少子化問題

2023年4月26日 (水)

中国人口減少の裏で深刻な若者の「結婚・出産」悲観ムード 昨年初めて人口減少に見舞われた中国のその実態

Images_20230425105801  日本で深刻化している少子化問題。それは中国でも同様で、日本より遅れること10年以上経ちますが、昨年初めて人口が減少に転じました。一人っ子政策の後遺症だけでなく、それが解禁されても子供は増えません。何がそうさせているのでしょうか。

 日中福祉プランニング代表の王青氏が、時事ドットコムに寄稿した記事から、その詳細を見てみましょう。タイトルは『中国人口減少の裏で深刻な若者の「結婚・出産」悲観ムード【洞察☆中国】』(4/01公開)で、以下に引用します。

 中国国家統計局は1月、2022年末時点の中国(台湾、香港、マカオを除く)の総人口が前年比85万人減り、14億1175万人になったと発表した。

 減少は61年ぶり。年齢構成では、16~59歳の生産年齢人口が8億7556万人で全国人口の62.0%を占め、60歳以上は2億8004万人で全人口の19.8%、65歳以上は2億978万人で、14.9%となった。

 ◆衝撃的な数字

 政府が発表した最新データの中で、最もインパクトがあったのは新生児の数である。22年の出生数が956万人。この数は「一人っ子政策」が撤廃された16年の1867万人に比べ、約半分に減ったということであり、その減少数は衝撃的だった。

 新生児の急激な減少の背景には、中国の結婚件数が年々減少していることがある。昨年、中国民政部が発表した統計から見ると、22年の結婚件数は700万である。これに対して、10年前の12年の結婚件数は1323万だったので、10年間で半分近くに減少した。

 急速な経済成長とともに、社会の競争が激しくなった上、不動産価格や教育費などが高騰した。そのため、若者は結婚や出産に対し総じて悲観的なムードになっている。

 最大経済都市の上海では、市政府が最近公開した「上海2022年年次人口監視統計」によれば、合計特殊出生率がわずか0.7である。

 そして、SNSでは「自分を養うことすら精いっぱいなのに、どうやって家庭を築き子どもを育てていくのか」「子どもを産むことに対して大変不安だ」などのコメントが常にあふれている。

 ◆農村まで出産意欲低下

 しかも、現在、中国の少子化は都会の問題だけではなくなり、農村部まで深刻さを増している。

 これまで農村部では「労働力が欲しい、家の後継ぎが必要」という伝統や、「多子多福(子が多ければ幸福)」のような考え方があったため、人々は子どもを多く望み、出生率が高かった。

 ところが、武漢大学社会学院が農村部で行った大規模調査によると、農村部の若者のうち、約3割は全く子どもを産むつもりがないという。また、子どもは1人だけが良いと思う人が38%、2人までは32%、3人はわずか1.75%との統計である。

 さらに農村部の90後(1990年代生まれ)と00後(2000年代生まれ)の若者は、出産意欲が特に低いと調査報告が付け加えた。

 その理由は、社会の進歩や情報通信の発達につれ、農村の若者の居住地がどこであれ、彼らの生活様式が親世代と大きく変わり、考え方が段々と都市化した、というのが調査チームの専門家の分析である。

 ◆あの手この手の出産奨励策

 このような現状を踏まえて、中国政府は何としても出生率を上げようと、さまざまな出産奨励政策を打ち出している。

 例えば、3歳以下の乳幼児に掛かる養育費を個人所得税の控除対象にする。各地方政府も、あの手この手で出産数を増やそうと躍起になっている。

 中国の自治体の中で最初に育児補助金の支給を始めたのが 四川省の攀枝花市だ。21年に、第2子、第3子を持つ家庭を対象に、子ども1人につき3歳まで毎月500元(約1万円)の育児補助金を支給すると決めた。

 その後、多くの地域が似たような政策を相次いで発表した。育児補助金のほか、住宅購入時の優遇や保育園補助金制度、女性の産休期間拡大を含め、子育て、教育、母子の健康など、多方面にわたり、出産支援に力を入れている。

 そして先日、四川省は、未婚者にも出産を認め、出産保険や出産休暇を提供するというので、中国で大きく話題となった。この未婚者に対する出産対策は、今後ほかの地域も追随すると予測されている。

 「一人っ子政策」が7年前に廃止され、その後、3人までもうけられるよう緩和されたが、少子化は歯止めがかからない状況が変わらないどころか、ますます深刻になっている。

 専門家は「一人っ子政策のツケはあまりに大きい。子どもを安心して産める環境がないと、子どもを増やすのは難しい」と指摘している。

 殆ど日本と同様な状況と言っていいでしょう。ただ上海の出生率0.7は、東京の1.08に比べてもかなり低いですね。より深刻なのかも知れません。子育て支援策は似たようなものですが、「未婚者にも出産を認め、出産保険や出産休暇を提供する」という点は、日本にはまだ無いようです。フランスではおなじみですが、日本でも参考になる政策です。

 ある程度生活が豊かになり、女性の社会進出が進んだ国は、いずれも同様な少子化の波が押し寄せているようです。欧州に続き、日本や韓国をはじめ台湾、中国と言った東アジアの国も、その仲間に入りました。

 少子化の食い止めにある程度成功したフランスや、これからその成果が問われるだろうハンガリーのような、出生率改善に取り組む国同様、これら日本をはじめとする東アジアの国々も、少子化を食い止められるか注目されるところです。

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2023年4月 7日 (金)

「カネがない男は結婚できない」超高額結納金に苛まれる中国結婚絶望事情 風習と経済状況が人口減少を加速する

1_20230402161101  岸田政権の「異次元の少子化対策」が始動した日本。ただ少子化の大きな要因である未婚率の改善は、何故かその対策の中には含まれていないようです。その未婚率が重要課題になっているのが、同様に少子化への道をひた走る中国です。

 その要因を中国鑑測家で中央大学政策文化総合研究所客員研究員の北村豊氏が、現代ビジネスに寄稿した記事に見てみましょう。タイトルは『「カネがない男は結婚できない」超高額結納金に苛まれる中国結婚絶望事情 風習と経済状況が人口減少を加速する』(3/30公開)で、以下に引用します。

驚愕の結納金要求

中国語で結納の金品を「彩礼」と呼ぶ。今年1月に「上海厳公子(上海の厳若様)」(以下「厳さん」)と名乗るネットユーザーがソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のサイト『知乎』の掲示板に書き込んだ「彩礼」にまつわる話が注目されて大きな話題となった。

厳さんの前カノは江西省の出身であった。彼ら2人は海外留学先の大学で知り合った同級生で、3年以上にわたって同棲生活を過ごした仲、互いに将来の結婚を考えていた。大学卒業後に2人は一緒に帰国し、厳さんは故郷である上海市の実家へ戻り、彼女は上海市の戸籍を取得して同じく上海市内に住んだ。

彼女はたびたび実家暮らしの厳さんの所を訪れていたから、彼の両親は彼女と顔なじみになり、彼女を決して美人じゃないけど、礼儀正しく教養もあると気に入ってくれていた。

こうした経緯で厳さんは彼女が彼の実家の状況を理解してくれているものと考えた。そこで、そろそろ結婚の潮時かと考えた厳さんは、彼女と結婚することを前提に「聘金(結納金)」の額を胸算用で弾いてみた。

彼の両親は共に上場企業の高級管理職なので、彼の家庭の条件が悪いはずはない。彼女側に100万元(約2000万円)の現金を贈り、これに加えて上海市内の中心部に夫婦2人用の住宅を購入、さらには江西省にある彼女の実家付近にも彼女名義で住宅を購入することも厭わないし、婚礼費用の負担も問題ないという腹積もりであった。

しかしながら、いざ彼女の両親に結婚の許可を求めたところ、彼女の両親から提示された条件は次のような驚くべき内容だった。

  1. 結納金として1888万人民元(約3億7760万円)を支払う。<「1888」というのは同音異義語の「要発発発」を指し、「発財(金儲け)」を意味する縁起の良い数字>
  2. 上海市内に4500万人民元(約9億円)の住宅を購入して、その名義を娘とする。
  3. 江西省の実家の近くに数百万元の住宅を購入して名義を娘とする。この住宅は娘が里帰りした際の滞在用に使う。
  4. 結婚式に参列する娘側の親戚・友人100人以上全員に1人当たり10万元(約200万円)の「紅包(祝儀)」を配るのと同時に飛行機の1等航空券を往復で手配する。
  5. 娘が子供を1人出産する毎に1000万元(約2億円)の現金と時価2000万元(約4億円)以上の不動産を娘に与える。

「江西省の結納には上限がない」

「江西彩礼上不封頂(江西省の結納には上限がない)」とは世間で良く聞く言葉である。しかし、上記1~4を合計すると少なくとも8000万元(約16億円)となる訳で、いくら何でも女性側の条件は常識からかけ離れた内容であり、たとえ裕福な厳さん一家でも到底承服できない内容であった。

ちなみに、2022年9月に中国のネットサイト「小楽聞界」に掲載された『2022年最新全国各地彩礼排行榜(最新全国各地結納ランキング)』には、「彩礼(結納)」金額(但し、車や住宅は含まず)の全国最高は江西省で38万元(約760万円)であり、それに続くのが福建省の30万元(約600万円)、浙江省の25万元(約500万円)、江蘇省と遼寧省の20万元(約400万円)であるとあった。なお、全国最低は西蔵(チベット)自治区の1万元(約20万円)であり、その上に北京市の3万元(約60万円)があり、さらにその上に広州市の4万元(約80万円)が続いた。

北京市や広州市の「彩礼」が低いのは都市部の大都市であることが理由の一つだが、そのために地場の住宅価格が極端に高く、さらに車や住宅を含めるならば、「彩礼」の合計額は跳ね上がるはずである。ちなみに、大都市である上海市の「彩礼」は18万元(約360万円)であり、これに車や高額な住宅の費用を含めれば、その合計額は江西省以上の金額に膨れ上がるだろう。

それはさておき、厳さん一家と女性一家の間では幾度か話し合いが持たれたが、最後まで合意に至ることはなかった。

女性の父親は海外留学までさせたたった一人の愛娘を嫁がせるのだから、婿側が多少の誠意を見せるのは当然であり、彼らの要求する結納の総額は厳さん一家が持つ財産の5分の1にも満たない程度で過分なものではないとして一歩も譲歩しなかった。この点については女性も父親と同意見であったことで、漸く本来の理性を取り戻した厳さんは女性との離別を決意し、最終的に彼女との結婚話はご破算になったのだった。

結婚は「高値の花」

2月初旬に中国のネットで報じられた「彩礼」に関連する話題をもう一つ紹介すると以下の通り。

四川省の少数民族である彜族(いぞく)の女性(19歳)は実家を離れて出稼ぎに出ていた。2023年の春節(旧正月)の元旦は1月22日であり、春節休暇は大晦日の1月21日から1月27日までの7日間だった。彼女は家族から実家へ里帰りするように強く求められていたので、春節休暇を利用して久しぶりに実家へ戻ったのだった。

実家へ戻った彼女を待ち受けていたのは予期せぬ「相親(見合い)」であった。彼女は親の命令で見知らぬ男と無理やり見合いをさせられ、何が何だか分からない間に嫁入りを迫られ、驚くことに見合いから3日目には無理やり結婚式を挙げさせられたのだった。

彼女に結婚する気は全く無かったが、父親が相手の男から30万元(約600万円)の「聘金(結納金)」を受領済みであったために否(いや)も応もなく嫁がざるを得なかったのであった。

彜族の習慣に従えば、女性側が「彩礼銭(結納金)」を受け取りながら、結婚しない或いは離婚するならば、女性側は男性側に賠償金を支払わねばならず、彼女に結婚を拒否する力はなかったのだった。嫌々ながら結婚式に臨む彼女の顔には沈鬱な空気が漂い、19歳の活気に満ち溢れた気配はどこにも無かったのだと言う。

中国には悪しき習俗としての「彩礼」が存続しているのが実情である。こうした傾向は農村部で顕著であり、「高価彩礼(高額な結納)」や「大操大辦(冠婚葬祭の儀式を盛大に行うこと)」を抑制すべく、2021年に中国政府は全国に32の「婚姻風俗改革実験区」を設置している。

中国政府はこれら実験区における抑制効果を見極めた上で、婚姻風俗改革の法制化を予定しているのだろうが、たとえ法制化したとしても中国国民がそれを素直に受け入れるとは思えない。

とにかく、高額な結納が中国の男性に結婚を思いとどまらせる最大要因であることは間違いのない事実である。

中国政府「国家統計局」が発表した2022年の中国国民一人当たり平均の年間可処分所得は3万6883元(約73万8000円)であり、その内訳は都市部住民が4万9283元(約98万6000円)、農村部住民が2万133元(約40万3000円)であった。この数字を見れば、独身男性にとって各地の「彩礼」がいかに高額か分かるはずであり、彼らにとって結婚が「高嶺の花」ではなく、「高値の花」であるかが理解できよう。

2_20230402161201 急落が続く中国の結婚率

さて、話は変わるが、2022年8月に中国政府「民政部」(日本の総務省に相当)が発表した『2021年民政事業発展統計公報』の「婚姻登記服務(結婚登録サービス)」の項目には、中国で登録された結婚と離婚の状況が次のように記載されていた。

2021年の法に基づく結婚届は764.3万組で、前年比6.1パーセント(%)減少した。婚姻率<人口千人当たりの婚姻件数>は5.4パーミル(‰)で、前年比0.4パーミル低下した。一方、法に基づき行われた「離婚手続」は283.9万組で、前年比34.6パーセント減少した。このうち、民政部門に離婚届を提出した離婚は214.1万組であり、裁判所の判決や調停による離婚は69.8万組であった。離婚率<人口千人当たりの離婚件数>は2.0パーミルで、前年比1.1パーミル低下した。

同項目に掲載されていた「2017~2021年の結婚率と離婚率」の表は以下の通り。

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この表1から分かるのは、2017~2021年の5年間で結婚率が7.7から5.4まで2.3パーミル低下し、離婚率が3.2から2.0まで1.2パーミル低下したことである。出生人口が年々減少している中国にとって、離婚率の低下は喜ばしいことに思えるが、結婚率の低下はさらなる出生人口の減少をもたらす要因と言えよう。

「女旱(ひで)り」では結納金高騰は当然

2020年11月1日を基準日として実施された「第7次人口普査(第7回国勢調査)」によれば、中国の総人口は14億978万人、その構成は男:7億2142万人、女:6億8836万人で男が女より3306万人多かった。これを女性にとって妊娠・出産が比較的容易と思われる20~39歳に限定した男女別人口構成を見ると表2の通り。

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要するに、年齢を20~39歳に限定しただけでも男女の人口差は1533万人にも及んでいるので、結婚したくても肝心な相手の女性にあぶれる男性が発生するのは必然である。だからこそ、「女旱(ひで)り」の中国では上述したように「彩礼(結納)」の金額が高くなるのは致し方ないことであり、カネがなければ結婚できないのは至極当然なことと言えるのだ。

2022年3月に結婚メディアの「結婚産業観察WIO」が発表した『2022年中国婚姻報告』によれば、中国の初婚人数は2013年に年間2386万人の最高値を記録してから下降を続け、2020年には1229万人まで下がったが、これは2013年に比べて48.5パーセントの下落であった。

また、結婚登録件数は2013年に1347万組で最高値を記録したが、その後は下降に転じ、2018年:1014万組、2019年:927万組、2020年:814万組となり、2021年には上述の通り764万組になった。これは2013年以来8年連続の下降であり、恐らく2022年も下降傾向はさらに継続するものと思われる。

一方、高学歴女性には「男旱り」

なお、上述した『2021年民政事業発展統計公報』の「結婚登録サービス」の項目には表3に示した「2021年結婚登録人口の年齢分布」が掲載されていた。

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登録人口の合計は1528.5万人であるが、夫婦は男女各1人で1組だから、合計を2で割ると764.3万組となり、上述した2021年の結婚届の764.3万組と同じになる。40歳以上の結婚登録はそのほとんどが再婚だと考えられるが、それでも登録者が297.9万人もいて、全体の19.5パーセントもの比率を占めているのは奇異な感じがしてならない。それほど再婚の件数が多い理由は何なのか。

中国の法定結婚年齢は『婚姻法』第6条に規定あり、男は22歳、女は20歳となっている。上記の表によれば、結婚登録人口の最大は25~29歳(539.3万人)であり、それに30~34歳(305.2万人)が続くが、両者の合計で55.3パーセントを占めている。

一方、表2で示した「第7回中国国勢調査」における20~39歳の男女人口合計は3億8995万人であったが、表3で示した20~39歳の結婚登録人口は1230.6万人になる。この1230.6万人が男女人口合計の3億8995万人に占める比率はわずか3.2パーセントに過ぎない。20~39歳に限定した年間の結婚登録人口が人口合計の3.2パーセントでは余りにも少ないのではなかろうか。これでは出生人口が年々減少するのは当然と思える。

なお、第7回国勢調査の結果によれば、20~34歳の人口(2億9094万人)中には大学生および大学院生が合計5894万人も含まれていた。その内訳は男性が2788万人(47.3パーセント)に対して女性が3106万人(52.7パーセント)で、女性の比率が男性を5.4パーセント上回っていた。女性の高学歴化はそれに釣り合う学歴を持つ男性不足を招き、彼女たちに「男旱(ひで)り」の現象を引き起こしている。世の中はうまく行かないことばかりなり。

 中国の結婚の大きな阻害要因の一つには、結納が高額すぎることが挙げられるようです。日本の平均は98万円だそうですから、やはり高額だと言えそうです。ただ冒頭に登場した厳さんの例は、いかにも異常な気がしますが。

 それに男女の人数の差も結構な要因かも知れません。特に男性の方が女性より年長で結婚するとすれば、年々人口が減っていく中では、その差が更に大きくなってしまいます。

 結婚登録人口の定義がよく分りませんが、適齢期の人口の3.2%しかないというのは、中国の統計の信憑性のなさを示しているのでしょう。しかし、年々減少しているのは間違いないでしょう。2050年には人口が半減するというのも、あながち間違いではないでしょうね。それによって覇権の動きが弱まれば幸いなのですが。

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2023年3月31日 (金)

「フェミニスト」上野千鶴子氏が入籍していた事実に唖然! 飯山陽氏が語る「おひとりさま」を裏切る偽善者

Images-17_20230330111901  岸田政権が日本の重要課題と位置づける「少子化問題」。その一因に「結婚しない男女」の問題があります。(以前このブログで櫻井よし子氏の警鐘文を取り上げました)。その風潮を助長しているのが所謂「フェミニスト」思想、そしてその代表格のような人物が社会学者の上野千鶴子氏です。

 このブログでも取り上げましたが、東大の名誉教授でもある彼女は2019年度の東京大学卒業式で、左翼思想満載の祝辞を述べたことで、そのマルクス主義的思想の片鱗を遺憾なく発揮していました。

 その上野氏は「おひとりさま」の教祖とも呼ばれています。ところが先月末週刊文春が上野氏が入籍していた記事を公開しました。それをうけて、イスラム思想研究者の飯山陽氏が月刊hanadaに寄稿した記事を紹介します。タイトルは『偽善者に騙されるな 「おひとりさま」を裏切る偽善者』で、以下に引用して掲載します。

結婚しない人が増えている。

2022年6月に内閣府から発表された 『少子化社会対策白書』によると、「生涯未婚率」は年々増加しており、1970年には男性1.7%、女性3.3%だったのに対して、2020年には男性28.3%、女性17.8%となった。生涯未婚率とは、五十歳になった時点で一度も結婚したことがない人の割合である。

「生涯未婚者」や「非婚者」という言葉には、どこか寂しい印象がつきまとう。最期には孤独死をむかえて無縁仏となる、という負のイメージとも重なりやすい。これに「おひとりさま」という新しい名称を与え、その印象をポジティブに変えようとした人物がいる。東京大学名誉教授で、フェミニストとしても名高い上野千鶴子氏だ。

2007年に出版された「おひとりさまの老後」(法研)に始まる上野氏の「おひとりさま」シリーズ本は、累計128万部を売り上げたベストセラーだ。2021年発売の「在宅ひとり死のススメ』(文春新書)で上野氏は、「わたしには家族がいませんので、基本、ひとりで暮らしていま現在七十二歳。このまま人生の下り坂をくだり、要介護認定を受け、ひとり静かに死んで。ある日、亡くなっているのを発見されたら、それを「孤独死」とは、呼ばれたくない。それが本書の執筆動機です」と述べている。

著者の上野氏も非婚だ、というのがこのシリーズの前提である。彼女は自ら「負け犬」を名乗り、卑下してみせるリップサービスも忘れない。私もあなたたちと同じなんだと、仲間意識を喚起する。

ショッピングサイト・アマゾンには、当該シリーズ本について「独りで生き抜く勇気をもらいました。自分に強く生き抜くって大変だけど、素敵だとおもいました」とか、「私も一人だけど、やっぱり幸せです」「この本は、生きるための道標(戦略本)になると思います」「私はお一人様ですが、とても参考になり、友達にも勧めてます!!」といったレビューが多数寄せられ、軒並み高評価がつけられている。

上野氏は間違いなく非婚者の星であり、ロールモデルだった。「その道」で最も稼いだ人物の一人でもあろう。

見事な言行不一致

ところが二月末、『週刊文春』が「”おひとりさまの教祖〟上野千鶴子が入籍していた」という記事を出した。実は、上野氏は「負け犬」ではなかったのだ。

ある男性と二十年以上前から恋愛関係を続け、結婚か養子縁組かは不明だが入籍し、相続もしていたと報じられている。相手の男性は二年前に亡くなったが、晩年に生活を支え最期を看取ったのは上野氏で、火葬の際には「本当に憔悴していた」という。

これはおかしい。これではまるで、仲睦まじい夫婦そのものではないか。

上野氏は自らが非婚派だっただけでなく、結婚という制度自体を強固に否定し、いかに結婚が誤った制度であるかについて、社会に対し声高に訴えてきた。

2016年9月には『東洋経済』で、結婚について「自分の身体の性的使用権を、特定の唯一の異性に、生涯にわたって、排他的に譲渡する契約のこと」と定義している。これはマルクスの盟友エンゲルスが、一夫一婦制によって女性は男性の奴隷及び子供を生産する道具となった、と述べたことを彷彿とさせる。上野氏は自ら「マルクス主義的フェミニスト」を名乗って憚らない。

2020年4月には『週刊金曜日』で、「結婚という法制度自体がイヤ」「自分のセックスの相手をお国に登録する意味は、まったく認められません」とも述べている。

ところが、彼女は入籍していた。言行不一致も、ここまでくれば見事なものだ。

いや、感心している場合ではない。彼女に影響を受け、結婚や出産のタイミングを逃した人は少なからず存在するだろう。1976年生まれの筆者も、女は自立しろ、男に頼るな、結婚も出産も自由を失うだけだ、そんなものをするのは愚かな女だけだ、と言われて育った。女の子は「私は一生、結婚なんてしない。 職業を持ち一人で自立して生きていく」と宣言することこそが正しい、と教わってきた。上野氏は間違いなく、そうした社会の風潮を先導していた一人だ。

京都精華大学人文学部教授から1993年には東大文学部の助教授となり、1995年には東大大学院の教授となった。論壇でもメディアでもフェミニズムの旗手として脚光を浴び、世に非婚やおひとりさまなどをススメてきた。上野千鶴子は、男に依存せず自立していて、意気軒昂で知的で、なおかつ社会的地位も名誉もある、新しい時代の女性の理想像を体現していたはずだった。

彼女の活躍と連動するように、日本の生涯未婚率は上昇し、少子高齢化も進んだ。 上野氏のイデオロギーや活動が、わが国における非婚者の増加や少子高齢化に多少なりとも「貢献」した可能性を勘ぐるのは、筆者だけではあるまい。

結婚するかしないか、子供を産むか産まないか。重大な局面でこうした選択を迫られた女性が、上野氏の主張や、彼女が牽引してきた「フェミニズム」的な思想や生き方に影響を受け、非婚や子供を産まないほうへ背中を押された事例は少なくなかろう。夫にも子供にも縛られず、自由にのびのびと、しかも日本の最高学府の教授として活躍する彼女の姿に自身を重ね、こんな生き方もいいなとか、私もこうありたいと思った女性や、非婚という自分の選択は正しかったと自己肯定したり、結婚や子育てに自由を奪われ翻弄される主婦に対して、敗北感ではなく優越感を感じたりした女性もいただろう。

おひとりさまとは言っても、生涯未婚者と、連れ合いに先立たれてひとりになるのとでは全く違う。

前者だったはずの上野氏は、実は後者だったわけだ。彼女には、自分には愛し愛された家族がいたという記憶が残っているだろう。愛した人と過ごした年月と思い出に加え、財産まで受け継いでいる。彼女は、いまは物理的にはおひとりさまかもしれないが、心のなかは温かいもので満たされているはずだ。それらのすべては、生涯未婚者には限りなく縁遠い。

「私は弱者の味方」という嘘

家族というのは、長い歴史のなかで、無数の人間たちが子孫を生み育てるだけでなく、自らの心の拠り所ともしてきた共同体だ。しかし上野氏をはじめとする現代の社会学者は、家族は人間一人ひとりの「居場所」にして愛情と幸福の源である、という理念を「幻想」だと否定してきた。現代社会学は家族というものを、個人を縛り付け、自由を奪う監獄のようなイメージで捉える。その家族から脱却すること、あるいは家族を作らない、結婚しないことが、新しい、正しい生き方だと喧伝されてきた先に、いまの日本がある。

ところが、当の上野氏自身は、他人に対しては非婚やおひとりさまを勧めつつ、自らはちゃっかり伴侶を得て家族を築いていた。

不特定多数の人を孤独な人生へと導いておいて、自らは温かい幸せに包まれていた。

これほど偽善に満ちた裏切りは、そうはあるまい。

彼女は「平等に貧しくなろう」と「脱成長」を訴えているが、自身は東京都武蔵野市のタワーマンションの上層階を購入して居住し、愛車はBMWで、八ヶ岳の別荘も「相続」している。

上野氏が「お前たちはせいぜい平等に貧しく暮らせ」と仰せなのは、自身がすでに十分に「成長」し、美味しい思いをしてきたからであろう。我々一般庶民は、そこまで侮られているのだ。

彼女の言行不一致は著しく、自分だけは特別だという特権意識は「平等」という彼女の掲げる崇高な理想とはあまりにかけ離れている。

筆者は生涯未婚を否定しない。結婚したくない人もいるだろうし、したくてもできなかったという人もいるだろう。しかし、生涯未婚率上昇の背景に、結婚を否定し、非婚こそ是だ、それこそ進歩的女性のあるべき姿だ、というイデオロギーを吹聴してきた上野氏のような左翼活動家がいたこと、小学校から中学校、高校でも、そして大学という高等教育の場でも、メディアでも、それが肯定されてきたことは確認しておく必要がある。

「私はあなたたち弱者の味方だ」と言う活動家の甘言に騙されてはならない。よく見れば、彼らが弱者などではなく特権を持つ強者だということがわかるはずだ。

 共産主義思想の持ち主は多くは上野氏と同様、平等とは裏腹の特権意識を持つ人が多いと思いますね。その代表例が中国共産党員であり、日本でも日本共産党のトップ層です。

 またテレビの反日コメンテーターにも「我々庶民」といいながら、都心に邸宅を構えている御仁も多いと思います。所謂言行不一致の人間はごまんといるのが現実でしょう。

 特にこの上野氏の言行不一致は罪が重い。自身がマルクス主義にかぶれたからと言って、結婚まで「国家に登録する」耐えがたい行為のように考える様は、まさにマルクス主義に洗脳され、抜け出せない人間の「わめき」のように聞こえます。いずれにしろ「化けの皮」が剥がれた彼女の今後が注目されます。

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2023年3月10日 (金)

櫻井よし子氏:「未婚化対策に叡智を」 少子化要因の一つである未婚問題にメスを入れないと、異次元の対策には決してならない

Images-6_20230309142401  昨年の出生者数が80万人を切って、少子化について俄に国民的課題となってきました。ただこの課題は今に始まったことではなく30年前、バブルがはじけた頃からの課題だったのです。それを政府やその他の不作為によって、部分対応に終始してきた結果が、この数字に表れたと言っていいでしょう。

 岸田首相は「異次元の少子化対策」を打たねばならないと、打ち上げましたが、その論点の中心は子ども手当に代表される、子育て家庭向けの対策です。確かにそれも重要でしょうが、今もっと深刻な問題があります。それは未婚の男女が激増していることです。

 日本は私生児(婚外子)に偏見を持つ風潮もあり、結婚した夫婦から子供が生まれるのを通常視します。ですから結婚しない男女が増えれば、当然生まれる子供は減っていきます。ですからこの未婚の男女に対する対策も、大きな課題なのです。

 この課題に対して、ジャーナリストの櫻井よし子氏が、産経新聞に寄稿したコラムで、一部「Colabo問題」にも触れて述べていますので、以下に引用します。タイトルは『未婚化対策に叡智を』(3/06公開)です。

Images-5_20230309142401  昨年、日本に生まれた赤ちゃんが80万人を下回った。政府の見通しより11年早い。法政大学経済学部教授の小黒一正氏はわが国の少子化はもっと加速し、2031年の新生児は70万人、40年には60万人、52年には50万人を下回ると政府よりもずっと厳しく予測する。人口減少は憲法改正を必要とする国防と並ぶ最も深刻な日本国の課題であり、少子化対策が急がれる。

 岸田文雄首相は異次元の少子化対策のたたき台を3月末までにまとめるとし、その柱は①児童手当を中心とする経済支援強化②子育てサービスの拡充③働き方改革の推進―だと語った。

 実績で見れば年来の子育て支援策は少子化問題解決に貢献していない。少子化の真の原因を間違えているからだ。このままではせっかくの大計画は従来の施策同様、少子化対策にはつながらない。

 わが国では婚外子が全体の2%にとどまることに見られるように結婚と子供を持つことに強い相関関係がある。であれば少子化解決の第一は結婚する人を増やす、つまり未婚化問題の解決こそが鍵だ。

 正しい対策は正しい認識からしか生まれない。若い世代の結婚観について日本社会には大いなる誤解があると指摘するのが、中京大学現代社会学部教授の松田茂樹氏だ。子育て期で見ると、「夫は仕事、妻は家庭という役割分担を行う夫婦」が全体の80%で圧倒的多数を占めているという。女性が職場から離れて子育てをする夫婦への支援強化策が必要だということだ。

 彼らへの支援は一組の夫婦が産み育てる子供の数を増やすことにもつながる。結婚した夫婦が望む子供の数は2人が52%、3人が23%、4人以上も入れると約8割の夫婦が2人以上の子供を持つことを望んでいる。しかし、希望する数まで増やせないなどとする夫婦が約67%。理由の第一が「お金がかかりすぎる」である。ここに異次元の援助を入れるべきだろう。シングルマザーや働くお母さんへの援助と同様、典型的家族への支援充実が大切だ。

 若い世代の結婚観は急速に変化している。出産後も女性が継続して働くのが望ましいと考える割合が女性で34%、男性で39%と増えている。一生結婚せず、子供も持ちたくないという人も増加し、結婚しないという男性は6年前より5ポイント増の17・3%、女性は6ポイント増の14・6%だ(国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査)。

 未婚化対策がいかに大事かということだ。若者が結婚しない最大の理由に種々の調査は収入の不安を掲げている。未婚化と貧しさには強い相関関係がある。シワ寄せは非正規雇用の男性に集中し、彼らは結婚願望も低い。企業の協力で非正規雇用を減らすか、彼らの賃金を高める施策に日本の叡智(えいち)を結集するときだ。

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 結婚観が大きく変化するいま、厚生労働省、文部科学省、法務省などには、日本人の生き方を一定方向に誘引する制度を定める委員会や有識者会議が設置されている。各種委員会の決定は往々、リベラルな方向に傾いてきた。それらが日本国政府の基本方針となり、法制化され、予算が投入され、確実にわが国社会の形を創っていく。

 特定の民間団体と密接に関係する人物が専門委員などに就き、自身の所属する団体の利益になるよう政策を誘導することが、至る所で頻繁かつ公然と行われてきた。

 本当に大事にすべきなのは特定の人々だけではなく、全員なのだ。シングルマザーもLGBT(性的少数者)もきちんと受けとめたうえで、多数を占める典型的な家族を大事にしなければならない。その多数派を置き去りにするかのような政策を決めてきた委員会や専門家会議の在り方を、今こそ見直すべきだろう。

 これでよいのかと検証すべき一例が「Colabo(コラボ)」であろう。性暴力や虐待などの被害を受けた若い女性らへの支援事業を東京都から委託されている一般社団法人だ。Colaboに対しては会計報告に不正があったとして住民監査請求がなされたが、問題の根は深い。代表の仁藤夢乃氏は厚労省の「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」のメンバーで、政府の公職にある。

 仁藤氏は厚労省の会議で「女性支援法」に基づく国の政策形成に関して、「法律が実効性のあるものになるように、予算をつけてほしい。(中略)強制力を持って実行できるようなものが要る。やらせる、そういう法律や計画にしてほしい」と述べている。

 離婚夫婦の片方による子供連れ去り事件や、その法的問題点について詳しいジャーナリストの池田良子氏が語った。

 「自治体から巨額の補助金を受けている団体の代表が、自治体に自分の事業に対する予算措置を強制的に行うよう法律で義務付けてほしいという要望に聞こえます。公職にある立場の人には許されない発言です」

 仁藤氏を支える議員に社民党の福島瑞穂党首、立憲民主党の蓮舫、打越さく良両参院議員らがいる。Colaboは家出少女に食事や宿泊場所を提供する活動を行ってきたが、そうした活動の一環として若い女性たちの合宿を沖縄で行い、「辺野古基地反対座り込み」などの政治活動も行っている。その活動を支える「女性支援法」は、実は衆参両院での議論が全くなされない中で成立した。

 Colaboの事例が示すのは、国民の監視の目が全く届かない中で、女性支援法など多くの人が疑問を抱くことも反対することもない、美しい名前の法律に守られて多額の公金が特定の団体に支給されているケースがあるという事実だ。公金が本来の目的とは異なる目的、たとえば左翼的政治活動に使われ、リベラル勢力の活動資金となっている例は実は少なくない。

 異次元の少子化対策は、家族のあり方の見直しを起点とし、政府内の種々の有識者会議の構成員の見直しも含め、「異次元の体制」で取り組まなければならない課題である。シングルマザーをはじめ少数の人々の生き方をきちんと受け入れるという大前提を踏んだうえで、伝統的家族の長所に目を向け、若い人々が結婚できる社会の構築に最大限の支援が急がれる。

 リベラル勢力は前回のこのブログで指摘したように、「多様性」の美名の元にマイノリティや弱者と言われる人を重要視し、大多数のマジョリティへの視線が決定的に欠けています。Colabo問題の本質もそこにあるのではないかと思われます。

 それと櫻井氏の指摘のように、少子化問題にしてもその本質をきちんと把握した上で、有効な手を打たねばなりません。そこには結婚しない男女の問題が取り残されていて、そこにメスを入れる必要があることはこのブログでも指摘してきました。

 野党、立憲民主党は、今総務省の文書問題で沸き立っているようですが、優先順位が全く見通せない情けない党です。弱体化した国の力を取り戻す為に、今何が重要かを考えて政策論議をしなければ、やがて社民党と同じ運命を辿ることでしょう。

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2023年2月 9日 (木)

少子化問題、30年前からの課題にようやく火が付く、しかし今後数十年は減少が止まらない、どうするその方策

Images-7_20230208155901  岸田首相が「異次元の少子化対策」方針を打ち上げてから、ようやく日本でも政界・メディア界とも、本格的にこの問題を取り上げ始めました。人口問題は30年のスパンで考える必要があると言います。昨年の出生者数が80万人を切るだろうとの予測が出され、今完全に火がついた状態ですが、30年前にはほぼ予想した状況ではなかったのでしょうか。

 政府はこの間、子育て対策として、少子化担当大臣を設けるなど、あらたな制度作りを始め、それなりの取り組みをしてきました。しかし残念ながら有効な対策となっていなかったのは、出生者数が毎年減少してきていることからも分ります。

 中国、韓国も日本と同様、世の中が豊かになり、結婚しなくても自活できる女性が増え、それにつられ未婚の男性も増えています。特に日本は未婚の親から生まれた子供への風当たりは強いことから、結婚しない男女が増えれば、当然子供も少なくなります。少子化は豊かさの代償の部分もあるでしょう。しかし少子化が作り出す未来は決して明るいものではありません。

 同時に日本ではこの30年デフレとそれに伴う経済停滞が続き、賃金は増えず子育てにかかる負担は相対的に増してきています。その結果2人、3人の子供を作ることに躊躇する夫婦も多くいます。

 ではどうすればいいか、議論が渦巻く中、ジャーナリストの河合雅司氏がデイリー新潮に寄稿した記事で、人口減少を前提としてどう対応するか、その見解を述べています。タイトルは『人口減少でディストピア化する日本 豊かに暮らすための「四つの方策」とは』(1/31公開)で、以下に引用します。

 かつて1位だった日本の競争力は、現在、世界34位なのだという。隔世の感があるが、もはや人口増は望めず、何か手を打たなければ今後も下がる一方だろう。では、どんな方策があるというのか。それは唯一、人口減を前提とした社会に日本を作り変えることである。

日本経済の衰退が覆い難くなってきた。

 GDP(国内総生産)こそ何とか世界第3位を維持しているものの、4位のドイツにかなり迫られている。それどころか、2030年ごろにはインドに追い抜かれると見られているのだ。

 各種の国際ランキングを見ると、下位に甘んじているものが少なくない。国際経営開発研究所(IMD)の「世界競争力ランキング」では、22年の日本の総合順位は34位だ。1990年代初頭には首位をキープしていただけに、「別の国」になってしまったような印象である。

下図は-IMD「世界競争力ランキング」日本の総合順位の推移

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 経済が成長しなければ、国民の豊かさが損なわれていく。日本経済研究センターは、個人の豊かさを示す指標とされる1人当たり名目GDPが22年に台湾、23年には韓国を下回ると試算している。イギリスの経済誌「エコノミスト」が、世界中のマクドナルドで売られているビッグマックの価格で各国の購買力を比較した「ビッグマック指数」を毎年2回発表しているが、22年7月の日本は54カ国中41位だ。中国や韓国、タイよりも安く、日本人の賃金の低さを映し出している。

 もちろん、急速に進んだ円安でドル換算の金額が目減りしているという一時的要因もある。だが、円安だけでここまでは落ち込まない。デジタル化の遅れが象徴するように、あらゆる分野で劣化が進んでいるのだ。日本製品が次々と世界を席巻し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと言われていた頃の勢いはどこにも見当たらない。

 

生産年齢人口が約14%減少

 この四半世紀、日本にいったい何が起きていたというのか。日本経済の低迷についてはさまざまな分析が加えられてきたが、言うまでもなくデフレが最大の要因だ。バブル経済の崩壊や金融危機によって日本企業の競争力は低下した。だが、デフレを招いた初発の原因ばかりを追究していても、かくも長く脱却できない理由は解明できない。

 そこで国勢調査を見てみると、経済の主たる担い手の生産年齢人口(15~64歳)がピークを迎えたのは、日本経済が低迷を始めた1995年(8716万4721人)だ。2020年は7508万7865人なのでこの四半世紀に13.9%も少なくなっている。生産年齢人口の減少と歩調を合わせる形で日本経済が低迷したのは偶然ではないだろう。少子高齢化を伴いながら進む人口減少はデフレを長期化させている大きな要因であることは間違いない。

 生産年齢人口といえば、「働き手」と同時に「旺盛な消費者」でもある。両方が一度に減ったのだから日本経済が低成長を続けてきたのも無理はない。

 デフレを長引かせている人口の変化はもう一つある。この間、高齢者が激増したことだ。高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)が14%を超えて日本が本格的な高齢社会に突入したのは1994年である。その後も年を追うごとに上昇を続け、2022年は29.1%だ。主たる収入が年金という高齢消費者がマーケットの「主役」を占めるようになったのでは、企業や商店は値上げしたくても簡単にはできない。

マイナスのループ

 人口減少が日本経済に及ぼす影響は、これにとどまらない。深刻さで優るのは、将来に対する希望や活力を人々から奪っていったことだ。この20年間、社会保障費の急増や空き家問題に代表されるように高齢社会に伴う諸課題が顕在化した。あらゆる分野で若手人材の不足が叫ばれ、地方では自治体の“消滅”までが語られるようになった。高齢社会の厳しい現実が多くの人に知られるようになるにつれて、出生数は目に見えて少なくなっていったのである。いまや若い世代にとって「未来」という言葉がネガティブなワードとなっている。

 これは若い世代に限ったことではない。医療や介護サービスの度重なる改悪で、中高年にも老後生活への不安は広がっている。「人生100年」と言われるほど寿命が延びたことで、“気ままな老後暮らし”が幻想であったことに多くの人が気付いた。

 こうなると、期待成長率は低下する。1990年代半ば以降の日本では、将来への期待が急速にしぼみ、投資不足が起きていたのだ。投資不足は潜在成長力を弱め、生産性を低下させていく。こうして日本経済はどんどんマイナスのループに陥っていったのである。投資をしないので企業には内部留保だけが積み上がり、労働者の賃金はほとんど上昇することはなかった。

新興国のマーケットは魅力的だったが…

 タイミングも悪かった。日本で少子高齢化や人口減少が進むのと並行してコンピューターが急速に発達・普及し、人件費の安い新興国に次々と最新鋭の工場が建設されていったのである。新興国は高い技術力やスキルがなくとも、“それなりの品質”の製品を大量生産できるようになったのだ。各国経済が急速に発展し、人々の生活水準が格段に向上したことで、“それなりの品質”の製品が流通するマーケットも次々と誕生した。

 これは、日本企業にとって新たなライバルの出現であった。圧倒的な技術力による優位性を失ったのである。新興国で作られた製品はデフレ経済に陥っていた日本に大量に輸入され、内需で成り立ってきた企業までを苦境に追い込んだ。

 一方で、日本企業にとって新興国に新たに誕生したマーケットは、国内マーケットの縮小を補う魅力的なフロンティアであった。反転攻勢とばかりに乗り込んだのである。しかしながら、“それなりの品質”が中心の新興マーケットにとって日本製品はオーバースペックであった。欧米マーケットでのようには売れず、日本企業は戦略の立て直しを迫られた。

人を「コスト」として扱った

 ここで新興国とは競合しない分野へとシフトする選択肢もあったが、競争力を取り戻すべくコストカットに踏み込んでいった。生産拠点を新興国に移すと同時に、日本人の人件費にも手を付けたのだ。技術者までをリストラし、新規学卒者を非正規雇用者にしてしまった。こうして就職氷河期世代を生み出したのである。人を「資本」ではなく「コスト」として扱ったということだ。これは技術者の海外流出を招き、現在につながる日本企業の開発力の低迷をもたらした。

 若者の雇用を破壊すれば、将来の人生設計ができなくなる。結婚や妊娠・出産を望めない人が増え、出生数の減少を加速させたのだ。企業が自ら「未来の消費者」を減らし、国内マーケットを縮小させるという自殺行為に走ったのである。当時の経営者の責任は重い。

日本の労働者に「割安感」

 これに対して、政府・日銀は「デフレを脱するには賃金が上がる環境を作らなければならず、それには物価を上げる必要がある」と考え、インフレ目標を掲げて異次元の金融緩和を行ってきた。しかしながら、国民の将来に対する不安がデフレを深刻化させている背景となっている以上、これではうまくいかない。

 民間エコノミストなどからは「賃金上昇のために必ずしもインフレは必要ない」との指摘が出ているが、物価高が賃金の上昇に結びついていない現状がこれを証明しているといえよう。

 デフレに対して有効な対策を打てず、むしろ日本企業がオウンゴールのように自ら多くの人々の雇用を破壊した結果、日本は総じて低賃金の国になってしまった。OECDのデータ(21年)では日本の平均賃金は34カ国中で24位にまで低下している。政府や経済団体の首脳は人口減少対策として外国人労働者の受け入れ拡大に前のめりになっているが、いまや日本人に「割安感」が出ている。すでに中国をはじめ海外企業が日本人を雇用すべく日本に進出するケースが出てきているのだ。技術力が高く勤勉な日本人が“優秀な外国人労働者”として経済成長が著しい新興国などに出稼ぎに行く時代へと、いつ転換してもおかしくなくなってきている。

 繰り返すが、新興国との競争にのめり込んで人件費を抑制するという日本企業の経営モデルは、国内マーケットの縮小をより速める。人口減少社会においてはやってはならないことの一つなのだ。

海外の投資家に見切りをつけられる

 将来の国内マーケットを縮小させるといえば、目立ち始めてきた国外での投資収益の獲得も同じだ。それ自体が悪いわけではないが、これを国内マーケットの縮小への対策として力を入れすぎることは危うい。収益が海外の子会社の内部留保となって国内に十分に還流しないだけでなく、こうした形で収益を得られることに味を占めてしまうと、人口減少の時代でも本業を成り立たせるための改革が遅れ、国内で良質な雇用が生まれづらくなるためだ。そうなれば、国内マーケットはさらに縮小する。企業だけ生き残り、日本社会が衰退したのでは意味がない。

 オウンゴールを繰り返し、実人口が減る以上に国内マーケットを縮小させていけば、外国が日本を見る目はより厳しくなる。そうなると、海外の投資家や優秀な人材が「日本の成長力」に見切りをつけ、日本はますます縮小する。円の価値も低くなり、エネルギーや食糧などの調達がままならなくなっていく。

「戦略的に縮む」

 日本が人口減少とともに“輝き”を失えば、すべてが悪い方向へと向かう。

 いつまで先進国でいられるか分からないのに、人口減少対策の動きは鈍い。それどころか、人口減少など「別世界」とばかりに、国内シェア争いにまい進している企業が多い。現在の需要しか見ていないような大規模な開発計画も全国各地に目白押しである。空き家問題が深刻化しているのに、新築住宅はいまだ建てられている。

 人口が増えていた時代の「拡大」による成功体験が染みついているのだ。だが、国内マーケットは確実に縮小していくので、このまま「拡大」のみで突き進めば必ず破綻する。内需だけで経営を成り立たせている企業は死活問題に直面する。

 人口減少社会で豊かさを維持していくには、経営手法をはじめ、思い切って社会の仕組みを変えるしかない。そのためには「戦略的に縮む」ことである。

 まずは企業が国内マーケットの縮小を前提とし、それでも成長し得る経営モデルへと転換することだ。

 いや応なしに消費者が減るのである。売上高を増やすことで利益を拡大させる経営スタイルは人口減少社会では通用しない。

 少子化が進むにつれて、人手不足も恒常化する。配送するドライバーや販売する小売店の店員も含め、関連する業種がすべて縮小するのだから、1社だけが拡大路線にこだわろうと考えてもうまくいくはずがない。

 とはいえ、単純に売上高を減らせば、当然ながら企業は存続しえない。そこで目指すべきは少量販売でも利益を増やす経営モデルだ。そのためには、付加価値を向上させることである。

「生活に必要なモノ」は売れる

 消費者は自分にメリットがあると思えば多少無理をしてでも購入する。例えば、スマートフォンだ。その利便性の高さは多くの人に「生活に必要なモノ」として認められ、決して安い買い物ではないが、瞬く間に普及した。

 ヨーロッパの企業に見られる洋服やハンドバッグなどのブランド品も同じだ。企業の生産能力に応じた数しか製造しないが、経営が成り立つには十分な利益を獲得している。顧客のニーズをしっかり把握し、必要とされるモノやサービスを、必要とされるタイミングで提供することで付加価値を高めているのである。

 消費者が必要とするモノやサービスを提供しさえすれば、マーケットの縮小で売上数がこれまでより少なくなったとしても、単価を高くすることによって利益をむしろアップさせることは可能なのだ。

 厚利少売で成功しているのが、イーロン・マスク氏が率いる米国の自動車会社テスラだ。他要因もあるので単純には比較できないが、1台あたりの純利益が他社を圧倒している。22年7~9月期決算を見ると、販売台数はトヨタ自動車の8分の1ほどで、純利益はほぼ同じである。

「なくてはならない存在」を目指す

 世界が必要とする分野で付加価値を向上させ、新興国の追随を許さない製品やサービスを生み出すことで、海外マーケットを取り込める。

 そもそも、人口減少が止まらない以上、日本はいずれ海外に活路を見出さなければならない。だが、新興国をライバルとしたままやみくもに打って出ても“負け戦”に終わるだけだ。それよりも、高付加価値化によって「なくてはならない存在」となった上で、勝負したほうが成功確率は高くなる。

 もちろん、安価で安定的な提供を求められる日用品メーカーなど高付加価値化にそぐわない業種もある。こうした業種は、経営の多角化を図ることだ。高付加価値化の製品やサービスを扱える部門を創設したり、企業合併をしたりすることで企業全体として採算がとれるようにするのである。

人を「資本」として投資できるか

 高付加価値化には、まず独創性が不可欠だ。だが、それを生み出す若い人材は、少子化の進行でどんどん減っていく。こうした状況を打開するには、従業員一人一人のスキルを底上げし続けるしかない。政府も旗を振りはじめたリスキリング(必要なスキルの獲得)などが重要となる。二つ目にすべきは、個々のスキルアップによって労働生産性を向上させることである。「稼ぐ力」を高めるのだ。

 資源に乏しい日本が、人口が減ってもなお経済成長を続けるためには、世界が必要とする分野において他国を圧倒するアイデアを生み出し、技術力で差別化を図っていくことに尽きる。それは人口が増えていた時代においても求められてきたことであり、人口が減る時代においてはなおさら傑出した分野を作ることが求められる。そうした意味においても人を「コスト」と捉えてはならない。「資本」として投資していくことが非常に大事だ。

商圏を維持せよ

 三つ目は、マーケットの掘り起こしである。

 高齢化率はどんどん上昇し65年には38.4%となる。高齢消費者が増え続けるのに対し、多くの業種ではシニア向けビジネスに本気で取り組めていない。高齢者の暮らしぶりが十分理解できておらず、高齢者マーケットのニーズに対してイメージを描けていないのである。

 例えば、ファッション業界を例に挙げると、若い世代向けにはセンスの良さや素材の新しさが付加価値となってきたが、高齢消費者が服を買うときの基準はこれらに加えて、脱ぎ着のしやすさや、洗濯のしやすさなどが加わる。

「着て行く場所」の提供も必要だ。「買っても着て行くところがない」となると購買そのものをしなくなってしまう。日本に圧倒的に不足しているのは“大人の社交場”である。高齢消費者のみならず、中高年にとっても「ハレの場」は少ない。

 このように、高齢者マーケットを掘り起こすには、付加価値を高めたり、新たな需要を創出したりする必要がある。その際に異業種と連携することで、思わぬ効果が生まれるかもしれない。

 四つ目は商圏規模の維持だ。縮小していく国内マーケットを分散させたのでは、一つ一つのマーケットの勢いが削がれていく。

 とりわけ、人口減少がすでに始まっている地方圏では重要なポイントとなる。今後は過疎エリアが広がっていくとみられるためだ。

やみくもな地方移住より「集住」

 国土交通省の資料によれば、00年から20年までは人口5万人未満の小規模自治体において人口減少が進んだ。しかしながら、40年までに著しく減るのは人口5万~10万人の自治体で、00年比22%減となる。10万~30万人といった地方の中心的都市も14%減となる。商圏人口が減れば多くの民間企業が撤退を始め、電気やガス、水道といった公共サービスは割高となる。

 民間企業が撤退すれば、地域の雇用は減る。こうなると都会への人口流出が激しくなり、それによってさらに民間企業が立地できなくなる悪循環を生む。

 政府や地方自治体は東京一極集中を是正すべく、デジタル田園都市国家構想総合戦略において27年度に地方と東京圏間の転出入者の均衡を図ることを打ち出した。年間1万人の地方移住を図る方針だが、だからといって人里離れた場所に思い思いに住む人が増えれば過疎地を拡大させる結果となる。

 地方移住自体を否定するつもりはないが、企業が立地しうるだけの人口規模を維持できなければ、そこに住む人の生活は不便となる。撤退を余儀なくされる民間企業の側に立って考えると、そこに消費者がいることが分かっていながら費用対効果が悪くて販売機会を逸するということにほかならない。国内マーケットがさらに縮むようなものである。

 地方圏で商圏規模の縮小スピードを緩めるためには、既存の市街地などに「集住」することが求められる。

 残念ながら、日本の衰退の背景となっている人口減少を止める方策は見当たらない。瀬戸際に追い詰められている以上、過去の成功体験を捨て去り、思い切った改革に取り組むしかないのである。現状維持バイアスにとらわれ続けるならば、日本に明日はない。

 河合氏は人口減少がもはや止められない、という前提、あるいは対策が打たれ始めても2,30年は人口減少が続くという前提、で企業経営のあり方を中心に述べていますが、確かに人口減少を止められた、あるいはこれから止めようとしている、フランスやハンガリーのような、大英断を日本政府は取れないだろうと思っているのでしょう。

 それは子ども手当の所得制限を設けるかなくすかというような、抹消の部分で国会がもめている様子からも、すぐさま対策が打たれることは無理だと思われる節があります。しかしそうは言ってもこのまま放置すれば、やがては大変なことになるでしょう。

 そこに河合氏の指摘する、人口減少社会の中で取り組む改革が必要になるでしょうが、これさえ出来るかどうかも分りません。なぜなら今の企業経営者や政治家が本当に20年先、30年先の人口減少社会を見すえて行動を取れるか、甚だ疑問だからです。

 こう言えばお先真っ暗ですが、一つの方法は国会改革です。今何かにつけて政府与党に反対しかしない特定野党の意見を一時的に全く無視して、政府と国会を切り離す制度改革法案を出し、強行でもなんと言われてもいいから通すことです。もともと3権分立ですから、国会は与野党の質疑中心とし、政府案を付託された与党が法案を提出し、どんどん決議していくのです。野党にも質問を浴びせ、その非を次々と突いていき、それを国民に見せることです。

 その中に少子化対策に関して、与党はハンガリーと同様な案を提出し、多数欠で通してしまえばいい。もちろん国債で。それくらいのことをしなければ、河合氏の言うように少子化は止まらないでしょう。

 少子化対策のみならず、他の日本の直面する重要課題対応の制度や法案も決めていき、その決まった制度や法案を政府が粛々と実行に移す。これ位しないと、国会の体たらくと日本の沈滞化は止まらないと考えますが、如何でしょうか。もっとも岸田首相にその胆力があるかどうか、かなり疑問はありますが。

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2023年1月11日 (水)

小池都知事が打ち上げた少子化対策「月5000円支給」の意義と効果、対して岸田首相の「異次元の少子化対策」の評価は?

16_20230110170101  岸田首相が年頭の記者会見で、「異次元の少子化対策に挑戦する」と語りましたが、具体的中身は未だ見えて来ていません。これから詰めるのでしょうが取りあえず掲げたのは、〈1〉児童手当を中心とした経済的支援の強化〈2〉学童保育や病児保育、産後ケアなどすべての子育て家庭への支援拡充〈3〉育児休業の強化を含めた働き方改革の推進――の3本柱です。だが、いずれも既存政策であり、専門家の間からは「異次元」とはほど遠いという意見も出てきています。

 ただ、昨年には新生児が80万人を切ろうとしている現在、アドバルーンを上げるだけでもまだいいのかも知れません。このまま不作為を続ければ、日本の将来は本当に暗澹たるものになるでしょうから。

 そうした中、東京都の小池知事が、子育て家庭に所得制限なしの「一人月5000円支給」の少子化対策を発表しました。これについてデイリー新潮が、次のようなコラムを公開していますので以下に引用します。タイトルは『“パラサイト・シングル”の名付け親が語る、「小池都知事」少子化対策の希望と絶望』(1/09公開)です。

 小池百合子・東京都知事がブチ上げた「月5000円支給」の少子化対策が大いに注目を集めている。「バラマキ」と批判の声がある一方で、都内の子育て世帯からは「歓迎」の声も聞こえてくる。果たして少子化に歯止めをかけることはできるのか? 専門家に聞くと、国や地方自治体が目を背けてきた「少子化」問題の真因が見えてくるのだった。

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 1月4日、小池都知事は年頭あいさつで「もはや一刻の猶予も許されない。“育ち”を切れ目なくサポートする給付を行う」と述べ、都内の0~18歳を対象に1人当たり月5000円程度の給付を行う考えを明らかにした。

 都内の0~18歳人口は約193万人(2022年1月時点)。所得制限は設けない方針のため、給付額は単純計算で年約1200億円にのぼることになる。都の22年度の一般会計当初予算(約7兆8000億円)の約1.5%に相当するが、小池氏は「行政改革で生じた財源を充てる」意向を表明している。

「小池知事は現在編成中の23年度予算案に関連費用を盛り込み、新年度からの給付開始を目指しています。5000円の根拠としては、家計に占める子供1人あたり教育費の全国平均(約7000円)と東京平均(約1万2000円)の差額から算出したと説明しています」(全国紙都庁詰め記者)

“バラマキ”批判に対し、小池都知事は「未来への投資」だと反論。実際、「少子化」が年々加速しているのは事実で、昨年の全国の年間出生数は1899年の統計開始以来、初めて80万人を割り込む見通しだ。また1人の女性が生涯に産む推計人数をあらわす合計特殊出生率は東京都で1.08(21年)と、全国平均の1.3(同)を大きく下回り、5年連続で低下した。

心配は“いま”より「将来の学費」

 岸田文雄首相の「異次元の少子化対策」という意味不明なスローガンに比べ、具体策を打ち出した点を評価する声は多いが、その実効性については賛否が割れている。

『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』や『パラサイト・シングルの時代』など多数の著作がある、家族社会学の第一人者で中央大学教授の山田昌弘氏は、小池氏の“挑戦”をこう評する。

「問題の解決に向けた“一歩前進の動き”と評価していますが、少子化対策はそもそも国全体で取り組むべき課題であり、東京都でできることには限界があります。それでも今回の給付が開始されると、2人目や3人目を産むのを迷っていた中間所得層の世帯などに対し、“産んでみようか”と背中を押す効果はあると考えます」

 一方で、

「少子化対策は、お金を配るだけでなく、子育てに費やす時間を確保できるよう労働時間の短縮や、特に男性の育休取得の環境整備などとセットで行うことでより効果が発揮されますが、これらは地方自治体の裁量を超えてしまう。また少子化が加速している背景には、“いま、お金が足りない”から子供を産めないというより、将来の子供にかかるお金のほうが心配だからと“産まない”ほうを選択する若者が増えている実態があります。つまり将来の学費の心配をなくしてあげたほうが、少子化対策としての効果は大きい。1980年代は年間40~50万円だった私立大学の授業料は現在90万円を超えるまでになっています。少子化対策で考えるべき第1の条件は高校以降、大学や専門学校までの高等教育にかかる費用を少なくすることですが、地方自治体だけで完結する話ではありません」(山田氏)

 重要なのは、今回の東京都の対策に続く形で、国や他の地方自治体が少子化対策に乗り出すことだという。

ハンガリーは「25兆円」支出で出生率上昇

 非正規雇用に就く男女が年々増え、正社員であってもかつてのように将来の賃金上昇は望めなくなるなど、若者を取り巻く経済状況が不透明さを増している点も少子化問題に大きな影を落としている。

「少子化の根本原因を考えた時、“若者の将来の経済不安”という要因は外せません。しかし、その不安を払拭するためには相当の財政支出が必要になる。ハンガリーのオルバン政権は少子化対策にGDPの5%弱を使って、出生率を上げたことで知られます。日本に当てはめると年約25兆円になる。結婚した若者に住宅を安く供給する、大学や専門学校の学費を無料にする、奨学金返済を半減させる……などの思い切った支出をしなければ、実際、子供は増えないと考えています」(山田氏)

 それが無理ならば、少子化を受け入れるしかないが、山田氏によれば、それは日本人の生活が「徐々に貧しくなることを受け入れることと同じ」だという。このままでは小池都知事の取り組みも“焼け石に水”となりかねない。国も巻き込んだ、さらなる対策の強化が求められている。

 このブログでも少子化問題は何度も取り上げていますが、少なくとも首相自ら会見で、少子化問題を取り上げたことの意味は大きいと思っています。問題は具体策とその実施時期、更には財源をどうするか、と言うことでしょう。

 記事の中に出てくる山田氏も言うように、今子供を持っている親への支援だけでなく、これから子供を産む対象の人への支援、更には結婚しない人が増えていますが、そういう人への対応など、相当な深みを持った政策検討が必要とされます。日本でもハンガリーのような思い切った策が打てるかどうかは分りませんが、いずれにしろ相当思い切った政策を打たねば、少子化の解消は困難だと思われます。

 子ども家庭庁の発足など、環境を整える必要もありますが、以上述べたような取り組みを大胆かつ早急にとり進める必要があります。小池都知事の政策はその呼び水になれば、一定の効果をもたらしたと評価できるかも知れません。

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2022年12月13日 (火)

韓国「世界最低の出生率」更新へ…! 日本よりもさらに深刻な「超少子化」の原因はどこにあるのか

Photo_20221212163101  前回は日本の少子化の問題を取り上げましたが、日本より少子化が進んでいる国があります。ご承知の通り韓国です。韓国人は何かというと日本と比べたくなる民族のようですが、この少子化においては文句なく日本を超えています。もっとも自慢にならないので比較はしていないようですが。

 この韓国の少子化の実態を韓国人ジャーナリストの金敬哲氏が、現代ビジネスに寄稿していますので引用します。タイトルは『韓国「世界最低の出生率」更新へ…! 日本よりもさらに深刻な「超少子化」の原因はどこにあるのか

(図は韓国の合計特殊出生率の推移)

国連加盟国中最下位の出生率

世界の人口が80億を突破した。国連人口局は、公衆保健と栄養、個人衛生と医学の発展による人間の寿命の増加と、一部の国で高く維持されている出産率のおかげだと説明した。国連によると、2021年ベースの世界平均出生率は2.4人で、このまま行くと、世界人口は2037年には90億人、2080年には100億人に増えるものと推測される。

一方、平均出生率が1.1人で、国連加盟198ヵ国のうち198位を記録している韓国は、すでに2020年から人口自然減少(死亡者数が出生者数を超える状況)段階に突入しており、世界で最も速い速度で人口が崩壊している国に指名されている。

ソウル市東大門区(トンデムンク)のある住宅街で幼稚園を運営する筆者の友人は、目下、不動産仲介士資格証の勉強に熱心だ。今年、彼女の幼稚園に入園したのはたった3人で、「新入生ゼロ」という悪夢が現実に近づいたためだという。

「近くにマンション団地がいくつもあるのに子供が少なすぎる。近くの小学校も新入生が40人もいかなかった。マンション価格が高騰し、家賃に耐えられない若者層が大挙引っ越したためだという話もあるが、根本は韓国の出生率が低すぎるところにある。うちの娘たちでさえ、一人が気楽だとか結婚したくないとかで、恋愛すらしてないみたい」

教育部が発表した「2022年教育基本統計」によると、2021の1年間、韓国全域から188個の幼稚園がなくなった。2020年にはソウルで2番目に人口の多い江西区に位置する小学校1校と中学校1校が廃校になり、現在までソウル市内の4校が廃校を予定しているという。

全国的には、小学校の約30%が統廃合基準に該当するという統計もある。韓国の小学校はおよそ6000校程度とみられているので、今後、数年内に1800校が閉校することになる。大学の場合はさらに深刻で、すでに「桜が咲く順に」廃校しているという声もよく聞こえてくる。

廃校が続いている原因は、言うまでもなく、長年にわたって少子化基調が続き、学齢人口が急速に減少しているためだ。

日本よりさらに深刻な少子化傾向

韓国統計庁によると、2021年の韓国の新生児数は26万500人で、韓国女性の合計出生率は国連の統計よりも低い数字の0.81人だった。さらに今年は、4-6月期が0.75人、7-9月期が0.79人と、2四半期連続で0.7人台に低下し、年間の出生率でも0.7人台を記録することが確実視されている。

同じく深刻な少子化に悩む日本でさえ、合計出生率がおよそ1.3人、2021年の新生児数が81万1千人であるから、韓国の事情は日本よりさらに深刻だ。

他にも人口千人当たりの婚姻件数を示す組婚率は日本が4.1件、韓国は3.8件。平均結婚年齢は日本が男性30.4歳、女性28.6歳であるのに対し、韓国は男性33.4歳、女性31.8歳だ。女性の平均出産年齢も日本が30.9歳、韓国は33.4歳など、すべての関連統計で日本より深刻な状況となっている。

世界で最も低い出生率の向上のために韓国政府は2006年から「少子化予算」を編成し、2021年までに420兆ウォンを超える国庫を投入したが、韓国の少子化は止まるどころか、年々急速に進行している。

日増しに深刻化する雇用不安による若年層の結婚延期、高い住宅価格と教育費による出産忌避、女性の社会進出による養育の負担などが原因と指摘される。

最近発表された韓国統計庁の「2022年社会調査」によると、韓国人の50%は「結婚しなくてもいい」と考えていて、特に結婚適齢期と言える20代30代の60%以上が「結婚しなくてもいい」という考えを持っているそうだ。

韓国の未婚男女が結婚していない主な理由としては、「結婚資金不足」(28.7%)「雇用状態不安」(14.6%)など、経済問題が43.4%だった。

韓国社会は2010年以後、年平均成長率が2〜3%を維持する低成長時代が持続されていて、良質な働き口がますます減る状況が続いている。

無限競争を勝ち抜くために

大企業中心の経済構造のため、雇用市場の90%を担う中小企業は、賃金が大企業の半分程度であり、経営安定性も低く若年層が好む仕事ではない。一握りしかない大企業に就職するために、韓国の若者たちは数多くのスペック(資格やスキル)で武装し、無限競争へと飛び込む。

各種の国家試験のための塾や学院が密集している鷺梁津で誕生した名物料理「カップ飯」(大きな紙コップにご飯やおかずなどを盛り込んだ食べ物)は、就職競争で食事の時間まで節約しようとする若者たちのために作られた発明品だ。

就職競争のために1分1秒を節約しなければならない若者たちの人生計画書には、結婚や恋愛という文字はない。数年間の就活の末に就職に成功し、やっと結婚に至る年齢は、平均で31〜33歳程度になる。

しかし、いざ結婚をしても、出産に至るまでにはまだ関門が残っている。暴騰する住宅価格のため、マイホーム購入は望み薄で、教育費の心配から子供の数は最小限に計画する。

教育熱の高い韓国の大学進学率は70%前半で、50%台の日本や40%台の米国よりはるかに高い。「良い大学を出てこそ良い働き口を得て成功した人生を生きることができる」という信念が強い韓国の親たちは、子供たちの教育に惜しみなく投資する。

韓国統計庁によれば、2021年、「私教育機関」に分類される入試塾、語学塾などに韓国の両親が支出した費用は23兆4千億ウォンと集計された。これを学生1人当たりに換算すると、月平均35万7千ウォン、私教育を受けたことのある学生だけを別に集計してみると、月平均48万5千ウォンにのぼる。

「超」少子化現象の真の原因

ただ、筆者の体感としては、現実は統計よりもはるかに深刻だ。

筆者の周りには私教育費問題で喧嘩が続き、離婚してしまったカップルもいれば、娘の教育のために夫を家に残したまま名門塾が密集する大峙洞に引っ越した母親もいる。2人の娘に高校3年生の1年間、月200万ウォン以上の塾費を投資しながら、2人ともソウルにある大学に入れることができなかった友人もいる。

筆者の弟は毎週土曜日、家から1時間以上も離れた大峙洞塾街で行われる「特講」のために、小学校5年生と中学校1年生の息子を連れて朝早く家を出る。車のトランクには塾を行き来する間、子供たちが使えるように、枕と毛布、そして小さなテーブルなどが備えられている。

大峙洞の塾費は1時間当たり10万ウォンで、月に40万ウォン。さらに平日は家の近くの塾に通わせるため、月に塾費だけで1人当たり70〜80万ウォンがかかるという。

韓国の「超」少子化現象は経済問題に起因する面が大きいが、その裏には、韓国社会の「無限競争システム」があるとも言えるだろう。

幼い頃から親に手を引かれて競争の渦に巻き込まれ、淘汰されないために必死にもがくしかない韓国の若者たちが、結婚や出産という未来に夢を持つことができるだろうか。

深刻な格差を誘発させ、階層間の移動を妨げているこの特異な社会構造の根本的改善がなければ、韓国の未来は、日本とは比べ物にならないほど暗鬱なものになるかもしれない。

 日本のBS放送やNetflix上に氾濫する韓国ドラマや、K-Popの華やかさからは、想像できない韓国の少子化の元となる就職事情や、教育事情があります。先日の日本の少子化の実態を超える悲惨さが、そこに見られます。

 もちろん日本の現状も暗澹たる状況にあるのは間違いありません。早急に手を打たねばならないのは事実ですが、韓国のそれは重病にさしかかっている日本に比べれば、すでに危篤と言えるのではないでしょうか。

 日本より15年遅く人口減少社会に入ったことから、韓国人にはその深刻さは伝わってこないのかも知れませんが、瞬く間に少子化の嵐が吹き荒れることでしょう。日本が死ぬ前に韓国が死ぬ方が早いのは間違いないでしょう。

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2022年12月12日 (月)

政府や国会の不作為がもたらす大きなリスク、少子化進行で日本は15年後には「死ぬ」

Images_20221211162501  日本の人口は2005年にはじめて前年より2万人減少しました。その後2006、2007年とわずかに増加した後、2008年から本格的に減少が始まりました。2021年には前年より60万人以上が減少、1年で一つの中核都市が消えていく感じとなっています。

 このブログでは何度もこの問題に警鐘を鳴らしてきました。先日ツイッター社を買収したイーロン・マスク氏が、このままでは日本は消滅するというような発言をしていましたが、決して妄言ではありません。様々な問題が目の前にぶら下がっているのが現状でしょう。

 多くの識者がこの問題を論じていますが、今回は麗澤大学の八木秀次教授が月刊正論に寄稿した記事を取り上げます。タイトルは『少子化進行で、日本は15年後には「死ぬ」』で、以下に引用します。

「保育園落ちた日本死ね!!!」というネット上の投稿のフレーズが新語・流行語大賞のトップテン入りしたのは2016年(平成28年)のことだ。 子供の数に対して保育園の入園枠が少なく、この投稿者の子供も保育園を落ちて待機児童になった。 それに怒った母親の投稿だった。

この年の出生数は97万6978人で、1899年(明治32)の統計開始以来初め百万人を割ったことが衝撃をもって伝えられた。翌年9月、安倍晋三首相(当時)は、北朝鮮の核兵器の脅威とともに「国難」とし、それを打破するために衆院を解散した。「国難突破解散」だ。

今年1月から6月までの上期の出生数が38万4942人で、昨年同期比で5%減となることが厚生労働省の人口動態統計(速報値)で分かった。 今年通年の出生数は昨年の81万1604人を下回ることは確実で、第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストの推計では76万2千人と見込まれている(日本経済新聞9月9日付)。「国難」からわずか6年間で実に20万人以上減ったことになる。

戦後最大の出生数は1949年(昭和24)の269万6638人だが、その3割弱しか生まれない。このまま毎年5万人ずつ減っていけば、15年後には待機児童どころか、生まれる子供の数がゼロになる。

少子化の原因ははっきりしている。日本では結婚して子供を産むケースが圧倒的多数で婚外子は2%程度だ。子供を産む前提の結婚が減っているのだ。結婚の件数は1970年代前半には百万件超だったが、2009年には70万件強となった。2018年には60万件を割り、昨年は50万件少しで戦後最少を更新した。満50歳時の未婚割合を示す「生涯未婚率」も統計を取り始めた1980年には男性2.60%、女性4.45%だったが、2020年には男性28.25%、女性17.81%となっている。未婚は「普通」となった。

中央大学教授の山田昌弘氏は若者が結婚しない理由を、20歳から35歳の未婚者の7割以上が親と同居しており(「パラサイトシングル」)、彼らは結婚すると生活水準が下がり、親も子供がそうなることを望んでいないことにあると分析している(「欧米モデルの少子化対策から脱却せよ」「Voice」2020年12月号)。

お茶の水女子大学教授の永瀬伸子氏は若年層の次世代育成への意欲が下がり、若い女性が子育ては大変でリスクがあり、子供を持たなくてもいいと思うようになっているとし、パートナーと暮らす良さや、次世代育成の喜びや責任を教える必要性を強調

している。同時に高齢者への社会保障給付に比べて出産育児に対する社会保障が手薄、女性が子育てしながらも一定以上の収入のある労働人生を送れる賃金モデルをつくる、非正規雇用者にも育児休業給付するなど税制・社会保障・雇用慣行の抜本的改革を求めている(昨年一二月の内閣府男女共同参画局の研究会での配布資料)。

背景には、共同体を解体し、そこから「個人」として解放されることを良き価値としてきた近代社会の理念が家族形成の領域にも及んでしまったことがある。過去からの命が繋がって現在の我々があり、その命を後世にも伝えていこうとの無意識の意欲が低下している。価値観の転換も必要だ。

東欧ハンガリーが対GDP(国内総生産)比4.7%の予算を投入して少子化対策に本気で取り組んでいる。0.8%の日本の約6倍だ。4人以上産めば定年まで所得税ゼロ、3年間の有給育児休暇、結婚すると無利子ローンが受けられ、3人生まれると全額返済不要、住宅ローンの大幅減額、高学歴の女性の出産を促すべく大卒女性の出産には学生ローンの返済が減免、体外受精の保険適用で無償化、国営の不妊治療機関の設置など「子供を産めば産むほど家庭の生活が楽になる」制度を導入した。その結果、出生数も結婚件数も増え始めた。移民に頼らずに人口を増やすことが可

能になりつつある (近藤大介 「人口増加に執念、ハンガリーの「すごい」 少子化対

策」 JBプレス2021年1月4日)。

最早猶予はない。直ちに膨大な予算を投入して対策を打たなければ、日本は死ぬ。

 現実には15年後に出生数がゼロになることはないでしょうが、このまま放置すればかなり少なくなってしまうのは間違いないでしょう。そうなっても直ちに日本が死ぬこともないとは思いますが、今より経済は衰退し、高齢者や子供の福祉には赤ランプが点灯していることになります。

 我々のような、あと15年持つかどうかという高齢者にはそれほどでなくとも、後に続く人たち、ましてやずっと若い人や子供たちには大変な危機が迫ってきてしまいます。今こそハンガリーのような少子化を食い止める努力を、国を挙げて推進する必要があります。

 そのためには、相変わらずの政争に明け暮れる国会を何とかしなくてはなりません。少子化対策特命大臣がいるにはいますが、果たして機能しているのでしょうか。内閣の特命でハンガリーでの成功例を研究するとか、大学に少子化対策科を設け、妙案を提案させるのも一つのアイデアでしょう。待ったなしの対応が求められます。

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2022年8月15日 (月)

根底から揺らぎ始めた中国、共産主義体制の限界

Images-5_20220815105401  米下院議長ペロシ氏の台湾訪問が起爆剤となった形で、台湾包囲網を敷いて軍事威嚇演習を始めた中国。予定期日を過ぎても威嚇は続いています。習近平政権になってから中国はこのように、現状変更の試みを隠そうとしません。台湾問題は日本にも直接の影響が予想され、今後の動きが気になります。

 ただこのような力を背景とした覇権行動を続ける中国ですが、内情は多くの課題を抱えています。特に少子化問題は日本同様、中国の国力をそぐ最大の課題となっているようです。

  そのあたりの詳細を、経済専門家の川島博之氏が、JBpressに寄稿した記事から引用します。タイトルは『中国が米国を超える大国にはなれない理由、根底から揺らぎ始めた中国社会 変革の動きが一切封じられる共産主義体制の限界』です。

 中国の人口は本年(2022年)にも減少に転じるとされるが、その詳細についての考察は少ない。ここでは7月に国連人口局が発表したデータを基に、中国社会に重大な変化が起きていることを示したい。

 図1に出生数と死亡者数の変遷を示す。これを見れば中国の人口が本年にも減少に転じることが分かろう。

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図1 中国の出生数と死亡数(単位:万人) データ:国連人口局

 中国の出生数には2つの大きな山があるが、1つ目の山の前の急激な減少は1958年に始まった大躍進政策が作り出したものである。大躍進政策とは経済原理を無視した過激な工業化政策と言ってよい。それによって農業がないがしろにされて食糧生産が急速に落ち込み、全国的に飢えが広がった。1960年前後の死亡者数の増加と出生数の減少は大躍進政策がいかに無謀な政策であったかを示している。毛沢東はその責任を問われて国家主席の座を劉少奇に譲り、政務の一線から退かざるを得なかった。その後、再び主導権を取り戻すために文化大革命を行ったことはよく知られている。

 大躍進に伴う飢餓はその後にベビーブームを作り出した。中国の出生数は、1963年から1970年まで7年間にわたって、毎年3000万人を超えている。中国版団塊の世代の誕生である。団塊の世代が20代になった1980年代後半に団塊ジュニアが誕生している。

 その中国の団塊の世代は2023年以降に次々に60歳を迎えて定年退職する。中国の労働人口はこれから数年間の間に急速に減少する。

出生数が急速に減少

 ただ、ここで注目したいのは人口の高齢化ではない。出生数の急激な減少である。

 中国では2018年以降に出生数が急減しており、それは大躍進政策の失敗に伴う減少にも匹敵する。出生数の減少は1970年代や90年代にも生じたが、それらはベビーブームの終焉によるものであり、平常状態への回帰と言ってよい。

 図2に2000年以降のTFR(合計特殊出生率)の変遷を示す。比較のために主要国のTFRも示すが、中国の2021年TFRは1.16とわが国の1.30よりも低くなっている。

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図2 各国の合計特殊出生率

 なぜ中国においてこれほどまで急速に出生数が減少したのであろうか。それを考える前にデータの信頼性に言及する必要がある。国連のデータは国連が独自に推計するものではない。国連は各国が報告するデータを集計しているに過ぎない。ただ国連には人口問題の専門家がいるために、あからさまに出鱈目なデータを報告することは難しい。北朝鮮は食糧生産について、鉄面皮にも出鱈目なデータを報告することがあるが、それは例外と言ってよい。

 このところ一部では中国が公表する人口は過大ではないかと疑われている。教育や福祉に関する予算が子供の人数に応じて分配されるために、地方政府は多めの数字を中央に報告する傾向にあり、それをそのまま集計すると実際より人口が多くなってしまうという疑惑である。ここでその真偽を論じることは難しいが、そんな中国においても、出生数が急速に減少していることを報告せざるを得ない状況にあるようだ。

中国の奇跡の成長を支えたもの

 この出生数の急速な減少は、中国で大躍進政策の失敗に匹敵するほどの大きな変化が進行していることを示している。

 1978年に改革開放路線に舵を切った後に中国は奇跡の成長を遂げた。奇跡の成長を達成する上で、地方政府が農地の収容に伴う利益を独占して、その利益を道路や橋の建設に投資することは重要な役割を果たした。道路や橋が作られて都市が拡大すると、農地の収容によって得られる利益も増加した。中国の奇跡の成長は地方政府による農地収容を媒介にした過剰投資を原動力にしたものだった。

 それは不動産価格の高騰を招き、人々は不動産バブルを利用して富を蓄積しようとした。最初そのような行為は富裕層だけに留まっていたが、習近平が政権の座についた2012年頃から、一般庶民にまで広がっていった。その不動産バブルは昨年から崩壊に転じ、出口が見えない混乱が始まった。

 中国の奇跡の成長のもう1つの原動力は、農村の若者を農民工として利用したことにある。安価な労働力は中国の輸出産業を支えた。だが、現在、それも最終段階に来ている。中国の今年の大学卒業者数は1000万人とされる。今年大学を卒業する者は2000年前後に生まれたと思われるが、その頃の出生数は約1700万人である。大学進学率は6割近くになり、日本を上回っている。

 このことは、農村部でも多くの若者が大学に進学する社会が出現したことを示している。あの貧しかった中国の農村でも多くの若者が大学に進学するようになった。それに要した時間は40年ほどである。これは奇跡と言ってよい。だが、成功した結果として、安価な労働力が消え失せてしまった。

将来への漠然とした不安

 不動産価格が高くなりすぎて、若者がマンションを買うことができなくなったことは、出生数減少の第1の理由とされている。中国では結婚に際して男性が住居を用意しなければならないとする慣習がある。しかしマンションが高くなり過ぎて、男性はマンションを用意することができない。その結果として婚姻数が減少した。

 また第2の理由として、教育に多額の費用がかかることがある。1人の子供を大学に行かせるだけでも大変である。これも少子化の原因とされる。

 ただ、それらは表面的な理由であろう。真の原因は多くの人が心の底で中国の奇跡の成長は終わったと思うようになり、その結果として現状に不満を抱くとともに、将来に漠然とした不安を持つようになったためと考える。昨今よく話題になる「寝そべり族」なる言葉は、多くの人が現体制に不満を持ち、行き詰まりを感じていることを端的に示している。

 農村の多くの若者が都市に出て大学教育を受けるようになったが、時を同じくして不動産バブルが崩壊したことによって失業率が上昇し始めた。そんな状況では、今後、婚姻数はますます減少しよう。当然の結果として出生数も減る。

 国連は人口予測において低位、中位、高位の3つのシナリオを用意しているが、このような状況に鑑みるに、今後、中国の人口は低位推計で推移する可能性が高い。低位推計では2030年の出生数は686万人にまで減少する。

建国100周年、2049年の人口ピラミッド

 この秋の党大会で習近平は3期目に突入するとされる。それは中国共産党が現状維持を選択したことを意味する。これまでの成功があまりにも素晴らしかったために、共産党のエリート層は現体制に変わるシステムを考えることができない。そして彼らは現体制における利益の享受者でもある。自分たちでこれまでのシステムを変更することはできない。

 ここに共産主義の最大の欠点がある。民主主義と市場主義を組み合わせた社会では、紆余曲折はあるもの、それまでの体制がうまく動かなくなったときには、体制を変革しようとする動きが生じる。しかし共産主義ではそのような動きは一切封じられる。

 出生数の急速な減少は、中国が米国を抜いて世界最大の強国になるのは不可能であることを示している。

 図3に中国の人口が低位推計で推移した時の2049年の人口ピラミッドを示す。2049年は建国100周年にあたり、中国共産党が密かにその年までに米国を抜き去り世界最大の強国になることを目指しているという年である。だが、その時の人口ピラミッドはかくも不安定なものになる。それは老大国の人口ピラミッドであり、世界をリードする国のものではない。

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図3 2049年における中国の人口ピラミッド(単位:万人) データ:国連人口局

 ここに述べたことは日本企業に対する警鐘になっている。図3のような人口ピラミッドを有する国では、老人介護ビジネスは発展の余地があろうが、若者が消費する自動車やスマホは売れない。

 日本には中国はいまだに有力な市場だと主張する人々がいるが、急減する出生数はそれが間違った予測であることを示している。

 人口の急増を懸念して一人っ子政策を維持してきた中国。しかし人口減少のリスクが目の当りになり、急遽2人また3人と政策を転換してきましたが、この記事にあるように、今や政権の意図とは裏腹に、経済環境が複数の子供を持つ事への障害になると同時に、結婚さえできない若者の増大を招いています。

 日本も同じ状況ですが、中国の最大の欠陥は高齢者福祉の立ち後れでしょう。日本と同様の福祉政策を採ろうとすれば、膨大な経費が必要となり、これも国力の衰退につながります。日本を超える打撃が中国経済を襲うでしょう。

 これらが3期目に入ろうとする習政権に立ちはだかる、最も大きな課題だと言えます。あと5年は踏みとどまることができるかも知れませんが、それ以降の衰退ははっきりとしたものになるでしょう。期待して見守りたいものです。

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2021年7月13日 (火)

日本より深刻な超高齢化の中国 要介護者4000万人の実情

Photo_20210713101801  日本では少子高齢化が進み、すでに2015年から人口減少が始まっています。世界でも例をみないスピードで人口減少と高齢化が進んでいて、その影響が顕著である地方では、さらに過疎化が進むことが考えられます。

 人口の減少が進行することにより、住宅の需要は下がり、空き家の増加にもさらに影響を与えるでしょう。また、国内総生産(GDP)の減少や、総労働力の減少に伴う日本経済の衰退、さらには年金問題など、多くの問題を誘発する事は間違いありません。

 しかしこの少子高齢化は日本だけの問題ではなく、韓国、中国なども同じ問題を抱えています。しかもこの両国はいったん減少が始まれば、日本以上にその減少スピードは大きいものと予想されます。中国のこの問題について、週刊ポストに記載された記事をzakzakが引用していますので以下に記載します。タイトルは『超高齢化の中国 行方不明の高齢者50万人超、要介護者4000万人の実情』(7/10)です。

 7月1日に創立100周年を迎えた中国共産党。習近平指導部が2050年までの「超大国化」を掲げる一方で、前例のない超高齢社会に突入しようとしている。中国国家統計局によると、2020年の中国の総人口は14億1178万人。出生率は過去最低となったが、65歳以上人口は約1.9億人に増え「少子高齢化」が顕著になった。

 2022年にも人口減少に転じる可能性が指摘され、政府系シンクタンクの試算では2050年に60歳以上が5億人に迫ると予想される。

 そこで大きな社会問題になると懸念されるのが「認知症患者」の急増だ。

 中国国家情報センターの推計では、3人に1人が65歳以上となる2050年、中国のアルツハイマー患者は1000万人に上る見込みだ。中国民政部傘下の研究機関が2016年に出した報告書によると、すでに年間50万人以上の高齢者が行方不明になっており、そのうち約25%がアルツハイマー病や認知症の診断を受けているとされる。

 こうした状況は高齢社会の“先輩”である日本とも重なるが、中国で深刻なのはケア体制が手薄であることだ。

 現在でも要介護の高齢者は4000万人いるとされるが、家族介護を基本とする価値観が根強いためか、ヘルパーは30万人にとどまる。人口が10分の1以下の日本で、介護職員が約200万人いることを考えれば、介護の担い手不足は深刻だ。1人っ子政策の影響で「4人の親を夫婦で支える」という過酷な状況が続く。

 貧困世帯が多い農村部ではすでに、“姥捨山”のような事態も起きている。

 昨年5月、陝西省で58歳の息子が79歳の母親を生き埋めにする殺人未遂事件が発生した。通報により母親は一命を取り留めたものの、警察の調べに「自分で穴に入った。息子は悪くない」と証言し、大きな反響を呼んだ。

 ◇

 習近平指導部は、精神的には愛国だの忠誠だのと、国家、と言うより共産党に傅(かしず)くように国民を誘導し、経済発展と軍事力の増強に突き進んでいますが、国民への福祉政策には、関心が薄いのか後回しのようです。

 そこから見えてくるのは記事にもあるように、高齢者のケア不足とそれに伴う疾病や認知症の急拡大です。日本でも認知症は癌や心臓病と同様の大きな問題となっていますが、なにしろ中国は人が多い。1000万人もの認知症患者が町や村を徘徊すれば、さすがに想像もつかない事態になるでしょう。

 介護の仕事は機械化が難しく、従っていくらAI技術が進んでも対応するのはやはり人です。そうした要員を大量にケアに回さなければならなくなったときに、中国の崩壊が始まるかもしれません。もっとも日本はそれを対岸の火事と傍観していてはならないとは思いますが。

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