自衛隊

2023年1月30日 (月)

自衛官冷遇の衝撃実態、ししゃも2尾の「横田飯」 ネットでは「病院食ですか?」の声 予算増で改善待ったなし

10_20230129150201  ロシアのウクライナ侵略の衝撃で、俄に高まった防衛力強化の動き。長年GDP1%枠にこだわってきた日本の防衛費予算も、5年後を目処にNATO並の2%へ増枠する動きが顕在化しています。

 ただこれまでの乏しい予算の中で、継戦能力に必要なミサイルや弾薬が乏しく、兵舎などの設備も老朽化していると言います。更には食事なども。国防ジャーナリストの小笠原理恵氏がzakzakに寄稿した記事がその実態を伝えています。タイトルは『自衛官冷遇の衝撃実態、ししゃも2尾の「横田飯」 ネットでは「病院食ですか?」の声 岸田首相は心が痛まないのか』(1/29公開)で、以下に引用します。

岸田文雄政権が「防衛力強化」「防衛費増加」を進めるなか、危険を顧みず、国防や災害派遣に日々邁進(まいしん)する自衛官の待遇改善を求める声が高まっている。GDP(国内総生産)比1%程度の防衛費を長年強いられたため、老朽化した官舎や隊舎がたくさんあるうえ、給与も警察官や消防士に比べて高いとはいえないのだ。さらに、国防ジャーナリストの小笠原理恵氏が、自衛官に提供される「食」の貧しさについて、驚きの現状を明らかにした。 (報道部・丸山汎)

*********

小笠原氏は25日、インターネット番組「百田尚樹・有本香のニュース生放送あさ8時!」にゲスト出演した。そこで紹介した、航空自衛隊横田基地の公式ツイッターの写真が衝撃的だった。

「空自横田基地の栄養バランスのとれた昨日の食事 #横田飯を紹介します」という説明文とともに投稿されたのは、白米とみそ汁、ししゃも2尾、一握りの切干大根と明太子が並んだ「朝食」の写真だ。粗食をはるかに通り越している。これで激務に耐えられるのか。

小笠原氏は「おかずのお代わりは許されず、カロリーを補うのはご飯のお代わりだけなんです」と語る。

さらに驚くのは、小笠原氏が明かした自衛官らの反応だ。

「『横田飯』の写真を見た、別の基地に勤務する20代後半の隊員は『ししゃもが2本も付くなんてすごいな。普通、朝食は1本ですよね』が感想でした。幹部自衛官は『皆さんが驚かれたことに驚いた』と語っていました。これが国民が知らない実情なんです」

小笠原氏は2014年から「自衛官守る会」代表として、自衛官の待遇改善を訴え続けてきた。息子が入隊したある父親は怒り心頭だという。

「私は真面目に税金もずっと払ってきた。でも、入隊した息子が電話で口にするのは、『おなかが空いた』『おかずが食べたい』と食事のことばかり。自衛官がこんな状況を強いられていることは許せない、と」

横田基地には在日米軍も基地を置くが、米軍の食堂はビュッフェ形式だ。ある自衛官は「向こうは好きなものを自由に食べられる。あまりの差に悔しさが抑えられない」と本音を吐露したという。

自衛隊では、食をめぐる〝不祥事〟も表面化している。

21年10月には、空自那覇基地(沖縄県)の食堂で、40代の3等空佐が、規定の分配量を超える食パンと納豆を不正に複数回、取ったとして停職10日になっている。

昨年6月には、空自入間基地(埼玉県)の食堂で、50代の1等空尉が、「パン2個」か「ご飯茶碗(ちゃわん)1杯」を選択する朝食で両方を手にして、停職3日の懲戒処分となった。

ルールと違うかもしれないが、国民の負託に応えるために危険を顧みず任務を完遂する自衛官には、おなかいっぱい食べさせてあげたい。

実は、ししゃも2尾の「横田飯」の写真が投稿されたのは21年11月のことだ。当時、ネット上で「病院食ですか?」「これで戦えるんですか。たくさん食べさせてあげて」と批判が殺到した。

投稿の3日後には、当時の河野太郎防衛相が「自衛隊の糧食費」というタイトルでブログを更新した。隊員の「『栄養摂取基準』の見直しに着手」したとして、肉類を100グラムから160グラムに増量するなど改め、隊員(陸上勤務員)1人当たり1日899円だった糧食費を932円に増額したことも強調した。23年度予算案では、現在の物価高を受けて947円が計上されている。

河野氏が動いたおかげか、その後、横田基地の食堂には「サーロインステーキ」ランチ(昨年4月)や、「照り焼きハンバーグ付き〝朝カレー〟」(同10月)など、ボリューム感あるメニューも登場している。

首相は「横田飯」に心が痛まないのか

ただ、「問題の根本は変わっていない」と指摘するのは、元陸上自衛官である拓殖大学防災教育研究センター長、濱口和久特任教授だ。

「現在、自衛隊では民間業者に食事を外部委託をしている基地も少なくない。問題が起きたのは、味や内容よりも金額を重視した結果だ」「岸田政権が昨年末、防衛費増額を含む『安保3文書』を閣議決定したのはいいが、自衛官の待遇改善や人員確保などについて実効性を伴う方策が書かれなかった。いくら高額な武器を購入しても、扱う人員やその糧食の部分がおろそかになるリスクは非常に大きい」

夕刊フジでは、冒頭の「横田飯」を踏まえて、自衛官の糧食費や食事面の待遇改善などについて、空自広報と防衛省報道室に質問した。ともに1日あたりの糧食費の単価や、栄養摂取基準などを説明したうえで、次のように回答した。

空自広報「隊員食堂での食事については、精強な隊員の育成及び部隊の士気高揚を図るため、各部隊の栄養士を中心に、隊員のし好に合わせた魅力的な献立を作成しています」

防衛省報道室「引き続き、隊員が任務遂行に当たって必要な栄養を摂取できるよう、適切な食事の支給に努めてまいります」

空自や防衛省に大きな非があるとは思えない。

月額129万4000円の歳費や、同100万円の「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)の支給を受け、都心の一等地に高級ホテル並みの議員宿舎を持つ国会議員は、自衛官の待遇を認識しているのか。岸田首相は「横田飯」の写真に心が痛まないのか。

小笠原氏は「自衛官は国を守るための体をつくる食費さえも切り詰められている。一般企業でこれをやったら、訴えられてもおかしくないのではないか。人を大切にしないで、どうやって国を守るのか」と語っている。

 実態がよく分らない状況で意見を挟むのは控えたいと思いますが、もし上記のような状況が実態だとすれば、甚だ遺憾ですね。病院食もかつてに比べればかなり向上しており、むしろ病院食以下とも思ってしまう冒頭の写真。弾薬の充足や兵舎の改善と共に、食事の改善も同時に行わなければ、隊員の士気に関わるのは必至です。

 それでなくとも自衛隊への入隊希望者は減少傾向だと聞いています。いくら国の為、と士気の高い人間でも「腹が減っては戦ができぬ」でしょう。小笠原氏は国会議員の待遇との比較をして改善を求めていますが、他の例として、同じように体力を使うスポーツ選手の食事とは、月とすっぽん程度の差があるでしょうね。少なくともオリンピック選手への食事のレベルまで、というと上げすぎかも知れませんが、今より格段に改善する必要がありそうです。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)


にほんブログ村 


2021年10月18日 (月)

自衛隊元最高幹部岩田清文氏:自衛隊は便利屋でいいのか

19_20211017150501  台風であれ、地震であれ、甚大な災害時の人命の救出や災害復興におなじみの自衛隊。それも彼等の業務の一つですが、本来は他国からの侵略等の防衛が本務です。しかも今回コロナ対策にも担ぎ出されました。もしその間に他国の侵攻があったらどうするのでしょうか。

 そんなことは殆ど考えられないと、政治家も民間人も思っているから、こうしたことに頻繁に使われるのではないでしょうか。元陸上自衛隊幕僚長の岩田清文氏が、月刊hanadaプラスに寄稿した論文から、その実態を見てみます。タイトルは『自衛隊は便利屋でいいのか』(10/5)で、以下に引用して掲載します。

新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターは新たな延長期間に入り、対象年齢もが引き下げられ16歳と17歳への接種が始まった。自衛隊が運営しているだけに、接種会場はシステマティックで、見事な運営がされているという。だが、その一方で「近頃、何でもかんでも自衛隊、これでいいのか?」という危惧の声も聞かれる。自衛隊元最高幹部の問題提起!(初出:月刊『Hanada』2021年9月号)

********

「何でもかんでも自衛隊だ」

6月下旬、自衛隊が運営する東京大手町の大規模接種会場で一回目のワクチン接種を終えたばかりの知人から電話があった。

「自衛隊の効率的できちっとした統制・管理に感激した。素晴らしい。しかし聞くところによると、自衛隊医官の手当は1日3000円、町のお医者さんは10数万円らしい。おかしくないかね! そもそも、自衛隊が便利屋として使われているのじゃないか。近頃、何でもかんでも自衛隊だ。僕ら国民はいいけど、自衛隊自身はこれでいいのか?」

自衛隊OBとしては声がけを有難く思うと同時に、隊員の処遇や自衛隊の存在意義まで指摘され、考えさせられる言葉であった。

筆者自身、今回の自衛隊によるワクチン接種会場の開設・運営に至る過程を垣間見ながら、国として感染症対策のあり方を見直す必要性を強く感じていた。またここ数年、豚コレラや鳥インフルエンザ対応に頻繁に駆り出される自衛隊の状況を仄聞するなか、防衛任務達成への影響も危惧していたところであった。

自衛隊によるワクチン接種が行われているこの時に、これらの点について考えてみたい。

まずは運営状況だが、自衛隊接種会場開設の目的は「感染拡大防止に寄与すること」にあり、期間は5月24日から約3カ月としている。接種対象は当初は65歳以上であったが、接種状況に鑑み、現在は18歳以上に拡大されている。

運営時間は東京・大阪ともに8時から20時。接種規模は東京が一日あたり最大約1万人、大阪が最大約5000人。これまでの接種実績は約61万人(7月8日現在時点での累積数)と聞いている。

運営人員は東京・大阪合計で、医官約90名、看護官等約200名、支援要員の自衛隊員約160名、民間看護師約220名、民間役務約490名、総計1160名体制である。

現場隊員の声

ポイントは、活動の根拠が通常の病院勤務の枠組みとなっており、東京は自衛隊中央病院の巡回健診、大阪は新規の診療所設置とされている。

災害派遣ではないため、手当支給の対象にはならないものの、勤務環境の特性が考慮され、接種業務が3000円/日、接種に関連する業務が1620円/日と一応の配慮はなされている。

では、実際に勤務している隊員はどのように思っているのであろうか。運営を担当する幹部に、自衛隊がワクチン接種をする意義を訊いてみた。

「いまは国難の時と思います。これを克服する切り札であるワクチン接種を国として後押しするため、総理大臣から自衛隊に指示が出された重要なミッションとして捉えています。私はもちろん多くの隊員が、国民の健康と命を守ることに直接的にも間接的にもかかる任務にやりがいを感じています」

もう一人の幹部は、

「陸自の我々にやれということは、国や国民の方々からの高い期待の表れと感じています。この期待に絶対に応えられるよう全力で取り組んでいます」

さらに、接種現場で勤務している隊員の意識を聞いてもらったところ、「このワクチン一本で国民一人の命を救うことができるという思いでやっている」。あるいは、「『有難う』や『整斉としているね』との言葉をいただき、ますますやる気が湧いている」など、現場はやりがいを持って臨んでいるようである。

もちろん初めての活動でもあり、準備の段階から接種業務開始当初の間は苦労もあったようだが、部外者対応に慣れている民間の看護師やスタッフの知見・経験をお借りしながら、しっかりと期待に応えているようだ。

現場の声を聞くなかで頼もしく思ったのは、手当や処遇のことに不満を漏らす者がほとんどおらず、それよりも国民の命を救いたいという一心で頑張っていることである。まさに隊員の価値観が、金銭ではなく国民の役に立ちたいという点にあり、その価値観が頑張ろうという使命感、そして接種業務を確実にやりきるという責任感にがっているものと思う。自衛隊員には、「有難う」の一言こそが一番のご褒美である。

筆者自身、「歴史を振り返った時に、『国家国民が困窮する現場には必ず自衛隊がいた』というのが自衛隊のあるべき姿だ」と思ってきたが、今回のワクチン接種はその一つと認識している。

感染症対策の構造的問題

その一方で、自衛隊は便利屋、何でも屋ではない。だからこそ、切り分けが重要である。豚コレラや鳥インフルエンザ対応はその例だと認識しているが、この点はのちほど述べることとし、先に国としての感染症対策のあり方について考えてみたい。

もちろん筆者は感染症の専門家ではないが、危機管理の観点から何らかの方向性が見出せればと思う。

病院等での「個人」に対するものを医療行為と定義される一方で、保健所を軸に疾病の予防、衛生の向上など地域住民全体の健康の保持増進を図るのが公衆衛生だ、と筆者は認識している。

この役割からすれば、保健所が地域社会における感染症対策の主な担い手であると思う。しかし保健所は平成9年頃以降、減らされ続けており、過去には800カ所を越えていたものが、いまでは半数近くの470カ所になっている(厚生労働省健康局健康課地域保健室調べ「保健所数の推移」令和3年4月1日現在)。

昨年、新型コロナ感染者の追跡調査において、保健所がパンク状態になっていたとの報道や、PCR検査が進まない状態も、この減少と関係しているのであろう。

この保健所削減の背景となったのは、平成6年の地域保健法の制定が影響している。

この法案は、市町村の役割を母子保健や老人保健および福祉といった住民の生活に根差したサービスに重点を置き、都道府県はエイズ対策や難病対策など高度で専門的な保健サービスを提供することを狙いとした。

その背景として、戦後の結核等の感染症対策などには成功したものの、その後の医療供給体制の整備、あるいは医療保険制度の充実により、人々の保健所に対する期待が大きく変わったにもかかわらず、素早く地域のニーズを捉えて対応できるような仕組みになっていないという問題点が指摘されていた。

この審議から、保健所の機能を住民の生活サービスへと重点的に変更し、感染症対策への備えは都道府県に委ねられた。

しかし、その都道府県が今回のコロナ感染対策において十分機能したかと言えば、答えは明らかであるし、国全体として統制できる枠組みについての検討がなされた形跡は見当たらない。

日本人の死因は、1950年頃は結核が第1位を占めていたが、ここ数十年は悪性新生物、心疾患、肺炎、脳血管疾患などが上位を占めている。このような変化が医療そして保健の分野でも変化をもたらし、また2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2015年のMERS(中東呼吸器症候群)の危機も対岸の火事として直視せず、結果として日本の公衆衛生体制や日本人の意識から、感染症に対する危機意識がすっぽりと抜け落ちていた。

災害は忘れた頃にやってくるというが、新型コロナ感染症は、忘れていたどころか、多くの日本人には意識すらしない状態で盲点を突かれた格好だった。

危機管理体制整備の要点

危機管理の鉄則は、最悪の状況を念頭に置きながら、そのリスクをどこまでコントロールするかである。今回のコロナ災禍を貴重な教訓として、より厳しい状況も想定し、そのための国の危機管理体制を整備することが重要である。

その一つ目が法体系だ。特に感染率・致死率の高い感染症発生時においては、いかに強力に統制するかが重要であり、有事に準じた強制力も必要となるだろう。今回、特別措置法により対処したものの、国民の行動規制はお願いベースが基本にならざるを得なかった。

真に国民の命と平和な暮らしを守るためには、時として強い統制が必要であり、現行の法体系では強制力が弱い。この観点から私権の制限についても議論が必要であり、そのためには憲法の緊急事態条項も含めた検討は避けられない。

二つ目には、100年に一度到来するかどうかの感染症有事に備え、国として戦略的・長期的視野に立ち、欠落機能がないよう必要な組織や枠組みの基礎を構築しておき、いざという時にその基礎を拡大して対処できるよう、足腰の強い体制作りに取り組む必要がある。

特に、ワクチン製造にかかわる開発・生産・承認体制は重要である。世界有数の創薬国と言われる日本が未だにワクチンの自国製造に消極的なのは、平成八年の裁判で厚生省の担当課長が罪に問われた後遺症が大きいのかもしれない。しかし何よりも、危機意識の欠如によって、国として地道に研究・開発を継続する体制を整備してこなかった結果であろう。

医師会のあり方を見直せ

一つ目の法律検討において参考になるのが、「災害対策基本法」や「有事関連法制」である。災害対策は基本的に自治体の役割であるが、大規模なものや原子力災害を含めて「国が直轄」して対応する法体系ができている。

有事についても、もちろん「国の責務」であり、国民保護や医療従事者への従事命令もでき、自治体が国の方針に従って強制力を発揮できる仕組みになっているし、平時の各種法令の特例措置もとれるようになっている。感染症に関しても、新型コロナ以上の重い感染症は、国の責務としてあらゆる措置をとる、と法律として定めておくべきである。

二つ目の組織や枠組みの検討においては災害対応が参考になる。発生周期が百年以内と短く、発生確率が50年以内90%と言われる南海トラフ地震対応においては、政府は地震防災対策推進基本計画を策定し準備を整えている。

たとえば被害見積もりに基づき、国、地方公共団体、地域住民の役割、いわゆる自助・共助・公助を定め、それぞれが連携して準備すべき事項を明確にしている。

さらに、指定行政機関および指定公共機関、並びに関係都府県・市町村地方防災会議がそれぞれの計画において推進すべき事項を具体的に示し、関係施設管理者に対しても対策を講じるよう明示している。

関係施設管理者とは、病院、劇場、百貨店や鉄道事業者、学校、社会福祉施設などであり、今回の新型コロナ対応においても規制対象となった重要な施設である。

これに倣い、感染症対策においても、将来的に国としての対策基本計画を策定し、国、自治体、公共機関、特に医療関係機関との連携のあり方を示すべきだ。

その際、国公立医療機関、民間大規模医療機関、クリニック等の役割を再検討する必要がある。併せて、医師会との連携のあり方の再検討も重要だろう。

知人の開業医に話を聞いたところ、開業医と関係病院長で構成された医師会の役割を、診療報酬費を下げさせないための圧力団体的な性格から脱皮させる必要があると語った。

たとえば国家的医療危機の状況においては、感染症等に対して知見・経験のない開業医の不安感を払拭するとともに、中規模・大規模病院と連携して医療行為が地域全体で継続できるよう緊急の教育システムや連携体制の構築をリードしていくべきだと指摘。

彼は自ら貢献したいとの意欲を示したものの、アナフィラキシーショック対応やワクチン接種にかかわるスタッフおよび待機場所の確保も考えると、一人の開業医では対応が難しい。ただ今回、時間こそ要したが、自助努力で連携体制を構築し、現在ではワクチン接種の体制を作り上げることができた。

こういった連携体制の構築や、それによる損失補までを総合的に検討してこそ医師会ではないのか、と熱く語ってくれた。

今回の危機は国民の危機であると同時に、医師会のあり方を見直す好機と捉えるべきではないだろうか。

コロナ収束に伴い、このような議論が深まることを期待したい。

自衛隊、現場部隊の悩み

話を自衛隊に戻そう。

今回、自衛隊が接種業務を担任した背景には、感染拡大を防止する切り札をワクチン接種と捉え、その打ち手が不足する状況を打開したいとの思いがあったようだ。接種規模の拡大に貢献できる要員が速やかに確保できない国難の状況において、自衛隊が寄与するのは当然である。

また、自衛隊まで動員しているという姿勢が、何とか国民の命を救いたいという政府の強い思いとして伝われば、心理的な効果も高いだろう。今回の自衛隊による接種会場開設・運営は、そのような意味でも意義があるものと思う。

一方で、自衛隊による様々な支援活動が、国防という本来任務遂行に及ぼす影響を危惧する声も聞こえてくる。

本稿を執筆しているいま現在も、熱海市における災害派遣が行われ、懸命の救助活動が続けられている。このような国民の生命にかかわる緊急を要する要請で、警察・消防のみでは実施できない状況では当然、出動すべきであるが、必ずしもそうとは言えない派遣要請に現場部隊が頭を痛めているのも実態だ。

たとえば、豚コレラや鳥インフルエンザによる殺処分等支援である。これも緊急的な対応が必要なため、速やかに人員を投入できる陸上自衛隊に頼るのは理解できるが、毎年頻繁に発生し、その都度出動していたのでは、本来任務遂行のための訓練すらできなくなる。

豚コレラの場合、影響の大きかった令和元年度が陸自全体で11回出動、一回平均117時間(延べ54日間、約1万1000名)、また令和2年度の鳥インフルエンザ対応は26回、一回平均74時間(延べ81日間、約3万名)。その影響は大きい。

東日本大震災において、陸自は約3カ月間にわたり約7万人を投入した。筆者の記憶では、この年、陸自全体で純粋な訓練に充当できたのは840時間程度であった。

豚コレラも含め、最近では様々な支援活動の影響で、それ以下の時間しか訓練に充当できていないと聞いており、いざという時に国防の任を全うできるのか心配している。

部隊では毎年、春頃から逐次訓練を積み上げ、小部隊から大部隊へとレベルを上げていく、この積み上げにより、班長、小隊長、中隊長、大隊長、連隊長等およびそれぞれの指揮官を支える幕僚を含め、実際の防衛行動において確実に任務を完遂できる人材を育てている。

近年では、戦争領域や戦争形態の大きな変化によりやるべきことが増えており、ただでさえ時間が足りない悩みがある。

国家百年の計を考える

この練度積み上げの途中段階で災害派遣等に出動した場合、その間に予定していた訓練は演習場等の混み具合もあり、思うようにはカバーできず、そのまま次の訓練段階に進まざるを得ない。

何ごとも実体験して初めて自信が持て、そのうえで後輩にも指導できるが、この「体得」すべき貴重な機会を逃すようなことが継続すれば、ボディーブローのように効いて部隊行動の練度が下がっていき、最悪の場合は任務達成が困難となる。

自衛隊は100年に1度の戦争も生起しないよう抑止力の向上に努めているが、抑止力は張り子の虎ではなく真に戦える対処力があって初めて成り立つ。その対処力の核心は、部隊の隊員の練度である。

練度は目に見えないため、隊員自身でも問題に気がつかない側面もある。現場の部隊は、頻発する豚コレラ、鳥インフルエンザ等の支援要請が自治体から発出されれば断ることはできず、派遣を優先してしまうのが実態だ。「練度が大事だから出動するな」とは誰も言えない。

農水省および各自治体に期待するのは、何とかして自治体の自助努力が進展できないものかという点だ。たとえば、地元消防団員の増員や殺処分作業に対する民間事業者の緊急的支援を獲得する施策、そしてやむを得ず自衛隊に要請する場合の作業内容の精査など、ぜひ検討が進むことを願う。

最後に、医療費の削減や小さな政府を目指した結果が今回の新型コロナ対応の問題点にがっていたとすれば、見直すことも必要であろう。

どちらも重要な施策であり、それ自体が問題であるとは思わない。本当の問題は、それらの施策が過度に進み、国の危機事態において真に必要な人・組織・体制やそれを機能させる法律を整備せず、また予算を充当してこなかったことにある。

平時は無駄のように思われることでも、国の存立、国民の命にかかわる根幹となる分野には重点投資すべきである。国家存立の足腰を地道に鍛え、いざという時に役に立つものに育んでおくべきである。まさに「国家百年の計」を忘れてはならない。

 ◇

 この記事の中で注目すべきだと思う部分の一つが「抑止力は張り子の虎ではなく真に戦える対処力があって初めて成り立つ。その対処力の核心は、部隊の隊員の練度である」です。

 国難と言えば、解釈次第で何でも国難にしてしまえるわけで、そこに出動することにより、隊員の練度を上げるための訓練に支障が出るようであれば、その最も重要な「国防力」の弱体化につながります。本当に自衛隊でなければできない任務に絞るべく、岩田氏の言うとおり、自治体の自助努力をもう一つ発揮してもらう必要がありそうです。

 同時に、高市政調会長が提言しているように、国防予算のGDP2%への上積みも進め、隊員の増強と装備の充実化を図る必要があると思います。中韓朝露の脅威に対応していくためにも。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)

にほんブログ村 政治ブログ 保守へ
にほんブログ村

その他のカテゴリー

ICTと政治 イノベーション インバウンド エネルギー エネルギーと環境 オリンピックとメディア人 オリンピックと人権侵害 オリンピックと政治家 スポーツ スポーツと政治 テロの標的国家 デジタル技術 マナー、道徳 メディア メディアと政治 メディアの偏向報道 中国の政治 中国経済 五輪と反日国、メディア 人種・民族差別 共産主義 共産党と総選挙 共産党の組織と実態 刑法、犯罪 創作と現実 医療 医療と健康 医療と政治 危機管理 原発と核実験 原発・エネルギー 原発再稼働 反日メディア 反日市民団体 反日政治家 反日言論人 司法 国会改革 国連 国際政治 土地の買収 在日、サヨク 地方政治 地方行政 地球環境 外交 多様性 大学 天候 学問・資格 安全保障 安全保障政策 宗教と政治 宗教界 官僚の実態 対テロ作戦 少子化問題 左翼インテリ 情報・インテリジェンス 感染症と政治 憲法 憲法違反 戦争の歴史 技術、戦略 拉致被害者 政権構想 政治 政治、外交 政治、政党 政治、政局 政治、文化 政治、経済 政治とテロ 政治と原発論議 政治とSNS 政治スキャンダル 政治体制 政治家の誹謗中傷 政治理念 政治評論 政策 政策課題 教育 教育、文化、愚民化 教育と政治 教育・歴史 文化 文化、歴史 文化・芸術 新型コロナウイルスの起源 日本の未来 日本の防衛力 核の威嚇 歴史 歴史の捏造 歴史・国際 民主主義の限界 民族弾圧 民族弾圧、ジェノサイド 水際対策 海外、スポーツ 海外、政治 海外、経済 海外の人権侵害 海外・社会 災害、政治 独裁政治 産業政策 研究開発 社会 社会・政治 社会・文化 社会主義運動とテロ 福祉政策 経営 経営戦略 経済・政治・国際 経済対策 緊急事態と憲法 総選挙 自民党総裁選候補 自衛隊 芸能人と思想 行政改革 言葉の定義 軍事 軍事、外交 輸入食材 農産物の流出 選挙公約・バラマキ 離島防衛 韓国の教育 音楽 領土、外交 風評被害・加害 食料安全保障 食糧問題 NHK改革 SNS・インターネット

2023年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
フォト
無料ブログはココログ