創作と現実

2020年10月 9日 (金)

韓国映画「愛の不時着」は夢物語、「境界線越えれば死」が現実

Pyh2020100304880006500_p2  「愛の不時着」という韓国ドラマが、日本でもヒットしたようです。私は見ていませんが、ウィキペディアによると、「ある日、パラグライダーに乗っていた韓国財閥令嬢が、突然竜巻に巻き込まれ非武装地帯(DMZ)を越境して北朝鮮に不時着してしまい、北朝鮮の軍人に救助されて恋するというラブストーリー」だそうです。

 全くあり得ないようなこの設定、ドラマですから何でもありですが、聖学院大学政治経済学部教授の宮本悟氏によれば、少し前に発生した、「韓国公務員が北朝鮮側に漂流して射殺された事件」と対比して、完全な「夢物語」だといいます。日経ビジネスに寄稿した宮本氏のコラムにその詳細が語られます。タイトルは『「愛の不時着」は夢物語、「境界線越えれば死」が現実』(10/08)で、以下に引用します。

 9月21日に黄海での作業中に行方不明になっていた韓国海洋水産部の公務員が、北側に漂流して9月22日に北朝鮮の軍隊に射殺された。この問題が韓国を騒がせている。その間に、朝鮮労働党中央委員会統一戦線部が、通知文を韓国側に送ってきた。その中に、金正恩(キム・ジョンウン)の謝罪の意が入っていたことも話題になっている。

 通知文にある金正恩の謝罪の意は、以下のようなものであった。「国務委員長・金正恩同志は、ただでさえ悪性ウイルス病魔の脅威に苦しむ南の同胞に助けどころか、我が方水域で予想外の不始末が発生して、文在寅大統領と南側の同胞に大きな失望感を与えたことについて大変申し訳なく思っていることを伝えろと言いました」という内容である。

 韓国政府は、金正恩の謝罪の意を異例のものと説明したが、韓国世論の怒りが収まる気配はない。北朝鮮側は否定しているが、北朝鮮が死体を焼いたと韓国国防部が発表したこともさらに韓国世論の怒りをたきつけたようである。もちろん、朝鮮労働党中央委統一戦線部の通知文を謝罪として受け止めて、すべてを終わらせるかは韓国政府次第である。それに金正恩が謝罪の意を示したからといって、南北朝鮮の現実が何か変わるわけではない。

北朝鮮に「犯人」は存在しない

 南北朝鮮は戦争中であるから、現実的な目で見れば、韓国人が北朝鮮に侵入したら即時に殺される可能性は十分にあると認識しておいた方がよい。もちろん、これは韓国に勝手に侵入した北朝鮮人も同じである。1953年の朝鮮戦争停戦以来、北朝鮮は数多くの韓国人を殺害してきたし、それと同様に韓国も数多くの北朝鮮人を殺害してきた。

4_20201008150101  南北朝鮮の境界線は、国境ではなく軍事境界線である。南北朝鮮は他国ではなく、一つの国家において内戦を戦っているのだ。境界線を越えたとき、愛の力でわざわざ命をかけてかくまってくれるなんて期待できるものではない。韓国ドラマ「愛の不時着」はあくまで脚本家たちによる夢物語であって現実には存在しない話である。

 北朝鮮では、今回の韓国公務員殺害を違法行為とは考えていない。これは正当な手順に基づいた行為としている。党中央委統一戦線部が送ってきた通知文では、「海上警戒勤務規定が承認した行動準則に基づいて10余発の銃弾を不法侵入者に向かって射撃した」ということである。つまり、軍人たちは規定通りに行動したことになっている。事件が明るみに出ると、韓国大統領府は北朝鮮に犯人を捜すよう求めると語っていたが、北朝鮮ではそもそも犯人が存在しないのである。

 ただ、北朝鮮は、これ以上に緊張が高まることを防ぎたかったのであろう。現在、北朝鮮は台風による大きな被害を受けて、復興に力を入れている最中である。夏までは、韓国に対する怒りから強気に出ることができたが、今はこれ以上、緊張関係をつくりたくないであろう。そのために、朝鮮労働党中央委統一戦線部が通知文を送って、金正恩の謝罪の意も含めたと考えられる。それに、朝鮮労働党中央委統一戦線部は、もともと対南政策を担当するのが仕事であるので、韓国と対立したいわけではない。

実は初めてではない、北朝鮮指導者の謝罪

 韓国大統領府は金正恩の謝罪の意が異例と言っていたが、北朝鮮の最高指導者が、南側との衝突事件で謝罪の意を示したのは金正恩が初めてではない。北朝鮮の最高指導者が南側(米韓)に謝罪したことは、これまで3回あった。1回目は、韓国大統領・朴正煕(パク・チョンヒ)の暗殺未遂である青瓦台襲撃事件に対してである。1968年1月21日に発生した青瓦台襲撃事件について、訪朝した李厚洛・韓国中央情報部部長に対して、初代の最高指導者であった金日成(キム・イルソン)が1972年5月4日に謝罪の意を示した。

 2回目は、同じ事件に対して、2代目の最高指導者である金正日(キム・ジョンイル)が、韓国の当時の政党である韓国未来連合の代表として訪朝した朴槿恵(パク・クネ、朴正煕の娘、後の大統領)に対して、2002年5月13日に謝罪の意を示したことである。

 3回目は、1976年8月18日に在韓米軍将校2人が北朝鮮兵に殺されたポプラ事件についてだ。事件発生から3日たった21日に金日成が、板門店の停戦委員会朝鮮人民軍代表を通じて口頭メッセージで国連軍司令官に謝罪の意を示した。ただし、相手は国連軍司令官であるから、南側と言っても韓国に謝罪の意を示したわけではない。

韓国軍兵士が、境界線を越えて北朝鮮兵士を殺害したことも

 最高指導者でなければ、他にも北側が南側に謝罪の意を示した例はいくつかある。反対に、南側に侵入した北朝鮮人を韓国軍が射殺しても、韓国大統領が謝罪したことはない。

 筆者が韓国に住んでいた1997年、9月9日の朝に北朝鮮の軍人1人が南側に侵入して南側の見張り所の約50m先まで近づいたところ、韓国軍兵士2人が十数発を発射して殺害したことがあった。この事件は、韓国社会ではもう忘れ去られている。もちろん、それまでも軍事境界線より南側に入った北朝鮮軍人が問答無用で射殺された例は枚挙にいとまがない。軍事境界線では、侵入者の射殺はささいな事件なのである。

 韓国軍人が北側に入って、北朝鮮の軍人たちを殺害したことすらあった。60年代末のことである。韓国軍の防諜(ぼうちょう)部隊が北朝鮮に対する報復として、軍事境界線を越えて北朝鮮に入り、北朝鮮の軍人たち33人を殺害した。しかし、韓国大統領が、その事件を北朝鮮の最高指導者に謝罪したという話は寡聞にして知らない。

南北どちらに非があるかの議論は無意味

 南北朝鮮の小規模な衝突事件で、どちらが悪いとか良いとか議論するのは、南北朝鮮がお互いを批判するための材料にしかならない。日本は無関係である。韓国では韓国側が正しいというし、北朝鮮では北朝鮮側が正しいというだろう。今回の朝鮮労働党中央委員会統一戦線部の通知文も、全般的に判断すれば、北朝鮮側が全面的に非を認めたわけではない。

 少なくとも日本で、南北朝鮮のどちらに非があるかを議論することはあまり意味がないだろう。だが、南北朝鮮は内戦中である。これをよく理解しておく必要がある。いかなる理由があれ、韓国から北朝鮮に渡れば、そこは、発見されたとたんに問答無用で殺される危険がある場所なのだということを知っておいてもらいたい。「愛の不時着」を見て感動し、現実と夢物語の区別がついていない人たちには、強く言っておきたい。

 アニメやロールプレイングゲームの世界であれば、非現実と割り切っても、映画やドラマでは現実と錯覚する人もいるでしょう。日本の映画監督の中には、その錯覚を狙っている人もいるようです。むしろ「洗脳」狙いと言った方がいいかも知れません。

 それはさておき、この映画を見ていないので詳細は分かりませんが、敵対する国、しかも停戦中とはいえ、偶然出会った交戦国同士の男女の恋愛は、現実的にはあり得ないでしょう。しかしそれをあえてストーリーにすることによって、古くはロミオとジュリエットの世界のように、共感を呼びやすいのでしょう。

 ことに日本人は、とりわけ75年間も戦争体験がないので、この映画の背景にある交戦国同士の男女と言う立場が、身に迫って来ることがなく、恐らくロミオとジュリエットのように、家同士の敵対関係くらいにしか見えてこないのかも知れません。

 文在寅政権が如何に親北政策を遂行しようとも、両国の軍事の現場では凄まじいつばぜり合いがあり、また北朝鮮もピョンヤンから一歩外を出れば、そこは毛沢東時代の中国同様、貧困と混乱の地獄のような世界に違いありません。映画の世界とは全く違う現実がそこにあるのです。

 そして映画を楽しむのはいいけれども、日本と言う国は、南北朝鮮だけではなく、中国、ロシアと言う、周りを独裁的な国家統治の国に囲まれているのだから、しっかり自己防衛をしておかないと、やがてはその統治の毒牙にかかることになるのだという、認識を持つ必要があります。

 それと同時に日本以外では戦後においても 、朝鮮戦争やベトナム戦争、中東戦争の他、アルゼンチン、アフガニスタン、イラク、イエメン、スーダン、ウクライナなどの各地で紛争が相次いでいます。内戦もアフリカ諸国を中心に各地で発生しています。決して日本だけが紛争に巻き込まれないとは限りません。そのとき9条など何の役にも立ちません。自衛隊や米軍に防衛を依拠するにしても、最低限の国防意識は絶対に必要です。

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