技術、戦略

2022年11月26日 (土)

日本半導体産業の復活を実現できるか、次世代半導体の会社「ラピダス」への強い期待とその勝算は?

35  このブログのメインテーマは「強い日本の復活」です。それは防衛力、外交力が筆頭に来ますが、それを支える産業競争力は欠かせない重要な要素です。そしてかつて世界を席巻したにもかかわらず、今や米国のみならず韓国、台湾までにも後塵を拝してしまった、産業の米と言われる半導体の復活が、強く求められています。

 そうした中、次世代半導体の会社「ラピダス」の設立が発表されました。エルピーダメモリーの破綻や、ルネサスエレクトロニクスの苦戦など、集合型(日の丸)半導体メーカーの失敗を繰返さないよう、革新的な経営が求められています。

 この「ラピダス」に関する概要を、元経済産業省中部経済産業局長で明星大学経営学部教授の細川昌彦氏が、日経ビジネスに寄稿した記事から引用します。タイトルは『日の丸半導体」の失敗から学ぶ、半導体新会社ラピダスの勝算は』です。

 次世代半導体の新会社ラピダスが設立された。2ナノメートル(ナノは10億分の1)プロセスのロジック半導体を開発して、2027年ごろの量産を目指す計画だ。

 日本は先端半導体の量産で国際競争から脱落して、「失われた20年」ともいわれている。そうした中、ラピダスは半導体産業の起死回生の期待を背負って発足した。今後10年間で5兆円の設備投資を計画している。日本政府が相当の資金を支援しなければ難しいだろう。もちろん課題山積でいばらの道だが、日本にとってラストチャンスだとの危機感がある。

 この新会社について、かつての”日の丸半導体“の失敗を引き合いに出して、「同じことを繰り返すのか」との批判が目に付く。しかも批判だけして代替案を示さない。各国が半導体産業の囲い込みに躍起となっている中で、日本が手をこまぬいているとどうなるかは明らかだ。

 そもそも今回の新会社は、かつての“日の丸半導体”とは根本的に異質なプロジェクトだ。どう違うのか。

デジタル産業のためのプロジェクト

 まず、トヨタ自動車、NTT、デンソー、ソニーグループなどが株主に名を連ねていることに注目すべきだ。これを役所の声掛けへの「お付き合い」だと批判する論者もいるが、全くこれは当たらない。このプロジェクトの本質が見えていないのだろう。これらの企業は本気だ。半導体産業のためのプロジェクトではなく、デジタル産業のためのプロジェクトだからだ。

 国全体のデジタル投資の遅れが「失われた30年」の大きな原因の一つであった。今後の成長には産業全体でのデジタル投資が急拡大することが必要だ。半導体はそうしたデジタル投資の主要プレーヤーを顧客として成長する産業だ。

 かつては家電が半導体の主要ユーザーであったことで日本の半導体産業は育った。しかし2000年代に入ると、パソコンやスマートフォンに半導体需要が移り、これらのグローバルメーカーは大量の半導体を必要とした。

 しかし日本には米国のアップルや韓国のサムスン電子のようなグローバルメーカーが育たなかった。例えば、世界初のNAND型フラッシュメモリーを日本が開発したにもかかわらず、それを活用したデジタルカメラや携帯音楽プレーヤーといった最終製品で日本は負けてしまった。それが半導体産業の衰退の一因でもある。

 今後のデジタル社会の基盤となるのは、自動運転やデータセンター、工場のデジタル化、スマートシティなどだ。半導体はそうしたデジタル分野で必要になる。

 今回、トヨタやNTT、デンソー、ソニーなどがラピダスの株主になった理由はそこにある。これらの企業がユーザーとなるからだ。それぞれの分野で次世代のデバイスを開発して新たなデジタル産業をけん引する。そのためには、ニーズに応じた独自機能を盛り込んだ半導体の開発がカギを握る。

 多品種少量の半導体製造をコミットし、スピーディーに供給してくれる半導体製造会社が不可欠だ。だからこれらユーザー企業は本気で株主になったのだ。当初は10億円ずつの出資でも、今後、継続的に多額の投資を行う覚悟が必要なのは当然だ。

 従ってラピダスは、これまでのパソコン、スマホをターゲットとした汎用の半導体を大量生産するビジネスモデルとは一線を画して、専用の半導体を多品種少量生産するビジネスモデルを志向する。台湾積体電路製造(TSMC)やサムスン電子とは競合せず、差別化をしようとしている。

かつての「自前主義」からの決別

 第2のポイントは、日本企業だけによる「自前主義」ではないことだ。ラピダスは日米連携、さらには欧州も巻き込んだ日米欧連携のプロジェクトだ。

 米国企業(おそらくIBMだろう)の研究成果である次世代トランジスタ技術を活用した微細化技術、そしてそれを可能にするオランダの半導体装置メーカーASMLの極端紫外線(EUV)の露光装置の技術がなければ、このプロジェクトは成り立たない。

 これらは資金さえあれば入手できるわけではない。これまで水面下で国が前面に出て交渉して実現したものだ。EUV露光装置は世界からの注文が集まっており、本来であれば何年も待たなければ入手できないところ、2024年末には日本で初めて導入できる見込みだ。

 そしてその際のカギは「相互補完」だ。国際連携を可能にしているのは日本自身が強みを持っているからだ。装置、材料メーカーの技術力を背景に、後工程での積層化技術を持っていることが、相手方にも魅力となっている。

 経済安全保障が急務の国際情勢の中で、国家レベルで日米連携は急速に進められた。5月の連休には萩生田光一前経産相が訪米して、レモンド米商務長官と次世代半導体の開発について日米連携の基本合意をした。その際、ニューヨーク州アルバニーにあるIBMの研究施設を視察している。

 さらにそれを受けて5月のバイデン大統領との日米首脳会談では、次世代半導体開発の日米連携を進めることを合意した。日米連携が政治的に明確にもコミットされたのだ。

 プロジェクトの体制としては、量産技術のための研究開発の拠点「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」が年内に設立される。これも米国や欧州の関係機関と連携する。

 政府も3500億円の予算を投入する。この研究開発拠点での技術開発プロジェクトでパイロットプラントを作って開発し、ラピダスで量産の製造ラインを作って事業化する。まさに2つが車の両輪となる構想だ。問題は、目標とする5年でどこまで達成できるかだが、決して楽観できるわけではない。

国策としての本気度

 政府が拠出する700億円についても誤解がまん延している。この金額だけを見て「1桁、2桁少ない。政府の本気度を疑う」と厳しい批判を浴びせる。しかしこれは単に第1段階としての“手付金”であることを理解していない。工場の建設まで含めたプロジェクト全体は兆円単位の資金が必要で、これで済むはずがない。

 初期段階から米国企業の技術を使用するライセンス料や、1台200億円もするEUV露光装置の前払い金が必要になる。しかもこの700億円を「補助金」としているのは明らかに誤報だ。これは委託費で、国の関与は根本的に違うことを見逃している。

 今後、第2段階ではこの新会社に対して国は出資も視野において経営に責任を持つことも検討されるだろう。上場による資金調達もあり得る。

 こうして国策としての位置づけを明確にして、所詮民間主体への補助金止まりであった、かつての“日の丸半導体”とは次元を異にする。

 2012年に経営破綻したエルピーダメモリを教訓にすべきだとする論者もいる。しかしこれまで述べた本質的な違いを見れば、これも当たらない。エルピーダは1999年にNECと日立製作所のDRAM事業、そして2003年に三菱電機のDRAM事業を統合してできた。いわば半導体メーカーだけの組織だ。しかも複数の出身母体による「たすき掛け人事」など一つにまとまることが難しく、経営破綻してしまった。

 それに対しラピダスはユーザー企業8社が出資しており、あくまで人材は外部から集めることになる。エルピーダとは状況はまるで違う。

いばらの道を覚悟

 これから待ち構える巨額の資金調達以外にも課題は山積している。既に述べたように、多品種少量生産での差別化戦略は理にかなっている。その顧客は当面、株主に名を連ねたデジタル産業をけん引するプレーヤーだ。

 ただし、さらにラピダスが成長するためには海外も含めたグローバルな顧客開拓が必要だ。そうした時に、出資するユーザー企業と競合する企業からも果たして受注できるか。いくら多品種少量といっても、量を確保してこそコスト低減ができて国際競争力につながる。

 人材も大きな課題だ。多数の半導体のエンジニアが必要になってくる。

 まずは即戦力だ。かつて日本の半導体産業が元気であった時代に活躍していたエンジニアは、その後の衰退期に活躍の場を韓国、台湾に求めて流出していった。そうした貴重な人材を再度日本に呼び戻すことができるかどうかだ。

 さらに若者の育成も必要だ。台湾のTSMCが熊本に進出することで、九州では大学や高等専門学校などで人材育成を急いでいる。東北も半導体分野に注力している。ラピダスは今後、将来の工場建設の候補地を選定するだろう。その際、人材獲得できるかどうかも大事な要素になる。

 もう一つの課題は設計だ。ラピダスのビジネスモデルでは、ユーザー企業のニーズを半導体の回路設計に落とし込むための設計段階がカギになる。そうした企業や人材をどこに求めるか。シリコンバレーの企業や人材を活用することも大事だ。こうした人材面でも「日の丸半導体」の自前主義から脱却すべきだ。

 難題でも国の命運を背負っている。国策として国費を投入するからには、やり切るしかない。

 半導体については韓国、台湾のみならず、最近は中国にも急追されています。日本と中国を比較すれば、その政治体制から自ずと違いが出てくる要素もありますが、日本は何しろ政治の関与が中途半端で、かつ戦略性がありません。その点をしっかり見据えて、この会社を育成すべきだと思います。

 細川氏の記述通り、これが「ラストチャンス」と考えて、企画力、設計力やそれを支える人材の確保など、政業一体となって、かつての半導体王国の復活を願いたいものです。

 そしてこのビジネスモデルを成功に導き、先端デジタル製品の分野にも応用して、日本の技術立国の立場をより強いものにしてもらいたい。もちろんこの分野のみならず、エネルギー開発や農業開発にも、応用すべきところは応用して、強い日本の復活を心から願いたいと思います。

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2022年8月30日 (火)

「日韓トンネル」、何故消え去らない荒唐無稽なこの構想

2_20220829155501  約40年前から持ち上がり、消えては浮かぶ「日韓トンネル」構想。多額の費用がかかる割には、日本にとって殆ど何もメリットがないこの構想が、何故未だにくすぶっているのかでしょうか。この構想、あの旧統一教会ともつながりがあると言います。

 そのあたりの詳細を、フリーランスの日野百草氏がNEWSポストセブンに寄稿した記事から引用して紹介します。タイトルは『総工費10兆円の「日韓トンネル」構想 技術的には可能でも必要とは思えない』です。

約40年前に着工したものの停滞している大プロジェクト「日韓トンネル」は、総工費が約10兆円と言われている。1961年に建設開始し1988年に開通した青函トンネルの建設費が7455億円かかったことを思うと、いかに大規模なものかが分かるというものだ。俳人で著作家の日野百草氏が、旧統一教会との接点によっていま注目を集めている日韓トンネル実現の可能性について聞いた。

* * *

「日韓トンネルですか。調べてみましたけど、日本の技術なら可能です。でも、何もメリットはないでしょう」

海洋土木に強みのある中堅建設会社の施工管理技士が語る。こういった内容では学者より海洋土木の現場を知る技術者のほうが、経験に裏打ちされた肌感など有意に思う。ちなみに本稿、専門用語や業界特有の言い回しなどは適時置き換えている。ヒアリングの本旨はあくまで「日韓トンネルは実現可能か、必要か」という点にある。

日韓トンネルとは日本の佐賀県唐津市から壱岐、対馬を経て韓国の釜山まで海底トンネルでつなぐとされる壮大な計画である。その全容は全長270km、海底距離150km、最大水深170m、予定工費10兆円(諸説あり)とされる巨大プロジェクトであり、今年6月にも「日韓トンネル実現九州連絡協議会」を中心に総会が開かれるなど再び脚光を浴びている。

1980年ごろから計画されていまだに実現を見ないこの計画だが、宮崎県知事に再出馬する予定のタレントで元衆議院議員、東国原英夫も前知事時代の2010年、この日韓トンネルを「僕個人の夢物語」として中国メディア「サーチナ」に熱く語るなど(実際に通るのは佐賀県なのだが……)、当時は九州の政財界を中心に一定の支持を集めていた(今は「反対の立場」と8月25日に釈明)。

一方、韓国側でも世界平和統一家庭連合、いわゆる旧統一教会などを中心として日韓トンネル実現のために資金を集め、関連団体による試掘をおこなったとされる。2008年に自民党の衛藤征士郎(日韓議員連盟)や民主党(当時)の鳩山由紀夫らを発起人とした日韓海底トンネル推進議員連盟が立ち上がり、韓国側にも日韓トンネル研究会(日本にも同名の研究会はある)という旧統一教会による事業団体がある。

こうした熱心な方々には申し訳ないが正直、筆者の感想としては荒唐無稽としか思えない。しかし日本の技術なら可能、とはどういうことか。

「日本の海洋土木は世界でもトップレベルです。青函トンネルの時代からずっとそうです」

青函トンネルの開通はよく覚えている。小学生のころ、建築関係の仕事をしていた父に連れられて『海峡』という映画を観た。全体的に冗長なのはともかく、最後の貫通では素直に喜んだ。時を経て1988年3月に青函トンネルが開通、本当にやったんだな、日本は凄いなと思った。

◆日本の海洋土木はいまも世界トップレベル

「トルコのボスポラス海峡の海底トンネルも日本が手掛けました。大成建設は世界最深度への沈設も成功させました」

ヨーロッパとアジア(オリエント)を隔てるボスポラス海峡はトルコのイスタンブールにある。この要衝にトンネルを作ることはトルコ150年の夢と言われた。強潮流で水深の深い箇所のあるボスポラス海峡に沈設することは難しいとされてきたが2011年2月、日本は大成建設を中心にこの夢を実現した。「地図に残る仕事」というキャッチフレーズでこのプロジェクトを紹介したCMは記憶に新しいだろう。

「ユーロトンネルも日本の技術が貢献しています。川崎重工のTBMが使われています」

かつて「ナポレオンの夢」と呼ばれたユーロトンネルはドーバー海峡、イギリスとフランスの間をつなぐ50.49kmの海峡トンネルである。TBMとはトンネルボーリングマシン(全断面トンネル掘進機)のことで巨大なカッターヘッドで岩盤をドリルのように掘削する超大型トンネル掘進機である。古くからの爆破(発破)作業を伴うことなく高速掘進が可能で、掘削そのものを完成断面にできる。

「日本の技術力低下がよく言われますが、海洋土木はいまだに世界トップレベルにあります。個人的には技術面では日韓トンネルの接続は可能だと思います。その意味では、決して荒唐無稽ではありません。しかし実現度としては、おっしゃる通り荒唐無稽でしょうね」

青函トンネルもユーロトンネルも、ボスポラス海峡のトンネルもその膨大な費用と時間に見合うからこそ実現した。日韓トンネルはそれに見合わないということか。

Post_221190_3 「まず地理的な問題があると思います。壱岐、対馬を通って韓国の釜山ですよね。いま見せていただいた東国原さんの『新幹線、あるいは高速道路』という意見をとるなら、それを通したところでどれだけの経済効果があるのか。言い方が難しいですが唐津と釜山ですよね、日本と韓国と大きく置き換えても10兆円でやるか、となる人もいるでしょう」

いずれも重要な都市ではあるが、10兆円の大工事となると確かに難しいかもしれない。

「現実のインフラ効果は極めて限定的に思います。ドーバーはロンドンに近いですし、大陸側のカレーもパリはもちろんダンケルクからブリュッセルやロッテルダムもありますよね。多くの国がフランスを通ってユーロトンネルを使うというメリットもあるでしょう。しかし日韓トンネルはあくまで2国間に限った話です。せめて北朝鮮が通れるような国であるなら効果も期待できるでしょうが、現実的ではないでしょう」

なるほど、多くの国と接するからこそ高価な海底トンネルも費用対効果に見合うということか。釜山や唐津がそれぞれ首都に近いのならともかく、地勢的にも10兆円に見合うかどうかは難しいところだろう。何より日本と韓国という国レベルですら「2国間のトンネル」でしかない。日本は単独の島国だし、韓国と中国・ロシアの間は北朝鮮が「うんち」(人気ゲーム『桃太郎電鉄』シリーズで「うんちカード」を使うことにより線路の通せんぼをする「うんち」のこと)のように陸路を通せんぼしている。この状態で日韓トンネルを通しても極めて限定的な2国間のトンネルでしかなくなる。ましてやその「うんち」はゲーム中と違い、いつ消えてくれるかわからない。

「これは私の専門外なので一般人の意見として言わせてもらいますが、日韓関係を考えたら10兆円も出してトンネルで繋がりたいか、という意見もあるでしょう。調べてみましたが、なぜか日韓トンネル構想は日本側が言い出したことになっていて、韓国は仕方なく繋がってやるという姿勢のようです。費用面でも日本が不利な条件で、お花畑な日韓友好で血税を出すわけにはいかないでしょう」

前述のようにそれを出したがっている、出したがっていた日本の政治家がいることはともかく、現実的にはそうした反対の声も大きいだろう。費用の負担面でも韓国側が3割、日本側が7割(8割案も)など、なぜか日本の負担が多い計画案が多い。それなのに韓国与党の「共に民主党」は「日本だけに有利な事業」(中央日報、2021年2月8日)として、日本が通したがっているという体にしている。

確かに戦前、大東亜縦貫鉄道という日本と朝鮮半島を結ぶ計画があったが、それは朝鮮半島が日本領で中国の一部も日本の傀儡政権である満州国だったからこそ自国領および属国をつなぐ意味があったわけで、そんな大昔の話を持ち出して「日本がトンネルで韓国と繋がりたがっている」という体をとられても反対する人たちにとっては迷惑な話である。また韓国と北朝鮮はいまだに「休戦」状態である。トンネルとはいえ地続きとなると日本の防衛体制も再構築しなければならない。

◆本当に10兆円でおさまるのか

「あと技術的な面ですが、先ほど日本の技術なら『可能』とは言いましたが大変な作業であることは事実です。途中に有用な島を挟むとはいえ青函トンネルの4倍の長さですからね。水深200mの箇所もありますから新たな工法が必要となるかもしれません。コロナ禍ですし作業員の数や安全を考えれば10兆円では済まないと思います」

この10兆円というのも古くから言われているもので、現在の鋼材、セメント材、アスファルト合材など建設資材の高騰をみればその金額で済むとは思えない。ましてやそれだけの大工事をするだけの見返りがあるか、結局のところそれに尽きるのかもしれない。アメリカやロシアにはベーリング海峡にトンネルを作ると称して資金を募る詐欺商法が古くからあるが、日韓トンネルもそれと同じとまでは言わないが、そのベーリング海峡トンネルと同様に「荒唐無稽」であることには変わりがないのかもしれない。

「日本のゼネコン、マリコンもそれだけの大きな仕事があれば受注したいでしょうし、施工管理者や作業員たちもやるからにはやってやる、とはなるでしょう」

巨大プロジェクトに夢を見るのは、技術者として当然かもしれない。

「でも日本の状況を考えれば『ほかにすることはないのですか』でしょう。福岡から釜山まで飛行機で50分とかですよ。関空なら1時間半、成田でも2時間半です。東京から博多まで新幹線で移動する人が少ないのに、日韓トンネル通したとして、東京から釜山、ソウルまで電車で行きますかね、物見遊山か一部のマニアでもなければ使わないと思いますよ」

計画によれば日韓トンネルを新幹線が走れば1時間15分ほどで結ばれるという。東京から博多まで新幹線「のぞみ」で単純計算して約5時間+1時間としても、6時間以上もかけて釜山に行くひとはあまりいないように思う。国土交通省によれば東京から福岡は飛行機移動が90%を超える。また物流面のメリットで言えばコンテナ海運が主流の中、いまさら10兆円かけて貨物列車というのもこの計画のみで考えれば非現実的だろう。

「せっかくなのでもうひとつ、個人的な意見を言わせてもらえば日本の海洋土木の技術的の向上や、他国への技術面での売り込みという点ではこれだけの空前絶後のプロジェクト、価値があるとは思います」

確かに、青函トンネルにもその意味はあった。世界に日本の海洋土木技術を見せつけた。

「それなら壱岐を経由して対馬まででいい、という考え方もあります。最初から採算度外視なら日本の技術向上と国防のために対馬まで東水道(対馬海峡の日本側)のみ海底トンネルを作るというのもありだと思います」

対馬市議会は2013年に日韓トンネルの早期実現を求める意見書を採択している。対馬は韓国人の人気観光地として知られるが、古くから日本を守る国防の島でもある。しかし人口はピーク時の7万人から3万人あまりとなってしまった。

「実のところ、技術的に一番ハードルが高いのは対馬から釜山の深度だと思うのです。ルートにもよりますが西水道(対馬海峡の韓国側)は200メートル級の深度で遮られています。東水道なら深いところでも100メートル前後、これでも大変ですが、やる前提なら対馬まででよいのでは。もっとも、いずれにしろ資金面で難しいと思いますが」

一部政治家や研究者の間でさかんに起こる「日韓トンネル」計画。しかしネットも含めた一般国民は日韓両国とも反対か興味なし、もしくは「非現実的」と笑うような代物である。

それでも九州の地方議員や研究者を中心に「日韓トンネル推進会議」的な団体があり、今年の6月11日にも「日韓トンネル実現九州連絡協議会」(会長・梶山千里九州大学名誉教授)の総会が開かれている。この計画を本気で実行しようとしている人々もいる。

10兆円で韓国と地続きになるとされる日韓トンネル、このコロナ禍と少子化、福祉政策をはじめとする財政危機の中、本当に必要なのだろうか。

 もちろん必要ではないでしょう。逆に今までの日韓関係を考えれば、むしろ安全保障上あってはならないと思います。対馬がますます属国化するでしょうし、佐賀県も危うくなります。韓国の反日団体が国境の検問所をくぐり抜けて押し寄せるかも知れません。折角の四方が海という安全保障の要諦が崩れることにもなります。

 このリターンなき荒唐無稽な構想は、天文学的な費用を要することもあり、簡単には日本の国会でも了承されないでしょうし、またコンセプトの曖昧さから日本国民の多くが賛成しないと思います。たとえ一部の利害関係者が賛同してもこの構想は潰すに越したことはありません。

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2021年9月 8日 (水)

半導体に素材、EV部品……中国・国産化の標的は日本企業か?

P1_20210907131201  前回、日中韓のGDPの変遷を取り上げましたが、特に中国の経済力はここ40年の間に爆発的に増加しました。その40年前、経済力もしかりですが、技術力も全くの開発途上国だった中国。それが持ち前の「パクリ力」と国内の「購買力」で、今や日欧に迫りつつあります。

 その中国の現状を、日経ビジネスの記事から拾ってみました。元経産相で現明星大学教授の細川昌彦氏のコラム『半導体に素材、EV部品……中国・国産化の標的は日本企業か?』(9/6)がそれで、以下に引用します。

 ◇

 耳目が海外のアフガンと国内の政局に注がれている中で、中国は米中対立への手を着実に打っている。経済面では国産化政策を着実に加速しているのだ。米中対立の長期化を覚悟して、中国は従来のグローバルな供給網から中国中心の供給網・自立へと脱皮を急ぐ。そのカギを握るのが先端技術の獲得だ。そしてその標的になりそうなのが日本企業だ。

国産優先で外資企業を揺さぶる

 8月、中国が政府調達で国産を優先して、外国製品の排除を進めているとの報道があった。中国政府が5月に地方政府へ通知した内部文書を入手したことによるものだ。報道によると、医療機器をはじめとする先端機器で、41分野の315品目が対象になっている。中国の国産製品を政府調達の調達条件とする狙いは何か。

 注意しなければならないのは、こうした方針は以前からあり、決して新しいものではない。報道された内部文書自体も「2021年版」となっており、同様の文書はこれまでも通知されている。むしろ何故この時期に、こうした内部文書が報道されているかだ。中国政府の意図の方が重要だ。

 それは明らかに先端技術を有する外資企業を中国国内での生産に追い込む狙いだ。それによって外資企業の有する先端技術の獲得を狙っているだけに、外資企業にとって技術流出のリスクをはらむ。

 しかも外資企業が中国生産したからといって、必ずしも“中国製品”として扱われるわけではないことは要注意だ。実態は事実上中国企業が生産する“中国ブランド“が優先される。中国生産を始めてから「見込み違いだった」では後の祭りだ。「国産優先に対しては中国生産すればよい」と単純に誤解している日本の経営者も多い。

 さらに中国の場合、政府調達の意味合いは欧米、日本等とは比較にならないほど大きい。公表されているものだけで総額は約56兆円で、うち地方政府が9割強を占めるとされている。例えば医療機器だと購入する病院の多くは公的だ。また民間企業による調達も政府調達の基準に事実上「右へ倣え」と影響されるので、インパクトは大きい。

 米国はバイデン政権が製造業を保護するため自国製品を優遇する政府調達を拡大する「バイ・アメリカン」の強化を打ち出している。あたかもこれに対抗して「バイ・チャイナ」を打ち出したかのように見えるので、国際的な批判をかわせるとの計算も働いているだろう。

 しかも世界貿易機関(WTO)の政府調達協定では内外企業の差別を禁じているが、中国はこれに加盟していないので、大胆な内外差別がまかり通ってしまう。

警戒すべき外資誘致モード

 今年1月、在中国欧州商工会議所が「デカップリング」と題する、注目すべきリポートを公表している。その中で中国が進める国産化政策についても分析して、欧州企業に警鐘を鳴らしている。

 中国は国産化戦略のターゲットとなる産業を国家安全保障に関わる重要度で選び出している。そしてそれぞれの産業ごとに具体的な発展行動計画が策定されている。

 日本企業にとって重要なのは外資企業に対する政策だ。中国企業が競争力を有するかどうかで、産業ごとに外資に対して「誘致」か「排除」かの政策モードを使い分けているのだ。

 前者は半導体(製造装置、材料)、電子部品(5Gの中核部品など)、新素材(電池素材、磁性素材など)、工作機械・産業用ロボット、新エネルギー車、バイオ医薬・高性能医療機器、スマート工場などだ。

 例えば、昨年10月には電気自動車(EV)の国産化を確認して、それに向けて磁石、モーターなどの基幹核心技術の自主化レベルを引き上げる目標を掲げている。

 電子部品産業については今年1月に自前の国内供給網の整備をめざした強化計画を公表している。対象部品として半導体に加えて、プリント基板、センサー、磁石、磁性材料、電池材料、製造設備、ソフトウエアなどだ。

 8月には国有企業96社に対して、工作機械、半導体、新素材、新エネルギー車の4分野について中核技術の開発を加速するよう指示を出したと発表した。ただし、これらは一部にすぎない。

 こうした一連の国産化政策を急ぐ中で、中国にとってボトルネックになっている技術を獲得するために外資を積極誘致しているのだ。そしてこれらの産業分野の多くは日本企業が先端技術の強みを有している分野であることに注目すべきだ。まさに中国が日本企業に秋波を送っているゆえんだ。もちろんこうした分野の日本企業の買収も技術獲得のための選択肢の一つであるので、身構える必要がある。

 外資に対して、研究開発拠点を中国に置くことを条件に優遇税制を適用するというのも要注意だ。技術漏洩のリスクがつきまとう。特に半導体などの製造装置や部材の分野を標的にしているようだ。さらに今月から施行されたデータ安全法によって研究開発のデータが中国外に持ち出せなくなるリスクまで念頭に置いておく必要がある。対象となるデータがあいまいで、運用が不透明であるからだ。

「誘致」から「排除」へ手のひら返し

 後者の排除モードに入った産業分野としては、高速鉄道、次世代通信機器、AI/ビッグデータ、量子などだ。高速鉄道はかつて前者の誘致モードで積極的に外資を誘致したが、中国企業に技術が渡って競争力を持つと、外資は必要なくなり、逆に排除モードに転じた典型例だ。日本企業も技術の提供と引き換えに中国市場に参入したものの、後に中国の技術力の高さを理由に中国市場から排除されて“お払い箱”になった苦い経験がある。

 最近では、かつて日本企業が圧倒的な競争力を有していた高性能磁石もそうだ。中国市場を獲得したい日本のある磁石メーカーは積極的な誘致を受けて、2016年に中国磁石メーカーと合弁会社を設立して、ネオジム磁石の生産を始めた。しかし、日本からの製造装置の販売もあって、数年であっという間に中国企業が技術を獲得して競争力を有することとなったのだ。当時の日本企業の経営判断、日本政府の政策判断の是非を厳しく検証すべき事例だろう。

 中国はさらにその供給網の下流にある、日本企業の技術にも着目している。EVの中核部品であるモーターだ。同様のことが繰り返されないようにすべきだろう。

 中国は当初は「誘致モード」でも中国企業に技術が渡ると手のひらを返したように「排除モード」に変わる。日本企業は異なる産業で同じ轍(てつ)を踏んでいるのだ。民間企業も他の産業で起こったことを学習せず、役所も人事異動で担当が変わって教訓が引き継がれない。日本にはそうした構造的な問題があるようだ。

「技術仕分け」と「分断対策」が必要

 こうした中国の内製化の動きにどう向き合うべきだろうか。

 「欧米企業は中国市場にどんどん出て行っている。日本企業だけ慎重にしていると出遅れる」

 こうした声もしばしば聞こえてくる。しかし単純な中国での生産量、販売量だけで判断すべきではない。問題はどういう技術の製品で出て行っているかだ。産業分野によっても違うだろうが、欧米企業が最先端の技術まで中国に出しているかどうかをよく見て判断すべきだ。

 一般論で恐縮だが、企業としては技術の機微度を分析して、「出してもいい技術」と「そうでない技術」を仕分けすることが必須だ。そのうえで中国市場を積極的に取っていく。そうした判断のツメができているかどうかだ。これを具合的に当てはめていくことはもちろん難しいが。安全保障上機微な技術は外為法で規制されているが、その対象は限定されている。問題はそうした規制がない最先端の生産技術が狙われており、そこで経営判断が問われている。

 しかも競合する日本企業同士、外資企業同士で疑心暗鬼になって、なし崩し的に技術を出していくことになるケースがいかに多いことか。前述の高性能磁石はそうした例だ。中国も当然、孫氏の兵法の分断作戦で、そこを揺さぶってくる。

 企業同士の情報交換も大事になってくるが、これには独禁法違反の懸念から躊躇(ちゅうちょ)する向きもある。しかし懸念払しょくの工夫もできる。欧州連合(EU)などは現地商工会で欧州企業が集まってこうした意見交換を積極的に行っている。日本も現地の公的出先機関などがそうした場を設定して、対処すべきだろう。こうしたことを言うと、「かえって日本企業が中国政府ににらまれる」といった慎重論を唱える人もいる。それこそ中国の思うつぼだろう。

 ◇

 1国で、世界の人口の18%が住み、世界のGDPの16%を占めている中国、この購買力と経済力を持ってすれば、世界の企業を誘引するパワーは絶大です。日本も(欧米も)そのパワーに引き込まれ、過去多大な投資と技術をつぎ込みましたが、いつの間にかその技術をパクられ、今では経済的のみならず、一部の技術では後れを取ってしまっています。

 更にこの記事にあるように、日本の現在でも世界の先頭を走っている素材や技術まで、中国の後塵を拝する恐れがないとは言えません。このブログで何回も取り上げていますが、何とかして中国からの経済的依存関係を脱しなければいけません。特に先端技術分野においては、前回取り上げた韓国と同様、非中三原則(教えない、助けない、関わらない)を覚悟を持って推し進めることが必要でしょう。

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