民族弾圧

2023年2月20日 (月)

民主国家モンゴルで反中国活動家が不当逮捕、それに対し高市早苗大臣が会長を務める国会議員連盟が世界を動かした

Twitter___freemunkhbayar__2_  中国政府が各国に設けている「海外警察」が問題化しています。日本にも数カ所設けられていると言う報道 もあります。在日中国人の反政府政治犯の偵察や逮捕が目的のようですが、モンゴルではその存在がモンゴル人の反中国活動を行った国民にも及んでいるそうです。

 その辺の事情を自由インド太平洋連盟副会長の石井英俊氏が月刊hanadaプラスに寄稿した記事から引用します。タイトルは『国民栄誉賞受賞ジャーナリストの不当逮捕に習近平の影|石井英俊』(2/17公開)で、以下に掲載します。

いま民主主義国であったはずのモンゴル国が、独裁国家中国によってその色を塗り替えられようとしている。そのような中、高市早苗大臣が会長を務める「南モンゴルを支援する国会議員連盟」が世界を動かした!

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民主主義国で行われている中国の人権弾圧

日本人であるあなたが、日本国内で反中国の活動を行ったからといって、日本政府から弾圧されるということなど想像できるだろうか。

実はいま独立国であり民主主義国であるはずのモンゴル国において、反中国のスパイ活動をおこなったという「罪」により、モンゴル国民がモンゴル国によって逮捕され、モンゴル国の刑務所に収監されるという信じ難いことが現実に起きている。

現在、世界で日本を含む各国に中国政府が設けている「海外警察」と呼ばれる公安の出先機関の存在が問題化している。中国の少数民族や人権活動家などの反体制派の活動を監視し、時には脅迫し、中国へ強制的な帰国もさせているという。

本稿で述べるムンヘバヤル・チョローンドルジ氏の不当逮捕というモンゴル国での異常事態も、この中国の海外警察の暗躍が関与しているとされる。中国の影響力の拡大を許せば何が起きるのかという禍々しい現実を突きつけられる事件でもある。

「中国による人権弾圧は中国で起きているだけではない。中国の国境の外でも、中国による弾圧が起きている」――本件を一言で言うとこうなる。民主主義国であったはずのモンゴル国が、独裁国家中国によってその色を塗り替えられようとしている。モンゴル国で何が起きているかをレポートする。

日本の重要なパートナー国が危うい状況に

モンゴルとはどのような国か。もともと一つであったはずのモンゴルは、ヤルタ会談の密約によって南北分断が固定化されてしまう。冷戦期にはモンゴルの北半分はソ連の影響下のモンゴル人民共和国に、南半分は中国の内モンゴル自治区となった。

その後、社会主義国であったモンゴル人民共和国は、ゴルバチョフの登場とソ連崩壊により、1990年には一党独裁を放棄、1992年にはモンゴル国へと改称して、社会主義を放棄して今日に至っている。この30年の間、複数政党制によって政権交代も度々起きており、民主主義国としての歩みを進めてきていた。

我が国との関係では、横綱の白鵬や朝青龍に代表される大相撲の関係でなじみが深いが、政治的には、モンゴル国が元は社会主義国であったことから北朝鮮と国交を有しているため、北朝鮮拉致問題での交渉の仲介役としての役割が大きい。

政治的にも国民感情的にも親日国であり、我が国にとって今後とも重要なパートナーの一つである。そのモンゴル国がいま危うい状況に陥っているのだ。

モンゴルで知らない人はいない

事の発端は昨年2月に突如としておとずれた。事件の概要はこうだ。

2月17日、モンゴル国ウランバートル市において、モンゴル国中央情報機関(GIA)によって、ムンヘバヤル・チョローンドルジ氏(以下、ムンヘバヤル)がスパイ罪の容疑で逮捕された。

ムンヘバヤルは、モンゴル国出身のモンゴル国民で、現在55歳(逮捕当時54歳)の著名なジャーナリストだ。モンゴル国立大学を卒業後、新聞社での勤務などを経て様々な著作を発表し、モンゴル国政府からモンゴル国最高の勲章である北極星勲章や国民栄誉賞などを授与されている。モンゴルでは知らない人はいない。

ムンヘバヤルは南モンゴル(中国の内モンゴル自治区)の人権問題や環境問題に熱心に取り組んできたことでも知られ、筆者も直接会って話をしたこともあるほか、SNSを通じて情報交換を行ったりもしてきた。同氏が2016年に来日した折には、筆者が招聘人、身元保証人になってビザの取得を手伝ったりもした友人だ。

通常の刑事犯罪として警察に逮捕されたのではなく、情報機関によるスパイ罪で逮捕されたムンヘバヤルの裁判は秘密裁判によって行われた。弁護士が付くことは許されているため、裁判の進行と内容は、その弁護士が記者会見を度々行うことによって外部に伝えられてきた。

中国政府の意向

ムンヘバヤルの逮捕容疑は、①外国の情報機関と共謀し、②中国に対するスパイ行為を行い、③モンゴル国と中国との関係を損ない、④国家安全を脅かした、というものだ。

GIAが発表した逮捕容疑では「外国の情報機関と共謀」とされているが、裁判ではインドの情報機関の名前があげられ、駐モンゴル国インド大使館の二等書記官も名指しされている。要は、「インドから資金を受け取って、反中国の活動を行った」という罪状だ。

ところが、このインドの外交官に対してモンゴル国は何の措置もしていない。国外退去などの処分すらしていないのだ。ムンヘバヤルだけを逮捕し、もう一人は放置している。明らかに異常である。

そもそも中国に対するスパイ行為を行ったからモンゴル国が逮捕するというストーリー自体が、話の筋立てとしておかしい。ムンヘバヤルの弁護士も主張しているが、モンゴル国のいかなる憲法条文や法律にも、他国に対するスパイ行為で自国民を処罰する規定など存在していない。言うなれば、中国の代わりにモンゴル国が自国民を処罰するという本件の構図は、法的に全く成立しない事案なのだ。

このような無茶な筋立てを行ってまでムンヘバヤルを処罰しようとするモンゴル国政府の頑なな姿勢の背後には、長年にわたって南モンゴル問題で大きな働きをしてきたムンヘバヤルを疎ましく思っている中国政府の影響があると考えられる。中国政府の何らかの意向を受けて、モンゴル国政府が動いているとしか考えられないのだ。

無実のまま懲役10年の判決

ムンヘバヤルは、モンゴル国において著名なジャーナリストであるとともに、南モンゴルの運動に携わっている人々にとっては欠かせない同志だ。2月17日の逮捕直後、世界各地の南モンゴルの運動団体が逮捕を非難する声明を出した。

検察側が主張する犯罪容疑が証拠の一切ない、いかにでたらめな一方的主張に過ぎないかは長くなるのでここでは詳述しないが、関心がある方は「Southern Mongolian Human Rights Information Center(南モンゴル人権情報センター)」のホームページを是非ご覧いただきたい。

南モンゴル人権情報センターはニューヨークに本部を置く人権団体で、2001年の設立以来アメリカ連邦議会でも数多くの証言を行ってきている南モンゴル運動の中心的な団体だ。ムンヘバヤルが6月に拘置所の中で記した手書きの手紙が、家族の手を経てこの南モンゴル人権情報センターに届けられ、原文のモンゴル語が英語に翻訳されて全文がホームページ上で公開されている。手書きの手紙の原本も、画像が公開されている。

この手紙において、検察の主張がいかに根拠のないものであるか、その一つ一つに対して丁寧に反論し、ムンヘバヤルは自身が全くの無罪であることを主張している。実際、犯罪の証拠は何一つ示されてはいない。

そのことは、モンゴルの裁判所でも一時期認められていた。4月1日、ウランバートル市の裁判所で開かれた第一審において、裁判所は「犯罪を示す証拠が不十分である」として事件を検察に差し戻しているのだ。本来であればこれで無罪となり、この件は終了していたはずである。

ところが、同じ裁判所において、新たな「証拠」も加えられないままに再度審議が開かれ、6月28日に一変して懲役10年の判決が下されたのだ。さらに、9月21日の第二審においても、第一審と同じく懲役10年の判決が下った。

世界中で日本にしか存在しない議員連盟

ムンヘバヤルを救出するため筆者が具体的に動き出したのは、この6月の第一審判決が下された直後からだった。それまで南モンゴル団体や支援する日本人が動いているとばかり思っていたのだが、南モンゴルを支援する運動全体がこの問題についてはほとんど動いていなかったことを知る。

2月の逮捕直後に、日本の南モンゴル運動団体から、ある南モンゴル議連役員にメールを一通送ったという。ムンヘバヤルという同志が逮捕されたこと、この件で協力して欲しい旨が記されていたが、そのメールを一度送っただけで南モンゴル議員連盟(議連)への説明などは何も行われていなかった。それでは国会議員が動けるはずもない。

さらに、5月に議連において勉強会が開催され、モンゴル人や支援者の日本人が何人も出席し、その後に懇親会まで開かれていたが、誰一人としてムンヘバヤルの事件については話題にも出さなかったという。そのため、議連はこの件について全く知らない状況だったのだ。

実は「南モンゴルを支援する国会議員連盟」(会長:高市早苗経済安全保障担当大臣、幹事長:山田宏参議院議員)は、世界中で日本にしか存在しない。2021年4月に自民党議員によって結成された議員連盟で、内モンゴルという言葉ではなく、南モンゴルという言葉を冠した議連として発足した。その意義は大きく、同じ中国における人権問題の中でも、チベットやウイグルとは違い、南モンゴルに関しては日本の国会での動きが一歩進んでいる。

にも拘らず、その議連にムンヘバヤルの事件が知らされていなかったのだ。

日本の活動が世界を動かした

まずは資料を整え、不当逮捕の中身や裁判の進行について纏めて筆者が議員会館を回り始めたのが昨年9月に入ってからだった。逮捕から実に半年以上も経ってしまっていた。ムンヘバヤルに対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

しかし、そこからの議連の動きは迅速だった。中でも議連幹事長の山田宏参議院議員が特に積極的に動いてくださった。

山田宏議員に説明に行ったおりに筆者からは「議連として本件に対しての声明文を出してほしい」旨をお願いした。そして「釈放要求」や「非難声明」までは難しいことは重々承知しているので、「議連として本件を注視している」というラインなら可能ではないかと相談。

山田議員からは「そのようなもので意味があるのか」とも問われたが、筆者は大きな意味があるのでぜひお願いしたいと答えた。なぜなら南モンゴルを応援する国会議員レベルのグループは日本にしか存在しておらず、現にこのムンヘバヤルの件に関しては世界的に見ても政治レベルではどこにもまだ動きがない以上、例えどんな文言であってもまずは日本において声明文という形あるもので先鞭をつけてもらうことに意義があると考えたからだ。

山田議員と面会した翌週の9月30日には、役員会に求められて出席。ムンヘバヤルの事件について、出席したモンゴル人活動家が説明に当たり、質疑も活発に行われた。その質疑応答の中で、ある議連幹事の衆議院議員より「それで、私たち(議連)への具体的なリクエストは何ですか?」との質問がなされたので、資料を配布して声明文を出してもらいたい旨のお願いを行った。

議連会長の高市早苗衆議院議員が閣内にあるため、その日の議連役員会に出席していなかったこともあり、役員会では結論にまで至らなかったものの、そのあと山田宏議員が声明文を出す方向での取りまとめに動いてくださった。そして、10月26日に開かれた議連総会で議連声明文として採択されたのだ。

議連の声明文には次のように書かれている。

「ムンへバヤル氏の活動は、我々『南モンゴルを支援する議員連盟』の設立趣旨、活動内容とも思いを一にするものである」

「当該裁判が、特に他国から何らの圧力等を受けることなく、モンゴル国の法令に基づいて公正・公平に進められることを期待し、今後、当該裁判の進捗状況について重大な関心を持って注視していくこととする」

「他国から何らの圧力」が中国のことを差しているのは言うまでもない。

中国に関する問題では、往々にして欧米各国が先に動いて日本が追随するケースが多い。

ところが、全く報じられないが、このムンヘバヤルの件に関しては、世界で最初に動いたのが日本の国会議員連盟だったのだ。これは特筆すべきことで、議連会長の高市早苗衆議院議員、事態を重視して果敢に決断して動いてくださった山田宏議連幹事長には特に深く感謝をしている。

そして日本の国会議員が動いたということが、世界を動かしていくことにつながっていった。

前モンゴル国大統領が署名

日本で国会議員が動いたので、次は世界の人権団体で一斉に動こうとの提案を行って回った筆者の念頭にあったのは、北京冬季オリンピックへのボイコット運動の時に、世界で200を超える人権団体による共同声明文を出したことだった。あの時、世界中で大きなニュースにもなった経験から、本件でも大きな運動を作れると考えたのだ。

年が明けて本年1月12日、世界で100を超える人権団体が、モンゴル国政府に対してムンヘバヤルの即時釈放を求める共同声明文を発出した。この共同声明文の中には、日本の南モンゴル議連が10月に声明文を出したことについても触れられている。大きな意味があったと受け止められているのだ。

実際に署名の取りまとめに動いたのは、先述した南モンゴル人権情報センターで、100を超える人権団体のうち約30がモンゴル人の団体だった。モンゴル国や南モンゴルをはじめ、ロシアのブリヤート、アフガニスタンのハザラなど、世界各地のモンゴル人たちの団体が名を連ねている。

そして、100を超える団体の代表として、10人が筆頭署名者として個人名を出しているが、特筆すべきは、エルベグドルジ前モンゴル国大統領が名前を出していることだ。前大統領が、現政権に対して、ムンヘバヤルの逮捕は不当であり釈放すべきだと求める声明文にサインしたのだ。これは重大な意味を持っている。

さらには、ウイグル人の世界全体のリーダーである世界ウイグル会議のドルクン・エイサ総裁や、代表なき国家民族機構(UNPO)の代表、さらには言論の自由の観点からジャーナリストの不当逮捕に抗議する趣旨でペン・アメリカまでが名前を連ねている。

共同声明文への署名の取りまとめが始まったのは12月中旬だが、この最中の12月21日、モンゴル国最高裁判所において、ムンヘバヤルへの懲役10年の判決が確定した。モンゴル国での法的手続きは残念ながらこれで終わった形となり、あとは国際的圧力によっていかに釈放を勝ち取るかに焦点が絞られている。

ノーベル平和賞の候補者としてノミネート

そのような中、日本の国会議員によって、ムンヘバヤルの救出運動は進んでいく。二人の日本の国会議員(名前は非公開)が推薦人となって、ムンヘバヤルは2023年のノーベル平和賞の候補者としてノミネートされたのだ。

ノーベル平和賞は毎年1月31日に候補者の推薦が締め切られ、10月に受賞者が発表される。毎年200から300の個人または団体がノミネートされている。物理学賞や化学賞などが実際の「成果」に基づいて受賞されるのと違い、平和賞は政治状況に極端に影響される。

典型的なのは昨年で、2022年ノーベル平和賞がロシアとウクライナの人権団体に与えられたのは、ロシアによるウクライナ侵攻があったからだ。そのため、平和賞には意味はないと考える人もいるだろうが、その権威が実際に影響力を持っているのも事実である。受賞にまで至らなくても、候補者として正式にノミネートされただけでも、当該人物に対する扱いに違いは出てくるだろう。

1月31日、ノルウェーのノーベル委員会から、ムンヘバヤルの推薦を正式に受理した旨の連絡を事務局である筆者が受け取った。ムンヘバヤルがノーベル平和賞にノミネートされたことは、彼一人の名誉ではなく、弾圧下で自由と人権のために戦う全ての人々に勇気を与えるものだと考えている。

北をロシア、南を中国に囲まれ、地政学的に見れば、いわば独裁国家の海に浮かぶ民主主義の島と言ってもよいのがモンゴル国だ。この橋頭堡としての価値を自由民主主義陣営としてもいま一度見直すべきではないだろうか。

ムンヘバヤルの救出運動は彼一人を助ける運動ではない。モンゴル国の民主主義を守る運動であり、中国の覇権主義の拡大を食い止める運動なのだ。

 このムンヘバヤル氏の逮捕、そして裁判での有罪判決に中国の影響が具体的にどうであったかは不明ですが、少なくともモンゴル内の「中国警察」による情報収集と中国政府によるモンゴル政府への圧力は間違いなくあったのでしょう。

 南モンゴル(内モンゴル自治区)は、ウイグル弾圧の影に隠れていますが、やはり中国共産党からの締め付け、弾圧は凄まじいものがあり、自治区内の多くの住民は平和な生活は完全に奪われてしまっていると聞きます。ましてや反中国思想を持った人への弾圧は、ウイグルと同様な状況でしょう。

 その南モンゴルを支援しようとモンゴル内で活動していた人物が、モンゴル国内で犯罪者にされたのですから、不当逮捕、判決であるのは間違いないでしょう。早い段階での釈放を願いますね。

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2021年11月23日 (火)

「私は一度 “殺された”」 ウイグル族女性の証言

K10013348651_2111151859_2111152034_01_03  中国関連の記事が続きます。今回はNHKのNEWSWEBにアップされた記事からウィグル弾圧の実態を紐解きます。以前、在日ウイグル人へのインタビュー記事を取り上げましたが、今回は弾圧を受けたウィグル人の生の声です。タイトルは『「私は一度 “殺された”」 ウイグル族女性の証言』(11/16)で、以下に引用して掲載します。

「私は一度 “殺されました”。だから、報復は怖くありません」

こう話すのは、ウイグル族の女性です。

彼女は3年ほど前に2度、中国・新疆ウイグル自治区の施設に収容されたといいます。理由もわからず拘束されて拷問を受け、解放されるときには中国当局からは施設のことを口外しないよう脅しを受けたとも話します。

自治区には今も親族が残り、施設のことを話せば、当局から報復されるおそれもあるといいます。それでも彼女は、こう言い切ります。

「私は、決して沈黙しません」

(ワシントン支局記者 渡辺公介)

過酷な拷問

「あまりに過酷な拷問でした。一思いに殺してくれと、頼んだこともあります」

ウイグル族の女性、トゥルスナイ・ジヤウドゥンさん(43)は、中国・新疆ウイグル自治区の収容施設で受けたという拷問について、こう話しました。

2度収容され、3年前に解放されましたが、拷問で受けた精神的なショックから、しばらく悪夢にうなされ、突然叫び声を上げて起きてしまうこともあったそうです。夜になっても寝つくことができず、薬が手放せないともいいます。

中国で政治的な迫害を受けたとして、亡命を求めるアメリカで暮らすジヤウドゥンさん。これまでに、イギリスやアメリカのメディアの取材を受け、実名で証言してきました。

当時の話を聞かせてほしいと連絡を取ると、アパートに招き入れてくれました。そして、深く息を吐いたあとにゆっくりと話し始めました。

突然収容された“学校”

ジヤウドゥンさんは、新疆ウイグル自治区の北部の小さな村に生まれました。

周りは山に囲まれ、川が流れる自然豊かな土地で、幼い頃はきょうだいたちと静かで平穏な暮らしを送ってきました。

その後、30歳で結婚して隣国カザフスタンに移り住み、医師の夫が運営する診療所で看護師として働き、やりがいを見いだしていました。

そんな幸せな生活は、10年近く続きました。

しかし、今から4年前、カザフスタンでの市民権を持っていなかったジヤウドゥンさんが、パスポートを更新するため、ふるさと新疆ウイグル自治区に戻った時のことです。

通りを歩いていると、突然、警察官に拘束されて、彼らが「学校」と呼ぶ施設に連れて行かれました。

「カザフスタンで何をしていた。アメリカと関係があるのか」

警察官は、カザフスタンに住んでいたことを理由に拘束したと説明し、執ように「何をしていたのか」を聞き出そうとしてきたといいます。ジヤウドゥンさんは「夫と暮らしていただけです」と何度も答えましたが、聞き入れてもらえませんでした。

“理由の無い”取り調べ

体調を崩したことから1か月ほどで解放されたジヤウドゥンさんですが、1年後、再び理由もわからず拘束されます。連れて行かれたのは、前回と同じ「学校」。

しかし、「学校」は、有刺鉄線を張り巡らされた高さ3メートルほどの塀に取り囲まれた施設に様変わりしていました。変わっていたのは建物の外観だけではありません。

2度目の拘束では、1週間に1回ほどの頻度で、警察官の取り調べを受けたといいます。「罪を告白しろ」警察官はそう言って、70を超える罪が書かれたリストを目の前に示し、一つ選んで署名をし、「自白」するよう迫ってきたといいます。

いずれの罪にも身に覚えのないジヤウドゥンさんは、それを拒否しました。

また、警察官は「カザフスタンで何をしていたのか」、「誰と連絡を取っていたのか」と取り調べのたびに聞いてきましたが、「何もしていない」、「誰とも連絡を取っていない」とジヤウドゥンさんは答えました。しかし、ジヤウドゥンさんが「自白」を拒み、質問に「答えられない」たび、待ち受けていたのが拷問でした。

終わらない拷問

両腕と両足を縛られたまま、不自然な姿勢で、長時間の取り調べを受ける。

殴る蹴るの暴行を加えられる。

体に電流を流される。

食事を2日以上与えられない。

ジヤウドゥンさんが拘束されたおよそ10か月の間、こうした拷問を受け続けたといいます。中でも、電流を流される拷問では、何度も意識を失いました。

「一思いに殺してほしい、私が何をしたの」

あまりの痛みにジヤウドゥンさんは、こう訴えながら警察官につかみかかったこともありました。しかし、別の警察官が駆けつけ、頭や腹を殴られ、動くことができなくなりました。

また、取り調べでは、彼女の人格や家族の存在を否定するようなことばを浴びせ続けられたというジヤウドゥンさん。毎日、毎日、そうしたことばを聞き続けるうち、目の前にいる警察官や施設の職員たちが「ごく普通の人間」のように思えてきて、何を言われても何も感じなくなっていきました。

「女性を全員、診療所へ連れて行け」

ある時、施設で拘束されている女性全員が集められ、職員たちが、こう指示を受けているのが聞こえてきたといいます。そして、診療所の前には長い列ができていました。

ジヤウドゥンさんの順番となり、ベッドに横にさせられると、施設の職員が話し合う声が聞こえたといいます。

「出血がひどいし、夫はカザフスタンにいるから、不妊手術をしても意味がない」

その日も拷問を受けて、傷口から出血していたジヤウドゥンさんのことを話している様子でした。その内容から、診療所では強制的な不妊手術が行われていることを理解しました。

その後も拷問を受け続けたジヤウドゥンさん。

ある時、彼女が気を失っていると思ったのか、2人の警察官がこう話していたといいます。

「彼女は死ぬかもしれないな」

「大丈夫だよ、死なせてしまえばいい。子どもを産めなくしたり、殺したりする。それが上からの命令なんだ」

決して口を閉ざさない

2度目の拘束で施設に収容されてからおよそ10か月。カザフスタンにいる夫が解放を求める活動をしたことなどから、2018年12月、ジヤウドゥンさんは施設を出ることができました。

その後、中国を出国し、カザフスタンで夫と再会することもできました。

一方で、カザフスタンへ出国する際、中国当局から「施設の中で経験したことは一切話してはいけない。もし話せば家族が代償を払うことになる」と脅されたといいます。

それでも、施設の実態を明らかにしようと、カザフスタンでメディアの取材を受けましたが、自宅は何者かによって放火されました。

新疆ウイグル自治区で暮らす姉からは「何も言わないでほしい」と強くお願いされたともいいます。

しかしその後も、亡命を求めて渡ったアメリカで、ジヤウドゥンさんは、ウイグルの人権団体などとともに、国際社会に中国への圧力を強化するよう訴え続けています。

今も、多くのウイグル族の人たちが施設に収容されたり、自由に移動できなかったりしていて、その中には、ジヤウドゥンさんの親族もいるといいます。

その親族の女性は、2年間施設に収容され、解放されたもののパスポートを更新してもらえず、カザフスタンなどにいる8歳から14歳までの3人の子どもたちと6年間も会えていないといいます。

こうした状況を解決するため、中国当局からの報復も恐れず、声を上げ続けると、ジヤウドゥンさんは話します。

トゥルスナイ・ジヤウドゥンさん

「中国政府を全く恐れていません。私は1度、施設の中で、“殺された”のですから」

「私には、6人のきょうだいがいて、まだ中国にいます。彼らのことを考えるたびに胸が張り裂けそうになります。しかし、今起きていることは、将来、ほかの人たちにも起こりえることです。これを止めなくてはならないんです」

「私には、新疆ウイグル自治区で何が起きているのかを伝えることしかできません。国際社会が手を差し伸べてくれることを信じています」

当事者一人ひとりの声に耳を傾ける

ジヤウドゥンさんの証言に対して、中国外務省は真っ向から否定し「一部の勢力が中国を中傷するために利用している道具であり、俳優だ」として、名指しで非難しています。

一方で、彼女のように証言する、ウイグル族の人たちは世界中で後を絶ちません。

また国際社会では、アメリカやEU=ヨーロッパ連合などが新疆ウイグル自治区で深刻な人権侵害が続いているとして制裁措置を行っています。

これに、中国政府は事実ではないと反発し、激しい対立が続いています。

新疆ウイグル自治区で、実際に何が起きているのか。

声を上げ始めた当事者一人ひとりの声に耳を傾け、引き続き取材を進めていきたいと思います。

 ◇

 弾圧を受けたこの女性が、中国当局の言うように「中国を中傷するために利用している道具であり、俳優」、だとは到底思えません。中国のこのような「犯罪行為をして、なおかつ嘘をでっち上げる」やり方は、まさにヤクザと何ら変わりありません。

 そうです中国共産党は、人権など全く無視した非道なヤクザでしょう。そのヤクザ共産党国家が今やGDP世界第2位の大国となっているのですから、内外共に迷惑この上ありません。かつてのソ連、そして今中国と、共産党が作った魔の大国、何とかソ連同様崩壊してほしいものです。

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