教育、文化、愚民化

2022年10月 4日 (火)

李相哲氏:現実を直視しない日本が心配だ このままで良いのか?

Images-8_20221004095601  日本に帰化した外国人で、保守の論壇を飾っているジャーナリストや教授はかなりいますが、龍谷大学の李相哲氏もその一人。彼は石平氏と同様中国から日本に帰化した論客です(両親は朝鮮出身の中国移民)。

 その李相哲氏が産経新聞の「正論」に寄稿した記事が、今の日本の実態を反映していると思い、今回取り上げます。タイトルは『現実を直視しない日本が心配だ』で、以下に引用します。

大学教員になってかれこれ25年になるが、学生を叱ったことはない。偉そうに説教するよりは褒めて伸ばすほうが良いと思うのと、学生のメンタルを心配するからだ。話は飛躍しすぎるかもしれないが、日本に対しても私は褒めることはあっても、批判することはあまりしなかった。しかしこのごろの日本が心配になってきた。このままで良いのかと。

つらくても現実は現実

私が留学のため中国から日本にやってきたのは昭和62(1987)年、時の日本はバブルがはじけ始めたころだった。それでもすべてが「世界最高」の国だった。物価も賃金も土地も、家電もエンターテインメントもだ。

日本に来る前に中国で日刊紙記者として働いた私の月給は日本円で3200円(当時の為替レート)、日本では大学生が4時間ほどのアルバイトで稼げる金額だった。ところが35年たったいま、中国のサラリーマンの月給は50倍、業種によっては100倍も上がった。日本といえばほぼ横ばいだ。

日本経済研究センターの予測では、後4年ほどで韓国の1人当たりの名目国内総生産(GDP)は日本を追い越す。世界知的所有権機関(WIPO)によれば2022年の「世界イノベーション指数」で韓国は世界6位とアジアではトップ、情報通信技術インフラや保有する知的財産権の数などで世界首位の評価を得た。

韓国は外見上危なっかしい政治状況に加え、国民は理念や党派で四分五裂し、日々デモに明け暮れる不安定な国に見えるが、勢いがある。韓国ドラマ、映画、音楽はアジアだけでなく世界を席巻している。

私は、学生に対し「1年だけ死ぬほど頑張って、外国語一つでもマスターすれば人生が変わるよ」ということもあるが、「なぜ変えるんですか」と反問される。おそらく多くの日本人は人生を変える必要性を感じないはずだ。その潜在的意識には、日本は永遠に今のように平和で安全、少々努力すれば食うに困ることはない、病気で治療を受けられない心配もない国であり続けるという前提がある。

日本は分岐点に立っている

しかし、ロシアのウクライナ侵略が物語るのは、国際社会はいまなお弱肉強食のジャングルのような世界だということではないか。日本だけが危険にさらされることもなく、いつまでも今のような平和で安全な環境が保障されているとは到底いえない。

日本はさまざまな意味で歴史の分岐点に立っている。住み心地さえよければよいか、国際的地位を維持すべきか。韓国に負けても中国に少々横暴な扱いをされても戦争さえ回避できれば良しとするのか。国家の安全保障、安危を大国に委ねるべきか、自分の国は自分で守り抜く実力を備えるべきかの分岐点に差しかかっている。

李氏朝鮮末期の啓蒙(けいもう)思想家たちは日本の明治維新に倣って朝鮮を改革、開化させようと、日本を訪れては福澤諭吉先生に教えを仰いだ。すると先生は「教育、新聞、軍事」の3つを興せと話されたそうだ。国家の基本はこの3つにあると考えたのだろう。いまの日本もまさにこの3つにメスを入れるべきではないか。

筆者が体感する大学教育の最大の問題は、日本の学生たちは成績をあまり気にしないことだ。いや学生を採用する企業が大学の成績を気にしないことだ。大学教育に期待していないということだろう。ならば大学教育の存在意義をそろそろ考えるべきではないか。

福澤先生の教えにヒント

メディアも同じだ。記者や編集者も専門職というべきだが、メディア企業の多くは大学の専門、成績と関係なく人材を採用する。日本では会社が人を育てるという「良き」伝統があるが、いまは、そのように悠長に構えられる余裕はないはずだ。

グローバル規模で職業の選択が自由になり、会社が優秀で戦力になる人材を育てても、その企業に居続けるとはかぎらない。また国民の平均的な素養に絶大な影響をおよぼすテレビは、お笑いなど「娯楽」に傾倒、「1億総白痴化」を加速させていると指摘されて久しい。

軍事、すなわち安保分野はより深刻だ。まずいまの若者は、国防や国家の安危に責任を感じ、義務を負わなければならないという意識がないようだ。少なくとも自由を謳歌(おうか)するには義務が伴うということを知る必要がある。そのための教育なり制度設計が必要だ。若者が一定期間、国家のために無条件奉仕する制度はどうだろうか。

日本の防衛予算は規模の上で、すでに韓国に追い越されてしまったが、ハード面でも決して優位とは言えない。昨今の日本では研究者が武器の研究を忌避することを良しとする風潮があるからだ。

衰退を食い止め、未来においても住み心地のよい平和で安全な国である続けるためには3つの分野だけ立て直せばよいというものではない。必要なのは現実を直視し、危機感をもって現状を変えるため果敢に挑戦することだろう。

 多くの部分で李氏の見解に賛同します。福沢諭吉の「教育、新聞、軍事」の3つを興せと訓示されたその三つが、今の日本ではアキレス腱になっている実態を、鋭く突いています。またそれ以上に日本人のマインドを変える必要がある、つまり未だにお花畑志向で現実を見ようとしないそのマインドを、根底から覆す必要があると言うことでしょう。

 そしてそれを阻害する要因が、皮肉にも「教育、新聞(今ではテレビを含む)、軍事(憲法と置き換えた方がいい)」にあるのが今の日本です。30年前とはがらりと一変した、日本周辺の安全保障環境の中、李氏の言う「現実を直視しない日本が心配だ」と、真に思います。政府・民間一丸となってここを何とか変えなければ、日本の未来は危ういでしょう。

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2020年10月10日 (土)

「考える力」よりも「従う本能」、愚民化進む日本の姿、どうする日本

20100903_1_20201009161901  最近テレビのニュースによく出てくる、父母による育児放棄や幼児虐待、はたまたSNSに馬鹿な真似をした映像を投稿する若者、騒音おばさんやごみ屋敷おじさんと言う、近隣に迷惑を平気でかける人間、「コロナをばらまくぞ」と言うような、とんでもない発言をする輩や、「誰でもいいから殺したかった」と、のうのうと言い切る殺人犯。いわゆる「愚民化」と言うべき現象が日本を襲っています。

 同時にそのテレビ、お笑い芸人のドタバタバラエティーや、毒にも薬にもならないコメンテーターを、ひな壇に並べた報道ワイドショーが、多くの時間を割いています。小学生の教科書問題を、タレントに必死に解かせるクイズ番組もあります。60年以上も前に、大宅壮一氏がいみじくも喝破していた「一億総白痴化」、それが延々と続いていると言うのでしょうか。ちなみにその時の氏のセリフは、次の通りです。

 テレビに至っては、紙芝居同様、否、紙芝居以下の白痴番組が毎日ずらりと列んでいる。ラジオ、テレビという最も進歩したマスコミ機関によって、『一億白痴化運動』が展開されていると言って好い。(『週刊東京』1957年2月2日号)

 このテレビと言う媒体のみならず、様々な要因が日本の「愚民化」を推し進めているようです。それに関して、少し前になりますが、経営コンサルタントでジャーナリストの立花聡氏が、自身の公式サイトで取り上げています。タイトルは『「考える力」よりも「従う本能」、愚民化進む日本の姿』(1/09)です。

 資料を整理すると、少し前の香港「信報」のコラムが出てきた。その一節を抄訳する――。

 「日本人の若者は、すぐに諦め、投げ出す。最近、多くの日本人は、ものを思考し、主体的に働きかける力を失った。学習でも、『楽な』学習に熱中し、内容が簡単で、分かりやすい、深く考えずに済む書籍を好む。これは、日本人の読解力の衰退を招致する原因である」

 「日本では、お笑い番組をはじめとする民放娯楽番組が人気で、視聴率が高い。日本人視聴者は、知らずに、思考力を奪われていく。頭でものを考えなくなる。『納豆でダイエットできる』やら『朝バナナを食べるとやせる』といったTV番組を見ると、理由も何も考えずに、一斉に真似する」

 合点。思わず膝を打つ。

 日本出張中に、ホテルでテレビを見ていると、番組の平均レベルの低さに驚く。何と言うだろう。ざっと見て面白いものもあるが、見たあと吟味してみて、自分自身のなかに何かが残ったかというと、何もない。お笑いならエンタテイメント、それでいいのかもしれないが、少し真面目な番組でも、キャスターやコメンテーターたちの不勉強ぶりに絶句する。

 人間はついつい楽な方へいく動物である。低俗までいかなくとも視聴者の単なる好奇心を誘う低レベルの番組を、よくもこれだけ作り、公衆の電波を無駄にするものだと感じずにいられない。先進諸国から見ると、日本だけではないかと思う。平均的に格調が低い。勉強にならない。このような番組が氾濫している。日本のテレビ局はそれほどレベルが低いとは私は思わない。視聴者に迎合する。何よりも視聴率至上主義のビジネスモデルは、愚民行為への加担である。

 日本政府の愚民化政策は歴史が長い。戦後の歴史は、いわゆる優秀な官僚に国政運営を任せる歴史である。やがて、日本人の論理的思考力が衰退していく。国民の思想総奴隷化戦略が着々と進められてきた。政治家もマスメディア同様、有権者に迎合する。選挙の街頭演説を聴いていると、美麗字句を並べるだけで実現させる手立てはまったく見えない。

 日本人は洗脳され、「考える力」よりも「従う本能」が見事に育てられた。「正解は1つ」という正解暗記式教育の罪は深い。論理的な思考、ロジカルシンキングとは、何事も「こうなっているのだ」という結果の受け入れではなく、「なぜこうなっているのか」を考えることである。「なぜ」「なぜ」「なぜ」と、3回から5回問い続けることである。

 日本人は優秀な国民だ。世界に誇る技術、品質と文化を創り出した。しかし、日本の教育やメディアは三流以下である。日本国民が苦労して作り出した価値が容赦なく一部の既得権益層に吸い取られている。にもかかわらず、日本人はよくもひたすら忍耐している。

 戦後の日本では、いわゆる「3S政策」(Screen スクリーン=映画鑑賞、Sport スポーツ=プロスポーツ観戦、Sex セックス=性産業)という愚民政策を用いて大衆の関心を政治に向けさせないようにしてきたといわれている。定かな説ではないが、結果的に奏功したといえる。

 「学習でも、『楽な』学習に熱中し、内容が簡単で、分かりやすい、深く考えずに済む書籍を好む」。これは事実そのままである。「この一冊を読めばすべてが分かる」「漫画で読む分かりやすい○○××」類の本が氾濫し、思考力や洞察力を身につける「Know-Why」型本よりも、実務指導の「Know-How」型本が売れる。言ったらキリがない。

 先日、某社会科学系の学会に出たら、某大学の教授が「日本企業の組織文化を海外現地法人に浸透させるための研究」を発表したのをみて、絶句した。日本企業がいつの間にか布教する宗教組織になったのだろうか。目的と手段の倒錯がいよいよクレイジーの段階に至っている。しかも、学問の世界で……。こういう国は衰退しないほうがおかしい。

 日本政府が愚民化を推進したという部分は、納得がいかない部分もありますが、確かに教育の部分では文部省(現文部科学省)が推し進めた、学校での記憶中心の授業は、「考える力」を育てませんでしたね。

Images_20201009162001  戦前の授業をよく知らないので、はっきり言えないのですが、戦後GHQによる公職追放の反動としての、教育界の左急旋回と、その左側で組織化された日教組による教育が、文科省の教育政策をそのようにしたのではないでしょうか。つまりGHQによる日本弱体化のための愚民化の押し付けです。真っ赤に染まった文系大学教授の世界はイデオロギー論争に明け暮れ、それ自体が共産主義思想の受け売りでコップの中の争い。新たな考えの構築からは程遠い存在でした。その負の部分が今の学術会議に受け継がれているのでしょう。 日本の保守層が率先してそうしたとはとても思えません。

 他の部分では立花氏のこのコラムは、総じて日本の「愚民化」の実態を言い当てていると思います。テレビの番組や若者の行動については完全に同意します。

 そして冒頭述べたいくつかの例も、「考える力」の欠如、少し考えれば、それが道理に合わないバカげたことだと分るはずです。つまり自分の言動を制御できない、頭がすっからかんの人間が増えてきていると言うことです。ただこの人たちが「従う本能」を持っているかと言うとそうでもない。「法」に従う、「常識」や「道理」に従う。それが出来ていないのです。つまり「考える力」もなければ「従う本能」もない、そういった人間たちです。

 ですから「考える力」だけでなく、よく考えた上でそうした方がいいと判断すれば、それに従う。そうした一連の思考行動がとれる人間に育て上げる必要があると言うことです。

 これから教育される子供たちは、そうした教育課程の改定で、立花氏が目指す人に育つ可能性がありますが、それが身につかず大人になってしまった人をどうするのか。どうしようもないと諦めるのかどうか、それが大きな課題ですね。

 やはり残念ながら日本は衰退していくしかないのでしょうか。GHQ、そして今では中国の思惑通りの展開になっているのでしょうか。そうならないようにそれこそみんなで真剣に考える必要がありますね。

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