緊急事態と憲法

2021年9月 1日 (水)

アフガン撤収で思い知らされる日本の平和ボケ

Https___imgixproxyn8sjp_dsxzqo0990875030  自衛隊によるアフガンからの邦人や協力者の移送がもたついているようです。そうした中、今日にも自衛隊輸送機と隊員を帰国させるようです。政府は今後、多国間の枠組みでタリバン側に輸送の安全確保を求め、希望する邦人や在アフガン日本大使館の現地職員らの国外退避を目指す用ですが、うまくいくのでしょうか。

 防衛大学卒で軍事に詳しい森清勇氏がJBpressに寄稿したコラムから、そのあたりの事情を取り上げます。タイトルは『アフガン撤収で思い知らされる日本の平和ボケ 邦人もアフガン人協力者も救出できない欠陥の憲法体制』(8/31)で、以下に引用します。

 ◇

 断腸の思いでキーを叩きながら文字をひねり出している。各種報道によると、混乱のアフガニスタンからの移送対象は国際機関で働く日本人、大使館や国際協力機構(JICA)の現地スタッフとその家族などで約500人とみられた。

 しかし、待機した自衛隊機が1人の邦人を乗せてカブール空港を飛び立ったというテロップが8月26日夜10時頃、パラリンピックを観戦していたテレビ画面に流れた。

 その約1時間後にいまイスラマバード(パキスタン)の空港に自衛隊機が降り立ったとのテロップが流れた。

 移送は1人?

 目を疑った。本来は「1人を移送」したではなく、「対象者のほとんどを移送できなかった」というべきではないだろうかと。

 日本人の移送もさることながら、日本大使館などで勤務し協力したアフガニスタン人やその家族がタリバン等の犠牲になることが許されていいのか。

 アフガニスタンでは米軍の撤収を機に、イスラム原理主義勢力のタリバンが国土を制圧する動きが強まっていた。

 一方で、タリバンと競合関係にあるイスラム教スンニ派過激組織IS(イスラム国)の動きも活発化し、自衛隊機がカブール空港に待機しているその時、空港近傍で爆発事件も起き、多くの米兵や市民の死者も出て、目的を果たせなかった。

外国に後れを取った移送作戦

 自衛隊は移送を命じられればその行動に移るが、移送するか否かなどのアクションをとるのは、あくまでも外務省と国家安全保障局の情報に基づく政府(国家安全保障会議)の決定に基づく。

 8月末で米軍が撤収することはジョー・バイデン大統領の声明で分かっていた。

 米国はすでに数万人のアフガニスタン人協力者などを米国などに移送したと発表しているし、英独仏も自国民はもちろん、アフガニスタンでの現地協力者ら数千人から1万人超をそれぞれ移送したとしている。

 そして筆者が衝撃を受けた一つが韓国の発表である。

 韓国の金萬基(キム・マンギ)国防部国防政策室長は「内部で(現地人の移送作戦が)8月初めから論議されてきた」と明かし、首都カブールがタリバンに占領(8月15日)される前から輸送作戦に入っていたと語ったからである。

 室長は「タリバンがカブールを占領し、急遽、韓国大使館も撤収することになった。危機意識が強くなり、8月30日までがある意味最低ラインだと考え、軍用機投入を決定した」と説明。

 続けて、「カブールは電波状況が悪い場所が多いが、奇跡的に希望者全員と疎通ができた。大使館で対象者を選定する過程から管理がきちんとできていたし、偶発状況の対応や非常連絡網が整えられていたため、こうした状況にも成果があったと思っている」と語っている。

 韓国政府に協力してきた現地スタッフ391人を特別功労者として移送し、また移送の半数近くは10歳以下の子供たちであることも明らかにしたのである。

堅固のはずの日米同盟であるが

 以下は、詳しい情報がないので、ネットなどで得られる情報と、筆者の推測である。

 日米同盟の成熟度の高さを公言してきた政府である。であるならば、日本に米国の撤収作戦などの情報が入らなかったはずはない。

 情報が入ってきて、自衛隊内では移送などを内々で検討しても、現地の安全が確保されない限り自衛隊機の派遣はできない。

 シビリアン・コントロールの建前からは、想定研究さえ越権となる危険性がある。したがって、外務省や政府からの発動が必要である。

 そうした動きがみえなかったのは、外務省も現地大使館も日本独自の移送を考えることもなく、必要な場合は米国(米軍)に依頼することを考えていたのではないか。

 問題の第1は外務省がどれほどの危機意識を持っていたかである。

 危機意識を持ったとすれば、いつからかということも問われる。危機感を政府に挙げ、移送が必要となれば、自衛隊と共同で移送の作戦を練るわけである。

 危機状態に応じて運輸省が担当するか防衛省が担当するかとなるが、原則的に自衛隊が先行的に計画したり、ましてや行動したりすることは先述の通り、シビリアン・コントロールの名において許されない。

 そこに、韓国と日本の初動の差が出たのかもしれない。

 ざっくり言って、アフガニスタン脱出を希望する邦人や日本への協力者を移送できなかったのは失敗と言わなければならないであろう。

 米欧韓などは早くから移送したわけであるから、情報不足は米国(米軍)のせいではなく、日本側の問題であり、危機意識のなさである。

 巷間しばしば「米韓同盟には隙間風が吹いている」と言われることから判断すると、日米同盟の固さは米韓同盟の比ではないからである。

 もしそうであるならば、これこそが第2次安倍晋三政権下で成立した安保法制の限界を示したことになる。

 野党や反日団体が「戦争法案」のレッテルを貼り、「安倍政権が戦争を始めようとしている」「徴兵制が導入される」といった類のアジと、それに踊らされる国民が、「危機」の想定さえ拒絶し、憲法改正と安全保障体制の整備を阻止してきた欠陥が露呈したと言わざるを得ない。

 情報が不足している現時点で断定はできないが、同盟ゆえに米国が何でもやってくれるという認識は間違いである。

 他国が移送できて日本ができなかった問題は深刻に受け止めなければならない。「人命は地球より重い」と日本国民が主張してやまない人命が危険にさらされるからである。

 しかも、その人命には日本人ばかりではなく、日本のために協力したアフガニスタン人とその家族が多く含まれている。

 移送して救助できなければ、日本の国家としての信頼性は地に落ちるに違いない。

コロナ禍で憲法の不備が明白

 コロナ対処のために緊急事態宣伝(以下「宣言」)に加えて、蔓延防止等重点措置(以下「措置」)なる制度が法定された。

 緊急事態宣言では厳しすぎるので、その前段階の予防的措置としてである。しかし、基本はどこまでも「強制」でなく「要請」でしかない。

 何でもない平常時は細かい区分も有効であろうが、非常時はこうした細かい区分が返って邪魔になることも多い。また、宣言と措置の区分が判然としないという声も多く聞こえる。

 コロナ禍で数次の宣言や措置を出さざるを得ないのは非常事態条項が憲法にないために、政府は国民世論をうかがいながら負担を強いない「要請」で対応するしかなく、思い切った対策を打ち出せないことに起因している。

 2020年2月に始まったコロナ禍以来、医療資源が世界一と称されながら「医療崩壊」の声が絶えない。

 今年初めに、退任直前の千葉県知事が「民間病院の協力が得られることになった」と嬉々として語ったことが印象に残っている。

 裏返せば、これまでは医療資源の約80%を占める民間病院の協力が得られていなかったと白状したも同然だからである。

 そして今迎えている第5波である。

 政府と都は「医療資源の全面活用」で合意したという。これもまた、「要請」に応じない医療機関があり、全面活用ができていなかったという暗喩ではないか。

 菅義偉首相の発言力に疑問を呈する国民が多いが、コロナ禍に「疲労」もいとわず真剣に対処していると思う。

 10分の1強の人口の東京都の小池百合子知事は疲労を理由に休暇を取ったが、その後のコロナ対策も上手くいっていない。

 全人口の約200分の1(県民60万人前後)の県においてもしかりで、ほとんどすべての知事でさえ上手くコントロールできていない。

 今の法体制下では国以上に少ない人口の地方自治体の方がコロナ対処でも機動性発揮が容易なはずである。

 普段において危機を遠望せず、しかるべき法の整備などに消極的で、ことが発生すればその場の対処療法で弥縫策を講じる。

 こうして責任のなすりあいをすることが問題の根源ではないだろうか。

 首相に問題があるという以前に、リーダーシップを発揮しようにも発揮できない、法体制の不備、基本的には憲法の非常事態条項の欠落などに問題があるのではないだろうか。

 政府分科会の尾身茂会長は、いまの法体制下でロックダウンに相当するくらいの強制措置が求められている旨の発言をしているが、これはずばり、「(非常時に)強制措置」が取れない法体制の不備、それによって派生するリーダーシップの欠如を指摘したのではないだろうか。

おわりに

 イラン・イラク戦争時に、邦人救出ができずにトルコが支援してくれた。半島有事や拉致被害者救出も屡々言の葉に上がる。しかし、憲法の制約が付きまとい、訓練もなかなか思うようにできない。

 そもそも、第5次のコロナ禍に対処できない医療態勢の逼迫の根源は、尾身氏の指摘でも分かるように、余っているはずの医療資源が十分活用できない憲法問題にあるのではないか。

 与党は野党の質問に振り回されるのではなく、国民を説得して、非常事態に有効に対処できる大枠を早急に整備すべきではないだろうか。総選挙の争点は、この1点に尽きる。各政党の真剣勝負だ。

 与党からは総裁選を前に、「このままでは戦えない」「首相を代える」などの声が聞かれるが、与党間でも与野党間でも然りで、国のため、国民のため、明日の日本の安全のための本当の政治を忘れてきたのではないだろうか

 ◇

 文末に森氏が言う「国のため、国民のため、明日の日本の安全のための本当の政治を忘れてきたのではないだろうか」、まさにその通りだと思いますね。このブログでも散々指摘してきました。政治家になれば、特にリーダー近辺の立場に立てば、日々雑事が舞い込み、大局的にものを考えることができなくなるのでしょうか。

 そうしたことも含めて、日本の政治の仕組みや統治の根幹を、変えていく必要を強く感じます。そのためには最高法規たる憲法を抜本的に見直し、作り替え地区必要があるのではないでしょうか。国のため、国民のため、明日の日本の安全のために

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