政治、経済

2022年1月29日 (土)

中国経済が直面する“三重苦”、ゼロコロナ政策とオリンピックと政治イヤーが目下の要因

K10013443651_2201241449_2201241449_01_02  北京五輪の開幕(開会式)が1週間後に迫る中、ゼロコロナを推進する中国では、ロックダウンや外出禁止、都市ぐるみのPCR検査など、感染撲滅に躍起となっています。

 しかしこうした徹底的な人流抑制は、当然経済には大きなダメージとなって跳ね返ってきます。加えて今年秋には、習近平政権が3期目に突入するための、共産党大会が予定されていて、国内の無用な混乱を抑えるために、ますます経済への悪い影響は出てくるでしょう。

 そう言った中国経済の現状を、各地で取材した記事を元にした、NHKWEB「ビジネス特集」から見てみましょう。タイトルは『中国経済が直面する“三重苦” 世界最大のリスクに?』(1/24)で以下に引用します。

 ◇

「売り上げがまったくない状態が続き、家賃を支払うには貯金を取り崩すしかない」

こう嘆くのは中国・広東省にあるレストランの経営者です。

中国政府は、コロナ対策と経済回復で世界の先頭に立っていると強調しますが、同時に、経済が“三重苦”に直面していることを認めています。

世界経済の最大のリスクになる可能性まで指摘される中国経済。

各地を取材すると、V字回復から一転して減速が続く今の課題が浮き彫りになってきました。(中国取材班)

***********

  • 三重苦その1「需要の収縮」

冒頭のレストランが苦境に陥ったきっかけは、12月、店がある広東省東莞で新型コロナウイルスの感染が発生したことでした。

感染者数は26人でしたが、感染者が出た行政区の約80万人が区の外に出ることを禁じられました。

中には封鎖された地区もあり、周辺の店は開店休業の状態が続いて、外出制限が1月5日に解除されたあとも客足は戻っていません。

理髪店の店員は「町にまったく人がいない。店を改修したばかりなのに、商売にならない」とこぼします。

徹底した感染対策で人の移動が制限され、消費が停滞する。

それが三重苦の1つ目、「需要の収縮」につながっているのです。

“ゼロコロナ”が景気には逆効果

感染を徹底して抑え込もうというゼロコロナ政策で、中国では、コロナ禍からの景気回復がいち早く進んできました。

しかし今、あまりに厳しい対策が景気に逆効果をもたらしています。

内陸部の陝西省・西安では、12月に約200人の感染者が確認された段階で、約1300万人に上る全市民を対象に厳しい外出制限が実施されました。

市民は原則として自宅にとどまるよう求められ、各家庭1人に限り、2日に1回の食料品などの買い出しだけが認められました。

首都・北京では、1月中旬にオミクロン株の感染が確認されると、感染者の14日間の行動履歴が事細かく公表され、同じ店に立ち寄った人は当局に報告することが求められました。

立ち寄り先のショッピングセンターでは、どのエレベーターに乗ったかまで公表されたほどです。

オリンピックも重荷に?

北京では冬のオリンピック・パラリンピックが間近に迫り、何としても大会を成功させたい政府は、感染状況に神経をとがらせています。

中国では旧正月にあたる春節にあわせた連休が1月31日から始まりますが、感染拡大を防ぐため各地の当局は「今生活している場所で年越しを」と呼びかけています。

オリンピックの開催を意識した行動制限ですが、景気の重荷になることが懸念されています。

  • 三重苦その2「供給面の打撃」

こうした需要=消費の停滞に加えて、三重苦の2つ目になっているのが「供給のダメージ」です。

供給=企業の生産を苦しめているのは何なのか。

取材したのは広東省東莞の靴の素材メーカーです。

海外の有名ブランドなどに靴のかかとやつま先に入れる芯などを出荷していますが、原材料価格の高騰が経営を圧迫しています。

さらに、輸出向けの物流が混乱している影響で物流コストも2倍近くに膨らんでいるといいます。

靴の素材メーカー 何家明社長

「消費の低迷に加えて感染拡大が繰り返し起こる状況で、経営環境は厳しい」

感染していなくても隔離

では、物流網の混乱はなぜ起きているのか。

欧米や日本などとの間での貨物を取り扱う日系の物流会社を取材すると、ここでも、厳しいゼロコロナ政策が要因の1つになっていることがわかりました。

この会社では、空港では海外から配送された貨物を防護服着用の作業員が1つ1つ念入りに消毒しています。

また、消毒される前の貨物を扱う従業員は、勤務にあたる2週間、指定の宿泊施設と現場との間を専用車両で移動する以外、原則外出は認められないということです。

その後1週間は宿泊施設の部屋で隔離となり、さらに1週間、自宅で経過観察をし、そして、再び空港での勤務に戻るという働き方が続いています。

こうした対策によって人手の確保が課題になっているほか、消毒作業などで上海での航空貨物の輸入には1か月あたり日本円で約3000万円の追加コストがかかっているといいます。

さらに、12月にコンテナの取扱量で世界3位の港がある浙江省・寧波で感染が発生した際には、港に出入りするトラックの運転手は陰性証明の提示が必要になるなど、管理が厳しくなり、貨物の運搬に大きな影響が出ました。

港がある都市で感染が広がるたびに対策が厳しくなることが、結果として、世界的なコンテナ不足を背景に高騰している貨物の運賃をさらに押し上げる原因にもなっています。

NX国際物流(中国)廣田靖経営戦略本部長

「ゼロコロナで安心安全を確保できるものの、あまりに対策が徹底しているところがあります。サプライチェーン(供給網)は守り抜いていきますが、コストと時間はかかるため、顧客には理解していただきたいです」

  • 三重苦その3「期待の低下」

中国経済を取り巻く“三重苦”。

その3つ目が「先行きへの期待の低下」です。

取材に向かったのは、「家具の都」とも呼ばれる、広東省仏山の家具業者が集積する地区です。

大通りの両側に3キロ以上にわたってずらっと家具業者が並び、販売店の数は3000以上。

店舗面積は合わせて300万平方メートルと、東京ドーム64個分にも及びます。

旧正月直前のこの時期は、本来、1年で最も忙しいといいます。

しかし、客の姿はまばらでした。

店員に聞くと「この1週間何も売れていないよ」といった声も。

「家具の都」を直撃する不動産市況

「家具の都」に影を落としているのが、マンションなどの不動産市況の悪化です。

「恒大グループ」の経営危機に象徴されるように、今、中国の不動産業界は開発や販売が減少しています。

12月までの3か月間に全土で販売された不動産の面積は前年同期比で約16%減少。

それが、家具などの住宅用品や建築資材といった関連産業への打撃になっているのです。

コロナ前と比べて売り上げが3分の1ほどに落ち込んでいるという店の経営者の男性は、「マンションが売れていないのだから家具を買う人もいない。今は以前稼いでためたお金を取り崩して耐えているけれど、それがなくなったら田舎に帰って農業をするしかない」と嘆いていました。

中国の不動産業界は関連産業も含めるとGDPの4分の1ほどを占めるとも試算されるほどすそ野が広い産業です。

その業界の不透明感が企業や人々にのしかかり、先行きへの期待を低下させているのです。

“政治イヤー”で危機感も

こうした現状に中国政府は危機感を募らせています。

それを裏付けるように、中国人民銀行は2か月連続で事実上の政策金利の引き下げに踏み切りました。

背景にあるのは、ことしが中国にとって重要な“政治イヤー”だという点です。

習近平国家主席が3期目以降の続投をにらむ、5年に1度の共産党大会が年後半に予定されているのです。

過去に共産党大会が開かれた年は成長が加速する傾向にあり、専門家の間では、政策によって景気が下支えされるという見方が広がっています。

一方で、そこには苦しさも透けて見えます。

大事な年だからこそコロナ対策で失敗するわけにはいかない、つまりゼロコロナの旗を降ろしにくい状況があるのです。

厳しい感染対策は今後も繰り返され、消費回復の足を引っ張る懸念があります。

また、政府は不動産市況の悪化につながっていた不動産企業への規制をやや緩和させる姿勢を示していますが、バブルを防ぐという目的からすると、大きな方針転換はしにくい事情もあります。

アメリカの調査会社「ユーラシア・グループ」は、ことしの最大のリスクとして、中国のゼロコロナ政策が失敗し、世界経済が混乱する可能性を指摘しています。

中国政府は、ことしの経済運営の方針として「安定最優先」を掲げていますが、難しいかじ取りを迫られていると思います。

 

 中国は早晩人口減少社会が訪れます。いや、もう既に減少が始まっているかも知れません。それに先んじて労働力人口も減少に転じていて、日本の後を確実に追いかけてくるでしょう。そして韓国同様、この先日本よりそのスピードは確実に高くなることが予想されます。

 それによって生じる経済のダメージは、日本で既に実証済みです。この人口減少は目先の「ゼロコロナ政策」や「政治イヤー」とは違って、ボデーブローのように将来へ向けて効いてきます。その入り口にさしかかったと言っていいでしょう。

 おそらく今年は、中国経済の大きな転換点になると言っていいでしょう。そして習近平政権の経済政策の失政が、この先も続くことになれば、経済の失速は加速される可能性は十分あります。経済が下り坂になれば、共産党への国民の信頼は揺らぎ、習近平体制への大きなリスクとなるでしょう。世界経済への影響は甚大ですが、権威主義国家の弱体化につながることになれば、日本を含む民主国家群にとって今世紀最大の朗報となるでしょう。

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2021年11月 7日 (日)

政治は国力低下に歯止めをかけ、強い日本を蘇らせよう

20200313231606  日本では「失われた20年」という言葉が言われて久しくなりました。その後も、アベノミクスで多少は持ち直しましたが、根本的には解決できず低迷は続き、更に「失われた30年」と言われ始めています。このままでは「失われた40年」や「失われた50年」というのもあり得ないことではないでしょう。

 この経済低迷と国民の所得停滞には、様々な要因があるでしょう。少子化に伴う労働力人口の減少と国民負担を増大させる高齢者の増大、神戸淡路大震災や東日本大震災、それに毎年発生する大洪水などの大災害の影響、国際的なエネルギー価格の高騰など、いくつかあげられるでしょうが、しかし大きな要素として、政治の力不足というのもあげられるのではないでしょうか。

 自然災害は別にして、研究開発力やイノベーション力の世界での相対的低下も、また少子化や為替の意図的な変動などでさえも、政治の不作為と関連しています。

 高齢化に伴って不可欠の社会福祉支出など、分配を増やすためには、その原資を稼ぐ経済成長は欠かせません。この経済成長を力強く推進するためには、今までにない政治の力が必要です。これについて今回は、産経新聞編集委員の田村秀男氏のコラムを取り上げます。タイトルは『政治は国力低下に歯止めをかけよ』(11/6)で以下に引用します。

 ◇

経済成長こそが国力と経済安全保障を支える。先の衆院選では、与野党とも「分配優先」論に流されがちで、成長も経済安保も論議が極めて低調だったのは政治の怠慢である。

■ □ ■

四半世紀もの間、デフレが続く日本では企業が設備投資や雇用を抑え、債務を減らす。健全な経済では、家計の金融資産は企業と政府の負債が増えることで増えるが、日本はそうならない。

デフレの始まった1997年度末に比べた2021年6月末の部門別の金融純資産・純負債の増加額は家計純資産758兆円、一般政府純負債567兆円、対外純資産261兆円である。われわれの懐具合にかかわる名目国内総生産(GDP)は2020年度、1997年度に比べて5・8兆円以上も減った。

モノ需要不振の国内で行き場のないカネが、ニューヨーク・ウォール街に代表される強欲な国際金融資本と国際金融資本が仲介する低金利のドル資金を食っては肥える共産党独裁の中国を喜ばすという構図は、新型コロナウイルス禍でますますひどくなっている。

2020年度は新型コロナ・パンデミックによる打撃が世界の主要国のうち日本がもっともひどく、さらに21年になってもコロナ不況から抜け出せないのは、デフレ圧力が強いためである。経済のパイが縮んでいる中で、所得格差が広がる。金融資産課税を強化して低所得層に再分配せよとは言うは易(やす)しだが、株式をもつ中間層や年金世代も痛めつけられる。

そんな様で、経済安全保障と不可分である国力はどうなっているのか。国力を経済力と言い換えると、主要な構成要素はGDPと並んで対外購買力が挙げられる。各国通貨の対外購買力を表すのが実質実効相場と呼ばれる指標である。

通貨の相場を一定とすれば、実質実効相場は主要貿易相手国との物価、賃金、さらに名目GDPの増減率の差で上下する。円高の度合い以上に物価、賃金や名目GDPが下がると実質実効相場は低下するし、円安と物価、賃金、名目GDPの伸び率がゼロ%以下なら、実質実効相場は円安分だけ落ち込み、日本の対外購買力の低下と国民貧困化が同時進行する。経済協力開発機構(OECD、本部パリ)統計の円の実質実効相場指標をみると、2021年9月は消費者物価ベースで1977年初め、賃金ベースでは1974年初めの水準にまで落ち込んだが、まだ底が見えない。

■ □ ■

Photo_20211106155801 グラフは世界の中央銀行で構成される国際決済銀行(BIS、本部スイス・バーゼル)の統計が示す日本、米国、中国の実質実効為替レートと各国通貨建ての名目GDPを指数化し、円の対ドル相場を組み合わせている。指数は日本のデフレ元年の1997年を100とした。

実質実効相場と名目GDPともめざましい増勢基調を保ってきたのは中国だ。人民元の対ドル相場を人為的に安定させて外国からの直接投資と輸出を増やす基本政策のもとで、2008年9月のリーマン・ショック以降は固定資産投資を急増させる。消費者物価上昇率を穏当な水準で保つことにより、名目GDPを膨張させてきた。2020年は1997年に比べ、名目GDPは12・7倍、実質実効相場が28・7%上昇した。

対極にあるのが日本である。それぞれ0・9%減、29・2%減。この間の日中のギャップは実質実効相場では57ポイントにもなる。中国はドル・ベースでみた名目GDPは1997年に日本の21%だったが、今や約3倍になる。しかも対外購買力を日本に比べて5割以上高めた。中国にとってみれば日本のモノ、技術、人材、中小企業、東京都心の不動産や北海道などの山林原野に至るまですべてが安いということになる。しかも、中国市場の巨大化につられた日米欧の企業が先端技術を中国に持ち込み、投資する。中国は軍事に限らず、経済安全保障という観点に立てば日本を圧倒する勢いだ。

他方で、米国は名目GDPを2・4倍とし、ドルの実質実効相場水準の安定を保っている。中国の脅威増大の現実からすれば、同盟国日本の国力衰退は覇権国米国にとって痛いはずだ。しかし、デフレ日本のカネ余りが米国の金融市場を支えている。米国が日本に脱デフレ圧力をかけてこなかった背景がそれだ。

日本みずから経済安保強化と、国力低下に歯止めをかける決意が問われよう。

 ◇

Photo_20211106155901  自民党政調会長の高市早苗氏が、自民党総裁選に先駆けて「日本経済強靱化計画」(このブログでも紹介)を発表していますが、その政策を是非実行して欲しいと思います。今や戦後は終わって、謝罪外交やそれに伴う賠償政策は終息しました。まだ騒いでいる国はありますが、これからはひとえに国力を増すための経済政策と、防衛政策を第一優先にしなければなりません。

 幸い、何でも反対の左向き野党は今回の衆議院選で議席を減らしました。中道の野党と連携しながら、日本国民のために国力増強に政治が一丸となって、突き進むことを期待します。

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2021年11月 1日 (月)

台湾の半導体大手TSMCを招致した真の理由は?

25 昨日の衆議院選挙の結果は、事前の予測に反して野党の選挙協力が不発で、立憲民主、共産党共に議席数を減らしたのが印象的でした。自民党も議席を減らしましたが、絶対安定多数は確保し、今後の政権運営には支障がないことになりました。

 是々非々で憲法改正にも前向きな野党、維新が躍進したのと、国民民主も現有議席を伸ばし、何でも反対の野党勢力が減退したのは、日本政治にとって朗報です。国民が賢明の選択をしたと思います。

 話は変わりますが、日本の半導体は、1980年代の世界制覇状態から現在はシェアを大きく奪われ、無残な姿に陥っています。そうした中、台湾の大手半導体メーカーTSMCを日本に招致する話が浮上し、熊本県に建設するという計画が明らかになりました。

 日本がなぜ、日本の半導体メーカーの増設ではなしにTSMCの招致にしたのか、またなぜTSMCが日本に進出しようとしたのか。そのあたりの事情を、日経BP記者を経て現在はコンサルタントと執筆活動を行っている加谷珪一氏が現代ビジネスに寄稿したコラムから紐解きます。タイトルは『経産省が、台湾の半導体大手TSMCに「日本での工場建設」を"懇願"してきたワケ 追い込まれる日本』(10/27)です。

 ◇

半導体受託生産(ファウンドリー)の世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)が日本では初となる工場を熊本県に建設する計画を明らかにした。なぜ日本メーカーではなく、台湾メーカーがわざわざ日本国内に工場を建設するのだろうか。

経産省の根本的な戦略転換

TSMCは世界各国の半導体メーカーから半導体の製造を受託している。半導体産業は水平分業化が進んでおり、工場を持たずに半導体の設計に特化する企業(ファブレス企業)と、ファブレス企業から製造を請け負う企業との間で明確な役割分担が出来上がっている。画像処理やAI(人工知能)チップを手がける米エヌビディアやスマホ向け半導体を開発する米クアルコムなどは典型的なファブレス・メーカーで、自ら製造は行わない。

世界最大の半導体メーカーである米インテルは、製品の開発から製造まで一貫して行っているが、多くのメーカーが生産を外部に委託するようになっており、中でもTSMCは世界シェアの半分を占めるなど突出した存在である。米アップルのiPhoneに搭載されているチップの製造を同社が一手に引き受けるなど、ファウンドリー企業がなければ、世界の半導体産業は回らないという状況になっている。

日本の半導体産業は致命的な戦略ミスが続き、ほぼ壊滅状態となっており、製造技術という点でもすでに台湾勢に先を越されている。経済産業省は「日の丸半導体」の復活を掲げ、巨額の税金を投入して支援を続けてきたが、ほとんど効果を発揮しなかった。

日本メーカーの完全敗北という現実を前に、同省はようやく現実に気付き、半導体メーカーを復活させるのではなく、半導体メーカーに部材や製造装置などを提供する国内メーカーが存続できるよう支援するという現実的戦略に切り替えた。そこで同省が秋波を送ったのが世界最大手のTSMCである。

同省はTSMCに日本国内に製造拠点を作ってもらえるよう要請を繰り返したが、話は簡単には進まなかった。台湾は半導体産業が高度に集約しており、高い技術を必要とする最先端プロセスの工場は台湾に建設した方がよいに決まっている。日本に最先端プロセスの工場を建設すれば、台湾から日本に技術が流出する可能性もあるので、当然、TSMC側は警戒する(一昔前までは、日本が海外に進出する際、技術が流出するのではないかと懸念する声が上がっていたが、今や状況は完全に逆転した)。

一方でファウンドリー企業は、それほど高い技術を要しない旧世代のプロセスについても、製品ニーズがある限り、製造拠点を維持する必要がある。旧世代のプロセスを用いた工場を誘致するという選択肢もあるが、こうした製造拠点はコスト要求が厳しいので、日本は適地とは言えない。日本は中国や米国などと比較すると半導体の購入額が小さく、TSMCにとって大口顧客とは言えず、専用に工場を建設するインセンティブが小さいというのが現実だ。

米中対立が風向きを変えた

一時はTSMCの日本誘致は暗礁に乗り上げたと見られていたが、思わぬ神風が吹いた。コロナ危機をきっかけとした全世界的な半導体不足と米中対立による経済安全保障である。

コロナ危機の発生でテレワークが普及したことで、全世界的にパソコンなどの需要が急拡大した。加えて、コロナ後の社会ではビジネスのIT化が急激に進むとの予想から、各国企業がIT投資を加速。その結果、全世界的に半導体が極度の品薄になるという異常事態が発生した。

しかも米国は安全保障の観点から、米国内に半導体工場を積極的に建設するようTSMCに要請を行っている。現時点において、全世界における半導体製造の約7割が台湾で行われており、台湾海峡で有事が発生した際には、半導体のサプライチェーンに深刻な影響が及ぶのは確実である。

米国はリスク分散を図る必要があり、一連の事情に配慮したTSMCは米国アリゾナ州に最先端プロセスの工場建設を決めた。経済産業省はこうした動きをうまく利用し、TSMCに対して日本進出を再度要請。とうとうTSMC側が了承し、今回の発表となった。

もっとも米国とは異なり、日本はTSMCにとって大口顧客ではないため、日本側からの一方的な「お願い」にならざるを得ない。同社が日本に建設するのは、回路線幅が22ナノメートルと28ナノメートルの製造ラインで、一世代前の古い技術である。加えて日本政府は、TSMCに対してかなりの支援を行うとみられ、岸田政権は2021年度補正予算に同社への支援を念頭に数千億円の予算を確保する。

今回の工場建設には政府が支援すると同時に、ソニーやデンソーも出資することが決まっている。新工場はソニーの半導体製造拠点の近くに建設される予定で、新工場で製造された半導体はソニーやデンソーなど国内メーカーが購入すると思われる。TSMCにしてみれば、巨額の建設資金について支援を受けることができ、古い技術であることから日本に技術が流出する心配がなく、しかも製品を買ってくれる相手が最初から決まっているという破格の好条件といってよいだろう。

日本の現実を考えると妥当な選択

今回の工場誘致については、日本の半導体産業の復活にはつながらない、投入する税金の割に効果が少ない、といった批判の声も上がっている。確かに外国メーカーに多額の資金を税金から供与するというのは、あまりにもお人好し過ぎるとの意見が出るのはやむを得ない。だが、今回の決断はギリギリ妥当なものであると筆者は考えている。

国内では半導体産業の復活を願う声がいまだに存在しているが、現実問題としてそれは不可能である。高付加価値な半導体の設計では圧倒的に欧米企業が強く、チップの製造においては台湾勢や韓国勢が突出している。日本メーカーはどちらの分野においても太刀打ちできる状況ではなく、日本はこの現実を受け入れる必要がある。

国内に工場を誘致して雇用を生み出し、そこで製造される製品を国内企業が利用するというのは、典型的な発展途上国の産業政策であり、こうしたやり方について快く思わない人もいるだろう。だが、国際競争力を著しく失った今の日本の半導体産業にとって、もはや残された選択肢は少ない。

ワクチンの確保でもそうだったが、日本は世界に対して完全に買い負け状態となっており、国内では多くの製品が手に入りにくい状況となっている。カーナビやプリンターはずっと品切れが続いているし、自動車も一部のモデルでは納車が半年待ちである。このままでは日本は常にモノ不足に悩まされる国に成り下がってしまうだろう。

労働者の賃金という点でもメリットが大きい。本来であれば、サービス産業の付加価値を上げ、平均賃金を引き上げる必要があるが、それには時間がかかる。現時点では製造業とサービス業には大きな賃金差があり、地方にとって工場が建設されることは、賃金が大きく上昇することを意味している。

半導体の工場に部材や検査装置を納入するメーカーにとっても朗報となる。同じ縁の下の力持ちといっても、東京エレクトロンなどトップメーカーは、半導体がどこで製造されようが製品を輸出できる。だが中堅以下のメーカーの場合、国内に工場がなければビジネスを継続できないというケースが出てくる可能性が高い。とりあえず外資で古いプロセスとはいえ、国内に工場が存続することはそれなりの時間稼ぎになる。

もっとも、こうした戦略はあくまでも暫定的な措置であり、これで日本の産業が本格的に復活するわけではない。日本は国内消費市場を活用した内需拡大で成長すべきであり、半導体企業の誘致は、それまでの現実解であるとの割り切りが必要だ。

 ◇

 記事中TSMCの誘致は「典型的な発展途上国の産業政策」とありますが、いつまでも先進国の奢りを持っていては、ワクチン同様、第2、第3の半導体産業が生まれるでしょう。

 政治の焦点に分配政策や格差是正も必要でしょうが、こうした産業の疲弊をおさえ、再興し、また新しい産業の育成を真剣になって進めなければ、明日の日本はますます危うくなっていくでしょう。日本経済の強靱化が待ったなしです。

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2021年5月27日 (木)

直面する経済安全保障の戦いー中国の呪縛から如何に抜け出すか

66e7281386e44019bc3dc7e64e5154de  故あって、しばらく筆を休めていましたが本日から再開します。休みの間も新型コロナウイルスの感染は終息せず、今も都会地区を中心に緊急事態宣言や蔓延防止等重点処置が続いています。

 それはさておき、相も変らずメディアは中共の陰をちらつかせながら、政府批判を重ね、多くの反日知識人もそれに加担している構図は続いています。 

 少し前になりますが、日本学術会議での任命拒否問題が取りざたされましたが、ここにも中共の大きな影が見え隠れし、軍事研究の拒否を宣言している始末です。研究の自由を叫びながら逆のことを堂々としている、全くどうしようもないと言うしかありません。 

 そんな中で、中共に翻弄されている日本の姿を的確にとらえた論文を、山岡鉄秀氏からメルマガを頂いたので引用させて戴ます。タイトルは「経済一本やりで生きて来た日本人が直面する経済安全保障の戦い」です。

◇ 

山岡鉄秀です。

日本が総力を尽くして戦った太平洋戦争(大東亜戦争)は日本の徹底的な敗北で幕を閉じました。

敗戦後、しばらく打ちひしがれていた国民は新たな「日本の生き筋」を見出します。「日本は戦争に敗けたが、これからは経済で勝負だ!」文字通り国民が一丸となって経済復興に取り組みます。

この、「経済に集中して生きる」という発想は、吉田ドクトリンと呼ばれる、吉田茂首相の方針に沿ったものでもありました。

1952年、サンフランシスコ講和条約で日本の独立が実現すると、吉田首相は同時に日米安保条約を調印します。

日本に米軍が基地を置くこと、つまり、米軍が広範に日本列島に展開し続けることを許し、日本の安全保障をアメリカに委ねることで、日本は自律的な安全保障の重圧から逃れて経済にまい進するという発想です。

この方針は大成功を納めますが、晩年の吉田は、自らの戦略が安全保障に無頓着な国民を作り出してしまったことを認めて、後悔していました。

しかし、日本は吉田の嘆きをよそに、驚異的な経済発展を遂げ、アメリカに次ぐ世界第二位の経済大国に上り詰めます。

今の若い世代は、この元気が良かった時代の日本を知らず、バブル期が異常なだけだったと考えていますが、かつての日本は本当に元気だったのです。

20代前半でバブル期に遭遇した私はその当時の日本の勢いを記憶しています。

この戦後の繁栄についてジョージタウン大学のケビン・ドーク教授は、「日本人を享楽的にした」と評しています。

それは正しい指摘だと思います。

すっかり敗戦に懲りた日本人は、「平和とは戦争について一切考えないこと」と言わんばかりの態度を取るようになりました。

そして、これは私の意見ですが、独特のサラリーマン気質を作り出しました。

模範的なサラリーマンは、政治や国際情勢、ましてや安全保障政策などについては一切考えず、ひたすら目の前の仕事に取り組むべき、という発想です。 

栄養ドリンクのCMソングのごとく、24時間闘い続ける日本人サラリーマン。

政治、まして国際政治などお上が考えることで、サラリーマンが考えることではない。ひたすら目の前の仕事、仕事、仕事。それが日本人サラリーマンの美学。

20世紀の間はそれでも何とかなりましたが、21世紀に入って世界は急激に変わっていきました。

対応できなかった日本企業はどんどん没落し、日本経済はGDPで中国に追い越されました。世界第三位でも立派な経済大国ですが、何しろ活気を失いました。

しかし、サラリーマンの美学は変わりません。世界情勢の変化 は、ビジネスに関係しない限りは関知しません。

パワーゲームメルマガを読んでいる方々にとって、今や中国が戦後最大の脅威であることは常識ですが、経団連に象徴されるように、日本の企業人の多くは

未だに中国の脅威の本質を理解せず、中国市場でいかに儲けるかばかりに腐心しています。

大企業でも、国際情勢の変化を全く理解していません。それはサラリーマンの本分ではないと考えているのでしょう。

私自身も、親しくしていたある精密機械企業の幹部の方と話して愕然としました。

「何百人もの中国人研修生を抱えているけど、中国の脅威なんて考えたこともないよ。君は日本の文化が素晴らしいと思って、日本文化を守りたいから

そんなことを言ってるだけじゃないの?

中国の覇権主義?世界史を見れば、人間の歴史なんてそんなものじゃないかな?僕は中国に関しては、あの巨大な市場をどう開拓するかしか考えていない。昔から、与えられた枠の内側でしか考えないようにしてきたからね」

この方は明らかに中国の脅威の本質を理解していません。中国の脅威は、台湾や尖閣諸島に迫る軍事的圧力だけではありません。中国の脅威の本質は、何でもありの「超限戦」です。軍事、民事の枠を超えた際限のない戦争行為です。

そして、中でも重要な位置を占めるのが、経済を利用した戦争です。

我々は、経済的な相互依存が進めば進むほど、世界は戦争ができず、平和になると教わってきました。しかしそれは、あまりにもナィーブな発想であることがはっきりしました。

今、 習近平の指導の下で中国が推進しているのは、中国は外国に依存せずに自立する一方で、世界には可能な限り中国に依存させることです。外国が中国に依存すれば依存するほど 、中国はそれを逆手にとって、その国に影響工作を仕掛けることができるからです。

つまり、相互依存は平和への道ではなく、悪意ある独裁国家に弱みを握られることなのです。

経済を使って相手国を操作しようとすることを「エコノミック・ステートクラフト」と言います。そのような攻撃からの防衛策を講じることを「経済安全保障」といいます。

日本では、この経済安全保障という概念がやっと政府レベルで理解され始めたばかりです。

そして、エコノミック・ステートクラフトの一環として、企業が狙われます。

世界中で中小企業も大企業も、中国共産党と繋がった企業や組織や個人によって乗っ取りの危機に瀕しています。

その手口は極めて巧妙で多岐に渡ります。賄賂やハニートラップだけではありません。それらの手口を真剣に研究して学ばなければ、防衛 することができません。

我々日本人が、いや、世界中のほとんどの人が想像もしないようなトラップを仕掛けてきます。

戦後一貫して、戦争や安全保障のことは忘れて経済一本やりで生きて来た日本人。それが正しい生き方だと信じ、 与えられた枠の中でしか考えない習慣を身に着けた日本的サラリーマンの美学。その結果、未だに中国の脅威を認識できない日本の企業人。

戦争は、自分たちが侵略戦争を仕掛けなければ始まらないと信じている日本人。

経済に命をかけて生きて来たのに、長年の経済的低迷に悩んだあげく、その経済が自分たちに対する戦争の武器として使われるとしたら、何という皮肉でしょうか?

はたして日本人は、日本企業は、この新しい形の戦争から身を守ることができるでしょうか?

今のままでは無理でし ょう。

ひとりでも多くの日本人が、独裁国家による経済を利用した戦争の脅威を認識しなければ、もうすぐ手遅れになってしまうでしょう。

 まさにその通りだと思います。以前にも述べましたが中国に進出して事業を行ったり、中国と貿易取引したりしている企業は万を数えると言う現実。撤退を始めている企業も多くなって来ていますが、まだまだ中国に経済の根っこを抑えられているのは事実です。

 インド太平洋構想やクアッドの取り組みをいくら進めようとしても、経済に足を引っ張られて身動きが取れません。この状態になってしまったのは、まさに中国の長期戦略の一環でもあるのでしょう。

 経団連などの経済団体は明らかに中国に傾斜しています。それぞれの企業は利潤の確保の目的から、巨大市場中国を目指すのは分かりますが、安全保障の観点からはこういう一国集中的な依存は極めて危険な状況を生みます。日本の政府の長期戦略のなさが浮き彫りになっている好例かも知れません。

 これからこの経済を縛られている状況をどう解決していくか、大きな課題でもあります。もちろん経済のみならず、軍事もサイバー関連も同様ですが。

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