災害、政治

2022年8月23日 (火)

韓国を襲った未曾有の洪水被害で浮かび上がった、経済の危ない現実

10_20220823100501  今回は久々に韓国の話題です。8月の初旬韓国では未曾有の豪雨に見舞われました。日本でも近年豪雨被害は毎年のように発生していますが、韓国の豪雨は日本ほど騒がれていませんでした。そうした中での今回の豪雨、かなりの被害を出したようです。

 韓国系企業に勤務の経験を持つフリーライターの田中美蘭氏が、現代ビジネスに寄稿した記事から引用します。2記事続けての寄稿で、タイトルの一つは『「日本に勝った」韓国で、国民から“不満が大噴出”…!悲劇の「豪雨災害」で浮かび上がった「深刻な問題」』、もう一つは『韓国が騒然、豪雨で「半地下住宅の悲劇」…!あの「映画『パラサイト』の光景が現実になった」という、韓国経済の“危ない現実”』です。以下に引用して掲載します。

韓国「豪雨」の悲劇

熱波や洪水、干ばつなど世界で異常気象が続く中、ここ韓国でも先日、観測史上最高となる雨量を短時間で記録し、首都ソウルを中心に甚大な被害が出た。

大量の雨は都市の姿を一瞬にして変え、自然の前に都市機能がいとも簡単にダメージを受ける様子をまざまざと見せつけられた。

各地で未知なる自然災害が頻発する近年、いかに被害を食い止め、事前の予報や告知を行っていくかという課題は年々大きくなっている。

もともと、今年の韓国は雨量が平年と比べて少なく水不足の懸念もされていた。

現在、韓国国内をツアー中のPSY(サイ)のライブでは「びっしょりショー」というタイトルの通り、大量の水を客席に向けて放水する演出が話題を呼んでいる反面、「水不足の時期に水の無駄使いをするとは何事だ」という批判も出ていたほどだ。

このように、当初は水不足から農作物への影響も心配されていた矢先、8月8日の夕方、ソウル及び、首都圏である京畿道(キョンギド)を中心に降り始めた雨は急速に雨足が強まり、降水量が1時間に100mmを超える地点が続出した。

また、帰宅ラッシュと豪雨が重なったことも被害を大きくした。

豪雨が浮かび上がらせる「深刻な格差問題」

一等地で人気エリアの江南では、多くの車が腰の高さほどまでの大量の雨水が流れ込往生をした。

また、雨水は地下鉄の駅構内や建物の地下にも雨水が押し寄せ被害を及ぼす結果となった。

江南が洪水に見舞われている光景に衝撃を受けた人も多かったが、もとは江南をはじめとするソウルの南部は海抜も低く水はけの悪い地域であったことから、今回の豪雨での被害は起こるべくして起こったとも言え、2019年に関東地方を襲った台風19号でやはり人気エリアの武蔵小杉が水害の被害にあったことを思い出させた。

もともと韓国経済をめぐっては格差拡大に国民の不安が高まっていた中、今回の豪雨災害では半地下住宅の住民の被害が報じられるなど、災害がさらに格差問題をクローズアップさせている側面は見逃せない。

人命や物損被害の爪痕は大きい上、ソウル近郊の農地でも被害が出たことで農作物の不作や高騰が予想される中、来月に控えた旧盆の秋夕(チュソク)さらには冬のキムチジャン(キムチ漬け)などにも影響を及ぼすことから、さっそく国民の不満がさらに噴出している。

一人当たりGDPで日本を追い越すとして「日本に勝った」「日本を超えた」との声も出ていた矢先、災害への弱さに加えて、ここへきて韓国経済が抱える深刻な問題が浮上してきた形といえるだろう。

ある家族3人の「悲劇」

8月11日現在、今回の豪雨による被害は死者12名、行方不明者7人、被害家屋3,796棟、避難者は約6,000人と発表されている。

増水によって川辺の公園や遊歩道が水没した漢江や支流の川では水が引き始めているものの、以前として流れが速い上に木々や該当、看板がなぎ倒されてその勢いの激しさを物語っている。

また、道路の通行止め区間には、水没の被害を受けた車がいまだに放置されているほか、地下鉄も一部区間での運休や、エレベーターやエスカレーターが使用できず高齢者や障がい者の駅の利用に困難をきたすなどまだまだ被害が続いている。

そして、今回の豪雨で「悲劇」として伝えられているのが、ソウル市内の半地下住宅に住んでいて家族3人が犠牲となったことである。

映画「パラサイト」の光景が現実になった、と…

死亡した40代の女性2人は姉妹で、姉には障害があり、妹には10代の娘がいた。

また、姉妹の70代の母親もこの半地下住宅で暮らしたものの、最近は体調を崩し入院中であったために今回の難を逃れたという。

自宅にいた3人が外に出ようとした時には既に玄関の扉は水圧で開かず、また、窓からの脱出も狭い上に防犯のために取り付けられている格子によって阻まれたことが命を落とす結果となり、壮絶な状況を想像しただけで胸が締め付けられる。

半地下住宅はボン・ジュノ監督、ソン・ガンホ主演でアカデミー賞も獲得した『パラサイト・半地下の家族』で一躍注目を集め、世界に知られることとなった。

映画でも、一家の半地下住宅が大雨に見舞われ、水浸しになるシーンがある。命からがら家から脱出した家族が近所の待避所(避難所)で一夜を明かすシーンが描かれている。

映画の影響もあり、半地下住宅は「格差社会の象徴」のように語られるが、もとは朝鮮戦争時の倉庫や防空壕の役割を果たしていたこと、さらに、1980年代の韓国の経済成長で都市部での住宅需要に対応するために半地下の部屋を備えた建物が多く建設され「家賃が安い」といった理由などから当時は人気を集めていた。

しかし、老朽化や再開発による取り壊しで半地下住宅は減少を続け、現在では低所得者が居住する場所というイメージが定着していた。

今回の被害を受けて政府は今後、地下、半地下を住居目的として建築することは法律で禁じることを発表した。

自然災害への「耐性」

日本と比較して韓国はもともと地震もないとされ、雨や台風といった自然災害は多くないというイメージであった。

実際には雨量については、東京の年間降水量が1,528mmであるのに対し、ソウルは1,233mmである。このため、韓国の人々の間では「自然災害は少ない」と危機意識が薄いという印象を感じていた。

自然災害に限らず停電や断水など日常生活における緊急時の備えの大切さを日本の感覚で伝えても「大げさな」という反応で返され、笑われることも多かった。

しかし、2016年9月に南東部の慶州(キョンジュ)、2017年11月にやはり南東部の浦項(ポハン)でそれぞれM5.8とM5.4のこれまでで韓国内で観測された最大規模の地震が起きた。

地震の揺れは第2の都市・釜山でも感知され、地震の揺れに慣れていない人々は半ばパニック状態となった。

「半地下家族の悲劇」を繰りかえさないために

釜山在住の日本人に当時のことを聞くと、居住する高層アパートでも揺れを感じたものの、日本での地震と比較すれば大したことはなく慌てることはなかったものの、周囲は地震に対する恐怖心を隠しきれない様子であったという。

またアパートの緊急放送で「この建築物は耐震設計をしているので落ち着いてください」というアナウンスが流れたものの、「日本のような大地震を経験したことがない韓国でいくら『耐震設計がしてある』と言われても説得力に欠ける」という意見を聞いてなるほどと思った。

この時の地震を期に韓国内では学校や公共施設を自然災害時の退避場所として指定し、表示などを義務化するようになった。

また、各自治体による携帯電話への注意喚起も行われるようにはなっている。

しかし、今回の豪雨では注意喚起だけでは不十分であることが浮き彫りとなり、前項の半地下住宅の家族の悲劇も日本のようなメディアや自治体を通じた避難勧告があれば防げたかも知れず、悔やまれる。

新たに浮上した「課題」

今回の豪雨は新たに災害への退避勧告の基準を整えて行くことや、災害に対応した住居や都市部の治水対策などが課題になったといえる。

世界各地で例を見ない異常気象やそれによる災害が起こっていることを鑑みれば「韓国は大丈夫」という正常性バイアスはもはや通用しない。

時間をかけてでも意識を変えて自然災害に備えていくしかないだろう。

 災害列島日本では、地震や台風での災害の対応が、おそらく世界でもトップクラスのレベルに達していると思われますが、これは毎年のように発生する大地震や風水害の経験に基づく、対策に対する知恵のなす業でしょう。

 しかし韓国に限らず、もともと災害の少ない国にとっては、近年の地球温暖化によると思われる異常気象による天候異変は、未曾有の経験となり、対応に苦慮しているに違いありません。

 そこで今後日本はこの災害対策施策やグッズが、競争力のある商品となり、復旧支援もかねての大きな戦略商品の一つになるものと思われます。自然災害ではありませんが、将来ウクライナへの復興支援も必要となるでしょうから、重機販売や建設業への仕事も増えることが予想されます。

 ところで韓国の所謂「格差問題」や少子化問題、また前文政権の残した不動産価格高騰問題など、韓国を取り巻く経済的な下押さえ要因は多く、中国同様もはや経済的ピークを過ぎたのかも知れません。何度も取り上げていますが、円安を契機に中韓に進出している企業の国内回帰が急がれるように思いますね。

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2020年7月20日 (月)

中国三峡ダムの水位ますます上昇、洪水被害額もうなぎのぼり

Img_8b3ddb7cbae12cd10492bdf722b241c57737 新型コロナウイルスの発生源の中国、それも湖北省一帯を中心に大規模な豪雨被害が発生しています。このブログでも3回目になりますが、その被害の大きさはかつて経験したことのないレベルに達しているようです。

 第1回の記事では、水位は6月20日の段階で147メートルに接近していた、と述べていましたが、今月20日の時点ではそれが164.4メートル、平時の145メートルをほぼ20メートル上回っています。損害金額も前回の記事で、7月3日時点で416億元(約6400億円)だったのが、今では861.6億元(約1.3兆円)にも上っていると試算されています。

 その詳細をFNNプライムオンラインでFNN上海支局の城戸隆宏氏が伝えます。タイトルは『三峡ダム水位上昇、中国第三の大河も危機に~被害1.3兆円洪水が中国に与える大打撃』(7/20)で以下に引用掲載します。

街が濁流に呑まれ車が船のように漂う街も

中国の長江流域を中心に続く豪雨による洪水は収まる気配がなく、深刻な被害が出ている。危機感は地方だけでなく主要都市でも強まっている。

湖北省恩施市では7月17日、オフィスや店が並ぶ中心部などの広範囲が濁流に呑まれた。

「車が船のように水面を漂っている・・」

SNSに投稿された映像は、街の大通りが泥水に浸かり、サイレンが鳴り響き、多数の車が水に浮かんでいる様子を捉えている。別の撮影者は車で移動中に洪水に巻き込まれたのか、かろうじて屋根だけが水面に出ている車の上で途方に暮れ「車が流れ始めている」と恐怖を生々しく伝えた。

大通りに停まっていたとみられる複数のバスが水没し、屋根だけが見えている画像もある。水は一気に流れ込んだとみられ、逃げ遅れた人も少なくないと想像するが、死傷者などの詳しい被害状況は伝えられていない。

湖北省武漢市をはじめとする主要都市にも危機が迫る。中部の大都市・重慶市では市内を流れる長江の水位が警戒水位に近づいていて、ネット上では市民が「この数日水位上昇が凄く早い。溢れそうだ」と大河の様子を伝える。中国メディアは、市内の万州区で濁流が街を襲い、商店などに流れ込む様子や築100年の古い橋が崩壊寸前となっている様子を報じる。

江蘇省南京市では18日、長江の水位が1954年の記録を超えて過去最高となり、最高レベルの警戒態勢をとった。川沿いの公園など冠水エリアが拡大し、危険が迫る地区の住民が避難を始めている。

Img_24438c11750292aa266f23edd57d56a61476 三峡ダムは水位上昇続き、中国第三の大河でも洪水危機

すでに危険な状態にある各地の状況が改善する兆しは見られない。中国最大級の三峡ダムも、流れ込む水の量は増える一方だ。中国メディアによるとダムの水位は、17日14時に157.11mで限界水位をすでに12m超え、翌18日14時が161.05m、20日2時が164.44mと上昇を続けている。ダムの最高水位は175mだとされ、「あと10数mだ・・」と恐れる声がある。

19日2時時点で流れ込む水量は毎秒6万1000立方メートルに対し、排出する量は3万6200立方メートル。ダムの水位が上昇を続けているが、放出するとただでさえ水位が上がり冠水している地域もある下流域に影響がある。

専門家は、メディアの取材に対し「増水しているがまだダムの容量には余裕があるから安全に全く影響はない」と不安の払拭に務めているが、ネット上には心配の声も後を絶たない。

洪水の危機は長江だけではない。北側を流れる中国第三の大河・淮河でも17日、水位が警戒レベルに達し、政府は今年第1号の洪水が発生したと発表。専門家は「大雨は数日間続く見込みで、流域の中小河川が大洪水に見舞われる可能性がある」と警告した。

経済損失1.3兆円~対応誤れば中国政府に大打撃も

「私の店が一瞬で全てなくなってしまった。損失は2000万元(約3億円)よ・・・」

「商品があった5つの倉庫が全て流れてしまった。本当にどうしたら良いか分からない・・」

濁流に呑まれた安徽省のある街で何人もの女性店主が泣き崩れる様子が報じられている。

中国政府は今回の水害の経済損失は 861.6億元(約1.3兆円)と試算している。中国政府にとっては新型コロナウイルスによる大打撃からの復興を目指す中での新たな打撃だ。物流など経済活動への影響は必至で、回復し始めた経済の勢いをそぐことは避けられない。

習近平国家主席は17日、会議を行い「人民の生命や財産の安全を第一に」とあらためて対応強化を指示した。対応が遅れれば国民の政府批判につながる恐れもあり、危機感が垣間見える。

中国メディアは連日、時間を割いて各地の洪水への対応を伝え、警戒を呼びかけている。目立つのは軍や消防が住民を救出する場面だ。江西省の巨大湖では、水位上昇で崩れた中州を両側から重機で埋め立てて真ん中で結合することに成功した!と大々的に報じられた。中国共産党の旗を掲げ、政府の「全力対応アピール」だ。

新型コロナウイルスを完全に抑え込めない中、約3900万人が被災する未曾有の大洪水という新たな試練が中国政府に重くのしかかっている。

 面積も人口も日本の比ではない中国、経済力や軍事力で米国に次ぐ第二の大国となったこの国の、意外ともろいアキレス腱がこの水害だとすれば、前回の記事の筆者も述べていたように、「米中戦争になったら、アメリカは真っ先に三峡ダムを狙い撃ちする」と言っていたのも頷けますね。

 もちろん他国の事より日本の豪雨被害に備えるのが肝要。与党ではもう一度、ダムなどの治水作業の見直しを検討し始めたのには、大いに賛同します。何しろ最近の豪雨は温暖化の影響か、予想を超えることが頻繁に起きていることを考えると、喫緊の課題であることは間違いありません。その前にコロナの抑え込みが大きな課題ではありますが。

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2020年7月13日 (月)

洪水被害が広がる中国、三峡ダムは果たして持つのか

Img_42b596caa98d19759cd2ab5b53b731231720 九州と中部地方を中心に日本に広がる豪雨による災害。お隣の中国でも日本以上の大洪水が広がっているようです。6月27日に取り上げた「中国での未曽有の豪雨が襲う、三峡ダム決壊の恐怖」の第2弾ともいうべき記事を、ジャーナリストの近藤大介氏がJBpressに寄稿しました。タイトルは『洪水被害が広がる中国、三峡ダムは果たして持つのか』(7/09)で、以下に引用転載します。

 熊本県で54人が死亡したのを始め、日本全国に豪雨被害が広がっている。被災者の方々にはお悔やみ申し上げたいが、私が日々ウォッチしている中国の豪雨被害は、日本の比ではない規模で進んでいる。その中心にあるのが、中国の「母なる大河」長江(揚子江)の氾濫だ。

三峡ダム、完成後最大の危機

「三峡ダムが決壊する!」

 主に台湾メディアが、このところ「三峡ダム決壊説」を報じていて、それが一部の日本メディアにも伝播している。

 台湾メディアでは、「三面挟攻」(サンミエンジアコン)という表現を使っている。空から降ってくる豪雨、長江の上流から流れてくる激流、それに三峡ダムの放水による「人工洪水」という「三面からの挟撃」に遭って、武漢や上海など、長江の中下流地域が甚大な被害に見舞われるというのだ。そして「三面挟攻」の結果、「そもそも50年しかもたない三峡ダムが決壊するリスクができた」と報じている。

 逆に中国メディアは、水利の専門家たちを登場させて、「三峡ダム決壊説」を強く否定している。例えば、「三峡ダムの『豆腐渣工程』(トウフジャーコンチャン=おから工事)によって水が漏れだしやすい」という指摘に対しては、「三峡ダムは通常のダム工事以上に、セメントが太陽光で高温度にならないよう冷却しながら工事したため強固だ」と反論。「ダムからの放水によって中下流で洪水を起こす」という懸念には、「放水時には水が上向するよう仕向けており、下向して放水が河川と合流する地点を深く掘っていて、そこでいったん水流が止まるので、緩流になる」と説明している。

 私は、台湾メディアも中国メディアもウォッチしているが、「三峡ダム決壊」はないと思う。

 もし万一、そんな悲劇が起これば、それは長江中下流の数億人に影響を及ぼすばかりでなく、習近平政権自体が崩壊の危機に見舞われるだろう。

 実はこれまでにも、中国国内で「三峡ダム決壊論」は議論されてきた。だがそれは主に、軍事的側面からの考察だった。「米中戦争になったら、アメリカは真っ先に三峡ダムを狙い撃ちする」というのだ。

 今回のような「豪雨による決壊論」が取り沙汰されるのは、初めてのことだ。それだけ、2006年に完成以来、三峡ダムがこの14年で最大の危機に見舞われているということは言える。

「水害大国」中国

 そもそも中国は、歴史的に見ても、世界最大の水害大国である。中華民族が農耕と牧畜を始めて定住して以降、水害問題は北方異民族の侵入とともに、常に国家の最重要事だった。確認されている中国最古の王朝は夏(紀元前2070年頃~紀元前1600年頃)だが、司馬遷の『史記・夏本紀』によれば、初代の王である大禹(Dayu)は、治水の名人だということで王に推挙された。

 その伝統は、いまの中国共産党政権にも引き継がれている。中国には「水利部」という治水専門の中央官庁が存在する。先代の胡錦濤(Hu Jintao)前主席は、清華大学水利工程学部河川発電学科を卒業したエンジニアで、「中国で最も偉い水利の専門家になるのが夢だった」と述べている。胡錦濤時代には、毎年最初に出される重要指令「中央一号文件」に、水利問題を扱ったりしていた。

 そんな胡錦濤政権の時代に、三峡ダムが完成したわけだが、三峡ダムの建設は、胡錦濤前主席の本意ではなかった。先代の江沢民(Jiang Zemin)政権に押し付けられて引き継いだのである。

 江沢民元主席は、自分の拠点である上海の電力不足を憂慮したのと、「中国建国以来の大事業」に心惹かれた。当時の李鵬(Li Peng)元首相は、「水利利権の頭目」と言われ、巨大ダム建設が莫大な利権を生む旨みを知っていた。かくして1994年の年末、湖北省宜昌市で、全長3335m、高さ185m、発電量1000億kWhという世界一の巨大ダムの建設が始まったのである。完成までに12年を要し、その間に江沢民政権から胡錦濤政権にバトンタッチした。

 そんないわくつきの三峡ダムは、完成当時から国際環境団体などに、「人類最大の環境破壊」と揶揄されてきた。それが今回の「半世紀に一度の水害」で、大きな試練に立たされることになった。6月2日から、長江流域を含む中国南部に豪雨が襲い、1カ月以上経った現在も続いている。

 長江水利委員会は7月2日、「長江2020年第1号洪水」を発表した。4日の12時には、「長江水害旱魃災害防御クラス」を、「4級」から「3級」に引き上げた。三峡ダムは、この地域最大の観光スポットとなっていたが、5日からダム付近では、封鎖措置が取られている。

 三峡ダムがある湖北省には、680カ所(大型2カ所、中型12カ所、小型666カ所)のダムがあるが、そのすべてで警戒態勢を取っている。周知のように、武漢を省都とする湖北省は、今年の年初から深刻な新型コロナウイルスの被害に見舞われたというのに、ようやくそれが去ったと思いきや、今度は豪雨と洪水である。

被災者は2000万人に及ぶ勢い

 豪雨の被害は、湖北省だけではない。現在、日本では球磨川や筑後川などで洪水が起こっているが、中国応急管理部によれば、7月3日時点で、全国304もの河川で「警戒水域突破」が伝えられているのだ。被害は全国26省・市に及び、1938万人が被災し、416億元(約6400億円)の損失を出しているという。

 例えば、「浙江省の三峡ダム」とも言われる新安江ダムでは7月7日、9つある放水門を初めてすべて開け放った。下流で洪水が発生するのは必至で、すでに2万人以上が緊急避難を余儀なくされた。

 安徽省でも水陽江など長江の分流が次々に警戒水域を超え、「高考」(ガオカオ=7月7日、8日の全国統一大学入試試験)が延期された。「高考」に関しては、洪水の濁音によって英語の聞き取り試験ができないという状況も、全国各地で起こっている。

 江西省でも琵琶湖の4.7倍も面積がある鄱陽湖が、平均水位を6mも上回る事態となり、周囲に甚大な被害を及ぼす恐れが出てきた。同省の「陶器の都」景徳鎮では、すでに2万人以上が避難している。

 ちなみに中国応急管理部の発表によれば、今年上半期に自然災害の被害に遭った中国人は4960.9万人で、緊急避難を余儀なくされた人も91.3万人に上った。死者は271人である。6170.2キロヘクタールの農作物が被害を受け、812億元(約1兆2500億円)の被害を出した。

 中国では俗に、「庚子大禍」と言う。世界が新しく始まる「庚子」(かのえね)は、その前に古い物が一掃されるため大禍になるということだ。1840年にはアヘン戦争が起こり、欧米列強の半植民地時代が始まった。1900年には義和団の乱が起こり、清朝滅亡の契機となった。1960年は三年飢饉で、5000万人とも言われる餓死者を出した。

 そして、2020年――。冬には新型コロナウイルスで中国全土が震撼し、8万5366人の感染者と4648人の死者を出した(7月8日現在)。そしていままた夏の大水害である。ちなみに14億の民を率いる習近平主席は、7月7日まで、もう一週間以上も姿を見せていない。

 金正恩といい、習近平といい、雲隠れするのは独裁政権のなす業なのでしょうか。それは別にして、このコラムの近藤氏は「三峡ダムの決壊はない」だろう、と述べています。ただそうであったとしても、この中国の洪水被害は国土が広く人口の多いせいもあって、日本でのそれをはるかに凌ぐもののようです。

 「庚子大禍」も初めて知りましたが、この古くから伝わる言われに、一つ付け足してもらいたいと思うものがあります。「2020年、中国の共産党政権が終焉を迎える」です。

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2020年7月 9日 (木)

球磨川氾濫の教訓 なにが川辺川ダムを中止に追い込んだのか

99cd0ed259b4e2ef9962c26290123397  昨日のこのブログで、「治水対策だけでは防げない最近の異常な豪雨」を取り上げました。しかし、治水対策の一つ「ダム」による洪水予防の効果は万人認めるところです。しかし球磨川の支流、川辺川のダム計画は中止になりました。このダムが完成していれば、今回のような甚大な被害にはならなかったという、可能性を指摘する人もいます。

 「ダムによらない治水」という目標を掲げた熊本県の施政がなぜ決定したのかは、2008年の熊本県知事選にさかのぼるようです。そのあたりの事情を中野区議会議員で元国交省研究官(工学博士)の加藤拓磨氏が「アゴラ言論プラットフォーム」に寄稿した記事を以下に引用掲載します。タイトルは『球磨川氾濫の教訓:なにが川辺川ダムを中止に追い込んだのか』(7/08)です。

九州地方で発生した記録的な大雨に伴う球磨川の氾濫や土砂災害により、お亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げますとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞いを申し上げます。

本災害は激甚災害にも指定される予定との報道もあり、非常に大きな被害である。

私は以前、国土交通省で河川防災に関する研究をした経験があり、過去に「緊急放流、八ッ場ダム…今こそ「治水」を語ろう」など治水に関する投稿をさせていただいた。

Hqdefault_20200709114401 苦渋の決断だった「川辺川ダム」中止

今回の被災地である球磨川流域の治水計画を語る上で、球磨川の最大支流である川辺川に建設予定であった川辺川ダムの存在を無視することはできない。

蒲島知事「『ダムなし治水』できず悔やまれる」との報道があった。

知事は「川辺川ダム計画に反対し、ダムによらない治水をすると言ってきたが、ダムを作っておくべきだったという思いは?」という問いに、

「私が2008年にダムを白紙撤回し民主党政権によって正式に決まった。その後、国、県、流域市町村でダムによらない治水を検討する場を設けてきたが、多額の資金が必要ということもあって12年間でできなかったことが非常に悔やまれる。そういう意味では球磨川の氾濫を実際に見て大変ショックを受けたが、今は復興を最大限の役割として考えていかないといけないなと。改めてダムによらない治水を極限まで検討する必要を確信した次第だ。」

と回答されている。

奇しくも先日の都知事選に立候補された小野たいすけ前熊本県副知事のTwitterで蒲島知事からのメッセージで川辺川ダムについて触れている。

「熊本県知事就任後の川辺川ダム建設計画・白紙撤回の際、当日の朝ギリギリまで答弁を一緒に考えたこと、また、財政再建のため月額100万円の給与カットをした際、小野君が自分より給与が安くなった私を見かねて食事を御馳走してくれたことは、二人にとって大切な思い出です。」

蒲島知事県政で2人の想い出として、メイントピックとして挙げられるほど、熊本県において川辺川ダムを中止したことが苦渋の決断だったことがうかがい知れる。

3_20200709114401  県全体で反対ムードが高まっていった中止の経緯

国土交通省 九州地方整備局に川辺川ダム建設事業の経緯が記載されている。

概略としては1963~1965年(昭和38~40年)において球磨川流域で3年連続の豪雨による大災害が発生し、昭和40年(1965年)に寺本熊本県知事は、瀬戸山建設大臣に対して川辺川に治水ダムを早急につくることを陳情した。

ちなみに昭和40年7月洪水は20~30年に一度発生する確率の洪水であった。

国は1996年に球磨川水系工事実施基本計画策定し、工事・補償について順調に進め、1996年には川辺川ダム本体工事着工に伴う協定書調印を行った。

バブル崩壊後に公共事業見直しが騒がれる中、長野県の田中康夫知事が誕生し、「脱ダム宣言」を表明し、公共事業、特にダム事業に対する反対運動が盛んとなった。

長良川河口堰においては全国な話題となり、第2次橋本内閣の建設大臣であった亀井静香が徳島県の細川内ダム計画を凍結したことから、各地でさらに活動が活発となった。

日本共産党、朝日新聞などの一部マスコミが積極的に関与し拡大していった。

川辺川ダムもその対象となり、「壮大な税金の無駄遣い」として反対運動を全国的に広め、ダム反対派は「川辺川ダムは無用の長物」として建設中止を強固に求めた。

その後、紆余曲折あり、県全体で反対のムードが強まり、2008年3月の熊本県知事選では争点ともなり、当選した蒲島熊本県知事は就任後、「川辺川ダムについて、有識者会議を設置して9月までに判断」と発言し、同年9月に「現行の川辺川ダム計画を白紙撤回し、ダムによらない治水対策を追求するべき」と表明した。

ちなみに熊本県民新聞WEBという地元情報メディア(地元紙の熊本日日新聞とは別)に知事選の当時の様子が記されている。

『川辺川ダム建設反対は蒲島を除く4人。蒲島も「1年後に検討して結論を出す」としていたのが最近では「半年後」と変った。反対派の票がほしくなったのか。筆者の僻みかもしれないが、各メディアを通じ知る限りどの候補も”当選したい”一念からか、個人マニフェスト、討論会を見聞しても独自色が薄いという事である。』

このように、県全体として建設反対のムードが高まっていたことがわかる。そして、2009年1月から「ダムによらない治水を検討する場」を開始し、2009年9月に民主党政権が誕生し、前原国土交通大臣が川辺川ダム中止を表明した。今もなお、「ダムによらない治水を検討する場」でダムなしの総合治水を検討している。

「ダムによらない治水」はなぜ困難だったのか

では「ダムによらない治水を検討する場」では、川辺川ダムに変わる主にハード面における水害対策(引堤、河道掘削等、堤防嵩上げ、遊水地、ダム再開発、放水路、宅地のかさ上げ等、輪中堤)が示されている。

引堤は川幅を広げ、水の流下能力を向上させる方法だが、堤防を現行の場所よりも住宅地側に堤防を設置するために、川沿いの方々は移転を求められる可能性が高い方法である。

河道掘削は川底の土砂を掘り、流下能力を高める方法であるが、掘っても掘っても土砂が補給されるためにランニングコストが非常にかかる方法である。

堤防嵩上げは堤防の高さを上げることで流下能力を上げる方法だが、土を高く盛るためにはそれだけ幅が必要になるため、堤防沿いの住宅地においては移転が求められる可能性がある。

遊水地、ダム再開発、放水路、輪中堤は水を逃がす方法であるが、そのために水没させる土地が必要である。

宅地のかさ上げは住宅地が水没することを前提として、家を底上げする方法である。

どの方法も時間と金がとてつもなくかかる方法であり、ダム建設予定地よりも下流側での用地買収が必要となってくる。

ダムにより水の中に町が沈むことも避けたいところではあるが、現状からいって、「ダムによらない治水」を実施していくことは困難である。

科学に基づかない情報が広がった結果…

晴川雨読というサイトの記事「川辺ダムがあったら球磨川は氾濫しなかったか?」で、川辺川ダムがあった場合についての概算がなされているが、相当の治水効果が見込めそうである。

また、今回の災害を受け、早々に治水安全度を向上させるためにどうすべきであるか、当事者たちがよく理解されていると思う。

議員や環境活動家などが問題視し、マスコミが問題をあおったこの結果がこれである。

地元住民は命・資産を守ってほしいにもかかわらず、河川環境を守って欲しいと地元に住んでいない活動家が声を上げている構造がほとんどであった。どうやら最近、その活動家は放射能や気候変動に対して偏向な活動をされているとは聞いている。

放射能、豊洲の地下水、新型コロナなど、これまでマスコミが不安をあおる報道を続けてきたが直接・関節的に人命を奪うことにもなる。

SNSが発達した昨今、科学技術に基づいた正しい情報が周知され、感性ではなく理性で事業が進められることを切に祈る。

 長期に亘る自民党政権、バブル崩壊後の長期的なデフレ不況と閣僚の不祥事などが重なって、国民の反自民ムードが一気に高まり、神風が吹いた民主党政権への交代劇。その民主党が掲げた看板の一つが「コンクリートから人へ」でした。その流れの中で中止となった「川辺川ダム」。

 ここで言えることは加藤氏が指摘しているように、情緒に訴え科学を無視した、偏向活動をする輩が必ずいると言うことです。民主党政権への政権交代は、その極めて大きな流れの中で実現したことなのかもしれません。つまり国民の総意までも動かす恐ろしい流れが、あの時発生したのでしょう。

 福島原発の事故後の反原発の流れもその一つかもしれません。いくら原子力安全委員会が科学的な根拠で安全性を精査し、再稼働を結論付けても再稼働を反対し続け、原発そのものを廃止させようとするその流れです。

 必ずしも自民党政権が万全だとは言えません。結構綻びも見られます。しかし怖いのは、その綻びが利用され、また大きな流れを生むこともありうると言うことでしょう。国民は、科学技術に基づかず、情緒だけに訴え、或いはフェイクによって流れを起こそうとする反日活動家に騙されず、しっかり情報を捉える必要性を強く感じます。

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2020年7月 8日 (水)

治水対策だけでは防げない最近の異常な豪雨には、自助、共助が決定的に重要

20200704s00042000498000p_view  今年も梅雨時期の豪雨被害が相次いでいます。今朝は地上波各局で、長野、岐阜両県に大雨特別警報が発令され、最大級の警戒を呼び掛けている映像が長時間流れていました。昨夜は福岡、大分でも大雨洪水の被害が出ています。

そして何といっても50人以上の犠牲者を出した熊本県、球磨川流域の大洪水。今回10か所以上の決壊氾濫を起こしたこの「暴れ川」に関して、産経WESTは以下のように記述しています。タイトルは『「ダムによらない治水」進まなかった球磨川』(7/07)です。

 熊本県南部などを襲った豪雨。氾濫した球磨(くま)川は、「日本三大急流」として知られ、過去にも水害に見舞われたことから「暴れ川」の異名も持つ。流域の治水対策をめぐっては、昭和40年まで3年連続で起きた水害を機に治水ダム計画が進んだが、地元の反対を受けて中止された。その後、国や流域自治体、地元住民で治水対策を協議し続けてきたが、抜本策が打ち出せないまま今回、想定を上回る甚大な豪雨被害が起きた。

 球磨川は熊本県水上村の源流から人吉盆地、八代平野を経て八代海に注ぐ全長115キロの1級河川。流域の年間平均雨量は全国平均の約1・6倍の2800ミリで、本流と支流の合流点にあたる人吉市中心部や球磨村渡地区は、洪水の危険性が以前から指摘されていた。

 熊本大の大本照憲教授(河川工学)は、今回は本流と支流双方が同時に増水し、異常出水につながったと分析。「人吉市街地では急速に水が流れ込み、避難できないほどの流速だった可能性がある」とする。

 だが、流域での治水対策は進んではこなかった。国土交通省によると、球磨川流域では40年7月に大規模な水害が発生。翌41年、国は球磨川支流の川辺川に治水を目的としたダムの計画を発表した。

 しかし、地元の反対などで事業は進まず平成20年、蒲島郁夫知事が計画反対を表明。翌年、民主党政権が計画を中止した。その後、国や県、流域自治体が堤防かさ上げや川底の掘削などの治水策を協議してきたが、議論はまとまらず、ダム計画も廃止されていない。

 「ダムによらない治水を目指してきたが、費用が多額でできなかった。非常に悔やまれる」。蒲島知事は5日、報道陣の質問にこう述べた。国交省九州地方整備局は球磨川の国管理流域だけでも11カ所で氾濫、人吉市中神町で堤防1カ所が決壊しているのを確認している。

 大本教授は「ダム以外にも田畑など『安全弁』となる氾濫地帯をつくるなど、人的被害を最小化するため流域全体での治水対策を早急にとる必要があった」と指摘している。

 確かに球磨川の氾濫にはダムによって人吉市が位置する中流域の水嵩を1、2メートル下げる効果があると、識者が語っていて、もし川辺川にダムが建設されていれば、これほどの被害にはなっていなかったかもしれません。

 ただ最近になってたびたび発生する、異常な線状降水帯がもたらす豪雨は、簡単に一時間100ミリを超えてしまいます。このような異常な豪雨には、ダムや堤防などの治水では、もはや手に負えないレベルになっているのではないでしょうか。昨年発生した台風19、21号による豪雨が発生した後、週刊ポスト紙上に大前研一氏のコラムが掲載されていました。タイトルは『繰り返される大水害 今こそ「洪水プレイン」の整備を』(11/23)で以下に引用掲載します。

 21世紀は災害の世紀という言い方をする人もいるほど、台風や豪雨、地震や津波などの巨大災害、複合災害が続いている。想定外の事態が次々と発生したため被害が大きくなったというが、経営コンサルタントの大前研一氏は、歴史の教訓に学び、大水害に備えた「洪水プレイン」が必要だと訴える。この「洪水プレイン」とは一体何か。大前氏が解説する。

 * * *

 台風19号と21号に伴う豪雨で多数の川が決壊・氾濫し、甚大な被害が出た。国土交通省によると、台風19号では宮城、福島、長野、茨城など7県の71河川・140か所が決壊した。台風21号では千葉や福島など5県で27河川が氾濫したと報じられた。

 今回は百年に一度の集中豪雨だったから想定外の事態が多々起きて被害が拡大したという。だが、歴史の教訓に学んでいればかなりの被害は防げたはずであり、それができなかったのは“行政の怠慢”だと思う。

 具体的な対策としては、豪雨や高潮による浸水想定区域をシミュレーションした「ハザードマップ」に基づき、水害リスクが高い地域では安全な場所に住民を移住させるべきである。私は2011年に「3.11」(東日本大震災)が起きた時、8日後の3月19日に【1】津波で被災した地域を「津波プレイン(平原)」に指定して土地を買い上げ、人は住まわせない【2】住宅地は安全な高台に移す―という復興ビジョンを提案した。それと同じように、台風などによる水害リスクが高い地域は「洪水プレイン」に指定し、どうしてもそこに住みたいという人には自己責任で住んでもらうのだ。

 これはオーストラリアなどでは当たり前のコンセプトで、水害リスクが高いとわかっているエリアの土地は行政が売買を制限する。たとえば百年に一度、津波や洪水で大きな浸水被害が出ている土地の場合、そのことを売り手が売買契約書に明記し、買い手もそれを了承してサインしなければ契約は成立しないのだ。

 そんな危ない物件が売れるのかと思うかもしれないが、そういう土地は普通の土地より格段に安いから買い手がつくのである。そして「洪水プレイン」に土地を買った人は、たいがい高さ2mほどのマウンド(盛り土)を作り、その上に家を建てている。

 日本の場合、物件によっては「重要事項説明書」に水害の履歴などが小さく簡単に記載されているが、今後は行政が「洪水プレイン」の考え方を取り入れるとともに、不動産を売買する時はすべてのリスクを明確・詳細に開示することを義務付けるべきである。

 日本はゼネコンも歴史の教訓に学んでいない。今回の豪雨では川崎市・武蔵小杉のタワーマンションで地下の電気設備が浸水してエレベーターが動かなくなり、断水も発生した。しかし、1995年の「阪神・淡路大震災」で神戸のポートアイランドや六甲アイランドの高層マンションは液状化現象で地下の電気設備が全滅し、全く同じことが起きている。その教訓に学べば、電気設備や非常用電源は屋上などの高所に設置しておくのが当然ではないか。

 天災は自然が人間にもたらす試練である。だが、そこから学ぶことで被害を減らしてきたのが人間の歴史でもある。好例はオランダだ。国土の4分の1が海抜ゼロメートル以下のため、全長32kmの大堤防や浚渫した砂で海岸線を海面上昇と浸食から守る防波堤などを建設し、今ではその技術を世界中に輸出している。

 日本も台風19号の「10.12」と21号の「10.25」を歴史の教訓とし、それを克服する仕組みや新しい技術を生み出すとともに、不動産売買などで土地の履歴を明示して価格や建築基準に反映すべきである。それを怠れば、再び甚大な被害を出すことになるだろう。

 確かに大前氏の言うように、防災には行政の一層の役割の必要性は大きいかもしれません。しかし行政が様々な対策や提案をしても、業者や住民がそれに従わなければ意味がありません。特に長期に亘って住居を構えている、その土地に愛着を持っている人たちは、容易に他の場所への移動を拒むでしょう。

 もともと山の斜面の麓や川の近くに住んでいる人には、土砂災害や洪水被害のリスクは極めて高い。そんなところに住むなと言っても、そう簡単には引っ越しはできないでしょう。経済的にも大きな負担がかかります。そこで大事なことは大前氏も言うところの「自己責任」です。

 まずそういう地域では、地域住民の総意で一定の範囲に一か所は、大勢を収容できる頑丈な3階建て以上の高層の建物を作って、避難所にするべきでしょう。学校の体育館では低層で役に立たないところでは、高層にする必要があります。災害復旧の巨額の支出を思えば、あらかじめこういう建物を建てておくのは最低限必要ではないかと思います。そこへ警報が出た場合は避難する、それが一つの手段です。

 それが自治体予算の範囲でできないならば、それこそ自己責任でどう避難したらいいか、あらかじめ考えておいてそれを実行するしかありません。

 一般的に災害時においては、自助、共助、公助の順で防災に当たる、というのが原則です。高齢者施設の人たちや子供は別として、なんでも行政に頼るという考えは捨て去り、まず自分で自分を守る、又近所の人たちで共同で守るという精神が必要でしょう。

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