軍事、外交

2022年10月 3日 (月)

櫻井よしこ氏:憲法改正と自衛力・国防力強化を急げ

Images-7_20221003102201  政府は年末までに、外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」など、安保関連3文書を改定する計画となっています。一方で防衛費の大幅増額を内外に示し、近い将来NATO諸国並みのGDP比2%を達成すべく、議論が進みつつあります。

 ただそれと並行して、「ポジティブリスト」に代表されるように、自衛隊の行動の足枷となっている法体系の改革も待ったなしです。今回は産経新聞に寄稿した櫻井よしこ氏のコラムからその概要を引用して紹介します。タイトルは『自衛隊強化 法整備急げ』です。

安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)における岸田文雄首相の追悼の辞が胸に響いた。「戦後置き去りにされた国家の根幹的な課題に次々とチャレンジ」し、「戦後レジームからの脱却」を目指し、「国民投票法を制定して憲法改正に向けた大きな橋を架けた」として、安倍氏をたたえた。首相の想いは憲法改正につなげてこそ、本物になる。

プーチン露大統領はウクライナ4州の併合を宣言し、核による反撃もいとわないと恫喝(どうかつ)した。中国は台湾への軍事的恫喝を継続し、わが国の排他的経済水域(EEZ)にミサイル5発を撃ち込んだ。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺では、人民解放軍(PLA)の軍機が領空に接近し、海警局の船が領海に侵入する。習近平国家主席もプーチン氏も徹底した力の信奉者だ。

そして、台湾有事が迫る。安倍氏が指摘した日本有事だ。岸田政権が日本を守り通せるかは日本国の根本的欠陥を明確に認識できるか否かによる。わが国国防の根本的問題は自衛隊が軍隊ではないという一点に尽きる。自衛隊は憲法と自衛隊法により警察権の枠内に封じ込められ、実力を発揮できない組織なのだ。

憲法を改正して戦後レジームから脱却しない限り、岸田政権が検討中の自衛隊強化策は基礎工事のなされていない砂地に建物を建てるようなもので、真の危機対応にはなりにくい。逆に、憲法改正で自衛隊を通常の軍隊にすれば、自衛隊はとってはいけない行動を定める「ネガティブリスト」に基づいて持てる力を真っ当な形で行使できるようになる。そのとき自衛隊の力は、予算を1円も増やすことなしに比類なく強化される。

そこに行きつくのが困難ならば、首相には次の一手がある。日本の危機対応の法の穴を埋めるのだ。たとえばシンクタンク「国家基本問題研究所」における織田邦男元空将の以下のような提言だ。

わが国には有事法制はあるがグレーゾーンの法整備はない。現代戦は平時か有事かを区別できないグレーゾーンでの戦いから始まるが、そのような事態を想定していないため自衛隊は対応できない。台湾・日本有事となっても、沖縄県の与那国島などの住民保護は武力攻撃事態などが認定されない限りできない。防衛出動の下令なしには自衛隊は警察官職務執行法に縛られ武器使用が大幅に制限される。

武力攻撃事態、存立危機事態の認定があって初めて自衛隊は国民・国土防衛の活動に乗り出せる。ただ、これらの事態認定は中国などの周辺諸国に「宣戦布告」ととられかねない。住民保護のための事態認定が逆に戦端を開きかねない。この欠陥を埋めるにはグレーゾーンにおいて、自衛隊を通常の軍として活動させる法整備を急げというのだ。ちなみにこのような軍の扱いは世界では当然のことだ。

Images-6_20221003102101 有事に大戦略を決めるのは政治である。その指示で動くのが自衛隊である。政治と軍、政軍関係を健全に保ち、堅固に日本国民と日本国を守れるか否かは政治家の力量による。政治家の力量は現場を知らずしては決して成り立たない。

岸田文雄首相の下で新国防戦略の策定と、予算面からの軍事力強化の検討が行われている。一連の議論の中で思い違いが目につく。

まず、「防衛費の国内総生産(GDP)比2%以上」に向けての増額と防衛力強化の混同である。先述の沖縄県の与那国島などで有事の際の住民避難に必須の港湾・空港の整備・拡張、地下施設建設などインフラ整備費を防衛予算に算入すべしとの意見がある。種々の科学技術研究開発予算、海上保安庁予算も防衛費に算入してGDP比2%以上という国際公約を果たそうとの考え方もある。

港湾や飛行場、滑走路などの整備費は、日本の安全保障全般に関わる国防関係予算であり、防衛予算ではない。自衛隊の軍事力強化にはつながらない。防衛費の見かけ上の増額を図るのは水増しである。防衛費増額と防衛力強化を混同してはならない。

海保は他国の沿岸警備隊(コーストガード)とは異なり、海上保安庁法25条によって軍との関係が全否定されている。有事に軍の指揮下で軍事展開する他国のコーストガードとは全く異なる。従って海保の予算を防衛予算に組み入れることなど許されないだろう。

岸田政権下で国防の新戦略が策定され、戦闘機やミサイルなど新たな調達が決まるだろう。しかし、実際に自衛隊の手元に武器装備が届くのは早くて5~10年後だ。大事なことはそれまでの間、わが国の安全をどう担保するのか、である。

ここでも重要なのは政治家が現場の自衛官の声に耳を傾けることだ。安倍晋三元首相が自衛隊には継戦能力がないと明言したように、ミサイル、砲弾、部品、修理費など、現場は「不足」が山積みだ。まず、いますぐにそれらの補充にとりかかるべきだ。防衛力の現場の穴は最優先で埋めなければならない。

中露北朝鮮。核とミサイルを持った専制独裁国家に取り囲まれているわが国は世界で最も脆弱(ぜいじゃく)な国だ。戦後、国防を米国に頼りきったツケである。自衛隊が軍隊であり得ていない理由である。ここから抜けることが戦後レジームからの脱却なのである。

ウクライナは必死に戦って国家の滅亡を辛うじて回避している。国は国自体で生き残るのではない。一人一人の国民の国を大事に想う気持ち、愛国心によって初めて守られる存在だと痛感する。また、国なくして国民も国民ではいられないのである。ウクライナは日本の私たちに多くのことを教えてくれているはずだ。

日本の前方に立ちはだかる中国の習近平国家主席はプーチン露大統領同様、冷酷な力の信奉者だ。そしてプーチン氏よりはるかに手ごわい。中国の脅威に直面するわが国が覚醒し、発奮せずしてどうするのか。憲法改正の実現に向けて全力で走る。足元の自衛力・国防力強化に全力を注ぐ。この2つをやり抜くことが首相の歴史的使命である。

 戦後間もなくGHQの占領政策、「日本の弱体化を進め、二度とアメリカに立ち向かわなくする」ための、WGIPとプレスコード、ラジオコード、教育への自虐史観の植え付けが行われました。戦後77年を経た今日でも、 未だにその余波が放送界や教育界に残り、具体的な軍事技術の開発や戦略の研究、そしてその報道を控える雰囲気が、日本の軍事戦略音痴を生み出してしまっています。

 そうした中で、中朝露の覇権的行動がますます凶暴化しています。櫻井氏の言う「憲法改正の実現に向けて全力で走る。足元の自衛力・国防力強化に全力を注ぐ」ことが待ったなしの状況です。もちろん一方でこれらの国との対話は必要でしょうが、独裁国家を相手に、日本の思うような外交ができるはずはないでしょう。お花畑思想はきっぱり捨てて、防衛力強化と戦略研究強化を進めていってほしいものです。

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2021年7月 2日 (金)

日本に「台湾の防衛は日本の防衛」と認める覚悟はあるのか?

Images-6_20210701143901  前回は「泣き寝入り国家?」日本の実態と課題を取り上げましたが、今回はさらに具体的な課題、つまり中国が台湾の統一を具体化しようと動き出したときに、日本はどう対応するのか。そういう問題を突きつけられたときの日本の覚悟について取り上げてみたいと思います。

 安全保障戦略コンサルタントの北村淳氏がJBpressに寄稿した『米国の専門家も危惧、台湾防衛で米国の「弾除け」に使われる日本 日本に「台湾の防衛は日本の防衛」と認める覚悟はあるのか?』(7/1)という少々長いタイトルのコラムから引用して以下に掲載します。

 岸信夫防衛大臣は米メディア(ブルームバーグ)のインタビューに答える形で、台湾の平和と安定は「日本に直結している」との認識を示した。台湾の防衛が日本の防衛と直結していることを認めたことになる。

 日本が中国を仮想敵に据えている限り、台湾の防衛と日本の防衛は切っても切り離せない関係にあるというのは極めて当然の原理である。しかしながら、日本の防衛大臣や総理大臣がこの“原理”を公に語ることは稀であるため、アメリカ軍や政府関係者たちの間で岸大臣の発言は歓迎されている。

 日本の防衛大臣が「台湾の防衛は日本の防衛」という趣旨を語ったということは、「中国に攻撃された台湾を防衛するため、アメリカが軍事的支援を実施する場合、日本も当然アメリカの同盟軍としての役割を果たすであろう」とアメリカの軍人や政治家、安全保障専門家などの多くは(単純に)理解しがちである。したがって、日本の「決意」はアメリカの国益と一致しており、大いに歓迎されるのである。

「不安定な状態」を維持したいアメリカ

 ここでいうアメリカの「国益」とは、「中国と台湾の間に不安定な状態が続くこと」を意味する。日本がアメリカの同盟国としての役割を果たすことは、「不安定な状態」の維持に寄与するというわけだ。

 ただし注意が必要なのは、「不安定」といっても、アメリカの軍事的介入が必要になるほど激しい軍事対立では困る、というのがアメリカ側の真意だ。そうではなく、「中国が台湾に軍事侵攻する危険性が高いものの、現実に軍事攻撃が実施されることはない」という「曖昧な不確定戦争」といった状態が続いているのが望ましいのだ。

 このような状況ならば、アメリカが実際に中国軍と戦火を交える必要はないものの、台湾を軍事的に支援する大義名分を掲げて、台湾海峡や東シナ海、南シナ海に空母艦隊や爆撃機などを展開させて「アメリカが台湾という民主主義国家を守っている」というデモンストレーションを展開することができる。

 そして日本政府や日本国民が「台湾の防衛は日本の防衛」と認識しているのならば、アメリカ軍による台湾防衛のためのデモンストレーションはそのまま日本防衛のデモンストレーションにもなるのである。

 したがって、アメリカ軍が日本国内に確保してある軍事拠点を大手を振って好き勝手に用いても何も気が咎(とが)めることはない。なんといってもアメリカ軍は台湾防衛(すなわち日本の防衛)のために巨額の運用費がかかる空母部隊や爆撃機などで中国側を“威嚇”しているのだ。

自衛隊が“多国籍軍”の先鋒に

 では万が一、中国による台湾に対する軍事攻撃が実際に起きた場合には何が起こるのか。その場合、沖縄、佐世保、岩国、横須賀、横田といった米軍基地は最良の前進軍事拠点となる。日米安保条約や日米地位協定の取り決め以上に日本側が「台湾防衛は日本防衛」と考えているからには、日本各地に点在する軍事施設を米軍が自由に用いることが保証されることは疑う余地がない(と米軍側は考えるであろう)。

 そして「台湾の防衛は日本の防衛」であるならば、アメリカが主導して編成する台湾支援“多国籍軍”(注)の先鋒として、自衛隊艦隊や航空戦隊、それに水陸両用部隊などが投入されることになるであろう。なんといっても台湾を巡る戦闘においては、日本の地理的位置は民主国家のうちでも群を抜いているからだ。多国籍軍の先鋒を務める海・空・陸自衛隊諸部隊は、数千発の各種ミサイルが降り注いで生活のインフラを破壊された台湾の人々を救援・救出するため、台湾に接近上陸することになる。

(注)中国が安保理常任理事国である以上、国連軍が編成されることはあり得ず、アメリカが音頭を取って編成する多国籍軍の可能性が高い。ただし、相手が中国であるため、多国籍軍に参加し軍隊を派遣する国がいくつ集まるかは大いに疑問である。

 このような困難かつ危険極まりない先鋒任務をアメリカ自身が行う必要はない。「台湾の防衛は日本の防衛」である以上、隣国の日本が「唯一に近い日本の真の友好国」である台湾の人々を救出するのは当然だからだ。

弾除け的に使われる“属国”

 このシナリオのように、属国や従属国を弾除け的に使うのは、アメリカの軍事的師匠筋にあたるイギリスがしばしば用いた伝統的手法である。

 イギリスは第一次世界大戦きっての激戦であったガリポリ上陸戦で、最も困難な激戦地点にオーストラリア軍とニュージーランド軍の部隊を投入した。

 同様に第二次世界大戦においても、日本との戦端が開かれた場合に、イギリスの極東最大の拠点である香港を日本軍が攻略することは目に見えていたため、全滅する可能性が高い香港防衛部隊をカナダ軍にあたらせていた。

 そしてヨーロッパ戦線でも、ディエッペ上陸作戦の主力としてカナダ軍部隊を投入した。ディエッペ上陸作戦は、西ヨーロッパ全域を占領したドイツ軍への反抗拠点を確保する実験的上陸作戦であり、極めて危険な自殺的作戦であった。

 このようにイギリスは、英連邦内の“二級国家”オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどの“二級国民”による志願兵部隊を、当初より多大な犠牲が見込まれる作戦に投入したのである。

 一方の“二級国家”側も、イギリスの本意は承知してはいたものの、真の独立国としての地位を勝ち取るために自国民の犠牲はやむを得なかった。結局、第二次世界大戦後、イギリス自身の軍事的地位が低下したことも相俟って、それら諸国は真の独立国家としての地位を獲得したのである。

日本列島に撃ち込まれる長射程ミサイル

 アメリカにとっても、台湾を巡って中国と本格的な戦争へ突き進むことは99.9%避けなければならない。しかし、中国による台湾への軍事攻撃に際して何もしないのではアメリカの軍事的威信は地に墜ちる。そこで台湾の人々を救出するという大義を押し立てて、アメリカの“属国”である日本の“二級国民”を危険かつ困難な先鋒部隊として台湾に突入させ、自らは「出動宣伝効果」は極めて大きい空母部隊2セットを沖縄南方200海里沖付近と沖縄西方100海里沖付近に展開させ、多国籍軍先鋒を務める勇敢な自衛隊部隊を支援する態勢をとるのである。

 そして、台湾問題に日本が軍事介入したことを口実に中国軍が日本列島に長射程ミサイルを連射して、日本の戦略要地が大損害を受けた場合には、国連安保理で停戦協議を開始するのだ。

 話を冒頭に戻そう。アメリカ側の多くの人々は、日本が「台湾の防衛は日本の防衛」と認識していることを歓迎している。だが、日本の防衛政策の現実を熟知している専門家の間では、「台湾の防衛は日本の防衛」ということは日本が上記のような流れに巻き込まれることを意味し、とても日本政府がその種のシナリオを是認した上で何らかの具体的戦略を持っているとは考え難い、との疑義が持たれている。

 ◇

 北村氏は、日本政府は台湾防衛の覚悟どころか、戦略そのものも持ち得ない現状を指摘しているようです。もちろん日本国民も憲法擁護、戦争反対のリベラリストのみならず、殆どの国民が具体的な予測などしていないでしょう。

 しかし昨日の中国共産党建党百周年で習近平氏が「台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の歴史的な責務だ。いかなる台湾独立のたくらみも粉砕する。」、と述べているとおり、具体的な行動に出ることは近い将来あり得ると見たほうがいいでしょう。

 ですから日本政府もその際の戦略をきちんと打ち立て、そのための事前の施策に取り組まねばならないと思います。体制作りや新たな立法処置も含めて。もちろん国民への周知のための広報も重要です。ただできるかどうかはよくわかりません、つまり政府も国民も覚悟があるかどうか、と言うことです。

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2020年9月17日 (木)

敵国を北朝鮮から日本へとシフトし始めた韓国、装備計画に見るその方向性

Images-2_20200917110601  昨日菅政権が発足しました。コロナ対策、規制緩和、地方再生、少子化対策、外交政策、就任会見では以上の大きな政策の柱が語られました。コロナ対策にはもちろん疫病の収束と共に経済の再生も含まれています。

 この中で安倍首相が最も実績作りをしたといわれる、外交課題も含まれていますが、菅新総理の経歴からはやや心配する声も聴かれます。そこは茂木外相がしっかりとサポートする必要があるでしょう。

 中でも現在課題山積の対中、対韓政策は重要です。その中で韓国を今回は取り上げます。近年の韓国の対日政策は、原則として反日に偏ったものと言っていいでしょう。特に文在寅政権になってからは、このブログでも取り上げている通り、事あるごとに反日対応を取っており、ついに徴用工裁判判決による日本企業への個人賠償請求をするに至って、日韓請求権協定に対する明らかに国際法に違反する対応を取ることにより、日韓関係の最悪な事態を引きおこしています。

 つまり、あくまでも最近の日韓関係の悪化の原因は韓国側にあるのであって、日本には非はありません。それなのに相変わらず、韓国政府そして韓国のマスコミはこぞって日本を誹謗中傷しています。もう完全に敵対国、いや敵国と言っていいでしょう。

 しかし敵国であるからには、その脅威の元である軍事的情報を精査するのは必須です。そしてその実態は看過できない状況のようです。軍事情報戦略研究所朝鮮半島分析チームによると、以下のような驚愕の調査結果が出されています。『日本の軍事費は日本以上、攻撃的軍拡に舵切った韓国』(JBpres 9/16)です。以下に引用して掲載します。

 韓国国防部が今年の8月に公表した国防中期計画(2021~2025年)によれば、韓国は、今後5年間で約27兆円を軍備に投じる。

 海軍では、3万トン級の小型空母、4000トン級原子力潜水艦、新たなイージス艦3隻および国産小型イージス艦6隻を海軍に追加するという壮大な計画である。

 保有している2隻の独島級強襲揚陸艦を改修すれば、3個空母群を編成できるとする見方もある。

 韓国軍のうち、特に海上兵力の増強が著しい。これらは、北の南侵を阻止するための防勢兵器というより攻勢的で外洋で作戦する兵器である。

 高価であり、軍事目的に使用される兵器が持つ能力は、その国家の軍事的な意志を明確に表わすものだ。

 近い将来に、高価で、南侵阻止ではない作戦に使用される兵器を持つということは、隣国の日本としても警戒する必要がある。

「韓国が何のために攻勢的な兵器を装備しようとするのか、主敵を変更し、新たな軍事戦略を構築しているのではないか」といった大きな疑問が生じていきている。

 では、実際はどうなのか。その現状・能力・脅威認識・軍事戦略について分析し評価する。

購入する兵器で軍事戦略が読める

 その国の軍事力の現状およびその整備の方向性を分析すれば、その国の軍事的な意志、具体的には、どのような脅威認識を持っているのか、どの国を主敵としているのか、数か国(多正面)対応なのかなどを読み取ることができる。

 特に、保有する兵器によって、戦い方が大きく変化する。

 従って、保有する兵器の能力と運用を考察すると、主敵となる国、軍事戦略の変化が具体的に分かる。

 防勢的な兵器から攻勢的な兵器へ、地上戦主体から海上戦重視へ、短距離攻撃能力から長距離攻撃能力の保持へ、沿岸防衛力から外洋作戦力の保持に変更が見られた場合には、それに注目し、「なぜか」と疑問を持って、その理由を解明しなければならない。

 一般的に国防力の整備には長期間を要する。

 相手の軍事力の脅威が顕在化してからでは、国民の生命財産を脅威にさらす可能性がある。周辺国の軍事力整備の動向には常に意を払っておかなければならない。

 通常、仮想敵国となる国々については、注目して分析するが、同盟国とみなす国については、分析の対象としない。

 韓国は、米国と同盟を結んでいる。日本にとって、「味方の味方は、味方」という認識があり脅威と考えている専門家は少ない。

 このため、韓国の軍事戦略や装備に対する関心は低い。

 しかしながら、文在寅政権となってから、今までの政治、外交的対立のみならず、防衛関係者の信頼関係も大幅に低下している。

 このような状況下で韓国が軍事戦略を大幅に変更したということは、隣国として注目する必要がある。

弱まった北朝鮮と中国への脅威認識

 朝鮮戦争開始時の韓国軍は極めて貧弱な装備しか保有せず、一方的に北朝鮮軍に蹂躙された。

 米国をはじめとした国連軍の本格的な介入がなければ、韓国は消滅し、金一族独裁政権の朝鮮に統一されていたであろう。

 1953年に締結された米韓相互防衛条約前文には「太平洋地域における平和と安全保障のために協力する」こととされているが、米韓同盟の戦略的目標は北朝鮮に対する抑止と韓国の防衛が具体的目標であった。

 9.11後の新たな戦略環境、中国軍の活動活発化、そして米国自身の軍トランスフォーメーションなどの影響を受け、米韓同盟も新たな戦略目標の策定が課題となってきている。

 日米同盟同様に、国際公共財として「戦略的柔軟性」を持つことが期待されている。

 このような中で、米韓の脅威認識のずれが顕在化しつつある。その一つが北朝鮮であり、もう一つは中国である。

 文在寅政権は南北融和を推進、2018年4月の板門店宣言およびこれに引き続き南北軍事合意を締結した。

 軍事合意では大規模演習について南北で協議するとしており、大規模な米韓合同軍事演習は2年間以上行われていない。

 さらに在韓米軍駐留経費増額交渉の行き詰まりから、米国のドナルド・トランプ大統領が在韓米軍を削減するのではないかとの噂も広がりつつある。

 北朝鮮に対する抑止力としての米韓連合軍の弱体化が進んでいる。

 中国問題はさらに深刻である。

 2015年に当時の朴槿恵大統領は、米英などの指導者級が参加しないなか、中国主催の「抗日戦勝70周年」式典にロシアのウラジーミル・プーチン大統領とともに出席した。

 また、2017年10月には文在寅大統領訪中の事前交渉において、次の「3つのノー」と言われる中韓合意文書を公表している。

  • 米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらない。
  • 日米韓安保協力を軍事同盟に発展させない。
  • THAAD(終末高高度防衛ミサイル)の追加配備は検討しない。

 この3つは、自国の防衛力や米韓の同盟関係を弱め、中国におもねる内容になっている。

 北朝鮮および中国に対する脅威認識の差は、米韓連合軍の運用に大きな影響を及ぼす。

 米中対立が激化しつつある状況下において、在韓米軍の韓国以外における活動に協力しないどころか、在韓米軍の活動に何らかの制約を加えるようなことがあった場合、米韓対立は深刻化し、最終的には同盟の解消にまで及びかねない。

主敵意識は北朝鮮から日本へ

 文在寅政権発足後、「今の青瓦台が中・長期戦略に基づいて、安全保障政策を推進しているのか疑わしい」との意見をよく聞く。

 しかしながら、中・長期戦略に基づき外交・安全保障政策を推進していないのは文在寅政権だけではない。

 韓国政治は国民感情をあおって政権につき、その国民感情に引きずられ身動きが取れなくなるという傾向がある。

 国防白書における北朝鮮に対する脅威認識も政権によって大きく変化する。

 1990年代までは北朝鮮は「主敵」と表現されていた。金大中政権以後、革新政権では敵という言葉が削除され、保守政権では復活するという状況が継続している。

 文在寅政権が初めて示した2018国防白書では、前回、朴槿恵政権下の2016年版にあった「北韓の政権と軍は我々の敵である」という記述が削除された。

 それに代わって、「主権と領土、国民、財産を威嚇して侵害する勢力を敵と見なす」とする記述が新たに盛り込まれた。

 6隻の国産小型イージス艦の建造に関し、韓国の報道に極めて興味深いものがあった。

 その内容は、「海軍は北朝鮮の脅威だけでなく、中国の北海艦隊、東海艦隊、日本の海上自衛隊の2個護衛艦隊(機動艦隊)による脅威も考慮し、適切に対処できる戦力の整備を進めている」(注:同記事は削除され現在では確認できない)というものであった。

 日韓関係を見た場合、国際観艦式における旭日旗掲揚問題や哨戒機に対する射撃管制レーダー照射問題など、外交関係以上に防衛関係者の相互信頼が低下している。

 竹島領有権に関し対立している日本が「敵」とみなされるのは当然であろう。

すでに日本を敵と見なした装備計画

 令和2年度防衛白書等によれば、韓国軍は総兵力約60万人、陸軍兵力約46万人、戦車等約2800両、海軍艦艇約240隻、25.5万トン、海兵隊約2.9万人、空軍作戦機約620機である。

 北朝鮮という脅威に対し、陸上兵力が中心であり、沿岸防備のため小型艦艇を多く保有するのは国防力整備の観点から当然だ。

 ところが、2008年以降満載排水量1万トンを超えるイージス艦を3隻、2007年に2万トンに近い揚陸艦、『独島』を就役させた。

 これらの海軍兵器は、従来の対北朝鮮用兵器の概念を覆すものであり、どのように運用しようとしているのか疑問を生じさせる。

 日本の防衛関係者の中には「運用構想などない。単に日本が持っているよりも少しでも大きいものを持ちたい、というだけであろう」と述べる者もいたほどである。

 事実、韓国イージス艦の搭載ミサイルは「SM-2」のみであり、弾道ミサイル対処能力は保有していない。

 北朝鮮や中国の弾道ミサイルに対応できないことから、イージス艦の高度な洋上防空能力をどのようなシナリオで運用しようとしているのか不明である。

 米海軍は11隻の原子力空母を保有し、平時から米国国益に係る海域において継続的にプレゼンスを示す任務を果たしている。

 海洋を利用した柔軟な兵力投射能力の中枢としての空母の役割は大きい。

 さらに、空母には海洋権益保護の象徴という側面がある。広い排他的経済水域(EEZ)を保有している米国、フランス、ロシア、英国が空母を保有している。

 2隻目の空母を就役させた中国のEEZは日本よりも小さい。韓国のEEZは周辺海域の約47.5万平方キロに過ぎず、日本の約10分の1である。

 空母を保有しなければならないほど広範囲の海洋権益を持っているとは言えない。

 軍事力の整備にあたっては、一般的に、仮想敵国を想定するものではないとしつつも、具体的脅威に対し備えるのが常識である。

 韓国軍が北朝鮮を想定し、「三軸体系」として「キルチェーン」、「韓国型ミサイル防衛」および「大量反撃報復」能力を整備してきたのは、その観点から説得力を持つものであった。

 韓国の保有する弾道ミサイルの射程が、韓米協定の改定に伴い800キロとされ、西日本が射程内となったが、日本でそのことを危惧する意見も皆無であった。

 しかしながら、米韓同盟の見直しが進み、韓国の安全保障戦略が北朝鮮一辺倒から多極化する過程で、韓国が日本の脅威を強調し、対北戦略として全く不要な小型空母や原子力潜水艦の建造を進めることは、「日本を主敵とした軍事戦略である」と見るのが妥当であろう。

韓国空母機動部隊の能力と狙い

 韓国中央日報によれば、「韓国空母機動部隊は、小型空母、イージス艦2~3隻、小型国産ミニイージス艦2~3隻および原子力潜水艦で構成される」という。

 空母機動部隊の能力は、満載排水量4万5570トンの米強襲揚陸艦(LHA)が「F-35B」を16~20機程度搭載可能であることから、韓国小型空母のF-35B搭載機数は同程度と考えられる。

 カタパルトやスキージャンプ台を装備しない空母の航空機運用能力は低く、同時運用能力は搭載機数の3分の1程度の5~6機とみられる。

 空母防空用のCAP(Combat Air Patrol)所要を考慮すると、対地攻撃や対艦攻撃に充当できるF-35Bは数機になる。

 つまり、韓国の小型空母は攻撃力がきわめて限定的なのである。

 随伴する原子力潜水艦やイージス駆逐艦は、巡航ミサイルによる対地、対艦攻撃能力を保有し、空母の護衛が主任務となる。

 しかし、艦載の早期警戒機を保有しておらず、敵戦闘機情報の入手に欠け、防空能力は限定的である。

 また、随伴駆逐艦、潜水艦および搭載ヘリコプターによる対潜能力を保有する。

 しかしながら、対潜戦の特性上、攻撃を企図する潜水艦を完全に排除することは困難と考えられる。

 韓国空母機動部隊は、北朝鮮のほか、竹島または離於島(イオド)領有権問題対処、さらには将来的にはインド洋までの海上交通線防御を視野に入れているとされている。

 米原子力空母と比較すると、圧倒的に防空能力が低い。このため、味方の航空優勢圏下または航空機による脅威が低い海域で運用すべき兵器といえる。

 日本海、東シナ海および南シナ海は、地上航空機や潜水艦の脅威が高く、空母の航空機を活用するメリットよりも、空母護衛のために兵力を割かなければならないというデメリットの方が大きいと考えられる。

 韓国空母機動部隊は、韓国の威容を日本に見せつけるための空母という位置づけでよいであろう。

突然「敵」になりかねない韓国

 日韓関係は、政治分野のみならず経済、さらには安全保障分野においてもその不信感は拡大の一途を辿っている。

 このようななか、韓国国内では、小型空母保有への反対論もある。

 その主な内容は、韓国が従来の国防装備に加え、小型空母の建造および運用に係る莫大な経費負担、さらには、前述したように、その費用対効果への疑問があるからだ。

 韓国の2020年度国防費は前年比7.4%増の50兆1527億ウォン(約4兆7101億円)である。

 これは、日本の防衛予算5兆3133億円とほぼ同じである。

 今回決定された小型空母やF-35Bの購入を加えると、今後日本を上回るのは確実である。日本と比較するとGDP(国内総生産)が3分の1、国民数が約半分の韓国が日本と同等以上の国防費を支出している計算となる。

 韓国国民は壮大な軍事力整備のために、大きな犠牲を払っているのだ。

 小型空母や原子力潜水艦の建造を決定しても、軍事費の負担に耐えられないなどの状況の変化に応じ、性能低減(スペックダウン)や、運用経費削減のため稼働率が低下することが予想される。

 現時点で、揚陸艦「独島」の稼働率の低さは有名であり、搭載している発電機4機すべてが使用不能となり、洋上を漂流した事故も伝えられている。

 韓国が日本を脅威と捉え、防衛力を整備していくことは韓国の権利であり、これを止める手段はない。

 とはいえ、ここまでして、攻勢的で外洋で戦う準備を進める韓国軍の動きには、注意が必要であり、自衛隊が常時行っている警戒監視活動の対象には韓国を加えるべきである。

 ナポレオンは「真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である」という名言を述べたが、本当に恐れなければならないのは何時敵に転ぶか分からない味方であろう。

 いつ敵に転ぶか、というよりすでに敵になっているとしか思えない対応を、繰り返しているではありませんか。未だ総合的軍事力は限定的だといえ、今後も敵対的政策を演出し国民を扇動すれば、かつての日本のようにメディアがこぞって対日戦を煽り、そのための軍事力の増強にプラスの世論が形成されるでしょう。

 この研究所の報告に出てくる、日本側の見方の甘さが大いに気になるところです。文政権下で仮想敵国は北朝鮮から日本にシフトしているかも知れない、という認識がありません。中国の脅威は計り知れないものがありますが、韓国とて決して侮れないものがあります。徴兵訓練もしていますし、戦時対応も緩み切った日本の国民より、いざとなれば韓国の方が上のような気がします。決して侮るなかれと、気を引き締めておかねばなりません。

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