円の赤字だったのに、21年度は約7億円の黒字に転換。医業収支は約7億円の赤字だったが、病床確保交付金など補助金の受給額が平均約14億円に上っていた。

 検査院の聞き取りに対し、延べ208病院が「確保病床への患者の受け入れを断ったことがある」と回答した。理由について、60病院(29%)が「看護師不足」を挙げた。離職者の増加やクラスター(感染集団)の発生などやむを得ない事情もあったとみられるが、検査院は「患者を受け入れられない病床に交付金を支給するのは適切ではない」とし、使用可能な病床に交付対象を絞るなどの見直しを厚生労働省に求めた。

看護師不足

 「結果的に幽霊病床になったが、医療現場の過酷な状況も理解してほしい」。検査を受けた病院運営法人の職員はそう話す。

 医療現場では、離職中の「潜在看護師」の復職支援などが行われてきたが、看護師不足の解消は容易ではなかった。職員の勤務先は全国で病院を運営しており、コロナ患者が増えた場合は病院間で看護師を融通し合うとして交付金を申請した。

 だが、21年夏がピークの「第5波」で感染が全国に広がると、都心部の運営病院で看護師が不足。患者の入院要請を断らざるを得なくなったという。

 感染拡大に歯止めがかからない中、自治体は病床確保に躍起になっていた。埼玉県の幹部は「とにかく病床数の確保が最優先で、実際にどれくらい稼働できるかは考える余裕がなかった」と振り返る。

 政府の財政制度等審議会の分科会でも21年10月、約15億円を受給しながら受け入れ患者が年間わずか25人だった例などが報告されていた。厚労省は22年以降、病床使用率が地域平均の7割に満たない医療機関への支給を30%減額するなどしているが、検査院は、事実上稼働できない病床に交付金が出ているケースは現在もあるとみている。

逆転現象

 検査院は、コロナ診療のために稼働を停止した休止病床についても、問題点を指摘した。

 休止病床への交付は、コロナ診療に人員を集中させるために閉鎖した病床や、院内感染を防ぐために一部を使えなくした病床について、休止しなければ収入になっていた分を 補填する趣旨がある。

 ところが、コロナ禍前の病床使用率にかかわらず、全床分を交付する仕組みになっていた。このため、元の病床使用率が著しく低かったケースでは、休止病床にすれば収入が増える「逆転現象」が起きていた。

 検査院が382病院の休止病床を調べたところ、コロナ禍前の病床使用率が5割に満たない病院が17(4・4%)あった。検査院は、元の病床使用率を踏まえて交付金額を定める仕組みにするべきだとしている。

対策費 76兆円執行…巨額予算 国債頼み

 国のコロナ対策費については、会計検査院が昨年11月、2019~21年度の予算額が94兆円に上り、うち76・4兆円が執行されたとの検査報告書を公表した。22年度も含めれば100兆円を超えるが、多くは国の借金である国債に頼っており、将来にツケを回している形になる。

 検査院の報告書によれば、94兆円の内訳は「経済・雇用対策」が60・2兆円で最も多く、病床確保の交付金を含む「感染症防止策」は18・6兆円。スルメイカのモニュメントなど使途の是非が議論を呼んだ「地方創生臨時交付金」は15・1兆円だった。

 病床確保交付金については、看護師数などが基準に満たないのに一般病床より単価の高い高度治療室(HCU)として申請するなど、過大支給が32病院で計約55億円あったことも指摘されていた。

 今後、新型コロナの位置づけが感染症法上の「2類相当」から「5類」に引き下げられれば、患者への入院勧告などの根拠はなくなる。だが、厚労省の助言機関は11日、「医療 逼迫ひっぱく 時の調整機能を維持する必要がある」などとして、引き続き病床確保のための財政措置を行うよう政府に求めた。来年度以降も、巨費が投じられる可能性は高い。

 真野俊樹・中央大教授(医療経営学)は「感染収束が見通せない中では当面、国が病床確保などを支援すべきだ」とした上で、「巨額の公費投入について国民の理解を得るため、検査院の指摘も踏まえた適切な制度設計を進めていく必要がある」と話した。

 安倍政権、菅政権そして現在の岸田政権と、三代に渡って感染の波が継続する新型コロナウイルス感染症。国民を疫病から守るという号令の元、ワクチンや検査からダメージを受けた業界への交付金、そして治療まで一貫して国費でまかなってきました。

 その額が100兆円を超えていると聞いて驚きますが、その中でも雇用対策交付金と同様かそれ以上の、病床確保の交付金に大きな無駄が生じている実態が浮き彫りになっています。

 以前から使用していない病床への交付金の噂は聞いていましたが、作為を巡らせ、意図的に多くの交付金を受けようとする病院の実態も明らかになっています。それまでの赤字経営から一転黒字になったと言うことは、明らかに過剰な交付を行っていると言うことでしょう。

 確かにコロナ病棟は大きな負荷がかかり、日夜患者への対応で大変なのは分りますが、一方でこう言う実態を目にすると、その抜け穴を塞ぐよう行政に注文をつけなければなりません。国債で補填しているとは言え、将来への負担を少しでも減らす努力は行政の責任でしょう。

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2023年1月12日 (木)

春節を控えた中国で再び“コロナ感染爆発”が起こっている「2つの根本的原因」 なぜ今「ゼロコロナ政策」をやめたのか

17_20230111165301  コロナ感染爆発の中国からの渡航者に、日本は水際対策として検閲の強化をしましたが、在日中国大使館は対抗処置として日本人へのビザ発給手続きを停止すると発表しました。欧米にはこの処置は執らず、日本と韓国だけのようです。

 対抗処置と言うからには、中国も水際対策をすればよいわけで、意味が分りません。常套手段の言いがかりでしょう。しかも日韓だけという事は、経済的に中国依存の高い国への腹いせのように思えます。何処まで狭量な態度でしょう。

 ところで中国のコロナ感染爆発、一説には国民の半数を超えたとありますが、何処まで本当か分りません。中国疾病予防コントロールセンターの公式発表では、8日基準で14171人。死者は数人レベルです。誰がこんな数字を信じるのでしょうか。あのWHOでさえ、正確な数字を要求しています。

 最近の中国のコロナの感染爆発状況を、現代ビジネス編集次長の近藤大介氏が、週刊現代誌上で公開していますので、以下に引用して紹介します。タイトルは『春節を控えた中国で再び“コロナ感染爆発”が起こっている「2つの根本的原因」 なぜ今「ゼロコロナ政策」をやめたのか』(1/10公開)です。

「民族大移動」の季節

1月22日、中国は春節(旧正月)を迎える。14億中国人は、1月1日の元日を「単なる一休日」としか見なしていない。春節こそが、絶対的に故郷で親族と過ごすべき「最重要の祝日」である。

中国政府の予測では、今年の春節期間(前後を含めた40日間)、延べ20億9500万人の「民族大移動」になる見込みだという。これは、「コロナ前」の2019年の延べ29億8000万人の約7割にあたる。すでに7日から、鉄道や航空などで、「春運」(チュンユン)と呼ばれる春節の帰省ラッシュが始まった。

「春運」で恐れられているのが、現在、都市部で猛威を振るっているコロナウイルスが、農村部にも拡散し、いよいよ「全民感染」の状態になることだ。

当然ながら農村部は都市部と較べて、医療体制が整っていない。かつ高齢者の住民が多いので、彼らが重症化して多数の死者を出すことも考えられる。すでに都市部では、火葬場に人々が殺到し、どこも機能不全に陥っている。

だがそれでも、最悪のコロナ禍の中で、「春運」は始まった……。

中国で、なぜいま再びコロナウイルスが猛威を振るっているのか。現地での個々の現象については、すでに様々な報道があるので重複しないが、その根本的原因とも言える中国の政治システムの「欠陥」について指摘しておきたい。

中国の政治システムには、少なくとも二つの大きな「欠陥」がある。一つは時期的なもので、もう一つは普遍的なものだ。

5年に一度の「空白の5ヵ月」

まず前者から述べる。

中国の政治は、憲法前文などが法的根拠となり、「共産党が政府を指導する」システムである。具体的には、5年に一度、秋に共産党大会を開催し、その人事と方針に基づいて、翌年3月に新政府が発足する。そして新政府が5年間、行政を司っていくというものだ。

ところがこのシステムを進めると、5年に一度、「陥穽(かんせい)」が生まれる。「空白の数ヵ月」と言ってもよい。

つまり、秋に共産党大会で新たな人事と方針が決まっても、それを実行していく新政府は、翌年3月にならないと発足しないのだ。それまでは「旧政府」が継続して行っていくことになる。

特に、10年に一度、政権が代わる時が要注意である。巨大な官僚機構から見ると、新しいボスは3月にならないとやって来ない。それまでは以前からのボスたちが司っているが、彼らは3月には去っていく。そのため万事「後ろ向き」で、「膨大な不作為」が起こるのである。

つまり、諸政策が停滞する。そしてそうした中から、「重大な危機」が起こるというわけだ。

一例を示そう。2002年11月に第16回共産党大会が開かれて、江沢民総書記から胡錦濤総書記にバトンタッチされた。しかし胡錦濤政権が発足したのは2003年3月で、その間に「空白の4ヵ月」が生まれた。その時起こったのが、SARS(重症急性呼吸器症候群)だった。

突如発生した未知のウイルスに対して、時の江沢民政権は有効な手立てを打てないまま、2003年3月に胡錦濤政権にバトンタッチした。その結果、新政権発足が華々しく行われた北京は、SARSが蔓延して修羅場と化した。

最終的には、中国を中心に8096人の感染者が報告され、うち774人が死亡したのだった。いまの新型コロナウイルスに較べれば小規模に思えるかもしれないが、感染者の1割近くが死亡するという点では、SARSの方が恐ろしかったとも言える。

ともあれ、それから20年を経た現在も、「空白の5ヵ月」の真っただ中なのである。本来なら、「2期10年」で引退すべき習近平総書記が、昨年10月の第20回共産党大会で、トップの座に居座った。しかも、序列2位の李克強首相を始めとする「気に入らない幹部たち」を、あまねく蹴散らしてしまった。それでも蹴散らされた面々は、3月まで残っているのだ。

こうした「変則形」は、巨大な官僚組織に、とてつもない「停滞」をもたらしている。国務院(中央政府)の「本丸」からして、李克強首相は共産党大会で「否定」されたのにまだ残っていて、代わって「肯定」された李強新首相が就くのは3月だ。そのため部下たちは、いま李克強首相に従えば、3月に李強新首相に蹴飛ばされると思うから、戦々恐々と委縮している。

そうした巨大な官僚機構の機能不全の中で起こっているのが、いまの中国の新型コロナウイルス騒動なのである。そのため、中国政府が万事、適正な政策を講じられるはずもないのだ。

すでに14億中国人の過半数が感染

中国は、それまで3年近く続けてきた「ゼロコロナ政策」を転換するにあたって、ウイルスの急激な蔓延と、それに伴う影響などについて、適切な措置を取るよう準備していなかった。「空白の5ヵ月」にあたるため、「誰も責任を取らない状況」だったのだ。1月8日からは、新型コロナウイルスは「乙類乙管」という、それまでより低レベルの感染症に切り替えられた。

こうしたことによって「全民感染」という状況を引き起こした。中国では「津波」にたとえられている。はっきり統計を取っていないので実数は不明だが、すでに14億中国人の過半数が感染したとも言われる。

おそらく多数の重症化した高齢者が、死亡していることだろう。「おそらく」というのは、圧倒的多数のコロナウイルスによる死者が、「別の要因」をつけて葬られているため、実態が掴みきれないからだ。

昨年12月20日から、コロナウイルスによって心臓、脳、血管などに障害が起こって死亡した場合は、「コロナウイルスによる死亡」とはしないと定めた。ちなみに、国家衛生健康委員会が発表した1月7日の新規感染者数は7074人で、死者は2人である。

こうした状況に、憤りを隠せない現場の医師も多い。上海のある医師は、1月6日にSNSにこんな投稿をした。

〈 本来ならこんな文章を発表したくはない。だがあれこれ迷った末に、やはり出すことにした。(この文章を題材に)討論したり憤ったりすることを歓迎する。

私は上海で仕事をしていて、最近は大量の新型コロナウイルスの患者が入院しに来る。その中の少なからぬ人々に対して、病院側は新型コロナウイルスの患者と診断するなと言ってくる。

病人は咳(せき)と発熱で入院している。PCR検査をしたら陽性だった。胸部のCTスキャン検査をしたら肺に炎症を起こしている。入院後も肺の症状が悪化し、家族が延命措置を拒否したため、最後は血圧や心拍数が下がるなどして死亡した。

私は死亡通知書に、「死亡の原因は重症化した肺炎で、そこに至ったのは新型コロナウイルスのせいだった」と書いた。すると翌日、病院側から電話が来て、「死亡原因を変更するように」と言われた。「では何と書けばいいのか?」と聞いたら、向こうも押し黙ってしまった。

私は問いたい。一体なぜなのか? なぜ新型コロナウイルスにかかって死亡したと書いてはいけないのか? 患者の家族に対して、もうこれ以上の書き換えはしたくない 〉

まさに、「無理が通れば道理が引っ込む」というわけだ。この医者の投稿は瞬く間に削除されたが、多くの人々に回覧され、共感が広がった。

ともあれ、「空白の5ヵ月」の間、適切な政策が臨機応変に打てないことが、中国の政治システムの「時期的な欠陥」である。こうした状況が、春節を挟んであと2ヵ月ほど続くことになる。

「2023年世界の10大リスク」第2位

もう一つの中国の政治システムの「普遍的な欠陥」とは、先の第20回共産党大会によって、習近平総書記という今年、古稀を迎える高齢の政治家に、権力が集中してしまったことである。

このことは、アメリカで地政学を研究する著名な民間組織「ユーラシア・グループ」が、「2023年世界の10大リスク」の第2位に挙げている。ちなみに第1位は、「ならず者ロシア」だ。

以下、ユーラシア・グループの発表を引用する。

〈 リスクNo.2 「絶対的権力者」習近平

中国の習近平国家主席(共産党総書記)は2022年10月の第20回党大会で、毛沢東以来の比類なき存在となった。

共産党の政治局常務委員を忠実な部下で固め、国家主義、民族主義の政策課題を事実上自由に追求することができる。しかし、彼を制約するチェック・アンド・バランスがほとんどなく、異議を唱えられることもないため、大きな誤りを犯す可能性も一気に大きくなった。

習近平の中国では、恣意的な決定、政策の不安定さ、不確実性の増大が常態化することになる。国家資本主義の独裁国家が世界経済でこれほど大きな位置を占めるという前例のない現実を考えると、このグローバルで巨大な問題は過小評価されている…… 〉

一人に権力が集中することは、物事の決定を早めるというメリットもありそうだが、実際はそうなっていない。そもそも、これだけ複雑化している世の中で、森羅万象を一人で決めることなど、神でもなければ不可能だ。しかも小国ならまだしも、中国は14億という世界最大の人口大国なのだ。

ユーラシア・グループは、「習近平主席が犯した不手際」の例として、やはりコロナ対策を挙げている。

〈 昨年、私たちは中国がゼロコロナの罠に自らはまったと警告したが、残念ながらその通りであった。習近平は高品質の外国製mRNAワクチンを拒否し、国産ワクチンの接種率も不十分だった。中国国民は重症化しやすく、突然のゼロコロナ政策からの転換は致命的となった。(中略)

わずか数週間前、習近平は2年以上前にゼロコロナ政策を開始した際と同様、恣意的な方法で同政策を終了させた。高齢者のワクチン接種率が低いにもかかわらず、市民や地方政府に警告することもなく、その結果発生する集団感染に対処する十分な準備もないまま、すべての制限を解除してウイルスを野放しにするという彼の即断により、100万人以上の中国人が死ぬことになるだろう(ほとんどはコロナによる死者と報告されないだろうが)。

このような途方もない、そして巨大なコストのUターンを実行できるのは、無敵の権力を持つ指導者だけである 〉

読んでいて、いずれも納得のいく指摘である。ちなみに先日、中国外交部の関係者と雑談していたら、外交部の退職者だけで、すでに50人以上「急死」していて、そのリストが回覧されているのだとか。

中国国内で噂される「4つの説」

それでは、習近平主席は昨年末になぜ突然、あれほど固執していた「ゼロコロナ政策」を放棄したのか?

これには中国国内で、4つの説が噂されている。いずれも噂の域を出ないが、一応、列挙しておく。

【1.経済悪化深刻説】

昨年3月5日、全国人民代表大会の初日に、李克強首相が「今年は5.5%前後の経済成長を達成する」と華々しく述べた。ところが、「ゼロコロナ政策」が足を引っ張り、2022年の中国経済は悪化する一方だ。

足元で、第3四半期までの経済成長率3.0%、11月の輸出は前年同期比-8.7%、輸入は-10.6%、小売売上高(消費)は-5.9%、10月の若年層(16歳~24歳)失業率は17.9%……。

このままでは政府が掲げる「復工復産」(仕事と生産の復活)は厳しいと判断し、「ゼロコロナ政策」に終止符を打った。

【2.「白紙運動」影響説】

昨年11月24日に、新疆ウイルグル自治区の中心都市ウルムチで、マンション火災が発生。極端な「ゼロコロナ政策」によって住民が逃げ遅れたり、消防隊が駆けつけられなかったりして、10人が死亡した。

この事件の実態がSNSで拡散されたことで、中国各地の大学や市街地などで、いわゆる「白紙運動」が起こった。若者たちが白紙の紙をかざして、「習近平下台!」(習近平は退陣せよ)「共産党下台!」(共産党は退陣せよ!)などと叫んで抗議する様子は、日本でも広く報道された。

このように、あからさまに共産党や最高指導者を非難するデモが中国で発生したのは、1989年の天安門事件以来、33年ぶりのことだった。習近平総書記としては、10月に第20回共産党大会を開いて、異例の「総書記3期目」を確定させたばかりというのに、その威信にすっかり傷がついてしまった。

中国の若者たちが、ここまで怒りを爆発させたのは、中国がいつまでも理不尽極まりない「ゼロコロナ政策」を続けていたからだった。しかも、このままでは、習近平指導部としては望まない若者たちとの全面対決になるリスクがあった。

そこで、ひとまず「ゼロコロナ政策」の看板を一気に下ろして、国内的な宥和を図ろうとした。

【3.習近平主席感染説】

昨年11月18日と19日、タイのバンコクでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が開かれ、習近平主席も参加した。その中で習主席は19日、自らが昨年7月1日に任命した李家超香港行政長官と会談した。二人はマスクをつけずに握手を交わし、近距離で比較的長時間、話し込んだ。

その翌日に李家超長官が香港に戻った時、空港でPCR検査を受けたところ、コロナに感染していることが判明した。おそらく李長官は、自らが感染したこと以上に、畏れ多い習近平主席に移してしまったのではないかということを懸念したに違いない。何せ自分を香港トップに押し上げてくれた恩人なのだ。

だがやはり、習近平主席に感染していた。ただちに「中南海」(最高幹部の職住地)で緊急医療体制が組まれ、習主席は隔離静養生活に入った。

実際、19日の晩にバンコクから帰国して以降、25日にキューバのディアス・カネル主席と人民大会堂で会談するまで、丸5日間も公の場に姿を現さなかった。こうしたことは極めて異例だ。

ところが、習主席はほぼ無症状だった。「なんだ、コロナって、こんなものか」。それで習主席は、「ゼロコロナ政策」の解除を決断した。

【4.WHO圧力説】

WHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長は、「習近平主席の盟友」とも揶揄されているが、昨年来、中国の極端な「ゼロコロナ政策」に頭を悩ませていた。そこでコロナ対策に関して、世界と足並みを揃えるよう、中国に何度も要請してきたが、馬耳東風だった。

WHOは昨年秋、中国が今後とも極端な「ゼロコロナ政策」を継続するならば、世界から中国だけを切り離して、2023年以降のコロナ対策を実行していくと、最終通告を出した。中国が一番恐れるのは、中国を除外することによって、台湾を加盟させたり、オブザーバーとして迎え入れたりすることだ。そこで渋々、「ゼロコロナ政策」に終止符を打った。

重ねて言うが、これ4説は、いずれも噂の域を出ておらず、何ら確証を得られたものではない。だが1月8日、中国は完全に「ゼロコロナ政策」と決別した。

より深刻な新型が出現した場合

今後の展開だが、前述の「ユーラシア・グループ」が、こんな警鐘を鳴らしていることを、おしまいに紹介しておこう。

〈 もしコロナに深刻な新型が出現した場合、習近平の存在が理由で、中国国内外に広く拡散する可能性が高くなる。

中国は検査やゲノム解析に力を入れていないため、新型のウイルスを特定することができないだろう。医療制度が貧弱すぎるため、感染症が変化してより深刻になっていても気づくことができない。

これまでの習近平の透明性のなさから考えると、強力な変異体のニュースを公表することもできないだろう。世界はより致命的なウイルスに備えるための時間をほとんど、あるいは全く持てないだろう 〉

 武漢を発祥の地とする新型コロナウイルス(チャイナウイルス)によるパンデミックは、3年の時を経て、再び中国から世界に向け二次パンデミックを起こそうとしています。もう勘弁して欲しいと心から思います。中国へのビザ発行停止も結構、とにかく中国へ行かない、中国から来させない様にして欲しいのが偽らざる心境です。

 おそらく将来歴史の記述の中で、習近平はスターリン、毛沢東、そしてプーチンと並ぶ、極悪でかつ愚かな指導者の一人にあげられているでしょう。そんな中で暮らす中国人も不幸ですが、台湾を初め周辺国も大迷惑です。

 願わくは経済の大幅な停滞から来る、国民の共産党への不満が鬱積して、政権がひっくり返ることですが、すぐには無理でしょうね。プーチンと同様、本人の失脚ないしは死を待つしかないのでしょうか。いずれにしろ日本はこの国から飛んでくる火の粉を何とかして防ぐしかありません。

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2023年1月 7日 (土)

長谷川幸洋氏:中国・習近平がたくらむ「コロナ感染輸出」の恐ろしすぎる危険性 日本はどうすべきなのか?

Images-6_20230106162901  昨年12月、突然ゼロコロナ政策を解除した中国。その直後、瞬く間に感染爆発が発生、中国のほぼ全土に感染が広がっています。正確に言えばゼロコロナ政策の最中から、感染は拡大していたようです。何せ、少しでも疑いのある人が突っ込まれていた隔離施設は、「密」状態だったのですから、感染していない人でもその中で感染していたことが窺えます。

 当局は責任逃れで感染者の実数把握はもとより、重症者や死者の公表も控えています。中国に忖度していたWHOまで、「中国から現在報告されている数字は入院者数、集中治療室(ICU)利用者数、また特に死者数について、新型コロナによる真の影響を過少に示している」とデータに疑問を呈しています。

 そうした中、中国は国内外の渡航規制の解除に踏み切りましたが、日米を始めEUその他の多くの国が中国人の入国時の検査など、検閲強化を実施し始めています。モロッコは入国禁止に踏み切りました。中国はなぜか「政治的な動き」だと反発していますが、政治的ではなくあくまで疫病拡散防止の処置でしょう。

 この中国のコロナの感染状況に関し、ジャーナリストの長谷川幸洋氏が現代ビジネスにコラムを投稿していますので、取り上げます。タイトルは『中国・習近平がたくらむ「コロナ感染輸出」の恐ろしすぎる危険性 日本はどうすべきなのか?』(1/06公開)で、以下に引用して掲載します。

中国で「感染爆発」が起きている!

中国で新型コロナの感染が爆発中だ。感染はどこまで広がるのか。新たな変異株は誕生していないのか。不安は募るが、明らかになった点もある。中国の意図だ。彼らは「自然感染による集団免疫の獲得」を目指す一方、西側への「感染輸出」を狙っているように見える。

肝心の中国が情報を公開していないので、実態は不明だが、米ワシントン大学の保健指標評価研究所(IHME)が昨年12月15日に発表した推計によれば、ロックダウンの再開などがなければ、中国で「3月1日までに最大460万人が感染する」と予想している。

その場合、1日当たりの死者(報告分)は3月29日までに8860人に達する。死者は累計で4月1日までに50万2000人、2023年末までには「100万人をはるかに超える」見通しだ。

もっとひどい予想もある。

英国の調査会社、エアフィニティ(Airfinity)が1月3日に更新した推計によれば、1月13日時点で1日当たりの感染者が370万人に達し、死者は10日後にピークを迎えて、1日当たり2万5000人、昨年12月以来の累計死者は58万4000人になる。4月末までには累計の死者が「中国全土で170万人に達する」と予想している。

新しい変異株なのか

この新型コロナは、どんな種類なのか。

中国の疾病予防センター(CDC)の専門家は、記者会見で「130のオミクロン変異株のうち、50種類を中国で検出した」と語っている。だが、それがすべて、とは限らない。

世界保健機関(WHO)によれば、判明している分だけで、オミクロンには500種類以上もの派生型がある。心配なのは「まったく新しい凶暴な変異株が生まれていないかどうか」だ。

WHOは繰り返し、中国に情報提供を求めてきた。中国は12月30日、ようやく協議に応じたが、それでも情報を開示しなかった。WHOは声明で「中国側には引き続き、ウイルスの遺伝子配列情報を含めて、リアルタイムの情報提供を求めた」と述べている。

新たな変異株は出ているのか、あるいは、これから出てくるのか。この点は、専門家の間でも意見が分かれている。

ジョンズ・ホプキンス大学の感染症専門家、スチュアート・キャンベル・レイ教授は「中国は非常に多くの人口を抱えている一方、これまでは限られた免疫しかなかった。それは新株が爆発する土壌になっているように思う」と語っている。

一方、同じジョンズ・ホプキンス大学のデイビッド・ダウディ教授は「新株が生まれて、世界的な感染爆発が起きる可能性は確かにあるが、オミクロンに対する世界レベルの免疫効果を考えれば、その可能性は1年前より低いだろう」と、やや楽観的だ。

オミクロン変異株については、米国の疾病予防センター(CDC)が12月30日、「XBB1.5」と呼ばれる派生型の感染が米国で40.5%を占めた、と発表した。この型がいま、最大の焦点になっている。

WHOの専門家は1月4日、記者会見で「XBB1.5はこれまで見つかったなかで、もっとも感染力がある」と語った。米国では、12月24日時点でXBB1.5感染者の割合が前週の2倍になった。大変な感染力だ。ただし、毒性については、WHOは「データは入手していないが、過去の派生型と比べて、より重いという証拠もない」と語っている。

中国はどうかと言えば、中国共産党の新聞、チャイナ・デイリーが1月3日、「中国の専門家チームが上海でXBB1.5による3例の感染を検出した」と報じた。ただし、同紙は「中国が発生元ではなく、外部から流入した」と報じている。いずれにせよ、中国紙の情報なので、真相は不明だ。

ゼロコロナ政策からの急転換

こうしたなか、「中国の新たなコロナ戦略」が浮き彫りになってきた。彼らは、いまや「自然感染による集団免疫の獲得」を目指している。中国製ワクチンには「効果が期待できない」と分かったからだ。それだけではない。「西側への感染輸出」も狙っているかのようだ。それは、状況証拠が物語っている。

第1に、中国はウイルスの遺伝子配列情報の公開を拒否している。これが公開されなければ、新たな変異株が生まれているのかどうか、分からない。そうなると、西側は対応する新たなワクチンを作れない。

次に、中国は西側のワクチンを欲しがっていない。「中国は中国製ワクチンとロックダウンでコロナを制圧した」と自慢してきた手前、いまさら西側に頭を下げて、ワクチン提供を頼めないのだろう。習近平総書記(国家主席)の沽券に関わるからだ。求心力がガタ落ちしてしまう。

習近平政権は昨年12月7日、ゼロコロナ政策を突然、放棄した。なぜ方針転換したのか、真相は不明だが、中国ウオッチャーの間では「各地に広がったデモを恐れた」「習氏自身が感染し『コロナの症状は軽い』と分かった」「ロックダウンでも対処不能で、感染を止められなくなった」など、さまざまな説が流れている。

以来、中国はPCR検査の義務付けや国内移動の規制を矢継ぎ早に廃止した。香港の新聞、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は1月5日、香港と中国全土の往来を止めていた検問所を「8日から開放する」と報じた。同紙は「これで1日当たり5万人が香港と中国本土を自由に往来するようになる」と伝えている。

中国は同じ8日から、中国への入国者に対する隔離義務を解除する。中国は一般国民の海外旅行を禁止してきたが、同日から旅行目的でのパスポート更新手続きも再開する。

「感染輸出」をもくろんでいる…?

これらが何を意味するか。

13_20230106163401 国内で感染がこれほどの猛威を奮っているにもかかわらず、国民の大移動を始まる春節(1月22日)の直前に、こうした措置を立て続けに断行するのは「海外で感染が広がってもかまわない」という話にほかならない。つまり「感染輸出」である。

普通の国であれば、感染の恐れがある自国民は出国前に厳重にチェックして、他国に迷惑をかけないようにするだろう。いずれ帰国すると分かっているのだから、それは自国のためでもある。だが、中国にそんな常識は通用しないのだ。

米国や英国、カナダ、オーストラリア、日本、フランス、スペイン、イタリア、韓国、マレーシア、台湾などは新型コロナの陰性証明を求めるなど、入国規制を強化した。これに対して、中国は「政治的な動きだ。対抗措置をとる」と反発している。これも「中国人の海外旅行を奨励している」証拠である。

中国はコロナを克服できるか

そうだとすると、これから何が起きるのか。

自然感染による集団免疫の獲得を目指す中国と、ワクチンによる集団免疫獲得を目指す西側との競争になる。農村部への感染拡大はこれからだが、北京など大都市は「すでにピークアウトした」という報道もある。中国が集団免疫を獲得するのは、時間の問題かもしれない。

西側には「多くの犠牲を強いる自然感染による集団免疫の獲得」という選択肢はない。新たな変異株が出ているなら、対応するワクチンを開発して、人工的に免疫を作るしかない。

この競争で西側が遅れをとれば、中国は一段と大胆、かつ攻撃的な姿勢で西側と対峙するようになる可能性が高い。逆に、中国が負ければ、しばらくはおとなしくなるかもしれない。

中国の戦略は、必ず成功するとは限らない。自然感染で集団免疫を達成するには、不透明で複雑な条件が多く、100%達成可能とは言えないからだ。中国が自力で効果の高いワクチンを作らない限り、犠牲者を増やすだけ、という結果になる可能性もある。

中国が新型コロナを克服できるかどうか。あと数カ月もすれば、見えてくるだろう。日本はそれまで中国人はもちろん、中国滞在歴のある人について、十分な監視が必要だ。中国からの入国制限だけでは、まったく不十分だ。香港などを経由して入ってくる中国人にも目を配らなければならない。

米国は中国から入国する航空機について、排水検査を実施する。乗客の排泄物にウイルスが混じっているかどうか、調べるためだ。新型コロナ対策は安全保障問題に直結している。日本も同じような検査をして、米国と情報交換すべきだ。

昨年12月23日公開コラムで指摘したが、米国のジョー・バイデン政権と岸田文雄政権の感染症に関する対中認識は、完全に間違っている。両政権は、それぞれ「国家安全保障戦略」に「感染症対策で中国と協力できる」と記したが、中国は協力するつもりなど、まったくない。

甘い認識では、中国にしてやられるだけだ。

 日本は中国への配慮・忖度から、どうしても甘い対応になりがちです。ここは中国が何を言おうと、中国人および中国に滞在歴のある外国人の入国時の検疫は、一人も感染者を見逃さないよう、厳しく対処する必要があります。

 3年前、武漢で初の感染者や、その後死者が出たときに、それを隠蔽した中国当局の動きから、「武漢ウィルス研究所」からの流出説がささやかれました。更には「細菌兵器説」も流れました。長谷川氏のこのコラムの「感染輸出」説は、それを彷彿させるものです。

 意図的かどうかは分かりませんが、中国以外の国にも感染が広がることについて、中国は放置している節はあります。もともと中国発祥のこの疫病に対し、損害賠償を要求したいところですが、再び世界に拡散されてはたまったものではありません。いずれにしろビジネスマンも含めて、徹底的な水際対策をして、中国由来のこの疫病をストップしなければなりません。

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2023年1月 1日 (日)

福島香織氏:世界が緊張、中国からまたも世界にばらまかれるかもしれない強毒ウイルス

Images-5_20221231162501  明けましておめでとうございます。今年も「強い日本、たくましい日本」の再生を念じて、このブログをしたためていこうと思います。どうかよろしくお願いします。

 残念ながらおめでたさも今ひとつ、と言った年明けになってしまいました。その要因は「新型コロナウィルス感染拡大第八波」です。しかももっと恐ろしいことに隣の大国中国が感染爆発の最中ということ。もともとこの疫病の発生源でもあり、再び世界に恐怖をまき散らしているのです。

 本年第一弾は、この状況をフリージャーナリストの福島香織氏が、JBpressに寄稿した記事を取り上げます。タイトルは『世界が緊張、中国からまたも世界にばらまかれるかもしれない強毒ウイルス 中国の「ウィズコロナ」は新たなパンデミックの始まりになるのか』(12/29公開)で、以下に引用します。

 中国のコロナが猛威をふるっている。おそらく新型コロナウイルスがパンデミックを起こしたこの3年の間で、今の中国が最も感染者数が多く、感染による死者が多いはずだ。

 だが、この局面で中国は、出入国者に対する隔離措置を撤廃し、国内外の自由な移動を解禁した。正月、そして1月下旬の春節休みには、おそらく中国人の大規模移動が起こるとみられ、世界には改めて緊張が走っている。

日本に先駆け本格的な「ウィズコロナ」時代に

 中国政府は12月26日、「新型冠状病毒肺炎(新型コロナウイルス肺炎)」の名称を「新型冠状病毒感染(新型コロナウイルス感染)」へと変更した。それに伴い、A類感染症予防コントロール措置(厳格な管理コントロール)からB類(基本的な予防と治療)に緩和し、1月8日以降、国外からの入国者に関する隔離措置を取らないことにした。入国48時間前のPCR検査の陰性証明があれば、中国人であれ外国人であれ自由に入境できる。飛行機の座席も「5席に1人」というソーシャルディスタンス制限をなくした。また一国家、一路線としていた航空便数の制限もなくした。

 濃厚接触者判定も行わない。リスクの高低を区別せず、感染者に対しては重症度による収容と治療を行い、適時に医療保障政策を調整し、入境者や貨物に対する検疫管理も行わないという。入国後のPCR検査も強制せず、また陽性が判明しても、無症状や軽症で基礎疾患もなければ強制隔離はせず、自主管理に任される。

 中国の感染症政策は、ウイルスの危害性によって甲類、乙類、丙類(A、B、C)の3つに分けられている。甲類はペスト、コレラ。乙類はSARS、エイズ、B型肝炎、流行性出血熱、狂犬病、デング熱など。丙類はインフルエンザ、おたふくかぜ、はしかなどだ。

 新型コロナは乙類に分類されながら、管理コントロール基準は甲管理に指定され、今までペスト級の危険ウイルス扱いだったが、SARSやエイズなどの危険度に格下げになった格好だ。厳格な隔離管理ではなく、基本的な予防と適切な治療の必要な感染症ということで、これで地方政府が負担させられていた防疫医療コストも大幅に下げられることになる。

 世界の多くの国で、すでに「ウィズコロナ」をかけ声に、新型コロナを理由とした行動規制や入国規制が大幅に緩和されている。中国も今回の規制緩和で、ついに本格的な「ウィズコロナ」時代を迎えることとなった。中国のネットユーザーたちは、「羊(陽性者)はいなくなった」「新型コロナと人類は共存することになった」などと書き込んでおり、3年ぶりの自由な移動の正月、春節休みに歓喜の声を上げている。

 河北省の医療関係者の話によれば、現行の甲類管理を続行すると、おそらく国民経済全体が回復不能なほどの打撃を受けるという判断があったのだろうという。

 日本でも医療逼迫を防ぐために新型コロナ感染症を2類相当から5類相当に引き下げるべきだという議論が活発化している。11月まで「ゼロコロナ政策」堅持を掲げていた中国だが、あっという間に日本よりも早く新型コロナウイルスに対するリスク評価を引き下げてしまった。この政策転換によって生産、消費を回復させることもでき、経済崩壊を回避することができるだろうと期待されている。

高齢者が次々に死亡、政府はただ傍観

 だが専門家たちの間では、新たな懸念が起きている。

 1つは中国各地で目下拡大中の新型コロナ感染スピードが異常に早く、当局はこれに対して「躺平」(寝そべり)主義、つまり、無策のまま傍観しているだけだということ。その結果、想像以上の死者が出ると言われている。それに中国社会が耐えられるか。

 統計上は新型コロナ肺炎による死者はゼロの日が続いている。だが、北京の火葬場では霊柩車が数十台の行列を作って火葬の順番を待っている様子が、海外メディアで連日取り上げられている。予約が1カ月先まで満杯で、その予約に割り込むためには2万6000元を余分に支払うことを要求された、といった証言もあった。SNSには、火葬の予約を受けるにあたって死因を新型コロナとしないように要求された、といった書き込みもあった。

 新型コロナ感染による死亡は、死因が「呼吸器不全によるもの」と定義されており、心筋梗塞やその他基礎疾患の悪化、合併症や老衰といった死因では、新型コロナ感染の死亡とカウントされないという。だが、12月以降の高齢者の死者は異様に多い印象があり、これが新型コロナ感染のアウトブレイク(感染拡大)と無縁とは考えにくい。

 訃報が公表されている政界人だけでも、85歳の元中国国家体育委員会副主任・劉吉(12月19日)、89歳の元江西省政治協商会議主席の朱治宏(20日)、97歳の共和国勲章受章者の張富清(20日)、中国工程院院士の趙伊君(92歳)、張国成(91歳)。文化人では、12月19日から21日の間に、中国電影資料館元館長の陳景亮、元北京電影制片廠の著名撮影技師の羅徳安、著名俳優の傳祖成、北京服装学院美術学院公共芸術学副教授の周濤、監督の王景光、著名劇作家の楊林らが相次いで北京で死去した。

 また、清華大学が11月10日から12月10日に出した訃報は18人。すべて現職および退職の教授、教職者だ。北京大学は10月31日から12月5日までの36日間に15人の退職教授が死去した。この15人はいずれも65歳以上で、その中には著名言語学者の符淮青(86歳)、著名生理学者で北京大学生命科学院の元院長の周曾銓(86歳)も含まれていた。

 このほか、京劇名優で知られる儲蘭蘭がわずか40歳の若さで死亡し、また37歳の元中国スーパーリーグのサッカー選手、王若吉も感染によって慢性疾患が悪化し、瀋陽で亡くなったという。

 他にも、長老の朱鎔基が新型コロナで北京の301軍病院に入院している、いや、すでに死亡しているといった噂や、政治局常務委員の趙楽際が感染しているといった噂が、確認の取られないままネット上に広まった。

 こうした状況から、北京および中国各地で猛然と感染拡大している新型コロナウイルスは、従来のオミクロン株よりも強毒なのではないか、という意見もある。

 興味深いのは、毎日新聞が、中国の民間ゲノム解析会社関係者などからの情報として、中国政府が11月下旬、中国内に拠点を置く民間の受託解析企業に対して新型コロナウイルスのゲノム配列の解析を当分の間行わないよう通知していた、と報じた記事だ。つまり、中国当局は新たな変異株が誕生するかもしれないことを懸念し、あるいはすでに誕生していたとしても、その情報が公にならないように厳格に管理しようとしているのではないか、ということだ。

 中国の農村では、鶏やアヒル、豚などの家畜、あるいは野生動物と人間の暮しが非常に近い。そういう環境がこれまで新型コロナウイルスや新型インフルエンザの発生を促す要因であるとされてきた。春節大移動は人が密集する都市から、動物と人の距離が近い農村への圧倒的規模の移動が起こり、そこで感染が拡大するわけだから、新たな変異株誕生の懸念が深まるのは当然だろう。そして中国の姿勢としては、そうした変異株が誕生しても情報は厳しく統制して秘匿する可能性が強いのだ。それこそ、今すでに行っているように死者数や感染者数などの数字はいくらでも操作できるのが中国なのだ。

 だが、中国の春節で年老いた親を交えた一家団欒後、親がバタバタ亡くなるようなことになれば、これほど悲惨なことはない。人々の心は乱れ、その恨みが社会不安を招く可能性もある。

変異株が再び海外にばらまかれる恐れ

 もう1つの懸念は、中国でそのように生まれた変異株が海外に再度ばらまかれ、新たなパンデミックが起きる可能性だ。

 中国の大型旅行予約サイト「Cトリップ」のデータによれば、12月26日の出入国規制緩和の発表後30分で海外旅行目的地の検索が10倍以上に急増したという。おそらく多くの中国人が年始年末、春節休みに海外旅行に行こうと考えているのだろうと推察される。

 人気の行先は日本、タイ、韓国。特に日本については、資産を移動させたい中国人の資産家が、近場で、政治が比較的安定している国として魅力を感じているという。これまで中国では新規パスポートの発行にも制限がかかっていたが、12月からパスポート発行が比較的簡単になったという声が上がっている。習近平政権3期目に入り、中国国内が政治的にも経済的にも不安定になってきているタイミングで、海外渡航規制が突然解除されたのは、資産家たちにとっては資産移動や「潤」(RUN、中国からの逃亡)の絶好のチャンスとも捉えられよう。

 中国国家移民管理局のサイトは12月27日、1月8日から移民管理政策の最適化措置をとり、中国公民の出国旅行審査と、普通パスポートや香港への商務ビザの発行を再開すると発表している。香港では中国国内で唯一、海外製のmRNAワクチン接種が認められており、この際に香港でワクチン接種してこよう、という旅行者も多いようだ。

 米国のブリンケン国務長官はこうした中国の動きに対し、新型コロナの新たな変異株の出現への警戒と準備を呼びかけており、中国からの入国者に対する感染者識別やトレーサビリティの強化を訴えていた。具体的な措置はまだ明らかにしていないが、ウォール・ストリート・ジャーナルは米国の匿名官僚の意見として、日本やマレーシアのやり方を参考にするとしている。

日本は北朝鮮の警戒感を見習うべき

 ちなみに日本は12月30日以降、中国からの入国者に対し、緊急水際対策を実施し、過去7日の間に中国からの渡航歴のある人について入国時検査を行い、陽性者に対してはゲノム解析の対象者とし、待機施設での原則7日間の隔離を講じるとしている。日中直行便も増便しない。ワクチン3回接種、あるいは入国72時間前の陰性証明提出は、すべての入国者に求められている。

 この措置について厳しいと考えるか、あるいはもっと厳格にすべきと考えるかは、中国の新型コロナ感染状況に対する見方や立場によってかなり違う。

 北朝鮮はこのほど中国公民の入境に関して、一律30日の隔離観察を行うことに決めた。親日派の中国の知人は、北朝鮮のこの警戒感は、中国のことをよりよく理解しているからだ、と指摘し、日本も北朝鮮なみの水際対策を行うべきだ、と語っていた。

 いずれにしろこの冬が「新型コロナパンデミックの終焉」となるか、「新たなパンデミックの始まり」となるかの分かれ道といえるだろう。

 中国人の観光客を心待ちにしてきた日本の観光地や小売業者は、一気に水を浴びせられた形となっています。しかし第八派の渦中にいる日本としては、これ以上の感染拡大は容認できないし、ましてや新規変異株の国内への持ち込みなど、絶対に阻止しなければなりません。

 中国当局は、経済の落ち込み防止を第一に考えて、いままでのゼロコロナ政策を転換したのですが、やり方があまりにも急で稚拙そのものです。その上感染急拡大を認めず、公表数字は極めて低いまま。そしてその公表もやめたと言います。

 更には中国コロナ対策チーム、共産党ナンバー2の李強氏がトップになり、習政権の感染対策を「巨大な成果」と言ったというのには、さすがに笑うしかありません。もはやこの独裁政権のすべてが信用できないという思いになります。もっとも今に始まったことではないようですが。

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2021年11月30日 (火)

オミクロン株の脅威、デルタ株を終息させた日本の経緯を参考に防疫を

9_20211129153101  南アフリカで初めて報告されてから、瞬く間に世界に広がりを見せ始めた新型コロナの新たな変異株、オミクロン株。日本もアフリカの9カ国に続いて、30日からはすべての外国人の入国を原則停止する措置を執ります。

 現状日本では、デルタ株を中心として蔓延した新型コロナの感染が、ようやく収まった段階で、再拡大を防ぐべくこの新たな変異株に対して、早め早めの水際対応を取っていると思います。

 ところで、スタイルアクト代表取締役の沖有人氏は、別の視点でこの対応を見ています。JBpressに寄稿したコラムからその考えを伺います。タイトルは『日本はオミクロン株に怯える前に知るべき「なぜデルタ株が終息したか」 数値目標を定め、ワクチン接種を愚直に進めた菅政権を再評価せよ』(11/29)で、以下に引用して掲載します。

 ◇

 新型コロナの感染者数は誰もが驚くほど減った。そして、行動規制が解かれ、人流が急増しているにもかかわらず、感染者数は増えていない。この謎を解かなければ、モヤモヤが晴れない上に、今後どう行動したらいいのかという指針を導き出すこともできない。

 本来、これを説明する責任は、経済活動や行動の厳しい規制を主張した専門家にある。だが、一向に出てこないため、統計を使った将来予測を仕事にしている身として、明確な答えを出そうと思う。

 実は、この分析は2時間で終えられるほど簡単である。

 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料はネット上で公開されている。ほぼ毎週行われている会議の資料を見れば、時系列で状況の変化を把握することが可能だ。

 毎週、同じ表とグラフを作っているだけだが、一次情報が整理されているため、このデータを使って統計的に分析すれば、ほとんどの答えは出る。ただ、そうした分析をした形跡が見られないのは寂しい限りだ。

 この資料の中に、「ワクチン接種歴別の新規陽性者」という表がある。ワクチンの接種歴を3区分(未接種、1回目のみ、2回目済み)し、その感染しやすさを明らかにしたものだ。

 感染しやすさを表しているのは、10万人あたりの新規陽性者数という数字だ。この数字は時系列に並べると、極端に数値が下がっていることが分かる。

 第5波が真っ盛りだった8月を100とすると、11月の未接種は3.4、1回目のみは8.3、2回目済みは9.4で、平均して8.0と10分の1以下。未接種の人でもピーク時の30分の1の確率でしか感染しないというのは、何を意味するのだろうか。これが、一つのポイントだ。

9月以降、新規感染者が急激に減った真の理由

 これは別のデータでも同じ様な結果になる。PCR検査の件数に対する新規感染者数の比率を1-9月と10-11月を比較すると、9割減の10.2%に減っている。極端に感染しにくくなっているのだ。

 感染しにくくなっている要因は「集団免疫」と考えられる。集団免疫とは、人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染者が出ても他の人に感染しにくくなるという状況を表したもので、感染症が流行しなくなる状態を指す。

 集団免疫は感染症の種類によって、免疫獲得につながる一定割合は変わる。その免疫とはワクチンの効果そのものである。その結果が上記の数字なのだ。

 では、ワクチンの2回目接種率を集団免疫と見立てると、7月末で28%、8月末で43%、9月末で56%、10月末で67%だ。50%付近から感染者数の激減は始まり、集団免疫効果が本格化したと考えられる。

 この効果の数値化は、実効再生産数で説明すると分かりやすい。

 実効再生産数とは、「1人の感染者が次に平均で何人にうつすか」を示す指標だ。最も感染拡大していた時期は数週間平均で1.5を超えていた。コロナの発症までの期間が平均5日なので、5日おきに累乗することになる。今100人の感染者がいるなら、5日後に150人、10日後に225人(=150人×1.5)、15日後に338人、30日後に11倍の1139人になる。実際、第5波もほぼこのペースだった。

 一方、実効再生産数は1を割ると感染者数は減り始める。そして、1.5人にしか感染させられないウイルスは、半分の人が免疫を保持しているとその半分の0.75人にしか広がらない。

 すなわち、今100人の感染者がいるのであれば、5日後に75人、10日後に56人(=75人×0.75)、15日後に42人、30日後に18人になる。第5波以降の減少ペースはこのペースに近い。こうした実効再生産数を半減させたのはワクチンの接種率で説明することができる。

メディアに悲観的な情報しか流れないのはなぜか

 先ほどの「ワクチン接種歴別の新規陽性者」を見ると、ワクチンの接種歴(未接種、1回目のみ、2回目済み)で感染率はかなり違う。未接種を100とすると、1回目のみは34.9、2回目済みは7.6まで下がる。ワクチン接種を済ませば、感染率は10分の1以下にまで下がるということだ。

 日本の場合、ワクチンは4人中3人までが打ち終わっており、感染率が高いのは残りの4分の1だ。これを全国民でならすと、ワクチン接種を始める前と比較して、現状の感染率は7割減の30%まで下がっている。

 また、ワクチンには重症化率を下げる効果もある。10月の死亡率をワクチン接種開始前の5月以前と比較すると、これも10分の1に相当する9.7%まで下がっている。これを、未接種もいる全国民でならすと、重症化率は6割減の38%になる。

 ちなみに、重症者の死亡率は直近の数字では89%に上る。重症化したら、この病気は専用の薬がないので生還することはほぼ難しいため、重症化しないことが大事である。

 もちろん、ワクチンには賞味期限があり、接種後、いつまでも効くわけではない。この点についても、数字を算出することができる。

 未接種の人に対する2回目接種済みの感染率は最近悪化しており、8月6.0%、9月8.1%、10月12.3%、11月16.4%と月を追うごとに悪くなっている。ただ、これはあまり気にする必要はなく、「ワクチン接種歴別の新規陽性者」にある7.6%という数字を信じた方がいい。

 なぜなら、この間、集団免疫が機能し始め、感染率が以前の8%まで急減しているからだ。集団免疫の効果は、未接種ほど大きかったと捉えた方が的確な現状把握になる。

 メディアから流れるニュースはあくまでも二次情報で、一次情報に当たるのはアドバイザリーボードなどの資料だ。二次情報は必ずバイアスがかかる。自粛要請している国民の気が緩むと考えているのか、メディアには原則、楽観的な情報は流されない。

 これは、随分と国民をバカにした話だと思う。国民は現状を正確に把握し、どの施策が効果を出していて、どう行動したら安全な社会生活を取り戻せるかを真剣に考え、取り組んでいる。そのために、事実を正確に伝えてほしいだけだ。その内容は、私が専門家ならこう伝えると思う。

再評価すべき菅政権の功績

「ワクチン接種にご協力いただいたお陰で、日本国民は集団免疫を獲得し、感染率は以前10分の1になりました。ワクチンを未接種の方の感染率もこれによって大きく下がっています。これに加えて、ワクチンを接種いただいた方は新規感染率が未接種の方と比較して7.6%まで下がっており、これはダブルの効果があります。重症化率もワクチン接種で10分の1になっており、死亡者数も減っています。

 これら3つの相乗効果で、死亡者数は直近1週間(11/19~25)で日に1.6人まで下がりました。今後も、当面は下がることが予想されます。

 インフルエンザが年間3000人以上亡くなっている中、新型コロナははるかにそれ以下の水準に抑えられています。この状態を継続するためにも、これまで同様の感染防止対策は続けていただきたく存じますが、生活やお仕事はコロナ前の状態に戻していただいて構いません。

 現状では、ワクチン接種済みの方の感染率が上がってはいませんが、3回目のブースター接種の準備は進めています。集団免疫やワクチンの効果が薄れてきたことは数値で把握できていますので、ブースター接種が必要になった際には速やかにご対応願いたいと考えています」

 現在のコロナの感染状況はワクチン接種が最も効果的だったことは明らかだ。それを強力に推進したのは菅政権だった。

 マスクや手洗いなどの受け身の感染予防対策に終始していた私たちの状況を打開すべく、ファイザーの最高経営責任者(CEO)に直談判し、ワクチン担当大臣を任命し、毎日100万人という数値目標を達成し、結果を出したのである。

 ワクチンの効果は未知数だったかもしれないが、大事なのは自分たちができることの中で最良の選択をすることにある。それは、現時点でもワクチンしかない。これによって、最悪の5月には2819人の死者を出していた状況が、日に1.6人まで激減しているのだ。

 このワクチンの施策の速やかな実施が少なくとも数千人の命を救ったことは間違いない。その尽力には一国民としてお礼を言いたい。確かに、菅首相への不満を持つ方もいるかと思うが、公約の「国民のために働く内閣」の爪痕の一つとして、コロナ対策の的確な対応は記憶されてもいいと考える。

 現在、世界を揺るがしているオミクロン株の感染の強さは明らかになっていない。ワクチンの効果を減じるほどの感染力を有している場合、再び感染者が増大する可能性はもちろんある。だが、日本における新規感染者の急減がワクチン接種に伴う集団免疫の獲得と分かった以上、打つべき対策も明らかだろう。これ以上、いたずらに危機をあおるのはやめていただきたい。

 ◇

 確かに危機を煽りすぎるのはまずいとは思いますが、マスクや換気などの感染予防対策、そして沖氏の推奨するブースター接種は、オミクロン株の感染爆発をおさえる決め手になると思いますね。

 それに何より国内に変異株を持ち込ませないことも重要。入国管理の徹底は必要不可欠でしょう。南アフリカが不満を述べているようですが、日本国民のためには、臆せずとり進めていただきたいと思います。

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2021年8月23日 (月)

医師の提言:日本をコロナで殺さないために

10_20210822151101  新型コロナウイルスの感染拡大が一向に収まらず、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置の発出範囲も拡大の一方です。全国自治会ではロックダウンを求める声も出始めました。

 そうした中、医師で作家の木村盛世氏は月刊Hanadaプラス誌上で、『日本をコロナで殺さないために』(8/19)と言うコラムを寄稿しました。以下に引用して掲載します。

分科会・日本医師会のゼロコロナポリシーは絵に描いた餅

日々の新規感染者数(正しくはPCR陽性者数)報道が、昨年と変わらずに続いている。感染者数が増えたとはいえ、死亡者数は極めて少なく、両者の数字はG7でトップクラスである。その日本のコロナ対策が評価されないのは極めて重大な問題である。

まず大きな問題点は、政府と分科会・医師会の思想が根本的に異なっているため歯車が嚙みあっていなかった事が挙げられる。

以下に述べることは、昨年の新型コロナウイルス感染症流行初期に大木隆生東京慈恵会医科大学教授の「大木提言」に集約されている。(新型コロナクライシスに対する大木提言)

政府は安倍前首相時代からウィズコロナポリシーを貫いてきた。医療体制を強化し、不幸にして感染して重症化した患者には病院で必要な治療が受けられる安心感を国民に与え、かつ経済活動、社会活動を両立させることに主眼を置いてきたのである。

他方、分科会・日本医師会主導の考え方はゼロコロナポリシーである。すなわち、コロナを「死の病」と煽り、緊急事態宣言を連発し、コロナの封じ込めを第一優先に掲げる(ゼロコロナ)。

したがって、新型コロナを「指定感染症の第1類ないし2類相当」というSARS(感染者数世界で累計8000人、死亡率11%)、MERS(感染者数世界で累計3500人、死亡率35%)、エボラ出血熱(感染者数世界で累計3万人、死亡率50%)相当の扱いにしておいた方が好都合であり、医療体制を強化する必要がない。

開業医・日本医師会はそもそもコロナに関わりたくないので保健所と病院任せに尽きる。医療機関はコロナ患者を受け入れることによって、赤字になるところが多い。また、一度でも院内感染が起これば、濃厚接触者たる医療従事者が休まなければならず、さらなる追い討ちがかけられる。もし院内感染が起こればマスコミに袋叩きにされ、他の患者が診察に来なくなる恐れもある。すなわち新型コロナウイルスは、医療機関にとって「関わりたくない病気」なのだ。開業医はコロナ患者を診たくないのである。

しかも分科会のメンバーは感染症専門医が中枢に陣取っており、彼らは医療のオペレーションに関しては全くの無知であるため、医療体制の強化には手がつけられなかった。

日本では、以上の全く異なる思想に基づく2つの考えを足して2で割るような政策が目立った。極めて残念でならない。

分科会に代表されるゼロコロナポリシーは、強い私権制限を行使している台湾、ニュージーランド、ベトナムですら成功しておらず、ワクチン接種率も感染率も低いこれら国は新型コロナ感染拡大から1.5年たった今でもまったく出口が見えていない。集団免疫獲得においては最も立ち遅れており、優等生どころか周回遅れである。感染力が強く、既に世界で2億人もの患者が出ている新型コロナウイルス感染症において、ゼロコロナポリシーは絵に描いた餅にすぎない。これらの国はずっと鎖国を続けざるを得ない上に度々クラスターに悩まされている。

現実的かつ唯一の活路「ウィズコロナ路線」

今こそ、現実的かつ唯一の活路であるウィズコロナ路線を明確にすべきである。その際は、医療体制を強化し、医療オールジャパン体制をとる必要がある。そのための財政支援は実はこの1.5年でかなり成されている。

もう一つは、感染症法の1類ないし2類相当という医療の足かせを撤廃する事である。この足かせのために、例えば東京都にある10万床の内、6000(6%)床しかコロナ用に確保できないし、都内にある病院650の内75病院(11%)しかコロナを受け入れていないし、都内にある2500のICU・準ICUのうち、390(うち251床を使用)しかコロナ用に確保できていない。

このように医療オールジャパン体制からほど遠い状態にあるのは1)感染症法の1類ないし2類相当という足かせ、2)日本医師会・開業医がコロナに関わりたくないと逃げ回っている、3)現場をわかっていない分科会が学者目線で視野狭窄的にゼロリスク・ゼロコロナを追及している、からである。

第二の分科会と5類指定変更へ

今、政府がすべきはウィズコロナポリシーのチームを作る事である。このチームのメンバーには感染症専門医は必要ない。救急医療、災害医療の専門である医師らが中心となる、第二の分科会と呼べるものだ。

感染症法の5類指定にして、どこでも誰でも扱える病気にすることで、患者はインフルエンザ、高血圧、糖尿病の治療の時と同様に、調子が悪かったら都内にある12700の開業医・かかりつけ医に診てもらう。彼らは今までほとんど新型コロナウイルス診療に当たっていない。対応といっても専らPCR検査対応をしている例が多い。通院でもデキサメタゾン、消炎鎮痛剤、必要であれば有効性の示された治療薬を使い、早期に対応することによって重症化をできる限り予防する。

もし、重症化の兆候があったら、保健所経由ではなく、開業医が長年構築してきた病診ネットワークを駆使して、病院に患者を入院させる。病院は現在都内で71/650病院しか新型コロナ対応に参画していないが、5類なら650の大多数の病院が貢献できる。そして、重症化したら、ICU(集中治療室)のある病院に紹介してもらう。

なお、都内にあるICUを備えた病院でコロナ重症化患者を引き受けているのは現在3割程度だが、こうした体制がとれれば都内にある2500のICUの仮に半分として1250のICUが有効活用できる。ちなみにロンドンで感染爆発した際はロンドン市内のICUの98%にあたる810のICUベッドをコロナ用にすることで医療崩壊を回避した。

医師は私利私欲を捨て国民のために尽くしてほしい

医師免許は国家最大の資格である。

医師法17条「医師でなければ、医業をなしてはならない」にあぐらを欠かず、19条「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」をよく読み、私利私欲を捨てて、国民のために尽くすべき。

ドクターとは医師免許を持ったものに与えられた称号であることを、忘れてはならない。

 ◇

 医者でも感染症の専門でもない私には、今の政府専門分科会の言い分が正しいのか、木村氏のこの提言が正しいのかよく分かりません。ただ世界一の病床数を持ちながら、医療逼迫や医療崩壊などと叫んでいる医師会や関係者には、確かに違和感を持ちます。

 インフルエンザと同様の5類にして、何処の病院でも受診できるとなれば、確かに便利になるでしょうけれど、院内感染対策や患者の取り扱いなど、慣れていない医者に対しては不安は隠せませんね。インフルエンザでも毎年1万人が死亡している(他の疾患との合併症を含む)ことから、それと同じ扱いでいいという人も居るようですが。

 しかしここへ来てデルタ株が猛威を振るい、ラムダ株も現れて、今までの常識が覆されてきているのも事実です。いずれにしても今の新型コロナ対策や医療体制が、このままでいいと言うことはなく、政府も医師会も、抜本的に考え方を変えて対応してもらわなければと、強く思いますね。

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2021年7月31日 (土)

「中国製ワクチンの中身」に疑問噴出中 まさか「ただの水」なんてことは…

Img_e6729e31728f71a8ae90561323211ae09889  以前もこのブログで取り上げましたが、中国製のワクチンに対し、多くの国からその効果を疑問視する声が聞かれます。もともと採用していない国に加え、ブラジルなどその効果を疑問視して欧米製に切り替えようという国もあります。

 東南アジア各国も同じ問題を抱えているようで、その詳細を現代ビジネスから引用します。フリーランス記者で作家の大塚智彦氏のコラムがそれで、タイトルは『感染者爆増の東南アジア各国で「中国製ワクチンの中身」に疑問噴出中 まさか「ただの水」なんてことは…』(7/22)です。

英米製への切り替え視野

ASEAN(東南アジア諸国連合)各国で使用されている中国製のコロナウイルスワクチンに対して、その有効性、安全性への疑問が広がっている。このため中国製ワクチンの接種を取りやめたり、米英のワクチンへの切り替えを急いだりという動きが顕著になりつつある。

中国は感染拡大予防のために東南アジア各国に対して早い時期から中国製ワクチンを積極的に供与する「ワクチン外交」を展開、インドネシア、ミャンマーなどには中国の王毅外相が直接訪問してワクチン提供を申し出たりした。

東南アジアだけでなくアフリカや南米などに対しても中国は「人道支援」を唱えて「ワクチン外交」を展開しているが、根底にあるのは習近平国家主席が独自に進める「一帯一路」構想で、中国側への取り込みを意図したものとされている。

欧米や日本では中国製ワクチンの安全性が確認できないとして米英が開発したワクチン接種を積極的に進めている。中国当局は自国製ワクチンの詳細な情報を公開していないとされ、提供を受けた国は独自に検査、研究機関でその安全性を確認した上で使用を認可、接種に踏み切っている。

それでも、有効性が米英のワクチンに比べて低いことが知られており、それが中国製ワクチン接種拡大のネックになっているという。

インドネシアで医療関係者の感染相次ぐ

インドネシアでは2021年の感染拡大を前に中国から提供されたワクチンを医療関係者に優先接種した。しかし2021年6月以降、中国製ワクチンを接種した医療関係者の感染が拡大し、感染死する医師や看護師が増えだした。感染者は約300人、死者10人となっている。

また別の数字では6、7月に感染死した医療関係者は131人に上り、その大半が中国製ワクチンの接種を受けていた、との報道もある。

こうした現象はインドネシアだけでなく、マレーシアやタイでも報告されており、米紙「ニューヨーク・タイムズ」は6月22日、「中国ワクチンに頼った国は今感染拡大と戦っている」との記事を掲載して、その有効性、安全性に疑問を投げかけた。

インドネシアでは中国製の「シノバック・バイオテック」「シノファーム」製の2種類が国民の多くに接種されているが、このうち「シノバック社製」を接種した医療関係者に感染が広がっているとして、「ワクチンの中身はただの水ではないか」とか「死のバック」などと陰でささやかれ、中国製ワクチンの接種を躊躇する動きも出ている。

特に現在、東南アジア各国で感染が拡大しているインド株には有効性が低いとの指摘もある。

こうした動きに加えてインドネシア政府は7月13日、これまでシノバック社製のワクチン接種を終えた医療関係者約147万人に対して、「流行が著しいインド株に対応するため」として3回目として米モデルナ社製ワクチンを接種する方針を明らかにしている。

インドネシアではこれまでに確保したワクチンの総数は1億2274回分で、そのうち中国製ワクチンは約1億回分に達しているといい、依然として中国製が中心の接種となっている。

マレーシア、タイも中国製に懸念

7月15日、マレーシア政府は全土で中国製ワクチンの接種を中止する方針を明らかにした。

アドハム・ババ保健相はケランタン州政府が中国製「シノバック」ワクチンの接種を停止するとの方針を受けて「いずれ全国での同ワクチンの接種を停止することになる」との姿勢を示した。

理由に関しては「ファイザー社製など他のワクチンが十分に確保できそうだから」としており、中国製ワクチンの有効性や安全性への疑問を明確にはしなかったものの、国民の多くが「中国製ワクチン接種への不安」を抱えていることが背景にあるのは間違いないとみられている。

タイでは7月17日に1日の感染者数が初めて1万人を超えた。政府はバンコクに「ロックダウン(都市封鎖)」「夜間外出禁止令」を出すなど強力な感染防止策を講じている。

その一方で、1回目に中国製ワクチンの接種を受けた国民に対して、2回目の接種をアストラゼネカ社製ワクチンに変更する計画であることを明らかにした。

これは中国製ワクチンを2回接種した医療関係者600人が感染し、看護師1人が感染死、1人が重体になっている状況などから中国製ワクチンの有効性に疑問が生じたためと言われている。

またベトナムでも、南部の中心都市ホーチミンを中心に感染拡大が続いており、特にこれまでのワクチンの効き目が薄いとされるインド株による感染拡大が深刻化しているという。

未だ中国製ワクチン頼りの国も

一方、カンボジアやラオスなど、いわゆる「親中国」とされる国では依然として中国製ワクチンの接種を積極的に推奨し、約99万回分の提供を受けている。両国では政府による「言論統制」の影響もあり、中国製ワクチンへの不安や不信は今のところ公には伝えられていない。

ラオスのこれまでの感染死者数は公式発表では4人となっているが、カンボジアではすでに1000人を超えている。

中国系国民が多いシンガポールは、そもそも中国製ワクチンに関して「信頼できる有効性に関するデータがない」として国民の接種に関する公式データには「希望して接種した中国系住民や在留中国人」を含めていない状況だ。

2月1日に軍によるクーデターが起きたミャンマーは、実権を握った軍が親中国ではあるが、多くの医療関係者が軍政反対の立場から「不服従運動(CDM)」に参加して職場放棄していることから、コロナ対策は不十分。軍政は軍の医師や看護婦を動員して対応しているが、治療対象者は軍兵士や警察官とその家族に限定されているという。

軍は一般病院から不足している酸素も「奪取」しているとされ、一般国民に十分な感染防止対策がとられているとはいえない状況が続いている。

ミャンマーでの感染者数、死者数も軍政が公表している数字と人権団体などによるデータの差が大きく、実態は不明ながらも相当数の感染者、死者がでているものとみられている。

日本政府によるワクチン提供

インドネシアはさらなる中国製ワクチンの導入を進める傍ら、7月1日には日本政府から英アストラゼネカ社製ワクチン100万回分の緊急提供を受けた。そして7月に入ってファイザー社製ワクチンの使用を緊急認可し、複数のワクチンで国民の要望に応えられる数の確保を進めている。

しかしその一方で、依然として中国製ワクチンの提供も受け続けている。中国政府への配慮とともに、人口世界第4位の2億7000万人分のワクチン確保には中国製も不可欠とする政府の思惑があるといわれている。

同じように日本からアストラゼネカ社製ワクチンの提供を受けたのはフィリピン(100万回分)、タイ(105万回分)となっており、いずれの国でも中国製ワクチンから米英のワクチンへの移行が進んでいる。

在留外国人の脱出、渡航制限相次ぐ

こうした過酷な状況の中、インドネシア在留の外国人の「脱出・避難」も始まっている。日本に続いて韓国や台湾、ベトナムも自国民のインドネシア退去を進めている。

またその一方、爆発的な感染拡大でいまや東南アジアだけでなく全世界で最も深刻な感染国になってしまったインドネシアからの入国を制限する国も出てきている。

これまでにサウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーン、台湾、香港がインドネシア人の入国を原則禁止し、近くフィリピンも制限に踏み切るという。

このように在留外国人の脱出、インドネシア人の入国制限と「孤立」するインドネシアだが、ジョコ・ウィドド大統領は相変わらず地方で続くワクチン接種を視察するのが主な仕事となっており、閣僚らも「コロナ対策に全力を挙げている政府を信用するように」と唱えるだけで、ロックダウンや夜間外出禁止令などの徹底的な感染防止策には「経済活動に影響がでる」として踏み切れない状況が続いている。

首都ジャカルタのあるジャワ島と、バリ島のあるバリ州では「緊急大衆活動制限(PPKM Darurat)」というこれまでより一段厳しい行動制限を7月3日から実施しているが、ジャカルタ中心部は公共交通機関や主要道路の利用制限で閑散としているものの、タナアバン地区など伝統的な市場や商店街には人が溢れている。

まさに「命に関わる危機」がインドネシア国民に差し迫っているというのに、感染拡大を必死に防止するという姿勢は依然としてみられない。

 

 露骨に一帯一路の戦略に組み入れようと、ワクチン外交を進めていますが、その品質の保証があやふやで疑念を持たれるようでは、採用継続に疑問が出てくるのは当然と言えます。しかし強力な経済関係を背景に、その国の指導者が中国に頼らなければならない背景構築など、したたかな、しかし弱みにつけいるこの国独特の戦術が透けて見えます。

 もともと中国武漢起源のこの疫病を、自国ではさっさ収束に向かわせ、感染爆発しているワクチン製造能力のない国をワクチンでおさえようというのは、まるでアニメやテレビゲームのシナリオのような筋書きです。まさに細菌戦争を仕掛けているような意図を感じてしまいます。しかしワクチンが効かなければこの筋書きにも狂いが生じます。中共はこの状況をどう捉えているのでしょうか。

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2021年7月 8日 (木)

東京五輪後、日本はコロナ変異種の万国博覧会状態に

24  開催まであと2週間あまりに迫った東京五輪。開催は決まりましたが観客をどうするかは、様々な意見が飛び交い7日時点ではまだ決定していません。東京での4回目の緊急事態宣言発出がほぼ決まり、難しい判断を強いられる状況が待ち構えているようです。

 ところでこの東京五輪、開催中や開催後の新型コロナの状況はどうなるのか、東京大学大学院情報学環准教授の伊東乾氏が、JBpressに寄稿したコラム『東京五輪後、日本はコロナ変異種の万国博覧会状態に 深刻な後遺症が続出し、ワクチン非接種者を攻撃するヘイトも』(7/5)で、その予測を行っていますので以下に引用します。

 東京オリンピック・パラリンピックの取材のために日本を訪れる海外のメディア関係者に対しては、プレーブックに従う報道エチケットを守ることになっています。

 これに対して「報道規制だ」「取材の自由権に対する侵害だ」といった猛反対のブーイング(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210702/k10013114771000.html)が海外の報道メディアから相次いでいます。

 この問題を少し深掘りしていくと、すでに米国では猛威をふるっている「ワクチン・デバイド」の嵐が見えてきます。

 すでに日本に来襲しつつある「ワクチン・デバイド」を念頭に、五輪と五輪後に多様性を増すであろう、日本国内での変異種蔓延について考えてみましょう。

混乱の度を増すコロナ時差

 すでに報道されているように、英国では「デルタプラス」変異株による、新たなコロナ・パンデミックが猛威をふるっています。

 6月11日のG7開催に向けて、英国ではコロナの克服を全世界に発信するつもりでいました。

 ところが、現実はとんでもなかった。5月の連休頃、1日1500人ほどまで落ちた新規感染者数が、5月中旬、下旬とじりじりと増加に転じます。

 6月に入ると1日5000人を超える新規感染者数。これがあれよあれよと急増して、6月17日には1万人超え、6月29日には2万人超え、そして7月2日には2万7500人と、まさに急坂を駆け上っている最中です。

 どうしてこんなことになったのか?

 英国はボリス・ジョンソン首相のコロナ罹患に凝りて、早期に徹底したワクチン接種を進め、コロナ克服「欧州の優等生」になったのではなかったか?

 UKのコロナ克服シナリオをすべてひっくり返してしまったのが「デルタプラス」変異株の流行でした。

ワクチン未接種層に広がるデルタプラス株

 英国全土のワクチン接種率と毎日の新患数、死亡者数を見てみましょう。年明けからワクチン接種率が順調に伸び、3月下旬には「大英帝国はコロナを制した」といった空気が漂い始めるのが手に取るように分かります。

 ところが、4月に入る頃から接種率の伸びが急に落ちている。

 そして伏流水のように押し寄せてきたインド由来の「デルタ株」変異種「デルタプラス株」が6月になって爆発的増加を見せ、コロナ収束どころではなくなってしまった。

 ここで注目していただきたいのは、毎日の新患数は激増しているけれど、決して死亡者は増えていないことです。

 ただし、これを「デルタプラス株は、凄まじい感染力は持っているけれど、毒性は低い」などと勘違いしてはいけません。

 本稿では触れる紙幅がありませんが、死亡しないことが「めでたしめでたし」ではないのです。永続する後遺症、いわゆるロングCOVID( Long Covid Sydrome)が深刻である可能性がある。

 新型コロナ後遺症は2022年以降、大変な社会問題に発展する可能性がありますが、それは別の機会に取り上げましょう。

 注目しなければならないのは、6月に急増した新患の大半が「ワクチン未接種者」であるということです。

 1月から3月まで、UKはゼロからスタートして5割弱まで接種率を上げていった。しかし4月から6月までの同じ3か月間で、まだ70%に到達していません。

 それには構造的な理由がいくつもあるのです。

 一つは世代の問題。5月の時点では英国の若い世代にはコロナワクチンへの忌避意識がありました。

 次に民族的、宗教的な問題があります。キリスト教徒やユダヤ教徒のワクチン接種率が高いのに対して、イスラム教徒の接種率が伸びないといったことがあります。

 そして経済階層による分断。富裕層にはワクチン接種が行き渡っていますが、低所得層ではなかなか接種率が伸びない。

 世代、イスラム教、所得。3つを合わせて分かりやすくまとめるなら、例えば、バングラデシュからの移民やその子弟など、英国で決して少なくない人口層にワクチンが普及していかない。

 そうした集団をインド株から命名を改められた「デルタ株」系の変異種が直撃して、今の事態が発生している。

 ワクチン接種による社会階層の分断「ワクチン・デバイド」の英国的な立ち現れ方ということができます。

 事態の根には大変深いものがあり、簡単に解決がつく問題ではありません。

米国型ワクチンデバイド

 逆に、変異種の蔓延を食い止め、3月の英国のような気分になっていると思われるのが米国です。

 ワクチン接種率が高く、またすでにワクチンを打ったのだから、もう感染もしなければ移しもしないと鼻高々。

 東京オリンピックを取材するべく来日して、「行動の自由を制限するな!」と息巻くジャーナリストの多くは、米国的なメンタリティを背景に持っている可能性が高いと思われます。

 彼らは、自分たちはもう「ワクチンを受けた」「コロナは卒業した」と確信して、場合によりマスクもつけずに五輪会場を闊歩するでしょう。

 そして国内随所で「自由にインタビューさせろ」と言っている。

 翻って日本の国民感情を考えれば、これだけ神経質になっているところに、傍若無人な外国人が、かつてのGHQ占領時代のGIよろしく、マスクもつけずにマイクなどもって、無遠慮にインタビューに近づいてくるなら・・・。

 悲鳴を上げて逃げ出す一般の日本市民といった、とんでもないシーンも現出しないとは言い切れないでしょう。

 米国と日本、あるいはワクチンでコロナを制圧したと思っている社会と、まだそれと程遠い社会との、かなり絶壁に近い断絶が様々な人間模様を生み出す可能性があります。

 ただ、間違いなくいえることは、五輪を開いて「人流」ができれば、全世界の色とりどりの変異種が、日本に、東京に、まるで変異種の見本市、万国博覧会のようにサンプリングされてくるリスクが高い確率であるということです。

 あらゆる検査は全く万能ではないし、人流ができれば感染・蔓延は不可避で拡大します。

 五輪後の日本は、言ってみれば全世界から集められた、変異種ウイルスの「満漢全席」といった様相を呈する可能性が、正味であると覚悟して、早めに対策を取っておく必要があるでしょう。

 別に危機感をあおるつもりは全くありません。

 ただ「世界の国からこんにちは」ではありませんが、いままで存在しなかった人流ができれば、必ず「人とともにウイルスはやって来る」事実と、具体的な対策を取る必要を指摘せねばなりません。

 具体的な対案は、個別に記していきます。本稿ではもう一つ、「日本国内でのワクチンデバイド」のリスクを考えておきましょう。

五輪後に日本を襲うワクチンデバイド

 6月1日時点で、日本のワクチン接種率は、1回接種で10%、2回接種終了者はわずかに3.1%、国民の97%はワクチン未完了という、G7諸国の中でも飛び抜けた立ち遅れを見せていました。

 それが7月1日になると1回接種で24%、2回接種終了者は12.7%と、1か月で見ればずいぶん奮闘したようにも思われます。

 しかし、仮にこのペースで伸びたとして、国民の50%に手が届くのはいつ頃になるか?

 根深く存在しうる「ワクチンへの忌避感情」がどのように挙動するかも、いまだよく分かりません。

 まぁ、これは時間の問題で接種率が5割を超えるときがくるでしょう。そのあたりで日本社会にある変化が起きる可能性が考えられます。

「コロナ罹患者」が「病気になってすみません」と謝るという、世界の大半の国が理解不能な、特殊な世間様の感情を持つ日本社会で「ワクチン未接種者」がマイノリティになったとき、それに対する社会的なデバイドや攻撃・・・。

 ないことを祈りますが「ヘイト」なども絶対に起きないとは言い切れません。

 いずれにせよ、間違いなく言えることは、五輪のお祭りはさておき「五輪後」に必ずやって来る「社会」「経済」そして「感染」の大きな動きに、早めに手を打っておく方が賢明です。

 この一点は決してぶれることがありません。転ばぬ先の「杖」を、各自用意しておく必要があります。

 ◇

 確かに100年に一度というこの未曾有の疫病に、世界中が翻弄され、国民の生活も政府の対応も完全に足を取られている状況です。変異型も猛威をふるってきている現状では先が見通せません。

 伊藤さんの言うワクチンデバイドもさることながら、企業の中でも旅行業や飲食業のように青息吐息のところもありますし、一方ネット販売やテレワーク関連機器のメーカーのようにコロナが後押ししている業界もあります。産業デバイドも進んでしまっているようです。

 いずれにしろワクチンの接種率が高まり、このやっかいな疫病が収束の方向に行くことを願ってやみません。

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2021年7月 7日 (水)

習近平も打たない!中国製ワクチンの闇

0c10  前回は北朝鮮の医療事情を取り上げましたが、今回は中国、チャイナのワクチン事情を取り上げます。欧米とともに、世界に先駆けてワクチンを開発した中国、すでに4割以上6億人を超す国民が1回の接種を終え、2億人を超える人が接種完了となっています。

 しかし接種状況とは別に、ワクチンに関する様々な問題も発生しているようです。少し前の記事ですが、中国事情に詳しいフリージャーナリストの福島香織氏が、月刊Hanadaプラスに投稿したコラムを以下に引用します。タイトルは『習近平も打たない!中国製ワクチンの闇』(6/2)です。

生理食塩水をワクチンと偽って販売などは日常茶飯事の相次ぐ悪質な偽ワクチン事件。そして今や第三国の途上国を実験場にするワクチン外交に対しても批判が続出。中国人自身も信用しない中国製ワクチンの深すぎる闇。

ミネラルウォーターをワクチンと称して

中国製新型コロナワクチンの途上国への無償提供品が2月から続々と現地に到着し、いよいよ中国のワクチン外交がスタートしようというなか、中国では偽ワクチンが押収される事件が起きた。  

偽ワクチン、低品質ワクチンは、中国においては伝統的といってもいいくらいの社会問題だ。また、第三フェーズ臨床実験のデータの詳細が公表されておらず、その効果や信頼性に疑問を持つ声も少なくない。  

一方、WHOやGaviワクチンアライアンス、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)が主導するワクチン共同購入による途上国への公平分配プラットフォーム、COVAXが機能するには、目下、安価で温度管理のたやすい中国製ワクチンに頼らざるを得ない状況だ。  

パンデミックを終息させることができるか否かはワクチン次第。そして、ワクチンを制する国がポストコロナの国際社会の新たな枠組みの基軸となる、という見通しもあるなか、中国のワクチンは単に医療や健康の問題以上に、政治や安全保障のテーマとしても気になるところだ。  

中国外交部は2月1日に、中国最初の対外無償援助による新型コロナワクチンがパキスタンに到着したと発表したのだが、この同日、中国公安部は、江蘇省などでニセ新型コロナワクチン販売事件摘発を発表し、中国の新型コロナワクチン外交に水を差すかっこうになった。  

新華社によれば、生理食塩水をシノファームの新型コロナワクチンと偽って、注射針とセットで、江蘇省、山東省、北京などで販売していたという。当局は3000回分の偽ワクチンを押収したほか、製造、販売にかかわった80人余りを逮捕している。  

また2月11日には、ミネラルウォーターをワクチンと称して、香港や海外に販売していたケースも摘発されたと報じられている。こちらは生理食塩水ワクチンより悪質。こんなものを打てば細菌感染などの問題が生じて命の危険もあるとして、中国当局も警告を発している。

在日中国人を通じて未承認の中国ワクチンを

いずれも同一主犯の組織犯罪で、2020年9月から生理食塩水などをワクチンと偽って販売したところ、飛ぶように売れた。それで生理食塩水が足りなくなったので、ミネラルウォーターで代用したという。  

この組織の摘発は昨年11月から始まったが、すでに5万8000回分の偽ワクチンを製造販売し、1800万元の違法利益をあげていた。  

こうした低レベルの偽ワクチンは微信などSNSを通じて売られていることが多く、包装も本物とまったく同じ、製造ナンバーももっともらしく打っているので、まず外見からは判別がつかない。  

しかも1回分498元とかなり高価だ。本物のワクチンの通常価格は200元。これは、中国が自国製造ワクチンをワクチン外交に優先利用するために国内には十分に回ってこないという「ウワサ」に踊らされて慌てて買おうとする人が多い、という背景もある。  

ちなみに、日本向けにもこうした中国製低レベル偽ワクチンがダークウェブを通じて売られる危険性について、共同通信などが情報セキュリティ企業S&J社長らの取材をもとに報じている。  

中国科学院武漢ウイルス研究所の科学者チームの組織を名乗り、「中国には他国に分けないワクチンがあるが、我々を通せば融通できる」 「ワクチンの売り上げは寄付する」などと騙り、値段はビットコインで約7000円だとか。  

また、毎日新聞が報じていたところでは、「特別ルート」で在日中国人を通じて、企業トップや政界に通じる人物たち少なくとも18人に未承認の中国製ワクチンの接種を行っていたことが判明している。この在日中国人は、共産党幹部の知り合いから、日本に中国製ワクチンが受け入れられる下地を作るために協力を依頼されたとか。  

近年、中国人資本家らが中国人医療ツーリズム受け入れ施設を確保するために、日本の病院に出資したり、あるいは買収したり、ビジネスを持ち掛けたりする動きがある。こうした中国と関係の深いクリニックを通じて、中国としては日本で中国製ワクチン支持を広めたいようだ。

国有製薬会社のワクチンでも危険

だが、こうした悪質な偽ワクチンの問題だけでなく、「中国のワクチン自体が本当に信頼できるのだろうか」という問題は、中国人自身も気にしているところだ。  

実際に、立派な国有製薬会社でつくられているワクチンですら、製造過程でデータが改竄されたり、あるいは使用期限切れのワクチンを横流しするような問題や、輸送や温度管理上劣化した低品質ワクチンを幼児に接種したりする事件が繰り返されてきた。  

比較的最近の事件として有名なのは、長春長生生物科技、武漢生物科技などが製造した三種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)の劣化ワクチン65万本(長生25万本、武漢40万本)が出荷され、35万人以上の子供たちに接種されてしまった2018年の劣化ワクチン問題だ。  

これは最初、人用狂犬病予防ワクチンの製造過程でデータの改竄があったことが内部告発されて、その調査の延長で、三種混合ワクチンでも製造過程に不正があったことが判明したのだった。

失脚した「ワクチンの女王」

また、武漢生物科技のワクチンは不良反応を引き起こしたとして、被害者から二度ほど賠償請求裁判を起こされ、17・5万ドル相当の賠償金を支払ったこともある。さらには、少なくとも三度にわたり地方の疾病予防コントロールセンターの官僚たちに、ワクチン購入に対する謝礼という名の賄賂を支払っていたことも暴かれている。  

2018年に中国社会を揺るがした三種混合劣化ワクチン問題は、ワクチンの女王と呼ばれた長春長生生物科技の会長の高俊芳が汚職で失脚し、上場取り消し、破産という形で一件落着となったが、では中国のワクチン市場の構造的問題が完全に是正されたかというと、そうではない。  

三種混合ワクチン事件のもう一つの当事企業、武漢生物科技は、問題が起きたのち罰金などの行政処分を受けたが、中国の最大国有製薬企業シノファーム傘下企業とあって、ほとんどそのままの体制で生き延び、武漢生物製品研究所として、新型コロナの不活化ワクチン開発、製造に参加している。シノファームの不活化ワクチンは、主にこの企業が製造したものだ。

スキャンダルの前科

ニューヨーク・タイムズなどが、このあたりのワクチン問題について特集記事で取り上げていたので参考にして紹介すると、不活化ワクチン・コロナバックを製造しているシノバック・バイオテックも、スキャンダルの前科がある。  

2002年から2014年にかけて、医薬品認可担当の官僚に5万ドル近い賄賂を贈り、不正に医薬品認可を受けていたことが、かつて暴露された。当時の総経理は北京大学教授の尹衛東だが、処罰されることなく、現在、同企業のCEOに出世している。  

シノバックは、北京科興ホールディングスと北京大学未名生物工程集団が合資で創ったバイオハイテク企業で、尹衛東は中国バイオ研究の権威であり、国家八六三計画(中国のハイテク発展計画)バイオ領域の審査委員でもある。  

人民日報など中国国内報道によれば、中国は新型コロナ肺炎ワクチンに関する煩雑な手続きをできるだけ削減して、すべての資源を製薬企業に投じているという。その投資の規模と中国的な規制の甘さで、これら企業のワクチン開発のスピード感は米国や英国を超える勢いだ。  

だが、それが中国ワクチン業界の伝統的な傲慢さや汚職体質を悪化させるのではないか、と危ぶまれているのだ。  

中国のワクチンはおよそ16種類が研究開発中で、そのうちシノファームの不活化ワクチン、シノバックの不活化ワクチン「コロナバック」、解放軍との協力によるカンシノ・バイオロジクスのアデノウイルス5ベクターワクチン「Ad5-nCoV」の三つが、すでに国内外で接種が開始されている。  

コロナバックは2週間の間隔をあけて2回接種が必要で、ブラジルで行われた第三フェーズ臨床12000人の18歳以上の医療従事者への接種についてシノバックが公表した統計分析によれば、医療措置が必要ない軽症者を含むすべての新型コロナ感染に対する有効予防率は50・65%、医療措置が必要な感染に対する予防率が83・7%、重症化・死亡予防率は100%だったという。

予防率50・4%と大幅修正

1月はじめには中間予防率は78%と発表されていた。ただ、その1週間後、治験を行った側のブラジル当局が予防率50・4%と大幅に修正する数字を公表し、コロナバックに対する信頼性が一気に落ちる事態になった。  

ブラジル側は治験中に死者が出て、治験自体を一時延期したことがあった。結局、976万人以上の感染者を出しているブラジル当局は中国ワクチンへの不平や不信を言いながらも、1月下旬からコロナバックを、英国のアストラゼネカのアデノウイルスワクチン・コビシールドともに緊急使用を承認、接種が始まっている。800万回分のうち600万回分がコロナバックだ。  

コロナバックの予防率が50・4%だとすると、WHOが定義するワクチンの基準50%の予防率からみて、ぎりぎりワクチンとして認められる品質レベル。  

だが、ファイザーやモデルナなどのmRNAワクチンは、保管温度がマイナス70度からマイナス20度と不活化ワクチンやアデノウイルスベクターワクチンよりよっぽど取り扱いが難しく、また振動にも弱いとされるので、アフリカや東南アジア方面に流通させることは土台無理なのだ。なによりも値段も高価で、世界中の先進国で争奪戦になっている。  

なので、途上国に配布するならば、たとえ予防率が50%ちょっとでも、値段、供給量の面からみてコロナバックが手ごろ、ということになる。  

ちなみにシノファームの不活化ワクチンは、アラブ首長国連邦における第三フェーズ治験の昨年12月に発表された中間報告で、中間予防率86%と公表されている。ペルーでは、シノファームワクチンでやはり深刻な副作用が報告され、一度治験を中断している。  

中国はこの二種の安価で扱いやすい量産できるワクチンをもって、一帯一路沿線国を中心にワクチン外交を展開しようと考えている。

中国の“属国”ですら拒否

中国は2月以降、パキスタンを皮切りに、チリ、ブルネイ、ネパール、フィリピン、スリランカ、モンゴル、パレスチナ、ベラルーシ、シエラレオネ、ジンバブエなど10カ国以上で無償ワクチン支援を進め、次々に中国製ワクチン接種が開始される。さらに38カ国が中国にワクチン支援を求めており、少なくとも50カ国以上の国家が中国製ワクチンを頼りにしているという。  

また、COVAXを通じて中国製ワクチンを世界各国に提供する姿勢を強調している。治験に参加し、中国製ワクチン開発に協力した国としてはアラブ首長国連邦、モロッコ、インドネシア、トルコ、ブラジル、チリなどがある。  

こうしてみると、世界の途上国のほとんどが中国製ワクチンに依存しつつある。  

だがいまのところ、このワクチン外交がすばらしく成功しているかというと、そうではないようだ。 たとえば、シンガポールのシンクタンク・ヨセフ・イサック研究所がASEAN10カ国の研究者、官僚、ビジネスマンら1000人あまりに対して行った調査によれば、回答者の44%が「このパンデミックにおいてASEAN地域に対する中国の支援は日本や欧米を越えている」と認めているにもかかわらず、「米国と中国とどちらを信頼するか」という質問には61%が米国を選択した。  

また、63%の回答者が「中国は信用できず、中国の世界に対する貢献を拒絶する」と答えている。この対中不信の割合は、2019年の同様の調査より高い。  

中国の“属国”とまで言われるほど経済的に中国依存が進んでいるカンボジアのフン・セン首相ですら、昨年末に中国製ワクチンについて不信感を丸出しにして、「WHOが承認しないワクチンは購入しない」と言い、WHOの承認をまだ得ていない中国ワクチンについて、「カンボジアはゴミ箱じゃないし、ワクチン試験場でもない」と直言していた。  

中国が東南アジアにワクチンを強引に売りつけようとしていることへの不信感の表れだ、と当時大きく報じられた。  

結局、2月10日になって、カンボジアもシノファームの不活化ワクチンの接種が軍部主導で始まったが、フン・センの当時の発言は、東南アジア諸国首脳の本音だったかもしれない。

中国人自身もワクチン外交に微妙な反応

英国の市場調査会社YouGovが17カ国1万9000人を対象に、異なる12カ国が開発したワクチンに対する印象評価を調査したところ、中国はイランについで下から2番目。下から3番目はインド、下から4番目はロシアだ。トップ評価は上からドイツ、カナダ、英国だった。  

中国製ワクチンにプラス評価をつけた国は、中国自身(+83)のほかはメキシコ(+16)、インドネシア(+5)だけだ。中国製ワクチンに一番評価が厳しい国は、デンマーク(-53)、オーストラリア(-46)。  

香港も、なまじっか中国のワクチン禍事件をよく知っているだけに、中国ワクチンへの信頼性は低い。YouGovの調査では(-20)。香港大学の民意調査では、「香港人にワクチン接種を受けたいか」 「どのワクチンを受けたいか」というアンケートで、「ワクチン接種自体を受けたい」という回答は46%、「どのワクチンを受けたいか」という選択肢では、ファイザー・ビオンテックのワクチンが56%、アストラゼネカが35%、コロナバックは29%と一番低かった。ちなみにYouGovの調査では、日本はワクチン開発国としても、評価者側にも含まれていない。  

中国人自身も、中国共産党政府によるこのワクチン外交に微妙な反応を示している。  

武漢の感染者遺族でもある張海はラジオフリーアジア(RFA)のインタビューに答えて、「中国政府が国内で十分にワクチン保障ができていないのに、海外に無償援助でワクチンを送るなんて全く理解できない」と訴えている。 「ワクチンを外国に援助する余裕があるのなら、中国の経済に投入すべきではないか? なぜ自国民の待遇を改善しないのか? 外国援助に大枚を払い、私たち、感染者遺族や被害者は完全に無視している」

一般に、世界的範囲でワクチンを生産できる国は、まず自国民接種を優先し、次に第三国に販売、最後はCOVAXに提供する。それが、民主国家の常識的な判断だ。  

だが中国は、最初にWHOの安全審査も迂回して、パキスタンやチリのような途上国に対し、中国製ワクチンの「無償援助」を行う。これは、中国の野望である中華秩序で支配する新たな国際社会の枠組みに向けた布石のワクチン外交だとみられている。  

習近平政権の認識は、いまの時代が100年に一度の変局の時であり、これまでの米国一極世界が終わり、新たな国際社会の枠組みが再構築される時代だというものだ。そして新型コロナパンデミックが終わったポストコロナ時代こそ、中国が基軸となる新しい世界が広がる、というのがいわゆる「中華民族の偉大なる復興という中国の夢」という習近平のスローガンなのだ。

第三国を実験場にしている

米国の疫学専門家のジェニファー・ボウエイはRFAに対し、こうコメントしている。 「WHOの審査要求は合理的であり、正しく、中国にとってもよい。中国のワクチンは、このようにWHOに品質の保証をしてもらえば、安全だと世界にみてもらえるだろう。しかし、中国が個別の国と一対一の契約によって提供しているものは、(ワクチンの品質を保証するうえで)中国にとっても、その国家にとっても一定のリスクがある」  

ボウエイの指摘によれば、2010年から2011年にかけて、中国がアフリカに大量の抗マラリヤ薬の援助を行ったことがあったが、その時も偽薬問題が発生した。中国はSRA(WHOの厳格な監督管理機構、Stringent Regulatory Authority)に加盟しておらず、第三国が品質を保証するシステムがないことが、一つの背景となっている。  

中国のワクチンは第三フェーズ臨床数のデータが正式に公表されておらず、WHOもまだ品質証明を出していない。なのに、すでに50カ国以上にワクチン支援を約束していることは、くしくもカンボジアの首相が批判したように、第三国の途上国を実験場にしていると見られても仕方ないだろう。

実際、シノファームは1月のはじめにワクチンの副作用について73種類をあげ、中国国内の専門家も臨床データが公表されるまでは、18~59歳の原則健康な人が同意をへて受けるべきだ、と接種に慎重な姿勢を見せているのだから。

 ◇

 少し前の情報を元にしていますが、いずれにしても中国政府のやり方には問題がありそうですし、それでなくてもその品質にはかなり疑問がわいてきます。はっきり言ってまだまだ先進国のレベルには到達していないと言えるでしょう。

 その品質の問題の負い目を隠すように、すでに手なずけた形のWHOを通じてこの記事の書かれた後の5月7日シノファームのワクチン、6月1日にはシノバックのワクチンの緊急使用を認めさせました。日本はこれらのワクチンを使用していませんが、今後とも使用しないことが健康被害を起こさないために必要だと痛感します。

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