おめでとう日本、W杯1次リーグをトップで通過、その日本を中国人が応援する意外な理由
日本時間で昨日朝4時からのワールドカップサッカー対スペイン戦で、日本は歴史的勝利を収め1次リーグをトップで通過しました。カタールには苦杯をなめましたが、ドイツ戦に続いて強豪を倒しての堂々の1位通過でした。
各国の賞賛の声が届く中で、ロシアのテレビ局も日本の勝利を熱狂的に伝えました。そして韓国、中国のサポーターも日本代表を賞賛しています。そうした中、今回ドイツ戦に勝利した時の記事ですが、日中福祉プランニング代表の王青氏がDIAMONDonlineに投稿したコラムを取り上げます。タイトルは『サッカーW杯、中国人が日本を応援する意外な理由』で、以下に引用します。
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カタールで開かれているサッカーW杯で、日本がドイツを破ったというニュースは、中国でも大ニュースになった。中国メディアは速報を打って日本を称賛し、SNSは歓喜の声にあふれた。しかしなぜ中国人がW杯でそれほど日本を応援するのだろうか?そこにはちょっと意外な理由が……。(日中福祉プランニング代表 王青)
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実はサッカー大好きな中国人
11月23日夜、サッカーのW杯カタール大会で日本がドイツを逆転で破ったことを、国営・新華社通信を始め、中国の各メディアが一斉に速報した。新華社は「アジアサッカーの水準と魅力を世界に知らしめた」と日本代表を称賛。そして中国のSNSは嵐のように盛り上がり、驚きと歓喜の投稿で埋め尽くされた。中国語版Twitter「微博(ウェイボー)」や最大の検索サイト「百度(バイドゥ)の注目ランキングのトップ5位に入り、「ドイツ1比2日本!(2対1で日本の勝利)」「日本逆転勝利!」といったタイトルの記事には「爆」(もっとも熱いニュースという意味)という赤い印がついていた。
筆者のWeChatのモーメンツも、しばらくはこの件一色になり、「日本、勝った!」「うれしい!やっと明るいニュースだ!」「日本サッカーのファンとしてもっとも幸せな瞬間だ」「ただただ羨ましい……」などの投稿があふれた。さらに言うと、試合当日だけではなく、11月20日にW杯が始まる前から、サッカーに関する投稿が急増し、盛り上がっている。
中国は自国代表がアジア最終予選で敗退し、2002年日韓大会以来のW杯出場はならなかったため、今回は隣国日本の勝利を我が国のように喜び、そして、応援している。この興奮ぶりには意外と知られていない背景がある。それは、「サッカー大好き」な中国の国民性だ。日本では、中国の人気スポーツといえば卓球やバレーボールなどと認識されていると思うが、実は、サッカーは中国でとても人気が高いスポーツなのである。
習近平主席もサッカーが大好き
習近平国家主席も、大のサッカーファンである。例えば新華社は2008年のニュースで、当時中国共産党中央委員会政治局常務委員兼国家副主席であった習氏が、河北省にある秦皇島五輪スタジアムでサッカーをしている写真を掲載したことがある。 緑色の芝生のフィールド上で、習氏が革靴を履いているにもかかわらず足技を披露し、サッカーファンとしての本領を発揮したという記事だった。また、外国を訪問した際にもスポーツの交流で度々サッカーのことを言及し高い関心が示されたと、W杯で中国が優勝するのが夢だと話したこともある、これまで何度も伝えられてきた。
かつて、筆者が上海で高校に通っていたころ、仲の良い女子のクラスメートたちは、「将来結婚して生まれた子が男の子だったら、絶対サッカー選手にする。女の子だったら、サッカー選手と結婚させる」という夢を語り合い、自らの「サッカー愛」を子ども世代に託していた。当然、それは「夢」に終わってしまったが……。
W杯期間中は勤務時間中の居眠りもOK!?
W杯に出るという「夢」はなかなかかなわないが、4年に1度のW杯が中国で大きなお祭りであることには変わりない。開催国との時差の関係で、深夜に試合が行われることが度々あるが、そういう時に、会社員が出勤時間に遅刻したり、勤務時間中に居眠りしたりしていても許されるのだ。雇い主も大目に見ている。なぜなら、雇い主自身も同じ試合を見ているからだ。
W杯の1カ月間は、パブなどの飲食店にとっては稼ぎ時である。テレビで中継を見ながら、ビールとつまみを目の前に置き、仲間と一緒に大声でサッカーを応援するのが至福の時間なのだ。サッカーについて語れない男性は、「おまえは男じゃない」という目で見られる。そして、筆者の女性の友人たちは、「夫が夜更かししたり家事をしなくても、W杯期間中は許している」と話す。それくらい、中国には老若男女問わず、熱狂的なサッカーファンが多いのだ。
こんなサッカー好きな国民なのに、うれし涙やくやし涙を流し、応援しているのは自国のチームではなく、他国のチームなのである。W杯で自国のチームを応援するチャンスがなかなかやってこないのが、中国人にとってはどれほど悔しく、残念か……。まさに痛恨の極みだ。
なぜ中国のサッカーは日本にかなわないのか?
今年3月、カタールW杯出場を逃した中国代表について、中国メディア「新浪体育」は、「日本や韓国などと比較し、総合力に大きな隔たりがある」と指摘し、中国サッカー界の凋落ぶり(実力不足?)を悲嘆した。また、「青少年のサッカー人材の育成に問題があり、これは中国代表のW杯予選敗退よりもはるかに深刻な事態である」と考察した。
中国サッカーはなぜ強くなれないのか――その歴史や歩み、課題などについて本稿では詳しく触れないが、長年、中国国民は自国チームがなんとか復活し、強くなってほしいと期待してきたことは確かである。しかし、毎回毎回、こうした期待は裏切られて、中国代表チームに罵声を浴びせて終わり、という状況が繰り返されてきた。それだけに、今回日本代表がドイツ代表に予想外の「勝利」を収めたことを心の底からうらやましいと思う中国人は多い。SNSでは、「同じ黄色人種、同じ体格なのに、なぜ日本は強く、中国は弱いのだ?」といったコメントが多かった。
「日本は、人口は中国の10分の1、国土も狭い。しかしなぜ日本のサッカーは強く、アジアのフィールドではトップクラスの座を占めて、何度もワールドカップに進出し、優れたプレーを披露してきたのか。日中の差は一体どこにあるのか?」。これは長年、中国が日本に対して抱いているコンプレックスであり、頭を悩ませている課題である。
この「日中の差」についてこれまでは、「日本は、青少年のサッカー人材育成を非常に重視し、政府や民間が多くの資金を投入し、努力を費やしている」や「欧州のプロコーチを採用してユース育成を指導し、プロ化を完成させた。日本のJリーグはアジアで最も競争力のあるリーグとなり、現在50万人の登録選手がいて、日本代表チームに安定的に人材の供給ができている」などと分析されてきた。
カタールと中国は、同じ地球上にいるのだろうか
今回のカタール大会は、新型コロナウイルス感染拡大以来初のW杯である。10月に入り、オミクロン株がまた中国全土で蔓延(まんえん)し始めた。中国政府は依然として、一人でも感染者が見つかれば地域全体をロックダウンするという強硬な政策を取り続けている。11月24日の夜には、新疆ウイグル自治区ウルムチ市の高層マンションで火災が起き、幼い子どもを含む10人が亡くなった。防疫のための障害物などにより、消防車が現場へ進入できなかったためと伝えられている。人々の我慢はもはや限界に達し、各所で爆発し始めている。
そうした中でも、カタールW杯では応援する人々もマスクを着けていない。人々が密集して歓喜したり、騒いだりしている様子が映像で伝わってきて、人々は目を疑った。自分たちは集まってテレビ観戦すらできないのに……。
「我々は、彼らと同じ地球にいる?」という投稿が、ネットで瞬く間に拡散された。多くの人は、自分たちがいる世界が外の世界とまったく違うことを、W杯を通じて改めて確認し、世界から取り残されているのではないかと深い孤立感を覚えたのだ。 そして、「世界の人が『世界杯』(W杯の中国語)を見ている。我々は『世界観』を見ている」というSNSでの投稿が拡散され、多くの人たちに共感された。
「世界観の違い」「中国と日本のサッカーの差は、どこにあるのか?」――この課題について、ある日本在住の中国人YouTuberは、自らの動画で下記のように解釈した。
「この差は、国と国のそのものの差であり、社会の体制の差であり、コロナ政策の差であり、ゼロコロナ政策で自宅に封鎖される人々の窮状と渋谷でドイツへの勝利を祝う群衆の笑顔の差である」
ここ数日、中国の各地でゼロコロナ政策や習近平政権に対する不満が噴出し、抗議デモや暴動が起きているのは、日本でもニュースになっている通りだ。筆者としてはとにかく一日も早く、中国の国民が厳しいコロナ政策から解放されることを切実に願っている。日常を取り戻して、残りのW杯の試合を心から楽しめる日々が再びやってきますように。
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冒頭述べたように、日本との間が微妙なロシアや韓国メディアまで、日本を賞賛しています。やはり政治を超えたところにスポーツはあるのでしょう。そして中国も、今の政治状況を考えれば、ここまでに日本を応援してくれる中国人がいることは、やはり朗報だと思います。
しかし一方、このカタールでのワールドカップの各国のサポーターの熱狂ぶりを見て、中国国民がゼロコロナによる抑圧された生活に、大いに疑問を持ったのは事実でしょう。そして国策により閉ざされていた世界の動きを、垣間見た事によるショックと怒りは想像を絶するものかも知れません。
ただもうすでに中国のワールドカップの報道では、観客席を映し出す場面をカットしたりしているようです。また政権批判を含んだかつてない形の白紙デモにも、早くも規制が強化され、治安部隊が封じ込めに動き出しているようです。今後この画期的なデモの動きがどうなるか、日本の決勝トーナメントの行方と併せて、目が離せないところです。
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